〔大前研一「ニュースの視点」〕
KON307 「郵政正社員化」の愚〜さもしい選挙対策のつけは国民に
http://www.ohmae.biz/koblog/viewpoint/1499.php 郵政グループでは「パート」「契約社員」「正社員」という3つの
雇用形態の人が働いています。この中で、契約社員の人は正社員に
なることを目指して、一生懸命働いて努力しています。
しかし一方で、正社員の人には上を目指すような努力の姿勢がほと
んど見られないと私は思います。パートや契約社員を使って仕事を
することに慣れきっていて、さらには生涯身分が保証される立場で
すから、一生懸命努力しようという気持ちになれないのでしょう。
これまでの郵政グループは、「正社員になりたい」という
モチベーションを持って一生懸命働くパートや契約社員の人たちが
沢山いるお陰で、コストを低く抑えて、事業を展開することができて
いました。
「全員が正社員になれます」と言われたら、おそらく正社員になった
途端、一生懸命働かない状態になると私は思います。極端な言い方
をすれば、郵政グループの中において正社員とは「パートや派遣を
“あごで使って”自らは働かない人」という立場だからです。
その上、生涯身分が保証されるわけですから、誰もが正社員になりたい
と思うのです。
今回の「正社員化」の問題を考える際には、2000億円かかると言わ
れているコスト面だけではなく、「正社員になると働かなくなる」と
いう点を見落としてはいけないと私は思います。
10万人が正社員化して、お互いが他人をあごで使うことばかりを
考えていたら、恐ろしい事態を招いてしまうでしょう。