・週末の夕方。都内の広告会社で営業を担当する佐野裕美子さん(23)=仮名=は、
仕事を終えると友人2、3人に携帯メールを送る。
「いま何してる?」
送り終わると、すぐに返信確認。1分、2分、3分…何度も操作を繰り返す。
返事が来たら食事に誘う。5分も返事が来なければイライラする。
便利なはずの携帯電話を手にして、イライラと格闘するのは彼女ばかりではない。
「返信が気になる。地下鉄に乗れば一駅ごとに『センター問い合わせ』をしてしまう」
(24歳の女性会社員)、「返信が来ないで5分過ぎると貧乏ゆすりが始まる」(20歳の大学生)−。
小中学生は「15分以内に(メールを)返さなければ友達じゃない」などと言う。
通勤電車の遅れが「5分」でイライラするという人は10年前の17・6%から56・6%へと急増した。
加速する“せっかち度”が各所で摩擦を引き起こす。
懐石や鍋のコース料理がメーンのある日本料理店。落ち着いた雰囲気が売りだが、店長(33)は
「お客さまと店側の時間意識のズレ」に頭を悩ませる。前菜に始まりメーンの料理を提供するまでの
所要時間は「昼10分・夜15分」と決めている。しかし、時間内にスムーズに料理を出しても苦情が
入る。テーブルセッティングのための1、2分の時間すら待てない客もいる。受付で「少しお待ち
ください」と言うと、「待てるか!」と声を荒らげ、トイレに入った連れの女性を残したまま帰った
中高年男性もいた。
コミュニケーションツールはさらに高性能になり、「宅配便の配送状況やバスの
待ち時間もネット上で確認できる。漠然と何かを待つことはほとんどなくなった」
目白大学の渋谷昌三教授(社会心理学)は、そんな「待つ必要がない社会」の到来を複雑な思いで
見つめる。「パソコンや携帯を駆使して即座にほしい情報が引き出せる。だから、物事がさくさく
運ばないと耐えられずに、暴力的な言動に出てしまうこともある。『待たせない』サービスに慣れ
すぎたがゆえの皮肉な現象かもしれません」(一部略)
http://sankei.jp.msn.com/life/lifestyle/071113/sty0711130811000-n1.htm