三十数年前に制作されたSF映画の名作「惑星ソラリス」では、未来都市という設定で東京・赤坂見附
あたりの首都高速道路を走る車から撮ったシーンが出てくる。大阪万博会場で撮影する予定が
うまくいかず、窮余の一策だったそうだが、タルコフスキー監督がいまの赤坂・六本木を見れば、
どんな感想を漏らしただろう。
▼赤坂には39階建ての巨大ビルが姿をあらわし、近くの旧防衛庁跡地には高さ約250メートルの
摩天楼を中心にした東京ミッドタウンが来月、オープンする。これまで肩を怒(いか)らすように
そびえていたまわりのビル群がすっかりくすんでみえるほどだ。
▼その未来都市の足元で、暴力団幹部が射殺された。縄張り争いという江戸時代以来の伝統が21
世紀でも生き残っているとは皮肉だが、面白がってはいられない。都内の盛り場は暴力団抗争を
阻止しようと警察官が多数動員され、ものものしい。
▼迷惑な話だが、任侠(にんきょう)道を忘れた暴力団の一部は覚醒(かくせい)剤取引で北朝鮮と
結びついているという。そんな暴力団を追放するには、警察の厳しい取り締まりとともに、飲食店
主らが嫌がらせをされないため払う「みかじめ料」を拒否し、資金源を絶つことしかない。
▼北朝鮮の核問題を話し合う6カ国協議がきのう、再開された。米朝はすでに原子炉停止と経済支援を
同時に開始する「覚書」に調印したのしないのとかまびすしいが、このシナリオでは解決はおぼつかない。
▼クリントン政権時代にカーター元大統領が訪朝し、先代の金日成主席が原子炉停止を約束した
代わりに経済支援した結果はどうだったか。コメや重油を差し出したところで、核兵器保有を断念する
とはとても思えない。ならず者国家にみかじめ料を渡してはならない。
http://www.sankei.co.jp/ronsetsu/sankeisho/070209/sks070209000.htm