人に石を当てると興奮するんです 投石合戦は朝鮮・日本が発祥 しかし国家による大量殺戮のはしりでもある
http://www.tokyo-np.co.jp/hissen/index.shtml 無敵の横綱、モンゴル出身の朝青龍が、初日から二連敗した大相撲大阪春場所。土俵に降り注いだ座布団の嵐を
見て、“網野史学”の出発点とされる『蒙古襲来』(小学館文庫)の印象的な書き出しを思い起こした
▼「飛礫(つぶて)は一〇世紀の末から文献に出てくるが、鎌倉時代にしばしばおこった諸社の嗷訴(ごうそ)
のとき、激しく飛礫を打っている。日本だけでなく朝鮮でも古くから『石戦』が盛んで、朝鮮に出兵した
豊臣秀吉軍は、民衆の投石による抵抗に苦しんだ」
▼宗教学・文化人類学者の中沢新一さんは『僕の叔父さん網野善彦』(集英社新書)で、この“飛礫再発見”の
場に居合わせた少年時代の記憶を書き残している
▼民俗学者だった父厚さん、鉄の研究家として知られた父の弟護人さん、そして父の妹の夫だった網野さんが
一九六八年一月に、米原子力空母エンタープライズの佐世保寄港に反対する学生たちの投石のニュースを見て
子ども時代の石合戦を思い出すと興奮、網野さんは中世の“悪党”たちの飛礫を例に解説した
▼まだ野生を残していた日本の民衆が、抑制のきいたルールの中で祭りとして行っていた石合戦は、やがて
国家による大量殺戮(さつりく)の征服戦争に取って代わられる。そのきっかけが二度の蒙古襲来で、この国は
武家による国家的統一を果たす
▼日本とモンゴルの合作で映画『蒼き狼』が公開中だ。人気に便乗しようと、徹夜国会明けの安倍首相も初日に
駆けつけた。日本とモンゴルが相撲で雌雄を決し、火矢や飛礫に代わって座布団が舞う現代の結構な平和。