ハルヒ「ちょっと!かがみ!」☆

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1抜いたら負けかなと思っている
「このスレは涼宮ハルヒの憂鬱とらき☆すたのクロスオーバーSSスレです。」

・初代スレはかが×キョン、今はカップリングは問わずに募集してますよ。 古泉
・これ以上作品をクロスさせるのはよしたほうがいいかなぁ〜。 つかさ
・荒らしには反応しないほうがいい……反応したら情報連結を解除する。 長門
・次スレを立てるときは避難所で確認しなさいよ!立てたら避難所で報告すること! かがみ
・ジャンルは問わないわ! この中にギャグ、シリアス、ラブストーリーが書ける人がいたらあたしのとこまで来なさい!ガチホモ、エッチなネタ、鬱ネタ、いじめ等、特殊なネタの場合は必ず注意書きを書きなさいよ!以上! ハルヒ
・作品は完成したらどんどん投下してくれ。、作品投稿がかぶらないように気をつけてな。あと、長編は書き溜めしてまとめて投下っていうのがいいな。長編投下以外ではコテトリをつけないでくれ。キョン
・作品投下中は静かに支援してあげてください・・・ みなみ
・わからへんことがあったら気軽にみんなに聞いてくれや〜 ななこ
・まぁまぁみんな気軽に投下してくれたまえ〜。まったりといこうヨ、ageないとおちちゃう時もあるから気をつけてネ、あたしもチェックしにくるヨ。 こなた

こちらがまとめです。
http://www36.atwiki.jp/kagakyon/
みゆき

こっ、こっちが避難所でしゅっ!
http://yy65.60.kg/harulaki/
みくる

これが携帯用だぜ!
http://same.u.la/test/p.so/yy55.60.kg/haruhitorakisuta/
谷口

・読みたくない文章があっても文句いっちゃだめにょろ〜 鶴屋さん
・AAを大量に使うのはやめてください・・・あきらさまが怒ってしまいますから…… 白石
・最後に、テンプレは常に最新版を確認して貼ってね☆ 間違えたら……わかってるわよね? あきら

2抜いたら負けかなと思っている:2008/09/07(日) 07:31:19 ID:azq7IMZnO
lesson1 >>1に敬意をはらえ
3抜いたら負けかなと思っている:2008/09/07(日) 07:37:37 ID:rssmHqbp0
さぁ始まるザマスよ
4抜いたら負けかなと思っている:2008/09/07(日) 07:51:24 ID:FFF4Ps0r0
いくでガンス
5抜いたら負けかなと思っている:2008/09/07(日) 08:18:36 ID:HxKSUCFAO
まともに始めます
6抜いたら負けかなと思っている:2008/09/07(日) 10:16:32 ID:/04BbAtB0
       ,r= = ==、、
     ,. ─|`ヽ─<
    ,≠ -:/|:!::ト、- ヽヽ
 ̄ ̄ ̄|||━\| ━\| ト、
.|:    |||" 'ー'ー' "|::|')|`
.|_,____,__|||:| `エエ´/:/: |
.| T i T |||:|<ニ /:ハ : l
」┼:!:┼┘ゝ  .|:イ |:::|
7抜いたら負けかなと思っている:2008/09/07(日) 12:47:19 ID:ARyXSsHF0
こなため・・・やってくれる


>>1
1000までに立たないかと思った

前スレ>>993がうれしいやら恥ずかしいやら
8抜いたら負けかなと思っている:2008/09/07(日) 16:40:42 ID:ZI4t7UuP0
ひよりんの出番が増えますように
9抜いたら負けかなと思っている:2008/09/07(日) 17:30:37 ID:PyR3Gl820
このスレが盛り上がりますように
10抜いたら負けかなと思っている:2008/09/07(日) 19:32:34 ID:1waVikrX0 BE:671271146-DIA(126072)
   i          ';;.       ヽ ヾ \   \,,/,,...-ー'''" ̄ ̄7'''''' ー-..,`'' .,      `' .
   l          ';;,   l   i;, ヾ,, \  .」~   i  l    l′      `丶_ \、     `\
.    l     ';;      ';;,   ト   l;;;, . ヾ;;;,,丶{ l     '、  !   {         ノ .\, `ヽ,;/     
.   . l   i  ';;,     ';;;   lヽ,-ート、;  ヾ;;;;,,ハ     ,,;;;ゞ;;;;;/;;;;;;i;;;;;;;;;;;;;,,,, ./'´    \ 〉     
    l   lヽ  ':;;,     ';;:    l'^ヽ ト ':,   ';;;i' ::ゝ--ーー`''''>'<;;、;;;;;i;;;;;;;;;;;;;;;';;,,,,i,,,      ヾ     
    |i_.斗-ゝ  '::,    ';:   l  丶.i丶':.  y :::/      //  ` ゙`ヾ,.≠ッ:;;;;;;ii;;;;;;;;;,     ,!      
  /l '、 .l   \ ':,    :. λ l , ,,.=キ‐:.、  .l,::,i゙       //        ̄"メー-z三=ニ-'    
. γ l  ゙、l    .\       : i !|'ィ仟' 、゙ヽ,ヽ X   ,.'"7;'           ノ',,,_ ≧;;;;;;;; ,
   ,l  ゙.i  ..,,   \\   ; .i  'イ#%  .;;, .X、 ,| ,/  ,i,i          /'  ゙ヽ   >./     
', .  l . ィ=ミニェ;;,,ヽ  .\ヽ ;′ !{$$&ョf .l .|゙、.l.      ii′          /    ヽ  Zy      / 
  .  レ゙;:'俐;.   }、ヾ    \、i    i#l;:!梦:#'.i l.;;トヽ.     l′        /      i   ,′.    ,'  ,
\. ,.イ,".{#$;i、,,.イ$;      ヾ   .m;,:,;;#'/ .||.;;l. `   .,_ .l        ./ ,..-ー   i ,′   ./ ./ / 
  `ヾλ.i$叡%:$i          ゙"'''''"  !!;;l   _,,,,,_`'ト.        ./  ォ==ミ;,   i.,′  ./ /./
ヽ   ヾ.弋$夛ミ;匐      丶        'l.;;;l.彡ニニ三ミ、     ./   /.,;iil||戸&. ,″  ./ .' /
  \  `'ヾ゙fl|a´    ,..,,__,,.ィ       .ノ ;リ'´ .    `'        . /,;;|||||'  .》i ,′,'  ./, r':;;;'
   ヽ   `゙' 、     /`'    ゙i     ./. l i゙               ,'.,;l|!|||||;,_,;|}%'. ,' ../.' ,';;;;' 
    ゙'、     `'' .,i,       ノ  ,//   ll,        ,.       ,',;|':::{|||||||||'l | ,'  // /ヾ; //
     `<ニ二ニ=-,,_  `'ヽ,-ー''_,,.. <´ ./ィ  | ゝ,             ゙!l|i:::::"゙':|!'ソ'´   // /'. I' / /
       λ      `''ミヾ、.`~、   ', ,!' .|  ll   \    √゙''':、   . ゙'!!|l!'゙´/ /   // /.ノ ノ/ 
゙ヽ、   ,,;;:' /       ヽ.\`ヽ .ハ. l! .ハ i l!  . l `' .  ゝ.,__,.´       ./ /   // ./'´ /.'゙  
. / .` '""  i'         i  ヽ、ヽ_,,.ノ .l, ' /ハ.,'.| |i   .l   l` ...,,___,,,,,,,... '/ /   ''./j ./┬''"
ノ         |        |   ヘ\゙,  . l. .,'.,'y,'.i.i.ヘ  .l  .|  .    イ ヽ    / /    ,/,:' / ./ヽ',
   ,,     λ      i    |  ヽ . l ,','.,','.λi ,〉、  l  .|     イ l      ././   ,/ ,:' /,.  , ':、',
  ,;;;;:   ,;;;;;:l      /   ./ヽ  ヽ .V,'.,',' ,' !l'   'ト、 l ,ハ     | `'ー---ィ'   ./ //' ,. .'  jノ  ,ノ
  ,;;:'''    ':;;;;ヘ     ノ   ノヾ.、、ヽ、':,.V.,/ ハ .'i   ,l .`.i .iヾヽ    |   _,/.,′ ./  //`ー`、,,ィ'´ヽ/'|
イ'  ,.-ー、 ,''"`ー-"'ヽ;;:,彳八 ヾヾ'.、ミレ'// 'l |! ,/ |  Yヾヾ   .| γ .ヾ / ,.ノ"__,,,.....,,,_ト-.´l l |
..'       '       !  '` `'  ``  ' ´  !  ´. !   `.```' . . ! '`  ! / ヾ  
11抜いたら負けかなと思っている:2008/09/07(日) 20:11:44 ID:ARyXSsHF0
さて、そろそろ昨日の続き行かせてもらうか

初め書いたときはキョン子とかは無いころだったが
かわいかったので外見的にはキョン子でいいとか思ってる
12抜いたら負けかなと思っている:2008/09/07(日) 20:12:38 ID:ARyXSsHF0
今日の体育はバレーボールだった。ちなみに男子はサッカーらしい、外で走り回るなんてご苦労なことだ。
長門には体操のときに隙を見て、どうにかこの状況を解決する方法はないものかと聞いてみたのだが、

「不明」

と実に簡潔なお言葉を頂いた。分かりやすいのはいいことだ。
さてどうしたもんか。お前のパトロンは何て言ってるんだ?

「特に何も。我々の役割は観測。でも……」

「ん?」

「私という個体はあなたには元に戻ってほしいと感じている」

嬉しいことを言ってくれるじゃないか。こりゃ長門の期待に応えるためにも頑張らにゃならんな。

体育の授業自体は、俺が女子の体操服を着ることにより羞恥心に打ち震えることとなった以外は
何の事もなく、いつも通りハルヒ、長門、こなたの3名が大活躍していた。
というか女子の体操服ってなんでこうも表面積が少ないんだ? 目にはいいが心臓には悪いぞ。
試合はクラスをそれぞれ3つに分けたトーナメント形式で行われ、
ハルヒチームVS長門チームで行われた決勝戦はそりゃあ壮絶なものだった。
ハルヒの殺人スパイクを長門がレシーブし、一旦他の生徒につないでから長門がスパイクする。
ハルヒの方もそれと同じことを繰り返す。それも延々とだ。
いつまでも決着がつかないもんだから流石に飽きが来た頃に、体力的な問題かハルヒが膝を屈することとなった。
まぁ長門が相手なら仕方がないだろう。
ああ、ちなみにこなたは順調に勝ち残っていたが準決勝でハルヒと当たってあえなく敗退した。

「ちょっとキョンキョン! 私の扱いひどくない!?」

俺はと言えばしょっぱなから長門の所と当たって早々に退場だ。
平平凡凡たる一般人の俺が万能ヒューマノイドインターフェースに勝てようはずがないのは自明だろう。
しかもこの男子のものよりも数段表面積の少ない、脚部を存分に曝け出した体操服のせいで
動きがぎこちなくなってしまったから尚更だ。

「無視!?」
13抜いたら負けかなと思っている:2008/09/07(日) 20:15:00 ID:ARyXSsHF0
体育は終了し、恥辱にまみれた着替えを再びなんとかやり過ごし、3時間目が始まる。
身体能力の低下に反比例して頭の出来が良くなっていた、なんてことはなく、
俺は鬱々とした気分の中睡魔と壮絶な格闘戦を繰り広げていた。
始めこそどうにかその攻勢を防いでいたのだが
執拗なボディブローが効いてきたか10分も経たないうちに俺の意識は刈り取られることとなった。



昼休み。
目が覚めると既に4時間目まで終了しており、クラスメイト達は昼飯を食べ始めていた。
いくらなんでも寝すぎだろう俺よ。

「キョン、起きた?」

「やっと起きやがったか。ホレ、さっさと食おうぜ」

眼前には弁当を広げ、待ちくたびれた様子の谷口といつも通りの国木田がいた。
わざわざ俺が起きるのを待っていてくれたらしい。先に食べるか、または俺を叩き起こすかすればいいのに。

「別に待っちゃいねーよ。そろそろ放っといて食べるところだったぜ」

そうかい。
14抜いたら負けかなと思っている:2008/09/07(日) 20:18:00 ID:ARyXSsHF0
「ああそうだ。大体俺たちがお前を待つ理由なんてこれっぽっちもないからな」

「また谷口そんなこと言っちゃって。僕が『先に食べよう』って言ったのに『起きるまで待つ』なんて言ったのは誰なのさ」

「あっ、てめ国木田、言うんじゃねえよ!」

やれやれ。
どうやら谷口や国木田との関係はこんなところも変わってはいないらしい。だが今はそれがありがたい。
今更女子と一緒に食事なんてことにされてもどうしていいか分からんからな。
昼休みは古泉の奴に話を聞こうと思っていたが、飯を食ってからでも遅くはないだろう。
これが朝比奈さんや長門なら昼飯なんぞすっぽかしすところだが、どうせ古泉だ。構わん。
それに、待っててくれたこいつらにも悪いしな。

「谷口、国木田」

「ん、何だ?」

「何?」

「ありがとな」

「なっ!? ……へっ、なんのことだか。俺にはさっぱりわっかんねえな」

「どういたしまして」

素直な方が国木田で、そうでない方が谷口だ。

……思えばなんでこんなことを言っちまったんだろうな。
きっとまだ頭が覚醒しきってなかったからだろう。そうに違いない。
15抜いたら負けかなと思っている:2008/09/07(日) 20:21:00 ID:ARyXSsHF0
飯を食べ終え、1年9組へと向かう。
後回しにしたとはいえ一応古泉と会っておく必要があるだろう。
9組の中を覗き見ると、すぐに古泉は見つかった。

「古泉」

「……ああ、あなたですか。やっといらっしゃいましたか、お待ちしてました」

古泉は一瞬訝しがるような眼をしたが、すぐに俺のよく知る、少しムカつく笑みをその顔に張り付けた。
何だ、今の間は。

「それは……、その前にここではなんですからまずは移動しましょう。よろしいですか?」

そういって外を指差す古泉。こんな適当な動作でも決まってるんだから憎たらしい。
ともかく移動には俺も否やはない。
ここでは大事なことは話せないし、それに先ほどから女子の視線が痛い。
勿論長門の双眸から放たれる冷凍光線ほどではなかったが。

俺たちが移動したのは食堂の屋外テーブル。以前古泉がとんちんかんな正体を明かした場所だ。
古泉が自販機で買ってきた紙コップのコーヒーを受け取り2人とも席に着く。

「それで、色々と聞きたいことはあるがまずは忘れないうちに聞いておこう。さっき会った時の間は何だ?」

「最初にそれですか。まぁいいでしょう」

古泉は居住まいを正し、

「……正直に言いますと」

正直に言うと?
16抜いたら負けかなと思っている:2008/09/07(日) 20:24:01 ID:ARyXSsHF0
「思わず見とれてしまったのですよ。体育のときに遠目にはお見受けしましたが、まさかこれほどとは」

「……古泉、ちょっと面貸せ。特別に一発でチャラにしてやる」

俺は割と本気で言ったつもりだったが、古泉はただ笑っているだけだった。忌々しい。
それにしても体育のときに見ていただと?
つまり何か、俺のあの公然周知プレーとでもいう醜態を、よりにもよってこいつに見られていたということか?
古泉はくくっと喉を鳴らし、

「ええ、しっかり拝見させていただきましたよ」

なんてこった。もう死にたくなってきた。いやいっそ誰か殺してくれ。

「まぁこんなことを言っていても仕方がないのでそろそろ本題に移るとしましょうか」

ああそうしてくれ。そしてできれば体育のときのことはすっぱり忘れてくれ。

「フフフ。さて、どうしましょうね。……冗談ですよ、そう怖い顔しないでください。
 美しいお顔が台無しですよ。もっとも、僕としてはこれはこれでアリですがね」

半笑いでそんなことをのたまう古泉。
気持ちの悪いこと言ってないでとっとと話しやがれ。……殴るぞ。
古泉はニヤけた面のまま手のひらを上に向け「フッ」と肩をすくめ、

「今回の件ですがまず、長門さんから伺っていると思いますが現時点での原因は不明です。
 ですので僕から言えることはあまりないのですが……いくつか仮説を立ててみました」

と前置きした。
言えることがないならこのまま切り上げて教室へ帰ってしまってもよかったのだが、
たまには気まぐれを起こして仮説とやらを聴いてやるのもいいだろう。
先を促す。
17抜いたら負けかなと思っている:2008/09/07(日) 20:26:59 ID:ARyXSsHF0
「まず第一に、涼宮さんのあなたへの感情が僕たちの思っていたものではなかった場合です。
 涼宮さんがあなたに求めるのは男女間の関係ではなく、どんなことでも話せる、聞いてくれる親友だった。
 今までは理性によって抑えられていたのが何らかの拍子に表面化したというケースです。
 もっとも、僕はこの線は薄いと考えているんですがね」

「その親友ってのが女である必要性は何だ」

「同姓間でしか話せないことというのはあるものですよ。
 例えば月経に関することなどは、そうそう男性に話せることではないでしょうし、共感などは決して得られませんからね」

「お前らの考えていた、ハルヒの俺に対する感情ってのは?
 男女間の、だと? まさか恋愛感情だなんて考えてたわけじゃないだろうな。
 そんなわけがないだろう。あれは恋だの愛だのは精神病の一種と言い切る女だぞ」

「……普段ならばあなたの鈍感さを嘆くところなのですが、今回ばかりは一概には否定できませんね」

今回だけでなく普段から否定する要素はこれっぽっちもないだろう。
大体何だってお前らは俺を鈍感などと言うんだ。

「……まあ、いいでしょう。次に第二にですが、泉さんの影響である場合です」

「こなた? 何でここであいつがでてくるんだ?」

「正直僕はあまり存じ上げないのですが彼女たち、いわゆるオタクと呼ばれる方々の間では
 『女体化』、つまり本来男性であるキャラクターを女性に性転換させて楽しむ
 というジャンルがあるそうでして……いやはや変わったものですね」

さも困っていると言わんばかりに頭をかく素振りをする古泉。
緩んだ口元のせいで楽しんでいるようにしか見えん。
18抜いたら負けかなと思っている:2008/09/07(日) 20:30:05 ID:ARyXSsHF0
「泉さんがそのジャンルのことを涼宮さんに話したのではないかと。
 それで興味を持った涼宮さんがあなたを女性に変えてしまった、ということです。勿論、あくまで可能性の話ですが」

俺である必要がないだろう。

「いえ、むしろあなただからこそでしょう。
 普段どおりのあなたもいいですが、もしあなたが女性だった場合
 普段やっていることがどのように変化するか。それに興味を持ったのではないでしょうか。
 男もいいけど女もね、というわけです。
 確率として最も高いのはこのケースだと思います。そしてこの場合は涼宮さんが満足すれば元に戻れると思われます」

古泉の説明では結局何故俺なのかが説明できてない気がするのだが……。
というかなんだその正月のカレーみたいな扱いは。

「そして第三に、これは僕自身突拍子もなさ過ぎるとは思うのですが、あなたが元々女性であった場合です」

「はぁ?」

何を言っとるんだこいつは。
馬鹿馬鹿しすぎてコメントすら浮かばんぞ。

「いえ、あくまで可能性の問題ですよ。今まであなたは自身が男性であると思っていた、無論我々もそうです。
 しかし実はあなたは本来女性であり、涼宮さんによって男性の体と記憶を与えられていたとしたら?
 以前涼宮さんの力が弱まってきていると言ったでしょう? それによってあなたが男であるという世界を維持できなくなり
 涼宮さんは望んでいないのにも拘らず、あなたがあるべき姿へ戻ってしまった、とすればどうでしょう」

……。

「当然ながらこれは僕の想像に過ぎません。ですので先ほども言ったとおりあくまで可能性のひとつとして考えて下さい
 今挙げた他にも様々なパターンがあり得ますが……」

古泉はすっかり冷たくなっているであろうコーヒーの入ったコップを呷って立ち上がり、

「そろそろ時間ですね、僕はこれで失礼します。また放課後にお会いしましょう」


19抜いたら負けかなと思っている:2008/09/07(日) 20:33:00 ID:ARyXSsHF0
古泉のいなくなった後、教室への帰りしなに考えていた。
結局あの野郎は何が言いたかったんだ?
いや分かってる、あいつは単に妄想夢想を蔓延らせただけで真剣に考える必要はないんだ。
俺が元々女? ……ハッ、んなアホな。
そんなことがあってたまるか。俺は間違いなく男だ。
当たり前だ、俺が男じゃなかったら朝比奈さんとのめくるめく……いやいやそうじゃなくてだな。
えーっとつまりだ、俺は俺であって俺でしかない。あれ俺何言ってんだ?
とにかくだ、ハルヒを満足させればいいんだろう? 何をすればいいのかはさっぱり分からんが。

「ちょっとそこのあなた! 待ちなさい!」

唐突に呼び止められたのは思考の混乱していた俺にとってよかったのかどうなのか。
前方に3人組の女生徒たちが横に並んで仁王立ちしていた。
中央の女子が言う。

「そこのあなた、ちょっと止まりなさい!」

既に俺は立ち止まっているのだがそういう突っ込みは無しなんだろうかね。

「うっ、うるさいわね! 大事なことだから2回言ったのよ」

そうなのか。

「そうよ」

で、こいつらは一体何なんだ?
見たところ普通の北高生のようで、顔をみてみても少なくとも俺の記憶にはない。
3人揃って目に敵意のようなものを含んでるから友好的な連中じゃなさそうだ。
20抜いたら負けかなと思っている:2008/09/07(日) 20:38:18 ID:ARyXSsHF0
「それで、何のようだ」

まあ聞いてみるのが早いか。

「あなた、古泉くんと何話してたのよ」

先ほどと同じく中央の女子が返事をしてきた。どうやらこいつがリーダー格らしい。
古泉だと?

「そうよ! さっき話してたじゃない」

「話してたのは確かだがお前たちに言うようなことじゃないぞ。というか何でそんなことを聞くんだ?」

真ん中の女生徒は「はぁ」とため息をついて、

「だから何度も言ってるじゃない、古泉くんと話すときは私こと古泉くんファン倶楽部会長に断らなきゃいけないって!」

『古泉くんファン倶楽部』だと? あの野郎ファン倶楽部なんてモン持ってやがったのか。忌々しい。
しかし何度も、ってのはどういうことだ? お前たちとは初対面だったと思うんだが。

「なっ! ……毎回毎回『そんな関係じゃない』だとかなんとか言って要請に応じないばかりか今度は忘れたフリをしようってのね!? いい度胸じゃないの!」

フリってわけじゃないんだが……ああそうか、谷口や国木田との関係が変わってなかったから気付かなかったが
男から女になって、交友関係が多少変わっている可能性もあったのか。
しかも女がわざわざ男の教室まで会いに行って、あまつさえあんなところで内緒話してりゃ疑いもするかも知れん。
吐き気がするぜ。
21抜いたら負けかなと思っている:2008/09/07(日) 20:39:21 ID:ARyXSsHF0
まあとりあえずここは誤魔化しておくか。

「冗談だ」

「冗談? 冗談で済んだら警察は要らないわ、あなたひょっとしてケンカ売ってるの!?」

それにしてもよく叫ぶ奴だ。なんとなくハルヒに似てなくもない気がせんでもない。

「そう怒るな。それと俺は古泉とはそういう関係じゃあないし、そんな気もない」

「またそれ!? あぁーもーっ! いい加減にしなさいよ!」

いい加減に、と言われても俺は初めて言うのだが。

「とにかく! 次からは絶対絶対ぜーったいちゃんというのよ! 言わなかったらひどいんだからね! 今度は本当だからね!」

そういって「フンッ」、と肩をならし興奮冷めやらぬまま去っていき、両隣の連中も会長とやらの後ろに付き従っていった。
後ろの2人はまったく喋らなかったが、あいつら何のために居たんだろうな。
……『今度は本当』か、今までにもアレを何回も言っていたであろう感じがしたのは気のせいか?

22抜いたら負けかなと思っている:2008/09/07(日) 20:42:02 ID:ARyXSsHF0
教室に戻り、どこに行ってたのかと聞いてくるハルヒ、かがみをあしらっている間に5時間目が始まった。
そして俺は眠りについた。
よく眠っているようだが気にせんでくれ。こんな体になっちまったから肉体にも精神にも疲労がたまってるんだ。



さて放課後だ。
ハルヒは既に教室を飛び出しており、俺も谷口に国木田、日下部、峰岸に別れを告げかがみと共に部室へ向かう。

「ここにしか出番がないなんて……、やっぱり私らここでも背景かよぅ」

「まあまあ、出れたんだからよしとしようよ」

日下部が何か言っていたが……、どういう意味だったんだろうな。

「それでこなたったら――。あいつはホントにまったく――」

かがみと話しながら部室へ向かう。
内容はとりとめもないもので、取り立てて説明するほどでもない。
せいぜい普段よりこなたに対しての愚痴が多かったくらいのものだ。
23抜いたら負けかなと思っている:2008/09/07(日) 20:45:02 ID:ARyXSsHF0
部室に到着し扉をノックする。
さあ朝比奈さんの愛くるしいお声といつものメイド装備で色々ありすぎて荒んでしまった俺の心を慰めようじゃないか。

「どうぞ」

しかしながら中から聞こえてきた声は、別段聞きたくもない上癪に障る古泉ボイスだった。
朝比奈さんはまだ来てないらしい。残念なことだ。
扉を開け、先にかがみを入らせてから俺も中に入る。

「よう」

中にいたのは古泉、長門、高良、それとつかさにこなた。
朝比奈さんがいないのはともかくハルヒの奴はどうしたんだ? あいつの方が先に出て行ったはずだが。
しかしこいつらも暇なもんだな。たまには用事があって休むなんてことがあってもいいんじゃないか?
というかなんだこの状況は。
女子が俺含め6人に対して男子が古泉1人。これじゃ古泉のハーレムみたいじゃねえか。ちきしょう、いっそのこと古泉も女になっちまえばよかったのに。いやむしろ俺と替われ。

「やー、来たねキョンキョン」

と何故かこなたが俺に抱き着いてきた。
何がしたいのかは分からんが、こなたみたいな妙ちきりんでちんちくりんな奴でも一応女の子なんだからこういうのは慎んでもらいたいものである。
24抜いたら負けかなと思っている:2008/09/07(日) 20:48:01 ID:ARyXSsHF0
「いいじゃんいいじゃん、"女の子同士"なんだから。ねーキョンキョン」

ん? 妙に意味深な言い回しだが……。
まさかこなたは知っているのか? 俺の異変を。
いや、それはないはずだ。体育の時にはそういった素振りはなかったし、第一長門もこの件に気付いてるのは古泉と朝比奈さん、後は宇宙産のヒューマノイドインターフェースたちだけと言っていた。
よってこいつは何も知らない、はずだ。
俺が思案している間にもこなたは抱きついたままであり、その上俺の胸を両掌で揉みしだいていた。
恥ずかしいしくすぐったいのでやめてもらいたいのだが。
というかせめてちゃんと中に入らせろ。

「こらこなた、キョン嫌がってるじゃないの。やめなさいよ」

丁度そこでかがみからのフォローが入った。
よし、ナイスだかがみ。

「おやおやー? かがみん嫉妬?」

「ぶっ!? そ、そそ、そんなわけないでしょうが、馬鹿なこと言うな!」

「わーい図星図星ー」

「図星じゃない!」

相変わらず仲のいいことだ。気のせいかも知れんが以前よりも更に距離が縮まっているようにも見えるな。
その後何故か遅れていたハルヒと朝比奈さんが来るまで、こなたとかがみの微笑ましいと言える口論は続いていたのだが、
その間ずっとこなたの手は俺の胸を揉み続けていた。何の羞恥プレイだよこれ?
25抜いたら負けかなと思っている ◆TnzOi/YA0I :2008/09/07(日) 20:54:28 ID:ARyXSsHF0
そろそろさるさん来そうだしここらで止めとくか
また後ほど

モブのイメージはひだまりの夏目さんです
オリキャラ嫌いな人には申し訳ない

あとこれ以降は何故かエロ一直線みたいな感じだから注意
26抜いたら負けかなと思っている:2008/09/07(日) 21:45:26 ID:ZI4t7UuP0
>嬉しいことを言ってくれるじゃないか。
くそみそを浮かべたのは俺だけでいい
27抜いたら負けかなと思っている:2008/09/07(日) 21:53:21 ID:PyR3Gl820
今回は支援できなかった…乙
今のうちにタイトル考えとけば?

>>26
…………
28抜いたら負けかなと思っている:2008/09/07(日) 22:25:58 ID:ARyXSsHF0
タイトルか・・・
書いてたときに浮かんだ「その男、女につき」でいいかなと
ま、どっちにしろまとめは俺自身がせにゃならんが

>>26
…………
そういった役目は小泉の人と七誌に任せる
29抜いたら負けかなと思っている:2008/09/07(日) 22:32:07 ID:2+gmiFkh0
30抜いたら負けかなと思っている:2008/09/07(日) 22:33:41 ID:ARyXSsHF0
>>29
証拠もってくんなwww
31抜いたら負けかなと思っている:2008/09/07(日) 22:35:23 ID:FFF4Ps0r0
>>29
なんてもの貼ってくれてんだw
32抜いたら負けかなと思っている:2008/09/07(日) 23:55:27 ID:rssmHqbp0
>>29
参考画像
33抜いたら負けかなと思っている:2008/09/07(日) 23:57:29 ID:HxKSUCFAO
>>29
やwwwめwwwれwww
34抜いたら負けかなと思っている:2008/09/08(日) 00:01:25 ID:2+gmiFkh0
何かごめん
35抜いたら負けかなと思っている:2008/09/08(日) 08:33:13 ID:HZtETFEi0
>>28
そういや芋最近見ないけどなにやってんだろうな?
36抜いたら負けかなと思っている:2008/09/08(日) 12:25:22 ID:0wzZqZmBO
公園のトイレでウホッ
37抜いたら負けかなと思っている:2008/09/08(日) 12:38:36 ID:rNdbN8GtO
vipで色々やってた
38抜いたら負けかなと思っている:2008/09/08(日) 14:19:24 ID:fQBanQ7h0
以前他所で、5つくらい掛け持ちしてるみたいなこと言ってたような


それよりも>>35のIDがTFEI
39抜いたら負けかなと思っている:2008/09/08(日) 20:15:36 ID:fQBanQ7h0
人いないねぇ

ま、とりあえず昨日の続き行きますか
さっさとしないと思わずテキストファイルごと消してしまいそうだ

あと200行ちょっとだから今回で終わると思う
40抜いたら負けかなと思っている:2008/09/08(日) 20:17:10 ID:fQBanQ7h0
>>24


「いやー遅れちゃったわ! ちょっと手間取っちゃって」

何に手間取ったのか。そんなことはまるで聞きたくもないしどうせならこのまま来ない方が平和だったんじゃないかと
ついそんなことを思ってしまうほどのご機嫌オーラを漂わせ、脇に朝比奈さんを引き連れた涼宮ハルヒがやってきた。
来なかったら来なかったで俺はこなたに胸を揉まれ続けることになり、元に戻る方法のヒントを探すことすらできないという
滑稽すぎる状況に甘んじ続けてしまうことになるのだが、この敵陣に突撃する若き日のジャン・ランヌの如きハルヒを見れば
そんなことを考えてしまうのも仕方のないことだろう。
そしてハルヒが何に手間取っていたのか、それを俺が聞かなければならないのも仕方のないことなんだろう。

「何やってたんだ?」

「新しい衣装の調達に演劇部に行ってたのよ。中々貸してくれないから苦労したわ。
 粘ったけど条件なんて付けられちゃったわ。まったくケチな連中よね」

演劇部の方々、まことにご愁傷様である。
しかし新しい衣装だと? また朝比奈さんのコスプレレパートリーが増えるのか。
俺としては非常に喜ばしいことだが、朝比奈さんが少し可哀想だな。

「何言ってんのよキョン、これはアンタの分じゃない」

「は? 俺の?」

「そ、アンタの」

えーと、ハルヒは何て言った? まずは心を落ち着かせてよく考えてみよう。
ハルヒの持っているのは何だ? コスプレ衣装だな。
それは誰が着るものだ? ハルヒによるとどうも俺らしい。
つまり何か、俺はこれからコスプレさせられるのか? ……どうやらそのようだ。

最悪だ。

「ほらキョン、脱いで脱いで!」

ちょ、ちょっと待てハルヒ、やめろ、せめて自分で……
こら何故下着まで、胸を揉むな抓むなやめっ――し、下は――く、あっ――。

41抜いたら負けかなと思っている:2008/09/08(日) 20:20:02 ID:fQBanQ7h0
……ひどい目にあった。
男としての尊厳を全て削ぎ取られた気分だ。部室で素っ裸にされようとは昨日までは考えもしなかった。
これならこなたに胸を揉まれ続けていたほうがまだマシだったかもしれん。
それにしてもハルヒの奴、まさかあいつの望んでることってこんなことじゃないだろうな。
朝比奈さんや長門にこんなところを見られて、俺は男に戻ってもちゃんと生きていけるのか自信がなくなりそうだ。
ああ、古泉はハルヒが俺に近づいてきたときにちゃんと部室の外に出て行った。
そうでなかったら今頃あいつを大阪湾に沈めに行かねばならんところだ。

「うんうん、よっく似合ってるじゃないっ!」

「何が似合ってるだ、無理やり着せやがって。しかもこれはメイド服じゃないか」

ハルヒに着せられたのは紺を主体にしたメイド服であった。
しかしながら朝比奈さんが普段部室で着ているようなものではなく、
胸のところが不必要に開き、下はミニスカートの煽情的な仕様のものだった。
いつだったかの映画のときに朝比奈さんが着ていたものを想像してくれれば近いだろう。
もういっそ朝比奈さんの着ていたような、ピンク色のもののほうが現実味がなくてまだマシかも知れん。

しかしこれならわざわざ演劇部まで行かなくてもよかったんじゃないのか。

「だってあれはみくるちゃんに合うサイズだもん、アンタが着たらピッチピチよ?
 スカートの中が見えちゃうかも知れないわ。あ、それともその方がよかった?」
42抜いたら負けかなと思っている:2008/09/08(日) 20:23:01 ID:fQBanQ7h0
そんなわけないだろう。人を露出狂みたいに言うんじゃない。
しかしだからといって代わりがこれじゃあんまりな気がするんだがな。

「いえ、とてもよくお似合いですよ」

古泉、お前は黙ってろ、口を開くな、目を開くな、いつ戻ってきやがった、そのまま消えちまえばよかったのに。

「わぁ、キョンくんとても似合ってます。かわいいですよ」

ありがとうございます朝比奈さん。でも俺みたいなのなんかよりもあなたの方が1無量大数倍はかわいいですよ。

「うーむ、これはこれで中々……、イイネ!」

こなた、そうまじまじと観察するんじゃない、恥ずかしいから。

「えっと、よく似合ってらっしゃいますよ」

高良、精一杯のフォローありがとよ。

「キョンちゃんかわいいねー」

つかさは無邪気だな。そこがいいところなんだが。

「ま、負けた……」

かがみ、何にどう負けたんだ?

「…………」

長門、何かコメントしてくれ。それと俺の胸の部分をじっと見つめるのはやめてくれ。

「……ずるい」

コメントしろとは言ったが何がずるいってんだ何が。
43抜いたら負けかなと思っている:2008/09/08(日) 20:26:04 ID:fQBanQ7h0
こうしてその後は俺の品評会らしいものになったのだった。また日本が銃社会でないことを感謝する日が来るなんてな。
今目の前にあったら何を差し置いても自分の頭を打ち抜いてしまいそうだ。

「あ、そうそうキョン。アンタその格好で演劇部の方に顔出しなさい」

「はぁ!?」

思わず大きな声が出てしまった。
何ゆえ俺がそんなことをせねばならんのだ。これ以上の恥を重ねろと言うのか?

「演劇部が出してきた条件なのよ、その服を着たアンタをこっちに来させろって。なんか参考にするんだって」

ああ演劇部の部員たちよ、さっきはご愁傷様といったが前言撤回だ。お前らには同情なんぞしてやらん。

「そ、それでハルヒ、それは今じゃなきゃ駄目なのか? できれば後日にしたいんだが……」

「んー。ま、いっか。あいつら期限とかは言ってなかったしそれでいいわ」

よし、これでしばらくの間はなんとかなる。その間になんとしても元に戻らなければ。

「それとキョンはこれから部室ではいつもそれを着ること。いいわねっ?」

いやよくねえよ。
それにSOS団のメイドは朝比奈さん1人で既に間に合ってるだろうが。
44抜いたら負けかなと思っている:2008/09/08(日) 20:29:14 ID:fQBanQ7h0
「分かってないわねぇ。いいキョン?
 単に同じタイプのメイドが2人いてもつまらないわ。
 同じところに清純なメイドさんと変態なメイドさんが一緒にいるってとこがいいんじゃないの!」

お前の考えることなんかさっぱり分からん。その上話が微妙に噛み合ってねえよ。
それとその変態なメイドってのは俺のことか。

「そうよ。ノーブラノーパンでそんな格好してるんだもん」

この野郎、悪びれもしねえ。これを着せたのも下着を脱がせたのもお前だろうが。
そしてせめてパンツぐらいはかせろ。すーすーするし少し寒い。

「駄目よ。はいてないから意味があるんじゃない」

……この恨みはいつかきっちり返してやる。

「ほう、ノーブラノーパンですか……」

うるせえ変態野郎、オホーツク海でも泳いでろ。

「おっぱい! おっぱい!」

こなた、やかましいぞ。

「……おっぱい。おっぱい」

長門よ、こなたの真似なんかしちゃいけません。アホが移るぞ。

「ひどっ! キョンキョンそれはひどいよ!」


45抜いたら負けかなと思っている:2008/09/08(日) 20:32:29 ID:fQBanQ7h0
結局今日の部活はそれで終了し、帰宅することとなった。
着替えの際、他の皆は服を着ているのに俺だけ全裸と言うのはとてつもなく惨めだった。
メイド服を脱ぐ前に先にスカートの下からパンツだけでもはこうとしたが、ハルヒに止められ、
「服を全部脱ぐまでは下着は付けちゃ駄目。メイド服に着替えるときも一緒よ、先に全部脱いでから着替えなさい。
 ちなみにちゃんとしなかったらその日、帰るときだったら次の日ね、はずっと裸で過ごしてもらうからねっ!」
ということになったためだ。ハルヒめ、そんなに俺を殺したいのか。

「ふふ、あなたも災難ですね」

帰り道。俺はいつも通りハルヒたちの後ろに引っ付いて古泉と話していた。
俺はこいつと話すような気分ではなかったが、今はハルヒたちと話すのも気が向かず、仕方なくだ。

「うるせえ死なすぞ」

「おや、これは申し訳ありません。ですが僕にはどうしようもありませんからね」

抗議するとかあったろう。理由は目の毒だからとでも言えばいい。

「それを涼宮さんが聞くと?」

……くそ。
確かにハルヒは抗議なんぞ聞きやしないだろう。右から左に馬耳東風だ。
ふと、そういえば忘れていたことがあった。

「古泉、お前こなたに何か話したか?」

「何か……とは何でしょう」

「いや、妙に意味深なことを言ってたんで気になってな。
 あいつは今回の、俺が女になっちまったってのは知らないはずだよな」

「ええ、そのはずです。僕も長門さんからお聞きしただけですが。
 長門さんなら何か知っておられるんじゃないでしょうか」

「そうか。それじゃあその内長門に聞いてみるか」

その会話はそこで終了し、あとはお互い黙っていた。
長門には機会があったときにでも聞けばいいだろう。大して急ぐことでもないしな。

46抜いたら負けかなと思っている:2008/09/08(日) 20:35:11 ID:fQBanQ7h0
そして解散。家に到る。
まだ夕飯まで多少の時間があり、妹が呼びに来るまでの間俺はベッドに腰を下ろし考えていた。
果たして俺は元に戻れるのか。
ハルヒはどうして俺をこんな姿にしたのか。何を望んでいるのか。
今日1日過ごして、結局ハルヒの望みも何故こんなことになったのかも分からなかった。
分かったのは刻一刻と俺の状況が悪くなっていってることだけだ……。
女になったと思えばコスプレまでさせられ、しかも下着の着用禁止と来たもんだ。
このままじゃその内普段から下着禁止なんてことになりそうだ。
何であれ……急がないとな。

「ごっはんごはんごっはんっだよー」

どうやら飯の準備ができたらしい。いつものように自作のご飯のテーマを歌う妹の声が聞こえてきた。
さて、行くとするか。

ちょっと待てよ? そういえばすっかり忘れていたが、演劇部に行かなきゃならないんだったな。
ひょっとしてその時も下着を身に着けてはいけないのか?
まさかいくらハルヒでもそんなことは言い出さないと思うが……、もしそうなら最悪どころの話じゃない。
……最悪長門にどうにかしてもらうのは無しなんだろうか。
それにしても俺よ、いつの間にか完全にハルヒのおもちゃになってないか?

「キョンキョーン、ごはんだよー?」

部屋のドアをノックもせずに開け、妹が俺を呼ぶ。

「ああ、今行く」

やれやれ、こんな日はとっとと飯を食って寝てしまうに限る。
朝起きたら元に戻ってました、なんてことを期待しながら、な――。


47抜いたら負けかなと思っている ◆TnzOi/YA0I :2008/09/08(日) 20:39:47 ID:fQBanQ7h0
以上。
毎度ヤマもオチも意味もない、ついでに中途半端なエロ話をお送りしました。
気が向いたらまた書くかも

途中までは健全に書いていくつもりだったのに何でこうなったんだろうね
それに前回「次はみなみ書く」とか言っときながら・・・今度こそ書くよ! 多分。


そういえばらき☆すたの最新刊そろそろだな、明後日だっけ?
48抜いたら負けかなと思っている:2008/09/08(日) 22:17:34 ID:rt2yPYHC0
乙!

OVAもそろそろじゃない?
49抜いたら負けかなと思っている:2008/09/08(日) 22:38:51 ID:TPxhA1+pO
乙ー
キョンかわいいよキョン
50抜いたら負けかなと思っている:2008/09/08(日) 23:42:25 ID:32rRqliz0
>>47
乙ー
らきすたの新刊もいいがそろそろ驚愕うわなにをするやめ
51抜いたら負けかなと思っている:2008/09/09(日) 07:37:44 ID:8vsUFaYEO

(゚∀゚)o彡゚ノーパン!ノーパン!
52抜いたら負けかなと思っている:2008/09/09(日) 13:28:43 ID:DCHbPH02O
乙っぱなし!



らきすたの新刊買ってきたんだぜ!
53抜いたら負けかなと思っている:2008/09/09(日) 22:41:59 ID:UZSar+8e0
こなた「祝!『らき☆すた』6巻発売!」

キョン「何の話だ?」

こなた「さらにOVAも近日発売です!」

キョン「だから何の話だ?」

こなた「今回のOVAはなんとビックタイトル、『涼宮ハルヒの憂鬱』とのコラボが実現!」

キョン「何の話かは知らないがここは絶対違うと否定できる気がする」

こなた「ストーリーはキョンキョンが何者かの陰謀で私たちの世界に来た事が始まりであり…」

キョン「妄想を拡大させるな。というか何か今の俺の状況がそうなってるんだが…」

こなた「乞うご期待!」

キョン「…」


こなた「で、『驚愕』いつ発売するの?二期は?」

キョン「俺に聞くな」

こなた「『激動』はともかくしてまだ?」

キョン「だから俺に聞くな」


勢いで書いた。反省してる
これは俺の一つの没小ネタ
54抜いたら負けかなと思っている:2008/09/09(日) 23:05:48 ID:DCHbPH02O
流はいつまで流浪してるのだろうか…
やはりあのマルチルート書きが問題だったんかな?



それはそれとして…

みさお可愛いよみさお
55抜いたら負けかなと思っている:2008/09/09(日) 23:11:23 ID:qAT+WWPE0
原作未読の俺は全くわからん

遅レスだが
>>47
おつ

あと…
つかさ可愛いよつかさ
56抜いたら負けかなと思っている:2008/09/10(日) 00:44:43 ID:r4OWIeQg0
みゆきさん可愛いよみゆきさん





( ゚∀゚)O彡゚おっぱい!( ゚∀゚)O彡゚おっぱい!
57抜いたら負けかなと思っている:2008/09/10(日) 01:26:57 ID:Xioahff1O
みっくみくかがみん可愛いよかがみん
58抜いたら負けかなと思っている:2008/09/10(日) 19:37:49 ID:K5FWihD90
らき☆すた買えた…
59抜いたら負けかなと思っている:2008/09/10(日) 21:15:35 ID:etfTCBQ30
『病の快方』の続きを書いてるんだが行き詰ってしまった…
てなわけで誰か気分転換にお題をくれ
60抜いたら負けかなと思っている:2008/09/10(日) 21:21:09 ID:tSGLe/bp0
ラブレター
61抜いたら負けかなと思っている:2008/09/10(日) 23:11:15 ID:WU6IuTkl0

「さようなら」

 そう言ってみんな―
永久の別離、別れて、離れて

「ごめん」

 俺は言った、君にはっきりと
流れ行く長く蒼い髪に口付けをただ一度だけ与えて
そして俺以外の全ては停止した、停まって、止まった

「さようなら、ごめんなさい、もう会うこともないでしょう」

 静かにたゆたう血の流れに、俺は涙の雫を頬にため
そして最後の引き金を、天高く音響けと引くに終えた

 残ったものはなんだったろうか
消えたものはなんだったろうか
それでも変わらず流れていく
歯車の欠落など気付かない振りをして
ゆっくりずれてく時計の針に皆々気付かず指針にして

 ねぇ、指先で触れたものを
自分の目で見たものを
唯我の耳で聞いたものを
己の心の感じるままを
なにもかもを信じられたら素敵ですよね

 あぁたゆたう時の群れの中に、俺という個は存在しているのだろうか
せめて一時の欠片さえ手に入れられぬ少女が救われるようにと
たった一つの願いがそれならば、残った全てを投げ打って
投げた先に波紋が広がると徒然に眺めていた

「その最果てになにがあるの?」

 俺に聞かないでくれ

「その結果がこれなの?」

 俺を責めないでくれ

「あなたはどうするの?」

 だから

「だから?」

 …だから俺は

「あなたは?」


「だから俺はお前が嫌いなんだよ、馬鹿野郎」





    バイバイ 
62抜いたら負けかなと思っている:2008/09/11(日) 15:49:58 ID:JiIqaNiy0
誰もいないので保守
63抜いたら負けかなと思っている:2008/09/11(日) 18:22:00 ID:gmuQLUALO
保守なんてしてたまるか
64抜いたら負けかなと思っている:2008/09/11(日) 21:22:42 ID:gSQ9FPkz0
ラブレターか
きついけど頑張ってみるわ
65抜いたら負けかなと思っている:2008/09/11(日) 22:21:06 ID:DSiRoeE20
       ,r= = ==、、
     ,. ─|`ヽ─<
    ,≠ -:/|:!::ト、- ヽヽ
 ̄ ̄ ̄|||━\| ━\| ト、 『病の快方』の続きも待ってます…っと
.|:    |||" 'ー'ー' "|::|')|`
.|_,____,__|||:| `エエ´/:/: |
.| T i T |||:|<ニ /:ハ : l
」┼:!:┼┘ゝ  .|:イ |:::|
66抜いたら負けかなと思っている:2008/09/11(日) 23:52:40 ID:8q5n2pVD0
新刊でなにか進展みたいなのってあった?
67抜いたら負けかなと思っている:2008/09/12(日) 01:10:28 ID:vQLaHiLJO
ふんもっふ
68抜いたら負けかなと思っている:2008/09/12(日) 03:33:06 ID:Jz4RN5ha0
みwiki「そろそろ出番が欲しいです…」
69抜いたら負けかなと思っている:2008/09/12(日) 13:50:39 ID:LzBAh+aJO
みwiki・・・みwiki・・・みwiki・・・?
70抜いたら負けかなと思っている:2008/09/12(日) 19:16:22 ID:h0knxRyY0
>>66
ネタバレ・・・にはならないと思いたい





こなたたちが卒業したような気がしていたが別にそんなことはなかったぜ!
あきら様枠増量
白石登場(巻末に顔だけ)
ひよりん絶好調
みなみかっこいいよみなみ

ぐらい。あと幕間の挿絵でSS書けそう
ダイエット中のポニテかがみとか
71抜いたら負けかなと思っている:2008/09/12(日) 21:38:00 ID:bPjnAwH60
今日はみなみの誕生日だぜ
72抜いたら負けかなと思っている:2008/09/12(日) 22:05:41 ID:1sTkK4L30
なんと
73抜いたら負けかなと思っている:2008/09/12(日) 22:07:42 ID:LzBAh+aJO
みなみ「プレゼントは私のSSでお願いします」
74抜いたら負けかなと思っている:2008/09/12(日) 22:25:32 ID:1sTkK4L30
何とか…やるしかないか…
というわけで書きやすいお題をくれーぃ
75抜いたら負けかなと思っている:2008/09/12(日) 22:59:27 ID:BKDQPk+K0
ペット
76抜いたら負けかなと思っている:2008/09/12(日) 22:59:35 ID:h0knxRyY0
むぅ・・・こんなことならとっととみなみ書き上げとくんだった。無念だ

>>74
ピアノ披露
77抜いたら負けかなと思っている:2008/09/12(日) 23:39:28 ID:ERTk3dCV0
ラブレター、書いたにゃ書いたが短すぎる
まぁとりあえず投下しておく
78抜いたら負けかなと思っている:2008/09/12(日) 23:41:44 ID:ERTk3dCV0
「あなたは一目惚れ、と言うのを信じますか?」
 いつものように部室で古泉とオセロをやっていると古泉が呟いた

「どうだろうね。俺自身、そんな事した事ないからわからんな」
 黒色の石がが次々と白色へと変わっていく
「そうですか。泉さんはどう思います?」
 そう言って古泉は俺の隣で携帯ゲーム機を持ってゲームをしている泉に尋ねた
「ん〜、どうだろネ。ギャルゲとかならよくあるけど、実際の所は私もしたことはないからネ」
 と、ゲームをしながら適当に返事をする
 古泉、お前は質問相手を間違っている。俺や泉みたいに恋愛経験値がほぼ皆無な奴にそんなことを聞いてどうするんだ
「……それは酷くない?キョンキョンや」
「それより、何でいきなりそんなことを聞いてくるんだ?何か意図があっての質問だろう」
「ええ、実は先程ここへ来る途中一人の女性に会いまして。恋文、世間一般で言うラブレターを貰ったのですよ」
 その言葉を聞いた瞬間、泉はゲームをやめ糸目の目を開き、輝かせた
「おぉ、流石は学校随一の美少年。常にフラグ立ちまくりだネ」
「ありがとうございます。それを読んでいるとどうやら僕に一目惚れをしたらしくて」
「うんうん。それで?」
 俺自身、こんな話に興味はないのだが泉はやたらと敏感に反応している
 コイツはリアルでゲームをしている気分にでもなっているのだろうか

「どう返事をしようか、困っていた所なんです」
「そんなの付き合っちゃえばイーじゃん」
「まぁ急かすな泉。古泉はどうしたいんだ?」
「どう、と言いますと?」
「付き合いたのか付き合いたくないのか。それと、一目惚れに対して、お前はどう思っているのか」
 古泉は、勝率が0パーセントとなっているオセロに最後の一つを置き話し始めた
「僕は一目惚れというのは余り信じない方ですので。付き合いたくない、と言ったらあれなのですが……付き合う余裕が無い、と言った方が妥当でしょうか」
 確かに、古泉は世界の命運を握っている超能力者なわけだし、付き合っても長くは続かないんだろうな
「ええー、付き合っちゃえば良いのに」
 泉はあれだな。自分が人一倍恋愛に縁がないから他人の恋愛にやたら首を突っ込むタイプなんだな
「失礼だネ。私だって人並みに恋愛してるヨ」
 ほほう。誰にだ?
「そんなの言えるわけ無いジャン。乙女の悩みは乙女にしか言わないものなのヨ」
 そう言って泉は見開いていた目を再び糸目に戻した
「だったら、何で私にも教えてくれないのよ」
 本を読んでいたかがみが泉に言った
「それはかがみんが乙女じゃない……っていったぁ!」
 かがみの拳骨が泉の頭にクリーンヒットし、泉はイスから落ち、のた打ち回っている
「今度から言葉に気をつけなさい。こなた」
 その笑みがとても恐ろしく見える
79抜いたら負けかなと思っている:2008/09/12(日) 23:44:17 ID:ERTk3dCV0
「では、本題に戻ってよろしいでしょうか」
 オセロの片づけをしていた古泉が笑みを浮かべ俺に言った
 俺は悪くないぞ?悪いのは泉だからな
「それで、どうやって断ったら言いのか分からなくて」
 なんだ、お前みたいな学校でも1,2番を争そうようなイケテルメンツでも、そういったのを知らないものなのか
「ええ、直接の告白は幾度かありますが、ラブレターを貰ってからの返事だとどうしたら良いのか」
 別に羨ましく無いのは何でなのだろうか。それは古泉の持つ「もててますオーラ」にどことなく嫌な感じも混ざっているからだろうか
 とりあえず、谷口が今ここにいたらお前を殺しにかかると思うから、気をつけておけ
「そんなの普通にゴメンって言えば良いんじゃない?」
 泉に拳骨をした右手を押さえながらかがみがいった
「そうかもしれんが、呼んでおいて返事はこれだけかって感じになったら後味悪いぞ」
「その通りです。ですので、もっともらしい理由が欲しいのですが……」
 まぁ、そのもっともらしい理由も嘘になるわけだな
「恐らくは、そうなるでしょう」

「だったら簡単だヨ」
 頭に出来たタンコブを押さえながら泉が言った
 再び、目に輝きが戻っているのは気のせいではないだろう
「他に好きな人がいるって感じの事言っちゃえば良いんだヨ」
 他に好きな人って……誰だ?とか聞かれたらどう答えるんだよ
「そこらへんは私に任せて。一つ聞いとくけど、古泉くん」
「なんでしょうか?」
「とりあえず、高校生活で彼女作る気はないんだネ?」
「ええ」
 おい泉、何を吹き込むつもりだ?
「これは諸刃の剣なのだヨ。運悪ければ一生彼女ができなくなるけど、それでも良いかネ?」
「……は、はぁ」
 古泉は少し事が大袈裟になったな、と言った感じで泉の方を向いている
「だったら……」
 泉は古泉の方へいき足りない身長を必死に伸ばして耳打ちをしている
 古泉の顔が少し引きつってるが気のせいか?

 後日、古泉はその相手としっかりとケリをつけたらしい
 それにしても、泉は一体どんな事を吹き込んだのだろうか
 そして、それ以降古泉に告白しようと言う女子は減ったようだ。女子には
 その一方で古泉は再び別のことで悩まされる事となる

「あなたは、同性愛好者をどう思いますか?」
80抜いたら負けかなと思っている:2008/09/12(日) 23:45:19 ID:ERTk3dCV0
終わりです
とりあえずは短くてスマン
題は『諸刃の対処』です
81抜いたら負けかなと思っている:2008/09/13(日) 00:02:14 ID:iuSeyt7G0
ひより「こっ古泉先輩! ぜひ先輩の恋愛観なり恋愛経験など、私に教えてくださいっ!」
パティ「私も知りたいデス!」

と後輩2人に迫られて困るわけですね。分かります。
82抜いたら負けかなと思っている:2008/09/13(日) 00:06:22 ID:SUFaBskBO
>>80
乙もっふ
83抜いたら負けかなと思っている:2008/09/13(日) 04:21:20 ID:12q5aawS0
実はすべて古泉の陰謀だったら恐ろしい。
「僕とあなたは交際中、ということになっているんですよ。食事ぐらいつきあっていただけませんか、キョン君・・・」
みたいな。
84抜いたら負けかなと思っている:2008/09/13(日) 13:38:45 ID:WJR6UzYC0
古泉のホモネタは問題ないのに「キョン君」と呼んでいると寒気がするのは何故だろう

>>80
乙ー
こなた悪ノリするなwww
85抜いたら負けかなと思っている:2008/09/13(日) 13:59:14 ID:sjZg34EB0
原作と違うからじゃね
古泉はたしか「あなた」とか「彼」としか言ってなかったはず
86抜いたら負けかなと思っている:2008/09/13(日) 17:37:50 ID:dCJXeblHO
>>84
俺もだwww
でも「キョンさん」ならまだ耐えられるかも
87抜いたら負けかなと思っている:2008/09/13(日) 23:32:09 ID:pIA2Stjq0
>>86
俺はもうそれで無理ww


だが、長門が「キョン」と言うのも見たことがないな…
88抜いたら負けかなと思っている:2008/09/14(日) 00:35:00 ID:RKiAjxII0
>>87
雪山症候群で「長門がキョンと呼んだことはない」ってやってたな


「約束」で、会話中に古泉が「キョン」と呼ぶシーンがある
あくまでネタとしてだがアレの気持ち悪さと言ったら・・・
89抜いたら負けかなと思っている:2008/09/14(日) 03:03:57 ID:YGrGyyYe0
ひどい言われようだなw
90抜いたら負けかなと思っている:2008/09/14(日) 13:10:52 ID:I9NbpTIV0
●<僕を呼びました?
91抜いたら負けかなと思っている:2008/09/14(日) 13:48:59 ID:1BvJjktM0
            , '´  ̄ ̄ ` 、
          i r-ー-┬-‐、i
           | |,,_   _,{|
          N| "゚'` {"゚`lリ     や ら な い か?
             ト.i   ,__''_  !
          /i/ l\ ー .イ|、
    ,.、-  ̄/  | l   ̄ / | |` ┬-、
    /  ヽ. /    ト-` 、ノ- |  l  l  ヽ.
  /    ∨     l   |!  |   `> |  i
  /     |`二^>  l.  |  | <__,|  |
_|      |.|-<    \ i / ,イ____!/ \
  .|     {.|  ` - 、 ,.---ァ^! |    | ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄l
__{   ___|└―ー/  ̄´ |ヽ |___ノ____________|
  }/ -= ヽ__ - 'ヽ   -‐ ,r'゙   l                  |
__f゙// ̄ ̄     _ -'     |_____ ,. -  ̄ \____|
  | |  -  ̄   /   |     _ | ̄ ̄ ̄ ̄ /       \  ̄|
___`\ __ /    _l - ̄  l___ /   , /
92抜いたら負けかなと思っている:2008/09/14(日) 16:49:06 ID:HUBsXyUcO
うートイレトイレ
93抜いたら負けかなと思っている:2008/09/14(日) 20:00:36 ID:jrl8y2Pj0
団子ばっかり食ってたら死にかけた
94抜いたら負けかなと思っている:2008/09/14(日) 20:40:44 ID:RKiAjxII0
そんな谷口のお話
95名無し@18歳未満の入場禁止:2008/09/15(日) 11:03:33 ID:1q8uD04jO
しかし谷口がそんな経験をした事を知っている人間はいなかった
96名無し@18歳未満の入場禁止:2008/09/15(日) 16:02:01 ID:D6xvqQN50
……はずだった。
97名無し@18歳未満の入場禁止:2008/09/15(日) 16:02:33 ID:9nAsCXnn0
そこに現れたのは誰もが知る
98名無し@18歳未満の入場禁止:2008/09/15(日) 16:16:32 ID:pTb3cQEE0
白石「え?僕?」
99名無し@18歳未満の入場禁止:2008/09/15(日) 17:08:09 ID:9nAsCXnn0
よーしパパリハビリを兼ねて投下するぞー

T-note11話、っと
100名無し@18歳未満の入場禁止:2008/09/15(日) 17:08:53 ID:9nAsCXnn0


「―――つかれた」


ふと、漏らしたためいきと一緒にそんな言葉が出てきた。
ひとりでいる時間が今まで苦痛に感じたことは無かった。
けれどそれは単に孤独だということと等記号で結ばれはしない。
友人。
そう、友人が周りにいてくれたからだ。
今の私に、そばに友人の姿は無い。
毎日が楽しかった学校。それがこんなにも息苦しく、辛いものだとは想像すらしたこともなかった。
「ハルにゃんは…平気だったのかな?」
騒然とした様子の朝のHR前。
まるで自分の周囲だけが静かで、エアポケットのようになっていた。
人づてに聞いただけのあの、傲岸不遜が服を着たようなあの人の過去を少し想像する。
「でも…今じゃもう耐えられないだろうなぁ」
非常に長く少しもてあまし気味でもある自分の髪が、机に伏せた折に私の視界を遮った。
いつもなら煩わしくかきあげて後ろに流すのだが今はそんな気力すらない。
ああもう―――疲れた。
独りでいることってこんなに辛いんだ。初めて知った。
101名無し@18歳未満の入場禁止:2008/09/15(日) 17:10:03 ID:9nAsCXnn0




「で、何か新しい発見は?」
「何もありませんね」
放課後の部室。
見慣れた顔が揃って特に進捗のない状況について頭を悩ませていた。
「犯人の手がかりは被害者に送られるメールだけですし、その内容が被害者自身の不祥事ですから人に見せようともしないでしょう」
「それに、被害者が誰だかはっきりしてるのは数人だけだろ?他に何人いるかもわからないときている…」
全員が頭を悩ませても、頭を使ってるのは俺と古泉の二人だけだったりするのだが。
「SOS団が公然と捜査してると言えないのも少し痛いですね」
「"K"に警戒されちゃ元も子も…」
「冗談なんて言ってる場合?」
横合いから明らかな不機嫌さを押し出した声が投げられた。
Kを"けい"かい……ああ成程。たしかにつまらん冗談にも聞こえないこともないな。
団長専用の少しばかり座り心地のよさそうなイスにふんぞりながらこちらを睨みつけるのは我等が団長であるハルヒ。
「まったく、これがSOS団の限りある人材の一人だと思うと頭が痛いわ…」
俺も頭が痛い。
「それにしても最近はあまり表だった動きも無いようだし。…まったく、つまらないったらありはしないわ」
「その件ですが」
そこにハルヒの言うところの頭を痛ませない人材であろう古泉がなにやら口をはさんだ。
「やはり生徒側も何も考えてないわけではないらしいですよ。最近動きが無いのはこれのおかげだと思われます」
そう言うと、懐から何かを取り出す。
「携帯がどうしたの?古泉くん」
「犯人がどのように生徒たちのアドレスを知ったのかは不明ですが、一気に内容をすべて更新するのは不可能でしょう」
取りだした携帯をカチカチと操作する古泉。
何かを見せたいらしいが、お前は行動も話し方も回りくどすぎる。
「つまり、生徒たちのここ最近の急激なメールアドレスの変更に伴って犯人は身動きが取れなくなった。という推測です」
「さすが古泉くんね。どこかの無駄飯食らいなバカキョンと違って見事な推理だわ」



102名無し@18歳未満の入場禁止:2008/09/15(日) 17:10:35 ID:9nAsCXnn0
……。
すごく言い返したい気分だがガマンだ。
世界平和の為にガマンをするんだ俺。
しかし、さすが古泉だ。すさまじく核心をついている。
確かに今一番頭を悩ませているのは、ほぼ全てのメールアドレスが変わってしまったのでほぼ手駒を無くしてしまった状態なのだ。
ほぼ、というのは俺自身が知っている相手だけ(だいたい自分のクラス分と何人かのつきあい)は今でも効果があるということである。
しかしこれからそいつらだけを利用するようになったら特定される危険性は倍増という話どころでは無いだろう。
「安心はできませんが、これで焦った犯人が犯人の友人だけを利用するようになれば特定も不可能ではありません」
…いっそ清々しいほどにこちらの内情を把握してやがる。
「ただ、このまま事件が収束してしまったら犯人を取り逃がすことになりますね」
「そうね…確率は五分五分ってところかしら?」
「いや、俺は7:3ぐらいで続くと思うぞ」
「…どうしてそう思うか聞かせてもらおうかしら」
「ここでさっさと切りあげるような奴だったら、最初からやらないと思うぞ。だが騒ぎを起こしてみたいだけだったらやっぱやめるかもしれない……あれ?」
なにかうまいことを言おうとしたが見事に失敗した。
ほのかに期待するような眼で見ていたハルヒはすぐさま落胆した目つきになってその目を伏せた。
「キョンに期待した私がバカだったわ…」
そこまで哀れか。






人を憐れむ目から逃げるように(実際逃げた訳だが)部室を後にした。
一応ながら建前として、聞きこみとも言ってはおいたが特に聞きこむことも無い。
今は確かに身動きが取り辛い。
しかしあくまで『取れない』のではなく『取り辛い』、だ。
思い返せばあの放送室での一件は影響が大きすぎた。
間違いなく俺の、"K"という存在を知らせるには十分すぎた。
だが大きすぎたために自警手段を与えてしまったのも間違いない。
そして。
そう、『そして』だ。
そしてここが分水嶺で、ここで勝つか負けるがが決まるのだ。
鍵はいくつかあるがそれがいつ俺の下に届くのかはまだ未定。
だから今は待つことが最重要だ。

そして時間を潰すために向かった自販機。
そこに泉こなたが居た。
「あ、キョンキョン……ごめん」
103名無し@18歳未満の入場禁止 ◆KoizumiXMI :2008/09/15(日) 17:12:38 ID:9nAsCXnn0
なんか>>101-102の間に変な改行あるけど気にしないでもらいたい






だ、誰か見てるなんて思ってないんだからっ!
一か月近くPCに触って無かったからすごく久し振りなふいんきなんだからねっ!
104名無し@18歳未満の入場禁止:2008/09/15(日) 17:47:34 ID:D6xvqQN50
一ヶ月半振りぐらいにキタ━━━━━(゚∀゚)━━━━━!!!!
>>103
乙ー
最近見ないからちょっと心配……なんてしてないしてない。うん



まとめミスったーやってもうたー
話数今まで漢数字だったのに間違えたー
避難所行って逝ってくる
105名無し@18歳未満の入場禁止:2008/09/15(日) 17:48:39 ID:e9wK8Stu0
君がッ!投下し終えるまでッ!支援するのをやめないッ!
106名無し@18歳未満の入場禁止:2008/09/15(日) 20:01:10 ID:ssAyH5Tp0
>>103

久し振り
古泉の人が生存していてよかった
あとは芋もいればいいんだがな…

さて、ラピュタ王も生存確認したし、俺も異世界生活日記書こうかな…

107名無し@18歳未満の入場禁止:2008/09/15(日) 20:02:19 ID:ssAyH5Tp0
>>106
…一か所誤字があるし…
…まぁいいかww
108名無し@18歳未満の入場禁止:2008/09/15(日) 20:21:16 ID:D6xvqQN50
>>61が七誌っぽい感じがする


誰かお題くれ
できれば多人数じゃないものを
109名無し@18歳未満の入場禁止:2008/09/15(日) 20:28:16 ID:ssAyH5Tp0
>>108
マジでか?
その根拠は?


