お初にお目にかかりまする。1の切腹の立会人でござる。
皆様もご存知の通り、1は夜毎に婦女子をかどわかし、
道を歩けば必ず無辜の町人を理由無く切り付ける極悪人でござった。
そしてようやくこの度、1の切腹が決まったのでござる。
しかし当然と言うか、当日になっても1は頑なに切腹を拒否し続け、
無理矢理、牢から引きずり出したところ激しく暴れだし、
これでは切腹にならんと大老も頭を痛めておいででござった。
それでも何とかなだめて刀を持つところまでいったのでござるが、
そこから先は全く遅々として進まず、もう現場はグダグダでござった。
痺れを切らした介錯人が、それならば俺が切ってやろうと刀を振りかざしたところ
1は涙と鼻水と涎、顔から出る液体全てを垂れ流しながら命乞いを始めたのでござる。
介錯人の足にすがりつき惨めに命乞いをする様を見て、大老は側近の方と協議をなさって、
その結果、1に一刻も早く氏んでもらわねば藩の恥になると、
もう切腹じゃなくていいからとにかく切ってしまえとおっしゃられた。
しかし1は涙と鼻水と涎と糞尿、加えてエキサイトした介錯人に殴られた時の鼻血と
人体から出る液体全てを垂れ流して命乞いを始めたのでござる。
大老の足にすがり付きこの上なく惨めに命乞いをする様を見て、殿は大老と協議をなさって
その結果、1に1秒でも早く氏んでもらわねば幕府の恥になると、
何としても切腹させよとおっしゃられたのでござった。
そこで、拙者は1に睡眠薬入りの飯を与え、眠ったところを二人羽織りで切腹するという
なんとも珍妙な手段で切腹をするという事を提言したのでござる。
そもそも儀式の中で飯を食わせるなんていくらなんでも怪しまれると思ったのでござるが
物は試しと、1に薬入りの飯を出したところ1は飢えた野良犬のように何の疑いも無く
薬入りの飯を平らげたのでござった。これには大老も目を向いて驚いていたでござる。
あとは、驚くほど簡単に事は進み、無事に1の切腹は行われ申した。
だからして、皆様方はもうご安心めされい。
では、失礼。