県警捜査二課長の奈良恵一警視(38)の女性記者に対するセクハラ問題は十四日、奈良
警視が懲戒処分を受け依願退職することで一応の決着を見た。しかし、今回の問題を受け
県警幹部からは記者が夜に自宅を訪ねる「夜回り取材」を敬遠する声も上がる。こうした
姿勢に対し専門家や報道機関は「問題のすり替えだ」と批判している。
問題が起きた五月、対馬市発注工事をめぐる不正入札事件の捜査は大詰めを迎えていた。
マスコミ各社は連日、奈良警視ら捜査二課の幹部や捜査員に取材攻勢をかけていた。奈良
警視は女性記者に「ネタがほしいの?」と捜査情報の漏えいをちらつかせ、暗にセクハラ
受け入れを求めるような言動もあった。女性記者はセクハラ行為に嫌悪感を覚えたものの、
我慢していたという。
マスコミュニケーション論に詳しい県立長崎シーボルト大国際情報学部の香取淳子教授は
「捜査情報をもらおうとする側と情報を握る側の力関係の差を利用して性的におとしめた
卑劣な行為」と奈良警視の行為を厳しく批判する。だが、今回の問題が表面化した後、
一部の県警幹部は「問題を起こしたくないから、夜回りに来ても会わないようにする」
と話す。県警監察課は「報道の自由は尊重する。誠実に対応するのが原則」としているが、
夜回りを敬遠しようとする動きが強まっているのも実情だ。
香取教授は「夜回りのような非公式な取材ができなければ単なる『発表ジャーナリズム』
に陥り、出したい情報しか知らされず、隠された情報は明らかにできない」と指摘。
「県警側は再発防止策を具体的に提示すべき。マスコミ側も情報を餌にしたセクハラ行為
を拒否し、女性記者が男性警察官と密室で二人きりにならないよう指導するなど方針は
決めた方がよい」としている。
女性が勤務するテレビ局では、夜回りを遠ざけようという意見があることについて「県警
がきちんと再発防止策を打ち出すべきで、夜回りを規制するのは問題のすり替えだ。
絶対に受け入れられない」と話している。
http://www.nagasaki-np.co.jp/kiji/20060915/02.shtml