期待に胸をふくらませてやってきた中国。
現地採用ではなく、駐在員という身分で、しかも食品業界の花形である開発という仕事を任せられたことは、客観的に見ても、とても幸運なことだったと思う。
駐在が決まった当初、私は決意した。どんなにつらいことがあっても、この仕事をやり抜こう。そして、積極的に中国側のスタッフや現地の人と仲良くなって、観光旅行では味わうことのできない本当の中国を知ろう。
中途半端なレベルで停滞している中国語もブラッシュアップさせよう。恥ずかしがらずにどんどん話して、1年後にはペラペラになるように頑張ろう。
そんな風に決意したはずなのに、実際に中国での生活を始めてみると、はじめに思い描いていたことを何一つ満足に実行できずにいる自分に気づき、愕然とした。
仕事はどうだろう。上司の指示がなければ、どう動いていいのかわからず、オロオロしていた。アシスタントとうまくコミュニケーションがとれず、指導もできず、悶々としていた。
中国人スタッフはもちろんのこと、日本人スタッフとの交流でさえ、毎日手探りだった。執拗に飲まされ続ける宴会が嫌で、何度も黙って逃げ出した。
友人はできなかった。積極的に地元の人と交流するつもりが、外国人としてジロジロ見られることにうんざりしていた。「日本人はお金持ち」と言われることにもうんざりしていた。
隣近所の大声での夫婦けんかや、早朝からバンバンなる爆竹や、乾ききった大地、春になっても桜も愛でることのできない土地を恨めしく思った。
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