少年はひとりタクシーを降りた。今月15日午前7時、福島県警会津若松署。
パーカーにジーンズのありふれた服装。手にしたショルダーバッグには、数時間前に自ら殺害した母親の頭部が入っていた。
会津若松市で起きた高校3年の男子生徒(17)による母親殺害事件。
頭部を切り落とし、持ち歩いた猟奇的な行動に、だれもがあの事件を思い出したはずだ。
「酒鬼薔薇聖斗」を名乗った少年(24)=事件当時(14)=による神戸市の児童連続殺傷事件。
社会学者の宮台真司さん(48)は当時、「この事件に呼びかけられたと感じるやつが絶対いる。
その一部は近いうちに模倣行動を始めるはずだ」と事件の連鎖を予言した。
それは、ほどなく現実のものとなる。2年後の平成11年8月、愛知県西尾市で女子高生が殺害された。
逮捕された少年=事件当時(17)=は酒鬼薔薇を尊敬して事件の記事をスクラップし、自らを「猛末期頽死(もうまつきたいし)」と呼んでいた。
翌12年には愛知県豊川市の夫婦殺傷事件に西鉄高速バス乗っ取り事件、岡山市の金属バット母親撲殺事件が相次ぐ。
いずれも酒鬼薔薇と同学年の少年による犯行だった。
宮台さんは指摘する。「酒鬼薔薇の人体をモノのように理解するあり方を誇示した犯行と、社会への挑戦に満ちた声明文。
少年たちは『この社会のルールに従って生きていかなくてもいい』というメッセージと受け取ってしまったのかもしれない」
この10年、少年たちの日常生活に訪れた最大の変化といえば、インターネットとケータイだろう。
総務省の統計によると、事件が起きた9年、携帯電話の普及率は25%。ネットに至ってはわずか9%だったが、17年には67%に達した。
10代後半から40代に限れば90%を超えている。