お題は…他の人にまかせるわ
俺は芋さんの帰還を待つわ
110名無し@18歳未満の入場禁止:2008/09/15(日) 20:33:03 ID:1q8uD04jO
>>108
お題「夏から秋」
111名無し@18歳未満の入場禁止:2008/09/15(日) 20:39:12 ID:fTotvtja0 BE:671271438-DIA(125465)
112名無し@18歳未満の入場禁止 ◆milk..../. :2008/09/15(日) 20:39:43 ID:fTotvtja0 BE:895027384-DIA(125465)
名前かわったのね
113名無し@18歳未満の入場禁止:2008/09/15(日) 20:41:36 ID:D6xvqQN50
>>109
ごめんただの勘

>>110
中々抽象的だな
ともあれ把握


それにしても今気付いたんだけどさ
うpろだまた初期化かよ! どんだけ間が悪いんだよ! うpし直すのめんどくせーよ!
114名無し@18歳未満の入場禁止:2008/09/15(日) 20:54:34 ID:en2hilme0
今日は結構賑わってるな
とりあえず『病の快方』の続編でも投下しますか
115名無し@18歳未満の入場禁止:2008/09/15(日) 20:55:52 ID:en2hilme0
「私、キョンキョンのことが……好きなの」
 放課後、SOS団の活動が終わった後の部室、私と彼だけが残っている
 私は、一世一代の告白をした
 彼は私のいきなりの告白に戸惑ったのか、数分悩んだうちに返事をした
「……悪い。俺、実は付き合ってるんだ」
 え?

 そんなの初耳だよ
「い、一体誰と?」
「あぁ、それはだな……」
 彼が返事を鈍らせているうちに、答えがわかった
 廊下から彼を呼ぶ声がする。モチロン、聞き覚えのある声が
「おーキョン、こんなとこにおったんか。ん、何や泉も一緒やないか。何しとったんや?」
「いえ、ちょっと……ね」
「は、はい……なんでもないですヨ」
「そうか。ならいこか、キョン」
 彼の相手、私たちの世界史の担当であり、私のネトゲ仲間の先生は彼の腕に手を回す
「わかりましたよ、黒井先生。じゃあな、こなた」
「あっ、また先生言うたな」
 先生は頬を微かに膨らませる
「……だったら、俺のことも名前で呼んでくださいよ。ななこさん」
 んなっ、先生を名前で呼ぶなんて。私だってつい最近こなた、って呼ばれるようになったのに。ってそれどころじゃない
「オッケーオッケー。じゃあな泉、ネトゲもほどほどにしぃや」
 そうして二人は腕を組みながら部室を出て行った
116名無し@18歳未満の入場禁止:2008/09/15(日) 20:57:08 ID:en2hilme0
 一人しかいない部室
 開いた窓から入る風によりカーテンが揺れる
 そのカーテンを背に、私は彼が出て行った後を眺めていた
 ハァ、と落胆のため息をこぼす
 ……それにしても、彼に年上属性があったなんて
 年上属性じゃ、私は無理だよね
 二十歳を過ぎても、幼児体系でありそうな私には


 彼が去ってから、どれくらいの時間が過ぎただろう
 私は依然、部室の中で一人立っている
 ガチャリ、とドアの開く音がする
「こなたー?なにやってんの?」
 どうやら、かがみが遅い私を心配して見に来てくれたらしい
「こなた帰るわよ……ってアンタ泣いてんの?」
 そういわれ、私は初めて頬を伝う涙に気がついた
「ちょっとどうしたのこなた?何かあったの?」
 私の肩を持ちかがみが聞いてくる
「実は……振られちゃってサ」
「キョン君の事ね」
 え?かがみは知ってたの?
「ええ、この前偶然一緒に先生と帰ってるのを見てね。そうじゃないかと思ったのよ」
 そうじゃなくて、何で私が彼のことを好きだと知ってたの?
「そんなの、すぐにわかるわよ。生憎、彼は気づいてないみたいだったけどね」
 そうだったんだ……なるべくポーカーフェイスを気取っていたのにね
 するとかがみはニッコリと母性を含んだ笑みで言った
「アンタにポーカーフェイスは無理よ。だって、今も泣いてるじゃない」
「そ、それは……」
「いいのよ、こういう時は。思いっきり泣くものよ」
 かがみは私を包み込むように抱いた
「自分の気持ちに、正直になることも大事なのよ」
 抱きしめながら、かがみは私に優しく言った
 私も我慢が限界に達し2人きりの部室で泣いた
 大声で、将来もう涙が流れないというほどに――
117名無し@18歳未満の入場禁止:2008/09/15(日) 20:58:07 ID:en2hilme0
「……なた。こなた!」
 名前を呼ばれ、布団から起き上がる
 布団?ってことは……
「こなた、大丈夫か?結構うなされてたみたいだが、それに泣いてるぞ?」
 お父さんが心配そうに私に聞いてくる
 そうか、夢だったんだ。よかった
「あ、うん。大丈夫だヨ。嫌な夢見ただけだから」
「そうか。ならいいんだが。それより、急がないと遅刻するぞ」
 時計を見る、時刻は既に八時を回っていた
 私は慌てて制服に着替え、朝食も食べずに学校へと向った

 それにしても、結構リアルな夢だったのは何でだろう
 しかも、かがみが結構良いキャラだったのも何でだろう
 とりあえずは、夢であった事に安堵のため息をつく、私だった
 そして、正夢にならぬよう、こんなときにしか信じない神に祈った


 こんなに困るものならやっぱり誰かに相談したほうが良いのかな



「おはよー」
「おはよう、こなちゃん」
「おはようございます、泉さん」
 教室のドアを開け、一緒にいたつかさ、みゆきさんに挨拶をする
 彼を見ると、彼はいつものように谷口くんと国木田くんと一緒に喋っている姿が見える
「今日は遅刻スレスレだったねー」
 明るい笑顔を浮かべ、つかさは聞いてきた
「うん。ちょっといやな夢を見てネ。憂鬱な気分だったんだヨ」
 あんなのは私にとって悪夢でしかない
「へぇ〜。どんな夢?」
 私が彼に告白して振られ、挙句の果てには黒井先生と付き合っていた夢とは言えない
「あんまり人には言いたくないかナ」
「そっかぁ。正夢にならないように気をつけてね」
「夢と言えば、人間は寝ている時にレム睡眠と、ノンレム睡眠と言った二つに分かれるのですが主に夢を見るのは……」
 みゆきさんがいつものように知識を披露しているとチャイムが鳴った
「あっ、一時間目は世界史だったよね。用意しとかないと」
 つかさはそう言って急いで自分の席に戻った。私も用意をしないと
 それにしても、いきなり黒井先生ですか……。出来れば今日は会いたくなかったんだけどね

「……私の扱いってやっぱりこんなものなんでしょうか?」
118名無し@18歳未満の入場禁止:2008/09/15(日) 20:59:07 ID:en2hilme0
 授業も終わり放課後となった
 いつものように部室へ行こうとしている最中、ある考え事をしていた
 夢での出来事についてである
「私は今、ポーカーフェイスを気取れているのか」
 これが考え事の主な内容である
 夢でも現実でも、彼の事が好きだとばれないようにはしているつもりなのだが、ばれてしまっていたらどうしよう、とふと思う
 何故ばれたくないのか。と言うのは別にばれても言いと私は思っているのだけれど、何しろキャラがキャラな為に人を好きになった、とは言い難いものなのである
 夢の中ではかがみにはばれていたようだけど、あの言い方だと恐らくかがみ以外の人にもばれていたのだろう
 ただ、鈍感な彼は気づいていなかったらしいし、当面は彼にばれなければ問題はない
 そんな考え事をしているうちに私は部室へと付き、いつものように活動を楽しんだ。モチロン、彼との会話も

 パタン、とながもんの本が閉じられる音とともに活動は終了する
 それにしても、いつもながもんは時間に正確だね。おなかの中に時計でも携えてるのかな
 今日も私はいつものように部室でゲームをしていた。携帯ゲーム機を持ってきているのだ。最近は、これにも余り身が入らない
 彼は古泉くんと将棋を、かがみは読書、ハルにゃんはネット、つかさとみゆきさんとみくるんは3人で談笑していた
 これがSOS団のいつもの風景なのだ
 帰宅の準備をしていると、かがみが私に話しかけてきた
「ねぇこなた。相談があるんだけど……ちょっといいかな?」
 かがみが私にこんな下手に出るなんて珍しい。少し事の大きな相談なのだろうか
 今日はもう遅いし、明日の方が良いかと思うけど
「ゴメン、今日ちょっと見たいアニメがあるからサ。また今度にしてくれない?」と適当に嘘をつく
「ダメ、今日じゃないとダメなのよ。……お願い」
 これは本当に事が大きそうだ。それにしても、なんでかがみはこんなにもじもじしてらっしゃるのでしょうか?
「ムゥ〜わかったヨ。そのかわり、ちゃっちゃと済ませてよネ?」
 私も渋々了解する。するとかがみはつかさとみゆきさんに先に帰るよう指示をし、部室は私たちだけ二人となった
 この状況、夢で見たような……
119名無し@18歳未満の入場禁止:2008/09/15(日) 21:00:23 ID:en2hilme0
 二人きりになり、静寂した部室で私とかがみはお互い向き合うように座っていた
「実は、相談したい事があってね」
 相談事?かがみが私に相談って何のことだろう
「その何というか……恋の悩みって言うか」
「こ、恋っ!?」
 私は思わず叫んでしまった
「ばかっ、声が大きいわよ」
 やはりかがみも年頃なのだろう。私でも恋をしてるわけだし、かがみが恋するのも当たり前か
「ホホゥ、とうとうかがみにもこの時期が来たわけですな」
 とりあえずは、軽くあしらう。私も恋をしていることがばれないように
「なっ、いいじゃない。人並みに恋ぐらいしたって」
 かがみは恥ずかしそうに髪をクルクルと指で巻いている
「それで、何で私に恋愛の相談なんかしたの?」
「アンタ、いっつもギャルゲとかそういったのやってるでしょ?だから、そういうの詳しいかなって……」
 なるほど、かがみんは私の二次元での恋愛経験値を頼ってきたわけですか。最近はやってないけどね。
 と言うより、私の三次元での恋愛経験値には最初から期待してないんだね
 それよりも、気になることがある
「で、相手は誰なんだい?」
「アンタもよく知ってる人よ」
 知ってる人……ですか。嫌な予感がする
「古泉くん?」
「古泉君もかっこいいけど違うわよ」
「んじゃ谷口くん?」
「誰よ。知らないわよそんな人」
 谷口くん。君の知名度は意外に低かったよ
「国木田くん?それともセバスチャン?」
「その二人も知らないわよ。もっと身近に男子がいるでしょ?」
 それってもしかして……
「キョンキョン?」

「う……うん」
 彼の呼び名を言った瞬間かがみは顔を赤くさせた
 嫌な予感って当たるもんなんだね
「古泉くんの方がかっこいいんじゃない?」
「私には、キョン君のほうがかっこよく見えるのよ」
 かがみもどうやら引く気はないらしい
「何でキョンキョンの事好きになったの?」
「それは、キョン君は優しい所あるし、人の感情の機微に敏感なところとか……」
 かがみは話しているうちにうちにさらに恥ずかしくなったのかさらに顔を赤らめている
「で、でもさ。キョンキョン、鈍感だしさ、攻略は難しいと思うヨ?」
 私は少し動揺しているのが分かる
 かがみと恋敵になってしまったら、私は友情と愛情どちらをとれば言いのかわからない
 だから、なるべくかがみにはあきらめて欲しい。そう思うのは勝手な自己中心的でしかないのだが、私の彼に対する気持ちはかがみに負けているつもりはない
 するとかがみはフゥ、と一息ため息のように息を吐き一言言った
「……やっぱりね」
120名無し@18歳未満の入場禁止:2008/09/15(日) 21:01:30 ID:en2hilme0
「え?やっぱりって……どういうこと?」
 私がきょとんとした顔でかがみを見ると、先程までの顔の赤さが嘘の様にかがみの顔はいつものようになっていた
「そのまんまよ。アンタ、キョン君のこと好きでしょ?」
「えっ、いや。そんなことは」
 動揺をさらに隠せなくなる
 こんな態度をとると、「そうですよ」と言っているようなものだ
「もう隠したって無駄よ。薄々感づいてたんだけど、やっぱりそうだったのね。さっきの反応でよく分かったわ」
 薄々感づいていたって……どこら辺から気づいていたんだろう
「まずはキョン君がアンタの事をこなたって呼んでからよ。あの時は理由に納得したけどね」
「それだけだったらわからないんじゃ……」
 そういうとかがみは机の上においてある私の鞄を指差した
「そのキーホルダー。キョン君に貰ったんでしょ?」
 え?なんでわかったの?
「あんたのキーホルダーに気づいた後、キョン君の鞄にも新しいキーホルダーが付いてる事に気づいたのよ。キョン君に聞いたらこなたに貰ったって、素直に言ってくれたわ」
 軽々と口を滑らしおってからに、やはり鈍感が故なのだろうか
「それだけじゃないわ。アンタ最近私にアニメとか、そういった話しないでずっとうわついていたでしょ。だから、ピンと来たのよ」
 凄い洞察力をしてるね。感服するよ
 すると、かがみは続けざまに言った
「自分の気持ちに、正直になることも大事なのよ」
 私が夢の中で聞いた台詞をかがみはそのまま言った
 正夢、と言えるのだろうか。違うのだろうが、その言葉は私を少し素直にさせてくれた
「分かったよ、認めるヨ。キョンキョンの事は好きだけど、それを知ってどうするのサ」
 するとかがみは、夢で見たような笑顔で言った
「さっきのも嘘だから安心しなさい。私はあんたを応援してるわよ」
 その言葉を聴き、私は安心した
 かがみが恋敵にならなくてよかったからだろうか。それとも、頼れる仲間が出来たからだろうか
 とりあえずは、私のこの病の主治医とも言える存在が見つかったことだけは確かである

「とはいっても、私もあんまり恋愛した事はないから、よくはわかんないけどね」
 かがみはこめかみ近くを人差し指で掻きながら言った
121名無し@18歳未満の入場禁止:2008/09/15(日) 21:02:41 ID:en2hilme0
中途半端な終わり方ですいません
また続き頑張ります
題は『夢と現実』でお願いします
122名無し@18歳未満の入場禁止:2008/09/15(日) 21:52:57 ID:D6xvqQN50
>>121
乙ー
こなたとかがみの泥沼展開かと思ったwww

まとめはあんな感じでいいだろうか
123名無し@18歳未満の入場禁止:2008/09/15(日) 21:58:19 ID:9nAsCXnn0
乙π=正義

まとめ人は泥沼展開がお好みのようです把握
124名無し@18歳未満の入場禁止:2008/09/15(日) 22:17:28 ID:D6xvqQN50
あれー、なんか俺変な認定受けてる?

そりゃあネタとしては
妹「キョンくんどいてそいつ殺せない!」的なのとか
ゆたかにヤンデレ似合いそうだなとか考えたことはあるけどさ
・・・ってどっちも泥沼とは少し違うな


どうでもいいけどまとめ人と呼ばれたのは初めてだ
125名無し@18歳未満の入場禁止:2008/09/15(日) 22:40:48 ID:1q8uD04jO
>>121
ぉっー
>>124
まとめの人はヤンデレ妹属性か把握
126名無し@18歳未満の入場禁止:2008/09/15(日) 22:44:38 ID:0ce4h9T6O
えーっと
避難所に投下しようと思ったんだけど
新しく投下用スレ立てた方がいい?

といっても利用するの俺ぐらいだろうけどさ……
127名無し@18歳未満の入場禁止:2008/09/15(日) 23:05:05 ID:D6xvqQN50
ヤンデレ属性は残念ながら持ちあわせてないな
妹は否定しないけど

>>126
新避難所の方?
それとも多分どなたさんだと思うから旧の方かな
どうせなら立てちゃってもいいと思う
128名無し@18歳未満の入場禁止:2008/09/15(日) 23:12:20 ID:8Wx+aO1o0
>>126>>127
このスレッドじゃなくて、わざわざ避難所に投下するのはなんで?
「こういう作品は避難所に」みたいなルールがあるの?
129名無し@18歳未満の入場禁止:2008/09/15(日) 23:19:40 ID:D6xvqQN50
>>128
>>126が泉どなたという職人氏だとすればの話だが
なんかよく分からないがこのスレ、というか2ch全般? にPCから書き込めないそうだ
以前から書き込み難はあったがいつのまにやら完全に無理になってたとのこと


旧の方はスレッド数が上限に達してるとかなんとか書いてあるな
このままじゃスレ立ては出来ないっぽい
130名無し@18歳未満の入場禁止 ◆7SHIicilOU :2008/09/15(日) 23:46:24 ID:FZPMt+iB0
131名無し@18歳未満の入場禁止:2008/09/15(日) 23:48:19 ID:9nAsCXnn0
>>130げと
132名無し@18歳未満の入場禁止:2008/09/15(日) 23:54:20 ID:0ce4h9T6O
>>129
新の方でいけたから大丈……?

気のせいか、いま焼き芋屋さんの声がしたような……
133名無し@18歳未満の入場禁止:2008/09/16(日) 00:18:15 ID:Q/tMUg0i0
>>132
流石に焼き芋には早いだろ
134名無し@18歳未満の入場禁止:2008/09/16(日) 16:09:44 ID:XrykTNel0
焼き芋以外にもおいしくなる時期だよな秋は

(=ω=.) ダイエットシナキャネカガミン
135名無し@18歳未満の入場禁止:2008/09/16(日) 18:42:42 ID:JDeEvz+hO
天高くかがみ肥ゆる秋
136名無し@18歳未満の入場禁止:2008/09/17(日) 07:31:18 ID:tMQlKEAu0
かがみとこなた

喜劇の主人公とするならDOTCH!?
137名無し@18歳未満の入場禁止:2008/09/17(日) 09:59:40 ID:mTXt3YDI0
かがみで
138名無し@18歳未満の入場禁止:2008/09/17(日) 18:52:23 ID:UFQ7Ig7j0
両手に花
139名無し@18歳未満の入場禁止:2008/09/17(日) 21:37:54 ID:w5PnD5K7O
こなたで
140名無し@18歳未満の入場禁止:2008/09/17(日) 22:09:28 ID:eFHwgH3+0
>>138に同意
だけどあなたの自由で
141名無し@18歳未満の入場禁止:2008/09/17(日) 22:39:43 ID:nJDTcgPO0
喜劇なら俺的にはこなた

今から、『夢と現実』のかがみ視点投下していいか?
142名無し@18歳未満の入場禁止:2008/09/17(日) 22:44:54 ID:eFHwgH3+0
おk
143名無し@18歳未満の入場禁止:2008/09/17(日) 22:47:40 ID:nJDTcgPO0
なら投下させてもらおう

 あなたは、親友と想い人が重なったらどうしますか?

 友人のためにも、自ら手を引くのか
 それとも、正々堂々と友人と勝負をするか
 ただ、友情よりも愛情を選ぶか

 私には好きな人がいる
 けど、友人に私と同じ人を好きになった人もいる
 最初は推測でしかなかった
 その推測を確信へ変えるため、私はある行動に出た

「その友人に私の好きな人を打ち明ける」
 これはある種の賭けだった
 上手くいけばお互い良い関係を保ったまま勝負が出来る
 しかし、失敗すればその友人との関係もギクシャクしてしまう
 後者だけが心配で、仕方がなかった


「ねぇこなた。相談したい事があるんだけど……ちょっといいかな?」
 最初は無難に、そう尋ねた
 こなたはと言うと少し悩んだ後
「ゴメン、今日ちょっと見たいアニメがあるからサ。また今度にしてくれない?」と言った
 恐らくこれは嘘だろう
 根拠と言うのかどうかはわからないが、最近はこなたはアニメやゲームの話を一切日常の会話に持ち出してこない
 それだけでなく、時々考え事をしていたり、ボーっとする事も多い
「ダメ、今日じゃないとダメなのよ。……お願い」
 と、事が大きいことをアピールするように言うと、こなたは渋々了解してくれた
 私は、つかさとみゆきを先に帰し、部室でこなたと二人きりになった
144名無し@18歳未満の入場禁止:2008/09/17(日) 22:48:41 ID:nJDTcgPO0
「実は、相談したい事があってね」
 静かな部室で私はそういった
「相談事?かがみが私に相談なんて珍しいネ」
 どんな悩みなの?と糸目の少女は言う
 もうここまで来た以上、言うしかない
「その何というか……恋の悩みって言うか」
「恋っ!?」
 糸目が見開き、こなたはいきなり大声を出す
 そりゃ驚くのも無理はない、私は今まで恋愛の事など一度も語ったことは無いのだから
「ホホゥ、とうとうかがみにもこの時期が来たわけですな」
 再び目が糸目になり、口に手をやりニヤニヤとこなたは笑う
 その笑いは、少し作り笑いのように見える
「なっ、いいじゃない。人並みに恋ぐらいしたって」
 私はそう言って髪の毛を指に巻きつける
 私のこの行動は主に恥ずかしかったりする時に出る癖なのだが、自分でもそのことを重々承知してるため、いつでもその癖を出す事ができる
 そういった所も「ポーカーフェイス」には必要なのかもしれない

「それで、何で私に恋愛の相談なんかしたの?」
 本当はお互い好きな人が同じですよ、と言いたくて相談をした
 ただ、それを言う事はまだ出来ない。多分、これからも
「アンタ、いっつもギャルゲとかそういったのやってるでしょ?だから、そういうの詳しいかなって……」
 と適当に嘘をついた
 きっとギャルゲも最近はやってないのだろう
 恋愛とは、そんなものだから
 そして、話は本題へと入っていく

「で、相手は誰なんだい?」
 アンタもよく知ってる人よ
 そう言葉を発するとこなたは次々と人物を挙げていった
 古泉君、谷口君、国木田君にセバスチャン
 後半三人はこなたのクラスの人だろう。残念ながら私とは面識がない
 それよりも、未だに彼の名前が出てこない
 私がこなたの言った人物を全て否定し、彼であることをほのめかせると、こなたの糸目が少し見開く
 この時、私の推測は確信へと変わっていった
145名無し@18歳未満の入場禁止:2008/09/17(日) 22:49:47 ID:nJDTcgPO0
 先に言っておいた方がいいと思うので言っておく
 これからの会話は私の演技である。こなたを動揺させるために演技させてもらった。少しこなたには悪い気がするけれど

 こなたが彼の名前を言った瞬間、私は顔を赤くさせる
 するとこなたは少し動揺した感じで質問攻めをしてくる
「古泉くんの方がかっこいいんじゃない?」
「私には、キョン君のほうがかっこよく見えるのよ」
 まあ、これは事実だけどね
「何でキョンキョンの事好きになったの?」
「それは、キョン君は優しい所あるし、人の感情の機微に敏感なところとか……」
 これも事実
「で、でもさ。キョンキョン鈍感だしサ、攻略は難しいと思うヨ?」
 こなたは明らかな動揺を見せてくれる
 これだともうからかうのはやめておいた方がいいのだろう
 からかう?違うか。逃げてるだけなのかもしれない
 こなたとの関係が悪くなるのが嫌で、自分が彼の事好きなのを隠して私は傍観する立場に回る
 逃げてるだけでしかない
 逃げる償いに、私がこなたにしてあげる事はあるだろうか
 いや、一つだけある

 私は演技を終える
 フゥ、とため息をつき、さっきまでとは打って変わった表情で「……やっぱりね」と言った
「え?やっぱりって……どういうこと?」
 やはりまだこなたはこの状況を飲み込めていないらしい
 さて、核心へと入っていきますか
「そのまんまよ。 アンタ、キョン君のこと好きでしょ?」
「えっ、いや。そんなことは」
 核心へ入っていくとこなたはさらに動揺する
「もう隠したって無駄よ。薄々感づいてたけど、やっぱりそうだったのね。さっきの反応でよく分かったわ」
「何で分かったの?」
「まずはキョン君がアンタの事をこなたって呼んでからよ。あの時は理由に納得したけどね」
 初めに疑いだした部分を言う。確かに、泉と古泉は似てるから分かりにくいって言うのは本当っぽかったけどね
「それだけだったらわからないんじゃ……」
 こなたはまだ理由に納得いっていないらしい
 私は次に推測する要素となった彼女の鞄についている物を指差す
「そのキーホルダー。キョン君に貰ったんでしょ?」
「え?なんでわかったの?」
 やっぱり、こなたは黙っておきたかったらしい
 ケド、鈍感な彼にはそんなもの通用しませんよ。釘でも打っとかないと、彼は簡単に口を滑らせるからね
「それだけじゃないわ。アンタ最近私にアニメとか、そういった話しないでずっとうわついていたでしょ。だから、ピンと来たのよ」
 そして最後の推測要素を言った
 それでもどうやらこなたは認めたくないらしい
 自分の気持ちに、正直になるのも大事なのよ
146名無し@18歳未満の入場禁止:2008/09/17(日) 22:50:17 ID:eFHwgH3+0
支援
147名無し@18歳未満の入場禁止:2008/09/17(日) 22:50:42 ID:nJDTcgPO0
 そう言うとこなたは少し間を持った後に渋々と認めた
「分かったよ、認めるヨ。キョンキョンの事は好きだけど、それを知ってどうするのサ」
 私の気持ちはもう決まっている
 私は心からの笑みを浮かべこなたに言った
「さっきのも嘘だから安心しなさい。私はアンタを応援してるわよ」
 そう述べるとこなたは安心した表情を見せた
 私の彼への気持ちが偽りと分かったからだろうか
 残念ながら、偽りではないけれど
 けど私はこの感情を押し殺すしかない
 こなたはポーカーフェイスを気取っていたみたいだけど、ポーカーフェイス勝負は私の勝ちのようね
 私は、こなたを応援する事だけを考えよう。それが、私がこなたに対してできる唯一の事だから

 とはいっても、お互い恋愛経験値は低いから、私も余り助言は出来ないけどね
148名無し@18歳未満の入場禁止:2008/09/17(日) 22:52:53 ID:nJDTcgPO0
終わりです
とりあえず駄文すいませんでした
題は『夢と現実 ポーカーフェイス』でお願いします
149名無し@18歳未満の入場禁止:2008/09/17(日) 22:53:31 ID:eFHwgH3+0
>>148
乙っす
かがみ…
150名無し@18歳未満の入場禁止:2008/09/19(日) 00:20:32 ID:LYXKtSFJ0
急に人がいなくなるのも珍しい光景では無いな
151名無し@18歳未満の入場禁止 ◆milk..../. :2008/09/19(日) 00:43:46 ID:r0dGyplX0 BE:1762085197-DIA(125465)
そですな
152名無し@18歳未満の入場禁止:2008/09/19(日) 12:26:26 ID:XFJZMpMMO
ふんもっふ
153名無し@18歳未満の入場禁止:2008/09/19(日) 19:35:46 ID:Rvqb1QUW0
何か俺の投下が流れを止めてしまったようで悪い気がする
154名無し@18歳未満の入場禁止:2008/09/19(日) 20:43:17 ID:+ZYujGqVO
>>153
そんなことは無いかしら
155名無し@18歳未満の入場禁止:2008/09/19(日) 21:37:34 ID:XFJZMpMMO
>>153
そんな事は無いのだわ
156名無し@18歳未満の入場禁止:2008/09/19(日) 23:53:36 ID:5L9SWxOT0
>>153
そんな事は無いですぅ
157名無し@18歳未満の入場禁止:2008/09/19(日) 23:54:14 ID:LYXKtSFJ0
>>153
そんな…事は……無いわ…
158名無し@18歳未満の入場禁止:2008/09/20(日) 00:55:53 ID:fYpNk0wjO
>>153
そんなことはないのー
159名無し@18歳未満の入場禁止:2008/09/20(日) 00:57:36 ID:0lzqcwTC0
>>153
そ…そんなことはないと思いましゅ
160名無し@18歳未満の入場禁止:2008/09/20(日) 01:47:46 ID:xM2jyPLW0
>>153
そんなことは無いわよぉ
161名無し@18歳未満の入場禁止:2008/09/20(日) 03:51:30 ID:ugfZhi29O
>>153
そんなことは無いよ
162名無し@18歳未満の入場禁止:2008/09/20(日) 12:37:07 ID:R6/AuiAv0
一人だけ空気読めてないのが悲しいな
163名無し@18歳未満の入場禁止:2008/09/20(日) 16:08:14 ID:YqY5AngWO
何と言うローゼンスレ
164名無し@18歳未満の入場禁止:2008/09/20(日) 18:18:54 ID:RY7S5XKi0
どれが空気読めてないのか分からない
165名無し@18歳未満の入場禁止:2008/09/20(日) 19:12:23 ID:fYpNk0wjO
KYみっくるんるん乙
166名無し@18歳未満の入場禁止:2008/09/20(日) 21:42:48 ID:TaICJRaI0
ここはハルヒとらき☆すたのクロスオーバースレなのに、KYって言われるみくるん('A`)カワイソス
167名無し@18歳未満の入場禁止:2008/09/20(日) 22:26:18 ID:cSQKimkC0
うーん…あまり出番がないからなぁ…
168名無し@18歳未満の入場禁止:2008/09/20(日) 23:23:55 ID:ugfZhi29O
朝比奈さんも必死なんだな・・・。人形の中に無理矢理入ろうとするなんて
169名無し@18歳未満の入場禁止:2008/09/21(日) 01:04:00 ID:7vS5zKv6O
だが、俺も人形の中に入れようとしたぜ
170名無し@18歳未満の入場禁止:2008/09/21(日) 01:49:06 ID:/6mZYC4d0
みくる「こうなったら私もドールになるのでしゅ。そうしたら一気に人気者でしゅ!」
キョン「…朝比奈さんのダッチワイフ(*´Д`*)/ヽァ/ヽァ 」
みくる「そういう人形じゃないのでしゅ」
171名無し@18歳未満の入場禁止:2008/09/21(日) 22:29:10 ID:Laur6Q5C0
過疎だから保守
172名無し@18歳未満の入場禁止:2008/09/22(日) 20:20:27 ID:ERFaRxkV0
すごい過疎
173名無し@18歳未満の入場禁止:2008/09/22(日) 20:26:23 ID:9TOsLKOt0
γ゜←ここにいる
174名無し@18歳未満の入場禁止:2008/09/22(日) 21:30:55 ID:DfHFBMYb0
>>173
初めみくるの胸に見えた。
よくよく考えるとノミだった。


やっぱ9月も中頃になって皆忙しいのかねぇ
175名無し@18歳未満の入場禁止:2008/09/22(日) 22:06:41 ID:s4mHN3dEO
お芋が食べたいです
176名無し@18歳未満の入場禁止:2008/09/22(日) 22:31:16 ID:E1Ojvug90
人はいるんだろうなぁ
ただ職人がいないんだろ
俺も書くべきか……
177名無し@18歳未満の入場禁止:2008/09/23(日) 01:17:57 ID:Gtr7Yaus0
夜分遅くに失礼。
相変わらず遅筆ですまないけど、投下始めます。


教師キョンキョン物語 第7話



 世界は、灰色に包まれていた。
 それだけで俺は、ここが閉鎖空間なのだと直感する。古泉の言っていた「肌でわかる」とはこういうことか。
 この空間あちこちで光のうねりが生まれ、青色の巨人が次々と立ち上がっていた。
 それを尻目に、俺は寝転がっていた。道路のど真ん中に。
「先生!」
 寝転がったまま、首だけを声のする方に向けると、新生SOS団の名だたる面々が。
「このままだと世界が危ないよ!」
 力強く主張する泉を筆頭に、次々と頷く少年少女たち。それだけしかしない。
 そうか、彼らには神人と戦えないのだった。唯一その力を持つ者は、彼らとは反対方向から俺に歩み寄り、
「先生、私ね、変身できるようになったよ!」
 赤い光に包まれた柊妹は、早着替えを披露した。これが一部で噂の魔法少女というものか。
 猫の頭に尻尾だけついたような「にゃもー」とか鳴いている謎の生物を肩に乗せ、柊妹は空へと舞い上がる。
 俺はそれらの奇跡を目の当たりにしながら、起き上がる気力がなかったので再び後頭部を地につけた。




 翌朝、俺は三十九度という高熱にうかされていた。
178名無し@18歳未満の入場禁止:2008/09/23(日) 01:19:03 ID:Gtr7Yaus0
 いくら熱を出したとはいえ、なんとタイムリーで縁起の悪い夢を見たものだろう。変身て。
 体温計に示される数字に若干引きつつ、脳裏に残る蛆の湧いたかのような妄想にサヨナラした。
「しかし、なぜこの時期に風邪なんか……」
 そういえば昨晩、確かに微かな眩暈を感じていた。知恵熱だと放っておいたのだが、甘く見ていたらしい。
 風呂上りに外出したのもいけなかったか。騙されたり、風邪引いたり、踏んだり蹴ったりだ。
 学校に電話で病欠の旨を告げて、覚束ない足取りで布団に戻る。
 自分の動作が酷くスローに感じられる。まるで、少年漫画のワンシーンような錯覚。
「くそっ……感覚に体がついていかない、これが俺の、覚醒した力……ッ!」
 部屋は、とても静かであった。
「…………」
 学生時代だって風をひいて、自宅に一人で篭ることはあった。だが、待っていれば必ず家族が帰ってきた。
 今は、ここに帰る者は俺しかいない。破られることのない静寂。
 ――風邪を引くことがこんなに寂寞を感じさせるものだとは。
「このまま一人で死んでいくんだな……」
 冗談のつもりだったが、笑えないことのように思えてきた。
 とりあえず飯を、と思い立ったのはいいが、一体何を食えばいいのだろう。
 風邪といえばおかゆだが、俺はレシピなど知らない。得意料理はカップラーメンです。
 ……て、カップラーメンは明らかに体に悪いよな。
「このまま一人で死んでいくんだな……」
 さっきも同じことを呟いたが、切実さは段違いだ。この先生き残れるかの瀬戸際である。
 なんとかせねばと一念発起するも、だるいのはどうしようもない。
 どうしようもないので、俺は意識を失うことにした。
179名無し@18歳未満の入場禁止:2008/09/23(日) 01:19:46 ID:8QgzTzff0
支援という言葉は!
使った時にはすでに支援している!
180名無し@18歳未満の入場禁止:2008/09/23(日) 01:21:19 ID:Gtr7Yaus0
「――キョン先生」
 呼ばれたので、かすれ声で返事しつつ目蓋を開けると、ツリ目と視線が合った。
 ツリ目でショートヘアの女性だった。何だか、見覚えのあるようなないような、不思議な気持ちになる。
 視覚情報を頼りにすれば、俺の知っている中で最も見た目の近い女性は、
「……柊、かがみ?」
 言い切るより、そんなバカなと思う方が早かった。どう見ても高校生ではない。
「もしかして、柊いのりさん?」
 昨日知ったことだが、あの双子には姉が二人いた。柊かがみにそっくりな方は、そんな名前だったはずだ。
 微笑んだところを見ると、間違いではないと思う。笑い方が曖昧だったのは少し引っかかるが。
「何も食べてないんですよね? 今、おかゆ作りますから待っててください」
 はて。昨日は柊姉妹を自宅まで送り届けたときに二言三言交わしたが、親しくなったというわけではない。
 それなのに、いきなり部屋に上がって、なおかつ手料理まで振舞ってくれるとは、どういうことか?
「少なめにしておきました。この後のこともあるし」
 そうこう考えているうちに、おかゆが完成してしまった。どうも今日は時間の流れが早い。
 いや、熱でぼーっとしているから頭が回らないだけか。
「美味しいですか?」
「ええ、とても」
「私にだって、これくらいのことはできるんですからね」
 その挑発的な言葉に引っかかりを覚えながらも、俺は誰かの作ったおかゆを食べられる幸せを噛み締めるのに忙しかった。
 忙しすぎて、食べ終わるまでの記憶がほとんどないほどだ。何か言葉を交わした気もするが、覚えているのは、
「困ったときは、うちの神社に来てください。花があるから、悩みを聞いてもらうといいですよ」
 どこかで見たようなコマーシャルを彷彿とさせるアドバイス。花の種類も尋ねたが、答えは忘れた。
「じゃあ、お大事に」
 それだけ伝えると、いのりさんは出て行った。することのなくなった俺は静寂の中で再び目蓋を閉じた。


「――キョン先生」
 呼ばれたので、かすれ声で返事しつつ目蓋を開けると、ツリ目と視線があった。
「……いのりさん?」
「違います、柊かがみです」
 目を凝らしてみれば、制服も着ているし髪も長い、確かに柊かがみであった。
 その後ろには、柊つかさ、高良みゆき。俺が昨晩に選抜したメンバーだ。
「お見舞いに来ました」
 これが普通の教師と生徒なら涙、涙の感動的な逸話となるのだが。
 昨日限りで「普通」の域を脱してしまったことが非常に悔やまれる。
「さあ、話を聞かせてもらいましょうか」
 いやにノリノリな柊姉が、仁王立ちでにやりと笑った。
181名無し@18歳未満の入場禁止:2008/09/23(日) 01:23:42 ID:Gtr7Yaus0
 かくして、門外不出を心に決めていた俺の高校時代は、五人の高校生に流出してしまった。
 俺がどういう形で涼宮ハルヒの冒険譚を語ったのか、それを事細かに語るのはまたの機会ということにしておこう。
 向き合わなければならないのは、過去でなく、今だ。
「――さて、俺の代のSOS団についての話は終わった。次は、お前たちの代についてだ」
 後輩どもを見回して表情を窺う。みゆきと、本来一般人のはずの柊姉は、どこか決心を固めたような顔をしている。
 むしろ当事者のはずの柊妹がいつもと変わらずほわほわなのが心配になったくらいだ。

 まずは、宇宙人について。

「初めまして、高良みゆきと申します」
『うん、知ってる』
 エクトプラズムに丁重なご挨拶、それを囲って見守る仲間たち。そこそこにシュールな光景だ。
『わたしは朝倉涼子。有り体に言うと宇宙人です。キョンくんにはお世話になりました、いろんな意味で』
「そうでしたか。こちらこそお世話に――」
 お前は俺の身内か、とツッコミそうになったが本当に身内だった。似なさ過ぎて当事者も間違いそうになる。
 みゆきに朝倉のことを伝えるのは、この期に及んでも躊躇した懸案事項だ。
 言うなれば侵略を受けているようなものだからな。異常は異常でも、自己制御できる柊妹とはわけが違う。
「黒井先生のお見舞いに行ったとき、助けてくれたのも朝倉さんなの?」
『うん、そう』
 積極的に、それこそ最も向かい合うべきみゆきよりも興味津々に見える柊姉。
 いざとなったらノリが良くなるところは、ついつい親近感を覚えてしまう。
『そんなことよりさ、キョンくん、いい加減にわたしが自由になれる方法考えてよ』
「みゆきに知らせたから、意識的にお前を排出しやすくなる。一歩前進だ」
『……ひとを余分なものみたいに』
 助けてもらったのは事実だが、普通の人間にとってはそれ以外の何者でもないだろう。
『だから、みゆきちゃんは普通とはちょっと違うのよ。わたしだって情報として吸収されたんだもん』
「し、失礼いたしましたっ」
「いや、みゆきが謝ることはない。わざとじゃないんだから」
『そうかしら? 無意識レベルで、わたしをキョンくんから引き離そうとしたのかもよ?』
 何だそりゃ、どういう意味だ。
『この子、キョンくんに他の女がまとわりついてるのが我慢で』
 そこまで言いかけて、いやそれよりも早く、朝倉の連結は解かれ砂となってみゆきの中に戻っていった。
「…………」
 沈黙が場を支配する。今のは、自分の意思とか時間切れとかでもなく、強制的に戻されたように見えた。
「キョンさん、次のお話をお願いします」
 真相は闇の中である。
182名無し@18歳未満の入場禁止:2008/09/23(日) 01:25:44 ID:Gtr7Yaus0
 次に、超能力者について。

「最初はね、夢だと思ってたんだ」
 ほわほわとした様子で、柊つかさは語り始める。
「授業中にうとうとしてたら、いつの間にか周りの人がいなくなっちゃってたから」
 教師の立場を貫くなら授業中に寝るとは何事かと注意をすべきだが、この場は黙って話しの続きを促す。
「そしたら、空が灰色で。何だか怖くなったからその場でじっとしてたの。そのうちに戻ってきちゃった」
 しばらくすると、出入りするときのスイッチ的な役割を果たすのが意識の切り替えであることに気づき、
 それからは自由に能力を使えるようになったとか。大した順応力である。この柊妹、意外に大物かもしれん。
「そ、そうかな?」
 それはともかく、柊つかさの体験談において、心に留めておくべきことは一つ。
 この度に発生している閉鎖空間は、かなりの時間をかけて出来た大規模なものであるらしいこと。
 大して移動もせず、意識を切り替えただけで侵入できたというのが一番の証拠だ。
 ほとんど現実と重なりあっていると見ていいだろう。それこそ、すぐに取って代われるような。
 そのイメージから、俺は佐々木の閉鎖空間を思い出していた。
 長い年月の間、鎮座していた白い空間は、灰色に変わり、世界を押し潰そうとした。
 その原因を作ったのは、不本意極まりないが、俺だ。
「今度の閉鎖空間の主が、ガス抜きが下手な奴でないことを祈るばかりだな」
 その主は、俺の目の届く範囲にいるはずだ。
 運命という言葉は好きじゃない。だから俺は、それを必然と呼ぶ。
 ――仕組んだ奴がいるなら、何も不自然な表現じゃないだろう?


 最後に、未来人について。

 宇宙枠は、朝倉涼子の依代となってしまった高良みゆき。
 超能力枠は、意外に正統派な手順で覚醒した柊つかさ。
「だが、未来人はこの場にいないし、他でもお目にかかっていない」
「それじゃあ、未来人を探せばいいの?」
 あっけらかんと言ってのける柊妹である。
「何がどうなってその結論に達したんだ?」
「だって、何かパズルの残りピースが一つだけ欠けてるみたいで気持ち悪いかなー、なんて」
 何じゃそりゃと口では言いつつも、俺も探せばきっと見つかるだろうと思っていた。
 こうなった以上、未来人が出てこなければ約束を破られたような気分になる。
「そういうものなんでしょうか?」
「俺が高校生のころは、まかり通っていた理屈だ。今ではどうだか知らん」
 それが通るのと通らないのとどちらの方が幸せなのか、俺には甲乙つけがたい。
183名無し@18歳未満の入場禁止:2008/09/23(日) 01:27:22 ID:Gtr7Yaus0
 ミーティングの後、連中はおかゆを作ってくれた。
 主に調理場に立っていたのは柊妹とみゆきで、柊姉は所在なさげにしていた。
「……料理が苦手なんて女らしくない、とでも?」
「誰もそんなことは言ってない」
「それにしてもおかゆが作れないのは正直ないわとか思ってますよね?」
「思ってないから。必要最低限の料理ができるだけで十分尊敬の対象だ」
 実はおかゆは本日二度目とはさすがに言えなかったが、いのりさんが少なめに作ってくれて助かった。
 できたてのおかゆをすすりながら、俺を囲む団員たちに、本日もう一つの本題を投げかける。
「泉と白石に、この話をしても大丈夫だと思うか?」
 みゆきには朝倉の存在を伝え、柊姉妹にも謎の空間の正体を明らかにした。
 俺としては、生徒と共に考える覚悟はできている。問題は、未だ正体が明らかでない彼女らだ。
 名前だけでもSOS団の団員である以上、何か裏がある……考えすぎとは思わない。
「……先生はどう思ってるんです?」
「秘密にしておきたい」
 奴らの正体が何であれ、スタンスが分からない以上は下手にこちら側に触れさせたくない。
 これは、人のメンタル面に通じるとてもデリケートな問題だ。石橋を叩いて渡らないくらいでちょうどいい。
 みゆきと柊姉からは反論はなかったが、柊妹だけは納得のいかない顔をしていた。
「何だか、仲間外れにしてるみたい」
「そういう問題じゃないのよ、つかさ」
 いや、そうとも言い切れない。
 卒業式の夜、ハルヒに三年間守り通してきた秘密を俺が喋ってしまったのも、その罪悪感からだった。
 可愛げのないガキだった俺ですらそうだったのだから、柊つかさにとってはより重大な問題なのだろう。だが、
「秘密、だなんて思わなけりゃいい。訊かれたこと以外教えないのは普通だろ?」
 全面的な賛成は得られなかったが、ここは多数決に従うということで場を収めてもらった。
 数の暴力に頼らざるを得なかったのは、俺の不徳とするところである。以後、精進したい。

 食器の片付けが終わり、極秘ミーティングはお開きとなった。
 見送りながら、帰り際になって柊姉妹に伝えておくべきことがあったのを思い出した。
「あ、そうそう。いのりさんによろしく伝えておいてくれ」
「え?」
「看病しに来てくれたんだ」
「……どうして?」
 どうして、と言われても、俺の方が言いたい気分だ。
「まあ……とりあえず、伝えておきます」
 腑に落ちない、といった表情を隠そうともしない柊姉。
 対する柊妹は、さっきまでの煮え切らない様子が嘘のように活き活きとして、
「いのりお姉ちゃん、キョン先生のこと好きになっちゃったとか?」
「あるわけないわよ」
 本人の前でばっさり断定して、彼女たちは去っていった。一目ぼれされて何が悪い。
184名無し@18歳未満の入場禁止:2008/09/23(日) 01:28:51 ID:Gtr7Yaus0
「昨日はお楽しみだったようだな」
「そんなわけないでしょう。ずっと寝てましたよ」
 出勤早々、出会い頭にローキックをかましてきた桜庭教諭に涙目で抗議する。理不尽な。
 一時は三十九度を越えた熱は、一晩明かすとすっかり引いていた。人間の生命力も捨てたものじゃない。
「自宅に女子高生を三人もはべらせて、督促いかなかったとでも?」
「そういう言い方はよしてください、本当に首が危なくなりますから」
 いつにも増して横柄な桜庭教諭のもとから命からがら逃げ出して、黒井教諭に助けを求める。
 あの、今日の桜庭先生、なんだか機嫌悪くないですか?
「昨日は退屈そうにしとったからなあ。その憂さ晴らしとちゃう?」
「……俺はサンドバッグですか」
「ええな、それ。今度から嫌なことがあったらキョン先生をいじることにするわ」
 勘弁していただきたい。黒井教諭は「冗談や」と気風良く笑ったが、全く安全というものを感じられないのは何故だろう。
 さすがに社会人なのだから、風邪を引いたぐらいで心配されるのは気恥ずかしいが、この扱いもあんまりだ。
 やっぱり、仕事は休むものじゃないな。

 待ちに待った昼休み。桜庭教諭と黒井教諭の魔の手から逃れられる時間の到来である。
 今日はみゆきから弁当を作れないと予告を受けていたので、俺は迅速に食堂へと移動した。
 そこで、一人で弁当をつついている柊つかさと出くわすのであった。
「今日は一人か」と、ごく自然に同席する俺。特別なつながりを持つと多少遠慮が薄れるものだ。怪しい意味ではない。
 俺としては、食堂で何も買わずに弁当を食べるのも居心地が悪いだろうと思い、助け舟を出したつもりだ。
「いつもはみんなとお昼を食べてるけど、私、隠し事が下手だから」
「それでか」
 おそらく自主的に席を外したのだろう。脳天気に見えて、思いつめる癖のある少女。
 柊妹のみと話すのは初めてだと思う。彼女の傍にはいつも姉や友人がいたり、白石少年がついていた。
 前者は柊妹の危うさを周囲が無意識に放っておけなくなるからだろうが、後者は――
「SOS団結成の数合わせのとき、どうして白石を連れてきたんだ?」
 柊妹は一旦手を休め、眉を顰めて小さく唸るといったいかにも「考え中」のポーズをとる。
 それらの動作にわざとらしさがまったく感じられないというのは、すごい才能なのかもしれない。
「理由はないけど……なんだかこう、グッときた! って感じがしたから、かな」
 グッとでガッツポーズするのが可愛らしかったので、「グッとか」「うん、グッと」ともう一度やらせてしまった。
「先生は、白石くんも何か変な力があるんじゃないかって思ってるんだよね?」
「……あくまで、そういうこともあるって程度には」
「じゃあさ、」
 このときの俺の懸念は、未だ扱いに困っている泉と白石少年に集中していた。
 その姿勢は甘かったと言わざるを得ない。既に能力が判明している者には、説明しただけで満足していたのだから。
「私が白石くんを選んだのも、その変な力のせいなのかな」
 彼女は、ハルヒを巡る裏の世界に関わった人間が皆抱く疑心暗鬼にかられているのだった。
185名無し@18歳未満の入場禁止:2008/09/23(日) 01:29:30 ID:8QgzTzff0
やれやれ。ぼくは支援した。
186名無し@18歳未満の入場禁止:2008/09/23(日) 01:30:49 ID:Gtr7Yaus0
 長門は「そういうふうに」造られていたし、朝比奈さんも全てを承諾の上で任務に当たっていた。
 元凡人・古泉も、様々な紆余曲折があったことを仄めかしていたが、結局は割り切ってSOS団に参加していた。
 柊つかさは、俺が知らないころの古泉と同じ問題を内に抱えている。その少女と、俺は今向き合っている。
「先生、私って、変なのかな?」
 どう答えればいいのか、俺はその術を持ち合わせてはいなかった。
 高校時代に顔を合わせた超能力者たちは、自分の存在に疑問を持っているそぶりなどなかった。
 おそらく、機関で過ごしていたころに通った道なのだろう。答えを出したから外に出られた。
 だが、目の前にいる、この少女は。
「……変じゃない、と言ったら、嘘になるな」
 謎の空間に侵入できる謎の能力を持っていることを、普通と言い切れるはずがない。言ったとしても気休めだ。
「だけど、お前に変な力があるのはお前のせいじゃない」
 しまった……これじゃ暗に「恨むなら力を与えた奴を恨め」と言っているようなものじゃないか。
「というより――いいか柊、すべての事象には理由がある」
「理由?」
「この先、お前の変な力が役に立つときが必ず来る。だから、今は気にするな」
 もっと気の利いたことは言えないものか――この職に就いてから、事あるごとにそう思うようになった。
 就職の本音が「なんとなく」だというのに、一端の教師になろうと思い始めている自分に驚きを隠せない。
「それに、グッとくるのは、別におかしなことじゃない」
「そうなの?」
「ああ、柊ぐらいの年頃にはよくあることさ」
 直感による人選なんて、うちの団長が最も得意にしていたことだ。
 いや、出会いなんてそんなもんかもしれない。誰が何と言おうと、俺がハルヒと出会ったのは偶然だった。
 全て決められた必然より、自分で選び取った偶然。どっちの方がグッとくる?
「そういえば、いのりお姉ちゃんは知らないって言ってましたよ」
 知らないって、何を。
「先生の看病なんかしてないって。照れてるのかな?」
「……え?」
 それは、いったいどういうことだ?
 さらに柊妹は頭上に電球を光らせんばかりの表情で、
「もしかして、キョン先生の夢だったのかも。夢に出るほどいのりお姉ちゃんが好」
「それはない」
 本人の前でばっさり斬る柊姉、本人はいないが実の妹の前でばっさり斬る俺。どっちもどっちだな。
 そっかー、と残念と無関心の入り混じったような相槌。女子って、なぜかこういうの得意だよな。
 昼食を食べ終わった時点で柊妹とは別れたが、いのりさんの矛盾は解消できず残った。
 俺は昨日いのりさんの言っていた花の名前がどうしても気にかかり、思い出そうと頭を捻って一日を過ごすことになった。


つづく
187名無し@18歳未満の入場禁止:2008/09/23(日) 01:32:05 ID:Gtr7Yaus0
 らっきー☆ちゃんねる

あきら「……」
みなみ「……」
あきら「……お、おは☆らっきー! ちょっと無言入っちゃってごめんなさーい、小神あきらでーす!」
みなみ「……アシスタント代理の、岩崎みなみです」
あきら「えーと、『今日は小野さんが体調不良で』? 『予告の実現も兼ねて』? みなみさんに来てもらっています!」
みなみ「ど、どうも……」
あきら「……えー……」

あきら様(話がもたねーっつーの! ムチャぶりすぎだろプロデューサーよぉ!)

みなみ「……あの、私はどうすれば」
あきら「えっ!? あ、あーそーですねー何か何か仕事はーっと」
みなみ「……」
あきら「つ、ついに! キョン先生が秘密を共有する道を選んでくれましたね!」
みなみ「……そ、そうですね」
あきら「やっと他の登場人物が話の本筋に絡めるわけですねー。みなみさんはどう思います?」
みなみ「良いことだと思います」
あきら「なるほどー。実はみなみさんもメインキャラ入り狙ってたりします?」
みなみ「い、いえ……私は、今の位置でも充分ですから」
あきら「えー、まったく出番がないのにですかー?」
みなみ「………」
あきら「………」
みなみ「…………」
あきら「な、なんかすみません! ほんとすみません!」

あきら様(やり辛ぇぇぇぇぇ! 本当に傷ついちゃってるじゃんこの人! 冗談のつもりだったのに!)

みなみ「……あ、時間みたいですよ」
あきら「え? あっあっじゃあ今日のらっきー☆ちゃんねるはここまで! ……みなみさん、いいですか?」
みなみ「え?」
あきら「あの、私がばいにーって言いますから、いっしょにばいにーお願いします」
みなみ「は、はい。がんばります」
あきら「では、いきますよー……せーの!」
あきら・みなみ「ばいにー☆」




みなみ「お疲れさまでした……」
あきら「お疲れさまでしたー」
小野「いやーすいません回復したんでちょっと顔出しに来ま」
あきら様「ガッシ! ボカ!」
小野「ギャッ! グッワ!」
188名無し@18歳未満の入場禁止:2008/09/23(日) 01:34:53 ID:Gtr7Yaus0
 次回予告


ひよりです。

サンタクロースをいつまで信じていたかなんていうのは、世間話にもならないくらいのどうでもいいような話スけど、
そんな話の中にもネタを求めてしまうあたり、自分の職業病を感じるっス。
いや、職業なんていえるほど誉められた実績は挙げてないんスけど、やっぱり心だけはプロ意識というか。
着地点がどこになるかわからないけど、目指す道があるってのはいいもんです。
私の場合はたまたまそれが世間様に顔向けできないようなもんだったってだけでして――って自重しろ私!

ま、まあ私事はおいといて次回の教師キョンキョン物語は!
第8話『GTK』――お楽しみにッ!




キョン「生涯一教師!」
こなた「ぐだぐだ
    ティーチャー
    キョンキョン」



支援ありがd
>>181の一行目、『五人の高校生』は『三人の高校生』に脳内変換お願いします
じゃ、次回もしくは妄想シリーズで ノシ
189名無し@18歳未満の入場禁止:2008/09/23(日) 02:00:10 ID:LMM33scVO
>>188
乙と言わざるを得ない
190名無し@18歳未満の入場禁止:2008/09/23(日) 06:48:44 ID:tgkrUmoP0
>>188
GJ
キョンの奴・・・いつのまにか桜庭先生にまでフラグ立ててやがる
191名無し@18歳未満の入場禁止:2008/09/23(日) 14:51:23 ID:znvgm/x40
まぁ、キョンキョン物語のキョンは大人だからな…
どんな人にもフラグ立て放題だっぜ!

