★核を持つ 日本を危うくするだけだ
・私たちは次のように考える。
もし日本が核保有に踏み切ったとしよう。自らの手で核不拡散条約(NPT)を破壊することになる。
これまで世界の先頭に立ってNPTの重要性を訴えてきた日本が核保有へと急変すれば、国際
社会での信用は地に落ちる。経済制裁などで、際限なく孤立が深まる恐れがある。
米国には日米安保条約への不信の表明と受け止められる。周辺国からは自主武装への傾斜
だと身構えられるだろう。
仮に米国の支持を得たうえでの核保有であっても、アジアでは新たな不安定要因となる。
狭い国土に人口や産業地帯が密集する日本は核攻撃に弱い。核で核を抑止するには限界がある。
核保有をめぐる危険や不利益は、非公式なものとはいえ内閣や防衛庁が過去に行った核問題の
検討報告書にも記されている。核武装によって日本の安全が高まることはないと結論を出している。
核保有は、日本経済の生命線であるエネルギー問題にも深刻な影響を与える。
日本はウランなどの核物質や設備を米国から輸入し、原発を動かしてきた。協定によって
平和利用に限定する義務を負い、これに違反すれば核物質や設備などの返還を求められる
可能性が高い。日本は、たちまちエネルギー危機に直面することになる。
米国の「核の傘」に頼らず独自に核武装した方が安全ではという考えは、あまりに視野が狭い。
いま日本にとって大事なのは、6者協議を生かし、できるだけ早く北朝鮮に核を放棄させることだ。
核保有の議論が長引けば、中国だけでなく韓国からも疑いの目を向けられ、北朝鮮を取り巻く
国々の結束が揺らぐ。それこそ北朝鮮の思うつぼではないか。
日本が核武装に動けばNPT体制は崩壊し、他の国々も核を持とうとするだろう。中東一帯での
拡散も誘発する。核が増えればテロリストの手に渡る危険もまた高まるのだ。
被爆体験を持つ国がそんな引き金を引いてはなるまい。この地球上に核を増やすのではなく なくす方向で世界と自分自身の安全を考える。それが日本の役割であることを忘れてはならない。 外相も政調会長も、もし異論があるのなら、ぜひ語ってほしい。(一部略)
http://www.asahi.com/paper/editorial20061111.html