6月11日付・読売社説(1)
[新成長戦略]「人口減社会だから大事な『人財力』」
少子高齢化が進み、日本の人口が減少し始めた。経済成長にはマイナスの影響を与えるが、それを跳ね返して、成長力を強化できないだろうか。
こんな問題意識から、経済産業省が「新経済成長戦略」をまとめた。「やり方次第では、成長は可能だ」として、今後10年間に、実質で年率2・2%成長の青写真を示している。
日本の労働力人口は、今後10年で400万人減少する。GDP(国内総生産)の規模は、約10年後に中国に、約20年後にインドに抜かれるという。
無策では済まされまい。じり貧を食い止め、現在は1%台後半と見られる潜在成長率を高めるため、政策を総動員する方針は妥当だろう。
ただ、総花的ではなく、「選択と集中」でメリハリをつける必要がある。
戦略は、競争力ある製造業とともに、サービス産業の生産性を向上させ、「双発の成長エンジン」と位置づけた。
次世代環境自動車向けの革新的電池などの技術革新、情報技術(IT)分野などの生産性向上、アジア経済との連携強化をテコにすべきだと提言している。
地域経済の活性化や、国民一人ひとりの能力を高め、人材を財産として生かす「人財力」の強化も掲げた。
成長強化策を巡っては、経済財政諮問会議が「グローバル戦略」、自民党も「日本版上げ潮政策」を策定している。目指す方向は同じだ。
政府・与党は、月内に、経産省の戦略をベースに各案を調整し、「経済成長戦略大綱」を決める。
財政再建が課題だけに、予算ばらまき型の成長策はありえない。民間活力の活用や規制緩和などで知恵を絞りたい。
デフレ不況の「失われた10年」に対して、人口減がまだ緩やかな今後10年は、経済の活力を生む「残された10年」という見方もある。日本が経済大国であり続けるかどうか、岐路に立っている。
(2006年6月11日1時38分 読売新聞)
http://www.yomiuri.co.jp/editorial/news/20060610ig90.htm