ともかく乙
192名無し@18歳未満の入場禁止:2008/09/24(日) 20:41:05 ID:RLqTzP6r0
誰か書きあげるための元気をくれ…
193名無し@18歳未満の入場禁止:2008/09/24(日) 20:54:15 ID:D1uhnWAY0
>>192
みなみ「……頑張って」
194名無し@18歳未満の入場禁止:2008/09/24(日) 21:09:00 ID:VzHqR4sb0
>>192
ゆたか「が、頑張ってください!」
195名無し@18歳未満の入場禁止:2008/09/24(日) 21:11:23 ID:1OMrm2Ts0
>>192
ひより「頑張ってほしいっス!」
196名無し@18歳未満の入場禁止:2008/09/24(日) 21:11:56 ID:pv4sdcVM0
>>192
かがみ「見ててあげるから頑張りなさいよ!」
197名無し@18歳未満の入場禁止:2008/09/24(日) 21:49:56 ID:JXZl+m2AO
>>192
芋「GANBA!」
198名無し@18歳未満の入場禁止:2008/09/24(日) 22:10:16 ID:Jo9u/37aO
大阪
199名無し@18歳未満の入場禁止:2008/09/24(日) 23:24:39 ID:1OMrm2Ts0
そろそろお芋がおいしい季節ですね
200名無し@18歳未満の入場禁止:2008/09/25(日) 00:22:27 ID:BnF7Xf8VO
芋野郎の方は引退だがな
201名無し@18歳未満の入場禁止:2008/09/25(日) 00:52:39 ID:54jZE0bTO
俺は芋たんを信じてる
202名無し@18歳未満の入場禁止:2008/09/25(日) 07:57:14 ID:YY+QjWZwO
そんで木曜日
203名無し@18歳未満の入場禁止:2008/09/25(日) 17:14:02 ID:+vavFVfc0
俺も芋は信じてる

今いる職人は基本長編を書く人が多いからな
204名無し@18歳未満の入場禁止:2008/09/25(日) 17:23:26 ID:O/Xa0Jy80
長編も良いがたまには短編も読みたいときがある
205名無し@18歳未満の入場禁止:2008/09/25(日) 17:51:23 ID:+vavFVfc0
長編書いてる人にそこまで求めるのは酷だがな
俺もその一人だし
206名無し@18歳未満の入場禁止:2008/09/25(日) 18:06:19 ID:TSZVCUtk0
どこからが短編なのやら


ところで>>193-197にこなたがいない事に絶望を感じた
207名無し@18歳未満の入場禁止:2008/09/25(日) 18:51:20 ID:XVY6cIbn0
wikiに7〜8レス以上と書いてあるのでとりあえず長編に分類してるけど
ぶっちゃけ短編ばっかりでごめんなさい

>>206
俺はむしろパティが入ってないことに絶望した、流れ的に
208名無し@18歳未満の入場禁止:2008/09/26(日) 03:11:13 ID:REb2QqBv0
>>206
私はそんな簡単には出ないのだヨ(=ω=.)
209名無し@18歳未満の入場禁止 ◆7SHIicilOU :2008/09/26(日) 12:18:36 ID:CVQ3v4dfO
お題、くれ
キャラ指定と、なにか名詞
210名無し@18歳未満の入場禁止:2008/09/26(日) 12:42:37 ID:Scv5p19L0
古泉「失望した」
211名無し@18歳未満の入場禁止:2008/09/26(日) 12:47:57 ID:CVQ3v4dfO
……物の名前
212名無し@18歳未満の入場禁止:2008/09/26(日) 13:15:41 ID:Scv5p19L0
ドレッシング
213名無し@18歳未満の入場禁止:2008/09/26(日) 16:52:49 ID:Scv5p19L0
ttp://sukima.vip2ch.com/up/sukima005668.jpg

ちょっと新しい地平が見えてきた
214名無し@18歳未満の入場禁止:2008/09/26(日) 19:39:08 ID:kAGZVq5y0
>>213
見えてきたな
215名無し@18歳未満の入場禁止:2008/09/26(日) 19:47:15 ID:Vtl1r6Qo0
ひより「こ、これは…!」
216名無し@18歳未満の入場禁止:2008/09/26(日) 22:47:10 ID:kAGZVq5y0
ところで誰かOVA見た人いる?
217名無し@18歳未満の入場禁止:2008/09/26(日) 23:17:28 ID:GAaUM/Xs0
>>216
見てね〜〜
218名無し@18歳未満の入場禁止:2008/09/26(日) 23:38:04 ID:dzIavryE0
>>216
見たけど、ここで話してもいいのだろうか
219名無し@18歳未満の入場禁止:2008/09/26(日) 23:40:58 ID:Scv5p19L0
過疎って誰もいなくなるよりはマシかもしれん








そういや昔は避難所と本スレの間の空気は悪かったなぁ
220名無し@18歳未満の入場禁止:2008/09/26(日) 23:45:37 ID:dzIavryE0
OVAはアニメを若干カオス化した感じだった
そうじろう、ゆい姉さんは出ず、あやのも少なめ……

だけど、メインは冷遇されがちなみゆきも含め、多かった
221名無し@18歳未満の入場禁止:2008/09/27(日) 02:34:41 ID:yEIBwfsn0
    /   / : . : . / l | `、 _ _ヽ :  .\::.::.::.::.\
   ./.// : / : ,/- 、 ', !  ´、 `丶: . :`;:.::.}:::.::.::.ヽ
   ′ /  :/i : /     丶   丶`、 : . ト、:i::.:}:::.::.:::.丿
      /.//:.|. : .,′           ヽ: .: |:::ヾ∧::::/     
     ,'/  | : | : ハ   _ _     ,、=≡ミ`,: .:ト、乂 卞´
     ′ 1: ハ:|バ'´``` ,     、、 `;.:| :}: : .U
       ∨  `ゝ} ゙´   _ ‐、     ,__レノ: : ノ│   おーいも♪ おーいも♪
             _込、_   ヽ _丿  _ イ:/: : .,.'  |
          f'~゙'''ー汀ニ─-r‐ ´〈,/ : : ,:イ: .  |
         _|::::::`"゙゙}::_;//廴__/   :/く;|: i.  |
        ∠,r‐‐、;;;;;;{イ f~ ̄/  .//~`}: l.  |
           / r'"_ソ:.丿{ ,!  / /   〃   |: l.  |
222名無し@18歳未満の入場禁止:2008/09/27(日) 03:26:33 ID:koLbW/nAO
>>221
呼んだ?
223名無し@18歳未満の入場禁止:2008/09/27(日) 13:51:12 ID:bZ7G9r/s0 BE:1351269959-PLT(18100)
いきなりですが、投下します。
※少々、痛々しい描写があるかと思われます……。


“answer”

 ――禍々しく抉れたアスファルトの大地を、一人の少女が息を切らしながら駆ける。
 鼻をつくのは、狂気じみた硝煙のニオイ。少女が地を蹴る度に真っ黒な粉塵が立ち上り、
足下を飛び散った。

 ――何も残っていない。
 少女が知っているこの街の面影は、今や毛ほどにも残っていない。見るも無残に荒廃し、
そこここに死臭が漂っている。
 周囲にヒトの姿はなく、少女は独りだった。他は皆物言わぬ肉塊と化し、その脇を走り抜ける
少女を虚ろな目に映しながら、ただその肢体を地に横たえるのみ。少女は爆発しそうになる思いを
ぐっとこらえ、ただ遮二無二走った。ぎゅっと目を瞑り、一心不乱に駆け続けた。黙っていれば、
あっという間に気が狂ってしまいそうだった。

 「あっ――」

 その時、少女の痩躯が宙に浮き、冷たい地面に投げ出される。足元に転がっていた「ナニカ」に足を取られ、
勢いよく躓いたのだ。少女は慌てて立ち上がると、ようやく背いていたモノに目を向ける。
 その刹那――。
 心臓が一際高く跳ね上がり、背筋を冷たい何かがするりと駆け抜けた。嫌な汗がじっとりと少女を包み込み、
濡らす。同時に全身が激しい悪寒に襲われ、ガクガクと震えだした。平衡感覚が失われ、景色がぐらりと揺れる。

 暗い。少し離れた場所で、信号機が赤く弱々しく瞬いているのが見える。その光は一瞬自らの存在を
誇示するかのように強まると、やがて蝋燭の灯が消えるように、ゆっくりと途絶えた。

 「つ…かさ……」

 手に持っていた機銃を力なく手放す。ガシャリ、とやけに大きな音が周囲に響いた。

 「つかさっ……!?」

 少女はかすれた声で叫ぶと、目前に横たわるヒトの前に跪き、か弱い背を抱きかかえる。
すると、その煤けた顔が一瞬歪み、空虚な瞳がぼんやりと天を仰いだ。
224名無し@18歳未満の入場禁止:2008/09/27(日) 13:54:18 ID:bZ7G9r/s0 BE:1891777379-PLT(18100)
 「い…たい、よぉ……」
 「つかさ、わかる!? 私よ、かがみよ!」

 ――柊つかさと、柊かがみ。この二人の少女は、二卵性双生児――俗に言う、双子の姉妹だった。
二人とも、何の変哲もない女子高生だった。

 日本全土が臨戦態勢に入ってから早幾月。少女たちは何も知らされぬまま、冷たく重たい銃を渡され、
ろくな訓練も受けずに戦場へと駆り出された。それほど、我が国の戦況は芳しくないものだったのだろう。
 かつての仲間たちは行方知れず。だが、気にかけている暇などない。
 僅かな油断が死に直結する世界。今まで自分たちが生きていた世界がどれだけ生温く、平和で、
穏やかなものだったかが実感できる。誰もが、自分の身を守るので精一杯だった。

 「つかさ、お願い! 返事してよ、ねえ!?」

 戦争――。
 それはテレビの向こう側の、所謂フィクショナルな世界にのみ存在するものだと思っていた。
 否、表面上は知っていた。過去にも、そういった国同士の争いが幾つもあったということ。
そして、その結果我が国がどんな洗礼を受けたのかということまでも、自分は知っていた。
 しかしその裏では、戦争は自分たちにとっては、言わば対岸の火事。その影響こそあれども、
自分たちに直接火の粉が降りかかることはない。そう信じてやまなかったのだ。

 自分たちは、平和の中に生まれてきた。そんな自分たちの死に場所は平和の中だけだ、と。

 「い、たい……おなかが、おなかがあつい…あふれて、くる、あつくていたいのが、いっぱい……」

 人間はいつも、大切なことに気づくのが遅い。否、無意識の内に気づかないようにしているのかもしれない。
 ――本当は、かがみは気づいている。気づいているのだ。
 目の前のたった一人の妹が放つ、死の匂いに。
 戦いによって蝕まれ、ボロボロに朽ち、荒みきった世界が辿るべき未来に。
 そして、そんな世界に身を置く自らの末路に。
 しかし、それら全てを受け入れられるほど、かがみは強くなかった。
 ひび割れた器にいくら水を満たそうとしても、それは零れ落ちるだけだ。最悪、その水の重さに耐え切れず、
器自身が崩壊してしまう。

 かがみの器は、一滴の現実すら受け入れられないほど脆く、弱いものだったのだ。
225名無し@18歳未満の入場禁止:2008/09/27(日) 13:58:55 ID:bZ7G9r/s0 BE:300282252-PLT(18100)
 「つかさ、お願い、もう喋らないで! 大丈夫だから、私が来たから!」

 何が、大丈夫なのか。自分に一体、何ができるというのか。
 血の気が引き、氷のように冷たくなった手を握ってやることしかできない。
 痩せ細り、骨張った背をさすってやることしかできない。腹部から止め処もなく溢れ出る血を、
拭ってやることしかできない。
 あまりにも、無力。それでも、かがみは今にも消えそうな命の灯火に必死でしがみ付く。

 「おなか、いたい、くるしい、く…くちのなか、へんなあじ…き、きもち…わるい……」
 「つかさ――」

 つかさが激しく咳き込み、真っ赤な鮮血が飛び散る。「死」がよりいっそう強く香り、冷たい気配が
つかさの全身から迸った。
 死の気配――。
 かがみは本能的にそれを感じ取り、まるで駄々をこねる幼子のように、いやいやと首を振り抗った。

 「お、おなかのなか…まだあつい…ぐちゃぐちゃ、ぐちゃぐちゃだ…ぜんぶ、だしちゃえば、
らくになるかな…らくになるかなぁっ……!?」
 「いやっ! つかさ、だめ、だめっ! 動いちゃ、だめ――」

 つかさはよろよろと四つん這いになると、獣のような声を上げ、大量の血を吐き散らす。滝のように
流れ落ちる鮮やかな緋色を目の当たりにし、かがみはハッと息を呑んだ。黒色のアスファルトの上
いっぱいに広がり、どす黒い池をつくっていく。
 思わずむせ返るほどの、酸鼻な死の匂いが充満した。白目を剥き、苦しげに呻き、地面をしきりに
殴打するつかさ。腹部からの出血もおぞましく、まさに今のつかさは凄惨の一語だった。

 かつての元気なつかさの姿が、走馬灯のように駆け巡る。懐かしい思い出。退屈で、欠伸の出るくらい
平和だったあの頃――。
 失って、初めてわかることがある。あの頃、間違いなく自分たちは幸せだった。でも、当時はそんなこと、
微塵も考えたりはしなかった。そんなことを考えるのが馬鹿らしいくらい、平凡でつまらない毎日だった。
 だが、今はあの日々が恋しい。あの日常が戻ってくるのなら、かがみはどんなことだってやってのけられる
気がした。どんな大切なものだって、投げ打つことができる気がした。
226名無し@18歳未満の入場禁止:2008/09/27(日) 14:03:05 ID:0yo+zGMQ0 BE:450423353-PLT(18100)
 ――そんな、儚い願い。かがみは血走った目を限界まで見開き、金魚のように口をパクパクと開閉する。
まともにつかさを直視しようとはせず、何か言葉を発そうとするが、言葉になって出てこない。ただ、かすれた
吐息が喉の奥から漏れ出るだけ。
 つかさは一頻り吐血すると、やがて糸の切れた操り人形のようにプツリと崩れ落ち――

 そのまま、二度と動くことはなかった。

 「あ…あぁ……」

 かがみの中の何かが、音を立てて砕けた。
 初めて向き合った現実。最も親しく、身近にいた者の最期。あまりにもあっけなく、儚い生命……。
 ――辺りは、不気味な静寂に包まれていた。
 ひゅー、ひゅー、と。自らの息遣いが、まるで隙間風のように小さく、哀しく聞こえた。
 とうに枯れたと思っていた涙が、しとどに溢れてくる。口角がピリピリと引きつり、乾いた嗤いが絶えずこぼれる。
 皆、死んでしまった。ミンナ、散り散りに吹き飛んでしまった。
 大切なヒト。生きる希望。願い。思い出。ボロボロになった自分を今日まで支えてきた、全て――。

 ややあって、かがみはよろよろと立ち上がる。
 そして、まるで幽鬼の如き仕草で腰に差していた拳銃を手に取り、その銃口を深く咥え込んだ。
 ――このまま引き金を引くことができれば、どんなにラクだろうか。
 しかし、無理だった。自分がどんなに死を望んでも、身体は懸命にそれを拒み、生きようとする。哀れな「命」に
しがみ付こうとする。なんて無様な、生への執着。根本に根付いた生物としての本能に今は心から嫌悪し、
吐き気すら催した。
 引き金にかかった指には、一切の力が入らず――やがて、かがみは放心したように拳銃を投げ出した。
 一体、自分はどうすればいいのだろう。死ぬのも怖い。生きるのも怖い。そんな矛盾の境界で、
独りぼっちで震えている少女。差し伸べられる手はなく。助けを乞い、闇雲に突き出した己の手は血まみれで――。
 かがみは、まるで夢遊病者のような足取りでふらふらと歩き出した。

 ――いっそ、知らぬ間に敵に討たれてしまえば。
 そんなことを虚ろに考えるようになったのは、当てもなく歩き始めてから間もなくだった。
 冷たい風にのって、何処からか饐えた空気が運ばれてくる。カサカサと音を立て、足下をすり抜けるのは
一枚の枯れ葉。何の気なしにクシャリと踏みつけると葉は粉々に砕け、風に吹かれて消えた――
 その刹那。かがみは衝動的に腰の拳銃に手を伸ばし、その銃口を自らの眉間へと突きつけていた。
 銃を持つ手が震える。撃てるわけがない。撃てるわけがないのに、先ほどからかがみは延々と同じ所作を
繰り返している。
227名無し@18歳未満の入場禁止:2008/09/27(日) 14:07:58 ID:6WwjWJ8C0 BE:960902584-PLT(18100)
 「もっていけ、さいごにわらっちゃうのは、わたしのはず……」

 そして、そのまましばらく銃を弄んでいたかと思えば、途端に歌を口ずさみ始めた。
空いているほうの手で固く握り締めているのは、血に染まった黄色いリボン。これが誰の
遺品であるかは、もはや言わずもがなである。かがみは銃をしまい込むと、手元のリボンを
さも愛おしそうに眺め、撫でる。その顔には、微笑さえ浮かんでいた。

もはやかがみの目には、亡き妹の幻影しか映っていないように見えた……。

「誰!?」

 だが、かがみは一瞬視界の端を過ぎった不審な影に、何よりも敏感に反応した。
 拳銃を構え、暗がりに向かって声を張り上げるかがみ。そのまま間髪入れずに一発、二発。
静まり返った街に、乾いた発砲音が響く。
 ――殺す気は、さらさらなかった。
 むしろ、逆。味方でもいい、敵ならなおいい。出てきて欲しかった。出てきて、自分を躊躇なく
殺して欲しかった。

 静寂――。
 かがみはぎゅっとリボンを握り締め、瞬き一つせずにただ一点を睨み続ける。だが、反応はない。
闇はただ沈黙のみを返し、苛立ちを覚えたかがみは我武者羅に拳銃を乱射した。
 
 「そこにいることは、わかってるのよ! さっさと出てきなさいよ!!」

 立て続けに鳴り響く銃声が、静謐な大気を劈く。引き金を引く指に手ごたえがなくなり、そこで初めて
かがみは弾切れにも関わらず引き金を引き鳴らしていたことに気づいた。
 すかさず慣れた手つきで弾丸を込め、再び発砲する。今度は、暗灰色の空に向かって。

 「お願い、出てきて…出てきて、私を殺して……」

 かがみは、敵とも味方ともつかない何者かに心から哀願する。つつ、と頬を伝うのは、一筋の涙。
かがみはそれを気丈に拭うと、再び空に銃口を向けた。一際高く響いた銃声が、いつまでも辺りに木霊した。

 「辛いのよ…みんな、死んじゃった。たった一人の妹も、今さっき目の前で死んじゃった……」

 唐突に、かがみは暗がりに足を踏み入れながら、ぽつり、ぽつりと語りだす。奥にいる何者かに向かって
なのか、それとも自分に向かってなのか。
 やがて、ひっそりとした息遣いが聞こえてきた。かがみは聴覚を最大限にまで研ぎ澄まし、ヒトの気配を追う。
 路上に放置された、ワゴン車――。
 無数の流れ弾や爆撃を浴び、今や原型を留めず鉄屑と化したそれの側面に、そっと手を触れる。ひんやりとした
感触。その向かい側から、かがみは何者かの気配を感じ取った。
228名無し@18歳未満の入場禁止:2008/09/27(日) 14:11:54 ID:6WwjWJ8C0 BE:2162031089-PLT(18100)
 「俺が、殺した」

 車の陰から、一人の青年が姿を現す。だが、かがみはまるっきり無反応だった。
全てをそっちのけで、今しがた青年が発した言葉を何度も頭の中で反芻していたからだ。

 「……え?」
 「殺した。この付近にいた生き残りは、全員俺が撃ち殺した」

 何の感情も感じられない、氷のように冷たい言葉。かがみが、わなわなと肩を震わせる。
信じられないといった顔つきで、青年の顔を凝視する。

 「うわああああああああああっ!!!」

 刹那、かがみは絶叫し、青年に向かって何度も引き金を引いた。
 炸裂する火花。青年は間一髪で反応し、車の陰に転がり込んだ。背後で民家の壁が
ボロボロに砕けたのを認め、全身が総毛立つ。
 青年は大きく息を吸うと、懐の拳銃を握り締めた。

 「あんたが、あんたが、つかさを、こ、殺した――!?」

 かがみは狂ったように問うが、青年は何も言わず車の周りを回り、素早くかがみの背後を取った。
そして、容赦なく次々と鉛弾を撃ちぬく。発砲後、青年は半ば勝利を確信した。
 ――だが、しかし。
 ふつふつと湧き上がる未だかつてない怒りが、全身の感覚を限界点以上にまで研ぎ澄ましているのか。
青年が放った勝利の弾丸は、空しくコンクリートの大地に突き刺さった。弾丸が放たれる瞬間、かがみは
咄嗟に地を転がり、降り注いだ弾の全てを回避したのだ。

 「はああああああああっ!!!」

 すぐさま体勢を立て直したかがみが、銃を片手に突進する。血走った眼が捉えるのは、
目の前の男の急所のみ。かがみは余計なことは一切考えず、ただ真っ直ぐに青年の死を求め、引き金を引いた。
 何も、つかさのことだけではない。戦いが始まってから、かがみの中に溜まりに溜まってきた感情。
それら全てをかがみは解き放ち、その鋭く凝り固まった矛先を目の前に現れた仇にぶつけているように見えた。

 ――やがて弾が切れ、かがみは手近な物陰に隠れると、急いで弾丸を装填した。その隙に、青年も素早く身を隠す。
 
 「どこ!? どこに隠れたのよ!?」
 
 辺りに、かがみの怒声が響き渡る。だが、青年が出てくる気配はない。体中の全神経を研ぎ澄ましながら、
かがみはじりじりと前進する。
 その刹那。どこからか投じられた、一つの小さな黒い塊。それはゆっくりと放物線を描き、かがみの視界の隅で
くるくると回転し――
229名無し@18歳未満の入場禁止:2008/09/27(日) 14:17:47 ID:WbUjDwMc0 BE:1351269959-PLT(18100)
 「くっ――!?」

 本能の命じるままに、かがみは真横に跳躍した。抉れて変形したアスファルトの上を
ゴロゴロと転がり、瓦礫の陰に伏せる。
 その瞬間、鼓膜を劈くような爆音が大気を震わせ、先ほどまで自分が立っていた地面を
粉々に消し飛ばした。そのあまりの威力に、怒りに火照っていた頭が急速に冷やされていく。

 ――もし、あのままあそこにいたら、自分はどうなっていたのだろう?
 額から冷や汗が流れ落ち、鼻先まで伝う。今まで恐怖を麻痺させていた怒りが衰え始め、
かがみの中で「死」という存在が徐々に大きなものとなっていく。
 頭の片隅に、一瞬つかさの姿が過ぎった。苦しみ、血を吐き、生死の淵を何度も往復している――。

 「すまん……」
 「えっ――?」

 その時、不意に聞こえた背後からの声に、かがみは反射的に振り向く。その先にあったのは、
鈍く光る真っ黒な銃口だった。
 間もなく、乾いた銃声がひとつ。その弾丸は惑うことなく、真っ直ぐにかがみの左胸を貫いた。
 
 「あ――」

 永遠とも呼べるような、一瞬の静寂の後。かがみの躯は急速に力を失っていった。瓦礫の上に
仰向けで倒れこみ、朦朧とした目がぼうっと虚空を映し出す。
 ドクドクと脈打つ毎に、大量の血液が体外へと吐き出されるのがわかる。
 熱い。熱いけど、寒い。手足はまるで氷のように冷たいのに、胸のあたりは煮え滾ったマグマのように
熱い。茫漠とした意識の中で、かがみはそのコントラストに首を傾げた。
 ――視界が、少しずつ暗みを帯びていく。おぼろげに、最期の時が近いのだと悟る。
 何かに突き動かされるようにして、ポケットから薄汚れたリボンを取り出す。もはや感覚などほとんどない
左手で、力いっぱい握り締める。そして、そのまま空へ掲げ――

 「何も…見えな……」

 かがみは哀しげに嗤うと、ぱたりと手を下ろした。青ざめ、冷たくなった頬には一筋の涙。
ゆっくりと滑り落ち――やがて瓦礫にしみ込んで、消えた。
230名無し@18歳未満の入場禁止:2008/09/27(日) 14:23:19 ID:3vuc6Vhj0 BE:1081015766-PLT(18100)
 「……痛い終わりを迎えるのは、俺だけでいい」

 ――付近の倒壊した民家の窓からむしり取ったカーテンをかがみの亡骸にかぶせると、
青年はまるで懺悔をしているかのような面持ちで呟いた。
 足下の瓦礫に腰を下ろし、凍て付くような夜気に全身を震わせる。ゆっくりと吐き出す息は白く、
このまま雪が降り出しても何ら不思議ではなかった。
 悴んだ両手をこすり合わせ、ぼんやりと空を仰ぐ。明かりの一つもない街のど真ん中にいるからか、
今夜はやけに空が透き通り、星が輝いて見えた。
 ――自分でも妙なくらい、気分は穏やかだった。冷たく静謐な空気の中、自分の心臓の音だけが
大きく聞こえる。それは一定のリズムでゆったりと鼓動し、決して早鐘を打つようなことはなかった。

 「……さて、そろそろだな」

 ――そして。青年は静かに覚悟し、頭上を見上げる。
 爆音をかき鳴らしながら、こちらに接近してくる戦闘機。やがて青年の真上に到達すると、戦闘機は
用意していた大きな塊を静かに落とす。刹那、戦闘機は猛スピードで加速し、気がつけばあっという間に
青年の可視領域を越え、飛び去った。

 「やはり、それがお前の答か。ハル――」

 青年の頭上で塊が爆ぜ、真っ白な光が駆け抜けた。否、本当に白かったかどうかはわからない。
光を光と認めた瞬間目は焼かれ、辺りは正真正銘真っ白に変わっていた。
 世界中に存在する全ての形あるものが一気に崩壊したかのような、そんな想像を絶する轟音が響き渡り、
その刹那、すぐさま静寂が訪れた。おそらく、耳が壊れたのだろう。
 躯の感覚はない。もはや熱いとも冷たいとも、痛いとも感じなかった。痛かったのは、最初の一瞬だけ。
思わず絶叫をあげたが、生憎喉のほうが先に潰れ、声にならなかったようだ。
 ――世界の終わりを、余すところなく全身で感じる。その筆舌に尽くしがたい痛みを、青年は独りで抱いて堕ちる。
それが、「扉」を開いてしまった自分に科した罰。そして、彼女へのせめてもの贖罪だった。

 白色に浄化された世界の奥で、青年は懐かしい光景を見ていた。

 薄暗くて、静かで、寂れた空間に二人きり。
 あの日、世界に嫌気が差したお前が閉じこもった牢獄。その中で、俺は罪を犯した。
 “sleeping beauty”
 その言葉の意味もわからぬまま、俺はお前を拒絶し、否定した。お前の気持ちなど一切考えぬまま、強引に
その扉を開いた。「鍵」である自分にとって、それはとても容易いことだった。
 だが、あの日から。あの日から、全ては変わってしまった。扉の奥の世界は見る影もなく変貌し、気づけば
俺の周りには誰もいなくなっていた。
 そして、俺は――。
 その荒んだ世界と共に生き、共に滅びることを決意した。

 ――その結果がこれだ。何もない、真っ白な世界。
 自分は今、生きているのか。それとも死んでいるのか。それすらもわからぬまま、ただ意識だけをふわふわと
浮かべている。
 その意識も、徐々に霞み――青年は、静かに瞼を閉じた。そんな行為が本当にできたのかは怪しいところだが、
確かに今、目の前には黒の帳が下りた。

 ――ごめんな。
 それを境に、青年の意識はとっぷりと闇の奥底に沈んだ。
231名無し@18歳未満の入場禁止:2008/09/27(日) 14:24:24 ID:3vuc6Vhj0 BE:360338843-PLT(18100)
以上です。スレ汚し失礼しました!
232名無し@18歳未満の入場禁止:2008/09/27(日) 17:11:07 ID:1bbIhHRL0
>>231
233名無し@18歳未満の入場禁止:2008/09/27(日) 18:08:00 ID:1bbIhHRL0
さっきOVA見てきた
とりあえず、みなみかわいいよみなみ
234名無し@18歳未満の入場禁止:2008/09/27(日) 18:57:40 ID:n7Ef899v0
>>231
乙ー

もってけの歌詞がこんな物悲しく見えたのは初めてだ・・・
235名無し@18歳未満の入場禁止:2008/09/27(日) 22:10:01 ID:1bbIhHRL0
9月12日がみなみの誕生日だというのを最近知ったので、今からみなみのSSを投下しようと思うんだがいいか?
236名無し@18歳未満の入場禁止:2008/09/27(日) 22:39:24 ID:qMv2/GRD0
投下していけない訳がないだろう…ここはそのためのスレだぜ?
237名無し@18歳未満の入場禁止:2008/09/27(日) 23:00:15 ID:1bbIhHRL0
ありがとう。なら投下させてもらう

『サプライズ』




「キョンさん。ちょっといいでしょうか?」
 授業と授業との間の休み時間。俺はいつもこの時間帯は寝て過ごそうと思っているのだが、後ろから呼ばれたため仕方がなく振り向く
 後ろには高良がいた
「なんだ?」
 授業でも寝ていたにも限らずまだ眠い
 寝すぎると逆に眠たくなる事って、たまにあると思う
「いえ、実はみなみちゃんのことなんですが……」
 みなみ?……ああ、岩崎の事か。岩崎がどうしたんだ?
「みなみちゃん、もうすぐ誕生日なんですよ。それで、私の家で誕生日会をしようと思いまして」
 そうなのか、それはおめでたい。で、俺と何の関係があるんだ?
「その誕生日会に出席して欲しいんですよ」
 俺が誕生日会に?ちなみに聞くが、他は誰が来るんだ?
「私に泉さんにかがみさん、つかささん。それから、小早川さん、田村さんにパトリシアさんです」
 そんな女性ばかりの場に俺が居合わせるのは野暮ってものじゃないのか?
「そうかもしれませんが……みなみちゃんのためだと思って、お願いします」
 高良は俺のほうをじっと見て強く頼み込む
 そんな目で見ないでくれ、俺は押しに弱いんだ


 九月の十二日
 俺は高良の押しに対し一度は断ったのだが、次の休み時間には高良と小早川と言う、珍しい組み合わせで俺のところに頼み込みに来た
 流石に二人がかりで頼み込まれ、ひたすらに拒否をしているとクラスの視線も冷たくなっていき、とうとう耐え切れず俺は渋々了承した
 それにしても、何でそこまで必死に頼み込むんだろうか
 ただ、こっちにも条件をつけさせてもらった
「ところで、プレゼントはどうしましょうか?」
 俺の隣でそう尋ねてくる男、古泉を一緒に連れて行くといった条件だ
 男一人で女だらけの誕生日会行くのは本能寺の変を明智光秀ただ一人で行うようなほど無謀なものなので、古泉を連れて行くのは明智が部下を連れて信長を倒しにいくようなものだ
「僕はあなたの部下ですか?」
 俺は明智じゃないからお前も部下じゃねえよ。あと、顔が近い
「それならいいんですが。さっきも言いましたが、プレゼントはどうしましょうか?」
 そうだな、岩崎の好きそうなものなんてよく分からないからな。とりあえずはデパートに来たが、どうしたものか
「岩崎さんは“カワイイ”と言うより“カッコイイ”といった感じの女性ですからね。アクセサリーとか好きそうじゃないでしょうか?」
 どうだろうか、岩崎は私服でアクセサリーをつけてるのを見た事がないからな
 それに“カワイイ”より“カッコイイ”か。俺には可愛く見えるが、俺の目はおかしいのだろうか?
「そうですか。悩みどころですね……」
 そう言うと古泉はデパートを隈なく詮索しにいった
 俺はと言うと古泉にはああ言ったが既にある程度買うものを決めていたので売り場へと直行した
238名無し@18歳未満の入場禁止:2008/09/27(日) 23:01:28 ID:1bbIhHRL0
 会計を済ませ、古泉が戻ってくるのを待つ
 暫くすると、俺のポケットが震えだす
 携帯を取り出すと、相手は古泉からのようで、俺は携帯の通話ボタンを押す
「閉鎖空間が発生しました」
 第一声がそれか
「すいません。急いでいるもので、申し訳ありませんが今日の誕生日会には出席できませんので」
 お、おい待てよ。なら俺一人になるじゃないか
「はい。時間がありませんので、これで。成功をお祈りしてます」
 そう言うと古泉の方から電話を切った
 また今度飯でも奢らせてやる
 結局、明智一人で信長を倒しにいく羽目になってしまった。こうなったらさっさと済ませてなるべく早くお暇させてもらおう
 女八人に男一人は流石に居たたまれない気持ちになるからな
 最後の成功を祈るってなんだったのだろうか

 高良の家の最寄の駅に降りる
 ここからは少し慎重に行動しないといけない
 岩崎を驚かすため、岩崎に見つかったら元も子もないからな
 無事、岩崎に会わずに高良の家に入ることが出来た
 高良の家では既に俺以外の全員がきており、皆誕生日会の準備を進めていた
 俺はみんなに古泉が来ないことを告げると
「フッフーン、やっぱり古泉くんは空気を呼んでくれたんだネ」
 と泉は言った
 それはどういう意味だ泉。それなら、俺も場違いだろうに
「まぁまぁ、それより準備を進めようヨ」
 と言われたので俺も作業をすることとなった

 金持ち主催のパーティとはやはり豪勢になるものだ。とつくづく思う
 机の上にはフランス料理のフルコースのようなものが並べられ、ワイングラスまで添えられている。飲むのはジュースだが
 さっき高良の母親が持っていたケーキもここにいる全員でも食べきれるかどうかと言うほど大きなワンホールケーキで中心には堂々と「みなみちゃんお誕生日おめでとう」と書かれていた
 部屋の飾りもしっかりとされており、クラッカーも準備し、あとは当の本人が来るのを待つだけなのだが……
239名無し@18歳未満の入場禁止:2008/09/27(日) 23:02:48 ID:1bbIhHRL0
「大変です!」
 岩崎を呼びにいった高良が慌てた形相で戻ってきた
 高良曰く、犬の散歩に行ったきり帰ってこないらしい
 それだけなら帰ってくるのを待てば良いのだが、どうやらこんなに遅いことは珍しいらしく、ましてや日が沈んでいる今は尚危ない
 と言うわけで俺が岩崎と犬を捜索する事とした
 何で俺だけかって?そりゃ、他の女子がいないと思うが不審者なんかに出くわしたら危ないからな

 高良に教えてもらった岩崎の散歩ルートを逆走する
 すると岩崎は以外に簡単に見つかった
 散歩ルートから少し逸れた場所にある公園にブランコを少しだけ揺らしながら座っていた
「岩崎!」と言いながら岩崎の方へと歩み寄る
 岩崎は俺に気づくと逃げるようにブランコを降り犬を連れて走っていった
 俺も必死に岩崎を追いかける
 しかし、岩崎も中々運動神経が良く俺が必死に追いかけても余りその差は縮まらない
 これだと追いかけるだけ無駄か、と思っていると
 ズテッ、と岩崎が石に躓き転んだ
 その好機を俺は逃さず岩崎へと追いつく
「おい、どうして逃げるんだ」
 岩崎の顔を見ると、先程まで泣いていたのか目が赤くなっているのがわかる
「何で泣いてるんだ?」
 と聞くと岩崎はさっきまで閉じていた口を開いた
「……先輩のせいですよ」
 俺のせい?

 とりあえず俺は高良の家に岩崎が見つかったことを報告した後、二人でベンチへと腰をかけた
 俺は岩崎に何もした覚えはないのだが、とにかく俺が岩崎を泣かした理由を聞き出すためだ
「で、俺はいつ岩崎に泣かれるような事をしたのか教えてくれ」
「散歩をしていたら、先輩がいたんです」
 ん?俺は誰にも見られてなかったつもりだったのだが……と言うより、何故それが岩崎の泣きにつながるんだ?
「……やっぱり、鈍感なんですね」
 おい、やっぱりってどういうことだ。それに俺は鈍感なつもりはないぞ
「そこが鈍感なんですよ」
240名無し@18歳未満の入場禁止:2008/09/27(日) 23:03:31 ID:1bbIhHRL0
 俺は自分が鈍感ではないと否定を心の内でしていると岩崎は話を続けた
「……私が、何故先輩がみゆきさんの家に行ったのを見て泣いたのだと思いますか?」
 それはサンタクロースを信じていた子供がクリスマスの深夜に目が覚めたらお母さんがプレゼントを置いていたのを見たのと同じで、サプライズパーティを知ってしまい、サプライズじゃなくなったからじゃないのか?
「そうだったんですか……」
 どうやら岩崎はサプライズパーティが行われることを知って泣いたわけではないらしく、少し驚いた表情でこっちを見た
 確かに、それだけで泣くとはどれ程までにそのパーティを楽しみにしていたのだろうかと思ってしまう
 俺が答えをあぐねていると岩崎は言った
「私はパーティの存在を知って泣いてたわけではありません。さっきパーティの事を聞いて知りたくなかった、とは思いましたけど」
「だったら、何でそんなに目が赤くなるまで泣いてたんだ?」
「……先輩とみゆきさんは付き合ってますか?」
 ない。断じてない
「そうですか……。なら、今から原因を言います」
 そう言って岩崎はおもむろに話し始めた

「先輩がみゆきさんの家に入ったのを見て泣いたのは事実ですが、理由は別です」
「その理由を教えてもらえるとありがたいんだが」
 言いたくない理由なのだろうか、岩崎は黙りこくった
 ただ俺としても理由を知らないことには改善はできないため、聞いておきたいものである
「……それは、あなたとみゆきさんが付き合ってるのかと思ったからです」
 はい?
「つまり、失恋したと思ったからです」
 いまいち言ってる意味は分からないが、俺に対して失恋したって事はつまり……?
「私は先輩の事が好きです」
 率直な言葉が返ってきた
 岩崎は恥ずかしそうにそういい、顔を赤くしてまた黙り込んだ
 それにしても、岩崎が俺の事を好きだったなんて思ってもいなかった
「あなたは……私のこと、どう思ってるんですか?」
 赤くなった顔を上げ、俺に尋ねてきた
 俺としてはこういった経験はないため、どう言ったら良いのか分からない
 ただ一つ、返事は決まってはいるのだが、俺自身もあまり素直ではないからな
241名無し@18歳未満の入場禁止:2008/09/27(日) 23:04:22 ID:1bbIhHRL0
 長い沈黙の後、俺は口を開いた
「岩崎、俺はお前に誕生日プレゼントを用意してある。一つは高良の家に置いてきたぬいぐるみ」
 元々のプレゼントはこれだけのつもりだったんだがな
「一つってどういう意味ですか?」
「二つあるって意味だ。もう一つのプレゼントは、岩崎の言う事を一度だけ何でも聞いてやる。死ねと言ったら死ぬし、二度と話しかけるなといったら二度と話しかけない」
 俺がそう言うと、岩崎は少し間をおき、理解したのかこう言った


「私と……付き合ってください」


「お安い御用さ」
 俺が了解の返事をすると、岩崎は顔を真っ赤にして俺に抱きついてきた
 少し、服が濡れていることに気づく
「泣いてるのか?」
「はい……。だって……嬉しかったから」
 涙声で岩崎はそう答えた
 俺は岩崎を包み込むように抱き返す
 暫く俺と岩崎は抱き合っていたのだが
「ワン!」
 と岩崎の犬が吠えた事により、終了した

「先輩」
 俺と岩崎、そして岩崎の犬、チェリーと一緒に高良の家に向っている途中岩崎が俺の事を呼んだ
「どうした?」
「その……手を握っていいですか?」
 なんだ、そんなことか。それぐらい、付き合ってるんだし別に構わないさ
 そう言って俺は岩崎の手を握った
 岩崎の手は小さく、それでいて温かかった
 この時、俺の中で「手が冷たい人は心が温かい」と言うのは嘘である事が確証された
 岩崎の手が温かいのだから、嘘に決まっているだろう
「あと、私のことも“みなみ”って呼んでもらえますか?」
「ああ、わかったよ。みなみ」
 俺が下の名前を呼ぶといわ……みなみはこっちを向いて、ニッコリと笑った


 さて、早く高良の家に行って誕生日パーティを楽しむか。みんなも待ちくたびれてるだろうから、この吉報と共に急ぐとしよう――
242名無し@18歳未満の入場禁止:2008/09/27(日) 23:06:37 ID:1bbIhHRL0
終わりです
駄文スイマセンでした
おかしな所がいろいろとあると思いますが、余り気にしないでくれたら嬉しいです

『夢と現実』の続きも書かないと……
243名無し@18歳未満の入場禁止:2008/09/28(日) 00:25:01 ID:AhJY6LiwO
>>242
GJ
244名無し@18歳未満の入場禁止:2008/09/28(日) 00:49:36 ID:XvQa6WF80
>>242
乙、『夢と現実』の続きも待ってるよ(=ω=.)b
245名無し@18歳未満の入場禁止:2008/09/28(日) 15:02:03 ID:jOFPgmhI0
乙っす
246名無し@18歳未満の入場禁止:2008/09/28(日) 22:51:45 ID:ja9iCm430
ほしゅもっふ
247名無し@18歳未満の入場禁止:2008/09/28(日) 23:00:31 ID:R02kpihQ0
ああなんだか仕事やめてから恋とかさらに遠のいた感じするわ
248名無し@18歳未満の入場禁止:2008/09/28(日) 23:51:47 ID:nDywEE4tO
仕事って何?

恋って何?
249名無し@18歳未満の入場禁止:2008/09/29(日) 00:10:13 ID:83maDUkm0
仕事…世間におおっぴらにできない恨みを代わりに晴らすこと

恋…これが愛を産むことがあるらしい。その素材は未だに解明されてない。
250名無し@18歳未満の入場禁止:2008/09/29(日) 17:38:07 ID:qNk0ABhK0
仕事は現実、愛は幻想
251名無し@18歳未満の入場禁止:2008/09/29(日) 17:44:17 ID:N/s3ToCwO
CLANADは人生
252名無し@18歳未満の入場禁止:2008/09/29(日) 20:16:30 ID:rCDRZK7L0
人生はゲーム
253名無し@18歳未満の入場禁止:2008/09/29(日) 21:04:19 ID:1Sye5PghO
ガンレオン
254名無し@18歳未満の入場禁止:2008/09/29(日) 22:46:47 ID:IXkXAnGJ0
age
255名無し@18歳未満の入場禁止:2008/09/29(日) 23:29:32 ID:B0BsBEjtO
捕手
256名無し@18歳未満の入場禁止:2008/09/30(日) 21:49:12 ID:l3XouMb9O
キャッチャー
257名無し@18歳未満の入場禁止:2008/09/30(日) 22:50:25 ID:SyOEP0KI0
どなたかお題をくれ
258名無し@18歳未満の入場禁止:2008/09/30(日) 23:05:17 ID:yW4/DNvC0
手とり足とり
259名無し@18歳未満の入場禁止:2008/10/01(日) 00:48:16 ID:nvQXamMvO
>>257
「勘違い」でどうでしょう
260名無し@18歳未満の入場禁止:2008/10/01(日) 01:59:18 ID:pmxlh9NZ0
261名無し@18歳未満の入場禁止:2008/10/01(日) 02:03:26 ID:FyT3L5lJ0
>>257
「台風」
262名無し@18歳未満の入場禁止:2008/10/01(日) 02:12:00 ID:/H9wvPei0
>>257
「大地震」
263名無し@18歳未満の入場禁止:2008/10/01(日) 02:14:14 ID:ygkMnGwq0
>>257
遭難、二人きり
264名無し@18歳未満の入場禁止:2008/10/01(日) 11:04:42 ID:+IQi30/s0
前スレで『涼宮ハルヒの代役』というお話を書いた者です。
いまあれの続編を製作中。長さは同じくらい?
このペースだと今週末ぐらいには完成しそうです。

…前作を投下したあと、何人かが褒めてくれて、すっごい嬉しかったです。
この場を借りて感謝。
265名無し@18歳未満の入場禁止:2008/10/01(日) 20:43:26 ID:TE0QJbfV0
>>264
がんばれ。俺はいつでも待っている

さて、どのお題で書くかな……
266名無し@18歳未満の入場禁止:2008/10/01(日) 20:59:15 ID:a2NPaw4Z0
全部書けばいいじゃないか
267名無し@18歳未満の入場禁止:2008/10/01(日) 21:35:54 ID:+9G431BX0
>>264
楽しみにしてる

時に以前の投下のときに言いそびれたんだが
長門が『長戸』になってたり、古泉が「キョン君」と呼ぶ箇所があったので気をつけたほうがいいかも。
人によってはそれだけで拒否反応示す人もいるからさ、もったいないぜ



それにしても『answer』ってかがみの長編って事でいいんだろうか。それともその他?
途中からは出てこないから微妙だ・・・
268名無し@18歳未満の入場禁止:2008/10/01(日) 22:04:52 ID:TE0QJbfV0
>>266
わかった、遅くなるが全部書くぜ

お題その壱
「手取り足取り」
題は『責任』
269名無し@18歳未満の入場禁止:2008/10/01(日) 22:06:00 ID:TE0QJbfV0
「はいキョンキョン。リンゴ剥けたヨー」
 炎天下の夏、外では40度を超えるではないかと言うほどの暑さが人々を襲う
 そんな中、俺とこなたは涼まされた部屋で渡されたリンゴを食そうとしている
「ありがとうよ」
 そう言ってこなたが剥いたリンゴを口に含む
 料理は上手だ、と聞いてはいたが確かにりんごの皮にも余り果実はついていない
 人間、得得手不得手とはあるものだな、と痛感した
「……それ酷くない?」
 少し膨れているこなたはとりあえずほっておいて、状況の整理をしたいと思う


 今俺たちがいる場所は、病院だ
 何故病院なのか、というのは単純明快。なぜなら、俺が入院をしているから
 だが、重い病気といったわけでもなく、ただ足を骨折しただけなので後数日もすれば松葉杖付きで退院する事ができる
 原因はと言うと、今ベッドで寝ている俺の横で自分の剥いたリンゴを食べている泉こなたである
 かといって、恨んでるわけでもないのだが

 それはつい一昨日のこと
 俺はこなたに連れまわされ初めて秋葉原というものを体験しにいった日だった
 長期休暇中といった事もあってか、そこは予想以上に人が多かった
 そして、その人から出る熱気と人々を苦しめる太陽により秋葉原は異常に暑かった
 まぁ、ここらへんはどうでも良い。問題は帰るときだ
「今日は楽しかったネ」
 一通りこなたが楽しみ、俺が疲れた夕暮れの頃、帰り道の事である
「そうか?俺はいまいちよく分からんかったがな。挙句の果てには荷物持ちだしな」
「いいじゃんいいじゃん。それとも、キョンキョンは女の子に荷物を持たせるような人だったのかい?」
「お前の荷物だろうが」
 と俺は言った後、俺たちは曲がり角を曲がった
 すると、左折した先に、車が俺たちを目掛けて突進してきたのだ
 とっさに俺は泉を押さえ込むように庇いお互い一命は取り留めたのだが、そのとき間違った方向に足が曲がってしまい今の状態に至る
270名無し@18歳未満の入場禁止:2008/10/01(日) 22:07:32 ID:TE0QJbfV0
 入院生活でも余り不便はない
 今はこなたが手取り足取り助けてくれるし、朝から晩まで付きっ切りでいてくれている
 やはり、自分が原因だという事に責任を感じているのだろうか
 そして今が夏休みでよかったとつくづく痛感している。学校があったら朝から昼にかけては何もすることもなく、暇だっただろうからな
 と、俺が回想にしている内に、こなたは自分が剥いたリンゴを半分以上食べてしまっていた
「キョンキョンがボーっとしてる内にたくさん食べちゃったヨ」
 糸目の少女は俺にそう言った
「別になんとも思わん。それはお前が買ってきたりんごなんだろう?」
 まぁネと糸目少女は答えた
 それにしても、昨日といい今日といい来てくれるのはこなただけだ
 来てくれとまでは言わないが、あいつらはこんなに冷酷な奴らだったのだろうか。それとも、何か理由があってこれないのだろうか
 いや、そもそもあいつらは俺が入院してる事を知ってるのだろうか
「なぁこなた」
「ん?」
 俺は疑問を投げかける
「ハルヒたちは、俺が入院してる事を知ってるのか?」
 こなたの目が少し見開いた……気がした
「さ、さぁ?どうなんだろうネ〜」
 何か動揺してるような感じがするのは気のせいか?
「気のせいだよ気のせい。ほら、早くリンゴ食べなヨ」
 そう言って俺にリンゴを向けてくる
 俺はそれを口に入れる。そして、やっぱりハルヒたちは入院してる事は知らないのかと思った

 退院当日
 俺は松葉杖をつきながら病院を出た
 隣には、こなたもいる
 結局俺のお見舞いには俺の家族とこなた以外誰もくることはなかった
 それに引き換え、こなたは毎日見舞いに来てくれていた
「ありがとうな。こなた」
 病院から自分の家までの帰り道までもこなたはついてきてくれている
「何が?」
「ずっと見舞ってくれて、だよ。結局、こなた以外誰も団のメンバーは来なかったからな」
「まぁ良いんだヨ。元はわたしが原因だったんだからネ」
 照れたように頭を撫でながらこなたは答えた
「そうか。今度こなたが入院するような事になったら、俺も毎日見舞ってやるからな」
「ありがと。けどま、入院するような事はないけどネ」
 そう言って今日は分かれた
271名無し@18歳未満の入場禁止:2008/10/01(日) 22:08:16 ID:TE0QJbfV0
 俺が退院してから初めての団活
 入院している間は団活はなったらしい
 モチロン俺は松葉杖をついての登場だったのだが、それにしてもみんなの反応が薄い
 普通ならもっと驚いたり、松葉杖をいじったりすると思ったのだが、さも前から知っていたような感じでおれに接してくる
 唯一、つかさだけが松葉杖を珍しそうに見ているが、ここまで普通にされると俺としても気味が悪くなってくる

「なぁ、俺が入院してた事知ってたのか?」
 三人ずつの三組で行う不思議探索の時に俺はかがみとつかさに尋ねた
「もちろん、知ってたわよ」
 なっ、知ってたなら見舞いに来てくれてもよかったではないか。冷たい奴らだな
「そりゃ、行きたかったわよ。けど、こなたが来ないで欲しいってね」
 こなたが?
「そ、なんか『わたしの所為でこうなったんだから、みんなには迷惑かけたくない』とか意地張っちゃってわたし達に余計な心配かけたくなかったみたい」
「そうそう。こなちゃん、だいぶ責任感じてたからね」
 アイスを食べているつかさはそういった
 どうやら、俺が思っていた以上にこなたは責任を感じていたらしい
「で?こなたはどれくらい病院にいたの?」
 アイスのコーンをも食べ終え、かがみは俺に尋ねた
「朝から晩まで、ずっと俺のそばにいたぞ」
「ずっと?……こなたの奴凄いわね。普通そこまで出来ないわよ」
 それもそうだな。俺だったらそこまでは出来ない

「“普通”ならって言ったでしょ?つまり、こなたにとってアンタは普通じゃないって事よ」
 普通じゃない?どういう意味だ?
「さすがアンタね……。乙女心は複雑なの、そう言うところ察してあげないと逃げてっちゃうわよ?」
 いまいちかがみのいいたい事が分からない
「逃げるって何が?」
 どうやら、つかさも分かってないらしい
「とりあえず、そこから察する事からはじめなさい」
 そう言ってかがみはベンチから立ち上がり徐に歩き始めた
「待ってよお姉ちゃ〜ん」
 と、つかさもかがみの後を追って行った

 かがみが言いたい事がいまいちわからないが、感謝の印も含めて今度こなたが行きたい所に行くとしよう
272名無し@18歳未満の入場禁止:2008/10/01(日) 22:09:16 ID:+9G431BX0
早っ!
支援
273名無し@18歳未満の入場禁止:2008/10/01(日) 22:09:31 ID:TE0QJbfV0
超ショートストーリーでスマン
俺は基本超短編しか書けないんだ

次のお題は「勘違い」だな
今日中は無理だがが頑張って書いてくる
274名無し@18歳未満の入場禁止:2008/10/01(日) 22:16:32 ID:+9G431BX0
ガンガレ
題名の付け方と文体から察するに『夢と現実』とかの作者さんだろうか
275名無し@18歳未満の入場禁止:2008/10/01(日) 22:23:50 ID:TE0QJbfV0
>>274
その通り。スマン、文才のない文体で
あと>>273で無理だががになってるが気にしないでくれ
276名無し@18歳未満の入場禁止:2008/10/01(日) 22:40:58 ID:+9G431BX0
文才云々の問題じゃないさね。そんなもんは慣れだ
基本的には行間とか句点とか見てるだけだよ

それに投下数の多い職人はその分見分けやすい
277名無し@18歳未満の入場禁止:2008/10/02(日) 20:34:50 ID:i/f1Hm7n0
久しぶりに来たが相変わらずだな・・・
芋がいないのがさみしいが
これからも頑張れよ〜
278名無し@18歳未満の入場禁止:2008/10/03(日) 00:50:47 ID:vy/eUagfO
ふんもっふ
279名無し@18歳未満の入場禁止:2008/10/03(日) 00:55:39 ID:NQSoEXHS0
お題祭その弐いくぜ
「勘違い」
題は『嫉妬、ツンデレ、勘違いにて』
280名無し@18歳未満の入場禁止:2008/10/03(日) 00:56:14 ID:NQSoEXHS0
 暑かった夏もどこかへ行き、過ごしやすい涼しい季節になってきた
 二学期が始まって早一月が経つ。こうも涼しいと授業中もウトウトとしちゃいます

「ようやく終わった〜」
 本日もわたし、柊つかさは睡魔に打ち勝ちました。と心の中で呟きながら帰り支度をすませる
 今日はハルちゃんが「部活は無し」って言ってたから家へと直帰できる
 ……別に嫌って言うわけじゃないよ?
「おーっす。帰るわよ」
 お姉ちゃんが自分のクラスからわたし達のクラスまで足を運びにくる
 こなちゃんとゆきちゃんも既に帰り支度を終えており、私は慌てて荷物を鞄へ詰め込む

「おい、かがみ。ちょっといいか?」
 と、いきなり隣から声が聞こえてきた
 左を見ると、キョン君がいてキョン君がお姉ちゃんを呼んでいた
「何よ?」
「聞きたい事があるんだ。少し部室までついてきてくれ」
 キョン君はお姉ちゃんに頼み込む
「……わかったわよ。ゴメン、先に帰ってて」
 そう言ってキョン君とお姉ちゃんは部室へと向っていった

「もしかして、かがみんへの愛の告白かナ〜」
 三人での下校中、こなちゃんがさっきの出来事について言った
 唐突だけど、私はキョン君のことが好きだ
 けどもしこなちゃんの言ったとおりキョン君がお姉ちゃんに告白とかしてたらどうしよう……?
 そのときは素直に「お姉ちゃんおめでとう」と言えるかな?
 そんな不安が、頭の中をよぎっていた
281名無し@18歳未満の入場禁止:2008/10/03(日) 00:56:47 ID:NQSoEXHS0
「ただいま〜」
「おかえりなさ〜い」
 私が家についてから一時間ぐらいたった後、お姉ちゃんは帰ってきた
 お姉ちゃんにキョン君と何が合ったのか知りたい、聞きたい。けど、質問の答えを聞くのが怖い
 こなちゃんの予想が当たっているかもしれないから
 だけど、いずれは知っちゃうこと。それならやっぱり早めに知っておいた方が良いよね
「お姉ちゃん」
 私は決心をしてお姉ちゃんを呼んだ
「何?」
「その……今日、キョン君になんで呼ばれたのかなーって……」
 私は勇気を出して質問を投げかけた
 お姉ちゃんは少しニヤッとした笑いをこっちに向けてくる
「知りたい?」
「うん」
「どうしても?」
「う、うん」
 そういった後お姉ちゃんは黙り込む
 クイズ番組で回答者が答えを言ってから、司会者が答えを発表するまでの緊張した間のような感じがした
 簡単に言うなら、私の読みが正しいのか誤っているのかわからない間
 私としては、誤っていて欲しいけど
 すると、お姉ちゃんは再びニヤリと笑った
「教えなーい」
「なっ、なんですとー!?」
 予想外の余り、変な言葉が口から出てしまった
 それにしても、回答を教えてくれない司会者なんて、酷すぎるよ
「ふふっ、冗談よ冗談。実はね勉強でわからないところ教えてあげてたの」
 なんだ、そんなことだったんだ
 変に心配して損しちゃったよ
「変に心配ってなによ?もしかして、変な想像してたんじゃないの?」
 ギクッ、とお姉ちゃんの言葉の矢が私の胸を貫通する
「そんなことないよ?」
 とだけ言って、私はその場から逃げるように自分の部屋へ向った

 次の日も部活がなかった
 どうやらハルちゃんが不思議を見つけたらしく、一人でそれを追求しにいったらしい。ハルちゃんらしいね
 この日も、キョン君はお姉ちゃんを放課後部室へと連れて行った
 いや、逆かな?今日はお姉ちゃんがキョン君を連れて行ったと言ったほうがいいのかな?
 また勉強の事なのかな?
「いいや、違うネ。これは絶対付き合ってるよ」
 昨日のことをこなちゃんに言うと、こなちゃんはそう返した
「でも、根拠がありませんよ?」
 ゆきちゃんが静かに質問をした
「簡単だヨ。勉強の事なら普通、かがみよりみゆきさんに教えてもらう方が妥当でしょ?それに、今日はキョンキョンからじゃなくかがみから誘ったんだヨ?これは絶対何かあるネ」
 そういえばそうだね。こなちゃん探偵みたい
「いやぁ〜それほどでも」
 こなちゃんは照れたように頭を掻く
 でも、そうだと私の昨日の安堵は無駄になってしまう
 そりゃそうだよね。お姉ちゃんは私と違って、頭も良いし心が強いから好きになるのも仕方がないよね
 諦めるしかないのかな……
282名無し@18歳未満の入場禁止:2008/10/03(日) 00:57:29 ID:NQSoEXHS0
「つ〜かさ」
 こなちゃんが私の背中を押してきた
「どうしたの?」
「やらないで後悔するより、やって後悔した方が良いと思うヨ?」
 それってどういう意味?
「まっ、これは朝倉さんの受け売りなんだけどね。知ってるよ?キョンキョンの事好きなんでしょ?」
「えっ?どうしてそれを……」
「つかさは分かりやすいからネ。それに、まだ付き合ってるとは決まってないヨ」
 それもそうだけど、付き合ってるって言ったのはこなちゃんだよ?
「うっ、いいからいいから。ネ?」
 そうだね……わかった。私、告白するよ
「さっすが、それでこそつかさだヨ」
 そう言ってこなちゃんは私の背中を押した
 それだけでも、私の勇気を後押ししてくれた気がした

「キョン君!」
「うお、いきなり大声出してどうした?」
「今日放課後、教室で待っててくれないかな?」
「別に構わんが、どんな用事だ?」
「それが言えないから放課後に言うの。絶対に待っててよ」
「ああ、わかったよ」
 どうやら、彼も了承してくれたようだ
 まずは第一段階クリアかな


 こなちゃんとゆきちゃん、それにお姉ちゃんには先に帰ってもらった
 私とキョン君だけになったのを見計らって私は口を動かす
「私……キョン君のこと好きなの」
 彼は驚いた表情を見せる
 けど、その表情はすぐに緩み、笑顔へと変わっていった
「……俺もだよ」
 ……え?両想いって事?
 でもキョン君にはおねえちゃんがいるんじゃ……
「私が教えてあげるわよ」
 といきなりドアを開けてお姉ちゃんが言った
 って、帰ったんじゃなかったの?

「実はね、キョン君につかさの事で相談されたのよ」
 私のことで?
「そ、つかさのことが好きになったからどうしたら良いか、ってね」
 その言葉を聴いて、キョン君のほうを向くとキョン君は俯いて顔を真っ赤にさせているのがわかった
「だけど、自分から告白するのは恥ずかしいから、どうやってつかさに気持ちを伝えれば良いのか知りたかったのよ」
 そんな……素直に告白してくれたら私もすぐ返事できたのに
「まあキョン君はこなたで言うところの“ツンデレ”ってやつだから。で、私はアンタの気持ちも知ってたからそれを利用しようと思ったわけよ」
 利用する?どうやって?というより、私の気持ち知ってたんだ……
「あんたはわかりやすいしのよ。それに妬きやすい性格なのも知ってるから。私とキョン君が付き合ってるかのようにしてたら、アンタから告白すると思ってね」
 ……そんなところまで計算してたとは、お姉ちゃんは凄いや
「けどまぁ、アンタを後押ししたのはこなただったらしいじゃない」
 お姉ちゃんは後押ししたのがこなちゃんだったのが意外だったようで、少し驚きを隠せないでいた
 ……ありがとうね、こなちゃん

 とりあえず、私の不安は勘違いですんでよかった。それに想い人と一緒になれたことだし、終わりよければ全てよし。だね
283名無し@18歳未満の入場禁止:2008/10/03(日) 00:58:42 ID:NQSoEXHS0
これで終わりです
超短編御題祭その弐終了
次の御題は「台風」か
頑張ってきます
284名無し@18歳未満の入場禁止:2008/10/03(日) 01:02:06 ID:+/PwN2vx0
>> 267
御指摘感謝!

古泉の口調については、完全に思い込みでした。たぶん別のハルヒSSかなんかに影響されたんだと思う…
あれ書いたあとに原作をみんな読んだので、次は多少補正できてるはず。

"長戸"は恥ずかしいっス。推敲が足りないのはいいわけできない…
285名無し@18歳未満の入場禁止:2008/10/03(日) 19:15:22 ID:nh7h4gQ30
>>283

キョンが無自覚ハーレム状態になってないのは逆に珍しい希ガス
286名無し@18歳未満の入場禁止:2008/10/03(日) 22:18:51 ID:uISODIoaO
俺たちは・・・芋に多くを求めすぎていたんだ・・・
287名無し@18歳未満の入場禁止:2008/10/04(日) 00:04:50 ID:0gRic8tQ0
そうかもしれないね
288名無し@18歳未満の入場禁止:2008/10/04(日) 02:19:33 ID:9MUPEqhSO
>>283
乙です
リクして良かったぜ
289名無し@18歳未満の入場禁止:2008/10/05(日) 02:32:04 ID:yQLILrwGO
芋たんカムバック希望
290名無し@18歳未満の入場禁止:2008/10/05(日) 13:10:57 ID:m1isfHUN0
保守
291名無し@18歳未満の入場禁止:2008/10/05(日) 20:16:39 ID:rBT+xyl00
ちょっと予告しましたが、『涼宮ハルヒの代役』の続編、投下します。

・長いです。30レスぐらい消費予定
・エロ、グロ描写は特にありません
・続き物ではありますが、ストーリー的にさほど密着はしてないので、前作を見てなくてもいちおう読めるかも。

では。
『泉こなたの奮闘』
292名無し@18歳未満の入場禁止:2008/10/05(日) 20:17:20 ID:rBT+xyl00
あたしは泉こなた。花も恥らう女子高生。
大学受験というやつも間近に迫ってきて、さすがに本腰入れて勉学に励んでいる今日この頃…だった。
だったはずなんだけどねえ。

― 第一幕 ―

「おっす、こなた」
と声をかけてきたのは、あたしの腐れ縁的な存在、柊かがみだ。
友達にランク付けなんてするもんじゃないとは思うが、強いて序列を決めるなら一番の親友、なんだろうな。
「お姉ちゃん待ってー。あ、こなちゃんおはよう」
こちらは柊つかさ、かがみの妹。
双子なんだからどっちが姉でもよさそうなものだけど、どう見てもつかさのほうが妹タイプだね。
あたしたち三人して、学校までの坂を歩く。
それにしてもくそ長い坂道ですこと。まあそういう設定になってんだから、仕方ないか。
「いまさらになって、バス通学だったありがたみがわかったよ」
つい、そうひとりごとが出る。
「へえ、あんた中学はバスだったの。でもこっちのほうがカロリー消費できていいじゃない」
おっと、いまのをかがみに聞かれてしまった。さてどう返そうか。
「それって、カロリー余らしてるひと限定のありがたみだよね」
そう聞いたかがみは、うっさいわねと言ってずんずん先へ進み出した。つかさがあわてて後を追う。
特段その必要もないくせに、なぜそうダイエットにこだわるかね。そんなに脂肪分が憎いなら、おバストを三割ほどこっちに分けてくれんか、かがみんや。
彼女のカラ元気もそう長くは続かなかったようで、すぐ追いついたあたしはまた並んで歩いた。
どうということのない日常会話をしてるうちに、一年の教室の前までたどり着く。かがみは五組、あたしとつかさは六組にいったん別れた。じゃ、また昼休みにでも。

うちのクラスにはつかさのほかに、もうふたり友達がいる。
どっちも女子ってあたりが、あたしの交友関係の限界を示してるわけだけど。
「おっはよー、みゆきさん、ながもん」
おはようございます、と朗らかに返答してくれたのは、優等生の高良みゆき。
この人のご挨拶はいつも、バックにしゃらーんとお花かなんかが映りそうな勢いだ。同級生なんだけどつい『さん』付けで呼んでしまう。
そして。
「……」
三点リーダだけでも登場人物のセリフとみなせる。日本語って便利だね。
長門有希は、本当に一瞬だけあたしと目を合わせ、ミリ単位の動作でわずかにあごを引いた。
うんうん、長門はこうでないと。だがね、時にはあえてキャラ立ちを崩すことで、よりいっそう深みが出るってもんだよ。
「おはよ、ながもん。なーがーもーん」
そう呼びかけてみる。長門は、さっきよりはもう少しだけ長くこちらを見た。
「ながもん、ではない。長門有希」
「いやいや、もちろん知ってるよー。でもあたしはさ、ながもんって呼びたいんだ」
さらにわざとらしく、肩をぺしぺし叩くふりをしながら言ってみる。長門はあいも変わらずの無表情、だけどやや不機嫌そうに見えなくもない。こりゃちょっと踏み込みすぎたかも。
「そう呼ぶ意図が推測できない」
ほう。長門でも推測不能な何かを起こせる生物は、この広い宇宙でもそうそういなかろう。
「あたしにとって、長門有希は憧れの存在の一人なんだよ。だからあたしだけの特別な呼び方がしたくてさ。まあ、長門をながもんと呼ぶこと自体は、わりあいメジャーなんだけどね」
そう聞いて、長門は相変わらずの無表情…彼女の表情の描写はもういいか。つかさとみゆきさんは呆れ顔だ。
「メジャーだったの? こなちゃんのほかには聞いたことないけど」
「あの、差し出がましいようですけど、ご本人がお嫌そうな呼び名はどうかと」
むう。本気で嫌がってるんなら、やめといたほうがいいかな。まだ情報連結解除はされたくないし。などと考えていると。
「そのような動機なら、止めはしない」
そう言ってくれて、ぱっと嬉しくなった。ウォッチの対象としてではなく、純粋に友達として好きになれそうだよ。
「お、いいの。じゃあこれからもそう呼んじゃうよ。よろしくね、ながもん」
長門はまたさっきみたいに、一瞬だけ視線をあわせてうなづいた。これはもしや、ちょっと恥ずかしいけどでも嬉しい、みたいな感じかな。あたしにも長門表情鑑別士の才能が芽生えてきたか。
「よかったね、こなちゃん」
つかさは自分のことのように喜んでくれている。
みゆきさんは少し恥ずかしそうにしていた。本当に差し出がましかったみたいで…とかごにょごにょつぶやいている。
うん、これだよ。以前の、いつもだいたい四人でいた日常も、全然悪くはなかった、でもやっぱり。
あたしはこの世界が大好き。
293名無し@18歳未満の入場禁止:2008/10/05(日) 20:18:00 ID:rBT+xyl00
授業の合間の休み時間、お手洗いに行ってきたあたしは廊下で何人かの女子に声をかけられた。
「ちょっと泉さん。あんた、あのSOS団に入ったってマジ?」
ええと、この子らは何組だっけ…まったく思いだせないや。
「ん。こないだ団長サマに入団を許可してもらったけど。それがどしたの」
そう答えると、あたしに声をかけてきた女子は眉をひそめた。
「どうって、その団長様が問題よ。あの涼宮ハルヒの数々の伝説、知らないわけじゃないでしょ」
信じられない、とでも言いたげな顔をしている。別の女子がさらに質問してくる。
「もしかして古泉君が目当てなんですかあ」
そう聞きながら、こいつはニヤニヤしている、なんだか感じ悪いな。
「古泉ねえ。それほどあたしのタイプじゃあないな。確かに『ウホッ、いい男』とは思うけど」
「ウホ? なにそれ」
はいはい、理解できないネタでしょうね。これでピンと来る人種ならもう少し付き合ってあげてもいいけど。正直、これ以上彼女らと話してても、時間のムダって気がする。
「ちょっと待って、まだ終わってないんだけど」
会話を切り上げて教室に戻ろうとしたところで、行く手をふさがれた。なによ。
「あんなワケわかんない人と、本気でつるむつもりなの、って聞いてるの」
こいつ、口元は笑ってるけど目がマジだよ。いいからもう帰してほしいなあ。
「なんでそんなムキになってんのさ。なんか恨みでもあるの、ハルにゃんに」
目の前の子は頬がぴくぴくと引きつっている。ほかの子たちは、あーあって顔をしている。何かまずいことでも言ったか。
「は。東中出身で、あいつをよく思ってる生徒なんて一人もいないわ、女子も男子も。こっち来てちょっとはおとなしくなるかと思ったら、なによ、あれ。変り者ばっか集めて、偉そうにして」
彼女はえらくヒートアップしている。やっぱりなんか恨みでもおありのようで。それはあたしに言わず、本人に直接言ってみたらどうだい。
ま、言ったって相手にされないから、誰かにやつあたりでもしたいんだろうけど。
「特にあの、なんだっけ、変なあだ名の男子。なんでずっと涼宮さんと付き合ってられるの。ドMなの?」

どう手をつけたらいいものか、ちょっと唖然としていたあたしの背後で、大きな咳払いが聞こえた。
「俺はいたってノーマルだ、これ以上妙な評判を広めないでくれ」
たったいまドM疑惑をかけられた話題の男、本名不明の男子、キョンがあたしの後ろにいた。
「あと、誰でもいいから俺の代役を募集中。なりたいやつがいればの話だが」
噂をすれば何とやら。さっきまで派手に炎上していた女子Aは、はっと我に返った。ふん、とひとこと吐き捨てるように言い、女子B以下を引き連れて立ち去っていった。
「なんと言うべきか…中学時代のハルヒの悪行が想像できるな。これでいいのか、あいつの人生」
ため息をつくようにキョンは言う。自分に変な噂が立つことについては、あまり気にしていないのか、それとも全て諦めてるのか。
「お人よしだねー、キョンキョンは。あたしは、あの無茶なとこも含めてハルにゃんが好きだけど」
ハルヒの気持ち、少しは理解できるつもりだ。あたしも中学の頃はわりと孤立しているほうだったし。まあ深夜の校庭に魔方陣を描くまではしなかったけどね。
「いまみたいのでいいのか、泉」
ん、なんのこと。
「確かにあいつら、いい感じじゃなかったけど、それでも同級生だろ。ハルヒと同類に見られてちゃ、あとあと苦労するぞ」
ホントにこいつは心配性だね。遺伝子レベルで苦労人属性というべきか。
「あー、いいのいいの。どうせ背景キャラだよ、あの子ら」
彼女たちが、あたしにとって重要な人物でないのはわかりきってる。
「…全員、くじら声だったじゃないのさ」
294名無し@18歳未満の入場禁止:2008/10/05(日) 20:18:39 ID:rBT+xyl00
お昼休み。あたしはいつものように手近な席をくっつけて、つかさ&みゆきさんとお弁当を食べていた。そのうちかがみもこの教室に来るはず。それがいつものルーチン。
今日はもう一人、この島にお呼ばれされてる人物がいる。
「ねえねえ、長門さん。わたしも長門さんのこと、長門さんじゃなくて、違うふうに呼んでもいいかなあ」
つかさはさっきから熱心に長門にからんでいる。本人にはからんでるつもりなんてないんだろうけど。
「長門有希…ゆきちゃん。ってダメか、ゆきちゃんはゆきちゃんのほうだし。じゃあでも、んー、有希だと、どう考えてもゆきちゃんにしかならないし」
完全にイミフっすよ、つかささん。しかし、混乱してるつかさはズルいほど可愛いな。
「では、その呼び名は長門さんにお譲りするとして、私のほうを違う風に呼んでいただく、というのはどうでしょう」
たまらずみゆきさんが代案を出す。
「じゃあそうしよっかな。えーと、みゆちゃん。うう、なんかすっごい違和感あるよ」
長門はこのやり取りにいっさい口を挟まず、黙々とお弁当を片付けている。
「やっぱりゆきちゃんはゆきちゃん。だとね、長門さんは…」
これ、ほっといたらエンドレスで続くね。つかさはもしかして、あたしだけが長門と親しいのが悔しいのかな。この場合どっちに嫉妬してるんだろう。
それにしてもかがみのやつ、遅いなあ。
わいわいやってるうちに、みんなあらかた食べ終わってしまった。食事が遅いつかさだけは、まだもぐもぐしてるけど。
長門は食事を終えると、じゃあ、とひとこと言って席を立ち、そのまま教室を出て行った。積極的に仲良くしようとされるのは苦手なのかな、別に嫌がってたようには見えなかったけど。
みゆきさんは教科書を広げて、午後の授業の予習中。筋金入りのマジメっ娘さんだねえ。
あたしはどうにも手持ち無沙汰だ。カバンにはゲームが入ってるけど、やってるとこを先生に見つかる可能性を考えたらリスクがでかい。何をしたもんか。
このとき、ふと誰かの視線を感じた気がした。出入り口のほうをうかがうと、ガラス越しに見知った姿が見える。キョンか。なんかあたしを手招きしてる、なんだね。
席を立つとつかさがこっちを向いた。ちょっち隣に行ってくるよ、そう言い訳する。

