262ではないけど、
パイ投げは昔からサイレント映画からの伝統。
スラップステックと呼ばれる、キートンやアールバックが活躍するドタバタ喜劇の中で行われていた。
「おもちゃの棒」というスラップスティックの意味どおり、
過剰な暴力や殺人シーンのかわりに、
視覚にも楽しめるアクションとして登場したのがパイ投げだった。
ギャング抗争を子供が演じた『ダウンタウン物語』のラストシーンが、
銃撃戦でなくてパイ投げが行われていたけど、
暴力的ではなくて、映画の馬鹿馬鹿しさの象徴みたいなもん。
町山は「映画監督の伝えたいことを正確に読み取るのが評論家の仕事。
感想はその次にすること」というのが信条で、
映画の歴史や背景を踏まえず印象批評に終わるキネ旬を馬鹿にしていた。
余談だけど、問題になったパンフレットの一文も、その延長上。
で、そんなキネ旬へパイ投げで対抗するというのは、
映画の歴史を踏まえているし、
それを知らないキネ旬への意趣返しともとれる洒落の効いた行為。
逆上よりも、『ルミュエール』を読んでいないというわりには、
蓮実っぽい行動が興味深いけど。