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【社会】年賀はがき「自爆営業」 局員、ノルマ1万枚捌けず(2013年11月17日11時01分)
http://www.asahi.com/articles/TKY201311160403.html 「年賀状買取42円」。
今月1日夕、首都圏の金券ショップに貼られた値札を、両肩にそれぞれリュックサックをかけた30代の男性が見つめていた。
リュックには、その日売り出された年賀はがきが、3千枚以上詰まっている。
男性は、中部地方に住む日本郵便の非正規社員。上司から年賀はがきの販売ノルマをつきつけられていた。
配達の合間に客に買ってもらうものだが、売り切れない分は、自費で買い取る。
「少しでも自腹の負担を減らしたい」。首都圏の金券ショップは地元より買い取り額が10円近く高い。
新幹線を使ってでも持ち込む「価値」がある。
2,600枚を店員に渡し、10万9,200円を受け取った。
通常の50円との差額の計約2万円は自費になるが、「しょうがない」。残りは自力で売る覚悟だ。
同じ日、長崎県内に住む30代の正社員男性は、4千枚を北海道の金券ショップに宅配便で送った。
「足がつかないように」と遠方の店を選んだ。 店の買い取り額は1枚40円。4万円の損になる。
数年前から毎年4千枚を買い、転売する。職場では1万枚の「目標」が示され、約100人の社員の8割が達成する。
「多くが自腹を切るからだ」
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〒□□□-□□□□:2013/11/19(火) 00:15:56.47 ID:J8Y0YeRp
(つづき)
販売ノルマを達成できず、自費で買い取る行為は「自爆営業」と呼ばれる。
ノルマに悩む局員の一部で慣習になっている。買い取ったはがきは、金券ショップやネットオークションで転売している。
日本郵便の親会社、日本郵政は2015年に予定する株式上場に向け、コンプライアンス(法令順守)を強化。
「自爆営業」については今年度から、金券ショップの見回りなど防止策を取り入れた。だが、状況は変わっていない。
郵便局員たちを「自爆営業」に駆り立てるのは何か・・・。厳しいノルマと上司からの圧力だ。
「実績の低い者は給料泥棒だ」「営業やらんかったら、辞めてくれて構わない」。
首都圏に年賀はがきを売りに来た中部地方の男性は、来年用の販売の予約受付が始まってから毎朝、上司から発破をかけられた。
雇用契約を半年毎に更新している男性には、「売らなければクビ」と聞こえた。
数年前には上司から呼び出されて叱られ、「何としても売ります」と誓約書を書かされた経験もある。
だが、普段は配達で精一杯。毎年買う客は古参の社員が既に予約を取っている。
新規開拓で予約を取れたのは1世帯50枚だけ。月収は手取りで16万円ほどで、「自爆」の出費は苦しいが、「働き続けるには他に方法がない」。
年賀はがきの販売目標は、前年の実績を元に全国の郵便局に割り振られている。
多くの局では、局の目標枚数を社員数で割り、ノルマを設定しているとみられている。
各地の郵便局員によると今年、埼玉県のある局では配達担当の正社員、非正規社員に7千枚のノルマが課された。
奈良県のある局では正社員8千枚、非正規6千枚だった。西日本地区のある局の班長は1万3,500枚だった。
暑中見舞いはがき(かもめーる)やギフト商品の物販にも、ノルマが設定されているという。
千葉県の非正規社員の40代男性は、毎年1千枚ほどの年賀はがきを自費で買い取る。
「普段の営業で捌けるのはせいぜい300枚。ノルマの1/10にもならない」。
大方は親戚に贈り、残りは使い道がないので自宅に放置している。
(つづき)
上司に見つかりたくないので、金券ショップには持ち込まない。
「毎冬、定期的に減給されているようなもの」と憤る。
福岡県の正社員だった男性(52)はノルマ達成を求められ、鬱病になった。
1万枚のノルマに対し、自力で売れるのは4千枚。「心も体もボロボロ」。
昨春、約30年勤めた郵便局を辞めた。
人事評価への影響をちらつかされた人もいる。
福岡県の50代男性の非正規社員は昨年、上司から「(ノルマを)達成しないと査定に影響する」と言われた。
非正規で働いていた同県の女性(39)は、かもめーるの目標未達成を理由に自給を下げると言われ、退職した。
【不当な労使関係の典型】 熊沢誠・甲南大名誉教授(労使関係論)の話
ノルマの一方的な設定や強要は不当な労使関係で、郵便局の実態は典型例だ。
ノルマのための自腹は労働者にとって最も悲惨な行為。年賀はがきが1万枚という数字はあまりに酷い。
【収益、年賀はがき頼み】 販売数減少が影
「民営化に向かう過程で自爆営業が広がった」。首都圏の郵便局で20年以上働く正社員男性は話す。
年賀はがきのノルマは2000年頃まで1人1千枚ほど。未達成でも上司から叱られなかった。
郵政が民営化に向かうここ10年の間にノルマは増え、今は4千枚に。
達成への要求も厳しくなり、「自爆しないとノルマが達成できない状況だ」。
背景には、年賀はがきの儲けに頼る日本郵便の収益構造があると言われる。
年賀はがきの年間売上高は約1,500億円。
郵便事業全体の1割ほどだが、短期間で大量に捌け、収益性も高い「ドル箱」だ。
ゆうパックなど他の部門の赤字を、年賀はがきのもうけで埋めてきた。
だが、年賀はがきの販売枚数は急減。
日本郵政グループの職員で作る労働組合の一つ、「郵政産業労働者ユニオン」の日巻直映・中央執行委員長は、
「会社は販売枚数を維持したいため、過剰なノルマを課している」とみる。
日本郵便広報室は自爆営業の存在は認めた上で、「販売目標は適切で、達成できない場合の罰則もない」と説明する。
自爆営業については今年度から対策に乗り出したばかり。
朝日新聞が入手した内部資料によると、「不適正営業の撲滅」などとして、金券ショップの定期的な見回りを実施。
転売されたはがきのくじ番号を調べ、転売職員を特定する。
また、厳しいノルマがあった場合の「内部通報窓口」の周知を徹底させるという。実効性は未知数だ。
親会社の日本郵政首脳は朝日新聞の取材に、
「金券ショップに出回るということは、販売のどこかに無理があった。対策を打ったつもりだが残念だ」
と答え、追加対策の必要性を示した。
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〒□□□-□□□□:2013/11/19(火) 00:44:05.46 ID:J8Y0YeRp
※日本郵政の民営化
日本郵政は政治の波にもまれ、民営化と揺り戻しを繰り返してきた。
2005年、小泉政権のもとで郵政民営化法が成立。
日本郵政公社を、持ち株会社の「日本郵政」と傘下の4法人に分け、
うち「ゆうちょ銀行」と「かんぽ生命」の株を17年までに全て売って完全民営化する方針を決めた。
これに対し、2009(平成21)年に発足した民主党政権は株の売却を凍結。
2012(平成24)年には民営化見直し法が成立し、金融2社の全株売却は努力目標とした。
だが政権交代後の今年6月に就任した西村泰三・日本郵政社長は、2015年春の株式上場を目指す意向を示している。
子会社の日本郵便は社員数20万9千人、郵便局は約2万4千カ所。