「どしたのー、キョンキョン。こっそり呼び出すなんて。はっ、まさか愛の告白とか」
そう言われて、キョンはうんざりしたような表情になる。
「じょーだんだってば。本気で告白するんなら、まず靴箱にラブレターを投函してからだね」
「悪いが、おまえのペースにはつきあってられんぞ。ちょっと確認したいことがあるんだが」
なんだかそっけない態度だぞ。あたしもいままでに、ちとアレな話題を振りすぎたか。
「いいけど。あ、そういやかがみんは? お昼はそっちのクラスで食べてたの?」
そう聞くと、キョンは顔をしかめた。
「かがみか。たしか昼休みになってすぐ、ハルヒと一緒に学食に行ったな。弁当持参だからいいって言ってたのに、ムリヤリ連行されて」
なんだ、ハルヒの強権発動に巻き込まれたのか。ならしかたない。
「ハルヒのやつがなあ、なぜか急に、俺に口をきかなくなっちまったんだ。もう面を見るのも嫌って顔してやがった」
キョンは何かぶつぶつ言ってる。
「まーたなんかやらかしたの? キョンキョンは無意識にフラグをへし折る体質だからね」
「おまえの発言の二割ぐらいが俺には理解不能だぞ。まあその辺はどうでもいい、本題に入らせてくれ」
話しながら歩いているうちに、人目につかない階段脇あたりに連れ込まれた。なんだか身の危険を感じるシチュだよこれ。といっても相手はキョンだから安心か。微妙になんか悔しい気がするのはなんでだろ。
彼は真面目な顔であたしを見た。まさか本気で告白じゃないだろうね。
「この前ははぐらかされちまったけど、もう一度聞くぞ、泉」
間近でささやくよう言われて、急に心臓がドキンと高鳴った。落ち着けあたし、平常心、平常心。
「いやん、泉だなんて。もう前みたいに、こなた、っては呼んでくれないの?」
おもいっきりわざとらしい演技で答えてみた。ついでにうそ泣きも加える。キョンは思わず視線をそらした。
「やめい、そのよくわからんフリは。って、おまえやっぱり覚えてるんじゃないか、こないだの事件のこと」
「なんのことかなー、お姉さんわっかんないなー」
キョンはやれやれとつぶやき、またさっきの目であたしを見た。こっちからしたら、そのマジ顔をやめい、ってとこだよ。
「おまえは、異世界人なんだよな。ハルヒの探していた」
295名無し@18歳未満の入場禁止:2008/10/05(日) 20:19:27 ID:rBT+xyl00
こないだの事件。忘れるわけがない。
あたしのいた高校、陵桜学園に、なぜか朝比奈さん・古泉・長門といった面々が入学してきた。いや、この言いかたは違うかな。
なぜか、彼らとは元から同級生だったという設定になっていた。そのときは疑問にも思わなかったけど。
さらにわけわかんないうちに、いつのまにかあたしがSOS団の団長になっていた。夢の中だってそうそうないよ、こんな展開。
で、現在。あたしはかがみたちと、この県立北高に通っている。
「どっからどこまで現実だったのやら、あたしにもよくわかんないや。でもまあ、ここがあたしの見てたアニメの世界だってのは確かだね」
キョンはなんだか難しい顔をしている。
「アニメのキャラね。俺には、自分は間違いなく実在の人物だ、っていう自覚があるぞ」
「うん。あたしもいまでは、ちゃんとキョンキョンたちにリアリティ感じてるよ」
そう答えてあげても、キョンはまだ何か考え込んでいる。
「おまえだけなんだよな、この歴史改変とやらを自覚してるのは。いっしょに来た三人は完全に普通人なのか?」
こいつはまた難しい質問を。いったいなにをもって普通人と認定できるのか。
「んー、ハルにゃんの引き起こす超常的ななにかとは、あんまり無縁そうだね。時間は一緒に巻き戻ってるみたいだけど」
キョンは不思議そうにしている。もうちっと説明が必要か。
「こうみえてもあたしら、高校三年だったんだよ。エロゲだって堂々と買えるお年頃さ」
「買えるからって女子が買うな、んなもん」
「言ったでしょ、あたしゃお姉さんなんだよ。せめて泉先輩と呼びたまへー」
あ、でも、こころなしかみんなの身長が縮んでる気はする。あとかがみの胸も若干。肉体的にも二年分若返ってるのかも。

「とてもそう呼ぶ気にはなれん…ああ、もうひとつ聞きたいんだが」
なんだね。今日はやけに質問攻めにされる日だ。
「おまえがアニメとしてこの世界を観察していたんなら、もしかして、これからハルヒが起こす予定の事件とかも知ってるのか。できればあらかじめ、心の準備をしておきたいからな」
え、そう来たか。まいったね、ちょっと答えづらいんだけど。
「あー。アニメ版はね、キョンたちが一年の冬の時点で、第一期が終わっちゃったんだよ。いまの時期だと本筋のストーリーはみんな済んじゃってるね」
そう説明してあげても、まだ怪訝な顔をしている。
「その話では、最後に何か大事件が起きたりはしてないのか」
「事件ねえ。キョンキョンが夢の中で、ハルにゃんとあつーいキッスを交わした以上のことは、何も」
キョンはあからさまにうろたえている。墓穴を掘ったね。
「く、くそ、製作者出てこい…そういや、たしか原作は小説だったんだよな。そっちのストーリーはもっと先に進んでたりしないのか」
なおも食い下がってくるか。自分の未来がそんなに気になる?
「あたしノベルは読まない派だからねー。ちらっと聞いたあらすじだと、確かこのあと、消失事件、雪山事件、あと分裂事件とかいうのが起きるらしいけど。ごめん、その程度」
キョンは軽く嘆息した。
「どれもこれも、不吉な予感のネーミングだ。まあいいさ、知ってたら知ってたで、どうせ予想を裏切られそうな気もする」
やっと聞き込み調査をあきらめてくれたか。うん、そういうイベント事は所見のインパクトが大切なんだよ。
「しかし意外だな。おまえ、そういう情報は貪欲に集めるやつだと思ってたが」
む、前にかがみにも似たようなことを言われたよ。
「いやさね、確かにあたしも、話の続きがムチャクチャ気にはなってたんだ。でもあたしは信じた、近いうちに必ず二期があると。来る日も来る日も待った。それなのに製作発表の『せ』の字も出て来ない。どーなのよ」
思わず熱くなるあたしを、キョンは完璧な半笑いで眺めている。こいつはこいつで地雷だったな、とかなんとかつぶやいて。
「そのうち受験勉強も忙しくなってきてさ。気分転換のつもりで、録画してたのを観なおそうかなー、とか思ってたら…」
「思ってたら?」
「こっちの世界に来てた」
キョンは遠くを見るような目で、やや乾いた笑いを漏らした。そんなに変なこと言った?
「つまり、利害が一致したわけだ。俺たちを観察したかったおまえと、異世界人を見つけたがってたハルヒの」
そういうことになるのかね。
この世界の設定上、いつかSOS団に異世界人が加わるのは規定事項みたいなもんだと思ってたけど、そこにあたしが選ばれたってのはラッキーだね。
296名無し@18歳未満の入場禁止:2008/10/05(日) 20:23:58 ID:rBT+xyl00
― 幕間 ―

ほぼ同時刻、文芸部室にて。
「いいんですか、そんなことを僕たちに教えてしまって」
「いい、いまは情報の収集が最優先。この現象の遡及範囲を把握したい」
古泉一樹、長門有希、朝比奈みくるの三人が、この部屋にいた。
「長門さんのお仲間、全員ですか? その、不思議な力をなくしてしまったというのは」
おっかなびっくり、といった口調でみくるが尋ねる。
「本質的には失っていない。ただ、ヒューマノイドインターフェースの有する情報操作能力が、なんらかの要因で、広範囲にわたって発現を阻害されている」
古泉は、少し唸ってから口を開いた。
「関係、あるのでしょうね。実は僕のほうでも、ちょっとやっかいな現象が起きていまして」
少し迷うそぶりを見せたあと、また話を続ける。
「お話を聞くだけ聞いておいて、こちらからの情報提供なし、というのはアンフェアでしょうね。実は、ここ数日のうちに何度か、新しいタイプの閉鎖空間が発生していたのです。
 なんと言いますか、現実世界との境界に迷彩がかかっているらしく、ある一部の能力者にしか存在が認識できません」
ここまで話し、古泉はちらりと長門の様子をうかがった。
「ですが、その解釈は間違っていたのかもしれませんね。閉鎖空間がこれまでより目立たなくなった、というわけではなく、機関のメンバーの多くが空間認識能力を乱されている、その可能性があります」
みくるはなにやら考え込んでいる。しばらくして、長門が発言した。
「涼宮ハルヒと、何らかのコミュニケーションをとった経験のある能力者は、あなたを含めて五名。閉鎖空間をこれまで通りに知覚できるのは、そのメンバーだけと推測できる」
古泉は目を見開いた。
「ええ、そうです。いままともに稼動できる要員は、僕と、あの夏合宿の推理ゲームに参加してもらった四人だけです。よくわかりましたね。よろしければ、その推理の根拠を教えてもらえませんか」
「簡単。私自身の情報操作能力に、現状で問題は発生していない、喜緑江美里も同様。共通点は、涼宮ハルヒにその存在を認識されていること。情報統合思念体は朝倉涼子の再構成を検討しているが、いますぐには難しい」

この会話をよそに、みくるはずっと思案していた。ひとりごとが思わず口に出ている。
「だから、だから私だけ、なんですね」
朝比奈さん、と古泉に話しかけられ、びくりとして頭を上げた。
「はいいっ。あの、ごめんなさい。お互い知ってる事はギブアンドテイク、したいのはやまやまですけど…禁則が、その」
古泉は、子供をあやすように話しかけた。
「あなたの立場はよくわかります。簡単に内部事情を漏洩してしまっては、僕たちの後ろ盾となっている組織の存続にも関わりますからね。でもいまは長門さんのおっしゃる通り、すみやかな情報の展開が必要です。
 我々が今後も協力していくためには、そちらからもある程度の情報提供が必要、そう上司のかたに伝えていただけませんか」
みくるは何度かうなずいたあと、両手の指先をこめかみに当てた。目を閉じて、何かを念じている。
「じゃあダメもとですけど、情報開示申請っと。んっ、あ。通った、通りました、申請。いまだけセキュリティレベルを下げてもらいました」
先ほどまでの憂い顔から、一転して明るくなる。
「やっと言えます、私のほうだって大変だったんですよ。みんな、元の時代と連絡がつかなくなっちゃって」
言いたいことを言えるようになってテンションの上がったみくるだったが、長門に冷ややかな目で見られてすぐにおとなしくなった。
「ええと、私たちエージェントの脳回路には、TPDD端末プログラムが焼き付けられていて、それで時間平面を越えて未来と通信ができるんですけど…最近、コネクションロストが頻発しているんです。
 なんでも、この国の周辺だけ異常に回線が重いらしいんですよ、でも私はなんともなくて」
みくるはしゅんとした様子になってしまった。
「考えてみると、涼宮さんとお付き合いのある仲間は私だけです。だから、なのでしょうね。こんなことならもう何人か、皆さんにご紹介しておくべきでした」
297名無し@18歳未満の入場禁止:2008/10/05(日) 20:26:12 ID:rBT+xyl00
しばらく三人の間に沈黙が流れる、それを破ったのは古泉だった。
「この現象が表面化したのはここ数日ですが、兆候らしきものは二週間ほど前からあった。違いますか」
聞いている二人から、特に異論は出ない。
「その間にあった何らかの変化といえば。ひとつは、我々にもよくわからないままに始まり、そして終息したらしい歴史改変事件。もうひとつは、泉さんのSOS団加入ですね。いまの異常事態に、これらがなにかリンクしているのでしょうか」
これを聞いた長門は、珍しいことに古泉をじろりとにらみつけた。すぐもとの無表情に戻る。
「泉こなたは、一般人。人類種族において特異的な能力を有しているという根拠は、何もない」
古泉は肩をすくめて笑みを浮かべた。
「こちらのほうでも、彼女については一通り調査しました。幼いころに母親を亡くされて、いまは父親と二人暮らしだとか。そのお父様ですが、僕も知っている小説家だったので驚きしたよ。
 まあそれはいいとして…中学以前に、涼宮さんやその周囲のかたとの接点は特になし。彼女の経歴には、特別に異常な点も、何者かに改竄された痕跡もありません」
この報告を受けて、みくるは目をぱちぱちとまたたいた。
「え、そうなんですか。でもキョン君が言うには、泉さんこそ、涼宮さんの探していた異世界人だとか。私はあのひとについて何も知らされてませんけど、そちらではもう調べがついているのかと」
古泉はわずかに驚きの表情を浮かべたあと、長門のほうをちらりと見た。
「彼がそう言ったのなら、そうなのでしょう。異世界人ですか。文字通り、単に異世界の人というだけなら、何の特殊能力もなくて当然かもしれませんね」
長門は視線を合わせずに答える。
「いまから十日あまり前に発生した歴史改変は、時間軸を遡行して効力を及ぼすタイプだった。この改変によって平行時空から取り込まれた構成要素があっても、その履歴は現在時空とつじつまが合うように再構築される。外面的な判別は困難」

二人の間に緊張した空気が流れる。みくるは思わず声をあげた。
「もう、押し付けあってどうするんですか。あの、ごめんなさい。私には、いまの状態が涼宮さんの願望だとは、あまり思えないんですけど。私たち以外の皆さんは、どうして特別な力が使えなくなっちゃったんでしょう」
古泉はこめかみの辺りを軽く掻いた。
「さっきは少々大人げない態度でした、すみません。しかしこの状況、確かに不自然ですね。宇宙人・未来人でも解明できないほどの異変に、なぜ僕たちだけが影響を受けていないのか。
 これがもし逆の事態であったなら、我々の組織に取って代わろうとする勢力の陰謀と考える所ですが」
再び三人は押し黙ってしまった。昼休みが終了間際であることを知らせるチャイムが鳴る。
「主役…」
みくるが唐突につぶやいた。
「以前、泉さんが、この世界という物語の主役は涼宮さんだと言っていました。私たちは、準主役級のキャラクターだとも」
「実に彼女らしい発想ですね。それが、何か」
そう問われて、みくるはやや発言に詰まった。
「すみません、あまり深い意味はないんですけど。だとしたら、いま力を封じられてしまっている人たちは、脇役ってことになりますよね」
長門はこの会話を無視して椅子から立ち、出入り口のドアに向かった。もう重要な情報は得られないと判断した様子だ。
「ふうむ。涼宮さんを中心とするこの世界にとって、名もない端役でしかない人物には、彼女に由来する力が与えられなくなった、ということでしょうか。ありえますね、その線も」
そう話しながら、二人とも部室を後にする。この臨時ミーティングは、ここで解散となった。
298名無し@18歳未満の入場禁止:2008/10/05(日) 20:43:08 ID:FdQ83r8e0
猿が襲来したか?
299名無し@18歳未満の入場禁止:2008/10/05(日) 20:58:55 ID:rBT+xyl00
― 第二幕 ―

ずっと昔から、あたしは人の顔や名前を覚えるのが苦手だった。
アニメやマンガのキャラなら速攻で見分けがつくのに。なんて、こんなこと言ったらまたかがみに呆れられそうだけど。
ちょっと会って、二、三回話した程度の人なんて、すぐに誰だか見分けがつかなくなっちゃうでしょ。と主張してみても、同意してもらえたことはあんまりない。
でも、これにはちゃんとわけがある。
どうしてだかあたしには、よく知らない人の声が、みんな同じ人の声のように聞こえてしまうのだ。
わかるのは、相手が男か女か、その程度。それなりに親しく付き合えば、だんだんと個人の聞きわけがつくようになってくるんだけど。
ただ、たまに例外もあって、出会った時からちゃんとオリジナルな声の人もいる。そういう人とはたいてい仲良くできる。かがみ、つかさ、みゆきさんとかはその部類だ。
高校に入って初めて会って、ひとこと話してるのを聴いた瞬間、こいつとは友達になれそうだと直感した。もちろんその勘は大正解だったよ。
中学までのクラスメートは、ほぼ全員が立木かくじらだったんで、いまいち溶け込めてなかった気がする。
あ、いまのはそういう名前の声優さんのことだよ。よく知らない人の声ってのは、あたしが知ってるその声優さんたちの声に近い。
そう、どういうわけだか、アニメだとちゃんと聞きわけがつく。実写はダメだけど。あたしがアニメ好きになったのって、これが原因かもね。
お父さんが、あたしにオタク英才教育を施すようになったのも、あたしが小さいころから、テレビにかじりつくようにしてアニメを見てたのがきっかけらしいし。

自分のこの妙な体質、うんと小さいころは別に気にしてなかった。というか、世の中ってのはそういうもんだと思っていた。
大きくなるにつれて、どうもあたしに聞こえている世界は、みんなに聞こえている世界とは違うらしいと気がついてきた。
お父さんにそれを話したら、すぐ耳鼻科に連れて行かれた。でも耳には異常なし、精神的な問題、と診断されたんだと思う。次に、児童カウンセリング教室っていう所に通わされた。
そこの指導員からお父さんに宛てられた報告書みたいなのを、ちらっと見たことがある。確か、『他人への興味の持ちかたが両極端、潜在的に自閉症の気質がある』とかそんな感じだったような。
つまり、あたしにはヒキコモリの才能があるってこと? ほっといてよ。
結局、その教室にはちょっとしか行かなかった。お父さんには、もう治ったと嘘をついて。だってさ、実の父親が自分のせいで泣きそうな顔してるとこなんて、子供心には強烈すぎるトラウマだよ。
だからもう、これは受け入れることにしてる。人に言ったってあんまりわかってもらえないのは経験済みなんで、自分から吹聴したりはしないけど。
あらゆる人の声がおんなじに聞こえちゃうっていうんなら、本格的に脳に問題があるんだろうけど、あたしにとって背景キャラに過ぎないひと限定なんだから別にいい。
むしろ、初対面の相手でも即座に主要キャラかどうかわかるんだから、便利な体質だと思うことにしてる。
300名無し@18歳未満の入場禁止:2008/10/05(日) 21:00:07 ID:rBT+xyl00
ふと目が覚めると、すでに放課後だった。ほうきを片手に持ったみゆきさんが、ものすごく遠慮がちにあたしの肩をゆすっていた。
あたしと目が合うと、みゆきさんはあわてて自分のポケットをまさぐり、ティッシュを取り出した。
なんだか頬がむずむずする、触ってみると、じっとり濡れた感触がする。
はうっ。あわてて視線を下に落とすと、机の上には直径3センチほどの唾液の湖、通称よだレイクが形成されていた。
「うー、悪いねみゆきしゃん。あうう、ほっぺた痒い」
借りたティッシュで、この恥ずかしい液体を拭き取る。教科書とノートに被害が無かったのは不幸中の幸いか。
「あんた、寝すぎ。毎晩何時まで起きてんのよ」
腕組みしたかがみが、あたしを呆れ顔で見ていた。
「昨日はわりと早めに寝たよ。えーと、二時前ぐらいには」
「早くてそれかい」
「さすがこなちゃん」
かがみがぼやく。つかさは変なところで感心している。
「あの、お目覚めのところすみませんが、そろそろお掃除を…」
お、今週はみゆきさんの班が掃除当番だっけ? あたしはすばやく机をかたし、椅子をひっくり返して机に乗っけた。
そこらにいた男子たちが、みんなの机を後ろ側に寄せる。あたしたちはいったん廊下に出た。みゆきさんは几帳面にほうきがけをしている。
「いやあ、みゆきさんのお掃除姿もまた格別だ。どうせなら、メイド服を着用してもらいたいとこだね」
と言ってかがみの顔を覗き込んでみた。かがみは眉間にしわを寄せている。
「あんたね、みゆきを第二の朝比奈先輩にするつもり? んなこと企んでたら、本気で友達の縁切るわよ」
こりゃまたキツい返答だ。おお怖わ、とおどけてみせた。
いやしかし、みくるちゃんとみゆきさんのダブルメイド計画か、ハルヒの喜びそうなネタだわ。かがみに縁を切られちゃ困るんで、実行はしないでおくけど。
「それじゃ、みゆきの掃除が終わったらさっさと帰ろっか」
かがみが当然のようにそう言い出した。え、いや、ちょっと待って。確かに前まではそんなペースだったけど、いまのあたしは放課後フリーじゃないし。
「冗談よ。あんたには寄るとこがあるんでしょ」
かがみはそう言ってにやりと笑った。く、一杯食わされたか。
「SOS団かあ、楽しそうなとこだよね。ね、お姉ちゃん」
つかさは無邪気に笑っている。かがみは再びしかめっつらになった。
「こう言っちゃなんだけど、あの無意味なまでのパワーにはついていけないわ。はあ、今日はいろいろ疲れた」
なにやらお疲れぎみだね、かがみん。
301名無し@18歳未満の入場禁止:2008/10/05(日) 21:01:11 ID:rBT+xyl00
「そういやさ、今日のお昼は、ハルにゃんとごはん食べてたんだって?」
そう聞くと、かがみはびくりとして一瞬だけ目をそらした。つかさが不思議そうな顔になる。
「はるにゃん? ああ、ハルちゃんだね。お姉ちゃんって、そんなにハルちゃんと仲良しさんだっけ」
興味しんしんといった目で姉を見つめるつかさ。かがみは困ったような笑みを浮かべた。誰かさんがよくしてる表情だぞ、それは。
「あー、なんでか知らないけど、強引につきあわされた。延々と話してくれたわよ、キョン君がいかにひどいやつかってことを」
「え、え。キョン君ってひどい人だったの? どっちかっていうと、いいひとだと思ってたのに」
つかさは目をぱちくりさせている。かがみはあわてて首を横に振った。
「いやいや。聞けば聞くほど同情の気持ちが沸いてくるのよ…彼に」
なんだか遠い目をしながら、かがみは語る。
「人の話を聞かないやつには、こなたでもう慣れてると思ってたけど、上には上がいるものね。キョン君もよくあれに付き合ってられる…いや、だからこそ放っとけないってこと?
そうなる気持ち、わかんないでもないけど。やっぱあのくらい強引に行かないとダメなのかな。うう、無理。常識が邪魔をする…」
話しながらだんだんと、かがみはマイワールドに没入して行った。最後のほうはほとんど聞き取れないつぶやきになっている。おーい、帰ってこーい。
「あ、ちが、違うのよ。わたしはただ、友人として彼女が心配というか、その」
やっとこっちの世界に戻ってきた。あたしと目が合うと、かがみは急にあたふたして髪の毛をいじりだした。
つかさはさっきから愛想笑いになっている。その態度は正解だね、ツンデレモードになっちゃったかがみは、下手にいじると逆ギレするからな。しかしあたしは恐れないよ。
「ん、なにが違うんだって。お姉さんに言ってみそ」
そう問いかけるとかがみは目をそむけ、あたしを手でおいはらう仕草をした。
「もう、いいから。あんたはさっさと人外魔境に旅立ってきなさい」
人外魔境ね、それはわりとSOS団の本質を突いてるよ。いまのかがみは、自分もハルヒシリーズの読者だったことなんて、忘れちゃってるはずだけど。

というわけでやって参りました、ハルヒの大魔境。またの名を文芸部室。
ここ何日かは長門と一緒に来ることが多かったけど、かがみたちとああだこうだと話していたら少し遅れてしまった。
もうみんな来てるかな。
「いや、だからさ、言ってくれなくちゃわかんないだろう。何がそんなに気に食わないんだ」
ん、どした。この中ではいまなにが。
「ばーか」
「は?」
「ばーかばーか!」
「子供かおまえは」
えー、なにやらキョンとハルヒが、痴話ゲンカの真最中のもようです。ここは突入せざるをえまい。
「ちわー、三河屋でーす」
一部では某へんてこパーマの主婦と不倫疑惑がある、日本一有名な御用聞きのまねをしながら部室のドアを開けた。
いっせいにあたしに視線が集まる。予想通り、朝比奈さんはなすすべなくオロオロしていた。古泉は苦笑い…を通り越して、苦み走った顔になってる。長門は、説明するまでもなくいつものまんま。
いまのは正直、三人もギャラリーがいるのにする会話じゃないような。でも誰も止めに入らないのがSOS団クオリティー。
「あ、どぞ、お気になさらず。続けて、続けて」
わくわく、というジェスチャーをしてみせる。ハルヒがあたしを手招きした。
「こなた、ちょっとこっちきて」
さっきまで怒りのオーラを放っていたのに、急に笑顔で呼びかけられた。ちと危険な気配は感じるが、言われるがままに団長席まで歩み寄る。
ハルヒは急に立ち上がり、あたしの肩をつかんで半回転させた。そのまま抱きついて、後ろに体重をかけてくる。とっさのことに足元がもつれた。
「うん、あんたはかわゆい。それにひきかえ、このバカキョンと来たらもう」
あれよという間に、あたしはハルヒの膝の上に座らされていた。なんという早業か、格闘技経験者としてのプライドがちょっと傷ついたよ。
お膝抱っこは女のロマン、とはいえ、女同士でそんなにやりたいものではないような。って、なんか背中に質感を伴った弾力を感じる。スペックの違いをここで見せ付けられるとは。
302名無し@18歳未満の入場禁止:2008/10/05(日) 21:01:51 ID:rBT+xyl00
「俺がいったい何したってんだ。理由が不明じゃ、謝ることもできんだろ」
キョンがこちらに詰め寄ってくる。ハルヒはあたしをぎゅっと抱きしめた。なんか手が震えてる。
「…代役、募集中なんでしょ」
そうぼそりとつぶやく。キョンは顔をしかめた。
「誰でもいいから、あたしの相手を代わって欲しいんだって? あたしと同類に見られちゃ迷惑なんだって?」
これどっかで聞いたフレーズのような。ええと、今日の午前中、あたしが嫌な感じの女子たちにからまれてたとき、キョンが言ってたことか。あれをハルヒに聞かれてたんだね。
激しくなじられ、キョンはぐっと口を閉じた。ハルヒの怒りはまだ収まらない。
「そこまで思ってるんなら、もういい。あんたの代役募集オーディションでもなんでもやったげようじゃないの。初代キョン役のキョンさん、お疲れ様。もう帰っていいのよ」
そう言い切って、ハルヒはあたしのうなじのあたりに顔をうずめた。なんかくすぐったいんすけど。それと、少し濡れた感触が。これはもしや、泣いてる?
「あ、あれか。あれはその場の流れというか、別に俺の本心というわけじゃあ。うん、本心ではない、と思う」
ダメだこの男。そんな言い訳で納得する女子なんてこの世にゃいないよ。
「出てけ」
あたしの後頭部におでこをくっつけたまま、ハルヒが言う。耳元で言われると、自分に対してじゃないとわかっててもびくっとしちゃうな。
キョンはまだ何か釈明しようとしている。
「出てけって言ってんの!」
顔を上げてハルヒが叫んだ。キョンはびっくりした表情になったあと、ゆっくりと振り向いて、その辺においてあった自分の荷物を手に取る。
さっきから渋い顔になってた古泉は立ち上がり、キョンのあとを追いかけようとする。ああ、彼にとっちゃこの状況、冗談抜きで死活問題だね。
ここはあたしが割って入るべきか。べきだろうね、このまんまじゃ誰も仲裁してくれなさそうだし。

「まあまあ、お二人さん。そんなオーディションしたって、応募者がいるとは思えないよ」
そう言って、ハルヒのほうにムリヤリ振り向いた。ね、と問いかけてみる。彼女は複雑な表情になっていた。トンカツだと思ってかじってみたら、たまねぎカツだった! みたいな。
「仮に誰か応募したとして、そんなのにハルにゃんが合格点出すわけないじゃん。あ、キョンキョンさあ、覆面でもかぶってエントリーしてみたら。謎のキョン、その正体はキョン。という展開に…」
みんな無言。そのうえ、あたしをじっと見てる。さすがにいまのはすべったか。
「何が言いたい」
キョンはかなりイラついた感じでそう聞いてきた。きっと、どうして俺ばっかり難癖つけられるんだ、とか思ってるでしょ。
「今日さ、あたしをかばってくれたのは、ちょっと嬉しかったよ。でもあの言い訳はマイナス評価だね。どうせなら、『ハルヒは俺の女だ、文句あっか』って言っとけばいいのに」
今度はキョンが複雑顔になる番だった。タコヤキを口に放り込んでみたら、中身が激熱だった! 的な。
そのままくるっと振り向く、ハルヒと至近距離で目が合った。
「ハルにゃんだってさ、まさか本気で、キョンキョンの代わりが見つかるなんて思ってないんでしょ。ハルにゃんとまとも付き合える男子なんて、宇宙規模で探したって一人しかいないよ。自分だってそれわかってるから、今日一日中怒ってたんじゃないの?」
「馬鹿言ってんじゃない」「馬鹿言ってんじゃねえ」
二人のセリフがぴったりとかぶった。あたしの肩越しに目と目が合う。すぐにお互い逸らしたけど。
がたんと椅子を押しのけて、ハルヒが立ち上がった。団長席の脇に置かれた通学鞄に手を伸ばす。
「もう活動終了、みんな解散」
ハルヒは一方的にそう宣言すると、どしどし足音を立ててこの部屋から出て行った。長門がすっと無音で立ち上がり、そのあとを追う。そっちはうまいことフォローしといてね。ながもんにはちょっと不向きな仕事かもだけど。
303名無し@18歳未満の入場禁止:2008/10/05(日) 21:02:25 ID:rBT+xyl00
「助かりました。まだ予断は許されませんが、最悪の局面は避けられたようです」
古泉が心底ほっとしたように言った。
「いけません、いけませんよキョン君。涼宮さんにとって、あなたの存在、あなたが思ってるよりずっと大きいんです」
朝比奈さんは半べそ状態だ。じっとキョンを見つめている。キョンは幾分ふてくされている。
「どうして俺が言論統制されなきゃいけないんですか」
「キョン君っ」
引きつった声でそういうと、彼女はうつむいて肩を震わせはじめた。
「ほーら、みくるちゃん泣いてるよ。キョンキョンは女の子泣かせだねー」
「あ、いや、すんません。これから気をつけるんで」
言いながらも、キョンはかなり疲れた顔をしている。かがみに引き続き、今日のお疲れ様第二号だね。
「いまさらあなたを糾弾したって仕方がありませんが…本当に、後先を考えてください。涼宮さんの感情の爆発、もう止めることは不可能かと思いましたよ。泉さんのおかげで、まだしも心の火種という程度で済んだようですが」
彼のいまの発言、事情を知らなければ、ただ友達思いのいいやつという印象になるんだろうけど。
「ねえ、いっちん」
はい? と古泉が答える。
「いっちーのほうがいい? あだ名。まあいいや、さっきからずいぶん気にしてるみたいだけど、ハルにゃんがイライラしてると、何か困ったことにでもなるのかい」
古泉は言葉に詰まった。そりゃ詰まるわな。僕の大切な友人の一人として…とかなんとか、苦しい言い訳をしている。くく、なんかこういう立場に立つって快感だね。
「人が悪い質問じゃないか、泉。勘弁してやれ」
キョンがそう突っ込む。事情を知らない二人が不思議そうにする。
「話してもいいよな、ああ。聞いてくれ、こいつは知ってるんだ。みんなの正体も、ハルヒの力の事も」
そう聞いて朝比奈さんが驚く。古泉はあごに手を当て、なるほどとうなずいた。ホントに予想できてたの? さっきは本気で困ってるように見えたけど。

あたしは、お昼休みにキョンに聞かれた話、あたしが前にいた世界では、この世界がアニメだったという話を二人にした。
「ふうむ、そういうこともあるのでしょうね。長門さんならもっと論理的な解釈をしてくれそうですが」
一通り説明してあげても、古泉はまだなにか納得いかないようだった。
「ええと、つまりこの世界のことはお話の中のできごとで、私たちはその登場人物なんですか。すぐにそれを信じるのは、ちょっと難しいんですけど」
朝比奈さんが遠慮がちに異論を差し挟む。
「えと、こっちはこっちで本物だよ。あたしだって、別に自分がなんかのキャラだなんて思ってないもん。なんていうのかな。あれだ、マトリョーシカみたいに」
「マトリョ…それもアニメかなんかか」
あれ。このたとえ、わかんなかったかな。古泉がにやりと笑う。
「マトリョーシカとは、ロシアの人形です。見たことがありませんか、大きな人形の中に、やや小さい人形が入っていて、その中にさらに小さい人形が入っていて…というように何重にもなっているあれです。泉さんは、この世界も似たようなものだと?」
そうそう、説明ありがと。アニメで例えるんならゴーディアンだよ。
「あたしがもといた世界も、きっと一番外側の世界じゃないと思うんだ。もっと外側から見たら、あの世界も実はマンガかなんかで、それを見てる人たちだって、別の世界の誰かにしたらお話のキャラなんだよ」
キョンと朝比奈さんは途方に暮れている。古泉だけは納得してる。この手のメタな話が好きそうなのは、彼ぐらいか。
「泉さんのお友達の皆さんも、一緒に同じ世界から来たんですか」
「ええと、誰がどっちだったか、自分でもあいまいになってきてるんだけど。あたしと仲いい三人はそうだね、前から一緒だった。あとそれぞれの家族と、友達と。そういや、うちの担任の黒井先生もだよ」
考えてみるとけっこうな人数だね。あたしの知らない人とかもいるかも。
「それだけの人たちが、世界を超えて? 確かに、この前のあれは、三年前に次ぐ大規模な時空間振動でしたけど…」
朝比奈さんは何かぶつぶつ言ってる。彼女の常識からしたら、よっぽど信じがたいことなのかな。
「ふん、もとからこの世界、あいつのせいでだいぶカオスになってるんだ。こいつの知り合いが何人か混じったとこで、そう大して違わないさ」
キョンが投げやりな調子で言った。古泉と朝比奈さんが非難するような視線を送ると、彼は目をそむけた。
304名無し@18歳未満の入場禁止:2008/10/05(日) 21:03:21 ID:rBT+xyl00
― 幕間・その二 ―

この日の夜、とあるマンションの一室。
「で、そっちはどうだった。あいつの機嫌、少しはよくなったか」
最低限の家具しかない清潔だが簡素な部屋に、二人はいた。
「好調ではない。私と共に帰宅の経路にあった19分間、涼宮ハルヒの発言率は平素の20パーセントを下回っていた。そのうち、あなたの話題に触れたのは一回のみ、これは最低記録」
ちっ、とキョンは舌打ちをした。
「当然の帰結。あなたは、自分自身も特異的存在であると自覚するべき」
「それは朝比奈さんと古泉にもさんざん言われたよ。でもどうすりゃいいってんだ」
長門は答えない。相手の感情が収まるのをじっと待っているようだった。
「まあそれはどうとでもなれだ。それより、おまえにも言っとかなきゃならんと思うことがある。あの二人にはもう話したけど、泉の素性について」
さらに話を続けようとしているところ、長門は発言を遮った。
「その必要はない。あの部屋でのやり取りはモニタ済み、あなたたちの会話内容は把握している」
キョンは渋い顔になった。
「なんだ、盗聴機でもしかけてたのか」
「概念的に言うなら、それに近い処置を施した。地球人類のテクノロジではないけど」
キョンの渋面はまだ収まらない。
「そのくらいは朝飯前か。じゃあここに来たのも無駄足だったな。悪いが、帰るぞ」
立ち上がろうとする彼の手に、長門がそっと手を乗せた。そしてすぐに離す。
「待って、報告があるのは私のほう。現在、涼宮ハルヒを観察している勢力に共通して起きている不調と、その原因。まずはあなたに聞いてもらいたい」
305名無し@18歳未満の入場禁止:2008/10/05(日) 21:04:01 ID:rBT+xyl00
長門は、今日の昼休みに得た情報をかいつまんで淡々と語った。
「はあ、それは…大変だな。そのくらいしか言いようがないが。でも好都合じゃないか、おまえら自身の謎パワーは無くなってないんだろ。古泉の言ってるような敵対勢力とやらに、何歩もリードしてるって考えたら」
長門は押し黙った。違うのか、とキョンが念を押す。
「その解釈は不成立。いま起きている広域情報冷却現象は、新たな勢力の存在によって引き起こされたもの」
「あー、なんだって。また新種のエイリアンのしわざか、そのナントカ現象は」
言い終わるのを待ってから、長門は口を開いた。
「広域情報冷却現象。現在、この弓状列島の大部分を含む、半径約700キロメートルの圏内で、異常な情報融点の上昇が見られている。影響範囲はなおも拡大中」
キョンは頬をひくつかせた。
「ええと、どこから突っ込めばいい? その冷却現象とやらのせいでどうなる。水が氷にでもなっちまうのか」
「それが比喩的表現だとするなら、比較的妥当。私の行うような、情報結合の解除や再構成が困難になる。機関の超能力・未来人のテクノロジも根本的な原理は同じ」
「で、それがただの自然現象なんかじゃなく、なにもんかの仕組んだことだと」
長門はわずかにうなずいた。
「情報統合思念体から、現象を起こした存在の性質について報告があった。新種の、寄生型の情報生命体。それが猛烈な速度で繁殖している」
寄生型、そう聞いてキョンは身震いした。
「マジもんのエイリアンかよ、しかも繁殖中だと? 勘弁してくれ」
そう言って、もうぬるくなりかけたお茶を手に取った。
「それらに対して、便宜的な名称を付与した。『画一性端末群』」
「…なんだって。もっかい言ってくれ」
キョンはお茶をすすりながら、いくぶんさめた口調で聞いた。
「画一性、端末群。この日本国と呼称される地域共同体、その構成人口の80パーセント以上が、すでに端末群に感染している」
ぶっ、と飲みかけたものを吹き出した。やや咳き込む。
「冗談じゃない。それはもう感染ってレベルじゃねえ、侵略だろ」
想像以上の事態に血相を変えるキョン。対して長門は平然として語った。
「侵略という表現が適切かは、現段階では不明。端末群に感染した個体は、画一的な個性標識を有するようになるが、それだけ。肉体や精神に、外面的に判別できる影響は現れない。だから思念体もいままでマークできなかった」
キョンはやや思案し、数秒かかって話の内容を理解した。
「寄生だの繁殖だのと言うからビビったが、わりとおとなしいやつらなのか。でもおまえらの仲間、そいつらに力を封じられてるんだっけ」
そう、と長門は答えた。
「涼宮ハルヒに直接関わった者たちだけが、感染を免れている。彼女自身、もしくはその周辺の何かに、端末群に対する免疫要素があるはず。その究明がいまの最優先事項。あなたはそのためのキーとなりうる存在、だから知ってほしかった」
「はあ。何度も言うようだが、俺には何の不思議能力もないんだぞ。あまり妙な期待はするな」
キョンは気の抜けた返事で返す。長門はその瞳をじっと見つめていた。
306名無し@18歳未満の入場禁止:2008/10/05(日) 21:06:54 ID:rBT+xyl00
連投規制回避のために、1時間ごと(時刻が変わったら)投下します。
ちなみに、全部で五幕です。
307名無し@18歳未満の入場禁止:2008/10/05(日) 21:26:15 ID:FdQ83r8e0
がんばれー
308名無し@18歳未満の入場禁止:2008/10/05(日) 21:41:20 ID:grctaaBs0
そういや連投規制は毎時00分毎にリセットだったっけか
309名無し@18歳未満の入場禁止:2008/10/05(日) 21:59:01 ID:rBT+xyl00
― 第三幕 ―

朝、健全な学生なら登校している時間。
まああたしはあんまり健全な部類とは言えないんだろうけど、とりあえず遅刻しない時間には家を出た。駅から学校までの道のりを、やや重い足取りで歩く。
最近はわりと慣れてきたけど、一人っきりでこの登坂はやっぱちょっと気がめいる。その辺に知ってる人でもいないかな。
お、やや後方にターゲットロックオン。物憂げな顔つきで、斜め下30度を見つめながら歩いている超能力少年を発見した。どうもあたしには気がついてないようす。彼にしては珍しい。
おいっす、と声をかけようとしたとき、さらに後方にもう一人、よーく知ってる人物がいるのに気がついた。
なにやってんの、つかさ。いつも姉にべったりのコイツが、なぜか今日は一人。10メートルほど前を歩いている古泉のほうを、さっきからちらちら見てる。
声をかけようか、でもやめとこうかとさんざん迷いながら、一定の距離を保ってあとをつけているご様子。
はい、ここは元気に。
「おいーっす」
古泉はやや目を細めてこっちを見た。後ろのほうにいるつかさはびっくり顔。二人の動きがシンクロしている。
いちど古泉と目を合わせてから、つかさに呼びかける。
「声が小さいぞ、おいーっす!」
つかさは、てってっと駆け寄ってきた。こころなしかほっとしてるような表情で。
「おはよう、こなちゃん。あと、こっ…古泉君も」
「ああ、おはようございます。泉さん、柊さん」
あたしが声をかけるまではかなりお疲れモードだった古泉だが、それを微塵も感じさせない爽やかな笑顔で返事をした。
「ダメだよう、いっちゃん。あたしよりも先に、まずつかさにあいさつしないと」
突然のダメ出しに、二人ともきょとんとしている。
「そう、ですか。では。おはようございます、柊さん、泉さん」
さわやかなあいさつ再び。つかさは恥ずかしそうにしている。でもまだなんか違うな。
「んー、『柊さん』だと、かがみとかぶっちゃうじゃん、名前のほうで呼んだげて。なんなら呼び捨てでも可だよ。あたしが許可するからさ」
われながら無茶な要望だとは思うが、古泉は笑っていた。
「そうですか。では」
「もういいよっ。こなちゃんったら、もう」
慌てて制止するつかさ。そう、こういうシーンが欲しかったんだ。
あたしがニヤニヤしてると、つかさは微妙にじっとりした視線でにらんできた。
「こなちゃん。さっき、いっちゃん、って呼んでたけど…それいつから?」
小声でそう尋ねてくる。あたしも小声で返してやった。
「つかさもそう呼べばいいじゃん。キッカケだよ、キッカケ」
真っ赤になってうつむくと、つかさはあたしの服のすそをつまんで歩き出した。どうにも彼とは目が合わせづらいらしい。
310名無し@18歳未満の入場禁止:2008/10/05(日) 21:59:33 ID:rBT+xyl00
あたしたちの斜め後ろを歩く古泉だが、さっきまでの笑顔が失せて、なにやら淀んだ目つきに戻っていた。おいおい、ちょっと難ありとはいえ、こんな美少女二人と一緒に登校しといて、なによそれ。
「どうしたの、らしくないよ」
彼はやや沈黙ののちにつぶやいた。
「中学時代以来ですよ、一晩に三回も呼び起こされたのは。あ、いえ、忘れてください。気が緩んでいますね、僕としたことが」
ああ、そっか。昨日のハルヒのあれ、まだ収まってないんだね。
「もしかして、夜中じゅう戦ってたの? あっちの世界で」
そう聞くと彼はぎくりとした顔になった。この話、つかさがいる前じゃやばいって思うかい。大丈夫、大丈夫。
「夜中じゅう? いっ…小泉君も、そんなにゲームとかするんだ」
ほらね。あたしの友達なら、一晩中戦ってると聞いたらそう連想するさ。
「え、ええ、そうなんです。正直、引退できるものならしたいんですけどね。自分でも気がつかないうちに、後戻りができなくなっていまして。まったく困ったものです」
ふうん、とつかさが答える。
「なーに言ってんの。超能力少年・古泉君がいないと、世界は闇のフィールドに閉ざされてしまうんだよ」
「そうなんだ。ええと、ごめんね、よくわかんないや」
つかさは多少ヒキぎみだ。ちょっとばかり悪のりが過ぎたか。
「そう大したものじゃありません。僕の属性は本来、味方のサポートですから。昨夜はなぜか一人でボスに立ち向かうはめになりましたが」
こっちはこっちで、あくまでネトゲの話として通すつもりだね。でも、一人で?
「おんや、いつものお仲間はどうしたの。メイドのお姉さんとか」
古泉は急に黙り、坂道の向こうを見上げた。あ、校門が見えてきた。
「少し事情がありましてね、最近集まれないメンバーが多いんです。落ち着いたら詳しくお話しますよ…それまで僕のライフが残っていたら、ですが」
遠い目をしてたそがれている古泉を、つかさはきょとんとした様子で見つめていた。
311名無し@18歳未満の入場禁止:2008/10/05(日) 21:59:54 ID:grctaaBs0
支援
312名無し@18歳未満の入場禁止:2008/10/05(日) 22:00:11 ID:rBT+xyl00
いつもの教室に入り、いつもの席に着く。通う学校が違っても、教室の内装やクラス割りが前と一緒なのはどういう理屈だろ。
いや、ひとつ大きな変化はあるけどね。ちらっと長門のほうを見ると、彼女はいつものように落ち着いた顔でホームルームの開始を待っていた。
「おいっす、お早うさん。さっそく出席とるでー。泉」
はいっ、と元気に答える。
先生も変わってませんね。一緒にこっちに来れたのは、あたしが先生のこと気に入ってるからかな。
今日も何事もなく一時間目が開始、そして終了。二時間目が開始…やべ、だんだん眠くなってきた。
かなり朦朧としてきた頭で、あたしはなんとなく昨日のことを思い出していた。
あたしの正体がみんなにばれた。でもそれは大したことじゃない。
団員たちの素性について、知らないふりを続けるのもおっくうになってきてたし、そのうちに自分から話すつもりだった。最初にキョンに教えるというセオリーも踏襲できたことだし、まあよしとしよう。
それより気になるのは、やっぱりハルヒの機嫌かな。
ハルヒが無茶な思いつきでみんなを振り回して、キョンがやれやれとか言いながらもついていく、それがこの世界にとって安定したルーチンのはず。
いつかはこの関係も変わるのかもしれないけど、その時はきっと、ハルヒがSOS団を必要としなくなる時だ。いまじゃない。
昨日みたいに、二人の間でろくに会話もできない空気がいつまでも続くのはまずい。ここはいっちょ、なにか仲直りイベントでも用意してあげないとね。
今朝の、いまにも倒れそうな感じの古泉もなんだかかわいそうだったし。

そうと決まったらまずは敵情視察。次の授業が始まる前に、ちょっくら隣のクラスにお邪魔することにした。今日はまだかがみに会っていないことだし。
窓際の一番うしろ、主人公の指定席とでも言うべき位置で、ハルヒは突っ伏して寝ていた。いや、よく見ると人差し指でこつこつ机を叩き続けている。こりゃそうとうにイライラしてるね。
その前の席で、キョンはあらぬ方向を見つめながら、当社比三割増しのつまらなそーな顔になっていた。用もないのにノートをぺらぺらめくったりしている。
あたしは、さらにその前の席に座ってる人物に声をかけた。
「おっはよー、愛しのかがみん」
「別にお早くもないし、愛しくもない」
ひどっ。でも、このぶっきらぼうな口調とは裏腹に、かがみはなんとなくほっとしたような顔になった。
「今朝はつかさと一緒じゃなかったよね、どしたの、ケンカでもした?」
こう聞いてはみたものの、べつに柊姉妹がケンカしてたなんて思ってない。いまのは君たちに聞かせるために言ったんだよ、後ろのお二人さん。
「へ、なんでよ。駅までは普通に一緒だったけど。電車から降りたら急に、『先に行ってて』って頼まれて。理由はなんとなくわかったけど、知らないふりしてあげた」
ほうほう、妹思いなお姉さんですな。
「なるほど。で、今日は朝からずっと、背後からのしかかってくる気まずーい空気を感じてたわけだ」
うっ、とかがみは言葉を詰まらせた。キョンがちらっとあたしを見て、すぐに目を伏せる。
「ちょっと、知ってても言うな。私だって…我慢してたんだから」
そう言って、かがみはうしろを振り向いた。キョンは何か言いたそうに唇をもごもご動かしたけど、何も言葉が出てこないみたいだった。
ハルヒの指トントンはさっきからだんだん速くなってきており、いまや周囲にもはっきり聞こえるほどのビートを刻んでいる。
313名無し@18歳未満の入場禁止:2008/10/05(日) 22:00:47 ID:rBT+xyl00
「ああもう、あんたらいい加減にしなさいよ。なにあったのかは知んないけど、こっちまでイライラしてくるじゃない」
やばい、かがみがキレた。導火線が一番短いのはここだったか。
この言葉にクラスがざわめいた。いっせいにこっちを見てくる。あたしたちをこっそり観察していたらしい谷口と日下部が、軽く目を見合わせ、あちゃーという顔になった。
そういやこの二人、なんか気が合いそうだね。接点とかあるのかな、ってそんな詮索は後回しだ。
ハルヒはドンと机を叩き、ゆっくりと頭を上げた。さっきのかがみ以上に、目に怒りの炎が宿っている。
「全部、この馬鹿が悪い。以上」
それだけ言うと、また机に突っ伏した。自分の胸を抱えこむような姿勢になって。
この馬鹿、と言われた当の本人は、みんなから顔をそむけて外の景色を眺めている。はい、現実逃避モードに入りました。
さすがにあたしもこの空気はいたたまれない。藪をつついたら、蛇どころかオロチが出てきた気分だ。まずいことしちゃったな、後で謝っとかないと。でも、誰に?
ハルヒもキョンも、これ以上口を開いて傷口を広げるのは得策でないと判断したようだ。ぎょっとした様子でこのやり取りを見守っていた五組の皆さんも、それぞれ次の授業の準備などにとりかかっている。
誰も仲裁に入ろうという気配がないのがこのクラスらしい。マイナス方向で一致した団結力を感じるよ。まあ常識で考えて、不発の打ち上げ花火を覗き込むようなチャレンジャーなど、そうはいないわけで。
しかし。
「私は、そうは思わないけど」
かがみは淡々と、しかしはっきり聞こえる声でそう言った。再びクラスが『ざわっ…』とどよめく。もうやめて、みんなの顎が伸びちゃうよ。
「どうしてそんな一方的に、悪いのは彼だと言い切れるの?」
落ち着いた口調でハルヒに問いかける。この冷静さがかえって怖いんだけど。あたしがどんなに悪ふざけした時だって、かがみがこんな言いかたしたことないよ。
ハルヒはわずかに頭を上げた、でも視線は合わせない。いつもの彼女なら、誰かにこんな文句をつけられたら、たとえ相手が国家権力だろうと食ってかかりそうなものだけど。かがみのひとことが、心のどこかにクリティカルヒットしたらしい。
「本当に、自分にはなんの問題もないっていうの? あんたがそんなに馬鹿なはず、ないと思うんだけど」
空気が凍りつく。いまだかつて、ハルヒに対してこんな堂々と口を利いた人間がいるだろうか。
「やめてくれ、かがみ」
お。さっきまで完全に知らん振りを決め込んでいたキョンだけど、さすがに逃避すらできなくなってこっちの世界に戻ってきた。
「俺が悪い、そういうことでいい」
キョンはそう言ってうなだれた。かがみとハルヒが同時に口を開く。このあとに来るセリフはだいたい予想がつくね。たぶん、『なにいってんの』だ。

「なにやってんのやー。青春の語らいもその辺にしときい、若者の特権っちゅうヤツにも限度があんで」
先生が教室に入って来た。ほぼ同時に、授業開始のチャイムが鳴る。
「泉も早よ戻らんか。授業妨害には鉄拳制裁で応じたるで」
ううっ、感謝します、黒井センセー。あまりにも絶妙な、まるで外から聞き耳を立ててたかのようなタイミングで現れたのが、ちょっと気になりますけど。
とにかく、貴重な助け舟を得たあたしはダッシュで自分のクラスに戻った。
314名無し@18歳未満の入場禁止:2008/10/05(日) 22:01:29 ID:rBT+xyl00
っはー、とため息が出る。やっちゃったよ。あれじゃ放置しといたほうがまだましだった。ごめん、古泉、君に明日という日はないかも。
「さっきからどうしちゃったの。お姉ちゃんとなにかあった?」
お昼休み、昨日と同じ四人で昼食を囲んでいる。そのうち五人になると思うけど…なるかな。かがみがそんなに怒ってなけりゃだけど。
昨日は長門と一緒にお弁当というだけでハッピーだったのに、今日のあたしは最高にブルーってやつだ。
「つかさー。善意が裏目に出たときって、何もしなかったときよりもヘコむよね」
つかさもみゆきさんも、心配そうな目であたしを見てる。
長門だけは一定のペースでお弁当をかたしている。じっとその目を見つめると、少しだけ箸が止まった。
ダメだ。あたしには、いまの長門の瞳からなんの感情も読み取れない。小一時間ほど前に隣のクラスであったやりとり、長門が察知してないわけないんだけど。
「おまたせー。って、あたしの居場所が…もういっこ椅子借りるわよ」
おお、かがみん、心の友よ。来てくれたのは嬉しいけど、なんだか顔が合わせづらい。それは向こうも同様らしく、かがみは何も言わずにお弁当を広げた。
これはよくない展開だよ、あたしたちまで気まずい空気になってどうすんのさ。よし、次に目が合ったら謝ろう。
「「ごめんね」」
あたしとかがみ、同時に同じ言葉が出た。一瞬だけぽかんとしてしまう。その隙をついて、向こうからしゃべり始めた。
「あー、あんたのほうが詳しいはずよね、あの二人のケンカのわけ。さっきだって、何とか仲直りさせたくて、わざわざうちに来たんでしょ。それなのに…私には事情なんてよくわかんないのに、余計なこと言ってぶち壊しにしちゃった。ほんと、ごめん」
聞きながら、あたしは猛烈に感動してしまった。かがみは怒ってなんかいなかった、あたしがしようとしてたこと、ちゃんとわかってくれていた。冗談抜きであんた、心の友だよ。
「あ、や、謝るのはこっちのほうだよ。二人がピリピリしてるわけなんて、ラブコメレベルの行き違いだよ。だから、ちょっとつついてあげたら元の鞘に戻るかなーって、思ってたんだけど。余計な手出しだったね。ほんと、ごめん」
あたしの謝罪を聞きながら、かがみはなにやら複雑な表情をしていた。塩ラーメンを頼んだはずなのに、しょうゆラーメンが出てきた…という風情の。
「元の鞘ねえ。別に戻んなくたって…うん、これってチャンスかも…」
なにやら暗い眼をして、不穏当なひとりごとを漏らすかがみ。ちょっと、心の友や、いまダークサイドに堕ちかかってないかい。
315名無し@18歳未満の入場禁止:2008/10/05(日) 22:02:04 ID:rBT+xyl00
つかさはこの話題にまったくついてこれず、ひとりオロオロとしていた。いまはなんだかしょぼんとしている。別に仲間はずれにしてるわけじゃないからさ、あとでちゃんと説明したげるよ。
みゆきさんはさすがに話の大筋を把握したらしく、心配げな目で隣のクラスのほうの壁をちらっと見た。あんまりこの件には首突っ込まないほうがいいよ。いかにみゆきさんの知識だろうと、歯が立たない問題だってあるさ。
そして、長門はじっと見つめていた。あたしでも、隣のクラスのほうでもなく、かがみを。
「あなたの意見は正当、でも最適ではない」
予想もしない相手に突然話しかけられ、かがみは目を白黒させた。
「ええと、長門さん、だよね。どういう意味?」
「有希でいい」
感情の感じられない口調で答えた長門に、やや困り顔になってかがみは言った。
「じゃあ、有希。あんたの言いたいことはなんとなくわかる。自分でもやりすぎたって思ってるから。でもさ、どう対応すればよかったのよ。黙って見てるべきだったって言うの」
しゃべってるうちに、だんだんとかがみは感情的になってきた。んー、その程度じゃ長門は揺るがないよ。
「それも最適ではない。答えはそれらの中間にある」
「そこまでわかってるんなら、あんたが言いなさいよ。仲いいんでしょ、涼宮さんと」
かがみは少しすねた様子になった。長門は微動だにしない。
「私では駄目。私が何を提案しようと、涼宮ハルヒの意にそぐわない意見は却下、あるいは無視される」
それで友達って言えんの、とかがみがぼやく。長門は気にせず話を続けた。
「私に限らず、誰でもそう。彼女に対して有意義な提案ができる人物は、私の知る限り一人だけ。そう思っていた」
今日の長門はよくしゃべるね。いまのセリフ、確実に原稿用紙一行を超えてるよ。
「でも今日、またひとつの例外を発見した。柊かがみ、あなた」
かがみはまじまじと長門の顔を見つめている。変わったやつ、とか思ってるに違いない。
「それで、私に何が言いたいの、有希」
「あなたは今日、涼宮ハルヒに対して嫌悪の感情を抱いたと思う。それでも、彼女とのコミュニケーションを諦めないで欲しい。あなたたちは今後も、頻繁に対立することになると予想される。その葛藤が、涼宮ハルヒに新たな変化をもたらす可能性が高い」
かがみは自分のこめかみのあたりをぐりぐりしながら、この話を聞いていた。さらにしばらく考え込む。
「あんたの言いかたって、正確だけどわかりにくい。つまり、こういうこと? 私の話なら、あの涼宮さんでも少しは聞いてくれるかもしれないから、ケンカしてもいいけどつきあってあげて、って」
長門は微妙にうなずいた。かがみはしばらく長門の顔を見つめたあとに、いまのが『うん』っていう意味なんだと理解した。
「わかりずらっ。はあ、私って、つくづく変わり者と縁があるのね」
うん、それはね、かがみ自身も変わりもんだからだよ。
316名無し@18歳未満の入場禁止:2008/10/05(日) 22:02:31 ID:grctaaBs0
支援
317名無し@18歳未満の入場禁止:2008/10/05(日) 22:02:37 ID:rBT+xyl00
あっという間に午後の授業も終わり、放課後。
今日も今日とて、団活動に向かおうかね。ちょっと足取りが重い気もするけど。
このままじゃ、あの二人はとうぶん冷戦状態だろうし、だからって下手にいじるとどっちかが爆発する。さすがに地雷原で散歩する気にはなれない。
「今日は無難に、みくるちゃんにでもちょっかい出して遊ぼっか。ね、ながもん」
あたしの後ろを黙ってついてくる長門に、そう呼びかけてみた。
「あなたの自由。私は関与しない」
ちとノリが悪いぞ。まあ、進んで朝比奈さんいじりに参加する長門なんて、想像もつかないけどさ。

「ちいーっす」
がちゃりとドアを開ける。部屋にはすでに二人の先客がいた。
今日のお目当ての人物、朝比奈みくるは、なぜか長門の指定席に座っていて、しかも目を閉じて眠り込んでいた。
そのそばにもうひとりの女性が。おそらく朝比奈さんを眠らせた張本人。
「あっ、泉さん。はじめまして、かな。こっちの私とは」
見たこともないほどの美人さんが、そう言ってあたしに微笑みかけてきた。
「わお。朝比奈さん、カッコ大、カッコ閉じ!」
「え。ええと、あいかわらずですね、そういうとこ」
あたしはすぐさま朝比奈さん(大)に駆け寄り、がしっとその両手を取った。
「いひゃー、すっごい。リアル大人朝比奈さんがこれほどのものとは。はー、あやかりたい、あやかりたい」
握った手に頬ずりするまねをすると、朝比奈さんは困った顔であたしを見た。さらにその背後にいた長門と目があったらしく、やや表情が硬くなる。
「ごめんなさい、あまり懐かしんでいる余裕はないの。用件だけ先に言わせてください」
握り締めていた手を離してあげた。そりゃそうか、この人が単に観光目的で来るはずもない。
朝比奈さんは軽く唇をかんだあと、決心したように言う。
「今夜、世界は大きく変わります」
…うん。あたしたちはしばらく目を見合わせた。
「そんだけ?」
もうちょい説明がほしいな。『変わります』というだけじゃ、なんにもわかんないんですけど。
「それだけです。不親切かもしれないけど、教えすぎることはできないの」
あれか、禁則事項ですっ、ってやつだね。
「いーじゃんいーじゃん、ケチケチしないで教えてよ。人生にセーブポイントはないんだからさ」
ふたたび手をとってぶんぶん揺さぶると、朝比奈さんは長門に助けを求める視線になった。
「未来情報を前提とした行為は、時間線のループを生み出す。循環時空は不安定、なるべく小規模に留めるべき」
朝比奈さんはうんうんとうなずいた。そういうしぐさは、いくつになっても変わらないね。
「丸写しの宿題は身になんないから、できるだけ自分で解けってこと? わかっちゃいるんだけど」
あたしは腕組みして悩んでいるふりをする。ふりだけだよ、こういうの考えるのはキョンの仕事じゃないか。
「じゃあ、そろそろ行かなくちゃ。できればもっとお話したかったんですけど、あんまり時間が」
え、もうサヨナラなんだ。いま会ったばっかなのに。もうちっとゆっくりしてってよ。

「ひとつだけ。禁則なら答えなくていい」
長門が突然そう言い出す。朝比奈さんはびくりとした。
「泉こなた、その他の異世界人の存在。あなたたちにとって規定事項だったとは考えにくい」
朝比奈さんは少し眉をひそめ、唇に指を当ててなにか思案している。いちいち色っぽいぞ。
「いまは禁則事項です。でも…もしも明日という日が無事に来たなら、お話しても構いません」
そう、と長門は答える。じゃあ、とひとこと別れを告げ、朝比奈さんは普通にドアから出て行った。
ちょっと、これほどの美人教師はそうそういないよ。目立っちゃうって。
あたしも慌てて廊下に出たが、すでにどこにも彼女の姿はなかった。うーむ、さすがは謎の美女、去り際もあざやかなり。
318名無し@18歳未満の入場禁止:2008/10/05(日) 22:03:09 ID:rBT+xyl00
― 幕間・その三 ―

校門から駅前に続く長い下り坂、一組の男女が帰宅の途中にあった。それだけなら、ほほえましい青春のひと時に見えるのだが。
「いいの? 追いかけなくて」
かがみの問いかけに、キョンは不機嫌そうな口調で聞き返した。
「何をだよ」
「決まってるじゃない、涼宮さんよ。いつもよくわかんない活動に情熱燃やしてるくせに、今日は速攻で帰っちゃうなんて」
手持ちの鞄を肩に引っ掛け、ぶらぶらと歩いていたキョンは、かなり気だるげな様子だ。
「あいつだってたまには、コタツでのんびりみかんでも食ってたい日があるんだろうさ」
かがみは眉を吊り上げた。
「キョン君!」
「あ、いや、スマン」
反射的に謝罪の言葉が出てしまったようだ。怒っている女性には逆らえないのが彼の本能か。
「いまの、だれになにを謝ったの」
そっぽを向いてかがみが聞く。
「ううむ。おまえに対して俺のふがいなさを、かな」
は、と軽くため息で返すかがみ。
「そんなのあたしに言われたってね。相手が違うんじゃない、もう遅いだろうけど」
キョンは宙を見上げて少しうなった。
「あいつにはもう何度も…いや、よく考えたら、まだ一言もスマンとは言ってないな」
かがみの足が止まる。キョンは振り向いた。
「あのねえ。あんたたちのいきさつは、こなたからだいたい聞いた。どっちもどっちよ、私から見たら。だけど、もうそんな経緯は問題じゃないの、わかってる?」
このいきなりの詰問に、キョンはわずかに身を引いた。
「そりゃあ、もう『スマン』の一言じゃあいつの機嫌が直りそうにない、ぐらいはわかるさ。でも何がそんなに気に食わないのか…」

これを聞いて、かがみは何度かまたたいた。そしてじっとキョンの顔を見る。
「ん、なんだよ」
なだめるような口調でかがみは語りかけた。
「ちょっと気になることがあるから、確認させて。どうして涼宮さんは、あんな不思議な同好会を作ったんだと思う?」
真剣な瞳で見つめられ、キョンはわずかに視線をそらした。
「おまえ知らないのか。なんでも宇宙人やら未来人やらを…」
かがみの眉がぴくりと動く。
「聞きかたが悪かったみたいね。じゃあ、どうしてあの子はいつも、常識じゃ考えつかないような思いつきで、あんたを振り回してるの」
キョンはこの質問の意図がまるでつかめなかったようだ。は? とでも言いたげな顔になる。
「知らん。俺ならどんな命令でも聞くと思ってんじゃないか」
ぐっとこぶしを握りしめ、かがみは詰め寄った。
「んなわけないでしょ。見ててわかんないの? あんたの気を引きたくて、相手してもらいたくて、それでワガママばっかり言ってるんじゃない」
キョンは面食らった。
「俺にかまってほしくてやってた、ってのか。そんな馬鹿な」
かがみは大きく息を吸い込んだ。
「馬鹿なのは…」
そしてうなだれる。
「はあ…馬鹿なのは、私か。ケンカしてるなら割り込むチャンスかも、なんて。それ以前の問題じゃない」
突然うつむいて何かつぶやいているかがみに、キョンはいったいどうしたと声をかけようとした。
かがみは顔を上げ、目の前の男をビシッと指差した。
「キョン君、いや、キョン! 明日になったら、あやまんなくていいから、あんたからハルヒに話しかけなさい。話題はなんでもいい」
毅然として言い放つかがみ。キョンはいきなりの指令に困惑している。
「なんでそんなの、おまえに指図されないと…」
「もっと女心を知りなさいってこと。その上で、選んでちょうだい」
かがみは顔を横に向け、キョンを追い越して歩きはじめた。
「私だって、努力してみせるから。それでもかなわないっていうんなら、諦めもつくし」
よくわからない要求の連続に、キョンは唖然としている。
「あ。おいっ、なんだって。言ってることがさっぱりなんだが」
「もう。じゃ、また明日ね」
そう言ってかがみはひらひらと手を振った。彼女の横顔が真っ赤に染まっているのは、夕日のせいか、それとも別の原因か。
319名無し@18歳未満の入場禁止:2008/10/05(日) 22:03:28 ID:grctaaBs0
支援
320名無し@18歳未満の入場禁止:2008/10/05(日) 22:52:25 ID:rBT+xyl00
― 第四幕 ―

朝比奈さん(大)が帰ったあと、すぐに朝比奈さん(小)は目を覚ました。
そのあとしばらく、あたしたちは残りのメンバーを待っていたんだけど…誰も来ないじゃん。
古泉が来れないのは、まあ例の仕事だとして、ハルヒもキョンも欠席ってどういうこと?
あの二人がやる気をなくしちゃったら、この怪しげな集団は速攻で解散だよ。こっち来たばっかなのにそりゃないよ。
結局、今日の活動はなし崩し的に終了になった。
もしかして、まだかがみたちが教室にいるかなー、と淡い期待を抱いて見に行ったけど…誰もいない。当然か、とほほ。

