(■RAGNAROK ONLINE β testLv.114 噂の放置プレイ■

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641名も無き冒険者
そのゲームの始まりは、神に祝福されていた。
水の揺らめきや、風のざわめきすら表現された、光溢れるMAP
様々な表情を見せる、可愛らしいキャラクター
コンシューマーとみまごう程の、派手で多彩なエフェクト
その美しさ、煌びやかさに、僕たち全員が魅せられた。

先の見えない深いダンジョン
迫り来る強敵を、皆で力を合わせて倒す快感
未開の地を自分たちの力で開拓していく喜び
そこには、MMORPGの楽しさの全てが詰まっていた。

見たこともないレアアイテム
誰も知らない未知のスキル
一歩一歩、確実に強くなっていく充実感
僕たちはただ、ひたすらに求めた。
もっと強く、もっと深くに、もっと、もっと・・・

だが、輝けるときは長くは続かなかった。
理不尽としか思えない経路障害
脆弱極まるサーバー
募る苛々に拍車をかける、房プレイヤーの爆発的増加

強さを求めるが故の独占欲と、1番を求めるが故の職業論争
己の利益のみを追求するルーターに、全てを無に帰すべく現れたチーター
以前の助け合いの心は既に遠い過去となり、自分以外の全てを罵り、
妬み、恨み、迫害する。

助け合うことが楽しかった。でも今は、誰の助けもいらない。
みんなで頑張るのが好きだった。でも今は、自分以外の他人は
単なる邪魔者でしかない。
善意なんて信じない。奴らはみんな、悪意をもって俺を利用しているだけ。
だから俺も、誰も信じない。他人を利用し、数字を稼ぐ。それが俺の、こ
のゲームでの生き方・・・

いつの頃から、変わってしまったのだろう?
いつの頃から、なくしてしまったのだろう?
いつの頃から僕たちは、ただ数字をあげることだけに、その全てを捧げて
しまったんだろう? その先にあるものは? その後に残るものは?
誰も言わない。何も答えない。ただひたすらに、数字だけを上げ続ける。

時は戻りはしないだろう。だから僕は懐かしむ。
楽しかったあの頃を。夢中だったあの頃を。

いつか今に疲れたら、そのときはまた、皆で騒ごう。
あの日あの時あの場所で、出会うべくして出会った僕たちなのだから。
祭りはまだ終わっていない。僕たちはまだ、このゲームの中にいるのだから・・・