あらゆる細胞に分化する能力を持つヒトの胚(はい)性幹細胞(ES細胞)を大量に培養する方法を、
理化学研究所・神戸研究所などの研究グループが開発した。この方法で、脳の神経細胞を効率よく
作ることにも成功した。パーキンソン病など神経変性疾患の再生医療につながる成果で、27日付の
米科学誌「ネイチャー・バイオテクノロジー」(電子版)に掲載された。
未分化のまま増やしたES細胞の塊をバラバラにし、再び未分化の細胞塊に成長させる方法で、
マウスの場合は効率よく増やす方法があった。しかし、ヒトの場合はバラバラにする操作を加えると、
ほとんどの細胞が死んでしまい、少しずつほぐしながら増やす効率が悪い方法しかなかった。
研究グループは、特殊な細胞の死だけに関係するたんぱく質「Rho」と結合して活性化される酵素
「Rhoキナーゼ(ROCK)」に注目。ROCKの阻害剤を培養液に添加すると、塊をバラバラにしても
細胞がほとんど死ななくなり、培養効率が1カ月当たり100倍以上も向上した。
笹井芳樹・理研グループディレクター(神経発生学)は「ヒトES細胞の大量培養の道を切り開く画期
的な技術開発で、パーキンソン病やハンチントン病など大脳の神経変性疾患の再生医療や創薬開発
につながる可能性がある」と話している。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20070528-00000000-mai-soci