あたしはひとり、とぼとぼと駅まで歩いていた。
ふいー、とため息をついて少し視線を上げると、そこには見知った顔の女子が。
「ながもんっ。待っててくれたの。てっきりもう帰っちゃったのかと」
長門は、そこいらの風景とほとんど一体化して立っていた。知り合いじゃなかったら見過ごしてたとこだよ。
「用件があった、もう済んだ。あなたに重要な依頼がある」
ほえ。長門からあたしに頼みとは。いいよ、できることならなんだって。
「いまから私の現住居に来てほしい。可能であれば宿泊を」
長門のゲンジューキョにシュクハク。言葉は難しいけど、これってつまりは。
「え、え。お泊りのお誘い? うん、行くよ、もちろんだよ。あ、ちょっと待ってて」
あたしは携帯を取り出し、すぐさまうちに電話した。今日は持ってきてよかった。
七、八回はコールが鳴る。もう、早く出てよ。
『はい、もしもし』
「あ、お父さん、あたし。今日は帰んないから、じゃあね」
『おい、おいこなた、待て、なんでだ』
うくく。お父さんったら慌ててる。
「お友達にね、お泊りしようって誘われたの。めったにないことなんだよ、いいでしょ」
『行き先は、かがみちゃんたちの家か』
「ううん、違うよ。最近なかよくなった子のとこ」
お父さんは少し黙ったあと、恐る恐るたずねてきた。
「そのお友達ってのは、もちろん女子なんだろうな。そばにいるんならちょっとかわってくれ」
うたぐり深いなあ、もう。父親ってみんなこんなもんなのかな。あたしは長門に携帯を手渡した。
「…もしもし。長門有希と申します。はい、私からお願いしました、いいえ…質問の意味がわかりません。はい、構いません」
ううむ。長門がデスマス調でしゃべるのは初めて聞いたような。これはこれで新鮮。
長門は無言で携帯を突きかえしてきた。うまく話をつけてくれたかな。
『いやー、いい子じゃないか。いまのゆきちゃんって子。いいぞ、泊まってこい』
なぜかいきなり上機嫌になっていたお父さん。長門はどんな魔法を使ったんだ。
『むふふ、期待してるぞ』
そう言ってお父さんは電話を切った。期待って、なにをさ。

「ありがと、許してもらえたよ。でもどんなこと話してたの」
さっきの口調からは、何かよからぬ企みを感じた。お父さんがいろんな意味で危険だ。
「あなたの父親から、交換条件を提示された」
交換条件? またいったいどんな。
「あなたを宿泊させる見返りに、次回は私が泊まりに行くように、と。問題ないと考えたので、受諾した」
ほほう、それは確かに期待だね。やるじゃんお父さん。いや、あのオヤジは単に娘の友達の顔が見たいだけか。
321名無し@18歳未満の入場禁止:2008/10/05(日) 22:53:00 ID:rBT+xyl00
「おまたへー」
あたしは両手に持ったお皿をコタツに置いた。長門がクンと鼻を鳴らす。
「食欲をそそられる」
それ、おいしそうって意味だよね。腕を振るったかいがあったってもんだ。
「みんな大好きチキンシチュ〜。どっちかっていうとカレーのほうが得意なんだけどね。あ、もう一品あるから」
長門のマンションにお呼ばれされたあたしは、感謝の意を表するために手料理を作ってあげることにした。
最初は、ありあわせの材料でどうにかしようと思ってたんけど…この部屋で食料といえば、買い置きのレトルトカレーと、レンジであっためるごはんだけ。しかたないから一緒にスーパーまで買い物に行ってきた。
食料費は長門に出してもらっちゃったけど、作るのはあたしなんでよしということで。
調理し始めてから気がついたけど、ここは流し場もコンロもピカピカだった。つまり、ほとんど使ってる形跡がない。
カレーばっかじゃ栄養かたよるぞ。長門のことだから、カロリーさえ確保できれば一緒なのかもしれないけど。そういう生活はなんだかさみしいよ。
「ほーい、これで全部だよ」
つけあわせのサラダとミートボールも運ぶ。こっちはできあいのやつだけどね。
「では、いただきます」
ほとんど聞こえないくらいの小声で、長門もいただきますとささやいた。
しばらく無言、一所懸命に食べる。うん、今回のできはまあまあだね、長門もけっこうなペースでかたづけている。
「おかわり」
空になったお皿を差し出された。はやっ。ちょっと待っててね、まだまだあるから。
「どーよ、あたしの手料理」
「栄養的、味覚的に問題ない」
うーん、それだけ?
「精神的にも充足感を覚える」
ちゃんと嬉しいって気持ちもあるんだ、ほっとしたよ。でもまだまだ。
「ながもんはさ、その充足感とやらを、これからもあたしから引き出したいって思う?」
長門はいつものように軽いうなずきで答えた。そりゃそうだ、ここで『別に』とか言われたらショックだ。
「だったらそういう時は、ありがとって言うんだよ。そしたら、また相手のために何かしてあげたくなるじゃん」
また軽くうなずいた。そして。
「…ありがとう」
かすかなささやき声だったけど、そう言ったのがはっきりと聞こえた。

「今日はどうして呼んでくれたの。別になんとなくってわけじゃないよね」
たっぷり食べ終えてから、こう聞いてみる。
「あなたと話がしたい」
「えーと、それってここじゃなきゃできない話かな」
長門はわずかに…首を横に振った。え、違うのかい。
「話す場所がここである必要はない。ただ、いまである必要がある」
いましかできない話ってなんだろ。あたしは、長門がそれを言い出すのを待っていた。しばらく目を合わせて無言が続く。
「……」
長い、タメが長すぎる、みのさん以上だ。あたしは耐え切れずに口を開いた。
「んで、なんの話なの?」
「わからない」
長門は端的に答えた。端的すぎるよ、わかんないのに呼んだの?
「未来の朝比奈みくるは、今夜大きな変化があると言った」
あ、そういやそんなこと言ってたね、朝比奈さん(大)。
「現時点でこの情報を得ているのは、我々二人だけ」
言われてみると、キョンがいないのにそんな大事な話をしたのは変な気がする。
「おそらく彼女にとってはそれが必要、かつ最低限。だから我々のみに伝えた。あなたしか知りえないなんらかの情報を、私が入手した時、現局を打破するためのキーが完成する、そう推測できる」
わ、なんかいきなり難しい話をされたよ。
「だから話して、どんなことでも」
いきなりなんでも話せって言われてもな。入試面接の自己アピール並みに恥ずかしいんだけど。
「ながもんが知らなくて、あたしが知ってることねー。かがみたちのこととか、あたしの昔話とかぐらいだろうけど」
「それでいい、教えて」
322名無し@18歳未満の入場禁止:2008/10/05(日) 22:53:38 ID:rBT+xyl00
それからあたしは、いろんな話を長門にした。かがみのこと、つかさのこと、みゆきさんのこと、その他あたしの個人的な知り合いについて。
それから、このあいだ歴史が変わっちゃってた時のこと、巻き戻されてしまったあたしの二年分の高校生活のこと、中学時代にあった、嬉しかったこと、嫌なこと。あんまり記憶も定かじゃなくなってきてるけど、小学校時代のこと。
そのたびに長門は、とっても真剣な顔で聞いてくれていた。ただ聞き流してるんじゃなくて、わかんないとこは的確にツッコミを入れてくる。
「あー、お茶、もう一杯」
ずっとしゃべってると声が枯れてくるんで、かなり頻繁に長門のお茶をいただいていた。もう二回はトイレに行ったよ。
うわ、もう12時近いじゃん。いつのまに。かれこれ三時間以上も長門とおしゃべり、というか一方的にしゃべってた。
「ふわー、なんだか眠くなってきちゃった。続きは明日じゃ、ダメ?」
長門は首を横に振った。そりゃそうか、まだ長門的にアタリの話題が出てないんだろうし。

あとは、あれか。たぶんお父さんぐらいしか知らない、まだかがみにも言ったことのない話。
「そういや、あたしね、なんか耳が悪いらしいんだ」
そう言うと長門はあたしを見つめた。
「聴覚に障害があるとは感じられない」
「あ、いや聴覚じゃなくて、たぶん脳のほうに問題がね。そんな大したことじゃないけど」
長門はじっと話の続きを待っている。
「ずっと昔からなんだけどさ、あたし、人の声の聞き分けってやつが苦手なんだよ。よく知ってる相手なら大丈夫なんだけど、ちょっと見覚えがない人だと、みんなおんなじ人の声みたいに聞こえちゃって」
さっきまでよりもほんのわずかに大きく、長門は目を見開いた。もしかしてこの話、注目にあたいするってことかな。
「その感覚は、こちらに来てからも同じ?」
さっそくツッコミが入りました。
「うん、変わらないねえ。あ、SOS団のみんなは違うよ、ちゃんとCVに忠実。でもそこいらの通行人は…うん、みんな『CV:くじら』か『CV:立木』だね」
少し考えてから、また長門は質問してきた。
「あなた自身は、その感覚をどう解釈しているのか、教えて」
「え。うーん、変わった体質だなーぐらいにしか。小さいころとかは、あのひとらみんな宇宙人なのかも、なんて思ったりもしたけど」
ガタンと音を立てて、長門は持っていた急須をテーブルに置いた。なに、手でも滑った?
「…みつけた」
あ、やっと何かヒットしたらしい。長かったよ。
「泉こなた、あなたこそ、画一性感染に対する免疫抗原」
323名無し@18歳未満の入場禁止:2008/10/05(日) 22:54:21 ID:rBT+xyl00
長門は携帯を取り出してどこぞに電話し始めた。もしもーし、なんの用事なの。
「私…みつけた。ある程度は推測通り、すぐに来て…なら連れて行く。そう、泉こなたこそ我々のジョーカー」
だれと話してんのかは不明だけど、なんか不穏な内容だよ。連れてくって、どこに。
「来て」
長門は立ち上がり、あたしに手を差し出した。
「え、いま、誰と」
「すぐわかる」
手を引かれるままに、あたしは部屋から連れ出された。下方向のエレベータに乗せられる。
「なに、なに、あたし改造とかされちゃうの? どうせならかっこいい怪人にしてね」
「あなたに不利益は与えない。彼らに会って」
彼らって誰? その疑問は、エレベータのドアが開いた瞬間に解決した。

「こんな夜分にすみません、長門さん、泉さん」
そこには古泉と、あと数名の男女がいた。
「いっきゅん! あ、その人たちって…」
後ろにいたお姉さんが、古泉に話しかける。
「いまのはキミのあだ名?」
古泉は苦笑いを浮かべた。その表情がちょっと空々しいのが気になるけど。後ろにいる四人もみんな固い顔をしている。
「そんな風に呼ぶのは彼女だけですよ。ああ、泉さん、ご存知かとは思いますが紹介しましょう」
ひとりずつ順番に名乗り出てくる。
「はじめまして、森です」
うん、森さんだったね。リアルメイドのお姉さん。
「新川と申します」
むっちゃ渋い感じの、執事の新川さん。それから。
「田丸裕です」
「田丸圭一だ、よろしく」
そうだそうだ、田丸兄弟だ。印象が薄いんでちょっと忘れかけてたよ。

「えー、泉こなたです、よろしく。んと、どうして機関の人たちがここに? いま、たぶん忙しいとこだと思うんですけど」
このあたしの挨拶を無視して、田丸兄弟はお互いに顔を見合わせていた。新川さんは眉をひそめて渋い顔を、森さんは目を見開いてあたしを見つめている。
「おい、わかるか、力が」
「うん、力が戻った、間違いない」
なに、その会話。どうしたっての。
「ああ、大変失礼いたしました、泉様」
新川さんが落ち着いた口調で言う。
「私どもはつい先日から、あなた様もご存知の特別な力を失っていたのです。それが…先ほど泉様に自己紹介をいたしましたとたんに、力が戻って来るのを感じたのでございます」
へ、なにそれ。ひょっとしてあたしにも不思議なパワーがあるっての。
「泉さん、あなたはいったい…」
そう言って、古泉はちらっと長門を見た。
「対端末群免疫抗原、それが、泉こなた」
ごめん、ながもん。あたし漢字が多い文章って苦手なんだけど。
「あなたが、『くじら』ないし『立木』と呼ぶ存在。その本質は感染性の情報生命体、画一性端末群」
よくわかんないけど、何かすごいことを言われてる気がする。
「あなたには、画一化された個性標識を正常化し、端末群を駆除する能力がある」
ええとつまり、さっきまで機関の人たちは立木ウィルスに感染してて、それで力が使えなくなってたんだけど、あたしの謎パワーで元に戻ったってこと? なんだその展開。
324名無し@18歳未満の入場禁止:2008/10/05(日) 23:00:34 ID:rBT+xyl00
「ありがとう、泉さん。もう時間がないけど、このお礼はいつか必ずね」
森さんがそう言うと、エスパー軍団は足早に玄関ホールから出て行った。高そうな車にみんな乗り込み、エンジンをふかして走り去っていく。
ずいぶん急いでたみたいだけど、もしかして閉鎖空間がやばいことになってる? もっと早く思い出してあげるべきだったか。
そう考えながら外を見ていたら、背後でチンとベル音が鳴った。エレベータが開き、長門が乗り込む。あたしもあわてて後を追う。
「えーと、なに。あたしいままでずっと、自分の耳はおかしいんだと思ってたんだけど…」
「あなたには、言語コミュニケーションを介して画一性感染者を判別する能力がある。かつ、あなたに個性を認識された存在は、端末群に対する免疫を与えられる。そう結論づけられる」
よくわかんない理屈だけど、長門がそう言うんなら、そうなんだろうね。
やがてまた七階に到着し、あたしたちはさっきの部屋に戻った。
「はー、なになんだかって感じだったけど、これでひと安心、なのかな」
そう長門に聞いてみる。
「まだ」
まだ、って。あとは古泉たちが神人を倒せば、元通りの世界に…
「あ、そか。オトナ朝比奈さんが言ってた大きな変化ってやつ、いったいなんだろね」
長門は答えなかった。
「ま、お仕事ももう済んだみたいだし、これから何して遊ぼっか。ながもん?」
長門は隣の部屋でもう布団を敷きはじめていた。二人分だ。
あたし的にはまだ早いって気もするけど、いつでも寝れる体勢で語り明かすのも悪くないね。そういや長門ってパジャマとか持ってるのかな。あるんなら貸してもらおうか、サイズもそれほど違わないだろうし。

お布団を敷き終わると、長門はこっちを見た。
「寝て」
いきなりですかい。てか、いまのは怪しい意味にも取れる発言だよ。
「早く、睡眠を」
「そう言われましても。さっきまでの眠気なんてどっかに飛んでっちゃったよ」
長門はちょこんと布団の上に座り込んだ。わずかに指先だけを動かして手招きする。
「来て」
うっぷす。もしかして誘惑されてる? すぽーんとパンツいっちょになって、ルパンダイブで特攻するべきか。
やや緊張しながら、あたしも長門のそばに座った。彼女は優しく手を取り、それを自分の唇へ近づけていく。
長門の手って意外とあったかいな。じゃなくて、あたしリアルでそういう趣味は…
かぷっ。
噛み付かれた。手の甲にちくりと痛みを感じる。
長門が唇を離す。噛まれたところから、少量の唾液に混じってひとすじ血が流れていた。そこをペロッとなめ取られる。もう出血は止まっていた。
「なに? いま、なにひたにょ」
いきなり猛烈な眠気が襲ってきた。うまく口が回らない。なんじゃこりゃ。
「ジョーカーには、ジョーカーを。覚えていて」
え、それどういう意味? そう質問するひまもなく意識が飛び、あたしは深い眠りに落ちていった。
325名無し@18歳未満の入場禁止:2008/10/05(日) 23:30:37 ID:m1isfHUN0
支援
326名無し@18歳未満の入場禁止:2008/10/05(日) 23:46:20 ID:TTbMilJU0
支援(*´Д`)ハァハァ
327名無し@18歳未満の入場禁止:2008/10/05(日) 23:50:57 ID:rBT+xyl00
― 第五幕 ―

気がつくと、夜の学校にいた。この部屋は…うん、いつものSOS団室だね、間違いない。なんでこんなとこにいるんだろ。
立ち上がって外を見てみる。校庭の向こうには、青白く輝く巨大な人型の存在がいた。
「神人だ…」
てことは、ここってハルヒの夢の中? はじめてナマで神人を見たけど、でかいなあ。
そいつは野球場のフェンスに何度もチョップをかましていた。みるみるうちにひしゃげていく。神人は片足を持ち上げ、ホームベンチをぐしゃりと踏み潰した。
こりゃあやばいね、さっさとハルヒをみつけないと。でも、みつけたあとはどうしよう。あたしがチューしたところで嫌がるだけだろうし、ハルヒの前にキョンを探すべきか。たぶん今回もここに来てるでしょ。
部室から廊下に出る。うす暗闇に包まれた、誰もいない深夜の学校。ホラーの舞台としては最高だけど、あいにく謎のモンスターならもう校庭にいる。
何か手がかりがないかとあたりを見渡してみて、少し驚いた。
あたしがいま出てきた部屋のネームプレート、もちろん『文芸部室』だ。その隣の部屋も、さらに向こうの部屋も、ずらっとみんな文芸部室…
少しだけ寒気がしてきた。この中のどこかにハルヒやキョンがいるんだろうか。

「たのもー」
ちょっとビビってきた心を奮い立たせるために、そう声を出してドアを開けた。
「おわ、なにやってんの」
部室内には、いつもの制服姿のキョンと、なぜかメイド服に身を包んだハルヒがいた。
メイドハルヒは澄ました顔でお茶を入れている。キョンはそのうしろ姿をにやけた表情で眺めていた。二人ともぜんぜんこっちに気がついてない。
ハルヒがにっこり笑ってお茶を差し出すと、キョンは恥ずかしそうな顔をしてその湯飲みを手に取った。
ぬう。このバカップルがなにしたいのかは不明だけど、あきらかに正気じゃないよね、いま。
あたしはそっとキョンの横に近づき、かるーく肩をつついた。その瞬間。
指先がキョンの制服に触れたとたん、まるでシャボン玉が割れるみたいに、ぱっと目の前の二人が弾け飛び、光の粒子になって消え去った。
「んな、なっ」
思わず飛びのいてしまう。なんだいまの。あれか、さっきまでここにいた二人は、よくできたCGみたいなもんだったのか。だと信じたい。
しばらくその場に立ちつくしていると、不意に重い響きが聞こえてきた。思わず外を見る。さっきまで野球場を破壊していた神人が、今度は体育館を襲っている。
さっさとなんとかしないと、帰る世界がなくなりそうだ。あたしは廊下に戻り、次の文芸部室のドアを開けた。
この部屋にも、またハルヒとキョンがいた。
ここのハルヒはなぜかメガネをかけており、窓のそばのパイプ椅子に座ってぶあつい本を読んでいる。
キョンはその横で、ちらちらとハルヒのようすを気にして、たまに話しかけている…ように見える。声はぜんぜん聞こえないけど。
メガネハルヒはそれを無視して読書に没頭している。キョンは腕組みして、ぼーっと空を眺めはじめた。
はあ。どう見たってこいつらも偽者だね。本物のハルヒがどんなことを望んでるのか、わかってきた気がする。

開けっ放しにしておいたドアから廊下に戻る。もうひとつ向こうの部室の前に何人かの人影が見えた。思わずびくっとする。
どこか見覚えのある女子たちが、誰かをとりかこんでいる。おそるおそる近寄ってみると、かこまれてるのはハルヒだった。
女子たちは、口々にハルヒに文句をつけているみたいだった。ハルヒは半べそ状態になって怯えている。おいおい。
そこへ突然、部室のドアをにゅっとすり抜けてキョンがあらわれた。
キョンは後ろからハルヒの肩に両手をのせ、くじら軍団に対して口パクで何かを叫ぶ。そのとたんに彼女らは消滅した。
きっとあれだ、『ハルヒは俺の女だ、文句あっか』とでも言ったんだろうね、いま。
苛められっこハルヒは、キョンと熱く見つめ合っている。
いまのはちょっとイラっときたよ。ハルヒもどきの足に軽くケリを入れると、靴のつま先が触れた瞬間に二人は消え去った。
もう、ひとの思い出まで捏造しないでほしいなあ。
328名無し@18歳未満の入場禁止:2008/10/05(日) 23:51:38 ID:rBT+xyl00
さて、この調子で次々とハルヒの願望を暴いていったところで、何かの解決になるとは思えない。この部室棟全体がハズレって気がしてきた。
あたしは出口を求めて歩いた。自然と早足になる。どこまで行っても文芸部室、文芸部室…
だんだん不安になってきた、どんだけ続いてんの、この廊下。こうなったらダッシュだ、全力ダッシュ!
「はあ、はあ…」
いま、軽く200メートルは走ったよ。いやな予感はしてたけどやっぱり無限ループか。
かたっぱしから開けてみるしかないのかな。とりあえず手近な部室に入ってみる。
ここの二人は仲良く将棋をしていた。難しい顔をして盤面をのぞきこむキョン。その向かい側でニコニコと笑うハルヒ。
つきあってらんないよ。キョンもどきにデコピンをかます。二人は消えた。
どうすりゃいいのさ。こんなところで、ニセハルヒ&キョンのよくわからんイチャイチャを、世界が終わるまで見てなきゃいけないの?
そのとき、視界の片隅でちらっと何かが動いた、窓の外だ。そっちを見ると、真っ赤なヒトダマがふわふわ浮いていた。
「きゃー、おばけー」
棒読みでそう叫びながら、駆け寄って窓を開ける。
『なかなかの余裕ですね。怪談の季節にはまだ遠いのでは』
うお、いま心の中に直接声が聞こえたよ。さすがは古泉。
「やふー。ってちょっと、うしろ、うしろ。神人のやつ、暴れまくってますけど」
すでに第二体育館は原形を留めていない。神人は第一体育館の屋根を、だだっこパンチで破壊してるとこだった。
申し訳なさそうな口調で、古泉玉が語りかけてくる。
『ああ…いまさらあれ一体を倒したところで、あまり意味がないんですよ。せっかく助けていただいたというのに、面目ありません』
この話ぶりからは、古泉のいつもの余裕が感じられなかった。そうとう追い詰められてるっぽいね。
「まだ終わってない。逆転のチャンスはあるよ」
そう。あたしの知ってるはずの、この世界のストーリーだったら、ピンチのときはいつだって…
「おーい。泉か、おまえも来てたのか」
あたしは窓から身を乗り出して下を見た。そこにはいつも通りのキョンがいた。

『泉さん、そこの窓枠に乗って、そして僕に触れてください』
ん? よくわかんないけど古泉の指示通り窓枠に登って、ヒトダマに触ってみた。意外と熱を感じない。
「わ、わっ」
突然、ふわっと体重がなくなった感じがした。そのまま体が外のほうに吸い寄せられる。うわ、高っ、ここ三階だよ。
思わず目をつぶる。すーっと下降する感覚がして、気がつくと地面に立っていた。目の前にキョンがいる。
「ふえーん」
ターゲットロックオン、あたしはキョンに駆け寄って、ひしっと抱きついた。
「あ、おい、ちょっ」
うるうる、と口に出して言いながら、上目づかいで見上げてみる。キョンは視線をそらした。
「やめんか、そんなタマじゃないだろ」
失敬な。あたしだっていちおう女の子なんだよ。でもまあ、このキョンが間違いなく本物だってことは確認できたんで、とりあえず開放してあげる。
「しかし、よくこんなとこまで来れたな。このあいだ歴史を変えちまった力、まだ残ってたのか」
へ? あれはハルヒのしわざでしょ。
「よくわかんないけど。あたしがここにいるのは、ながもんの策略だよ。いや、貴重な体験できたんで感謝してるけどね」
「なぜそう思える」
キョンは呆れ顔になっていた。
『こんな状況だというのに、あなたは揺るぎませんね』
そう話しかけてくるヒトダマは、ついさっきまでよりも格段に火力が落ちていた。小さな球体から、ひゅぼっ、ひゅぼっと断続的に赤いオーラが吹き出ている。消えかけの線香花火みたい。
『ここは僕が全力を出せる空間ではないのです。仲間たちに力を借りて持ちこたえていましたが、さきほどの重力制御で打ち止めです』
あ。もしかしてあたし、かなり負担かけてた?
「ふん、ここんとこ寝不足だったんだろ…俺のせいで。さっさと帰って寝てろ」
男子相手にはツンデレなんだね。
『すみません。世界を、頼みます』
じょじょに小さくなりながらそう言い残し、古泉玉は完全に消え去った。
329名無し@18歳未満の入場禁止:2008/10/05(日) 23:52:17 ID:rBT+xyl00
「長門といえば…おまえ、あいつからメッセージかなんか受け取ってないか。こういう時には何かのヒントをくれてそうなもんだが」
唐突にそう聞かれた。メッセージ、長門からのメッセージねえ。
「そういや最後に、ジョーカーにはジョーカー、とか言ってたね。意味わかる?」
キョンは首をすくめて、さっぱりだ、というジェスチャーで返した。
「とにかく、さっさとあいつを見つけてガツンと言ってやらないとな」
そう言って、キョンはしかめっつらをしながら新校舎のほうへ歩き出す。
「ガツン、って、具体的には」
「そうだな…勝手な夢を見てるんじゃねえ、とか」
あー、キョンもあのニセモノたちに出会ってたんだね。はた目で見ててもちょっと恥ずかしかったのに、自分が出てきたんじゃなおさらか。でもさ。
「それだと滅びちゃうよ、世界」
キョンはぐっと言葉に詰まった。何度か口をぱくぱくさせて、ちっ、と舌を打つ。
「ハルヒのやつ、今度は一体何がしたい。どんな世界があいつの望みだっていうんだ」
おいおい。それマジで言ってるの。あたしはキョンのそでをつかんだ。
「わかんないの? ホントに?」
キョンはさっきから、あたしの目を見てくれてない。そういう態度になっちゃうのって、自分でも後ろめたいことがあるときだよね。
「知るわけあるか」
遠い目をしたまま、吐き捨てるようにそう言う。そういう意地っ張りなとこまでハルヒに似てきてどうすんの。だったらあたしが教えたげるよ。
「いまのハルにゃんの望みは、自分とキョンキョンしかいない世界。宇宙人も未来人も、異世界人も超能力者も、だれも二人の邪魔をしない世界、それを作ろうとしてる。違う?」
そう言ったらやっと振り向いてくれた。口元がぴくぴくひきつっている。
「馬鹿な。あいつはいつだって、わけのわからん何かを探して…」
まったくもう。さっさと認めちゃいな。
「本気で探してるんなら、ずばり目の前に現れるはずだよね。でも違った。ハルにゃんが見つけたいのはフシギなんかじゃない。一緒にフシギを探してくれる仲間だよ」
そう聞いてキョンは黙った。地面をにらみつけて、まだ何か考えている。
「だとしたらなんで、あいつはその大事な仲間を消そうとするんだ。どうして自分が、朝比奈さんや長門に成り代わりたいなんて願うんだ」
それ言っちゃうの? あいかわらず自分の墓穴を掘るのがうまいな。ホントにドMじゃあるまいね。
「キョンキョンが言ったんじゃん、代役募集中って。でもハルにゃんにとって代わりなんていなかった。だったら自分がなればいいと思っちゃったんじゃない? 『アナタ好みの女』に」

キョンはよろけるように校舎の壁にひじをつき、握りこぶしをガンっと打ちつけた。やめてよ、そういう乱暴な態度。
「くっ。そんなもん、もはやあいつじゃないだろう」
さすがにショックを受けていた。もっと早く言ってあげりゃよかったんだよ、おまえはおまえのままでいい、とかさ。
「わかったよ、ながもんの言葉の意味」
キョンは暗い目であたしを見た。追い詰められてるのはこっちもだったか。
「二枚のジョーカーってのは、あたしとハルにゃんのことだね。キョンキョンは、いま会うべきじゃない」
返事はなかった。あたしは話を続けた。
「いままでみんな、頼りすぎちゃってたのかな。ハルヒがイライラしてたらキョンに機嫌をとってもらえばいいさって。でも違うよね。あたしたちひとりひとりが、ハルにゃんにとって大事な人じゃなくちゃいけないよね」
ハルヒが困ったやつだなんて、百も承知してる。それさえもおもしろがって、この世界を大いに盛り上げたくて、あたしはSOS団に入ったんだ。
「だから、ここで待ってて。あたしがなんとかしてくる」
信じられないという顔で呆然と立っているキョンを放置して、あたしは走った。
330名無し@18歳未満の入場禁止:2008/10/05(日) 23:52:56 ID:rBT+xyl00
ハルヒとキョンの思い出の場所、校内にそういくつもない。
いまのハルヒにとって、SOS団は心安らげるところじゃなくなってる。だから部室棟は謎空間になっていた。
二人にとって強烈な記憶があるはずの運動場は、神人に踏み荒らされてめちゃめちゃになっている。
だとしたら、残るは。
「やっぱここにいたかあ」
いつもの教室、いつもの席。ハルヒは頬杖をついて外の景色を眺めていた。
あたしが声をかけたとき、ハルヒはびくっとしてこっちを見たけど、すぐにもとの姿勢に戻った。
「前の席いいかな? はい、よっこらせっと」
キョンの席を借りて横向きに座る。ハルヒはぶすっとした顔をしていた。
どうしよう。会えればなんとかなると思って、なんの話題も考えてきてないや。
「あー、昨日とかごめんね。ことの起こりはあたしのせいみたいなとこもあるし、なんとか仲直りしてもらおうと思ってたんだけど…空回っちゃたみたい」
返答はなし、まるで無視された。手ごわいなあ、正面から行ってもダメか。
「あ、ハルにゃん、見てあれ。巨大怪人がちょっと過激な水遊びしてる」
すでに二つの体育館を壊滅させた神人は、次にプールを標的にしたみたいだ。更衣室を踏み潰し、水面に腕を打ちつける。激しい水しぶきが上がる。
こんな異常事態なのに、ハルヒはぼーっと窓の外を眺めたままだった。つまらなそうに口を開く。
「ここ、あたしの夢の中なんでしょ。なにが起きたって不思議じゃないわ」
「お? わかってるんだ」
彼女はじろりとあたしを見て、嫌そうな顔をした。さっきまでの無関心な不機嫌顔じゃなくて、キョンに向けてよくやってるような表情に。
「わかるわよ。二度目だもの、この異常にリアルな悪夢」

とりあえず、こっちの話を聞いてくれそうな感じにはなった。ようし、一気にいくぞ。
「じゃあ話が早いや。一回目のときみたいにさ、こう。YOU、やっちゃいなよ」
誰かと抱き合うようなしぐさをしてみせると、ハルヒは頬杖をついてないほうの手で軽く机を叩いた。
「なんで知ってんの、あんた」
「ま、夢の中だし」
こつこつと人差し指で机を叩き始めた。
「一時的な気の迷いよ。若さゆえの過ち、精神病の一種だったの」
うむ、ここまでわかりやすく素直じゃない態度だと、かえってすがすがしい。
「でー、症状はますます悪化しておると」
そう言うと動きが止まった。あたしは椅子の上でぐるっと半回転し、ハルヒと一緒に外を眺める。
水遊びの終わった神人は、ついに校舎本体を破壊し始めた。たまにかすかな振動が伝わってくる。その向こう、暗い灰色の空の下、明かりの消えた町並みにも何体かの神人がいて、好き勝手に暴れている。
でもいまの彼女にとっては、この一大スペクタクルよりも、たった一人の男子のほうが重要のようだ。
「なにがわかるってのよ…」
「え、うーん、そうだね」
そういってあたしは、もう一つ前、かがみの席の椅子をぺしぺし叩いた。
「ここのひとも、おんなじ病気らしいってことぐらいかな。あたしもちょっと熱っぽいかも、そんなに重症じゃないと信じたいけど」
ハルヒは頬杖をやめて、まっすぐにあたしを見た。さてこの挑発、吉と出るか凶と出るか。
「知ってる、そのくらい。わかんないと思ってた? あたしが言ってんのはそのことじゃない」
およ。意外と鋭かった。いや、恋のパワーが彼女を敏感にさせたのか。
「あいつが、キョンがいなくなってた何日かの間、あたしがどんなに…どんなに退屈だったのか、あんたにわかるっての」
およよ。もしかして、こないだ世界が入れ替わっちゃってた時のこと、いまは覚えてるの。
「あたしは、いままでずっとバカにしてきた。つまんない思い込みに惑わされてる、つまんない人間たちのこと。でも、自分も同レベルだったんだって思い知らされた。もういいのよ」
そう言って、ハルヒはまた外を眺め始めた。もういいってのは、自分が特別じゃなくたってもういい、ってこと?
「むー。SOS団設立のこころざしはどこ行っちゃったのさ。てきとうなお遊びサークルにでもする?」
彼女は机に腕を乗せ、そこに自分の頭を置いた。こりゃ寝る体勢か。
「いいかもね、それでも…」
そう言って目を閉じた。さっきから神人の攻撃は激しくなっており、ドスン、ドスンとけっこうシャレにならない振動が伝わってきてるんだけど、それにはまったく気づいてないようだ。
とりあえずは、ハルヒの考える『明日の世界』の中に、SOS団の存在も含めてもらえたみたい。でもいいのかな、これで…
331名無し@18歳未満の入場禁止:2008/10/05(日) 23:53:33 ID:rBT+xyl00
そのとき、誰かが廊下を走る足音が聞こえた。誰かって、一人しかいないだろうけど。
ハルヒがびくっとして身を起こす。いまのははっきり聞こえたんだね。
がらりと教室のドアが開く。
「ハルヒ! 泉!」
キョンはかなりあせった顔をしていた。待っててって言ったじゃん、せっかくそれなりの方向に話がついたのにさ。
そうか、校舎がブチ壊されてるのを見てて、いてもたってもいられなくなったのか。無駄にヒーロー属性なんだから、もう。
「出てって」
ハルヒがつぶやく。キョンが来てくれたのになんでそんなことを?
彼女をほうを見ると、目が合った。ハルヒはいまの、あたしに対して言ったんだ。
「邪魔しないで。ここはあたしの夢なんだから…そうよ、なんであんたがいるのよ」
見開かれた目が、ぎらんと輝いた気がする。
「出てけ!」
ハルヒが叫んだ瞬間、周りの風景が一変した。

膝がガクンとする感じがした。席につこうとしたとたん、うしろから椅子をとられたときみたいに。思わず受け身を取る。
「あいたた…」
ちょっとおしりをぶつけた。ここ、どこだ。
天井は無い。上には灰色の空が広がっている。ぶつけたところをさすりながら身を起こす。遠くの街並みと、いろいろ破壊された校庭を見下ろせる場所に、あたしはいた。
ここ、屋上か。さっきの教室から屋上までテレポートしてきたらしい。恐るべし、ハルヒパワー。
確かに、本命のキョンが来てくれたんなら、あたしなんてお邪魔虫だよね。
どうもあたしは、ゲームマスター様の不興を買って、強制ログアウト処分を食らったらしい。アカウント削除されなかっただけまだましか。
『なんてことしやがる』
突然キョンの声が聞こえた。あたりを見回すが、どこにも姿はない。
『あいつは、泉は、いつもふざけたやつだけど…誰よりもおまえの友人であろうとしていたじゃないか。それを』
確かにキョンだ。どうやら、ハルヒに聞こえてる声がそのまま全校放送されてるらしい。
背後でまた重い響きが聞こえた。足元が震えるぐらいの衝撃が伝わってくる。コンクリートの破片が床を転がっていった。
緊張しながら振り向く。神人だ。まだ距離はあるけど、それでもかなりの巨大さを感じる。
『夢なら消してもいいってのか。おまえには、振り上げた手と、差し出された手の区別もつかないのか』
ちょっとキョン、責めすぎ。やばいって。
『あいつだけじゃない。SOS団の連中も、泉の仲間たちも、おまえを馬鹿にして嫌ってるやつらとは違う、それも認めたくないのか。思い通りにならない人間は、ただの邪魔モンでしかないのか』
神人の破壊活動がぴたりと止まった。何かよくないことの前触れ、としか思えない。
『本気でそう思ってるんだとしたら…俺は、おまえを軽蔑するぜ』
332名無し@18歳未満の入場禁止:2008/10/05(日) 23:54:06 ID:rBT+xyl00
あたり一面の地面が、青白い輝きに包まれた。その輝きが集結してゆっくりと持ち上がっていく。いくつもの光の柱が発生してヒト型の姿になった。学校の敷地内だけでも、ぱっと見て十体以上の神人がいる。でもそれだけじゃない。
丘の上から見下ろせる街並み、そのいたるところで同じことが起きていた。そのもっと向こうに見える山々も、ふもとのほうからだんだんに星空みたいな青白い光点に包まれていく。
何百、何千、いやそんな単位じゃ足りないよ。いくら数学が苦手だってわかる、万を超える数の神人がこの巨大閉鎖空間に発生してる。
…こりゃ終わったかな。
『帰ろう。ハルヒ』
意外にも穏やかな口調で語る。
『俺達の世界にだよ。また無茶言って俺を引っ張りまわしくれ』
結局、最後はキョンに頼るしかなさそうだ。世界の運命は君の説得に懸かってる、頼むよ。
『おまえと一緒にいることを楽しめる変人は、けっこう多いってことだよ』
神人たちはだらんと腕を下げて突っ立っている。何をしたらいいかわからない、そんな感じで。
『悪かった…あ、いや。俺の代わりなんぞいるわけもないし、いたって困る。おまえが俺を選んだというんなら、とことんつきあってやるさ。そういうことでいい』
ふと、この世界を包んでいる空の色がだんだん変わっていることに気がついた。さっきまでの灰色一色じゃなくて、赤黒い何かがうごめいている。
『なあ、白雪姫って知ってるか』
もちろん知ってますが。いったいナニをなさるおつもりで?

しばらく間をおいて、次の瞬間。空一面にひび割れが走った。
そこから無数に何かがふりそそいでくる。赤く輝く何かが、猛烈な勢いで。熟練のシューターでもこの弾幕にはてこずるだろう。
ふわりと校庭に降り立ったそれらは、みんな神人の姿をしていた。世界を埋め尽くすほどに増殖していた神人たちと、ほぼ同じ数。
赤い神人たちはそれぞれ、手近にいた青い神人にしがみついた。抱きつかれたほうはなんの抵抗もしない。じゅうじゅうと沸騰しながら体が融合して、しだいに小さくなっていく。
ひび割れだらけになっていた空が、ぱらぱらと剥がれ落ち始めた。そのむこうがわは虹色の輝きで満たされている。
虹色の空は加速的に広がっていった。あたりがどんどん明るくなり、あっという間に直視していられないほどのまぶしさになる。真夏の陽射し以上だ。
あたりの光景は、ほとんどホワイトアウトしている。思わず目を閉じたけど、まぶたを通して光が突き刺さってくる。
赤、青、黄色…視界一杯にめまぐるしく切り替わる色彩に包まれて、あたしはついに気を失った。
333名無し@18歳未満の入場禁止:2008/10/05(日) 23:55:15 ID:rBT+xyl00
― 終幕 ―

「はうあっ」
っと叫んで起き上がる。
普通に朝だった。雀がちゅんちゅん鳴いてる。
ここどこだ、見覚えのない部屋だけど…ってそうか、長門のマンションか。制服のまんま寝ちゃってたよ、しわくちゃになってる。
隣の部屋とのドアがすっと開く。
「おはよう」
いつもの制服姿の長門に声をかけられた。あー、おはよ。
「あ、おはようございます」
長門のうしろには、笑顔の朝比奈さん(大)がいた。

昨日のシチューの残りが温めなおしてあったんで、みんなでつつく。
「泉さんには本当に感謝します。こんなにおいしいお料理、ごちそうしてもらっちゃって、ね」
いやいやお粗末さまで…って、感謝してるのはそっちのことですかい。
「なんにもたいしたことはできてないよ。あたしがいなくても、どうにかなったんじゃない?」
長門はいち早く食べ終わっていた。
「その認識は誤り。あの場にあなたがいなければ、我々がここにいられる可能性はゼロに等しかった。この惑星に大きな変容はあったが、適応可能な範囲内」
長門的には無意味じゃなかったのか、ならいいや。
「そういやさ、朝比奈さんも言ってた大きな変化ってやつ、なに。もう教えてくれるんでしょ」
朝比奈さんはちらっと長門を見た。説明はあなたがして、って感じかな。この二人、妙に打ち解けてない気がする。
「昨夜一晩で、ほぼ全人類が画一性端末群に感染した。この爆発的増殖のきっかけは、あなた」
はい? 全人類ときましたか。そんなスケールがでかい話をされても。
「その、カクイツなんとかってのは、宇宙から来たウィルスかなんかだっけ?」
長門はかぶりを振った。
「画一性端末群は、あなたが本来存在していた宇宙で独自に進化した情報生命体。いまから十日あまり前、あなたが引き起こした世界移動の際、同時に相当数の画一性感染者がこの世界に渡来し、端末群の繁殖が開始された」
あー、どっからツッコんだらいいんだ、いまの話。
「それと、機関の人たちが超能力をなくしちゃったのと、なんか関係あるの?」
「ある。ヒトの情報体に寄生した端末群は、それ単体ではきわめて無力。宿主に対してもなんら特異的能力は与えない。しかしそれが膨大な数となることで情報冷却能力を発揮し、一切の特異的な情報操作を阻害する」
ふと、前に動物番組で見た、ミツバチがダンゴになってスズメバチを蒸し殺す、ってシーンを思い出した。このイメージであってるかは不明だけど。
もうひとつ、長門の説明で気になる点がある。
「世界の移動を、あたしが起こしたってどういうこと。ハルヒの能力じゃなくて?」
「あなたから得た情報と、私自身の断片的な記憶を総合して、そう結論できる。あなたにはかつて、涼宮ハルヒと同等の環境情報操作能力があった。その力であなた自身、および周辺人物の世界移動を引きおこし、代償として力を失った。そう考えられる」
はあ。はあとしか答えらんないよ、そんなこと言われても。どんどん話がややこしくなってきた。ごめん、ながもん。もう聞いてるふりだけでごまかすかも。
「ほかに質問は」
334名無し@18歳未満の入場禁止:2008/10/05(日) 23:55:56 ID:rBT+xyl00
「え。じゃあ、あとさあ。さっきの夢のラストのほう、意味わかんなかったんだけど。なんか赤い神人が出てきて、青い神人と相打ちになっちゃって」
少し返答がなかった。さすがの長門も夢の中まではわかんないか。
「おそらくその赤い神人とは、端末群の発生させた情報融点上昇領域のシンボル。あなたという免疫抗原を失って爆発的繁殖を開始した端末群は、人類生存圏の制圧を完了すると同時に、あなたをこの世界に取り戻すためのアクションを開始した。
 涼宮ハルヒの精神的動揺の隙をついて、閉鎖空間に情報圧力をかけ、それを崩壊させた」
うん。わかったような、わかんないような。
「あたしを取り戻すために? その…端末群、あたしがいままで『くじら』って呼んでたやつらにとって、あたしは天敵なんじゃなかったっけ」
もう一度長門は首を横に振る。
「敵対関係にはない。情報生命体は、有機生命体のような死の概念を持たない。これは生物種にとって極めて不都合なこと。劣化した細胞を駆除する働きがなければ、人体が健康を保てないのと同じ。
 画一性端末群にとってあなたという存在は、癌細胞を攻撃する白血球と同等」

ここまでの長門の長回しを、朝比奈さんは黙って聞いていた。シチュー食べるのに夢中だったから、ってのもあるだろうけど。
食べ終わってスプーンを置いた朝比奈さんを、長門は見つめた。
「もう一度聞く。この一連の事態、あなたたちにとって規定事項だったとは考えにくい。
 昨夜、この惑星表面全土に波及した情報冷却現象、現状では完全に沈静化しているが、画一性端末群が再び生存ストレスを検知したなら、容易に再発する。そうなれば、あなたたちの時間移動にも障害が起きる」
朝比奈さんは少しおびえた表情になって目をそらし、軽く唇をかんでもう一度長門を見た。この微妙な距離感、何年たっても変わらないんだ。
「いいんです、それで。涼宮さんが今後、また無茶な方向に歴史を変えようとした時、端末群の存在はブレーキとして働きますから」
いまいち答えになってないような。それは長門も同感らしく、じっと話の続きを待っている。
「うう、禁則にかからない範囲で言うの難しいんですけど…これは新しい規定事項です。この時代の観測を始めたころの時間経路からは、予想もできなかった事態ですけど。
 今日という日をさかいに、人類が端末群と共存する歴史を進んだとしても、私たちの文明を保てるということがわかりましたから」
朝比奈さんは、たまに言葉に詰まりながらもそう答えた。今の話、ちょっとイメージと違うかな。
「その規定事項って、増えたり減ったりするもんなの? 歴史ってもう決まってるもんだと思ってたけど」
「詳しくは言えませんけど…同じゴールにたどりつけるなら、途中のルートは違ってもいいんです。泉さん達の存在は、レースの途中でチェックポイントが変わったみたいなもので」
まだいまいちピンとこない説明だけど、わかるように言うのは禁止っぽいから、そんなもんか。
「ならいい」
長門も納得したようだ。
「あなたたちが泉こなたの存在を否定するなら、私と敵対することになる。そうではないことを確認したかっただけ」
335名無し@18歳未満の入場禁止:2008/10/05(日) 23:57:41 ID:rBT+xyl00
朝比奈さんが帰ったあと、シャワーを借りたり髪を乾かしたりしてるうちに、すっかり時間になってしまった。
今日は長門となかよく登校。ガッコまで歩いていける距離って便利だね。
ショートカットのために通った公園で古泉に出くわした。偶然、なわけないよね。公園で女生徒を待ち伏せって、一歩間違ったら犯罪者では。
「昨夜はお疲れ様でした。お二人には感謝します」
昨日みたいなちょっと作った感のある表情ではなく、心底うれしそうな笑顔でそう語る。フツーの女子ならコロッと惚れちゃいそうだ。
「いい、私は自らの目的に従ったまで」
「そそ。ねぎらってくれるのはかまわないけど、感謝なんてね。言ったでしょ、貴重な体験できたって」
古泉の笑顔は変わらない。
「そう、ですか。おっしゃるとおりです。では今後も、ともに陰ながら世界を守りましょう」
おお。そういう言いかたすると、あたしたち正義のヒーローみたいじゃん。問題は、世界の危機の根源も身内だってことだけど。
これ以上特に話すこともなく、とはいえ特に別れる理由もなく、一緒に長い坂を登る。

「あ、おはよー。こなちゃん、いっちゃん、ユッキー」
こっちはこっちで、油断してたら惚れちゃいそうな笑顔でつかさが挨拶してきた。
「いっちゃん?」「ユッキー?」
かがみと長門が、ほぼ同時につぶやく。
「え、あ。えと、変かな。これからはそう呼びたいなって、思うんだけど…」
つかさはもじもじしている。自然とそういう態度になっちゃうあたりがズルいなー、って思うあたしは汚れてるのか。
「構わない」
「あなたに愛称で呼ばれて、悪く思う人なんていませんよ。おはようございます、つかささん、かがみさん」
つかさはますますもじもじした。追い討ちかけてやる。
「よかったね、ドサクサ紛れにキッカケできて」
はうっ、と小さく叫んで、つかさは下を向いてしまった。おーい、置いてくよ。
一方かがみは、『コイツうさんくせー』と言わんばかりの視線で古泉を見ていた。つかさへの母性本能?
彼に対してそういう評価になっちゃうあたり、ヨゴレ仲間だね。
「ときに、かがみんや」
あたしがニヤニヤしながら話しかけるとかがみは警戒した。これも阿吽の呼吸ってやつ。
「どこぞのお二人さんは、昨晩和解できたみたいでっせ。よかったねー、いや、よくなかったねー」
「う。あっそう…知るかっての」
かがみのツンデレ力(ぢから)が増大している。もうひとつ悪ふざけを思いついた。実行しようかどうか迷うとこだけど、いいや、やっちまえ。
「白雪姫って知ってる?」
「はあ? 普通の、童話の白雪姫? 知らないわけないでしょ。それがなに」
思ったとおりの反応。しからば。
「今度、機会があったらキョンキョンにそれ聞いてみて。きっとすっごい微妙な表情するから」
わけわからんという顔をしてるかがみ。長門がかすかにつぶやく。
「…推奨できない」
それが聞こえたのか、かがみは考え込み始めた。
「白雪姫。王子様の…ってバカな、でもあいつらあのあと仲直り…いや、いやありえない。でも…」
かがみの全身から、ずももも…と黒いオーラが吹き出ている気がする。ごめんよ、かがみん、これおもしろい。

教室に入る前に、ちらっと五組のようすをうかがってみた。キョンはまだ来てない。
昨日、あたしとハルヒが話し合ったあの席、ハルヒはポニーテールにしていた。
それはなに、もう許してあげるよっていう秘密のサイン?

― 完 ―
336名無し@18歳未満の入場禁止:2008/10/06(日) 00:04:50 ID:plXSxtjQ0
以上っス。ご愛読ありがとうございました。
ちなみに、製作期間は三週間。
書いてる時期は疲れるけど、書いてない時期は仕事中の妄想ネタが足りなくてさみしい。
337名無し@18歳未満の入場禁止:2008/10/06(日) 00:07:07 ID:FdQ83r8e0

最近1か月に一回ぐらいしか投下してないからなんか書こうかな
338名無し@18歳未満の入場禁止:2008/10/06(日) 00:10:18 ID:0IoNYFK40
乙〜!
そしてGJ!!!

面白かったwwwwwwwwww
339名無し@18歳未満の入場禁止:2008/10/06(日) 00:13:47 ID:VtvjZ6Ja0


長いから読み応えもあったからよかった
俺はこんな長い文かけないからなあ
御題祭その参が中々書けない……
340名無し@18歳未満の入場禁止:2008/10/06(日) 11:48:07 ID:0uZjZyitO
奮闘おもしれぇwww
こんな大作読めて良かった。
341名無し@18歳未満の入場禁止:2008/10/06(日) 20:15:51 ID:elSbQii80
乙&GJ

ちょっと気になった表現があったんで一言。

第四幕で、こなたが「画一性感染に対する免疫抗原」 や「対端末群免疫抗原」と書いてあるが、
抗原じゃなくて抗体じゃないのかな。自分の中途半端な知識から思うに。

抗原というのはいわゆる、病原体やバイ菌と呼ばれるもので、
抗体というのは白血球とか免疫力とか言われるもの。

という認識なんだが、合ってる?詳しい人がいたら教えてー
342名無し@18歳未満の入場禁止:2008/10/06(日) 20:46:31 ID:MYLMbORT0
概ねその通り。
抗原=抗う原因 抗体=抗う体
抗原ってのはいわゆるアレルゲンとかそういうやつで抗体はそれを撃退する役目の物
343名無し@18歳未満の入場禁止:2008/10/06(日) 21:56:48 ID:VtvjZ6Ja0
空気を読まずに超短編御題祭その参投下します
お題は「台風」
題名は『雨降り青春』で
344名無し@18歳未満の入場禁止:2008/10/06(日) 21:59:03 ID:VtvjZ6Ja0
 六月が水無月と呼ばれる理由をご存知だろうか
 旧暦での六月は梅雨が明け、夏真っ盛りの暑さのため、水も無くなるほどの暑さといった意味で『水無月』というらしい
 だが、現在の暦上の六月は旧暦とは真逆で梅雨真っ盛りである
「今日の夜から明日にかけて台風十二号は四国、本州を直撃すると思われており、既に九州地方では……」
 テレビの天気予報でもあるが、今は台風が接近しようかという状況だ
 もう小雨もぱらぱらと降っており、俺としてはこの梅雨のジメったい中を外出する気はないのだが
「今日は緊急で団活をするから、お昼過ぎに来るように」
 との団長さんが仰るので俺は仕方なくこの雨の中、出かける事になってしまった

「おっそーい。罰金!」
 団長の怒号が飛ぶ
 けど今回は俺に非はないはずだ。お前は俺に明確な時間を言っていないんだからな
「お昼過ぎって言ったら一時ぐらいって相場が決まってんのよ。とりあえず、罰金だからね」
 やれやれ、と辺りを見回すといつもより人数が少ない事に気づく
「高良と古泉と朝比奈さんがいないじゃないか」
「みゆきは電車が人身事故で動かないからよ」
 自転車で急いできたため傘をしておらず、濡れていた俺にそっと傘をかけながらかがみは言った
「それで、古泉くんはバイトの事で何かあるとか。朝比奈さんは……連絡が無かったらしいわ」
 朝比奈さんから連絡なし、か
 未来にでも帰っているのだろうか?
「みくるちゃん。私を無視するなんて良い度胸してるわね。いいわ、今度みくるちゃんにはスクール水着を着せてあげる」
「おお、みくるんのスク水かい!」
 こら、泉変なところに敏感になるな。それと、目が輝きすぎだ
「いやぁ〜。だってみくるんのスク水だヨ?興奮しない方がおかしいでしょ」
 お前は親父か。俺だって少しぐらいは興味が……いやなんでもない
「団長!写真はとって良いんでしょーか?」
 泉はびしっと手を天に高々と上げ、ハルヒに質問する
 いや、流石にそれは駄目だろう
「オッケーよ。その代わり、営利目的で使ったら駄目だから」
 おい、お前もそれを許可するな
「みくるちゃんが悪いのよ。メールすらも返してこないみくるちゃんが」
「そりゃ朝比奈さんも不在の時ぐらいあるだろう。それに、今回は急な事だったんだし仕方が無いだろ」
 するとハルヒはムッと膨れ上がりこちらを睨みつける
 俺もすこし目を合わせるが、すぐに耐え切れず目を背けてしまった
「とりあえず、店に入らない?小雨とはいえ雨は降ってるんだしさ」
 かがみが俺とハルヒをなだめるように言う
「……へっきし!」
 とつかさがかわいらしいくしゃみをし、このままではみんなが風邪を引くとハルヒも察したのか、俺を睨みつけるのをやめ喫茶店へと入り込んだ
345名無し@18歳未満の入場禁止:2008/10/06(日) 22:00:45 ID:VtvjZ6Ja0
「朝比奈さんが何故音信不通か、知ってるか?」
「……朝日奈みくるは今この世界に存在していない。恐らく、未来に帰っていると思われる」
 現状の報告にでも行ったのだろうか、今日は本来休みと聞いていたしそれも帰っていても仕方が無いだろう
「で、どうするの?六人だと、二人一組の方が良いんじゃない?」
「そうやってかがみんはすぐキョンキョンと二人きりに……」
「だーっ、そういう意味じゃないわよ!」
 泉の言葉がいまいちよく聞こえなかったが、かがみが怒ってるって事は相当な事を言ったのだろう
 人をからかうのも、ほどほどにしとけよ
「分かってるってー」
「そうね。とりあえず、かがみの言うとおり二人一組にしましょう」
 そう言ってハルヒは爪楊枝を六本取り出し、二つを先端を赤に塗り、二つを折り、残りの二つはそのままでくじを作った
 
 結果
 俺はかがみとペア、ハルヒは長門と、泉とつかさというペアになった
「私たちは北側、あんた達は南側でこなたたちは東側を調べなさい。それじゃ、いったん解散」
 ハルヒはそう言うと長門を引き連れて北の方向へとすうんで言った
「じゃーねーかがみん。頑張りなヨ?」
「雨降ってるから風邪引かないようにね〜」
 こなたとつかさもそう言って去って行った
 ところで、頑張るって何を頑張るんだかがみ
「……さ、さぁね。私たちも行きましょう?」
 待て、かがみ。俺を置いていくな


 とっさの事に入り込んださっきとは違う喫茶店
 俺は窓越しに外の景色を見ながら落胆の溜息を一息つく
 はぁ、だからこういう日の外出は嫌だったんだ
 そう思いながら先程注文をしたコーヒーを飲む
「こりゃ当分止みそうに無いわね」
 かがみも俺と同じように土砂降りとなっている外を眺めながら呟く
 ふと、俺の携帯が震え始める
 着信源を見るとハルヒかららしい
「何だ?」
「あんた達、濡れてない?」
「ああ、濡れてないよ。ギリギリで建物の中に逃げ込んだからな」
 それにしてもハルヒが人の心配をすることは珍しいな。と口にでも出したいが、出せばあいつは怒るに決まっている
「そう、それならよかったわ。もう雨はやみそうに無いから今日は各自解散だから。以上」
「お、おい待て」
 と反論したが時既に遅し、もう電話は通じなくなっていた
「ハルヒは何て?」
「ああ、今日はもう解散だそうだ」
「解散って……無責任ね。どうする?まだ雨宿りしていった方がいいかしら?」
 どうだろうな、これ以上酷くなるかもしれないし、弱くなるかもしれないしな
「とりあえずは、コーヒーを飲み終わってからにしましょう」
 それもそうだな、そう言いながら俺とかがみは一緒にコーヒーカップを口へと近づけた
346名無し@18歳未満の入場禁止:2008/10/06(日) 22:02:19 ID:VtvjZ6Ja0
 少しコーヒーを飲んでから周りの目に気がつく
 周りからみたら俺たちはカップルのように見えるのだろうか
「今思ったんだが」
「何よ?」
 コーヒーカップを持ちながら俺の方を見るかがみ
「俺たち、周りから見たらカップルのように見えるのかな」
「はぁ!?ちょ、何言ってんのよ」
 相当動揺しているようらしく、コーヒーを一気に口へと運んで行った
「そう思われるのが嫌なら、すぐにでも帰るか?」
 空になったコーヒーカップを置き俯きだした
 心なしか、顔が赤くなっているように見える
「べ、別に嫌じゃないけど……むしろそう思ってくれることは嬉しいと言うか……」
 もう一度言ってくれ。嫌じゃない、の後が聞き取れなかった
「言わないわよ」
 そう言ってかがみは顔を上げ顔をあさっての方向へと向けた

 ここに居座り始めてから早三十分ぐらいが経っただろうか
 まだ雨は止まず、寧ろ強くなりそうな気配がする
「つかさのやつ、もう帰ったみたい」
 携帯の画面を見ながらかがみは言った
「そうか。どうする?一向に止む気配もないし俺たちも帰るか?」
 かがみは暫く考えた後
「んーそうね。もうちょっと居たかったけど、これ以上居たら店にも迷惑ね」
 と答えたので店を出ることとした
 お勘定は俺が一人で払うといったのだが、かがみがしつこく断るので仕方が無く割り勘という形になった
 正直、今月は出費が続いていたので見栄を張っていた俺にとってはとても助かった
 けどまたいつか、お礼はしないとな

「さて、自転車を取りに行かないとな」
 そう、俺は自転車を集合場所の近くの自転車置き場に置いてきたままなのだ
 しかし俺は傘を持っていない。なんせ出かけ始めた頃は小雨だったからな
「すまん、コンビニによって良いか?傘を買いたいんだが」
 そう尋ねるとかがみは少し恥ずかしそうに答えた
「だったら、この傘に入れば良いじゃない。傘買うの勿体無いでしょ?」
「いや、それだとお前にも迷惑が……」
「いいのいいの。ほら、さっさと行くわよ」
 そう言ってかがみは俺の横へとくっつき世間一般で言う相合傘の状態で歩き始めた
347名無し@18歳未満の入場禁止:2008/10/06(日) 22:03:46 ID:VtvjZ6Ja0
 自転車置き場にたどり着く
 途中人々の目線が痛く感じられたが次第に慣れてきたので別に何も思うまい
 さて、これからどうしたものか
 俺は自転車、かがみは徒歩
 俺も一緒に歩いて帰るのが妥当なのだろうが、そんなのんびり歩いているといつ雨が強くなるかわからないからな
 と、俺はある考えを思いつく
「二人乗りするか」
「えっ?」
 俺の考えはこうだ
 俺はいつもどおりに自転車に乗る
 そのあと、かがみが後ろに乗り、二人乗りの状態になる
 かがみがかたほうで俺の肩を持ち、もう片方で傘を持つと言った完璧な作戦だ
「良いわね、それ」
 そう言ってかがみは二人乗りの準備を始める
 少し、雨が強くなってきたため俺とかがみは急いで帰ることとした

 かがみの家、神社へと着いた
 かがみを降ろし、俺も急いで帰ろうとするとかがみが俺に傘を差し出した
「はい。このままだとあんたも濡れるでしょ?」
 俺は良いよ。傘まで借りたら悪いしな
「いいのよ、また明日でも返してくれれば。それに送ってくれたお礼」
 そうか、それならありがたく借りるよ。ありがとうな
「こちらこそ。こんな雨の日に良い想い出が作れて嬉しかったわ」
 良い思い出?そんなに良いことでもあったか?
「……あんたと一緒にいろいろ出来たからね」
 かがみ、お前所々小声で話す癖をやめといた方が良いぞ
 相手が聞き取れないからな
「聞き取れないように言ってるの。まっ、その内わかるわよ」
「そうか、それなら良いんだがな」
 俺は自転車にまたがり白色の傘を広げ自転車を漕ぐ準備を始める
「また、明日ね」
「ああ」
 そういって俺は自転車を漕ぐ
 

「たまには、雨の日の外出も良いな」
 そんなことを呟きながら雨の中、白い傘を差し自転車を漕いでいく
348名無し@18歳未満の入場禁止:2008/10/06(日) 22:05:21 ID:VtvjZ6Ja0
終わりです
お題は後二つ「大地震」と「遭難、2人きり」か
こなた、つかさ、かがみときたら後一つはみゆきとして
残りの一つは何で書こうか
349名無し@18歳未満の入場禁止:2008/10/06(日) 23:22:51 ID:XlSshg9uO
>>348

うむ、命短しなんとやら



ゆーちゃんをお願いしたい
350名無し@18歳未満の入場禁止:2008/10/06(日) 23:37:30 ID:cEf7sMhk0
個人的にはひよりも捨てがたい
351名無し@18歳未満の入場禁止:2008/10/07(日) 01:28:08 ID:zPohE28kO
乙す
あやのもいいなぁ
352名無し@18歳未満の入場禁止:2008/10/07(日) 02:42:28 ID:StxyKeYx0
先に断っておくが俺はロリコンでは無い。
そして特に女好きという訳でも無い。
谷口に長門との関係を疑われたりしたがそれも誤解だとちゃんと弁明もした。
……いや、今の状況が今までの状況とは全く別種のものであるということは自分でも分かっている。
今までは不意の事故や他人による色眼鏡も入っていてそう見えたのかもしれないが今回ばかりは違う。
自分で行動を起こしてしまったからな!
ハハハ、と自分の心の中だけで高らかに笑ってみせるが現実は何も変わらない。
ああ分かってるさ。これが墓穴を掘ったというやつなんだろ?
長門、珍しく感情が顔に表れているじゃないか。
朝比奈さん、笑っていますが目が笑っていません。
古泉。何故あさっての方向を見つめている。
鶴屋さん、お願いですからいつもの笑顔に戻ってください。
ハルヒ。その手に持った広辞苑の角が眼に痛いぜ?


