いろいろな明るさのX線連星からの放射を系統的に調べたところ,
落ち込むガスの量が減ってくると,ガスの落ち込み方が変わり,
あまり摩擦が起きなくなるらしいことがわかってきました。
こうなると降着円盤からの放射は極端に減ってしまいます。
ブラックホールの場合,降着円盤からの放射がなければ,
ガスはそのままブラックホールに飲み込まれるだけです。
ところが中性子星の場合には,ガスがその表面に衝突する際に
高温になるため,X線で明るく輝きます。つまり,
暗い状態を観測すれば,両者の顕著なX線強度の違いから,
ブラックホールと中性子星が区別できると期待されます。
そこで,「あすか」で,13個のX線連星の暗い時期の観測を行い,
そのX線光度の決定が試みられました。
中性子星を含む連星は,ブラックホールを含むと考えられている
連星より明るいことがわかります。X線光度が上限値しか
求められていない連星は,実際にはもっと暗いと考えられます。
また,ブラックホールを含むと考えられている連星で
検出できた2天体は,落ち込むガスの量が
十分小さくなり切っていないものと考えられます。
つまり,暗い時期のX線光度を比較すると,中性子星と
ブラックホールでは大きく異なることが観測から示せたことになります
太陽のような恒星は,星の内部の水素を燃料にして輝きを保っています。
燃料を使い果たすと星は死をむかえます。このとき,太陽程度の質量の星は
白色矮星になります。太陽のおおよそ8倍から30倍の質量の星になると,
最後に大爆発を起こし(超新星爆発),星を形作っていた鉄の中心核が
強い重力でつぶれて中性子の塊の星 中性子星 になります。
中性子星は半径が10km程度しかないのに太陽と同じくらい質量が大きな,
とても密度の高い星 角砂糖一つ分の大きさで7億トンにもなります。
では,もっと質量の大きな星ではどうなるのでしょうか。
太陽より30倍以上質量の大きな星が大爆発を起こすと,
中心核の星の重力はさらに強く,中性子でさえつぶれてしまいます。
そうなると,もう縮むのを押しとどめる力はありません。
どんどん縮んでついにブラックホールができるのです。