「お金を借りることは基本的人権だ」「ほどこしで人を救うことはできない。返済を伴ってこそ、自立できる」
消費者金融の経営者が、こんなふうに自らのビジネスの存在意義を語り、
借金返済の重要性を強調しても、だれも賛同しない。まして、感銘などは受けない。
しかし、バングラデシュのグラミン銀行総裁、ムハマド・ユヌス氏が口にし実践したところ、
ノーベル平和賞につながった。20年以上にわたり、農村の貧しい女性に少額を無担保融資する事業を展開し、
貧困からの脱出と女性の地位向上を手助けしてきたのだ。
人口の36%が1日1ドル以下で生活し、女性の識字率はわずか30%(ユニセフ調べ)という貧しい国だ。
それでも、ユヌス氏は無利子や低利の融資はしない。
日本の消費者金融並みに年20%(インフレ率を差し引いた実質金利は10%台前半)程度の利息を求める。
しかも、融資する時は5人を1グループにし、連帯責任を負わせて返済させる。農村の女性が対象なのも、
濃密な共同体のもとで監視の目が行き届くからだろう。焦げ付きが少ないのは、こうしたシビアな計算のせいだ。
おかげで、女性らが手がける事業も、着実な利益を見込んだ持続的な計画となり、
貧困から抜け出すだけの力を備えることになる。
金融は「経済の潤滑油」「産業の血流」と呼ばれてきた。
とはいえ、日本の銀行がやっていることを見ても、実感はできない。
まして消費者金融に、その片りんもない。
金融業の本来の姿をGDPが日本の1・3%しかない国に教わるというのも寂しい。
http://www.mainichi-msn.co.jp/shakai/wadai/news/20061020k0000m070150000c.html