讀賣新聞九州発トップニュース 2003年11月21日
大量年賀はがきが金券ショップに〜郵政職員がノルマ消化?
今月10日に発売されたばかりの来年のお年玉付き年賀はがきが、各地の金券ショップで大量に販売されている。
読売新聞が20日、九州、山口の主な金券ショップに問い合わせたところ、10店で計約5万5000枚を確認。
1万8000枚を店頭に置く福岡市の店もあった。郵政公社のネームの入った段ボール(4000枚入り)ごと
発売日前に持ち込まれたケースもあり、売り主の大半は郵便局の職員とみられる。販売ノルマを達成するためとされ、
日本郵政公社九州支社では「事業者として嘆かわしい」として調査する方針を明らかにした。
福岡市博多区の「チケットキング博多駅前店」は、20日現在、1枚50円の年賀はがき1万8000枚を抱えている。
包装紙を開封していない200枚入りの束で大量に持ち込まれた場合、「44、45円」で買い取り、48円で販売している。
熊谷明英社長(53)は「売れれば新たに持ち込まれる状況で、すでに2万枚が売れた」と話している。また、熊本市の
金券ショップは「段ボール4箱を仕入れ、約1万6000枚を販売中」と回答。北九州市の店は「午前中まで7000枚
あったが、企業の買い手がついた」。宮崎市の店は「5000枚」と答え、長崎や佐賀、大分、下関市の店は500〜
1000枚と回答した。関係者の1人は「年賀はがきは例年持ち込まれているが、今年は極端に多くて早い。発売日前に、
公社の段ボールごと持ち込んだ人もおり、郵便局の職員としか思えない」と話す。
福岡市内の普通局に勤務する職員は「今年の販売ノルマは1人1万枚。金券ショップで換金して達成したように見せかける
ことが相次いでいる」と証言。別の職員は「ノルマは以前からあるが、今春の公社発足で厳しくなり、今年はノルマの
20%分の代金を発売日当日に入金するよう指示された。人事評価に影響するといううわさで、職員が金券ショップに
駆け込んでいるのでは」と話している。
日本郵政公社によると、来年の年賀はがきの発行は、全国で44億4780万枚。前年比14%増で、過去最高の
発売数を見込んでいる。同公社九州支社の小畑憲一広報室長は「ノルマは単なる目標で強制はしていない。
金券ショップでの換金は職員の姿勢として望ましくなく、ただちに事実関係を確認して指導したい」としている。
◆不況の中での発売枚数増に不満の職員
「営業する気がないのか」と怒る日本郵政公社の幹部に対し、多くの職員は不況期の中での「前年比14%増」
という経営方針と、それに伴う厳しいノルマに不満を漏らす。識者からは「労使ともこの体たらくなら、早期に
民営化すべき」と厳しい声が上がっている。「地元では売りにくいのか、他県からこっそりやってくる客が多い」。
福岡市の金券ショップの店主は、そう打ち明ける。10万円以上の取引については身分証明書の提示が必要で、
免許証などで確認している。11月10日の発売前、中年男性が「郵政公社」のネームが入った段ボール
(4000枚入り)を持ち込んだ。「偽物ではないか」と店主が尋ねたところ、男性は恥ずかしそうに「公社職員」
と明かしたという。年賀はがきの売り上げはこの数年、下降線をたどっているが、今年は14%の増刷を決めた。
これに強く不満を示すのが職員側だ。福岡市内の普通局に勤務する男性職員は「18年間勤務しているが、
こんなにプレッシャーを感じるのは初めて」と話す。「幹部は売れ、売れの大号令。早く金券ショップに
出回るのは、大量に流通した後では買い取り単価が下がると考えているから。営業より持ち込み競争の方が
忙しいかも」と話した。同公社九州支社の関係者によると、はがきの販売ノルマは業務に関係なく、全職員に
課されている。局の規模や前年実績などで異なるが、一般職員で5000〜1万枚。管理職は「それ以上か、
倍ぐらい」という。別の男性職員は公社への移行に伴い、職員の人事考査が厳格化された影響をあげる。
「将来の人事に響くなら、自腹を切ってもノルマを果たそうという職員がほとんど。金券ショップで売れば
1枚当たり数円の損で済むが、売れ残りとなれば、もっと懐を痛めることになる」と力無く話した。
松原聡・東洋大教授(経済政策)の話「多くの国家公務員を抱えながら、公社化され採算性を度外視できなく
なったひずみが、今回の事態に表れている。やはり民営化して、収入源の多様化を進めるべきだ」