信大病院(松本市)は30日、難病アミロイド・ポリニューロパシー(FAP)の患者から取り出した肝臓を別の肝臓病患者に玉突き式に
移植する「ドミノ肝移植」を約3年半ぶりに実施した。信大では8例目。FAP肝の移植後に数年でFAPを発症した事例が見つかり
2003年8月から自粛していたが、早期の肝移植が必要な患者からの希望で再開を決めた。
移植は30日午前中に始まった。県内のFAPの50代女性に30代の息子から摘出した肝臓の一部を移植し、
この女性の肝臓を、県内の肝硬変の40代女性に移植。
FAPは、肝臓が作る異常なアミロイド(タンパク質の一種)が内臓や神経に沈着して機能障害を起こし、やがて死に至る。
肝臓の他の機能は正常で、別の患者に移植しても発症まで20年以上かかる−との見方が強かったため、
移植臓器の不足を補う緊急避難的な医療として始まった。
だが、英国とドイツで04年、ドミノ移植後6−8年でFAP発症を確認。国内でも昨年、熊本大のチームが6年半後の発症を確認した。
信大病院でも、移植後5年ほどの患者2人に異常アミロイドの沈着が見つかり、信大は7例目以降ドミノ移植を自粛していた。
池田修一・信大病院内科教授は「ドミノ移植には賛否両論ある。積極的に進める治療法ではないが、
臓器提供を長い間待てない患者には、選択肢の1つであることに変わりない」とする。
信大病院は、試験管内でFAP発症を抑える作用が確認された薬を試験的にFAP患者に投与している。
効果は未確認だが、長期間投与しても大きな副作用の危険性が少ないため、今回の移植患者にも投与を検討中だ。
FAP治療に取り組んでいる熊本大大学院の安東由喜雄教授は「インフォームドコンセント(十分な説明と同意)が適切になされ、
患者・家族から強い希望があれば、ドミノ移植は合理的な治療の選択肢の1つ。(信大の再開は)妥当な判断ではないか」としている。
http://www.shinmai.co.jp/news/20070131/KT070130LVI090005000022.htm