2ch童話劇場〜第4話
「まよひが」
山の奥のそのまた奥に
まれびとの集う「まよひが」があるそうな。
あるとき一人のお大尽が山中で
迷うて迷うて迷うて迷うて
ようよう辿り着いたのが、このまよひがじゃったそうな。
お大尽、中に入ってびっくり仰天。
どこまでも続く部屋、部屋、部屋
都の祭りもかくやの人、人、人
歌に踊りに喧嘩に笛に
右や左の乱痴気騒ぎ。
けれどお大尽不満顔。
一声かければ都では皆がひれ伏す大尽も、
ここじゃ名無しの権兵衛も同じこと。
誰も頭を下げるで無し、
美人が酌をするで無し。
踊りの輪に引きずり上げられたお大尽、
突き出たお腹が邪魔をして、ろくに拍子もとれやしない。
皆に囃され笑われて、たまらずまよひがを飛び出した。
迷うて迷うて迷うて迷うて
ようやく都に帰ってみれば、
聞こえてくるのはまよひがの奥の金銀財宝の噂ばかり。
欲と怒りに目の眩んだお大尽、
共の者を引き連れて、山の奥へと引き返して行った。
それっきり、だぁれもお大尽の姿を見た者はいやしない。
山の奥のそのまた奥で
今日もまよひがのお祭り騒ぎは続いているそうな。
まよひがを探していつまでも彷徨い続ける哀れなお大尽達を
戯けた囃し唄にして歌い踊りながら
どっとはらい