タイ前首相の命運は、プレミアリーグに 買収成否が影響
サッカーの英プレミアリーグが、昨年9月のクーデターで失脚したタイのタクシン前首相によるマンチェスター・シティーの
買収を認めるかどうか――。この判断が、タクシン氏の命運と今後のタイ政局に影響を与えそうだ。
21日、クラブ側はタクシン氏による約200億円にのぼる買収提案を受け入れるよう株主に勧告した。タクシン氏は
ロンドンで「資金は以前から用意していた自分の金」「前イングランド代表チーム監督のエリクソン氏を次期監督候補に
考え、面談した」などと上機嫌で話した。
しかしその数時間前、母国タイでは、タクシン氏夫妻は国有地を不正取得した疑いで検察当局から起訴されていた。
今回の買収をめぐっては、タクシン氏が先に約580億バーツ(約2100億円)の資産を凍結され、残りの資産の行方も
追及されていることから、「無理ではないか」との見方があった。
一方で、潤沢な資金で政治基盤を確立してきたタクシン氏にとって、買収断念は資金ショートを意味し、求心力の低下に
つながるため、引くに引けない状況にもあった。
注目されるのはプレミアリーグが04年に導入した「適性テスト」をパスできるかどうか。横領、脱税、収賄などで有罪になった
人物がクラブのオーナーや幹部役員、30%以上を保有する大株主になると、チームは出場停止になる。
これまでに不適格とされた例はないが、クラブが不正な取引に巻き込まれることを防ぐ効果をあげている。昨年、規制が
強化され、国外の裁判所の判決も対象になった。
タクシン氏にすれば、「お墨付き」が得られれば、政治的にも得点となる。同リーグの試合はタイでも生中継される人気。
タイ代表選手との契約の可能性を探る動きもあり、宣伝効果は抜群だ。逆に不適格となれば一層の窮地に陥る。
買収資金についても、国外に持ち出した経緯を中央銀行に調べられる可能性がある。
http://www.asahi.com/international/update/0622/TKY200706220432.html