【主張】松坂投手入団 日米野球文化の接点たれ
晴れやかな笑顔でボストン・レッドソックス、松坂大輔投手が誕生した。
レッドソックスのポスティングシステム(入札制度)による独占交渉権獲得から1カ月、
期限いっぱいの契約成立に関係者ならずとも安堵(あんど)の胸をなでおろした。
長い時間を要したのは、代理人スコット・ボラス氏の交渉術にあった。
日本ではなじみの薄い代理人も、米国のプロスポーツの世界では至極あたりまえの制度である。
時間をかけ、交渉決裂までにおわせながら要求を通していく手法はしかし、
松坂投手のその後の立場をも悪くしかねなかった。
最後は、自身の「大リーグのマウンドに立ちたい」という強い意志を優先した形となったが、
早速、米国のスポーツ文化の洗礼を受けたといってもいい。
古い野球の街、ボストンの野球ファンは見巧者であり、辛辣(しんらつ)な批評家でもある。
西武球団に支払われる5111万ドル(約60億円)に加え、
6年契約総額5200万ドル(約61億円)と推定される高額年俸の日本人投手が、
思ったほど活躍ができなければ厳しい批判の矢が飛んでくるだろう。
ニューヨーク・ヤンキースの松井秀喜選手は試合に勝とうが負けようが、
自身が打とうが打てまいが、試合後はきちんとインタビューを受ける。
野球記者出身の広報、広岡勲さんの助言もあって、自身の思いを真摯(しんし)に
伝えて米国の記者たちにも浸透していった。
松坂投手も専属の通訳がつく契約だという。野球をよく知る通訳を選び、
自身の思いを的確な言葉で伝えてもらいたい。そして、入団会見で見せたような笑顔を添えて、
和を尊ぶ日本の野球文化についても話してほしい。
ttp://www.sankei.co.jp/ronsetsu/shucho/061216/shc061216000.htm