昆虫:キチョウ、幼虫段階で性決定 共生細菌が作用
昆虫の性は受精後の初期段階で決まるとされてきたが、沖縄などに生息するキチョウは、幼虫段階に体内にいる共生細菌「ボルバキア」の作用で性が決まることを、産業技術総合研究所と千葉大の研究グループが突き止めた。
ボルバキアは全昆虫の20%以上で感染しているとされ、昆虫の性制御が可能になれば、害虫に卵を産みつけて殺す寄生バチのメスを効率的に増やすなど、害虫駆除への応用も期待される。
キチョウは本州以南に分布する。このうち沖縄本島と種子島に生息するキチョウには、オスの性染色体を持っていても、特定の系統のボルバキアに感染することで、すべてメスになる集団がある。
グループは、こうした集団からオスの性染色体を持った幼虫を採取、成長段階で4グループに分け、共生細菌の働きを抑える抗生物質が入った餌を与えて育てた。
その結果、1、2番目の段階のグループからは一匹もメスにならなかった。一方、3番目の段階からは約4分の1、4番目の段階からは半数がメスになり、与えないものはすべてメスになった。
また、どの段階でも、オスからメスになりきれず、羽の色がオスとメス双方の特徴を示すものもいた。深津武馬研究グループ長は「共生細菌が抗生物質で抑制され、性転換の作用が不完全になったようだ」と話している。【石塚孝志】
毎日新聞 2007年7月4日 20時35分
http://www.mainichi-msn.co.jp/science/env/news/20070705k0000m040091000c.html