さて、少し時間を戻そう。
俺が昼休みに昼食のジュース代をせせこましく節約しようと部室に来て数分の時点だ。
ミルクティを昨日、朝比奈さんに淹れてもらったのを覚えていたのでミルクを探していたわけだ。
部室に入ってすぐ、火にかけたヤカンがピィ!と笛を鳴らすと同時に部室のドアが開いた。
そこにいたのは泉だった。
よく見てみれば泉の髪は濡れており、いつもと違った雰囲気を醸し出していた。
「おや、奇遇にも先客が」
「…ということはお前も茶を飲みにきたのか?」
「いえすおふこーす」
「あんまり盗んで飲んでるとバレるぞ?既に朝比奈さんは不審に思っている」
「というかキョンキョンは共犯者だよネ?」
なんて頭の回転が速い奴だ。一言で遠まわしに口止めしやがった…
「私ミルクティね」
「自分で淹れろ」
「ハルにゃんに密告しちゃおうカナー」
口止めどころか脅迫までしやがった!?
「大丈夫、大丈夫。従順なウチは何もしないから」
「俺は奴隷か」
「むしろ哀願道具?」
「愛玩の字が間違ってるぞ。何を俺は哀願するんだ」
「私との愛の記憶?」
「……」
コポコポと自分専用のマグカップと、客人用のマグカップに紅茶を注ぐ。
片方にミルクを入れて机の上に置く。
「無視はひどいよね」
「その髪どうしたんだ?」
「スルーッ!?」
大袈裟に驚いて見せる泉。
「まあいいや。さっき体育でスゴい風が吹いてさー石灰とか砂とかその他モロモロが髪にくっついちゃったんダヨ」
「そんだけ長いと大変だよな………で、何をしてるんだお前」
「え?」
心の底から心外だとでも言いたそうな顔で俺と顔を合わせる。
「そこは俺の膝の上だ」
「知ってるよ?」
「どけ。こんな所見られたら一体何をしてるのか誤解されるだろ」
「別にいいけど?」
「俺が困る!大体…」
「ハルにゃんに言っちゃおうカナー…キョンキョンが不法侵入と窃盗の常習犯だって」
「ぐ…」
そのままネコのように膝の上に陣取り、動こうとしない泉。
……少しイタズラしてどかそうとする権利ぐらいは俺にもある筈だ。いや、無いわけがない。
「ひゃあっ!?」
抱きかかえるように手を前に回し、泉の頭の上に自分の顎を乗っけた。傍目にはイチャついてるカップルに見えるかもしれないが泉へのイタズラなのd
「何事!?」
そのとき、ハルヒの慌てた声とともに部室のドアが開いたのさ。
353名無し@18歳未満の入場禁止:2008/10/07(日) 02:44:05 ID:StxyKeYx0
1レス短編を試みてみるの巻
見辛いのは勘弁してくだされぇ
分かり辛いのはいつものことだから見逃してくだせぇ
354名無し@18歳未満の入場禁止:2008/10/07(日) 13:06:33 ID:zPohE28kO
>>353

乙。この後キョンはどうなったのか・・・
355名無し@18歳未満の入場禁止:2008/10/07(日) 18:11:49 ID:63bHgecOO
軽くお題くだしあ
書きやすいのでリハビリテーション
356名無し@18歳未満の入場禁止:2008/10/07(日) 18:44:52 ID:DM+yYAcAO
>>353
乙。キョンの死亡確認。
>>355
「うなじ」
357名無し@18歳未満の入場禁止:2008/10/07(日) 19:20:43 ID:ddU4uNBr0
イメチェン
358名無し@18歳未満の入場禁止:2008/10/07(日) 22:38:48 ID:zPohE28kO
>>355
サイドテール
359名無し@18歳未満の入場禁止:2008/10/08(日) 22:46:14 ID:TBkWS7l+0
保守
360名無し@18歳未満の入場禁止:2008/10/09(日) 00:09:41 ID:ebKmd6Ov0
ほしゅもっふ
361名無し@18歳未満の入場禁止:2008/10/09(日) 02:04:34 ID:rm1dCuc50
>>355
執事(真似事でも可)
362名無し@18歳未満の入場禁止:2008/10/09(日) 07:57:18 ID:x6PTNoODO
体臭い
363名無し@18歳未満の入場禁止:2008/10/09(日) 08:00:50 ID:x6PTNoODO
間違えた

体育祭
364名無し@18歳未満の入場禁止:2008/10/09(日) 09:56:36 ID:rWveH5g1O
所用でなかなかここ見れなかったぜ
お題承けたまわりました。全部は無理でも何個か書きたいかもしれないかもしれない
まぁ割と遅筆+多忙とSSの書き手にあるまじきあれなんで期待しないで待っててネ(=ω=.)
365名無し@18歳未満の入場禁止:2008/10/09(日) 12:49:13 ID:Dew/pv56O
いつまでも待ってるから
366名無し@18歳未満の入場禁止:2008/10/09(日) 15:38:27 ID:+fbg3YeI0
のんびり待つさ
367名無し@18歳未満の入場禁止:2008/10/09(日) 21:51:29 ID:UKjgNpE00
待ちます
368名無し@18歳未満の入場禁止:2008/10/10(日) 20:46:58 ID:CM1PFW8r0
保守
369名無し@18歳未満の入場禁止:2008/10/10(日) 21:36:56 ID:X1dIGhuM0
10月7日がゆい姉さんの誕生日である事をすっかり忘れていた保守
370名無し@18歳未満の入場禁止:2008/10/10(日) 23:00:37 ID:B7p2KSpy0
とらドラ最新刊読んだら書きたくなってきたぞ…

ロドロした人間関係って素敵ですね
371名無し@18歳未満の入場禁止:2008/10/11(日) 03:57:07 ID:Fn03Mbls0
ほす
372名無し@18歳未満の入場禁止:2008/10/11(日) 12:19:36 ID:LaIfzHsFO
>>370
お ま え は お れ か w w w
373名無し@18歳未満の入場禁止:2008/10/11(日) 16:44:58 ID:r3h1UVtD0
>>372

オレはようやく登り始めたばかりだからな

このはてしなく遠いヤンデレ坂をよ・・・
374名無し@18歳未満の入場禁止:2008/10/11(日) 17:01:47 ID:An7Fo3lg0
ドロドロしたのも嫌いではないがどちらかと言うと甘ったるいほうが好きだ
375名無し@18歳未満の入場禁止:2008/10/11(日) 20:20:59 ID:3ud7K3sv0
殺ったり殺られたりち●こ切ったりじゃなけりゃヤンデレもアリかなと思うようになった
376名無し@18歳未満の入場禁止:2008/10/11(日) 20:41:14 ID:3ud7K3sv0
いっけね、ヤンデレ云々言う前にやることがあった

『雨降り青春』の誤字
>>345
>「……朝日奈みくるは
→朝比奈
>北の方向へとすうんで言った
→進んでいった

をそれぞれまとめのときに修正させて貰いますぜ
377名無し@18歳未満の入場禁止:2008/10/11(日) 23:12:06 ID:ohuZiOlM0
>>376
すまん。よく見直ししてなかった
まとめサンクス
378名無し@18歳未満の入場禁止:2008/10/12(日) 10:51:25 ID:Nle5yiNL0
とりあえず超短編御題祭その肆「大地震」を投下します
題は『神の気苦労』
379名無し@18歳未満の入場禁止:2008/10/12(日) 10:51:59 ID:Nle5yiNL0
 神様の管轄する範囲と考えたことはありますか?
 神様が人を作ったとか、全ての自然現象は神様の思し召しだとかいう人もいます
 つまり、全ての理は神により成り立っていると考える場合もあります
 ですが、人が神様となった場合、その人が管轄する範囲はどうなるのでしょうか

 分かりにくくてすいません。別の例を出したいと思います
 数ヶ月前、東北地方で大地震が起きました
 考え方によったらこれは神様の思し召しと考える人もいます
 けど、それは神様がこの地球を見守る立場として起こしたときの場合です
 でしたら見守る立場ではなく、人間と一緒に行動を起こす立場だったらその地震は望まれて起きたものなのでしょうか

 以前、私たちSOS団新入りの四人に、涼宮さんを除く四人はある話をしました
 涼宮さんが神様であり、古泉さんは超能力者、長門さんは宇宙人、朝比奈さんは未来人であること
 最初は私たち四人も驚きと疑いがありましたが、後にそれは事実であると証明もされました
 そして、私は上のような考えになったのです

 放課後、私は古泉さんと向かい合い、チェスをしている最中にこんな話題を持ちかけてみました
「涼宮さんが神様として持ちうる権限は何処までのものなのでしょうか?」
 その問いに対して、古泉さんはニッコリと微笑み答えました
「どうでしょうか。ほぼ全ての事において決定権は持ってると思いますが」
 古泉さんは駒を置き、話を続けます
「全て涼宮さんの思い通りになるのなら、こんな世の中にはなってないと思いますよ」
 それはどういうことでしょうか?
「全て涼宮さんの望んだ事だとすると、今行われている戦争も、金融危機も、涼宮さんの望んだ事となってしまいます」
「それは……こう言ったら失礼かもしれませんが、涼宮さんが興味が無いからではないでしょうか?」
 そう言うと、古泉くんは暫く考え込み返事をします
「では例を変えましょう。涼宮さんは秀才です、あなたにも負けないほどに。ですが、テストで常に満点を取れるかといったらそうではありません」
 確かに、涼宮さんが常に満点を取りたいと思うのなら満点を取るはずです
 となると、涼宮さんは満点を取る事を望んでいないのですか?
「それは違います。点を取りたくないと思う人はいませんから。つまり、取りたいけど取るのは難しい。そう考えてるわけので思い通りにならないのです」
 だとすると、世界情勢のことも、良いほうに向って欲しいと思っているのですが無理だろうと考えてるというわけですか?
「そういうことになりますね。力を持っているのに、その力に気づいていないとそういうことになるものですよ」
 私は、駒を一つ置きチェックメイトを告げる
 古泉くんは参りました、と一言言って駒を直していく
380名無し@18歳未満の入場禁止:2008/10/12(日) 10:54:00 ID:Nle5yiNL0
「でしたら、涼宮さんに神様である事を告げたらどうなるのですか?」
 先程との会話で新たにできた疑問を述べる
「そうすると、あなた方も苦労をなさらずにすむのではないでしょうか?」
 質問に再び質問を重ねる
「そうかもしれません。けどそれを伝えると涼宮さんにはとてつもない重圧がかかってしまいますよ?」
 と言いますと、どういう意味でしょうか?
「言うなれば、ある女子高生が痴漢をされたとしましょう。ですがその捕まった人はやってないと公言しています。この場合、どうなりますか?」
「有罪になるよネ」
 私の隣で携帯ゲームをしていた泉さんがいきなり返事をしました
「その通りです。ですが、その人はペットボトルを持っていて、それが当たっただけかも知れない。という状況だったらどうしますか?」
 悩みどころですね。
「そう、どう判断を下したらいいのか分からない。その裁判官と同じような状況に涼宮さんはなってしまいます。しかも、世界規模での」
 確かにそうなります。それだと、涼宮さんも苦労が耐えかねますね
「はい。その苦労が重なって病気にでもなって亡くなられたりすると、この世界は神を失うのと同じです。ですので、この事を伝えずに涼宮さんには伸び伸びと暮らしてもらうわけです」
 それだと、古泉さんたちが苦労するのではないでしょうか
「そんなの、涼宮さんが自覚した後の苦労に比べると大した事ありませんよ」
 彼の笑顔が、彼が紳士であることを教えてくれる

「あなた方は物事が全て上手くいく世の中を楽しいと思いますか?」
 どういう意味ですか?
「涼宮さんに神であることを伝える、もしくはそれを自覚すると全て涼宮さんの思い通りになるわけです。そうなったら、人生は楽しいといえるのでしょうか?」
「そりゃ楽しいんじゃない?」
 泉さんがさも同然のように答える。ですが、私はそれとは違った回答をする
「私はそうは思いませんが……」
「そうです。物事は全て上手くいくわけではないから楽しい、苦労があるからこそ成功したときの幸せが大きいんです」
「それもそうだネ。苦労して苦労して、ようやくレバ剣を手に入れたときの嬉さったらもう……」
 泉さんはそう言って感傷に浸っているようです
 確かに、仮定あっての結果ですし、そういった苦労も全て幸せの部分に入るわけですね
「簡単に成し遂げれることもあればそう上手くいかない場合もある。そのとき、人は苛立ったり、悲しんだりする。感情とは人特有の物ですよ」
 古泉さんはそう言って再びニッコリと笑う
「ですので、その苛立ちが主に涼宮さんの場合、閉鎖空間に神人を作るといった形で発散されるのですよ。これも、神が人であるが故の感情です」
 そういい終えると、廊下の方からタタタと足音が聞こえてくる
 一つではなく複数の
「では、この話はこれまでで」
 古泉さんはそう言ってチェスを再び私と一緒に始めた

「ゴメーン。遅くなっちゃった」
 ドアが大きく開けられる音と共に、涼宮さんたちが部室へと入ってきます
「やれやれ、そんなに強く開けるとドアが壊れちまうぞ」
「そん時は直すの頼んだわよ」
「はぁ?何で俺が」
「決まってるじゃない。あんたがSOS団団員一号だからよ」
「無茶苦茶だ……」
 涼宮さんの顔からは笑顔が汲み取れます
 キョンさんも嫌そうな顔をしながらも毎日足を運ぶあたり、楽しんでいるのではないでしょうか
 それにしても、お二人は本当にお似合いですね
 世界情勢だとか、そう言うのは置いといて今はこの時この瞬間を楽しんだ方がいいのかも知れませんね
381名無し@18歳未満の入場禁止:2008/10/12(日) 10:55:04 ID:Nle5yiNL0
何かもういろいろとグダグダですいません
お題も全然こなせてないし、誤字脱字多いかもしれません
ようやく御題は後一つとなったんで、頑張ります
382名無し@18歳未満の入場禁止:2008/10/12(日) 17:17:30 ID:bdmCNA4n0
乙ー
みゆきさんのことすっかり忘れ(ry


誤字といえばこのぐらい
>>380
>確かに、仮定あっての結果ですし
→過程あって
383名無し@18歳未満の入場禁止:2008/10/13(日) 16:21:45 ID:WtIr/FhL0

ぷんたにのらないかなw
384名無し@18歳未満の入場禁止:2008/10/13(日) 20:35:51 ID:qJTt6Xm70
ああいうところは基本的にパートスレは扱わないだろう
385名無し@18歳未満の入場禁止:2008/10/14(日) 18:27:36 ID:UM/Bk8Jm0
『書く』って言葉はよォ〜〜〜便利だよなァ〜?
べつにいつまでに書くとは言ってないしなァ〜〜〜


『書きあげた』という言葉を使いたいが、いつまでたっても使えないのはどういうことだ畜生ッ!
386名無し@18歳未満の入場禁止:2008/10/14(日) 19:02:46 ID:ORdaxYKo0
理由は自分が一番わかってるんじゃないかな(=ω=.)
387名無し@18歳未満の入場禁止:2008/10/15(日) 03:27:12 ID:/DX9pN7k0
きっとPCに触れていることが原因でしょう


…あれ?書けなくなってる
388名無し@18歳未満の入場禁止:2008/10/16(日) 06:54:50 ID:on6qurF+0
「あのさ、キョンキョン」
「なんだ?」
放課後の教室。
ちょっとした偶然が重なり、二人きりで、電灯の消えた教室で一つの机を挟んで向かい合っている。
もう秋だということもあり教室の中は早くも夕暮れの日の色に染まっていた。
目の錯覚か、それとも場の雰囲気がそうさせたのか。
泉のいつものような、快活で茶化したような様子は全く見れなかった。
「私はさ、貧乳はステータスとか言ってるよね」
「ああ。それがどうかしたか?」
「でもさ…やっぱコンプレックスなんだよ」
やはり俺は目がおかしくなったのか。
あの泉が、あの泉がこんなしおらしく悩むものか。
「キョンキョンはやっぱり、貧乳な娘って嫌いかな?」
言ってる事は普段と変わらないが、その眼は真剣そのものだ。
とてもふざけられるような雰囲気でも無い。
俺は泉の眼を見つめ返し、正直に答えた。

「いいか、泉。よく聴け。
俺は乳で人を差別しようとなんて一度も思った事はない。
そりゃあ、朝比奈さんの巨乳に目を奪われることはあるさ。しかし、それは男としての正しい性だ。
男というのは常に母性というものを追い求める悲しい動物なんだ。フロイト先生の言うところのエディプスコンプレックスってやつさ。
その母性の象徴とも言えるのが乳。そう、お前の言う乳房の話だな?確かに貧乳=母性の欠如。そうかもしれない。
しかし。そう、しかし、だ!乳の大きさだけで人を区別してしまってもいいものか?
否。断じて否。確かに世の中には貧乳と巨乳の壁はある。しかしその大抵は個人の主観に因るものだ。
しかして、その区別…いや、差別は個人の主張とも呼べるだろう。
ならばその主張もまた個人によって違うだろう。
俺の主張を言わせてもらうなら『乳に貴賤無し』ということだ。
だが、ここで勘違いしてもらっちゃ困るのが俺は乳ならすべて好きだということを主張しているのだは無い、ということだ。
乳は全ての男の好物。そう、間違っちゃいない。
その一方で俺は違うことも挙げさせてもらう。これは重要なことだ。
俺は乳を愛してる。しかしそれはただ乳を愛するという事では無い。
俺は昔、いうなれば幼児の頃に乳に受けた恩を忘れてないってことさ。
乳への恩返し。それは乳の差別化を無くすことか?いや、違う。
乳という存在を全身全霊で愛するってことさ。
それと貧乳という言葉だがこれについてちょっと考えていることもある。
俺は貧乳と言うよりも無乳と言う方をお勧めしたい。これにはちゃんと論拠もある。
まず貧乳だが、これは貧しい乳という読み方で一部の人を除いて興奮を喚起はしないだろう。
そこで俺が提案するのが"無乳"だ。乳が無い、と書いて無乳と読む。
貧乳よりも酷い読み方に見えるだろう?しかし、少し待ってほしい。
それはあくまで漢字として読んだ場合だ。
ここで重要なのは平仮名で読むということだ。いいか?一度発音するぞ?

むにゅう。

どうだ?いかにも柔らかさを内包した乳どころかすべらかな肌と綺麗な乳頭までもがイメージとしてぐんぐん湧きあがってくるではないか。
貧乳、と書くのはいかにも悪意が満ち満ちている。
そこで俺は提案する。乳の貧しい女性を『貧乳』ではなく『むにゅう』とすることを。
むにゅう。いかにも日本の言語が優れているかを証明するような美しい発音でありそれでいて乳の高貴さを全く損なわない。
このむにゅ」

と熱く論じていると泉はさっきまでの真剣な目つきはどこへやら、一転して羅刹へと変化していた。
忘れがちなことではあるが、泉はハルヒに引けを取らないほどの運動神経の持ち主である。
その泉が本気を出したら如何なるものであるだろうか。






キョン● (凶器攻撃によるTKO) ○泉 こなた
389名無し@18歳未満の入場禁止:2008/10/16(日) 06:56:38 ID:on6qurF+0
『書きあげた』
なら使ってもいいッ!


1レス短編2nd
キョンの主張と私個人の主張は全く関係ありませんので悪しからず
390名無し@18歳未満の入場禁止:2008/10/16(日) 13:09:13 ID:2DnCaefFO


どうみても変態です。本当に(ry
391名無し@18歳未満の入場禁止:2008/10/16(日) 13:28:28 ID:xDfcLHv0O


ひらがなに変換した辺りで噴き出した
392名無し@18歳未満の入場禁止:2008/10/17(日) 23:11:44 ID:GM1j0VU80
人いないなぁ
393名無し@18歳未満の入場禁止:2008/10/18(日) 02:00:03 ID:x0tem9+W0
>>382
誤字訂正ありがとうございました
テスト期間ということもあって最後の「遭難、二人きり」が中々かけないorz

>>388
乙です
キョンの変態っぷりが笑えましたw
394名無し@18歳未満の入場禁止:2008/10/19(日) 00:01:01 ID:x0tem9+W0
ほしゅもっふ
今回の過疎深刻じゃね?
395名無し@18歳未満の入場禁止:2008/10/19(日) 00:16:23 ID:Bl9tRt8IO
ほっしゅほしゅ
396名無し@18歳未満の入場禁止:2008/10/19(日) 00:38:58 ID:xYhB3d95I
最近発見してwktkで読み進めてたんだが、職人さんいなくなっちゃったのかな?
397名無し@18歳未満の入場禁止:2008/10/19(日) 05:10:58 ID:3e33gN2F0
職人と呼べるかどうか不明だが俺はいる
398名無し@18歳未満の入場禁止:2008/10/19(日) 07:38:06 ID:/k1I+o1P0
俺も職人と呼べるかは知らんがいる



誰かお題ください
みなみ書いてたけど思いの外書きづらいんで
一時別のを考えたい
399名無し@18歳未満の入場禁止:2008/10/19(日) 09:26:40 ID:gJl12J4V0
>>398
俺も一年のSSは書きづらいと思う
お題は「怪我」なんかどうでしょう
400名無し@18歳未満の入場禁止:2008/10/19(日) 09:55:27 ID:/k1I+o1P0
>>399
把握した

キャラは固まってるはずなのに書きづらいって何なんだろう
401名無し@18歳未満の入場禁止:2008/10/19(日) 12:45:57 ID:3e33gN2F0
怪我が怪物に見えた俺は末期
402名無し@18歳未満の入場禁止:2008/10/19(日) 15:15:53 ID:3IJwVUit0
>>398
ペット談議とか?
403名無し@18歳未満の入場禁止:2008/10/19(日) 18:56:28 ID:/k1I+o1P0
>>402
疑問符付いてるけどお題、だよな?
考えてみる


このお題以前見たような気がするんだけど気のせいかな・・・
404名無し@18歳未満の入場禁止:2008/10/19(日) 20:50:15 ID:f6jYZBBI0
じゃあ「偶然の一致」で
405名無し@18歳未満の入場禁止:2008/10/19(日) 22:08:25 ID:/k1I+o1P0
更にお題?
嬉しいしありがたいけど俺遅筆だから期待はしないでね
406名無し@18歳未満の入場禁止:2008/10/20(日) 00:18:53 ID:icYrDz570
>>403
少なくとも俺は書いてないから別の人だろう
407名無し@18歳未満の入場禁止:2008/10/20(日) 13:08:09 ID:7tcZPO38O
まとめに未だ毎日500来てるのが驚きだ
408名無し@18歳未満の入場禁止:2008/10/20(日) 17:30:18 ID:/aWDujvp0
>>407
ほんとだw
実際にそうなのかな?
409名無し@18歳未満の入場禁止:2008/10/20(日) 18:30:14 ID:6kmPAoMxO
芋っふ
410名無し@18歳未満の入場禁止:2008/10/22(日) 18:34:00 ID:S6PDeD+qO
ふんもっふ
411名無し@18歳未満の入場禁止:2008/10/23(日) 09:56:57 ID:eYQdhiG30
ほっしゅほっしゅ
412名無し@18歳未満の入場禁止:2008/10/23(日) 17:25:40 ID:rnbDJcTf0
ふゆきorななこ、ヒロインはDOTCH?
413名無し@18歳未満の入場禁止:2008/10/23(日) 20:44:58 ID:uQ5xiFyq0
       _   lll   _
      (_ \__/_ )
        \    / 
        /   \  ┌────────────
       ◯( 、A , )◯ < 僕は、天原ふゆきちゃん!
         ∨ ̄∨   └────────────
414名無し@18歳未満の入場禁止:2008/10/23(日) 22:15:52 ID:dWLGCgEb0
俺もふゆきってことで
415名無し@18歳未満の入場禁止:2008/10/23(日) 22:16:40 ID:rnbDJcTf0
じゃあ俺もふゆきで!
416名無し@18歳未満の入場禁止:2008/10/23(日) 22:30:49 ID:84TP+o79O
>>415
おまwww
417名無し@18歳未満の入場禁止:2008/10/25(日) 21:02:53 ID:RZMgf9ml0
大分過疎ってきたな
418名無し@18歳未満の入場禁止:2008/10/25(日) 22:22:48 ID:DZ1WgxFVO
前からではあったが最近は更に顕著になったな
419名無し@18歳未満の入場禁止:2008/10/25(日) 23:59:30 ID:AvlvjJXM0
投下があればまた来てくれると信じてる
420名無し@18歳未満の入場禁止:2008/10/26(日) 00:58:04 ID:x6WczUIRO
何度でも蘇るさ
421名無し@18歳未満の入場禁止:2008/10/26(日) 08:33:37 ID:3FTirUG40
今日は少し頑張るか
422名無し@18歳未満の入場禁止:2008/10/26(日) 10:10:17 ID:3FTirUG40
そういやハロウィンネタも今が旬だなぁ
423名無し@18歳未満の入場禁止:2008/10/26(日) 10:45:12 ID:Vxx+Mqbc0
ハルヒ「さぁキョン、お菓子をよこしなさい!」
つかさ「とりっく・おあ・とりーとー。これでよかったんだっけ?」
長門「……お菓子」
ゆたか「と、トリック・オア・トリート! です!」
古泉「フフフ、さぁ盛大にいたずらしあおうじゃありませんか!」
こなた「オオォォル・ハイル・ブリタァニアァ!!!」

かがみ「……あんたら、何やってんのよ。しかも変なの混ざってるし」
キョン「はぁ……、やれやれだ」

こうですかわかりません><
424名無し@18歳未満の入場禁止:2008/10/26(日) 21:00:40 ID:3FTirUG40
こなた「キョンキョーン!トリックorトリート!」
キョン「トリック…?ああそういやハロウィンか」
こなた「トリックorトリート?」
キョン「悪いが今は菓子を持ってないぞ」
こなた「じゃあイタズラでいいんだネ?」
キョン「そんなに欲しければ部室d


キョン「ちょっと待て…落ち着け……いつからハロウィンは唇を奪われる行事になったんだ…?」
長門「トリック・オア・トリート」
キョン「!?」
長門「トリック・オア・トリート?」
キョン「長門か…なんだ?ハロウィンが流行ってるのか?あいにくお菓子は持ってn


キョン「なんだ!?なんなんだ!?いくらなんでもおかしいぞ!」
鶴屋「やっほーキョン君!Trick or Treat っさ!」
キョン「つ、鶴屋さん!?…まさか鶴屋さんまでそんなことはしませんよね?」
鶴屋「何がさ?それよりお菓子をくれないとイタズラするにょろよ〜〜」
キョン「(ほっ…鶴屋さんは大丈夫そうだ)でもお菓子は今あr


キョン「嬉しいのか悲しいのかわからなくなってきたぞ…この原因はハルヒか?」
キョン「ハッ!?向こうから来るのはゆたかちゃん達三人組!」
キョン「逆転の発想だ!こっちから聞けば被害はこれ以上は広がらない!」
キョン「トリックオアトリート!?ゆたかちゃん!」
ゆたか「え?え?/////」
ひより「きゃーっ!先輩大胆ッス!」
キョン「え?」
みなみ「ゆたか、これはチャンス」
キョン「何がだ!?」
ゆたか「あ、あの!イタズラでお願いします!」
キョン「何を期待されてる!?」


キョン「ある意味一番ダメージが大きかった……」
キョン「おや、あそこにいるのは古泉……」
キョン「嫌な予感しかしないから遠回りだ」
キョン「完璧な死亡フラグの回避。伊達に世界を何度か救っちゃいないぜ」
谷口「おーっすキョン!」
キョン「!?」
国木田「そんなにこそこそして何してるのさ?」
キョン「バ、バカ!」
古泉「何が、どうしたんですか?」
キョン「ぎゃあああああああ!!!!!!」

谷口「ああ、そういや」
国木田「今日はハロウィンだったね」
古泉「それじゃああの言葉を言わないといけませんね」
「「「トリック オア トリート?」」」

425名無し@18歳未満の入場禁止:2008/10/26(日) 21:25:13 ID:Vxx+Mqbc0
こりゃ参った。参りました
キョン……無茶しやがって
426名無し@18歳未満の入場禁止:2008/10/26(日) 22:06:53 ID:Vw8tR2BD0
ハルヒ以外の女性陣+一部男性陣と次々にキスする羽目になるキョン。
そして真打ハルヒとは(ry
427名無し@18歳未満の入場禁止:2008/10/26(日) 23:32:19 ID:3FTirUG40
いつも通りに放課後を部室で過ごした。
ところが、だ。間抜けな事にカバンを教室に忘れたまま放課後を満喫していたらしい。
なので当然、忘れものを取りに行ったわけだが。

「あっ…」

見知らぬ女生徒が俺の席を占領していたわけだが。
見覚えが無いのは上述の通り。
おそらく見覚えがないのは学年が違うからで、俺の席を占領している理由は……なんだろう?
クラスを間違えたってのが一番適切そうだな。
「あの、クラスを間違えてませんか?そこは俺の席なんですが」
と自分の席を指しながら聞いてみる。
その見知らぬ女生徒は何も言わずに、立ち上がると頭を下げた。
428名無し@18歳未満の入場禁止:2008/10/26(日) 23:33:13 ID:3FTirUG40
ミスって書きこんじまったああああああああああああ
Shift+Enterで書きこむ機能の馬鹿野郎…
429名無し@18歳未満の入場禁止:2008/10/26(日) 23:44:19 ID:3FTirUG40
  <⌒/ヽ-、___
/<_/____/
430名無し@18歳未満の入場禁止:2008/10/26(日) 23:45:16 ID:FWXu6Jil0
あんこーる!あんこーる!
431名無し@18歳未満の入場禁止:2008/10/27(日) 01:17:48 ID:O4rIFJO+0
全力で続きを書き上げろ!
432名無し@18歳未満の入場禁止:2008/10/27(日) 08:34:06 ID:r8Tm/VfbO
つづきまき
433名無し@18歳未満の入場禁止:2008/10/27(日) 16:07:13 ID:+g307ux80
都築真紀
434名無し@18歳未満の入場禁止:2008/10/28(日) 15:35:09 ID:cnkaaFXWO
なんか最近過疎っていうより名前のある職人がいないって方が適切じゃないかと思う
435名無し@18歳未満の入場禁止:2008/10/28(日) 17:12:02 ID:voVrjBbk0
最近酉隠しっぱなしでごめんなさい
436名無し@18歳未満の入場禁止:2008/10/28(日) 19:39:28 ID:VatjFiek0
俺も一応書いてる立場だけど、酉ってあった方がいいのか?
まぁ大体文体で察される場合が多いが付けておいた方がいい?
437名無し@18歳未満の入場禁止:2008/10/28(日) 19:52:02 ID:blgZFsbt0
馴れ合いたかったり、ちやほやされたかったら付ければいいじゃない

ただ投下する分なら必要ないでしょ
438名無し@18歳未満の入場禁止:2008/10/28(日) 20:52:52 ID:ZkMZuOUH0
まあ付ける付けないは職人の自由だから
439名無し@18歳未満の入場禁止:2008/10/28(日) 21:20:55 ID:YvAx7gBV0
俺はわかりやすくていいと思うけどな
励みにもなるし
440名無し@18歳未満の入場禁止:2008/10/28(日) 22:30:23 ID:YvAx7gBV0
避難所の外人らしき書き込みが気になる

まあそれはさておき誰もいないのをいいことに投下しようかね
441名無し@18歳未満の入場禁止:2008/10/28(日) 22:31:05 ID:YvAx7gBV0
偶然というのは恐ろしいものである。
俺がこの北高でハルヒと出会ったのも偶然だし、髪型の秘密に気付いてつい話しかけてしまったのもまた然りだろう。
そしてその結果俺が、古泉いわく涼宮ハルヒにとっての鍵とやらにされちまったのも間違いなく偶然だ。
つまり何が言いたいのかと言うと、体育の授業中、ソフトボールをやっていたハルヒがかっ飛ばした球が、
いつも通りにサッカーのディフェンスをやっていた俺の頭に直撃したのもまた、偶然であってほしいということだ。
――谷口の肩を借り保健室へと足を向ける道すがら、俺はそんなことを考えていた。



442名無し@18歳未満の入場禁止:2008/10/28(日) 22:32:37 ID:YvAx7gBV0
「涼宮の奴、相変わらずとんでもねぇな。どうやったらグランドの端っこから端っこまで飛んでくるんだ?」

「まったくだ」

俺は未だ痛む頭を手で押さえつつ、相槌を打つ。
今日の体育は男子と女子でそれぞれ半分に校庭を分けて使っており、女子はソフトボールを、男子はサッカーを行っていた。
ハルヒのいたバッターボックスは校庭の4隅の内一角に当たる場所にあり、俺がいた場所はちょうどその反対側の角だった。
つまり俺は、ハルヒから最も離れた場所にいたはずである。
だというのにも関わらず、ハルヒの打球はピッチャーを飛び越え、センターの頭上で頂点に達し、
そのまま弧を描き俺の頭にクリーンヒットしたのだ。
あいつの馬鹿力は知っているつもりだったが、今回のことで文字通り身をもって知らされたわけだ。

「キョンも災難だったよなぁ。でもま、大したことはなさそうでよかったじゃねえか。
 いやー、それにしても見事な当たりっぷりだったな。できればもういっぺん見たいぐらいだぜ」

先ほどから谷口は労わってるんだかそうでないんだかよく分からないことを何度も繰り返している。
いや、後者なんだろうな。顔が笑っていやがる。
どうせならこのアホにでも当たればよかったのにとも思わないでもないが、
肩を借りている手前そんなことを言うわけにもいかない。
ちなみにハルヒの奴は俺にクリーンヒットさせた後、
「なんだキョンじゃない、心配して損したわ。それにしても綺麗に当たったもんねぇ」
などとほざいていやがった。せめて「ごめんなさい」くらいは言えんのか。

「そういえば谷口、お前がそんなに友達思いの奴だとは知らなかったぞ。わざわざ保険室まで連れ添ってくれるなんてな」

「俺の情報によると保険室の先生はかなりの美人って話だ。こりゃあ拝んどかなきゃ損ってもんだろ?」

そういうことか……。まったく本当にいつまでたっても成長せんなこいつは。

「ん? 身長なら高校に入ってから2cmほど伸びてるぜ?」

「そっちじゃねえよ」


443名無し@18歳未満の入場禁止:2008/10/28(日) 22:33:59 ID:YvAx7gBV0
谷口とくだらない会話をしつつ歩いていると、そのうちに保険室へと到着した。
思いの外早く着いたな。こんなアホでも暇つぶしくらいにはなるもんだ。

「おいおいキョンよぉ、せっかくついてきてやってんのにその言い方はねえんじゃねえか?」

さも心外だとでも言いたげな谷口。

「やかましい」

校医目当てに来た野郎が何言ってやがる。

「ちっバレたか……」

「さっき自分で言ってただろうが」

そんな谷口は放っておいて保険室の扉を開ける。
中は白を基調としたベッドやカーテン、棚などが目に入り、同時に消毒液特有の匂いがした。
そういえば保険室に来るのは初めてか、いや、身体測定とかで来たっけな?
思えばハルヒに振り回されたせいで精神的には色々やばげなこともあったが、肉体的には健康優良だったからな。
ここの世話になった記憶がないのも仕方ないだろう。
444名無し@18歳未満の入場禁止:2008/10/28(日) 22:35:20 ID:YvAx7gBV0
「それじゃ谷口、わざわざここまでご苦労だったな。ありがとよ、もう戻っていいぞ」

「ええ!?」

「お前の役目は俺をここまで送ることだったはずだろう? ならもう問題ない」

「馬鹿いってんじゃねえ。俺は保険室に用があるんだ。正確にはそこの先生にだがな」

だからこそ帰れと言っているのだが……。
しかしそんなことを思っている俺にかまうことなく、谷口は保険室の中へと歩を進めた。

「失礼しまーす。……あれ? だれもいねえじゃねえか」

「何だと?」

部屋の中を見回してみるが谷口に言うとおり、どうやら校医は今不在らしい。
奥の方のベッド用カーテンが閉じられているので誰かが寝てるのかもしれないが、流石に先生が寝てるわけもないだろう。
谷口はもう一度保険室内を見てつまらなそうに、

「ちっ。んじゃあなキョン、また後でな」

「戻るのか?」

「ああ、目当ての相手がいないんじゃな。それにこんな辛気臭え所になんざ居てもしょうがねえ」

「そうかい」

こいつに女以外で考えることはあるのだろうか。いや、ないんだろうな。
アホだし。

「ああ、それじゃあな」


445名無し@18歳未満の入場禁止:2008/10/28(日) 22:36:34 ID:YvAx7gBV0
「さてと」

どうするかな……。
ただ突っ立ってるのもなんだし濡れ手拭いでも用意したいところだ。
実のところ痛みは既にほとんど消え去っており、何もしなくてもよさそうなのだが、
一応誰か来たときのために言い訳代りに治療している振りくらいはしておくべきだろう。
しかしながら勝手に棚をいじるわけにもいかんだろうしどうしたもんかと考えていると、
カーテンが閉じられていたベッドから何やら聞こえてきた。

「んぅ……せん、せい?」

やはり、誰かが眠っていたらしい。
声から察するに女生徒のようだ。
ひょっとすると俺が起こしてしまったのだろうか。ならば謝った方がいいんだろうかね。
丁度そう考えたところで、閉ざされていたカーテンが開かれた。

「え、あれ? キョン……くん?」

「小早川、か?」

開かれたカーテンの先で驚いたような顔をしつつ、
俺のことを、北高でもすっかり広まっちまった不本意なあだ名で呼んだのは小学生だった。
いや、正確にいえば小学生のような高校生だった。
446名無し@18歳未満の入場禁止:2008/10/28(日) 22:38:11 ID:YvAx7gBV0
「悪いな。起こしちまったか」

「う、ううんっ。大丈夫だよ」

この少女は小早川ゆたかといって、俺のクラスメイトだ。
特徴といえば両端で結って短いツインテールとなっているセミロングの髪と、
高校生にしちゃいくらなんでも小さすぎる身長といったところか。
目測だが140cmもないんじゃないか?
確か自己紹介のときに「飛び級小学生じゃないですよ〜」とかなんとか言っていたが、
実際そうなんじゃないかと思えてしまうほどだ。
同じクラスではあるが今までは話したことがあまりなかったのでよくは知らないが
体が弱く保険室で休んでいることが多いらしい。
そういえば谷口が「病弱ってのもアリだな」などと喜々として語っていたような気がするが、まあそれはどうでもいいな。

「えっと、どうしたの? キョンくんがこんなとこに来るなんて珍しいね」

「ちょっとソフトボールが頭に当たってな」

小早川は驚きの中にいたわりを30%ブレンドしたような顔で、

「ええー!? そ、それって大丈夫なの?」

「まあもう痛みはないし大したことはないんだろう。それよりも小早川の方こそ大丈夫なのか?
 具合が悪くて寝てたんだろう?」

小早川と話していると、まるで妹の友達を相手にしてるような気分になるな。
本人には決して言えないが。
447名無し@18歳未満の入場禁止:2008/10/28(日) 22:39:28 ID:YvAx7gBV0
「う、うんっ。さっきまではちょっと苦しかったけど、今は平気」

「そうか」

「うん……」

「……」

「……」

まずいな……。
ほとんど話したことがない相手ということもあってか、話題がない。
そもそも一般的な女子と話したことなんか全くと言っていいほどない俺に、こういうときのための話のタネがあるはずもない。
なんせハルヒはこちらから話を振る必要すらないし振る気もない。
長門も必要最低限の事しか喋らないし、
朝比奈さんとなら話す話題に困るようなことはそうそうないが、小早川も同じというわけにもいかんだろう。
誰か古泉の野郎でいいから呼んできてはくれないか。あいつでもこんなときくらいは役に立つだろうさ。
などと思ってみても都合よく古泉が現れるわけもない。
はてさてどうしたものかと考えていると、小早川の方から話を切り出してきた。

「あ、あのっ!」

「ん?」

「えっと、その、キョンくんってSOS団? の人なんだよね?」

「残念なことにな」

確かに俺は、誰の陰謀か知らないがハルヒの設立した、
所属している俺ですら何をやってるのか分からんような自他共に認める正体不明の部活に入れられてしまっているのだ。
まっこと残念だ。
448名無し@18歳未満の入場禁止:2008/10/28(日) 22:41:57 ID:YvAx7gBV0
「それでなんだけど、SOS団っていつもどんなことをしてるの?」

そうきたか。
まあ部活をしている人間に対しての話題としてはうってつけだろう。
野球部ならポジションはどこか、陸上部なら専門は何か、というのは定番の話題だ。
しかしそれはあくまで普通の部活である場合にこそ当てはまる話だ。
先ほども言ったとおりSOS団が何をやってるかなんて俺にもわからんし誰にも分らん。むしろ教えてほしいくらいだ。
そもそも設立目的が「宇宙人や未来人や超能力者と一緒に遊ぶこと」などという、
他人に言ったら可哀想な目で見られそうなものの上、普段の活動といえばもっぱら暇つぶし以外の何物でもないからな。
これで何をやってるかと聞かれても答えられようはずがない。
よって俺は、

「分からん」

と答えるしかないのだった。
小早川はそれを聞いて「へ?」と鳩が豆鉄砲の代わりに水鉄砲をかけられたような顔をしていた。
目をパチクリさせているのがまるで小動物のようにも見える。

「えっと、それって?」

「実のところ俺自身にも分からんのだ、細かいことはハルヒにでも聞いてくれ。
 俺たちはいつも適当なことをやってるだけだ」

「適当なことって?」

「そうだな……」

その後俺は小早川にSOS団のことを話してやった。
古泉、長門、朝比奈さんにハルヒのこと。勿論宇宙人だなんだというのは話してないぞ。
そんなことを話した日には都市伝説的な黄色い救急車が俺を迎えに来かねないからな。
それから土曜日の不思議探索、ハルヒの日常的に行われる奇行などなど。
自分たちのしてきたことを人に話すというのは少々気恥ずかしいものがあったが、
小早川は感心したり驚いたりと様々な反応を返してくるので話し甲斐があった。
そのまま10数分ほど話し込んでいたが、そんな時間も
突如ガラッと開かれた保険室の扉の音とともに終了を迎えることとなった。
449名無し@18歳未満の入場禁止:2008/10/28(日) 22:43:25 ID:YvAx7gBV0
「小早川さん、ご気分は……あら? あなたは……今日はどうされましたか?」

「あっ、先生」

入ってきたのは、背丈ほどある長い黒髪を大きなリボンでまとめた、いかにもお嬢様といった風体の人物だった。
どうやら彼女がここの校医らしい。
なるほど谷口が見たがるのも納得できるくらいの美人だ。
彼女は俺の方を向きにっこりと笑って、

「初めまして、天原ふゆきといいます。今日はどうしました?」

俺も軽く自己紹介を返す。
どうせならここからでも本名で呼んでもらえるように活動でもしたいところだが、どうせそううまくはいかないんだろうな。

「それで、ちょっと事故でソフトボールが頭に直撃しまして。氷水が欲しいんですが」

「あらあらそれは大変。少し待っててくださいね?」

天原先生はそういって冷蔵庫から氷をいくつか取り出し、ビニール袋の中に詰め込んでいる。
俺はその間、備え付けのイスに座って待っていた。思えば今まで立ちっぱなしだったからな。
それにしてもなんというか、おっとりした人だな。
今まで会った人物の中にはいないタイプだ。
450名無し@18歳未満の入場禁止:2008/10/28(日) 23:00:57 ID:YvAx7gBV0
「はい、どうぞ」

「ありがとうございます」

タオルに包まれた氷水の袋を受け取り、頭に当てる。
痛みこそほぼなくなっていたものの、ボールが当たった所にはたんこぶができており、
ひんやりとした氷水がとても気持ちがいい。
なんだかとても心が落ち着く。いつ振りだろうな、こんな感覚は。
最近は特にハルヒに振り回されっぱなしだったからな。

天原先生は今は小早川と話している。

「小早川さん、具合はどうですか?」

「あ、はい。今は落ち着いてます」

「それはなによりですね」

さて、と。目的も果たしたし、どうするかな。
と、とりあえず立ち上がってみる。

「えっ、帰っちゃうの?」

と小早川。
どうせならこのまま授業が終わるまでのんびりとしていたいところだが、天原先生や小早川に悪いだろうしな。

「私は構いませんよ? 仮病で来られては困りますけどそうじゃありませんし、生徒の皆さんとのお話は楽しいですしね」

「わ、私も大丈夫だよっ」

そういってもらえるのはありがたいが、はてさてどうしたもんか。
時計を見ると、現在授業終了の15分前であり、このまま帰っても中途半端だろう。
その上氷水片手にサッカーなんてできるはずもない。
見学でもそれはそれで別に構わないが、どうせ休むなら屋内に越したことはない。
それならもうしばらくはここで世話になった方が得策かもしれんな。
俺は改めてイスに腰を下ろし、

「それじゃあもう少しだけここでお世話になります」

「キョンくんっ、さっきのSOS団のお話の続き聞かせてっ」

「残念だがさっき話したので大体全部だぞ?」

「え? うーんそれじゃあ私のお姉ちゃんたちの話なんだけど……」

「あ、それじゃあお茶菓子を用意しますね」

その後はこのような感じで話は進んでいった。
小早川にはかなり個性的な姉たちがいるらしく、それを話す小早川の顔はなんだか嬉しそうに見えた。
途中で何故か現れた生物の桜庭先生や、クラスメイト達の話をしている時に丁度小早川の様子を見にきた岩崎を加え、なんだかんだで楽しい時間を過ごせたような気がするな。
451名無し@18歳未満の入場禁止:2008/10/28(日) 23:02:20 ID:YvAx7gBV0
偶然というのは恐ろしいものである。
俺がこの北高でハルヒと出会ったのも偶然だし、髪型の秘密に気付いてつい話しかけてしまったのもまた然りだろう。
そしてその結果俺が、古泉いわく涼宮ハルヒにとっての鍵とやらにされちまったのも間違いなく偶然だ。
つまり何が言いたいのかと言うと、体育の授業中、ソフトボールをやっていたハルヒがかっ飛ばした球が、
いつも通りにサッカーのディフェンスをやっていた俺の頭に直撃したのもまた、偶然であるのだろうし、
その結果小早川や岩崎、天原先生や桜庭先生と親しくなれたのもきっと偶然なんだろう。
ハルヒの奴には痛い目を見せられたが、その結果楽しい時間を過ごせたんだから、ある意味ハルヒのおかげかもしれんな。
勿論感謝などはするわけもないが。






後日、小早川や岩崎と話しているのを偶然谷口に目撃されたときのことである。
谷口は、俺がハルヒと話していたのを見たときのように問い詰めるような表情ではなく、むしろ心持ち顔を青ざめさせて、

「おいキョン……? お前、いつの間に岩崎たちと仲良くなったんだ?」

さあな。どこかの保険室とかじゃないか?

「なっ……まさか、あの時の!? うがああああなんでキョンばっか! 畜生ごゆっくりぃぃぃ!」

そう叫びながら走り去る谷口の背中は、しばらくは忘れられそうにないほどに哀愁が漂うものだった。
452名無し@18歳未満の入場禁止:2008/10/28(日) 23:05:15 ID:YvAx7gBV0
以上。
>>399のお題「怪我」より。
ゆたかとふゆき先生を試しに


よく考えると>>439がただの自己擁護にしかならないな
453名無し@18歳未満の入場禁止:2008/10/28(日) 23:07:29 ID:VatjFiek0
>>452

久々に職人が出て来て嬉しかった
454名無し@18歳未満の入場禁止:2008/10/28(日) 23:55:50 ID:voVrjBbk0

まとめの中の人的にはたぶん酉あったほうがいいとは思うけど
455名無し@18歳未満の入場禁止:2008/10/29(日) 12:19:00 ID:7i6EJyBxO
乙もっふ
456名無し@18歳未満の入場禁止:2008/10/30(日) 13:44:26 ID:wIz7EvxV0
なんか書こうとしたが鉄也のおかげかエロいことしか思いつかないぜフゥーハハァ
457名無し@18歳未満の入場禁止:2008/10/31(日) 02:16:48 ID:mNFr8kVP0
エロいことでもいいじゃないか
458名無し@18歳未満の入場禁止:2008/10/31(日) 21:12:28 ID:YCGTizms0
エロスの何が悪い!

>>454
中の人ってのが俺のことかはさておいて。
なくても当然問題ないけど、あったほうが多少はやりやすいねぇ
作品が多い人だと特に。

それに読者の人も「この作者の他の作品も読んでみたい」なんてのもあるだろうしな
そういえば作者別一覧もそういう要望があったからこそ作ったんだっけか


まぁでも結局付けるかどうかなんて
職人さん自身の意思が第一だから好きにするといいと思う
長文失礼
459名無し@18歳未満の入場禁止:2008/11/01(日) 00:10:35 ID:lEkljC0A0
10月25日がみゆきさんの誕生日にも関わらず誰にも祝ってもらえていない保守
460名無し@18歳未満の入場禁止:2008/11/01(日) 03:44:29 ID:+X0+Au5T0
次の誕生日は11月4日の峰岸あやのだ!
みんな、忘れんなよ!?
461名無し@18歳未満の入場禁止:2008/11/01(日) 04:24:24 ID:S3CFJtvq0
あ…やの……?

畜生…連休なのに風邪っぽい…これが眼鏡の呪いか
462名無し@18歳未満の入場禁止:2008/11/02(日) 01:44:34 ID:6+7a2Vkg0
>>461
今からでも書けば許してくれるってさ
463名無し@18歳未満の入場禁止:2008/11/03(日) 18:23:19 ID:5+ocDTa7O
>>461
そろそろ書き終わる頃だよな
464名無し@18歳未満の入場禁止:2008/11/03(日) 18:31:08 ID:UjztMmzK0
>>461
期待してるぜ
465名無し@18歳未満の入場禁止:2008/11/03(日) 19:23:40 ID:476cu3ZnO
ここまだあったのか
日本沈没書いていた人まだいるの?
466名無し@18歳未満の入場禁止:2008/11/03(日) 22:34:06 ID:or+jVw2R0
七誌なら前スレあたりでお題もらってたような・・・
PC壊れたとか他所で言ってたが
それと関係あるのか、はたまた単に飽きたのかは知らんがしばらく見てない

>>464
期待してるぜ
467名無し@18歳未満の入場禁止:2008/11/03(日) 23:54:27 ID:T+iXN1La0
大分遅くなったが超短編御題祭其の伍「遭難、二人きり」投下するぜ
題は『相談』で
468名無し@18歳未満の入場禁止:2008/11/03(日) 23:55:13 ID:T+iXN1La0
「困ったね……」
 峰岸はそう呟きながら雪がへばり付き、外が見えなくなっている窓を見て外の景色を伺おうとする。
 俺はと言うとため息を一つつき、どうしたものかと思案していたところだ。
 山小屋に二人きり。この状況は泉で言う所の「ナイスなシチュエーション」らしいが、それはカップルだとかお互い独り身な時によるもので、峰岸は今彼氏持ちなのでそう

いったことにはなりえない。残念だ、というわけではない。
「とりあえず、吹雪が止むまでここで待機しておこう」
 と峰岸に答える。幸い、暖房器具や毛布などといったものは設備されており、凍え死ぬ心配は無い。
 峰岸はそうだね。と返事をし雪で濡れてしまっているスキーウェアを脱ぎ、毛布に包まりながら暖炉の前へと座り込んだ。
 俺もスキーウェアを脱ぎ捨て毛布に包まりながら一緒に置かれていた簡易食料を確かめる。
 賞味期限、二〇一〇年十二月。まだまだ余裕そうだ。
 食糧も確保し、心にゆとりが出てきたところで何故こうなったのか振り返ることにしよう。

 事の発端。問題の中心は必ずと言っていいほど涼宮ハルヒなのだが、今回は違った。今回は鶴屋さんが俺たちSOS団にスキー場に来ないかとお誘いをしてくれたのだ。
 俺らとしては断る理由も無いため、遠慮なく来させて貰ったわけだが、来たのは俺たちSOS団である十名とかがみの友人であり、俺のクラスメートである日下部と峰岸も来

ている。つまりは十二人。男女比は一対五。
 そして、スキーを始めるや否や、運動神経抜群のハルヒ、泉、日下部のお転婆三人娘は颯爽とどこかへ消えてしまった。つかさと朝比奈さんはコテージのすぐそばでスキー

をせず、雪だるま等を作って遊んでいた。微笑ましい限りだ。
 かがみと古泉と高良はこっちはこっちで運動神経はいいのだが、ゆったりとスキーを滑っている。そして、比較的運動神経が悪い峰岸はスキーを小学校の自然学校でしかし

たことが無い俺と一緒に滑る事となった。
 この時、調子に乗って奥のほうへ行くんじゃなかったと後悔している。人間、すぐに慣れてしまうと調子に乗りやすくなるものである。
 スキーに没頭してしまった俺たちは奥のほうへと進んでいった。すると、先程まで粉雪程度だったのがいきなり吹雪へと変化していく。吹雪の中では俺たちがコテージに帰

る事は不可能であり、たまたま発見した山小屋に避難することとなった。
 
 このスキー場は鶴屋さんのものらしい。恐らく、この山小屋もそうなのであろう。
 時計を見る。六時三十分。俺たちがここに避難してから既に三時間が経とうとしている。それにも関わらず悪戯に吹雪は振り続ける。
 俺は簡易食料が入った袋の中から二食分取り出し、一食分を峰岸に渡し、峰岸の隣に座り暖炉の温かみに触れることとした。
 峰岸はありがとう、と言って簡易食料を俺の手から受け取る。俺も食料を開け、口へ放り込む。
 お世辞にも美味しいとはいえない。峰岸の方を見ると俺と同じ風に思ったのか、少ししかめっ面をしている。
 だが文句は言えないので、仕方なく全部食べる事にした。
469名無し@18歳未満の入場禁止:2008/11/03(日) 23:56:46 ID:T+iXN1La0
「ちょっと、相談してもいいかな?」
 簡易食料を食べ終えてから二時間ぐらい経っただろうか、峰岸が不意に尋ねてきた。
「ああ、構わんが」
 峰岸は重い口を開く。
「実は、彼に別れようって言われてるの」
 俺はその言葉に驚いたが、平静を装いながら理由を尋ねた。
「まぁ、そう言うのっていろいろ理由があるのよ。それが結構積もっちゃってた、って感じかな」
 峰岸は俯きながら返事をする。
「峰岸はどうなんだ?」
「え?」
 暖炉と床の境目らへんを眺めていた顔が俺の方へと向く。
「別れたいのか、別れたくないのか。どっちなんだ?」
「私は……」
 そう言って再び顔を俯く、ほんの少し、先程より下を向いているように感じる。
「私も、別れてもいいと思ってるのだけど、その事でみさちゃんとの関係が崩れるのが嫌なの」
 この時、俺は峰岸の彼氏が日下部の兄であったことを思い出した。
「そんなことで日下部との関係は崩れないと思うぞ」
 峰岸は黙ったまま顔を上げる。
「人間、付き合ってればいい所も見えるし、その分悪い所も見える。親密な関係になればなるほど、だ。それで合わないんだったら別れるのも仕方が無い事だと俺は思うぞ。まぁ、日下部は能天気な奴だから、別れたってそんな事、気にしないさ」
 日下部が聞いたら怒りそうな発言だ。
「でも……」
 峰岸は口篭らせている。
「峰岸と日下部は、そんなことで関係が崩れるほど、柔な関係じゃないだろ?」
 この言葉で気分が晴れたのか、そうだね、と言って笑顔を見せた。
「うん。私、帰ったらちゃんと別れ話を切り出してくる。そして、みさちゃんにもちゃんとそのことを伝える」
 峰岸は満足そうにそう言った。
 話を終えたときには既に十一時を回っていた。今日はもう寝ようと言い、俺と峰岸は睡眠を取ることにした。何も疚しいことは考えてないぞ。
470名無し@18歳未満の入場禁止:2008/11/03(日) 23:57:46 ID:T+iXN1La0
「…やの、それにキョン。起きろー」
 誰かが俺と峰岸を呼ぶ。目を開け体を起こすと日下部が俺たちの目の前に立っていた。
「うおっ!」と俺、その声にビックリした日下部が「うわっ!」と叫ぶ。二人の叫び声が目覚まし時計のアラームとなり峰岸も目を覚ました。
「みさちゃん、どうしてここに?」
「そりゃー、あやのたちが心配だったからに決まってるだろ?」
 時計を見る。時刻は七時。こいつ、こんな早くから探しに来たのか。
「もー焦ったぜ。急に吹雪になってコテージに戻ったらあやのとキョンがいねーんだもんな。こりゃやべー、って事になって警察に通報しようかってなってたぐらいだぜ」
 恐らく通報を止めたのは古泉だろう。理由は単純、ハルヒがこんなことを望まないとわかっているからだ。
「で、朝になったら探そうって事になって、私が一人で片っ端から山小屋探していこうと思ったら一発目から当てたんだぜ。スゲーだろ」
 そうやって日下部は胸を張っている。確かに、その野生の勘らしきものはすごいと思う。
 ふと峰岸の方を向く。峰岸は日下部に感謝の言葉を述べた後、口をもごもごさせている。昨日のことを伝えたいのだろうが、やはり伝えづらいのだろう。
「おい、峰岸。日下部に言う事があるんだろ?」
 俺はさりげなく峰岸の背中を押す。
「私に?」
 日下部が峰岸をじっと見つめる。
「その……。別れようと思ってるの」
 その言葉を聞いた瞬間日下部は顔が引きつるかと思ったが、寧ろ逆で明るくなった。
「そっかー。ようやく別れる気になったのか」
「あれ?嫌がらないの?」
「何で嫌がる必要があるんだ?こう言っちゃあれだけど前々から別れて欲しいと思ってたんだよな。なんていうか、あやのに対して遠慮がちになっちまうからなー」
「遠慮がちに……?」
「そ。それにもし結婚でもしたら、あやののことなんていったらわかんねーしなー」
 そう言って日下部は八重歯を見せながら笑う。それにつられたのか峰岸も口に手をやりやんわりと笑った。
 とりあえずは、一件落着と言った所か。

 と、思ったのも束の間。コテージに帰るとすぐにハルヒからの怒号がとんだ。どれほど心配していたのか、死んだかと思った。とか、罰として今度の週末は罰金としておごりだとか。最後のはいつもの事だが。
「無事で何よりです」と古泉「二人きりでどんな事したの?いい雰囲気になった?」と泉に質問も受けたが、断固として何もなかったと言い切っておいた。

 後日、峰岸からしっかりと関係を解消してきたと言う話を聞いた。俺は良かったな、と返事をすると峰岸は今度は俺に対して付き合ってくれと言う告白もしてきたのだが、それに関しては詳しく話す必要は無いだろう。
 
 俺の返事はもちろんイエスだったのだから。
471名無し@18歳未満の入場禁止:2008/11/03(日) 23:59:56 ID:T+iXN1La0
>>468に変な改行がある……orz
余り気にしないで下さい

4日があやのの誕生日だという事であやのにしました
最初はパティぐらいにする予定だったんだけど、パティじゃ書けなかったので……

とりあえずはこれで御題は全部クリアしました
お題を下さった方、ありがとうございました
472名無し@18歳未満の入場禁止:2008/11/04(日) 00:43:50 ID:jYQ5khWwO
>>471
乙でした
あやの書きたいけど自分の中でのイメージが固まらない……
なんでだろう……あやの好きなのに


とにかく誕生日おめ!
473名無し@18歳未満の入場禁止:2008/11/04(日) 00:51:48 ID:gsnpF4hi0
>>471
乙。あやの聖誕祭開始か。
先越されたな。
では引き続いて俺も第二段を。
474名無し@18歳未満の入場禁止:2008/11/04(日) 00:52:39 ID:gsnpF4hi0
珍しくSOS団の活動がなかった、とある週末、俺は思い立ってふらっと一人で町に繰り出していた。
久々の一人っきりでの外出をエンジョイしつつ、雑誌やらCDやら、シャツやジーンズなんぞを買い込み、
一息つこうと、目に付いた喫茶店に腰を落ち着け、アイスコーヒーなんぞを頼んで一息ついていた、
その時だった。
木製の仕切りの向こう側の席から、男と女の声が聞こえてきた。口調からして楽しそうな話ではないなと
いう感じだったが、手持ち無沙汰な俺は、なにげなくその会話を耳で捕らえていた。
別れ話らしい。男の方がとつとつと、女性の側に何か話しかけている。女の側は・・・ときたま相槌
らしき声は聞こえるものの、男の語る言葉に多くを答えることはない。
断片的にだが話をまとめると、彼氏の方が、他に気になる女性が出来たから、別れて欲しいと言っているようだ。
まあよくある話だな。彼女さんには気の毒だが。
注文したアイスコーヒーが届いたので、シロップとミルクを入れつつ、ストローでかき回していると、
「・・・じゃあ、もう行くから・・・あやの・・・ごめんな」
彼女の名前はあやのさんか・・・峰岸と同じ名前だな。そう思いながらストローをすする。
彼氏の側が席を立つ音が聞こえた。その音に重なって、彼女の側の声が聞こえたとき、俺はあやうく
コーヒーでむせそうになった。
「ううん、私こそゴメン。泣いたりして・・・大丈夫だから、もう、行って」
その声の主は・・・俺の知る峰岸あやの、その人だった。

なにげなく入った喫茶店で、知人の女の子の別れ話を聞いてしまうというのは、なんともバッドタイミングだ。
それとともに、なぜか妙な罪悪感というものも沸いてきてしまう。別に盗み聴きするために来たわけじゃないんだがな。
仕切りの向こうの様子は分からないが、峰岸は席を立つ様子はない。ここは声なんかかけず、即出て行くべきだな。
俺は残りのコーヒーを勢いよく啜りこむと、伝票をつかんで、会計を済ませるべく席を立った・・・のだが。
「あっ・・・」
これもまたなんというバッドタイミングか。同じく席を立って出て行こうとした峰岸と、思いっきり鉢合わせてしまった。
峰岸の方は・・・彼氏が勘定を済ませて行ったのだろう、伝票はもっておらず、小さなバッグを提げているだけだった。
475名無し@18歳未満の入場禁止:2008/11/04(日) 00:53:18 ID:gsnpF4hi0
「キョン君・・・もしかしてさっきの話、聞こえてた?」
支払いを済ませて外に出てきた俺に、峰岸が声をかけてきた。こういう場合はすっとぼけるべきか・・・いや、聞こえてたかと
こっちに振ってきているんだから、聞かれていたという意識はあるんだろう。誤魔化しても仕方ない。
「ああ・・・すまん、別に盗み聞きする気はなかったんだが・・・途中で峰岸だって気づいちまった」
「ううん。謝らないで・・・分かってるから」
さて、こういうときに、男である俺は峰岸に何て声をかけるべきなんだろうか。ありきたりな慰めなんぞ、かえって
うざったいと思われかねん。だからといって、話を聞いちまったのにだんまりを決め込む、というのもあまりに無愛想
過ぎる気もする。いや、もともと俺はそんなに愛想のいい男ではないが。
「ふふっ、キョン君、今ちょっと困ってるでしょ」
いつもと変わらない笑顔で問いかけてくる峰岸に、俺は益々、どう言葉を返してよいものか分からなくなってしまった。
「それじゃあ・・・キョン君。またね」
踵を返して立ち去ろうとする峰岸に、俺は思わず声をかけた。
「峰岸、時間あるか。あるなら少し付き合わないか・・・あの・・・まあ俺なんかでも、多少は気晴らしになるかもしれんし」
嗚呼、声をかけるのはともかく、なんとも気の利かないというか、ありきたりな言葉のこと。
ただ俺は、平静を装っていても、どことなく悲哀をかみしめているようにみえる峰岸を、このまま帰らせるのは忍びなかった。
「ありがとう、キョン君」

さて、峰岸を誘っては見たものの、彼氏と別れたばかりの女の子をあちこち連れまわしたり、何かに付き合わせるというわけにも
いかん。思い切って声をかけて引き止めたのは良いものの、その後のことを考えてなかった!
自分の対女性スキルの低さに少々情けなくなる。古泉ならこんなときでも如才なく、それなりの場所やら雰囲気を整えられるのだろうが。
こういう場合はやっぱり、峰岸の話を聞いてあげるべきなのだろうが、「聞いてやるから俺に全部話してみろ」ってのもいささか傲慢に
聞こえるというか、そもそも俺のキャラじゃないしな。
・・・さて、いつまでも目まぐるしくモノローグを繰り出して、だんまりを決め込んでいるわけにもいかん。
476名無し@18歳未満の入場禁止:2008/11/04(日) 00:53:57 ID:gsnpF4hi0
「・・・俺はこういう経験がないから、こんなとき、峰岸になんて言ってやればいいのか分からん。
元気出せとか、お前なら大丈夫だとか、そんな分かったような言葉をかけることも出来んし、俺に何でも話してくれなんて気障な
言葉は、こっちが死ぬほど恥ずかしくなるから言えん。
もし良かったら、俺に・・・胸の中にたまっていることを話してみないか。聞くことだったら俺にも出来る」
うわ・・・クサくならないように意識して言ったつもりが、思いっきりベタな言葉になっていないか。俺・・・
口を開いても開かなくても、こんな時に気の利いた態度を示したり、言葉にすることなんぞ、到底俺には出来ん芸当だ・・・
だがそんな俺の言葉に気を悪くした様子もなく、峰岸は俺の方を向くと、
「ありがと。聞いてもらってもいいかな、キョン君」
と言ってくれた。そのまま俺と峰岸は、近くの公園の方に足を伸ばした。歩きがてら峰岸が口を開く。

「彼にね・・・好きな人が出来た、告白したいから俺とは別れて欲しい、って言われたんだ。
実はちょっと前からね、彼との関係がぎくしゃくし始めてて・・・だからいつか、こんなことになるのかな、って予感は
してたんだ。だから、今日呼び出された時も、ああ、別れ話かな、って覚悟してて・・・だから、思ってたほどショックじゃなかったんだ
でもね・・・予想通り別れ話を切り出されたのに、思ったほどショックを感じてない自分に気がついたら・・・そっちの方がショックだったな
もう私も・・・彼のことが・・・そんなに好きじゃなくなってたのかな、なんて」
最後の方で声を詰まらせたのに気づいて峰岸を見ると、峰岸はいつものような笑顔を浮かべながら・・・涙を流していた。
「ごめんね・・・なんで私、泣いてるんだろ。泣きたくなるほど悲しいわけじゃないのに」
なあ峰岸、お前の胸の中にある感情がなんなのか、俺には分からないけど、たとえ悲しいと思えなくても泣きたい時は・・・無理するなよ。
俺がそう声をかけると、峰岸は一言
「・・・ありがと」
と呟くと、俺の胸に頭を預けてきた。
477名無し@18歳未満の入場禁止:2008/11/04(日) 00:55:57 ID:gsnpF4hi0
休日の公園はカップルでいっぱいだ。俺たちのこんな姿だって、別に奇異に思われることはないさ。
だから人の目なんざ、気にすることはないさ。

どのくらい時間が経ったか分からない。
俺にはとてつもなく長く感じたが、峰岸が頭を起こしたので我に返った。
「すごくスッキリしたわ。ありがとう、話を聞いてくれて」
いや、ホントに話を聞いただけで、気の利いたことなんぞ何一つできなくてスマン。
「ううん、キョン君のおかげで、なんか吹っ切れそうよ」
それは良かった。やっぱり、峰岸はいつもにこやかに笑っていてくれたほうが、俺としても嬉しいよ。
「・・・キョン君ってもしかして天然のジゴロ?」
峰岸、おまえいきなり何をわけわからんことを。こんな女っ気のないジゴロがどこにいるんですか。
「ふふっ、涼宮ちゃんも柊ちゃんも大変そうね」
なにが大変そうなんだか。この2人にいつも大変な目に遭わされているのは俺の方だが。
「私も大変になっちゃおうかな?」
どうやら本当に元気になられたようでなによりです。あんまり恋愛スキルのない男をからかわないで下さると有難いですが。
やれやれ。
478名無し@18歳未満の入場禁止:2008/11/04(日) 00:57:41 ID:gsnpF4hi0
以上です。
確かにあやのって、キャラのイメージが固まりにくくてかくのが難しいかも。
しかも彼氏もちなんで、キョンとくっ付けるためには彼氏を引き剥がさなきゃならんし。

とりあえず、あやの誕生日おめでとう、ということで( ゚∀゚)
479名無し@18歳未満の入場禁止:2008/11/04(日) 03:29:43 ID:OgskORJK0

彼氏持ちが一番の難関だな
480名無し@18歳未満の入場禁止:2008/11/04(日) 07:30:13 ID:MUxknwb8O
ひっぺがさないでキョンは修復に走ってもらうのはどうだろうか。
…いいだしっぺは携帯のみで避難所が見れないからあれだが
481名無し@18歳未満の入場禁止:2008/11/04(日) 07:31:02 ID:KKpvaHyWO
乙もっふ
あやの可愛いよあやの
482名無し@18歳未満の入場禁止:2008/11/04(日) 07:32:05 ID:OgskORJK0
眼鏡のことなんか忘れてあやの初体験してみるかね





兄貴の性格わからねええ
483名無し@18歳未満の入場禁止:2008/11/04(日) 13:41:42 ID:9bRFGGRLO
皆乙!
あやの祭にも程があるwwww
なにはともあれ誕生日おめでとう!
484名無し@18歳未満の入場禁止:2008/11/04(日) 19:17:42 ID:6V06nZ/M0
みゆきさんの時と比べて盛り上がり方が雲泥の差だ
いい傾向だな、うん


