井筒は撮影現場でスタントマンから「さすがにそれは
危なくてできないですね」って言われて「それを何とか
するんがおまえらとちゃうんかい! 死ぬ気でやって
みい!」ってやらしたらほんとに死んだんだよね。
俺現場で制作してたらか一部始終見ました。
あれは絶対に殺人です。その後監督が責任をとって保証金を
肩代わりしたことが美談のように語られてますが、そうしないと
刑事事件として告訴されそうだったので仕方なくそうしたん
です。だって監督は葬式のあとで「人間死ぬ時は死ぬんや。
あそこで死ぬのもたぶんあいつの運命やったんやで。そうと
しか思われへんもんね」なんて呑気なこと言ってましたし。
現場には助監督が4人と主に雑用諸々担当する制作という立場の
人間が3人いたんだけど、そのうちのどれかが私です。
今となっては証拠は何もないけど井筒監督の発言はすべて本当です。
死んだスタントマンの彼は本当にいい奴で、彼は真面目に意見したのに
一旦怒りモードにはいった井筒監督には何をいっても無駄で、
彼も半ばあきらめて現場でスタントやってたんです。
井筒監督がどんな事情であれテレビにでるのは仕方ないとしても
やはりそこで笑っている顔を見せられるとふと死んだ彼のことが
思い出されるのです。