自民党大会 「美しい国」の説得力は
小泉純一郎前首相の路線を継承しつつ、安倍首相が著書「美しい国」で披歴した
国家主義的な政治信条で味付けしたのが特徴といえる。
安倍首相はあいさつで、憲法改正に向けた意欲をあらためて示している。
年金制度の将来不安、雇用の不安定化など、国民生活を脅かしている問題に
対する説得力ある処方せんが盛り込まれていない。
安倍政権が目玉に掲げる「再チャレンジ」も、中身は相変わらずあいまいだ。
もう一つは国際的な視点である。運動方針は外交課題として、
北朝鮮の拉致問題や北方領土、竹島問題を掲げた。ナショナリズムを刺激しやすいテーマである。
安倍首相は就任早々、中国と韓国を訪問し、切れた糸をどうにかつなぎ直した。
そうした取り組みを積極的に評価する姿勢は、運動方針からは読み取れない。
保守的な歴史認識を封印した首相と微妙な関係を保ちつつ、
自民党が外交政策を内向きの方向に引っ張っていかないか、心配になる。
夏の参院選では、小泉ブームにわいた6年前の選挙で当選した議員が改選される。
ある程度の揺り戻しを自民党は覚悟せざるを得ない。
長い目で見れば、自民党の支持率は低落傾向をたどっている。
小泉前首相の巧みな選挙戦術により、ここ数年どうにか踏みとどまってきたものの、
上向きに転じる確かな手掛かりはまだ見つかっていない。
安倍首相は憲法、教育など、イデオロギー絡みの問題を参院選の争点に掲げようとしている。
有権者が前向きに受け止めるかどうか。自民党にとっても正念場だ。
ttp://www.shinmai.co.jp/news/20070118/KT070117ETI090003000022.htm