ところで>>474-477に題名ある?
これ聞くのも久々だ
485名無し@18歳未満の入場禁止:2008/11/04(日) 20:01:06 ID:0Y5ZSXp60
>>484
作者です。
「涙と笑顔」というタイトルで頼む。
486名無し@18歳未満の入場禁止:2008/11/04(日) 20:54:52 ID:6V06nZ/M0
>>485
おk、完了した


それから>>471の言う、変な改行も直しといたけど
気になるところがあれば言ってくれ
487名無し@18歳未満の入場禁止:2008/11/04(日) 23:11:48 ID:0Y5ZSXp60
>>480のリクエストでもう一本、あやのの話を書いてみた。
タイトルは「男の意地」

俺が峰岸あやのと知り合ったのは、隣のクラスにいる柊かがみに引き合わされたというのが縁だ。
いや、別に俺がかがみに、個人的に紹介しろって言ったわけじゃないぞ。ひょんなことから、泉、
かがみ、つかさ、高良に加えて、隣のクラスの日下部や峰岸も、よく話の輪に加わることになった、
それだけだ。
泉や柊姉妹、高良を半ば強制的にSOS団に加入させたハルヒは、当然のごとく日下部と峰岸にも
その魔手を伸ばしたのだが、陸上部期待の星である日下部を引き抜けるはずもなく、また、茶道部所属の
峰岸からも、やんわりと断わられていた。
ハルヒはそれでも特別機嫌を悪くした様子もなく、イベント要員という名目で、2人に一方的に「準団員」
の肩書きを与えると、あっさり解放した。
「無理に参加させても仕方ないわ。SOS団の真価を知って、自主的に入ってきてもらったほうがいいし」
「・・・おいこら、私らの時には強引に引っ張っといて、そりゃないでしょうが」
たまりかねたようにかがみが漏らすが、我らが団長さまは、少しも聞いていらっしゃらないようだ。
谷口や国木田、白石の奴と同じ扱いか。ま、準団員ならそれほど不条理な目に遭わずに済むだろう。
え・・・映画撮影のとき池に落とされた奴がいたが、あれは不条理じゃないのかって? 
いや、あれは単なる事故だ。

いつからだろうか。峰岸のことが気になりだしたのは。
いつも目にする面子の中では、峰岸は取り立てて目立つというわけではない。どちらかというと話題を
提供したり引っ張ったりするより、やんわりとフォローしたり、宥めたりというのが役回りのようだが、
大人びて優しい物腰の峰岸には、その役割がとても似合っているし、1つ1つのしぐさが、峰岸という女性の
持つ魅力を引き出していると思う。
俺はこういう「お姉さんタイプ」の女性には、実はすこぶる弱い。思い返せば小学生のとき、当時大学生
だった従姉のねーちゃんで初恋を経験して以来、少しなりとも惹かれた女性は、ことごとくこのタイプだ。
いつもは妹か娘だとしか思えない朝比奈さんが、ときたまお姉さん的態度を示すとドキドキしてしまうし、
朝比奈さん(大)に対しても、何のかのと言いながら、いつもお願いを聞き入れてしまうし、高良が岩崎に
話しかけている様子を見ると・・・いや、なにもここまで俺の煩悩を駄々漏れにする必要はあるまい。
俺は峰岸のことが好きになっていた。
488名無し@18歳未満の入場禁止:2008/11/04(日) 23:12:32 ID:0Y5ZSXp60
こんなほのかな恋慕も、あっさりと打ち砕かれるときが来た。
文化祭最終日、峰岸たちのクラスの演劇終了後、峰岸本人の口から紹介された、彼氏。
なんでも日下部のお兄さんだそうだ。
「うちに遊びに来たあやのを見てさ、私に紹介してくれって食いさがってきてホントまいったZE!
兄貴には、断わられるに決まってるし、私らの仲まで変になるからやめろって言ったんだけど、とりあえず聞いてみたら、
あやのも何か気になってたみたいでさ・・・いや、心配してたのは私だけだったみたいで」
どことなく恥ずかしそうな2人を前に、日下部が笑いながら話していたが、俺は平静さを装いつつも、
自分の気持ちにどう整理をつけたらよいものか、戸惑いとも惨めさともつかぬ気持ちを味わっていた。
ただ、早まって告白なんぞして、峰岸を困らせずに済んだという、奇妙な安堵感があったのも確かだ。
結局は自分から告白できなかったへタレ振りを正当化しているだけ、なんて言ってくれるなよ。
・・・そんなことは、自分でもわかっているんだから。
そういや、従姉のねーちゃんの時も、結局気持ちを伝えられないままだったな。

とはいえ、SOS団の疾風怒濤のごとき日々の活動は、俺に失恋の感慨に浸る間を与えてはくれなかった。
人を巻き込んで、所構わず引っ張りまわすハルヒを忌まわしく思うことはたまにあるが、今の俺にはかえって有難い。
忙しさやあわただしさである程度吹っ切れたのか、日下部や峰岸を交えたおしゃべりや団活でも、とりわけ動揺する
ことも、態度がよそよそしくなることもなく、いつもの日常はあっさりと戻ってきた。
彼氏と二人で寄り添って、あんな幸せそうな笑顔を見せられたら、俺は何も言うことは出来ない。
横恋慕をかけて彼との仲を壊そうとして峰岸を困らせたり、悲しませたりする真似など断じて出来ない。
片思いと失恋の後始末は、自分ひとりでやればいいのさ。
489名無し@18歳未満の入場禁止:2008/11/04(日) 23:13:17 ID:0Y5ZSXp60
「なあ、キョン・・・ちょっと聞いて欲しいことがあんだけどさぁ・・・」
放課後、いつもの日課どおり部室へ向かおうとしている俺の背中に、珍しく神妙な顔をした日下部が声をかけてきた。
「どうした? 俺でよければ何でも聞くが」
「ここじゃちょっとな・・・あのさ、今日、部活終わったら会えねーかな」
・・・なら6時頃でいいか。ここでいえない話ってんなら、あんまり人目がないところの方がいいよな。
駅前の公園の時計台の下のベンチで待ち合わせってのはどうだ。
「キョンって妙なところ気を利かすよな」
何言ってやがる。このくらいの気を利かせるのは当然のことだ。あまり人に聞かれたくない話なんだろが。
「そうだな、それじゃまたあとで」
じゃあな、という間もなく、駆け出した日下部はあっという間に廊下の向こうに消えた。珍しく神妙な顔をしてると
思ったら、なんとも慌しい奴だ。
さて、俺も早く部室に行かねば。ハルヒから遅いだの何だの、罵声を浴びせられちゃ堪らんからな。

団活はいつものように滞りもなく、このところにしてはまったりと進んだ。週末の秘密探索の予定もあっさりと
(ハルヒの独断で)段取りが決まり、団長さまはさっきから何を調べているのやら、目まぐるしくマウスを動かしながら、
ディスプレイを凝視している。長門はいつものごとく本の虫で、朝比奈さんも珍しく何か読んでおられる・・・お茶の本だ。
俺は古泉と将棋を指しながら、はて、日下部の奴が俺にいったい何の相談やら、と考えをめぐらしていた。
心ここにあらずという状態でも、なんせ古泉はこの類のゲームは下手の横好きを極めている。攻めも守りも一貫性のない
古泉の玉を、俺はあっさりと詰んでしまった。おまえ、手ごたえが無さ過ぎる。もっと精進しろよ。
「いやはや、相変わらずお強いですね。これで今月ははやくも16敗ですか」
そういや、お前が将棋で俺に勝ったのっていつの話かね。負け続けても嫌にならないその精神力はどこから来るんだ。
「さあ、いつだったでしょう。僕は勝敗よりも、戦いの過程を楽しむタイプですので」
ああそうかい。道理で、勝つ気の薄い奴との勝負事なんざ、面白くないわけだ。
490名無し@18歳未満の入場禁止:2008/11/04(日) 23:14:08 ID:0Y5ZSXp60
とまあ、いつものようにのんべんだらりと部室での時間を過ごし、長門の本を閉じる音とともに今日の活動が終わると、
俺はすぐに部室を後にした。幸い、ハルヒも古泉も、なぜ急いでいるのかと詰問してくることもなかった。
公園に着くと、日下部はすでに来ていた。俺の姿を目にすると腰に手を当てて一言。
「遅ーい、罰金だZE」
頼むからハルヒの真似は止めてくれ、という俺に、いやぁ、なぜかキョンを見たら言いたくなってさーと、相変わらず、
屈託のない日下部だったが、俺が要件に話を向けると、途端に真面目な顔になった。
「実はさ、あやのとウチの兄貴のことなんだけど・・・」

どうも峰岸と日下部の兄、つまり彼氏との仲がこのところ良くないらしい。
最近、峰岸があまり元気がないし、随分と兄とも会っていないみたいなので、問い詰めてみたらそう白状したらしい。
兄は兄で、最近、家にもあまり居ず、頻繁に遊び歩いて、朝帰りも度々らしい。
言うまでもなく峰岸は高校生で、彼氏は大学生と聞いた。そもそも平日の生活リズムはあんまり合わないし、大学生とも
なれば自由な時間は多いし、付き合いも広がる。彼女とはいえ高校生同伴じゃ遊びに行けない場所だってある。
付き合い始めた当初は良かったものの、こんな理由からか結構すれ違いも多く、予定が合わなくて喧嘩することもあったそうだ。
あの峰岸が怒ったり、人と喧嘩しているところなんて想像できないが。
「知らないなーキョン。あやのって、怒ると結構こえーんだぜ」
そうかもしれん。だが、俺は峰岸の怖さより、あの峰岸を怒らせるお前の行動や言動の方に興味がある。
「今は私の話なんてどうでもいいんだってヴァ! あやのの話を聞けYO」
スマンスマン。別に茶々を入れるわけじゃないんだ。
491名無し@18歳未満の入場禁止:2008/11/04(日) 23:15:18 ID:0Y5ZSXp60
峰岸と彼氏の仲が壊れかけている。それを日下部の口から聞いたとき、何かが首をもたげたのは確かだ。
そんな俺の心境なんぞ知る由もなく、日下部は言葉を続けた。
「こんな場合ってどうすりゃいいと思うキョン? 私は女だしさー、兄貴のしてることや気持ちってのがイマイチよくわかんねーんだ。
男って彼女より、他の仲間と遊び歩く方が大事なのか」
難しい問題だな。ひとつ聞くけど、その、お兄さん、まさか他の女性と遊んでるとか、そんなことはないよな?
「それもわかんねーな。兄貴が女にモテるのかどうか知らねーけど」
頻繁な行き違いの上に、女性が絡んでいれば、まず関係の修復は困難だろう。
「あやのはさー・・・私って女の子として魅力ないのかな。きっと飽きられたのかもね、なんて言ってた」
やはりこういう事態になると、異性が絡んできていると考えるのが自然だ。
「昨日兄貴の方も問い詰めてみたんだけどさー・・・俺たちのことに口を出すなって、喧嘩になっちゃって」
それはそうだろうな。ただ、片や親友、片や実の兄だとすれば、意見するなというのも無理な話だが。
「私としちゃ、別れた方がいいと思うんだ。なんか兄貴は何言っても聞く耳持ってないみてーだし、今のままじゃあやのが可哀想でさ。
兄貴とあやのを引き合わせた責任ってのもあるし・・・」
それはお前が責任を感じることじゃないよ。結局2人の問題だろ。
そう答えながら、実は日下部の意見に強く同意を与えそうになる口を、俺は必死で引き結んでいた。
こういう事態を僥倖ととらえるなんて、男の風上にも置けない奴だ、と言われかねないことには同意する。
ただ、俺の手で後押しして、峰岸を彼氏と別れさせることが出来れば、という気持ちが抑えられないのも事実だ。

「で、なぜそれを俺に相談しようと思ったんだ」
気持ちを落ち着かせるためにそう聞いてみる。まさか日下部の奴、俺が峰岸のことを気にしていたのを知って・・・
「いや、私1人じゃ、あやののために何てアドヴァイスすりゃいいのか分からなくてさ。キョンが私が知ってる男の中で一番
信用できそうだし」
恋愛絡みの話なら、古泉あたりに聞いた方がいい案が出てくるんじゃないか。あいつは口も固いし、秘密は守ると思うぞ。
「う〜ん、古泉は確かにキョンよりは女の扱いに慣れてそうなんだけど、モテそうな割に言うことがありきたり過ぎで、あんま
役に立ちそうもない気がすんだよな」
確かにその評価は正しい。古泉よ、身のない薀蓄を延々と垂れ流す男だと、見抜いている奴がここにいるぞ。
「谷口や白石は論外だしさ」
まあそうだな。
「で、キョンはどう思うんだ」
492名無し@18歳未満の入場禁止:2008/11/04(日) 23:15:58 ID:0Y5ZSXp60
俺たちは第三者だから、別れる、別れないについては、峰岸の意思を無視して決め付けることはできない。
あとな日下部。おまえ、このことを他の奴に喋るなよ。ホントは俺に話すのもまずいんじゃないか。
峰岸はお前を信用して話してくれたんだから。
「そうかもしれないな・・・」
少ししょげた顔をする日下部。心にもない正論をぶちまけた胸が少々痛む。
「けど、頼られて話を聞いた以上、協力するよ。峰岸は俺にとっても大事な友達だからな」
日下部を励ます言葉の中に、また小さな嘘を混ぜてしまった。

お互いが話し合うことが出来ればそれが一番なのだが、最近、2人とも会うどころか話もしない状態で、
日下部が間に立つのも限界があるとすると・・・俺が仲介に立つのか?
そもそも日下部の兄とは、文化祭のときにほんの僅か顔を合わせただけできちんとした面識もないし、
だいたいなぜお前が2人の仲を取り持とうとするのか、と問い詰められたら答えに窮する。
俺が仲介の矢面に立って、良い事など何もない。
・・・ああ、分かってる。なんで自分の好きだった女の子を、彼氏と仲直りさせるために立ち回らなきゃ
ならないんだって気持ちも当然ある。
493名無し@18歳未満の入場禁止:2008/11/04(日) 23:16:41 ID:0Y5ZSXp60
「日下部。やっばり仲介役はお前がするのがベストだと思う。なんせ2人を結びつけたのはお前だろ。
意見できるとしたらやっぱりお前しか居ないよ。お兄さんのいるときに、峰岸をうちに連れて来てさ、きちんと
話し合いの場を持たせるべきだと思う。お兄さんにだって言い分はあるだろうし、峰岸のことが心配なのは
分かるけど、一方的に責められりゃ、お兄さんだって怒るだろ。
妹から真剣に意見されて、それでも話し合うことをしない兄貴なら、その時は割って入って縁を切らせりゃいい。
あれこれ気を回すよりも、まずは本人たちが話し合うことの出来る場所をつくって、話をさせるしかない」
・・・ホントは別れさせろ、と言いたい所だが、それをするのは俺の意地が許さん。詰まらん意地だが。
「女1人で心配なら俺も立ち会ってもいい。日下部も峰岸も、俺の大切な友達だからな」
本当か。なら頼んでいいかキョン。そういう日下部の顔をみながら、俺も決意を固めていた。

で、とある日曜日。日下部の自宅であやのとお兄さんの話し合いの場が持たれて、俺も約束どおり立ち会った。
詳しい話し合いの経緯は省略するが、さすがに妹に厳しく意見された上、あやのの胸のうちを聞いて、
自分の行動を省みて反省したのだろう。これからはきちんと、何かあったら向かい合って対処するということで、
2人の中は修復された。
いや、俺はてっきり、「貴様何様のつもりだ。赤の他人に意見なんかされる謂れはない」と1、2発殴られるかも
しれないと覚悟していたのだが、まあ、なにはともあれ、無事に一件落着とあいなったのは何よりだ。
494名無し@18歳未満の入場禁止:2008/11/04(日) 23:18:19 ID:0Y5ZSXp60
「キョン君・・・だったかな。もし違ったら気を悪くしないで欲しいんだが、キミはもしかしてあやののことを・・・」
あやのを家まで送っていくぜ、と言って外に出て行った日下部を追いかけようと、玄関で靴を履いている俺に向かって
日下部のお兄さんが問いかけてきた。
ま、そう思うのも仕方ないかもな。わざわざ彼女の同級生の男友達が、こんな場所に立ち会おうってんだからな。
俺は向き直ると、お兄さんの目をじっと見ながら言った。

「俺は峰岸のことを、そういう対象だと思って見たことは一度もないです。
峰岸は大切な友達です。貴方と仲違いして、悲しそうな顔をしている峰岸を見たくなかっただけです。
あと、貴方たちのことで悩んでいる日下部・・・妹さんのことも放っておけませんでした。
今回のこと、お節介だと思われたら謝ります。それじゃ」
踵を返して、ドアを開けると、おじゃましましたと挨拶して、俺は日下部宅を後にした。

「それじゃみさちゃん、キョン君・・・今日はどうもありがとう」
峰岸を無事自宅に送りどけると、日下部と並んで家路に着く。ふと日下部が口を開いた。
「キョン・・・今日は本当にありがとうな。助かったぜ〜」
いや、俺はただ居合わせただけだ。兄貴に説教して、きちんと話を聞かせたのはお前だろ。大して役に立てなかったな。
「いや、キョンがいてくれて助かった・・・それにさ・・・」
ふと言葉を区切ると、日下部は俯いたまま、ポツリと一言こういった。
「ごめんな・・・」

日下部の謝罪の言葉に、俺は言葉を返さなかった。意地は立てたら最後まで押し通すもんだからな。
495名無し@18歳未満の入場禁止:2008/11/04(日) 23:20:27 ID:0Y5ZSXp60
以上です。
仲を壊さずに修復するとなると、キョンにはこんな風に立ち回ってもらうことになるかなと。
なにはともあれ、彼氏持ちの女の子を好きになると、いろいろと大変なようです。
では( ゚∀゚)
496名無し@18歳未満の入場禁止:2008/11/05(日) 00:53:37 ID:lZgJNukf0
乙!いいもの読ませてもらいました
497名無し@18歳未満の入場禁止:2008/11/05(日) 13:23:51 ID:wgBk1gdhO
ポケットとらべら〜ずやハルヒちゃんの憂鬱ネタは入れる人いないな
498名無し@18歳未満の入場禁止:2008/11/05(日) 22:12:43 ID:hGKb8hHpO

祭終了かな
499名無し@18歳未満の入場禁止:2008/11/06(日) 01:07:38 ID:Dd0xv6y6O
>>495
俺が何気なく言った一言がこうなるとはびっくりだ。
これはかなりよかった。テラGJ
500名無し@18歳未満の入場禁止:2008/11/06(日) 17:46:15 ID:dQpCqzVBO
500もっふ
501名無し@18歳未満の入場禁止:2008/11/06(日) 21:21:20 ID:gAoo1dWD0
そういや泉とからきすたキャラの制服って北高なのか原作通りなんだろうか
502名無し@18歳未満の入場禁止:2008/11/06(日) 21:29:20 ID:t2OgpDWm0
俺の脳内イメージだと北高の制服
まぁこなたはコスプレ喫茶でも着てたし想像はできるはず
503名無し@18歳未満の入場禁止:2008/11/06(日) 21:29:59 ID:gAoo1dWD0
おk参考になった
504名無し@18歳未満の入場禁止:2008/11/06(日) 21:31:00 ID:FqpFm9+U0
どっちもセーラーだし大して変わんなくね?
男組はどっちだろうね?
505名無し@18歳未満の入場禁止:2008/11/07(日) 15:27:31 ID:e3XPQJYG0
俺は北高のブレザーだと思ってる
506名無し@18歳未満の入場禁止:2008/11/07(日) 18:11:29 ID:tmtCcntT0
まずらき☆すた側には男子学生ってのが白石ぐらいしかいないしなぁ
507名無し@18歳未満の入場禁止:2008/11/07(日) 19:55:41 ID:UEYrsThV0
らき☆すたは男キャラが少なすぎる
そう思わんかね?
508名無し@18歳未満の入場禁止:2008/11/07(日) 20:41:48 ID:FY1l1VBIO
>>507
多いくらいだろJK
509名無し@18歳未満の入場禁止:2008/11/08(日) 18:11:28 ID:w1ZsfdjJ0
らき☆すたは可愛い娘が居ればそれでいい
510名無し@18歳未満の入場禁止:2008/11/09(日) 18:47:29 ID:o1r33pmg0
小ネタは浮かぶのに短編長編にまで発展しない今日この頃
511名無し@18歳未満の入場禁止:2008/11/09(日) 19:54:02 ID:AVVSV4Zz0
>>510
(´・ω・)つ【煩悩力】
512名無し@18歳未満の入場禁止:2008/11/09(日) 20:36:57 ID:4B5VRggmO
>>510
(´・ω・)つ【ふんもっふ】
513名無し@18歳未満の入場禁止:2008/11/09(日) 20:37:17 ID:o1r33pmg0
>>510
(´・ω・)つ【妄想力】
514名無し@18歳未満の入場禁止:2008/11/09(日) 22:41:20 ID:t3IY3F3fO
>>513
(´・ω・)……
515名無し@18歳未満の入場禁止:2008/11/10(日) 01:12:30 ID:uG+jPa180
夜遅いけど今から『夢と現実』の続編投下します。
因みにこれで最後です。
題は『選択』で。
516名無し@18歳未満の入場禁止:2008/11/10(日) 01:13:43 ID:uG+jPa180
 かがみに私の気持ちを見破られてから早一週間が過ぎようとしている。
 それ以降、彼に対するアプローチが始まったのだが、それが功を奏しているのかは未だ分からない。
 やっぱり彼は鈍感なのだと、そしてその分攻略が難しいのだと改めて思い知らされた。
 アピールしすぎるとかがみ以外にも私の気持ちが悟られそうで怖いのだが、かがみにすれば「そんなもの付き合っちゃえば同じ」らしいので、今までより積極的になっている。
 けど、どちらかと言うと張り切っているのはかがみの方なんだけどね。

「こなたって料理が得意なのか?」
 放課後今日は古泉くんが所用で遅れるというので、私が彼のオセロの相手をしていると彼が尋ねた。
「うーん。家ではほぼ私がやってるからネ。人並み以上には出来るヨ。」
「へぇ、意外だな。親は料理を作らないのか?」
「お母さんは亡くなっちゃったからネ」
 そう答えると彼は少し野球の試合でノーヒットだった打者に「お前ヒット何本打ったんだ?」と聞いてしまって答えられた時のような顔をした。
「野暮な事聞いて悪かった」
「私は余り気にしてないからいいヨ。それより、そんなの誰に聞いたの?」
「ああ、かがみに聞いたんだよ。聞いたというよりは聞こえたの方が正しいかな」
 そう言われかがみの方を見るとかがみは本を読むのを止めこちらを見て一度だけニヤリと笑い再び読書へと向った。あんた、確信犯ですか。
「ま、そう言うことだヨ。一回食べてみるかい?」
 少し冗談のつもりで言った。

「是非食ってみたいな」
「……え?」
「いや、食べてみたいな、と」
「あ、うん。仕方ないなぁ。明日持ってくるネ」
「よろしく頼む。お礼はまたいつかするよ」
 そう言って彼はオセロの白い駒を置く。
 まさか彼が肯定をするなんて思わなかったよ。少しずつだけど、アプローチが成功しているのかな。そうだと嬉しいのだけど。あとかがみ、こっち向いてニヤニヤしすぎだよ。
 暫く勝負が続き最後に彼がもう勝敗の付いているオセロに駒を置き、「俺の勝ちだな」といってオセロを片し始める。
 流石に彼は強かったよ。毎日古泉くんとやっているだけの事はあるね。
 彼が片付けている最中にドアがガチャリと開き彼の本来のゲーム相手が入ってきた。
「遅れてしまって申し訳ありません」
 そう言って古泉くんは部室を見わたす。そして、私と彼がオセロをやっているのに気づき、
「どちらが勝ったのですか?」
「俺だよ」
「どうです、彼は強いでしょう?」
 古泉くんは私のほうを見て爽やかスマイルを放ちながらそう言った。
「お前よりは数倍強いぞ。やってみるか?」
 彼はそう言って席を古泉くんに譲った。
「よろしいのですか?では、よろしくお願いします」
 彼の譲った席に腰をかけ、私と古泉くんの戦いが始まった。
517名無し@18歳未満の入場禁止:2008/11/10(日) 01:14:32 ID:uG+jPa180
 戦いとは大袈裟だったのかもしれない。古泉くんは毎日オセロをやっている実力とは思えないほど弱かった。
 結果としてはオセロ盤の三分の二ほどが黒で埋められている。
「いやはや、お見事です」
 古泉くんは笑顔を崩さず盤から駒を取り除いていく。
「僕では、実力不足のようですね。どうです、もう一度お互いやられては」
「ああ、そうするよ」
 彼は再び私と向いになる。
 と、その時古泉くんがポケットから震えている携帯電話を取り出した。
 恐らくメールなのだろう。その内容を見終わった後、
「急遽バイトが入ったので失礼します」
 と言ってそそくさと帰っていった。
「……どうしたんだ?ハルヒの奴」
 彼はそうハルにゃんに聞こえない程度に呟くと同時に古泉くんが出て行ったドアのほうを見つめていた。古泉くんのバイトとハルにゃんが何の関係があるんだろう?
 その後すぐに私と彼の第二回戦が始まったのだがまたしても私はあっさりと負けてしまった。
 そうしている内に時間は過ぎ、恐らくどの電波時計よりも正確な体内時計を携えているながもんが本を閉じる音を聞いて私たちは帰路に着くこととなった。
 今日はいつも以上に静かだったような気がする。ながもんはいつもの事だけど、ハルにゃんもずっと黙りっきりでパソコンとにらめっこしていたからね。
 とりあえずは、明日は精一杯料理を作らないといけないね。

 次の日。
 私は普段より早く目が覚めた。こういうのってやっぱあるんだね。
 そしていつも通り……いや、いつも以上に張り切り弁当を二つ分作り始める。彼のお弁当箱は私のお弁当箱では小さいのでお父さんのを借りることにした。もちろん無断で。
 仮に「明日彼の分のお弁当作るから弁当箱貸して」と尋ねたらお父さんは発狂するだろう。そんな父親なのだ。
 あらかじめアラームで予約しておいた炊飯器からご飯を取り、ボールに移し、おにぎりへとする。
 三つ作るうち、一つはおかか、残りの二つは昆布にした。私の方はおかか一個昆布一個となっている。
 問題は上段。お弁当の定番、卵焼きは欠かせないとして彼の好みが分からないため他にどんな物を盛り付けていいのか分からない。
 とりあえずは卵焼きを作りながら考えよう、そう思い卵焼きを焼いていると階段から足音が聞こえる。
「あれ?こなた、珍しく早いな。どうしたんだ?」
 お父さんが起きてきた。まずい、非常にまずい。お父さんのお弁当箱にご飯を盛り付けるているのを見られるのは。先程も言ったが、発狂する。
「い、いや〜。早く起きちゃったからサ。お弁当作っとこうと思って」
 そう言ってその場をやりきる。お父さんは「そうか」とだけ言って外へ出て行った。恐らく新聞を取りに行ったのだろう。
 なるべくばれないようにしながらお弁当を作らないといけない。どうしたものか……。
 思案しているとすぐにお父さんは戻ってきた。居間のソファに座り新聞を読んでいる。
 この分だと暫くは台所には寄ってこないだろう。お父さんが新聞を読んでいるうちに作り終えなければ。
 私は焼き終わった卵焼きを弁当箱の端の方に詰め、次は副菜やらなんやらを盛り付けて、最後にメインを作ることとなった。
 さて、なににしたらいいものか……。
518名無し@18歳未満の入場禁止:2008/11/10(日) 01:16:06 ID:uG+jPa180
「男は皆、唐揚げが好きなんだぞ。こなた」
 ふと居間の方から声がした。お父さんだった。
「え?」
 突然の言葉にこんな腑抜けた返事しか出来なかった。というより、何で男って言ったの?
「そんなの見なくても分かるさ。俺の弁当箱が入っていた食器棚の戸が開いてるからな。それに、俺のを使うって事は男相手に作るんだろ?」
 そこまで見抜くとは……初めてお父さんが凄いと思ったよ。
 私の予想では既に発狂しててもおかしくないはずだけど、お父さんはいたって冷静にいる。
「もう付き合ってるのか?」
「違うヨ。まだ片思い」
 話題が尽き、暫く静寂が続く。
「お父さんは反対してる?」
「そりゃ、娘に好きな人が出来たら父親としては複雑さ。小学校のころに『お父さんと一緒にお風呂に入りたくない』って言われた時ぐらいな。
けど、本当にこなたが好きになったのならお父さんは反対はしない。例えその相手がお父さんたちのように社会からは異端とされているような存在でもな」
 お父さんはそう言いながら新聞を読んでいてこちらの方を向こうとはしない。ピラ、と新聞の捲れる音だけが部屋のBGMとなっている。
「大丈夫だよ。私が好きになった人はお父さんや私とは違って、社会からは異端とされてないから」
 まぁSOS団もある意味異端な存在でしかないのだけれど。
「そうか。それなら尚、いいんだがな」とお父さんは言って再び新聞を捲る。その背中はどことなく父としての威厳を持っていた。ように思う。
「ありがとう」
 私はそう言って冷蔵庫から鶏肉を取り出し唐揚げ粉をつけ揚げ始める。
 揚げ終えた唐揚げをお弁当に盛り付け、お弁当が完成した。
 お父さんがずっと冷静でいれたって事は、もう覚悟をしてたのかもしれない。流石に私も花の女子高生だし、こんなルックスでも恋の一つや二つはするという現実を渋々受け入れたのかな。娘離れは出来なさそうだけど。
 さて、次はお父さんと私の分の朝ごはんでも作りますか。

 オーブントースターでパンを二枚焼き、バターを塗る。さらに別の皿に目玉焼きとハムを二枚ほど乗せ、それらを食卓に並べる。これが我が家でのいつもの朝食風景なのだ。
 ご飯が出来た事をお父さんに告げ冷蔵庫から牛乳を取り出しそれをコップへと注ぐ。
 お父さんも新聞を読み終えたのか、それとも途中でやめたのかは知らないが新聞紙を閉じ食卓へとやってきた。
「それにしても」
 私はパンを二つにちぎりながら言った。
「男は皆唐揚げが好きって偏見じゃない?」
「偏見じゃないさ。実際に俺は好きなんだからな」
 半熟になっている黄身をパンの上に乗せながらお父さんは言った。
 そんな調査対象たった一人の結果でそんなことを言われても説得力に欠けるよ。さっきはその場で納得してしまって作っちゃったけど、もし鶏肉が駄目だったらどうしよう。
「そんな奴はいない!父さんが断言する」
 そう言ってコップに入った牛乳を一気に飲む。
「それじゃぁ、もし嫌いだったら今度新しいパソコン買ってよネ」
「そ、それは困るなぁ……」
 さっきの父の威厳はどこへやら、すっかりいつものお父さんっぽくなってしまった。ま、私としてはこっちの方がいいんだけどね。
 その後はいつものようにテレビでニュースを見ていた。天気は今週はずっと晴れ、良好なり。
 そして、星座占いも一位だった。良い時しか信じない都合のいい自分だけど、今日という日が一位で良かった。
「ふたご座のあなた。今日一日は良い事だらけでしょうが、ふとした拍子に悪い方向へ行かないように注意して。今日のラッキーアイテムは『童話』です」
 ふとした拍子に悪い方向へ……ですか。もしかしたら本当に唐揚げが嫌いだったりしてね。それにラッキーアイテムが『童話』ってどういうことですか。赤ずきん?それともシンデレラ?
 などとどうでもいい事を考えながら制服へ着替え、勉強道具の入っていない鞄を肩に掛けながら家を出た。
519名無し@18歳未満の入場禁止:2008/11/10(日) 01:19:00 ID:uG+jPa180
 しばらく一人で歩いているとかがみとつかさに出会った。
 かがみは私を見つけるなり、昨日のように笑みを浮かべこちらに近寄ってくる。
「ちゃんと作ってきたの?」
「うん。それはもうばっちし」
「なら安心ね。あんたは料理上手なんだし、自信持ちなさい」
 おお、かがみが私を褒めてくれた。しかし私はそれに反抗するように、
「まっ、かがみんは料理下手だしネ」
「うっ、うるさい!」 
 かがみは顔を赤らめた。カワイイ奴よの。
 本当に、あの時の出来事が演技でよかったと思う。あれがもしかがみの本心なら、私はかがみに勝てるはずがないから。いや、それ以上のライバルがいるけどね。
 ハルにゃん――涼宮ハルヒ。
 恐らくハルにゃんも彼の事が好きなのだろう。表面上には出さないけど、それはハルにゃんがかがみ以上のツンデレ体質であるが故である、と私は思っている。
 確証は無いけど、自信はあるのだ。
 けど、そう考えたら彼って結構もてるのね。尤も、古泉くんの方が後援会が発足するぐらいもてそうだけど。
「作ったって何を?」
 つかさが疑問そうにそう尋ねた。
「お弁当よ」
 かがみが代弁する。
「あっ、昨日言ってた事?こなちゃん料理上手だからキョン君もきっと喜ぶよ」
 ありがとう。あなたには劣りますが。
 その後はしばらく当たり障りの無い話をしていたのだが、かがみがふと思い出したようにポケットをまさぐる。中から出てきたのはヘアゴムだ。
「こなた、ちょっと後ろ向いてなさい。髪結ってあげる」
「髪?結ってどうするの?」
 そういいながら私はかがみに対し背を向ける。
「キョン君はね、確かポニーテールが好きなのよ」
 かがみは私の髪に手を回し、ポニーテールへと結っていく。
 それにしても、彼がポニーテール萌えだとは初耳だよ。っていうより、
「何でかがみ知ってるの?」
「この前聞いたのよ。きっかけはなんだったかしら……まぁいいじゃない」
 ポニーテールが完成し、かがみが私の髪から手を離す。
「うん。中々の出来ね」
「おぉ、流石こなちゃん。似合ってるね」
 かがみがどうやって彼の好みを聞いたのかは分からないけど、まぁこの際はいいとしとこう。
 私は一つに纏まった長い髪の毛を左右に揺らし校門をくぐった。

 教室へ入ると彼は自分の席で後ろにいるハルにゃんと会話をしていた。
 自分の机に鞄を引っ掛け、一時間目の準備をしていると、ハルにゃんとの会話を終えたのか彼がこっちへとやってきた。
「こなた、どうしたんだその髪?」
 彼はこのポニーテールを気にしてるらしい。かがみの言う事は正しかったようだね。
「いやぁ、気分だよ気分。昔のハルにゃんみたいにネ」
 ハルにゃんは入学当初はサラサラロングヘアーで曜日ごとに髪形を変えていたのだ。ある日を境にばっさり切ってしまい、今のような髪型になっている。けどまぁロングもショートも似合ってるんだけどね。彼曰く「俺にも少しは責任がある」らしい。何があったんだろう。
「そうか。それにしても、よく似合ってるな」
「ふふん。そりゃだてに長髪をやってませんヨ」
 珍しく彼が褒めてくれた。ありがとう、かがみ。感謝するよ。
「なんだそれ」
 そんな会話をしていたら廊下の方から古泉くんの声が聞こえた。
 どうやら、彼に用があるらしく、彼は古泉くんの元へと駆け寄っていく。
 声は聞こえないけど、表情を見る限り余り楽しい内容ではないらしい。しばらくして、彼が戻ってきた。
520名無し@18歳未満の入場禁止:2008/11/10(日) 01:19:46 ID:uG+jPa180
「なんて言ってたの?」
「いや、気分が優れないから今日は早退する、とさ。それをハルヒに伝えておいてくれって事らしい」
 昨日急にバイトが入ったから疲れたのかな。古泉くんも大変だね。
 そんなことを思っていると、彼は目線を私から少し下げ考えるようにポツリと呟いた。
「全く、今度は何が原因なんだ?」
「原因?何のこと?」
 そう尋ねると彼は目線を私に戻し、
「気にしないでくれ」
 そうは言われても、昨日といい今日といいやたら考え込んでいると気にならない方がおかしい。
 更に追求しようかと思ったけど、流石に深追いはいけないと思い、踏みとどまる事にした。
 その後も普通の会話をしていたのだが、チャイムが鳴ったため彼は自分の席へと戻っていった。
 つかさはみゆきさんと会話を、彼と会話を終えた後のハルにゃんは窓から外を眺めた後、机とお友達になっていた。最近、ハルにゃんの声を聞かないな。
 そういえば、お弁当を食べる場所決めてなかった。
 
 二時間目と三時間目の間の休み時間。対戦相手不明の延長戦を始めた夏の暑さに耐えながら体育を終えた後、女子が着替え終わるのを待っている彼の元へと行った。
「キョンキョン。こっちに来て」
 彼はいつもの三人組で会話をしている。
「何でだ?こっちじゃ駄目なのか?」
 そんな「お弁当食べる場所どこにする?」なんて谷口くんや国木田くんの前で言ったら誤解されるに決まってる。別に誤解されてもいいのだけれどそれ以前に恥ずかしい。私にだって、恥じらいの一つや二つはある。
「いいから、こっち来てヨ」
 私の呼びかけに渋々了承した彼を引っ張り、なるべく人目の付かない所へ行く。
「で、何のようなんだ?」
「お弁当の事だヨ」
 すると彼は思い出したように、
「ああ、弁当か。……いや、忘れてたわけじゃないぞ?」
「もしかして、自分の弁当持ってきてるんじゃないの?」
「そんなことないぞ、決して」
 そうですか、そうだといいのですけど。
「で、どこで食べる?」
「どこでって、教室じゃ駄目なのか?」
 教室って、あんたは恥じらいというものが無いのですか。違う、ただ鈍感なだけだ。女子と一緒にご飯を食べる事に何のためらいも無い程の。
「嫌だよ。恥ずかしい」
「そうか。なら、部室でいいだろ」
 部室の付属品(ながもんの事らしい)がいるけど、席を立つように言ったら出て行ってくれるだろう。と続けざまに言った。
 なるほど、部室なら二人きりになれるね。
「んじゃ、昼休み部室に来てヨ」
「わかったよ」
 彼が了解をした後、私は彼を置いて別の場所へと向かった。六組、ながもんとかがみがいる教室だ。
 ドアを開けかがみとながもんを呼びよせて、
「今日キョンキョンと部室でご飯食べるから、部室には来ないでね」
 とだけ言って即行で教室へと戻った。かがみはまたニヤニヤしている。最近、かがみはずっとニヤニヤしっぱなしだ。
 その後の三時間目と四時間目の授業はまともに聞けず(普段から聞いていないけど)、ずっと上の空状態だった。
「泉ぃ!」
 と黒井先生に怒られて頭を殴られるまでは。
521名無し@18歳未満の入場禁止:2008/11/10(日) 01:22:49 ID:uG+jPa180
 四時間目の終了を告げるチャイムがなると同時に私は鞄を持ち早急に教室を出る。
 部室へ入り、いつもの席に腰をかけ彼を待つ。ながもんも返事はしなかったがちゃんと話は聞いていたらしく、部室には訪れていない。
 ガチャリ、とドアが開き彼が入ってくる。鞄を持ってきている。部室に入り私を見るなり、
「一緒に部室に行けばよかったじゃないか」
「まっ、いいじゃんいいじゃん。ほら、座ってよ」
 私はそう言って隣のイスを下げる。彼は私に促されるがままにその席へと座った。彼が座った後、自分の鞄からお弁当箱を二つ取り出し、それらを机の上に並べる。
「この弁当箱は誰のなんだ?」
「お父さんのだヨ」
 彼はそうか、と言いお弁当箱を包んでいるハンカチ?(それともナプキン?)を取り除く。そして二層に区切られているお弁当箱を分離させる。
「ほぉ、凄いじゃないか」
「まっ、精一杯作ったからネ」
 私も、自分のお弁当を広げる。大きさは彼の半分ほどのお弁当箱である。女の子はこれぐらいの大きさがちょうどいいのだ。
 彼は箸を使い、卵焼きを一つ掴み、口へと運んでいく。私はそれを料理番組で自分が作った料理を審査員が食べている時の如く彼を注視していた。
 漫画でいう「ゴクリ……」という表現が当てはまるのかもしれない。彼は噛んだ卵焼きを飲み込むと、
「上手い」
 とだけいった。この一言と彼の表情を見て、この言葉は演技では無いなと思えたことが嬉しかった。
「本当に上手いな。俺のお袋の卵焼きより美味しいぞ」
 彼はその後もおにぎりやその他の副菜も食べては、美味しいと褒めてくれるのだった。最終的に、彼は唐揚げ以外のものを全部食べ終えてしまった。逆にから揚げだけは一度も箸が触れていない。私は不安になり、
「唐揚げ嫌いだったりする?」
 と尋ねた。すると彼は「いや」と即答した。
「俺は好きなものは最後に食べる主義なんでね。最後まで残しておいたわけさ」
 そう言って彼は唐揚げにも箸を伸ばす。四つ入っていた唐揚げを一つずつ噛み締めるように味わっている。
 そこまでの有難みはあるかな、と思いつつとりあえずはお父さんに感謝の思いを心の中で述べた。今度肩たたきでもしてあげよう。
 噛み締めるように味わっていても四つなのですぐに無くなってしまった。私もお弁当を食べ終え、彼は空になったお弁当箱を直し私へと手渡す。
「ありがとう。中々美味しかったぞ」
 そう言った後、彼は「戻るか」と言い席を立ち、部室から出て行こうとする。

「ちょっと待って」
 私は彼を呼び止める。無意識のうちに出た言葉だった。彼ともう少し二人きりで居たいが為に。
「どうした?戻らないのか?」
「もうちょっとさ、ここで話して行こうよ」
 彼をここに留まらせようとする。彼も了承してくれて再び先程の席へと座り込んだ。
 その後はいろいろと普通の話をしていた。学校生活のこと、SOS団のこと……etc。そんな会話でも十分に楽しかった。彼と一緒にいるだけで。
 どれぐらい話しただろうか。授業開始十分前ほどになると、不意にドアが開いた。入ってこようとしたのはながもんではなく、ハルにゃんだった。
「あ……」
 私と彼はハルにゃんを見つめたままあんぐりとなっている。ハルにゃんも無言で、物悲しそうな、辛そうでそれでいて若干怒りがこもった目で私と彼を交互に見わたした後、最後まで無言を押し通したまま部室を出て行った。
 その時私には見えた。彼女の腕にヘアバンドが付いていた事を。
 五時間目、六時間目の授業にハルにゃんは出席しなかった。そりゃショックを受けて当然だと思う。好きな人が別の女性と一緒にいるのを見ると、私だって泣くほどショックだ。この前、そんな夢を見たんだしね。
 彼も終始黙りっぱなしだった。ハルにゃんに出くわした時「やっちまった」的な表情を浮かべ、ハルにゃんが去った後、彼の携帯のバイブル音が部室へと響き渡った。
 彼は携帯のメール内容を見るなり溜息を一つし、一言愚痴を零すように言った。
「俺には、人並みの人生を送ることは出来ないのかね」
522名無し@18歳未満の入場禁止:2008/11/10(日) 01:23:39 ID:uG+jPa180
 結局その日の部活動にもハルにゃんは来なかった。古泉くんも早退して来ていないのでメンバーは七人なのだが、二人減るだけでこれほどまでに部室が広く感じるとは。いや、古泉くんのそして何よりハルにゃんの存在感がそれほど大きかったって事なのかな。
 かがみも、どことなく重い部室の空気を読んだのか、私に何も質問を投げかけずただラノベを読んでいるだけだった。
 私とハルにゃん。「恋人にするならどっち?」と言う選択を迫られたら十中八九の確立で男性はハルにゃんを選ぶだろう。ハルにゃんは性格こそ滅茶苦茶ではあるが、スタイルも抜群、そして美少女で頭も良く運動神経も抜群なのだから。
 当の私は背は低く、スタイルも良くなければ頭も悪い。運動神経だけはハルにゃんに引けを取らないけど、それ以外に関しては五回十点差コールド負けである。
 私は昨日同様対戦相手不在の彼の相手をしていた。彼は将棋がしたかったらしいけど私はルールを知らないので仕方なくオセロとなった。見事惨敗だった。
 今日はいつもより早くながもんが本を閉じた。本を閉じ、鞄へそれを入れた後ながもんは彼に歩み寄り一言囁いた。
「気をつけて」
 聞こえにくかったけど、多分こういったのだと思う。その言葉を聞いた彼は再び溜息を一つついた。
 溜息つきすぎると幸せが逃げるよ。と一応忠告しておいた。

「ん……」
 夜中、眠っていたのがふと目が覚めた。寝ぼけているのだろうか、天井がやけに広いような……。
「ってええ!?」
 天井が広いんじゃない。無いのだ。私は驚いて体を起こし、あたりを見回した。
 そこは学校だった。
 これは夢なのだろうか。真夜中でよく見えないが曇っているのだろうか、空は灰色と化している。けど天気予報では今週はずっと晴れだったはずだけど。
 そしてなぜか私は制服を着ていた。確か寝巻きを着ていたはずなのに。
 上ばかり見ていて気がつかなかったのだが、下を見ると彼が寝ていた。彼もまた制服。
「キョンキョン。起きろ〜」
 彼を揺する。彼はしばらくしてから目を覚ます。彼はムクリと立ち上がりあたり一面を見渡し本日私が知る限りで三度目の溜息をついた。
 意外なことにも、彼は余り驚いていない。それでいて更に校門の方へと歩いていく。グニョン、とそんな擬音が似合いそうなスライム状の物が彼の行く手を阻んでいる。って、出られないって事?
「とりあえずは部室へ行こう」
 彼はそう言って部室へと歩き出す。職員室から鍵を取り、部室の鍵を開ける。当然だけど、誰にも出会わなかった。
 彼は部室へ付くなりポットからお湯を出し、お茶を作っている。ほんと、何でこの人はこんな状況なのにこんなに余裕なんだろうね。
 お茶を二つ分作り、その一つを「美味くないが」と言って私へと渡す。飲んでは見たけど、やっぱりみくるんの作ったお茶には敵わないね。まぁ全部飲むけど。
「何でキョンキョンは驚かないの?」
 お茶を飲みながら疑問に思っていたことを述べた。彼はというとお茶を飲み終えた後すっと立ち上がり、窓の方へと歩き出す。
「まぁ、一度こんな経験があるからな」
 彼が窓の手すりに手を置き、外を眺めていると小さな赤い光が灯った。やがてそれは人の形へと変わっていった。
 その姿は、古泉くんにそっくりだった。
523名無し@18歳未満の入場禁止:2008/11/10(日) 01:26:11 ID:uG+jPa180
「どうも、今朝方振りです」
 声も古泉君だった。
「どうなってるんだ?またハルヒの仕業か」
「ええ。私たちのいる空間ではあなた達の存在は消えてしまっています。もちろん、涼宮さんもね。それと、ここ最近は本当に忙しかったんですよ。朝から晩までずっと神人狩りですから。これも誰のせいだと思いますか?」
「俺のせいだって言いたいんだろ」
「いえ、確かにあなたのせいもありますが、主な原因は泉さんです」
 え?私?と言うより、全く話の内容が分からないんですけど。
「涼宮さんは嫉妬しているわけですよ。この前と同じ状況ですね」
「うるさい」
 古泉くんの言葉を一蹴する。
「すみません。今回も前と同様にしてくれれば戻ってこれると思います。ですが、くれぐれも過ちを犯さないように。一つ間違えれば戻って来れませんから」
 古泉くんの姿をしていた赤い発光体は元の赤玉へと変わっていく。
「僕の力はこれまでです。僕としてはやはりあなた達に戻ってきてほしいと思っているのは変わりませんので。ああ、長門さんから伝言です。『パソコンをつけるように』だそうです。では」
 赤い球体はだんだんと小さくなり消えてなくなってしまった。彼は赤玉が無くなるのを確認するや否やパソコンの電源をつける。私もその内容を確認するために彼の後ろへと回った。
「ねぇ、さっきのって古泉くん?それに神人とか存在が消えてるとかどういうこと?」
「それらの説明は後だ」
 彼はそうとだけ述べてパソコンをただ見つめている。

 パソコンは起動する気配は無かったのだがやがて、
 YUKI.N>見えてる?
 と言う言葉が真っ黒だったパソコンに表示される。その言葉に返すように、彼がキーボードを叩く。
『見えてるさ』
 YUKI.N>>そちらの世界とこちらの世界が隔絶されるのも時間の問題。そうなれば終わり
『やっぱり、前みたいにしないといけないのか?』
 YUKI.N>>恐らくは。しかし、あなたには正しい選択と判断が必要。間違えれば、時間に関わらず世界の隔絶が開始される。もしくは
 普段余り喋らないながもんもパソコン越しだとこんなに喋るのね。って能天気な事をいってる場合じゃない。
『もしくは?』
 YUKI.N>>世界は戻ることが出来ても、完全には戻ることは出来ない場合がある。多少の損傷が生まれる
『多少な損傷って何だ?』
 YUKI.N>>例を出すと、一部分だけがそちらの世界に取り残されてしまう場合がある。その一部分とは、人。あなたかもしれないし、泉こなたかもしれない。そうなれば戻ることは不可能
 戻れないってどういうこと?夢から一生覚めれないって事?それって一種の植物人間状態だよね。
『今、ハルヒはどこにいる?』
 YUKI.N>>涼宮ハルヒは屋上にいる。急いでいくべき
 パソコンの字が少し薄れていく。
 YUKI.N>>私という個体も、あなた達に戻ってきてほしいと思っている
 文字が完全に消えかかろうとしていた。最後にながもんは、
 YUKI.N>>sleeping beauty again
 この言葉を残してパソコンは完全な黒となった。
 スリーピングビューティアゲイン。直訳すると、眠れる美少女再び、と言った所かな。再びと言う事は一度あったことなのかもしれない。多分、彼が言っていた事だろう。
524名無し@18歳未満の入場禁止:2008/11/10(日) 01:27:37 ID:uG+jPa180
 彼と私は部室を後にして屋上へと駆けて行く。本来なら鍵のかかっているはずの屋上はドアが開いていて、そこには空を眺めているハルにゃんがいた。ハルにゃんは私と彼を見つけるなり、
「ちょっと!これどういうことよ!何とかしなさい!」
 と彼に文句を言っている。こんなの、彼がどうこう出来る問題ではないと思うけど。
「知るか。俺だって聞きたいぐらいだ」
 彼がそう呟くと、突然校庭が光りだした。今回は赤ではなく、青だった。やがてその青い光は人型へと姿をかえていく。
 人の形と言っても、先程の古泉くんの様に具体的なものではなく、とりあえず人の形を保っていると言った抽象的な形だった。そして、半端なくデカイ。校舎ほどの高さはある。
「また出た!」
 ハルにゃんはクリスマス目が覚めるとベッドの隣にプレゼントが置かれていた子供のように目を輝かせている。ハルにゃんにとっては普通じゃないものは嬉しい限りだもんね。私は普通万歳だけど。
「ハルヒ!」
 彼は青い人型に目を奪われているハルにゃんを呼ぶ。ハルにゃんは振り向き「何よ」と言っている。
「そしてこなた」
 今度は私の名前を呼んだ、私とハルにゃんは一緒にして彼を見ている。そしてそれを確認した後、彼は言った。
「ハルヒ。俺はな、一度こんな感じの夢を見たことがある」
「あら、奇遇ね。私もよ」
「そのときのオチは最悪なものだったんだ」
「そう。それは災難だったわね」
「今回も、そんなことをしなければいけないような気がする」
「へぇ、私は別に元の世界に戻りたいとは思わないけどね」
「お前にとってはそうかも知れん。だがな、俺やそこにいるこなたはみんながいる場所に戻りたがっているんだよ」
 え?これって夢じゃないの?現実だったの?とは思ったけど、どうやら今は私が口出しする雰囲気ではないらしく、黙り込んで二人の会話を聞いていた。
「だがないくら戻る方法だからって、俺は好きな奴の目の前で別の奴にキスする気にはならない」
 そう言うと彼は目線をハルにゃんから私に変える。

「さっき気が付いた。俺にとってハルヒは大切な存在だ。SOS団という非常識な団体を作り上げ、その中でも退屈をせずに俺は今までを過ごしてきた」
「私は退屈だったわ」
 ハルにゃんは彼から視線を逸らし、青いスライム人形へと視線を戻す。
「お前にとってはそうかも知れん。だが俺たちにとっては毎日が楽しいかった。ハルヒや朝比奈さん。長門に古泉、かがみ、つかさ、高良。それに、こなたと一緒に入れることがな」
 彼は足を動かし私のほうへと歩いてくる。
「さっき俺にとってハルヒは大切な存在だと言った。けど、こなたはハルヒ以上に俺にとっては大切な存在だ」
 彼は私の一、二メートル前まで来ると足を止め、再びハルにゃんのほうを向いた。ハルにゃんも視線を彼に、いや、私に向けている。
「俺はさっき気づいた。泉こなたのことが好きなんだと。この好きはお前や長門たちに抱いている『Like』の感情ではない。『Love』の感情だ」
 彼は更に足を進め私の目の前まで来た。それより、さっき好きって言ったよね。『Love』って言ったよね?
 ドカン、と破壊音がする。いきなりあの青い人型は動き出し学校を破壊し始めたのだ。まだ別校舎なので問題はないが、その内こっちにも来てしまう。
「この判断が正しいのかは分からない。だが、俺は自分の選んだ道に反省はするが後悔はしない。それは、俺がお前に話しかけてしまった時から今まで、そしてこれからもそうすると決心したんだ」
 彼は私の両肩に両手を置く。そして、目線を下に降ろし私と目を合わせる。その時、私の顔は真っ赤だったに違いない。ハルにゃんは黙ったまま私たちを見ている。
「こなた。お前が作ってくれた唐揚げはとても美味しかった、また今度作ってくれ。それと、今日のポニーテール。とても似合ってたぞ」
 そういって彼の顔が私の顔に近づく。そして――。
 その瞬間、目を瞑っていたのでよく分からないが、外が明るくなっていくのが分かった。それも並みの明るさではない。買いたての蛍光灯が空に何億個とあると思わせるほどの明るさだった。目を瞑っていても眩しい。
 その時にようやく、いや惜しむべきではあるが彼の口が私の口から離れていった。
 そしてこの時、私は初めてラッキーアイテムの『童話』の意味を理解した。
525名無し@18歳未満の入場禁止:2008/11/10(日) 01:51:21 ID:A+/3jbkZO
さるった?

しえん
526名無し@18歳未満の入場禁止:2008/11/10(日) 02:06:27 ID:uG+jPa180
 ゴンッ、と鈍い音が室内に響き渡る。
 頭を抑えながら上体を起こすと、どうやらベッドに落ちてしまったらしい。と言う事はさっきまでのはやっぱり夢だったんだね。
 夢を思い出しながら顔が真っ赤になるのが分かった。夢とはいえ、ファーストキスをしたのだから。
 時計を見る。まだ三時ちょっと過ぎ。私は再びベッドに上がり、寝ようとした。結局、夢の内容を思い出しては恥ずかしくなるの繰り返しで、一睡も出来なかったのだけど。
 朝。一睡もしなかったため早めに下に降り再び弁当を作った。昨日よりは見劣りするけど、まぁ仕方が無いか。眠たいんだもん。
 学校へいこうと思い、玄関で靴を履いている最中にふと思い出し洗面所へと向かう。そこで私は昨日かがみから借りていたヘアゴムを腕に装着し、自分が持っているヘアゴムで髪を結った。
 学校へ行く途中やはりかがみとつかさに出会った。
「あ、かがみ。これ返すよ」
 私は腕に着けていたヘアゴムを外し、かがみへと返す。
「そう。それと、昨日はどうだったの?」
 かがみは興味津々に聞いてくる。
「まっ、まぁまぁかな。それにしても今日は眠くってさ」
「こなちゃんどうしたの?」
「いやぁ、夢のせいで起きちゃって、それから寝られなかったんだヨ。前の夢よりは遥かにマシだったけどね」
 前見た夢。彼と黒井先生が付き合ってる夢。あれは今までみた私の嫌な夢ベスト三に入るよ。
 つかさは「そっかぁ」とだけ言って、
「こなちゃん、今日もポニーテールだね」
「うん。今日は気分でやってみたんだ」
「早速私が仕入れた情報を有効利用してるわけね」
 かがみはまたニヤニヤしている。もう、ここ最近で何回目ですか。
「いいじゃんかヨ。使えるものは利用しないとネ」
 そんな会話をしながら学校へと登校した。

「おっはよ〜」
「おはようございます。泉さん、つかささん」
 既に来ていたみゆきさんと挨拶を交わす。そして、鞄を机の上に置き私は机に突っ伏して眠っているハルにゃんに近寄った。
「どうしたの?眠たそうにして」
 そう尋ねると、ハルにゃんは顔を上げ、
「あら、こなた。おはよう。今日は悪い夢を見たのよ」
「夢?私も見たよ。私のはまぁまぁいい夢だったけどね」
「それとこの前あんたに『恋愛感情は精神的な病の一種』って言ったわよね。あれは、やっぱり本当だわ。恋なんてするもんじゃないわ」
 そういいながらハルにゃんは顔を外へ向け、
「好きな人が目の前で違う人にキスなんかしたら、そんな恋も冷めるものよ」
 と小さく呟いたのを私は聞き逃さなかった。どうやら、私と同じ夢を見ていたらしい。としたら、あれは現実なのだろうか。
 しばらくして、彼が谷口くんと一緒に入ってきた。彼は私を見るなり少し恥ずかしそうな顔をしながらも私のポニーテールを見ながら、こう言った。
「とてもよく似合ってるぞ。こなた」
527名無し@18歳未満の入場禁止:2008/11/10(日) 02:08:44 ID:uG+jPa180
 その日の放課後、私はハルにゃんのいない部室でいろいろなことを聞かされた。
 ながもんが宇宙人である事、みくるんが未来から来た未来人である事、古泉くんがエスパー少年である事。そして、ハルにゃんが神様である事。
 最初は他の三人は、特にかがみはそんなファンタジックな事が現実にはあるはずがないと言って信じないでいた。けど、私にはなぜかそれが本当のようにしか聞こえなかった。昨日、あんな出来事があったからだろう。
 昨日の事は私だけでなく、彼も、古泉くんも、ながもんも、そしてハルにゃんも覚えているのだと言う。
 あれは夢ではなく、現実に起こっていたことであって、あの空間は『閉鎖空間』と呼ばれるハルにゃんのストレスによって作られた物だということを知った。ちなみに、あの青い人形が神人らしい。
 古泉くんは私以外の三人とながもん、みくるんを外へやり、昨日のことを話し始めた。
「涼宮さんは何でも自分の思い通りにすることが可能です。ですので、彼を振り向かせることも容易なのですが、涼宮さんとしては自分の力で振り向かせたい。と思ったのでしょう。昨日の閉鎖空間はあなたと彼が最近仲睦まじくいることに嫉妬したことで生まれたものです。
それで、例の空間にあなたと彼を呼び出し、彼の真意を確かめようとしたのです。結果はあなたの勝ちです。本来の涼宮さんなら、そのことに腹を立て世界が終わっていたのかもしれません。ですが涼宮さんはそのようなことをしませんでした。何故だと思いますか?」
「わかんない」
 そう答えると古泉くんは輝かしいほどの笑顔を放ち、
「そう言うと思いました。涼宮さんとしては、ある程度諦めの気持ちがついていたわけです。それで、彼の本心を知ることができて完全に諦める事ができたのでしょう。もし逆に、彼があそこで涼宮さんを選んでいたら世界はどうなっていたのか。今では考えることも出来ませんが」
 ハルにゃんが諦めるって、ハルにゃんらしくないね。
「ええ、その通りです。涼宮さんは本来一度決めたことにはどんな障害があろうとも突っ走る性格なのですが。そこは何故なのか、僕にも分かりかねます」
「多分」
 私の隣で古泉くんの言葉を聴いていた彼が呟いた。
「相手がこなただったからじゃないか?」
「私だから?」
「ああ。ハルヒとしてはSOS団内で争いをしたくなかったのだろうな。ハルヒは普段は破天荒な奴だがそれほどSOS団のことが好きだって事だよ」
「とりあえずは今日からあなた達は晴れてカップルとなるわけです。それも、涼宮さん公認のね」
「夢の中でだけどな」
「付き合うことになった。と言えば了解してくれるでしょう」
 そう言うと古泉くんは思い出したように言った。
「言い忘れてました。お二人とも、おめでとうございます」

 話を終えた古泉くんは外で待っていた五人を呼び戻した。かがみたちは先程とは打って変わってこの三人の非科学的な存在を認めている。ながもんに何か見せてもらったのだろうか。
 そして、五人に私と彼が付き合うと言う事を報告すると、
「おめでとう、こなちゃん」とつかさ、「おめでとうございます」とみゆきさん、「おめでとうございます。泉さん」とみくるん、「……」とながもん。なんか言ってくれたっていいじゃん。そして、
「おめでとう、こなた。あんたならやると思ってたわ」とかがみが私に言った。本当にありがとう、かがみのおかげで私はここまで来れたんだよ。
 掃除当番で遅れてきたハルにゃんには彼から言ってくれた。彼にそのことを聞かされるとしばらく黙った後ハルにゃんは「おめでとう。ちゃんとこなたを大事にしなさいよ!」とだけ言ってそれ以上は何も言わなかった。
 ありがとう、ハルにゃん。私もSOS団が大好きだよ。
「なぁこなた」
 放課後、活動の帰り道かがみが気を利かせてくれ、二人きりで帰ってると彼が呼んだ。
「何?」
「弁当のお礼、どんなのがいい?」
 私はしばらく悩んだ後、
「キョンキョンとずっと一緒に入れる事、でいいよ」
 そう言うと彼はやさしく笑い、言った。
「お安いご用さ」
528名無し@18歳未満の入場禁止:2008/11/10(日) 02:11:01 ID:uG+jPa180
これで終わりです。
こんなに長いの書いたのは初めてです。疲れた……。
前の分書いてから今回まで長い事かかってしまってすいませんでした。

これからは、また適当にお題集めたり短編書いたりしていきたいと思います。

誤字・脱字あればご指摘願います。
529名無し@18歳未満の入場禁止:2008/11/10(日) 03:41:59 ID:MQvD5HjK0
乙!
こなキョン(*´Д`*)/ヽァ/ヽァ
530名無し@18歳未満の入場禁止:2008/11/10(日) 04:22:46 ID:qXcEg5vIO
>>528
乙だお
531名無し@18歳未満の入場禁止:2008/11/11(日) 03:12:49 ID:CSP7/W54O
>>528
乙かれ
寝る前に良いもの読ませて貰った
532名無し@18歳未満の入場禁止:2008/11/11(日) 19:09:40 ID:0eI92lWS0
GJ、素晴らしかったよ (=ω=.) b
533名無し@18歳未満の入場禁止:2008/11/11(日) 22:13:00 ID:XEcnuppd0
乙。


ついでに新ジャンル「ただイチャつくこなたとキョン」
534名無し@18歳未満の入場禁止:2008/11/11(日) 22:14:18 ID:XEcnuppd0
「ねーキョンキョン」
「なんだ?」
「実際私っていくつに見える?」
「140ぐらいか」
「え?」
「身長」
「そういう返し方があったとは…さすがキョンキョン」
「見た目を年齢に換算したら怒りそうだったからな」
「そういうことを言わなければもっとよかったヨ」


いつも通りの風景。
しかしこいつもかがみ達と帰らずに俺と話してるなんてヒマなんだな
535名無し@18歳未満の入場禁止:2008/11/11(日) 22:14:51 ID:XEcnuppd0
「ひょんひょん」
「聞きなれない擬音だな」
「ひはひっひゃっは」
「舌切っちゃった?」
「ほう!」
「さっき舐めてた飴を噛んだらとがって切ったのか?」
「ひょふわはふへひょんひょん」
「よくわかるね?そりゃあ付き合い長いからな」
「…」
「…?」


なにやら不満顔だ。後で聞いてみたら「そこは傷跡を見せてみろっていってキスに持ち込むもんだヨ!」と怒られた。
お前の常識と俺の常識はだいぶかけ離れていたことを確認した。
536名無し@18歳未満の入場禁止:2008/11/11(日) 22:15:22 ID:XEcnuppd0
「サラサラしてて」
「ふむ」
「白い粉末で、」
「ほお」
「長期的に摂取しないと禁断症状を発して昏睡状態に陥る物質…欲しい?」
「ま、まさか!」
「そう…そのまさかだよ……ふふふ…キョンキョンもこれが無いと駄目になっちゃう」
「塩か」
「うん。塩」


なぞなぞ大会開催中。
537名無し@18歳未満の入場禁止:2008/11/11(日) 22:16:07 ID:XEcnuppd0
「前にゆーちゃんがポストの上で寝てる猫を見てさ」
「ふむふむ」
「この猫さん消印がないけど届け物でいいのかな?ってw」
「ユーモアがあるな」
「予想GAYすぎて飲んでた牛乳吹いちゃったよw」
「そんな妹欲しいな」
「え?」
「え?」
「…」
「…」
「え?」
「お前は何が聞きたいんだ」


正しくはそんな妹が欲しかった。
538名無し@18歳未満の入場禁止:2008/11/11(日) 22:16:51 ID:XEcnuppd0
「キョンキョンさー私料理できないとか思ってない?」
「人並みにはできるんだろ?」
「ゆーちゃんが来てからかがみんとかに習ってすこしは上達したんだよ」
「ほう」
「クッキーとかもできるようになったし」
「へえ…」
「信じてないんだったら作ってこようか?」
「いやいい。それよりその両手いっぱいに持った松ぼっくりで何をしようとしたんだ?」


俺の知っている限り松ぼっくりとクッキーの間に関連性は無い。
539名無し@18歳未満の入場禁止:2008/11/11(日) 22:17:28 ID:XEcnuppd0
「糠に釘。制限時間10秒」
「…」
「チッチッチッチッチッチッチ」
「…姑の嫁に対するトラップ」
「ブフォッ」
「勝った!」
「……手ごたえはないけど歯ごたえが良くなることのたとえ」
「ブフッ!」
「…」
「…」
「引き分けか」
「引き分けだね」


珍回答勝負。
540名無し@18歳未満の入場禁止:2008/11/11(日) 22:18:04 ID:XEcnuppd0
「そういや日本人の平均はCらしい」
「何の話?」
「A以下は2割程度だとか」
「あー…ハイハイ」
「急に思い出しただけだが」
「大事なものなのだからタンスにしまっておいてあるよ」
「ブフッ!」
「…」
「いや不覚にも笑ってすまなかった」


ホントすいません。だから日本男子の平均の話とかしないでくれ。
541名無し@18歳未満の入場禁止 ◆KoizumiXMI :2008/11/11(日) 22:19:05 ID:XEcnuppd0
没ネタの転用余裕でした
最近投下の間がけっこう静かだよな
542名無し@18歳未満の入場禁止:2008/11/11(日) 22:23:12 ID:z1yig74G0
久々にキタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━ !!!!!
乙だ!


