●チンパンジーで老後研究 京大霊長類研が管理へ
チンパンジーを実験動物として利用することが世界的に中止となり、国内の製薬会社などが抱えていた多数の
チンパンジーが京都大霊長類研究所(愛知県犬山市)の管理下に置かれることになった。
霊長研は、チンパンジーの安らかな「引退生活」を保障したうえで、ヒトにも応用可能な福祉・長寿研究のために
役立てたいと考えている。製薬会社の寄付金を受け、8月1日に新たな研究部門を開設する。
(中略)
チンパンジーの今後の取り扱いについて霊長研の松沢哲郎所長らと協議した結果、同社が5年間に
計1億5000万円を寄付し、施設管理を霊長研に任せることにした。霊長研は、チンパンジーに詳しい伊谷原一
(いだに・げんいち)・林原(はやしばら)類人猿研究センター所長を講座の客員教授に任命し、老年医療の専門家や
飼育環境の専門家をスタッフに迎え入れる。
飼育環境はチンパンジーの「幸福」を念頭に置いて整備。食事の全体量は変えずにその回数や品目を増やし、
季節ごとの変化もつける。また、ハンモックや段ボールなど多様な寝具や遊具を置き、広い運動場も設けるなどして、
おりには入れず集団生活をさせる。寄付講座も開設してチンパンジーの福祉や長寿研究に取り組む。過去の実験で
C型肝炎ウイルスに感染したチンパンジーが17頭おり、その治療もする。
松沢所長は「飼育施設にいろいろな工夫をすれば、生活の質が上がる。チンパンジーが天寿を全うするとはどういう
ことか、彼らチンパンジーと協力して研究し、ひいてはヒトの福祉・長寿研究につなげたい」と話している。
http://www.asahi.com/science/update/0723/OSK200707230123.html