地域の力で子育て中の親たちを笑わせながら悩みや不安を和らげて児童虐待を防ごうと、
青森県は「笑い」を引き出すテクニックを地域住民に伝授するユニークな事業をスタートさせた。
厚生労働省虐待防止対策室によると、笑いの癒やし効果を虐待防止に結びつけようとする
試みは全国でも例がないという。
同県では、児童虐待に関する児童相談所への相談が昨年度332件あり、10年前の10倍以上と
なるなど、虐待の増加が顕著になっている。危機感を感じたこどもみらい課職員は、親を明るい
気持ちにさせることが大切と、「笑い」の医学的効用を研究している高柳和江・日本医科大学
准教授(医療管理学)に相談した。
高柳准教授の助言を受け、児童相談所や医療機関、警察職員ら213人を7〜10月までに
笑いを引き出す技術を身につけさせた指導役として育成。11月からは、親と接する
「ほほえみプロデューサー」を県民から募集し、県の施設など6か所で養成講座を開いている。
受講生は2人1組になり、指導役から「いい名前ですね」「大事に育てられたんでしょうね」などと
言葉の掛け方を学ぶ。ほめられると受講生のほおが思わず緩み、指導役は「相手の心に寄り添う
ことが大事」とコツを伝授する。
10日に県庁で受講した青森市の小田勝康さん(70)は「ちょっとした気遣いで笑いを引き出せると
わかった。私もできそうです」と笑顔を見せた。
開催から約1か月で主婦や教員、県職員ら約850人が受講。県は2年間で2万人の養成を
目指しており、子育て中の近所の親たちの相談に乗ってもらう。
高柳准教授は「笑いは人の気持ちを明るく前向きにする効果があり、他人との接し方も変わる」と話し、
県こどもみらい課は「児童虐待は、親の社会的、精神的な孤立によってエスカレートする傾向がある。
プロデューサーが一人でも増えることで、地域で助ける態勢が広がれば」と期待している。
http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20071214i505.htm