(要旨)
【PJ 2007年04月30日】−「負けるが勝ち」は、日本のことわざである。多くの日本のことわざの出典は、
中国の古典にあるのであるが、このことわざに似たものは無い。英語では、「To stoop to conquer.」
や「Yielding is sometimes the best way of succeeding.」があるが、ニュアンス的には大いに異なる。
『相手に勝ちをゆずって、形の上では負けても実際には、自分の身を有利にすること。例えば、くだら
ない相手をけんかして勝ったところで、誰にもほめられない。怪我をしたり、あとで仕返しをされたり
したら何のとくにもならない。そんな時は、負けるが勝ちである。』(出典:故事ことわざ辞典)
日本という特殊な位置にある島国の中で生まれた智恵なのであろう。
日本人の発想には、ネガティブなものが多い訳であるが、このように意味深い言葉もあるのだ。かつての
日本人が持っていた、大自然への畏怖と愛情が、今やスピードと便利さ快適さと、金銭のみで判断される
現在では、その多くを失ってしまい、結果として、文化やふるさと、家族の絆まで失いつつある。
日本人はその心情や発想を、世界に通じないものとするのでなく、自信をもつべきなのである。
「負ける」ことは恥ずかしいこと、劣ることなのかも知れない。競争原理の社会では、負けることは
許されないことなのかも知れない。しかし、経済や社会に於いては勝敗をつけるのではなく、
相手を立て、うまく共存していく方法を考えることも大切なことである。勝敗が大切なのは、
スポーツの世界のみである。
近代日本の200年は、世界の流れの中で「負けるが勝ち」を忘れてしまい、「勝つ」ことのみに邁進して
きた時代であった。そして実際の「負け」については、「終戦」という言葉でその内容を入れ替えて
しまって、根本的な改革もなく、時代の流れにうまくのってある意味での再生を成しとげたのが現在である。
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