ブラジルのレスラーを夢見る孤児たちを育てる団体に、
橋本がリングシューズを送ったことがあった。
それも、200組ものシューズを。
子供たちは、とても喜んだ。
しばらくして、やはり新日が同団体にシューズを寄付することになった。
エージェントが現地へ赴き、少年たちにシューズを渡す。
少年たちはやはり喜んだが、渡されたアシックスのシューズを見て
「アシックスではなくて、メーカーは『ハシモト』が良かった。」
「『ハシモト』のシューズはとても履きやすかった」
と口々に言う。
新日のエージェントは首をひねった。ハシモト?そんなメーカーがあっただろうか。
「これだ」と、手渡されたボロボロのシューズを見てエージェントは驚いた。
すでにかすれてしまっているものの、シューズにははっきりとサインペンで
「夢をあきらめるな ハシモト」
と、現地の言葉で記した跡があった。
200組ものシューズ全てに橋本は自筆のメッセージとサインを入れ、
それを子供たちは「ハシモト」というメーカーのシューズであると思い込んでいたのだ。