再可決へ―「3分の2」決着の無策
越年国会という異例の事態をもたらした給油新法がきょう、決着する。
法案は参院本会議で野党の反対多数で否決されたあと、衆院に戻され、自民、公明の与党が3分の
2以上の多数で再可決し、成立する見通しだ。実に半世紀ぶりのことである。こんな事態に立ち
至ったのは極めて遺憾だ。
憲法59条は、両院で議決が異なった法案についてこう定めている。「衆議院で出席議員の3分の
2以上の多数で再び可決したときは、法律となる」。法的に問題はないというのは与党の言う通りだ。
だが、何でもかんでも3分の2で参院の意思をなぎ倒していいはずがない。そうなれば参院はいら
ないも同然だ。再可決とは、政治の対立がどうにもならなくなった場合に憲法が用意した
非常手段である。これを使うには、合意づくりへの立法府の最大限の努力と有権者の理解が
欠かせない。参院の意思を覆すには、政治的な妥当性がなければならないのだ。
(中略)
アフガニスタンの現状を見据えて、日本としてどんな協力をすべきなのか。骨太の議論を戦わせ、
民意を踏まえつつ与野党が修正案を練り上げていく。「衆参ねじれ」の時代に求められるのは
そんな知恵と工夫だったはずだ。そうした努力が尽くされたとは到底言えないのに、再可決と
いう手法が使われることに私たちは賛成できない。
「ねじれ」の現実にうまく対応できないのは不慣れもあるだろう。だが、大連立、さもなくば
再可決、というふうに政治が極端な方向にぶれるのは国民にとって不幸なことだ。肝心の
政策論議が置いてけぼりにされてしまった。
(中略)
民主党の責任も重い。党内には、条件つきで給油容認の声もあった。なのに小沢代表が「違憲」
と決めつけたため、現実的な修正の余地を狭めてしまった。そのあげく、対案が国会に出て
きたのは年末ぎりぎりになってからだった。これではまともな論議にならなかったのも無理はない。
政府・与党にしてみれば、再可決でようやく懸案を打開できるということだろう。だが、無理
押ししたことのツケはいずれ払わねばならない。
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