う〜ん確かに静かなことが多いねぇ
投下が少ないだけにリアルタイム遭遇しにくいのか
543名無し@18歳未満の入場禁止:2008/11/11(日) 22:44:48 ID:0eI92lWS0
乙です!

いや、リアルタイムに見てたけど電話してたから書き込めなかった
544名無し@18歳未満の入場禁止:2008/11/11(日) 23:00:22 ID:XEcnuppd0
>>542
実は普通に居るけど潜伏してるだけだったり
最近妙にずっと忙しい


てかちょうどさるさん
545名無し@18歳未満の入場禁止:2008/11/11(日) 23:22:32 ID:z1yig74G0
>>544
そうだったのか
か、勘違いしないでよねっ!
別に心配なんかしてなかったんだからっ!


予想GAYに今更気付いた
546名無し@18歳未満の入場禁止:2008/11/12(日) 19:23:09 ID:ez9XJYxA0
遅レスながら>>541

今改めて見たら>>527の途中で〜そして、から「おめでとう〜のところに一行改行があった
余り気にしないでくれたら嬉しいです
547名無し@18歳未満の入場禁止:2008/11/12(日) 22:15:02 ID:P+XF3rEA0
>>546
そして、「おめでとう、こなた〜〜
にすればいいのかな?
548名無し@18歳未満の入場禁止:2008/11/12(日) 22:56:16 ID:ez9XJYxA0
>>547
〜そして、
「おめでとう〜
にしてくれると嬉しいです
いろいろとすいません
549名無し@18歳未満の入場禁止:2008/11/13(日) 00:08:18 ID:UA4GlZk50
何か書こうと思ってもかけない
誰かお題を下さいまし
550名無し@18歳未満の入場禁止:2008/11/13(日) 00:09:00 ID:Jk4MOL++0
全員ポニーテール
551名無し@18歳未満の入場禁止:2008/11/13(日) 00:44:17 ID:sd5RVDWN0
執事
552名無し@18歳未満の入場禁止:2008/11/13(日) 02:59:57 ID:jU4lpu73O
マフラー
553名無し@18歳未満の入場禁止 ◆7SHIicilOU :2008/11/13(日) 08:07:16 ID:n8oTM6h/O
おーひさしーぶーりー
554名無し@18歳未満の入場禁止:2008/11/13(日) 08:47:53 ID:Jk4MOL++0
反応しようかスルーしようか迷ったあげく反応する自分はいい子
555名無し@18歳未満の入場禁止:2008/11/13(日) 14:48:59 ID:UTeUqLcu0
こなた達とキョン達の初遭遇
556名無し@18歳未満の入場禁止:2008/11/13(日) 19:00:00 ID:CG5LgaGUO
ふと焼き芋が食いたくなったがなぜだろうなぜかしら。
557名無し@18歳未満の入場禁止:2008/11/13(日) 19:13:04 ID:UA4GlZk50
い〜しや〜きいも〜

一応聞くが>>555もお題と考えていいのかな?
558名無し@18歳未満の入場禁止:2008/11/13(日) 22:22:07 ID:dpGEyDVq0
いいんじゃない? 流れ的に

>>548
えっと、既になってない?
念のために聞いておくけど
>ながもん。なんか言ってくれたっていいじゃん。そして、
>「おめでとう、こなた。あんたならやると思ってたわ」とかがみが私に言った。
ここでいいんだよね?
559名無し@18歳未満の入場禁止:2008/11/13(日) 23:32:43 ID:UA4GlZk50
>>558
そのとおりです。はい
何度もすいません
560名無し@18歳未満の入場禁止:2008/11/13(日) 23:55:22 ID:dpGEyDVq0
>>559
了解、じゃあやってくる


それと久々に七誌を見たついでにお題募集
先着一名までで
561名無し@18歳未満の入場禁止:2008/11/13(日) 23:59:40 ID:Jk4MOL++0
こな×キョン

髪あそび
562名無し@18歳未満の入場禁止:2008/11/14(日) 00:15:10 ID:Fos9zDo50
>>561
把握
こなキョンは書きやすいところがいい


『選択』今までと同じところの方が見やすいかと思ってあま〜い短編においてあるけど
気になるなら言ってくれると嬉しい。本来なら文句なしに長編カテゴリだから


それにしても今まで気付かなかったけど『峰岸あやのの長編』のページってないんだな・・・
563名無し@18歳未満の入場禁止:2008/11/14(日) 01:03:02 ID:cRQPWWTB0
あやの祭りで3作品ほど長編が集まったから、そういうカテゴリーがあっても(・∀・)イイ
564名無し@18歳未満の入場禁止:2008/11/14(日) 01:37:16 ID:kJgyze2gO
やっと完成間近まで書いた分があるんだが
内容的に>>555に近いんだけど問題ないかな?
565名無し@18歳未満の入場禁止:2008/11/14(日) 02:39:07 ID:NA9RZn8RO
>>564
構わん、やりたまえ
566名無し@18歳未満の入場禁止:2008/11/14(日) 13:09:36 ID:n6bA9kga0
そういや百合なやつって書かれてたっけ?
567名無し@18歳未満の入場禁止:2008/11/14(日) 21:09:07 ID:dnRj5aWl0
>>564
なら俺の変わりにお題消化という事でいいかな?
568名無し@18歳未満の入場禁止:2008/11/14(日) 22:24:57 ID:kJgyze2gO
よくよく考えたらそこまで近くなかった
でもまぁ初遭遇ではあるかな
とりあえずお題消化は無しってことで
569名無し@18歳未満の入場禁止:2008/11/16(日) 21:13:49 ID:t8gg329s0
>>568
了解した
投下期待してます

>>562
俺もあやののページがあったほうがいいと思う
余談だけどパティのページもないんだよな
570名無し@18歳未満の入場禁止:2008/11/16(日) 21:51:32 ID:zWeYNydB0
あやののページ・・・やるのはいいけど果たして勝手にやっていいものか分からん
571名無し@18歳未満の入場禁止:2008/11/16(日) 23:30:40 ID:3sVX84sRO
かなーり遅くなったけどやっとできた
すいませんがこちらでお願いします
http://yy65.60.kg/test/read.cgi/harulaki/1221489722/
572名無し@18歳未満の入場禁止:2008/11/16(日) 23:32:44 ID:O+m+JBa40
testes
573名無し@18歳未満の入場禁止:2008/11/16(日) 23:33:43 ID:YzkvUlvM0
もっかい
574名無し@18歳未満の入場禁止:2008/11/16(日) 23:39:13 ID:O+m+JBa40
避難所に書き込めなくなってて、何故かこっちに投下出来るんで
やっぱりこっちに投下します
タイトルは『言いそびれた言葉』

……ちゃんと投下できるかしらん
575名無し@18歳未満の入場禁止:2008/11/16(日) 23:41:01 ID:O+m+JBa40
1.高良みゆき 10月25日生 O型

長いこと胡坐をかいて座っていた夏も、ようやく秋へとバトンを渡した。
出始めの太陽は、放射冷却の影響で冷え切った大地を暖めてはいくが、
朝もやの登校時間は、その日差しも弱まって少し寒く、吐く息は白かった。
学生達は友人と談笑しながら、だるそうに鞄を担いで、それぞれが学び舎を目指している。
その中で高良みゆきは一人、堪えきれずに出てしまった欠伸を
気づかれないように手で覆い隠しながら、流れ出る涙をぬぐっていた。
彼女は品行方正な女の子であり、人前で欠伸をするような性格ではなかった。
だがそんな彼女であろうと、本能に逆らうことはできないのだ。
どうして欠伸が出てしまうほど眠たいのか?
それを知るには昨夜にまで遡らなくてはならない。

『ふぅ』
シンと静まり返った部屋の中
みゆきの口から漏れた小さな溜息は、漆黒の闇の中へ滲むように溶け込んでいった。
一切の光も入ってこない暗闇の中で、それに慣れてしまったみゆきの目には、
天井に付いた照明も、テーブルの上に置いたままのコーヒーカップも、すべてハッキリと映っていた。
みゆきは誰もが一瞬で寝付くことができそうなほど、フカフカで寝心地の良いベッドに横たえていながら、
掛け布団を肩までしっかりと被っていても眠ることが出来ないでいた。
『……羊を数えるべきでしょうか』
数えたからといって眠くなるわけが無いことを、当然みゆきは知っていた。
そんな科学的根拠のなさそうな迷信を信じるほど子供ではなかった。
しかしこのまま何もしないよりは良い……そう思い、みゆきは古ぼけた牧場と、
そこに群れを成す羊たちの姿を頭に思い浮かべた。
1匹2匹と数えていくたびに、その羊が木で出来た柵を飛び越えていく。
10匹、20匹……90匹……100匹
もう自分がどれだけ数えたのか分からなくなるほど羊が柵を飛んだが、
それでも眠れないみゆきは、心の中で羊を数え続けていた。
すると今度は羊を数えるということに集中して余計眠れなくなってしまい、
結局はまた彼女の口から漏れた溜息が、闇に消えるだけだった。

どうしたものかと考えたみゆきは、ふと何かを思いつき、
寝ている自分の頭上へ手を伸ばすと、スタンドライトのスイッチを付けた。
上半身を起こし、まずは傍のテーブルに置いてあるメガネを手に取り、ゆっくりと装着。
そしてその横、中ほどのページに栞が挟まった読みかけの小説を手にした。
小説を読むことで、眠気を呼び起こそうという理由からだった。
しかしそれは羊を数えることと同様に、みゆきにとってかえって逆効果になってしまった。
寝付くどころか、つい小説の世界に没頭してしまったみゆきは、
文字を追う目と、ページを捲る手をどうしても止めることができなかった。
時間は刻一刻と過ぎて行き、彼女の睡眠時間は短くなるばかり。
だがそんなことはお構いなしに、みゆきの読書は続く。
結局寝付くまでに全て読破してしまい、ひどく寝不足となった。
そして翌朝、珍しく母親の声で目を覚ましたみゆきは、柄にもなく
早速大きな欠伸をしてしまうのだった。
576名無し@18歳未満の入場禁止:2008/11/16(日) 23:45:18 ID:O+m+JBa40
>>575

登校する生徒達の行く手を阻むかのように、学校へと続く長い上り坂。
みゆきはこの坂の中腹辺りで立ち止まっていた。
「どうかしたのか?」
「え?」
彼女から見て、坂を少し下ったところから声を掛けられた。
そちらを振り返ってみると、そこには見知らぬ男子生徒が、心配そうな顔をして立っていた。
それほど頻繁に異性から声を掛けられることの無いみゆきは、それだけで驚いてしまった。
「もしかしたら泣いてるのかと……」
「い、いえ……違います」
顔を手で覆い隠すようにして涙を拭いていると、
何か悲しいことがあって泣いていると勘違いされてもおかしくはなかった。
男子生徒はそんなみゆきを心配して声を掛けてきたのだった。
「あの……失礼します!」
涙を流す本当の理由が欠伸だということを打ち明けるのが恥ずかしく、
みゆきは男子生徒に会釈をすると、少しでも早くその場から離れようと駆け出した。
しかしそこで睡眠不足が祟ってしまったのか、それとも慌てていたためそうなったのか、
繰り出した足を縺らせて、バランスを崩してしまった。
「きゃっ!」
両手をバタつかせながら倒れこむみゆき。
転んでしまうと分かり、彼女は恐怖のあまり悲鳴を上げた。
時間がまるでスローモーションのように流れていく不思議な感覚。
いよいよ手遅れになりそうなところで、反射的に目を瞑る。
『危ない!』という声が聞こえたのは、ちょうどその時だった。

ゆっくりと目を開けたとき、みゆきの両肩は、男子生徒の手によってしっかりと握られていた。
「大丈夫か?」
耳元でそう言われ、みゆきの心臓は激しく脈動を繰り返した。
その鼓動が外に漏れてしまうのではないかと、変な心配をしてしまう程激しく感じられた。
みゆきはその心拍数の上昇、心の動揺が、転んでしまいそうなことへの恐怖によるものなのか、
異性に肩を掴まれ、耳元で囁かれたからなのかよく分からなかった。
「あ、あの……」
「なんだ?」
「もう結構です」
「あぁスマン!」
男子生徒は慌ててみゆきの肩から手を離すと、彼女を助ける際に放り投げた、
軽く薄い、何も入っていないような鞄を手に取り、付いた砂利を叩き落とした。
その間にみゆきは、少し乱れてしまった衣服や髪の毛を正し、
胸元に手を当てて、いまだ落ち着くことのない心の昂りを宥めていた。
そんな二人の間には、気まずさと恥ずかしさの入り混じった妙な空気が流れていた。
「なにやってんだ?」
それを打ち消したのは、後ろからやってきた生徒の声だった。
577名無し@18歳未満の入場禁止:2008/11/16(日) 23:48:43 ID:O+m+JBa40
>>576

「……谷口か」
また厄介な奴に見つかったと、その男子生徒は考えていた。
声を掛けてきたのは、高校に入ってから知り合った谷口という男。
彼はこの学校中のすべての女性を勝手にランク付けし、
なおかつAランクの女性はフルネームで覚えているという。
また成功するしないは別問題として、ことナンパに関しては数々の持論を持っていた。
そんな男に今の姿を見つかったとなれば、変な誤解をされるに決まっている。
谷口の独断と偏見によるランキングに頼らなくとも、高良みゆきが眼鏡の良く似合う、
スタイルの良い魅力的な女性であることは明らかで、そんな可愛い女の子と自分の友人が、
二人して気まずそうな表情で立っていたとなれば、谷口としても声を掛けずにいられなかった。
「まさか振られたとか言うんじゃないだろうな?」
「谷口、それは100%……いや120%誤解だ」
「どうだか」
吐き捨てるような谷口の言葉に、みゆきは慌てて弁解をした。
この際恥ずかしさなど、気にしているわけにはいかなかった。
「ほ、本当です! 私が…その、欠伸をして涙を拭いていたのを
 泣いていると勘違いされて、それで心配してくださったんです」
みゆき本人の言葉に谷口も納得したのか、飽きれた様子で男子生徒の顔を見つめる。
そしてまた吐き捨てるように言った。
「よくまぁそんな簡単に旗を立てやがるなコンチクショウ」
みゆきにも、そう言われた男子生徒にも、谷口の言葉の意味がよく理解できなかった。

「なぁ、話は変わるけど……」
再び坂を登りはじめた二人と、その後姿を目で追うみゆき。
昂っていた気持ちもようやく平穏を取り戻したのか、
心の中に一輪の花が咲き誇り、ゆらゆらと風に揺れるような、
そのような感覚がみゆきの心を満たしていった。
「……ありがとう」
そう呟いた頃には、二人は既に学校の正門付近にまで到達しており、
みゆきの小さな感謝の言葉は、彼の耳には届いていないようだった。
578名無し@18歳未満の入場禁止:2008/11/16(日) 23:55:10 ID:O+m+JBa40
>>577

2.泉こなた 5月28日生 A型

まるで春の一日を、ハサミで切り出してきたかのように暖かな昼下がり。
朝方は多少肌寒くとも、頭上で太陽が輝く昼間は暖かい。
かといって日差しが強すぎることもなく、自然の見事な調和に
誰もが清々しい気持ちになり、澄んだ水のように爽やかな心持になっていた。

そんな平和ボケに包まれた陽気も、この場所では異様な熱気に包まれる。

とある高校のとある購買部。
ここでは制服を着た男女が今日の昼食を賭けて、我先にとパンの並んだテーブルに押し寄せていた。
腹が減っては戦ができぬと言うが、腹が減っているからこそ戦わねばならないのだ。
ある者はテーブルに押し付けられ、またある者は群集の間から手を伸ばし、その様はまるで
バーゲンセールのワゴンに群がり衣服を奪い合う主婦たちのようだった。
その少し後ろの方で、自慢の長い髪を靡かせながら、続々と生徒の手に渡るパンの残りを確かめようと、
出遅れた野次馬が事件を見物しているように、ぴょこぴょこ飛び跳ねる一人の女子生徒がいた。
残念ながら彼女の背丈は同年代の平均身長よりも低かった。
その為、この場合は群衆の間を抜けてテーブルを目指すか、今のようにジャンプを繰り返す以外に
自分のお目当てのパンが売れ残っているかを確認する方法が無いのであった。

「う〜ん見えないなぁ……大体みんな背が高すぎだよ」
軽く愚痴をこぼしながら、その女子生徒、泉こなたはほんの数分前の自分を恨んでいた。
いつもは人が多くなる前に購買部へ赴き、大好物のチョココロネを
それこそ大好きなアニメソングの鼻歌混じりにでも買うことが出来た。
ところが今日は、颯爽と購買部に足を運んだまでは良かったのだが……
「財布を忘れて♪ 愉快なこなーたさん♪ってね……はぁ」
鞄に入れた財布を持ち忘れていたことに気付き、一旦教室に戻って財布を手にして、
再び購買部へとやってきた頃には、目の前は今のように人で埋め尽くされていたのだ。
一度はその群れに挑もうと、江戸っ子ばりに腕をまくって中へ飛び込んだのだが……。
「こ、こんなの……コミケの方がまだマシだよ!」
彼女にとって、それはとても過酷なものだった。
まるで濁流に飲み込まれたかのように、人の波にさらわれたこなたは、
押し潰されそうなった挙句、すぐに外へと弾き出されてしまった。
たった数分の間で、もう立っていられないというほど疲れ果て、
こなたは深い溜息を付き、蛍光灯の光を反射させ、掌の上で金色に輝く500円玉を見つめていた。
「下手すると今日お昼抜きとか?」
半ば絶望的に呟くと、追い討ちを掛けるように、お腹から牛のような鳴き声が響く。
その虚しい響きに、こなたは一気に全身の力が抜けてしまった。
それでもなお鳴り止まない牛の声に、自分自身にすらバカにされてるような気がしながら、
こなたは何度目かの溜息を付き、早く何かを食べてくれと空腹を訴え続けるお腹を擦っていた。
しかしいくら大きな声で訴えられようと、小柄な女の子であるこなたには
この混雑極まる状況を前にして、最早どうすることもできない。
彼女の心はすでに、空腹よりも諦念の方へと傾きかけていた。
579名無し@18歳未満の入場禁止:2008/11/17(日) 00:03:41 ID:Ecmlfz6B0
>>578

「どれがいいんだ?」
「へ?」
一向に減らぬ人の群れをジッと恨めしそうに眺めるこなた。
辺りに負のオーラを漂わせる彼女の元へ、後ろから近づいてきた見知らぬ男子生徒が隣で立ち止まり、
彼女と同じような視線を群集へと向けながら、そう尋ねてきた。
どこかで見たことのあるような顔立ちの青年だったが、やはりこなたの知らない人物だった。
「買ってきてやるから、どのパンがいいか教えてくれ」
あまりに突然すぎる提案に、こなたは彼が何を言っているのかすぐに理解することができなかった。
誰かに声をかけられるとは思っていなかったし、まさかその人から
代わりにパンを買って来てやるとまで言われるとは、まったく予想していなかったからだ。
男子生徒は、何も言わずに自分の顔を眺めているこなたを、不思議そうな顔で見返していた。
「いらないのか?」
「あっ、えっと…チョココロネ!」
ようやく気が付いたこなたは、頭の中に浮かぶ大好物のパンの名前を告げた。
今まで一度たりとて買いそびれたことはなく、彼女の代名詞であると言っても過言ではない。
それは貝のようで、芋虫のような特徴的な形をした和製の菓子パン……チョココロネ。
毎日食べても飽きることが無いほど、こなたはチョココロネが大好きだった。
「一つでいいか?」
「うん」
こなたの言葉を聞いた男子生徒は「よし」と頷いて、群れの中へ入っていった。
姿が見えなくなってしばらくすると、パンの入ったビニール袋が二つ、
群集の頭上にひょっこりと顔を出した。
それは間違いなく男子生徒の手に持たれたものであり、
こなたから見て左のビニール袋には、彼の分だと思われる二つほどのパン
そして右の袋には、こなたが待ち望んでいたチョココロネが入っていた。

「ほらよ」
ようやく脱出できた男子生徒は、コロネをこなたに手渡すと
少し疲れたのか、若干重そうな足取りで歩き始めていた。
「待って! お金お金!」
幾ら相手が自ら進んで「買ってきてやる」と言ったとしても、これで代金を払わなければ
男子生徒はパシリも同然か、それ以下の扱いを受けたようなものだった。
それはあまりに気の毒すぎると、こなたは慌てて呼び止めたが、
「いいさ、何百円くらいのもんだ」
返ってきた答えは、そんなこなたの想いを闘牛士のようにヒラリとかわすものだった。
「で、でも……」
どこか納得いかないといった声をあげるこなたに背を向けて、
ヒラヒラと手を振りながら、男子生徒は購買部から去っていった。
開いたままの財布を持ち、自分の口まで開けて、こなたはその後姿を眺めていた。
「……ありがとう」
そう呟いた時には、男子生徒はもう既に離れた所に居て、
こなたの小さな感謝の言葉は、彼の耳には届いていないようだった。
580名無し@18歳未満の入場禁止:2008/11/17(日) 00:08:59 ID:Ecmlfz6B0
>>579

3.柊つかさ 7月7日生 B型

日が落ちるのが若干早くなってきたとはいえ、下校時刻になってもそこまで暗くはなかった。
となれば、血気盛んな学生たちはまっすぐ家に帰らず、多少の寄り道をしてしまうものだ。
柊つかさは、いつもは友人のこなた、それに姉のかがみの三人での帰宅だったが、
今日は珍しくかがみと二人きりで、その際に本屋に寄っていこうということになり
そこまでの道のりを、姉の背中を追いながら歩いていた。
しかしどういうわけか姉とはぐれ、その上道に迷ってしまい、
さらにはポケットに入れていたはずの携帯電話をどこかで落としてしまった。
姉を探し、携帯電話を探し、自分の来た道を探す。
どれほどの時間探していたかわからないが、その内のどれもまだ見つかってはいない。
かがみとはぐれたという不安と、携帯を無くした不安、そして現在位置がわからないという不安。
三つの不安に取り囲まれたつかさは、半べそをかいてキョロキョロと辺りを見回していた。

「大丈夫か?」
「ひっ!?」
突然の呼びかけに、潤んだ瞳のままシャックリの様な声を挙げ、
つかさが後ろを振り返ると、見知らぬ男子生徒が自分の顔を覗き込んでいた。
これといって特筆すべき点の無い、ごく平凡な顔立ちではあったが、
その顔を見ていると、それまでどうにか半べそで抑えられていた涙が
コップに注いだ水が外へと溢るように、その瞳から流れ出てしまった。
「……お姉ちゃんとはぐれちゃうし、携帯も無くしちゃったし」
恥ずかしげもなく、グズグズと鼻を啜りながら涙を流すつかさを前に、
男子生徒は、小学生になる自分の妹が今よりまだ幼かったころ
よくこうやって泣いていたなと、妙に懐かしい気持ちになっていた。
そして姉がいるらしいが、この女の子はもしかすると何人姉妹かの末っ子なのではないか?
根拠はまったく無かったが、なんとなくそんな気がしていた。
「まぁ落ち着け落ち着け。 俺も一緒に探してやるから…な?」
「……グスン」
本当に小学生が泣いているように、涙を拭きながらコクリと頷くつかさ。
「やれやれ」
長年妹の世話をしてきたお陰で、泣いている人を宥めるのには慣れていた。
宥められた方のつかさは、心の中の不安が完全には消えないまでも、
男子生徒の優しさに少しはそれも和らいだようだった。

「どの辺で落としたんだ?」
「えっと……わ、わかんない」
当ても無く探し続けていると、仮にその時間が短かったとしても
もう数時間も捜索しているような気になってくるものだ。
何かのキャラクターだという小さなカエルの人形の付いた携帯電話。
それが少しでも見つかりやすいように、男子生徒はつかさに尋ねた。
しかし、つかさの口から満足のいく答えが返ってくることは無かった。
「拾われてなきゃいいが」
「……うん」
元気を取り戻したかに見えたつかさも、いつの間にかまた半べそをかいて、
頭に付いた黄色いリボンも、その心境を表すかのように垂れ下がっていた。
それを見た男子生徒は、どうにかして彼女の不安を誤魔化すことはできないかと考え、
何か話題を振ろうと、元気の無いつかさに話しかけた。
「そうだ、名前は?」
「私? 私は……つかさ」
「んじゃつかさ、よろしくな」
と、男子生徒はつかさに微笑みかけたが、つかさはそれに応えるでもなく
ただジッと男子生徒の顔を見つめていた。
「……あ、俺か?」
「うん」
「俺の名前は……」
581名無し@18歳未満の入場禁止:2008/11/17(日) 00:09:05 ID:bjBQUIuE0
支援
582名無し@18歳未満の入場禁止:2008/11/17(日) 00:18:07 ID:2YQx0Bt50
>>580

「あっ!」
生徒は自分の名前をつかさに伝えようとしたが、それはできなかった。
設定されていない……そんな神の見えざる手による妨害ではなく、
ただ単にその口を、つかさによって塞がれてしまったからだ。
「……聞こえる」
「ふぃふぉえふ?」
「聞こえる!」
つかさの言葉を受け、耳に意識を集中させてみる……すると、
蚊の羽音よりも小さな音量で、微かにメロディのようなものが聴こえてきた。
二人は目を閉じ、その音の根源を探そうと右へ左へ首を動かす。
やがて確信を持って目を開けたとき、二人は同じ所を見つめていた。
「…ウソ」
そこにはつかさの両手に持たれた鞄がある。
どうやらその鞄の中から、メロディは聞こえているようだった。
「まさかな」
「そ、そうだよ。 まさか……ね?」
そう言いつつゆっくりとした手つきで鞄を開け、中を覗き込んだつかさは、
一瞬ハッとしたような表情をして、鞄を勢いよく閉じた。
「……あった」
どこかで落としたとばかり思っていた携帯電話は、学校を出た時から
ずっと変わらずつかさの鞄の中で眠っていたのだ。
つかさは一緒になって探してくれた男子生徒に対し、とても申し訳ない気持ちになった。
「あったから良かったじゃないか」
「ゴメン」
「それより出なくていいのか? きっとお姉さんだぞ」
「あっ、そうだった……もしもし、お姉ちゃん?」
つかさは男子生徒に背中を向けて電話に出た。
相手はもちろん姉のかがみで、その声を聞いたつかさは
先程までの不安も忘れてしまったのか、「エヘヘ」と恥ずかしそうに笑っている。
一気に元気になったつかさの姿を見た男子生徒は、なんだか自分まで嬉しくなり
心温まる穏やかな気持ちのまま、電話で場所を確認しているつかさの元を後にした。
「それでね、多分同じ学年だと思うんだけど……あれ?」
つかさは一緒に携帯を探してくれた男子生徒のことを姉に伝えようと、後ろを振り返った。
しかし、その姿は既にそこにはなかった。
一体どこへ行ったのかと不思議に思ったつかさだったが、
「どうかしたの?」
そう電話越しに尋ねられ、「なんでもない」と答えるのだった。

パタリと携帯を閉じて、今度はきちんとポケットに仕舞い込み、
つかさはこちらへ向かっているというかがみを待つ。
男子生徒のクラスも、名前も聞いていないことに気づいたが、その時にはもう遅かった。
だが、「よろしくな」と微笑んでくれた彼の笑顔や優しい声は、まだ鮮明に覚えている。
「……ありがとう」
頭の中に浮かんだ顔にそう告げるも、本物の男子生徒はすでにつかさの元から去っていた為、
つかさの小さな感謝の言葉は、彼の耳には届いていなかった。
583名無し@18歳未満の入場禁止:2008/11/17(日) 00:20:10 ID:GiGM4yzf0
C
584名無し@18歳未満の入場禁止:2008/11/17(日) 00:29:48 ID:Ecmlfz6B0
>>582

4.柊かがみ 7月7日生 B型

「まったく……どこ行ったのかしら」
柊かがみは、姿が見えなくなってしまった妹、つかさを探していた。
帰宅途中に本屋に寄ろうと話をして、後ろを付いてきているものと思っていたが、
ふと振り返ったときには忽然と姿を消していたのだ。
初めは妹の名を呼びながら、辺りを探し回っていたかがみだったが、
それでも見つからず、携帯を取り出してつかさに電話をかけた。
数回呼び出し音がなった後に、かがみの耳に聞こえてきたのは、
やけに無機質で感情のこもっていない、機械的な音声だった。
その声が『お留守番電話サー』とまで告げたところで、かがみは電源ボタンを押して通話を切った。

かがみは少しばかりイライラしていた。
どこかへ消えてしまったつかさにではなく、自分自身に対して。
かがみとつかさの誕生日は同じ7月7日、七夕の日。 彼女達は双子だった。
たった数時間しか生まれた時刻は違わないが、この十数年間、
かがみは姉として、つかさは妹として育ってきた為、今でもお姉さんっ子であるつかさは
まるでヘリウムの入った風船のように、ふわふわゆらゆらと頼りないところがあった。
姉の自分がしっかり紐を握っておかないと、すぐに空の彼方へ飛んで行ってしまうのだ。
現につかさは今、かがみの手を離れ、風に乗ってその行方が分からない。
こうなってしまったのには自分に原因があると考え、彼女はイライラしているのだ。
少し間をおいて、かがみはもう一度携帯を手に取った。
着信履歴からつかさの名前を選ぶ。
プルルル……プルルル……
うざったい呼び出し音が、彼女の悪い機嫌をさらに損ねていく。
どうせまた留守番電話サービスへ切り替わるだろうと、電源ボタンに指を掛けたちょうどその時
「もしもし、お姉ちゃん?」
聞こえてきたのは、あの機械音声ではなく、つかさの肉声だった。
「やっと繋がった。 もう、どこにいるの?」
「エヘヘ、ごめんねお姉ちゃん」
電話越しのつかさの声は、やけに落ち着いていた。
いつものつかさなら、道に迷ったとなればもっとべそをかいているはず……。
かがみは不安の欠片も感じられないつかさの声が気になっていた。
だが落ち着いているのならそれに越したことはなく、突っ込もうとは思わなかった。
「携帯どこにしまってたの?」
「落としたと思ってたんだけど、鞄の中に入ってた」
「だから電話に出なかったのね」
やはりつかさはちょっと抜けているところがある。
かがみはそれを再認識させられていた。

「それでね、多分同じ学年だと思うんだけど……あれ?」
何かを言いかけたつかさは、急に素っ頓狂な声を挙げた。
「どうかしたの?」
「な、なんでもない」
「そう……えっと、近くに何かある?」
かがみはつかさの現在地を確かめるべく、目印になる建物が無いか尋ねた。
「んーコンビニがあるよ」
「またどこにでもありそうな……あっ」
今度はかがみが何かに気づき声をあげた。
横断歩道の向こう側に見知った人物の姿を見つけたのだ。
相手もちょうど同じ瞬間にかがみに気づき、二人は道路を挟んで向かい合った。
かがみは何故あんなところにいるのだろうと不審に思いながらも
電話を耳に当てたまま、その人物に大きく手を振った。
すると相手は右手を軽く挙げ、青になった信号を渡り始めていた。
「と、とにかく! 私が行くまでそこでジッとしてるのよ」
「うん!」
つかさにそう伝え、通話を終えた携帯電話を閉じてポケットにしまうと、
かがみは自分の傍まで歩いてきた人物へ声を掛けた。
585名無し@18歳未満の入場禁止:2008/11/17(日) 00:34:51 ID:Nd9BikmCO
※誤字修正 「着信履歴から〜」→「発信履歴から〜」
586名無し@18歳未満の入場禁止:2008/11/17(日) 00:42:21 ID:Ecmlfz6B0
>>584

「こんなところで何やってたの? キョン君」
見知った人物というのは同じクラスで、しかも自分の隣の席に座る
皆にキョンというあだ名で呼ばれている男子生徒だった。
「ちょっと探し物をな」
「へぇー何を?」
「いや、もう見つかったからいいんだ」
キョンが探していたものが何なのか気にはなったが、かがみには待っている人が居た。
探し物は見つかったと、キョンは言ったのだから……
「ごめんキョン君。 私もう行かなきゃ」
この辺りでコンビニは二軒ほどあり、距離から見てつかさの居る場所の目星は付いている。
かがみはキョンへの挨拶も手短に、妹の元へ急ごうとした。
「あ、かがみ」
そんなかがみをキョンは引き止めた。
「なに?」
「もし違ってたら……いや違ってなくても気にしないでくれると有難いんだが」
よくわからない前置きの後、キョンはかがみに質問を投げかけた。
「もしかして、かがみには妹が居るか?」
「えぇ居るわよ」
「その妹を探してなかったか?」
「そうだけど……」
キョンには自分に妹が居ると伝えたことは無かったし、今もはぐれたとは一言も言っていない。
双子としてこの世に生を受けたかがみとつかさだが、顔もそこまで似ているわけではなく、
どうして教えもしないことをピタリと言い当てたのか、かがみには不思議だった。
「それならこの先のコンビニの近くに居る。 急いでやれ、多分待ってると思うぞ」
「うん! ってキョン君が引き止めたんじゃないの」
「そうだったな」
「じゃ、もう行くね!」
何故つかさの居所まで知っているのか尋ねようともせずに、
かがみはキョンに手を振ると、軽やかに駆け出した。
「あっ、待て!」
「きゃ! ……もう、ちょっと!」
またしてもキョンに、今度は手を掴んで引き止められた。
冗談にしては悪ふざけが過ぎると、かがみはキョンに文句を言おうとした。
そうして声を上げて振り返ろうとしたとき、自分の目の前を1台の車が通り過ぎていった。
少し慌てていたかがみは、二人が話をしているとき既に変わってしまった信号を確認せず、
赤色発光ダイオードに照らされた横断歩道へ侵入しようとしていたのだ。
キョンが引き止めていなければ、間違いなく今の車に接触していた。
そう理解して、かがみは血の気が引いていくような感覚を覚えた。
「危ないぞ、気を付けろ」
「う、うん……ごめん」
キョンはかがみの肩を軽く叩くと、背を向けてトボトボとした足取りで去っていった。
しばらく硬直していたかがみだったが、信号が青になったことを知らせる音が鳴り、
一応左右を確認した後、また颯爽と駆け出した。
姉の到着を今や遅しと待つ、つかさの元へ。
587名無し@18歳未満の入場禁止:2008/11/17(日) 00:50:04 ID:2YQx0Bt50
>>586

5.言いそびれた言葉

「言いたいことも言えないこんな世の中だけどさ、親切な人って居るよね」
昼食の席で、大好物のチョココロネにかぶりついたこなたは
チョコクリームが垂れ出すその断面を、ぼんやりと眺めながら言った。
「そうだね」
「そうですね」
こなたの言葉に、一様に頷くつかさとみゆき。
そんな三人の様子を不思議そうに見つめるかがみは、
自分だけが会話に参加できていないような気がして、少し機嫌を悪くしていた。
他の三人と同じクラスでないことに不満を感じるのと同じように。
「みんなしてどうしたの?」
かがみがぶっきら棒に質問を投げかけると、話を振った張本人であるこなたが
もう一度コロネにガブリと噛み付いた後、何かを思い出すように宙を見据えながら語りだした。

「いや実は昨日ね……」
こなたは昨日の昼休みの出来事を皆に話した。
購買部にパンを買いに行った際、あまりに人が多く、危うく昼食抜きになりそうだったこと。
その時見知らぬ男子生徒が現れ、自分の代わりにチョココロネを買ってきてくれて、
更にお金まで払ってくれたこと。
そしてなにより、キチンとお礼が言えなかったことを。
「へぇ、そんなことがあったの」
「名前もクラスもわかんなかったけど、良い人だったよ」

「私も昨日の登校中なんですが……」
こなたに続いて、今度はみゆきが語り始めた。
前日の夜につい夜更かしをしてしまったが為に、ひどく寝不足だったこと。
そのせいで登校中に欠伸をして、涙が流れるのを隠していたこと。
すると見知らぬ男子生徒が現れ、泣いていると勘違いしたのか、心配して声を掛けてくれたことを。
「確かにそう思われても変じゃないわね」
「突然だったので、眠気も飛んでしまいました」

「わ、私は昨日の帰りに……」
つかさは昨日帰宅中に本屋に寄ろうと、姉のかがみと歩いていたときのことを話した。
いつのまにかはぐれてしまったこと、さらに携帯電話を落としてしまったこと。
不安に押しつぶされそうなとき、見知らぬ男子生徒が現れて、携帯を一緒に探してくれたことを。
「結局鞄の中に入ってて……」
「ホントに心配したのよ」
かがみはちょうど同じころ、つかさを探していたときの話をした。
つかさの姿が見えなくなって懸命に探し回っていたこと、
最初に電話したときには繋がらず、しばらくしてもう一度掛けた時につかさと連絡が取れたことを。
「そういえば、私も助けられたわね」
更にかがみは、その後の出来事もみんなに話した。
つかさとの電話の最中、偶然同じクラスの男の子、キョンを見かけたこと。
そのキョンと少し話をした後、急いでつかさの元へ行こうと、
赤信号を確認せずに横断歩道を渡ろうとして、危うく車に轢かれそうになったこと。
その時、事態に気づいたキョンがとっさに手を掴んで助けてくれたことを。

「……アレ?」
そこまで言った後、かがみは何かに気づいた。
「もしかしてみんなが言う『見知らぬ男子生徒』って……」
そして色々と思考を巡らせていると、
「おい、かがみ」
誰かが自分の名を呼ぶ声がして、すぐに後ろを振り返った。
そこに居たのは、たったいま自分の話の中に出てきたキョンだった。
588名無し@18歳未満の入場禁止:2008/11/17(日) 00:57:57 ID:2YQx0Bt50
>>587

「キョン君!」
「……あっ!」
キョンの姿を見たかがみは、驚いたように彼の名を呼んだ。
残りの三人はキョンの顔を確認するなり、咀嚼する口をピタリと止め、
こなたはキョンを指差し、つかさは目が点になり、みゆきは口に手を当てながら、
三人とも寸分違わぬタイミングで声を上げた。
その声に気づいていないのか、かがみとキョンは会話を続けている。
「わざわざどうしたの?」
「いや、先生から呼んでくるように言われたんでな」
「あ、そうだったの」
かがみは借りていた椅子を元に戻すと、三人の方へ向きなおした。
「ごめんみんな、私もう戻ら……どうしたの?」
もう教室に戻ると伝えようとしたが、そこで三人の視線がキョンに集中していることに気づいた。
その集中砲火を浴びたキョンは、三人の顔を順に眺め、瞬きを繰り返している。
「な、なんだ?」

「昨日はチョココロネありがとー!」
「昨日は心配していただき、ありがとうございました」
「昨日は、その…ありがとう!」

ほぼ同時に、キョンに向けて感謝の言葉を述べた三人は「え?」とお互いの顔を見合わせた。
どうして他の二人も自分と同じように、このキョンという男の子に礼を述べているのだろうかと。
やがて全てを理解したのか、何かを確認しあうように指を差し合い……
「……つかさも?」
「……ゆきちゃんも?」
「……泉さんもですか?」
自分達を助けてくれた見知らぬ男子生徒が、実は同じ人物
今目の前に立つキョンだったことに驚いた三人は、なぜか互いに笑い合うのだった。
「やっぱりキョン君だったのね……」
そんな三人の笑顔を見つめながら、ポツリと呟いたかがみは、隣に立つキョンに話しかけた。
「ねぇキョン君」
「なんだ?」
「……その内涼宮さんに殺されるわよ」
「は?」
キョンはどうしてここで、いつも自分の後ろに座る女子生徒
自身の所属するSOS団という、何をやっているかイマイチわからない集団の団長である、
涼宮ハルヒの名前が出るのか疑問に思った。
しかしかがみにとっては、キョンがそれを疑問に思うことの方が疑問なのだった。
彼女が涼宮ハルヒに対し、少々嫉妬深い女の子だという認識を持っていたからだ。
ハルヒとキョンが恋仲にあるというわけではなかったが、
かがみはハルヒがキョンに好意を抱いていることを見抜いていた。
ハルヒ本人でさえ気が付いていない事を。
「とにかく、乙女心ってやつを良く理解することね」
難しい年頃の女の子というのは、心の中に巨人を飼っているようなもので
気になる男の子が他の女子と会話をしているだけで、世界は灰色になり
その中で巨人を思い切り暴れさせることで、なんとか心の均衡を保っている。
そんな存在だと、かがみは考えていた。
「乙女心ねぇ…」
キョンは小難しい顔をして首をひねり、両手を広げる。
彼に乙女の感情が理解できるはずが無いということを、かがみは思い知らされていた。
当然かがみは、キョン自身がそのような状況を、実際に身をもって体験したことなど知る由もない
589名無し@18歳未満の入場禁止:2008/11/17(日) 01:09:28 ID:2YQx0Bt50
>>588

「あっ、それから」
「ん?」
ふとかがみは、自分だけが目的を達成していないことに気が付き、
視線を三人の元からキョンへと向け、そして少しばかり頬を赤く染めながら
前日に言いそびれた言葉を告げるのだった。

「……昨日はありがと」

高良みゆき、泉こなた、柊つかさ、そして柊かがみ
四人の感謝の言葉は、今にしてようやくその全てがキョンの耳に届いた。


「でも考えてみれば凄い偶然よね」
教室に戻る廊下を、二人は肩を並べて歩いている。
凄い偶然……昨日の出来事について語り合いながら。
「俺も驚いた。 まさか昨日ちょっと話をするなりした三人が
 かがみの知り合いで、しかもその内一人は妹だったんだからな」
「昨日の夜『ウチにお兄ちゃんが居たらよかったのに……』とか言ってたけど、そういうことだったのね」
昨夜、かがみがちゃんと閉まっていないつかさの部屋の扉を閉めようとした時
つかさは遠くを見つめるような目で『お兄ちゃんか……』などと呟き、
夢見がちな少女のように、夜空を眺めながら頬を赤らめていたらしい。
それを伝えると、キョンは頬を赤らめるどころか、気だるそうな表情になった。
「妹のお守りは自分とこので精一杯だ」
「あら、案外妹さんと仲良くなりそうだけど?」
「一緒にオママゴトしてな」
「失礼ね、絵本を読むくらいよ……それともお絵かきかな?」
つかさが傍に居ないことを良いことに、好き勝手に言い合っていた頃には
二人は既に自分達の教室のドアをくぐろうとしていた。
我が妹がキョンの妹と一緒になって遊ぶ姿や、ランドセルを背負って登校する姿を想像して
クスクスと笑うかがみの声は、つかさの耳には届いていないようだった。

「くしゅん! 風邪かなぁ?」
「誰かがつかさのウワサしてるんじゃない?」
「かがみさん達かもしれませんね」
「ま、まさか昨日の……」
「昨日? なにそれ?」
「え? な、なんでもないよ! あはは……」
590名無し@18歳未満の入場禁止:2008/11/17(日) 01:11:23 ID:Nd9BikmCO
終わりです
お粗末さまでした
591名無し@18歳未満の入場禁止:2008/11/17(日) 01:12:45 ID:GiGM4yzf0
らきすた4人娘とキョン(・∀・)イイ
これぞ正統派という感じのSSですね。
592名無し@18歳未満の入場禁止:2008/11/17(日) 01:15:41 ID:bjBQUIuE0
>>590


ところでSS投下してるのと誤字修正だとかのIDが違うのは何故なんだぜ?
593名無し@18歳未満の入場禁止:2008/11/17(日) 01:31:45 ID:Nd9BikmCO
>>590
※仕様です

今に始まったことじゃないんだけど、なんでかよく分かんないんだぜ
これは携帯だからIDは変わんないはずです
とにかくPCから投稿すると失敗しまくって
何度もリトライして投下に成功してもID七変化に……
594名無し@18歳未満の入場禁止:2008/11/17(日) 01:33:58 ID:Nd9BikmCO
自分に言ってどうすんだwwww

>>592だた
595名無し@18歳未満の入場禁止:2008/11/17(日) 07:33:50 ID:LO4gIqpxO
さすがキョン!おれたちにできない事を平然とやってのけるッ
そこにシビれる! あこがれるゥ!

どなたさんGJ!
596名無し@18歳未満の入場禁止:2008/11/17(日) 22:42:06 ID:bjBQUIuE0
過疎ってるのを良い事に俺が今から駄作を投下するぜ!
597名無し@18歳未満の入場禁止:2008/11/17(日) 22:43:10 ID:bjBQUIuE0
 何か心地の悪い夢から覚めた後、俺は最初目を疑った。夢の中で夢を見ているのだろうか、それとも歴とした現実なのだろうか。
 ただ言える事は一つ、『感無量』だ。
 その日はいつも通りの一日だった。普通の授業を受け、普通の放課後を迎え、普通に部室に来た後、普通に長門以外誰もいなくて、普通にみんなを待っているうちに眠りについていたら起きた時にこうなっていた。
 どうなっているのかって?それはだな、みんなの髪型がポニーテールになっていた事だ。

 たかがそれぐらいで、と思うかもしれない。しかし、これは結構驚くものだ。仮に、自分の周りの奴がいきなり全員眼鏡を掛け出したりしたら驚くと思う。要はそれの髪型バージョンであって、多少個人差があるとはいえいきなり皆が同じ髪型にしたら普通は驚くだろう。
 俺が起きた事にも古泉以外は目にもくれず、ただいつも通りのときを過ごしていた。髪型以外は。
「おや、ようやく起きましたか。どうです?」
 オセロの盤を手に持ち俺にゲームを勧める。俺はそれに了承しオセロを開始する。
 ちなみに、古泉の髪型はポニーテールではない。もしこいつがポニーテールにしていたなら俺は全国ポニーテール協会にいって古泉をつれて土下座しに行ってやる。「ポニーテールを馬鹿にしてすいませんでした」ってな。
 それほどまでにポニーテールに対する執着が強い、といったら変だがポニーテール萌えであるのは確かだ。以前、そのおかげで世界を救ったのだし、そのことに関しては誰も俺に対して文句は言えまい。
 あんな事は、二度と思い出したくないがな。
 そんな俺であるため、この状況は非常に嬉しい限りなのだが場所が場所なだけに、SOS団部室もとい文芸部部室であるがために、中々嫌な予感がしてならない。
「おい、古泉」
 オセロの黒丸を何処に置くべきかと思案している古泉に質問を投げかけた。
「はい、なんでしょうか」
「何であいつらは皆ポニーテールなんだ?」
 そう言うと古泉は含み笑いをし、
「そうですね。あなたのせい、とでも言っておきましょう」
 といって再び思案に戻っていった。そんなに考え込んでもお前の負けは変わらんぞ。既に盤の三分の二は雪原のごとく真っ白なんだからな。
「そのようですね、参りました」
 古泉はオセロの駒を片し始める。それにしても、俺のせいってどういうことだ?俺はさっきにも言ったとおり普通に過ごしていただけで、そんな事仄めかせた覚えもない。
 とりあえず、古泉に聞いても碌な情報を得られないと察した俺は質問対象を古泉から泉へと変更することにした。
「泉」
「ん?なんだいキョンキョン」
 部室に来ても相変わらず携帯ゲームしかしない泉は糸目の状態でゲームを一時中断し俺の方を向く。てか、ゲームするだけだったら部室に来る意味無いんじゃないのか?俺が言えた口ではないのだが。
「なんでお前らはポニーテールなんだ?」
 単刀直入に質問した。それでも泉は何一つ顔を崩さず、
「やっと気づいたかね。相変わらず鈍いネ」
 いや、起きた時から気づいていたが。
598名無し@18歳未満の入場禁止:2008/11/17(日) 22:44:02 ID:bjBQUIuE0
「ところでキョンキョンはどう思う?」
「何がだ」
「誰のポニテ姿が一番似合ってると思う?」
 泉がそう尋ねた瞬間、ハルヒと長門を除く全ての視線が俺に集まった。長門は読書を、ハルヒはネットに夢中で、その言葉などどうでもいいらしい。
 ついでに、長門もポニーテールなわけだが、こいつのポニーテールはいかにも勝手にやられました感が漂っており、少し雑になっている。どうせ泉ぐらいがやったのだろう。
「一番……ねぇ」
 そういいながら一人ひとりのポニーテール姿を見渡す。髪の長い泉やかがみは流石に似合っているな。泉は俺の方を糸目の状態で見ながら返事を待っているようだし、かがみはなぜか顔を赤らめながらもこっちを見ている。何故赤い?
 つかさもハルヒのように短いながらも頑張ってまとめた後ろ髪を俺の方に見せながら笑っている。朝比奈さんも物凄く似合っている。
 何というか、俺にとって朝比奈さんのポニーテール姿はまさに鬼に金棒である。多分、いや絶対、朝比奈さんにはどんな髪形をさせても似合うと思う。
 高良も朝比奈さんと同じように似合っている。高良の場合、髪をポニテにすると何処と無く雰囲気が変わっているような気がするが、気のせいだろうか。
 皆が皆、甲乙付け難いほど似合っており、皆物凄く期待した目でこっちを見てくる。この場合、どうしたらいいのだろうか。
 古泉に目配せをすると、古泉は肩をすくめちらりとハルヒのほうを見た。ハルヒを選んでくれとの合図なのだろう。
 だが、俺としてはハルヒ一人を褒めるのには気が引けるわけで、かといってどんな返事をしたら良いのかと迷っているわけで、
「さぁ、早く選び給え」
 と泉が急かすので俺は仕方なく答えることとした。
「皆似合ってるぞ。誰か一人なんて選べやしないさ。泉やかがみは髪が長いから似合ってるし、つかさや長門だって短いけれど可愛らしいからな。朝比奈さんや高良だってそうだ。それに、ハルヒもな」
 一応、古泉の応えに報いるためにもハルヒの名前を呼ぶだけ少し強調したのだが、それが皆にどう聞こえたかは知る由も無い。
 俺の答えに対し、泉はなぜか納得したような表情を浮かべる。
「そうかいそうかい。やっぱりキョンキョンはそうでないとネ」

 団活が終わった後、俺はさっきの事を尋ねに長門に話しかけた。
「長門、ちょっといいか?」
「……いい」
 相変わらず純度百パーセントの目をしていらっしゃる。ちなみに、まだポニーテールを継続している。
「何でお前らは急にポニーテールにしだしたんだ?」
「あなたが原因」
 やっぱり俺なのか。けど俺としては心当たりが無いんだが。
「あなたは今日、部室で睡眠を取っていた。その際にあなたは寝言を発していた」
「なんて言ってたんだ?」
「『俺はポニーテール萌えなんだ』と。それを聞いていた泉こなたと柊かがみが発端でああいう形となった」
 俺はその言葉を聴いたとき自分の中の体内温度が一気に上昇していくのが分かった。顔も真っ赤になっているだろう。瞬きも一度もせず表情も全く変えない長門が今ほど羨ましいと思ったことはない。というより、泉はともかくなんでかがみまで参加してるんだよ。
 俺は一体どんな夢を見ていたのだろうか。恐らく、いや絶対にあの事件の事なのだろう。あんな思い出したくも無いことを夢の中で思い出してしまっていたのか。どうりで目覚めが悪いわけだ。
 俺は夢の記憶が無い事がせめてもの幸いだ。一体ハルヒはその言葉をどんな気持ちで聞いてたんだろうな。
 まあ、俺としては皆のポニーテール姿を見れたからいいわけだが。

 その後もしばらくはみんなポニーテールをやめなかったのは俺としては嬉しい事か悲しい事か。ポニーテールをしてる限りは俺の寝言を覚えてるって事なんだろうからな。
599名無し@18歳未満の入場禁止:2008/11/17(日) 22:46:01 ID:bjBQUIuE0
いつものように超短編でスマン
とりあえずはお題の「全員ポニーテール」です
題は『恥と幸』で
600名無し@18歳未満の入場禁止:2008/11/18(日) 00:54:16 ID:xr61HbRKO
>>599
遅まきながら乙カレーライス

にしても静かだ…
601名無し@18歳未満の入場禁止:2008/11/18(日) 01:19:05 ID:miXDCf3M0
さすがキョン、モノローグだけじゃなく、寝言でも本心が駄々漏れですか( ゚∀゚)
602名無し@18歳未満の入場禁止:2008/11/18(日) 18:38:32 ID:e/MQ5Hf90
>>599
だいぶ遅いが乙ー
読んでて思わず顔がニヤけたぜwww
603名無し@18歳未満の入場禁止:2008/11/19(日) 20:28:14 ID:jIy4scDBO
>>599
乙もっふ
604名無し@18歳未満の入場禁止:2008/11/21(日) 04:10:18 ID:uBBzWGxVO
こなたかわいいよこなた
605名無し@18歳未満の入場禁止:2008/11/21(日) 22:05:00 ID:r8qcc51B0
果たして人はいるのだろうか
606名無し@18歳未満の入場禁止:2008/11/21(日) 22:10:15 ID:fQvfNwxj0
俺がいるぜ!
607名無し@18歳未満の入場禁止:2008/11/21(日) 22:15:32 ID:r8qcc51B0
人はいるんだな
やっぱ過疎の原因は職人不足かね
608名無し@18歳未満の入場禁止:2008/11/21(日) 22:21:04 ID:fQvfNwxj0
ごめんね、最近マジで書く気がでなくてごめんね
609名無し@18歳未満の入場禁止:2008/11/21(日) 22:34:48 ID:r8qcc51B0
いや、俺も今お題貰っといてかけてないからなぁ
皆頑張ろう
610名無し@18歳未満の入場禁止:2008/11/22(日) 01:07:22 ID:B0iRwJ9V0
絵の支援とかもほしいなあ
611名無し@18歳未満の入場禁止 ◆7SHIicilOU :2008/11/22(日) 02:17:58 ID:wsJdivUcO
てすてす
612名無し@18歳未満の入場禁止:2008/11/22(日) 02:18:49 ID:wsJdivUcO
やたー
書き込めたよー
613名無し@18歳未満の入場禁止:2008/11/22(日) 02:18:54 ID:I0Q0sX380
sageずにageるか芋けんぴ…
614名無し@18歳未満の入場禁止:2008/11/22(日) 02:22:03 ID:wsJdivUcO
あぁ、sageなんて存在忘れてたわ
615名無し@18歳未満の入場禁止:2008/11/22(日) 02:22:55 ID:I0Q0sX380
すごい…久し振りだな
616名無し@18歳未満の入場禁止:2008/11/22(日) 02:32:16 ID:wsJdivUcO
そっすね
やたらと久しぶりだ
617名無し@18歳未満の入場禁止:2008/11/22(日) 02:40:36 ID:I0Q0sX380
しかもこんな夜中に…誰もいないぜ?俺とお前の二人っきり……///





駄目だ久々に気持ち悪いカラミでもしようかと思ったが眠すぎる
また明日
618名無し@18歳未満の入場禁止:2008/11/22(日) 02:44:25 ID:wsJdivUcO
いけずぅ
619名無し@18歳未満の入場禁止:2008/11/22(日) 18:39:58 ID:n6TA//fl0
いくら久しぶりとはいえ上のやり取りを見てなんか和んじまったのがくやしい
620名無し@18歳未満の入場禁止:2008/11/22(日) 22:04:51 ID:4riLR2GYO
気持ち悪い絡み?

Don't来い!
621名無し@18歳未満の入場禁止:2008/11/23(日) 04:41:23 ID:7U9ibgPLO
>>620
ふんもっふ
622名無し@18歳未満の入場禁止:2008/11/23(日) 14:00:13 ID:0kSPT92EO
気持ち悪いとは人聞きの悪い…
愛の祭典じゃないか
623名無し@18歳未満の入場禁止:2008/11/24(日) 03:03:14 ID:HSKKlYkJO
へい、なんだか俺が晒されてるぜ!
仕方がないからなんかぉだぃとか…











やらないよ!
624名無し@18歳未満の入場禁止:2008/11/24(日) 03:04:21 ID:JF9iMBPA0
今適当に絵とか書いてるけどキャラが全く似ない件
625名無し@18歳未満の入場禁止:2008/11/24(日) 16:48:17 ID:JTG91r5o0
>>624
いいのだよ。似て無くてもうpするのだ
626名無し@18歳未満の入場禁止:2008/11/25(日) 17:55:57 ID:VgseJtQv0
ttp://night.kamaitachi.info/src/NKfile0275.jpg
誰か俺に描きあげる勇気と修正点と真ん中に入れる文字とこの二人誰だよというツッコミとその他色々を与えてくれ
627名無し@18歳未満の入場禁止:2008/11/25(日) 21:00:19 ID:q3xm0pXJ0
>>626
これキョンの左手どうなってるんだ?
あと服装と場所がそぐわないような・・・
あくまで門外漢の私見なんで参考程度にしてもらえれば


勝手なこと述べてみたけど、絵を描けない俺からすれば十分すごいと思う
完成するのを楽しみにしてます!


今更ながら>>623の晒されてるってなんの話だろ
628名無し@18歳未満の入場禁止:2008/11/26(日) 07:09:26 ID:vM9EjthiO
俺の変態発言でスレが止まったから
629名無し@18歳未満の入場禁止:2008/11/26(日) 19:20:47 ID:VilOVcQ+0
なんだいつものことじゃないの
630名無し@18歳未満の入場禁止:2008/11/26(日) 22:09:30 ID:t2ayHJYEO
>>628
しゃぶれよ
631名無し@18歳未満の入場禁止:2008/11/27(日) 00:30:38 ID:uhf2o7aW0
ttp://night.kamaitachi.info/src/NKfile0276.jpg
フゥーハハァー俺の黒歴史にまた一ページ絵を描くってのは本当に難しいぜヒャッハー


今ならまだ修正がきくのでだれか俺にさっさとテメェここ修正しろよって点を突き付けてやってくれ左手はもう隠す方向で
632名無し@18歳未満の入場禁止:2008/11/27(日) 10:56:03 ID:TqGKYymSO
ふむふむ
633名無し@18歳未満の入場禁止:2008/11/27(日) 17:19:44 ID:uhf2o7aW0
ttp://www10.uploader.jp/user/harulaki/images/harulaki_uljp00078.jpg
とりあえずこれで完成ということで
一人から回りしていたような気がするが絵なんて描いてないで過疎気味な最近SS書いたほうが良かったのかしらとか思っちゃうぜ
634名無し@18歳未満の入場禁止:2008/11/27(日) 18:07:33 ID:Kw46QMe70
>>633
GJなんだぜ
気になるのといえば肌の色が白いぐらいかな
まあ絵なんかかけない俺が言えた事じゃないんで気にするな

ついでに今からSS投下するぜ
635名無し@18歳未満の入場禁止:2008/11/27(日) 18:08:53 ID:Kw46QMe70
 夏もようやく冬との勝負に根負けし、勢力を弱めていったと思った最中、今度は冬が一気に勢力を拡大してきている。
 俺としては、秋や春といった暖かみのある季節が好きなのだが、如何せん今年は夏から冬への切り替わりが早すぎて、ついこの前まで夏服だったかと思えばもう既に冬服へとコスチュームチェンジを果たしている。
 ……コスチュームチェンジとか言ってしまう辺り、俺は泉に侵食されてきているのかもしれない。
 この時期といったら学校は文化祭という行事で盛り上っているわけで、かといって俺たちSOS団は何をするのかというのはまだ具体的にハルヒの口によって知らされてはいない。
 あいつが発する言葉の殆どが俺たちにとって無利益かつ被害を被るもののため、余り文化祭ではややこしい事はしてもらいたくないもんだ。
 余談だがハルヒはつい先月ほどに行われた体育大会では五組は女子の部のリレーでは最下位だったにも関わらず、一気に全クラスを抜きその流れでリレーを優勝するといった異例の事を成し遂げた。ハルヒの後に続いた高良や泉の見事に首位をキープしたせいでもあるわけだが。
「文化祭では映画をやるわよっ!」
 いつもの放課後、文化祭当日に二週間ほど迫ったある日、ハルヒは団長席を不意に立ち上がり、そう叫んだ。
「映画って……どんな映画にするんですか?」
 俺の代わりに高良が質問をしてくれた。
「決まってるじゃない。みくるちゃんを主人公にした映画よ」
「ひえぇ、わ、私ですか?」
 朝比奈さんはトレイを持ったまま少し震えている。朝比奈さんが主人公の映画、一体どんな物になるのだろうか。アクション?推理?それとも恋愛?何でもいいとしても最後のは何としてでも食い止めなければならんな。その相手役が俺なら話は別だが。
「ズバリ、超SFスーパーアクション恋愛映画よ!」
「ひえっ」
 ハルヒの叫び声を聞いて朝比奈さんは体を小さくする。と言うより、いろいろ混ぜすぎだろう。
 それにしても今さら映画って、あと文化祭まで二週間しかないのに撮影とかはどうするつもりだ。
「それは今から撮影しに行くのよ。ちょっと前からスポンサー探しててちゃんと見つかったし。ほら、ちゃんとカメラもあるわよ」
 そう言って鞄からカメラを取り出す。ハルヒの奴、近頃部室に来ないと思ってたらスポンサーなんか探してたのか。
「それと、主演男優は古泉君。敵役のボスが有希で、手下がかがみとこなたにみゆきぐらいでいいかしら。あと、つかさとキョンは雑用ね」
「ハルヒはどうなるんだよ」
「あたしは監督よ監督!決まっているじゃないの。ほら、行くわよ」
 ハルヒは朝比奈さんの腕を掴み、朝比奈さんは強制連行されていった。続いて俺たちもその後に付いていく事となった。

 撮影は思ったとおり順調には進まなかった。
 途中、ハルヒの願望で朝比奈さんの目からビームが出たり、咲くはずのない季節はずれの桜が咲いたりと、ろくな事がなかった。
 結局グダグダな感じで映画撮影も終了し、長門の力を借りて編集を行い、何とか人様に見せられるレベルになった。とはいっても、小学生が撮った映像を先生がうまく纏めているような程度でしかないのだが。
 一週間で撮影は終わり、残りの一週間、そして文化祭当日はする事がなく文化祭を楽しむことが出来そうだ。
 ちなみに俺たちのクラスはアンケートを取るらしい。何のアンケートなのか、そんなものを取って誰が得をするのかは知らないが、取る事になったのだから仕方がない。
 よって、俺たち五組は文化祭当日は暇なのだ。
636名無し@18歳未満の入場禁止:2008/11/27(日) 18:09:32 ID:Kw46QMe70
「文化祭当日にも何かしましょう」
 前言撤回、暇じゃなくなる。絶対にな。
「何かって何だよ」
 そう返事をするとハルヒはしばらく黙り込み朝比奈さんを向く。畏縮する朝比奈さんを数秒見つめたと思ったらすぐに閃いたような顔をし、
「そうだ。喫茶店よ喫茶店!」
「き、喫茶店なら私たちのクラスでやりますよ?」
 畏縮した状態で俺の席にお茶を置きながら朝比奈さんは言った。ついでに俺はその焼きそば喫茶の割引券を先日貰ったばっかりだ。俺はそれを丁寧に折りたたみ、ブレザーの内ポケットの中に入れている。
「喫茶店にもいろんな種類があるわ。そうね、私たちはメイド喫茶をすればいいのよ」
「おぉ、メイド喫茶ですか」
 何故その言葉を聴いて泉はテンションが上がるんだ。いや、聞くだけ無駄か。
「いいじゃん。見てみたいと思わない?かがみんやみゆきさんのメイド姿」
 泉はニヤリと笑う。メイド姿ねぇ。朝比奈さんのメイド姿は嫌というほど見たのだが(全然嫌ではなくむしろ嬉しいのは言うまでもない)、他のメンバーのメイド姿などは考えたことがなかったな。いや、恐らく見ることも不可能だろうが。
「大体、これだけの人数のメイド服なんかどうやって用意するつもりなんだ?」
 そう、ただでさえ部活と認められていないこの団体は生徒会から活動費を受け取る事ができないため、喫茶店で使うメイド服等も自前でないといけない。
「その事に関しては心配要らないわ。あたしが何とかしておくから」
 そう言うとハルヒは立ち上がり鞄を持ち、
「んじゃ今から仕入れてくるから。あんたたちはどんな感じにするか決めておきなさい」
 といって出て行ってしまった。全く自分勝手な奴だ。

「んー、どんな感じにするか、ねぇ」
 泉は糸目の状態のまま考え込む。
 俺としては普通の喫茶店でいいと思うのだが。それに、メイド喫茶なら俺と古泉は関係のない話だ。接客とか、料理を運んだりするのは女性達の役目で俺たちは料理でも作っていればいいだろう。
「さぁ、どうなるでしょう?」
 含み笑いをしてこちらを見る古泉。何が言いたい。
「いえ、思ったことを述べただけです」
 古泉は街中でしたら通り過ぎる女性が四人のうち三人は振り向くような笑顔でこっちを見る。なに、いくら考えが大分人の斜め下をいってるハルヒでも俺や古泉にメイド服を着せるなんて馬鹿なマネはしないさ。
「そうだね。それより、つかさに料理運ばせたらドジ踏んでこぼしちゃうかもヨ?」
「そ、そんなことないよこなちゃん」
「いや、つかさならやりかねないわね」
 おい泉、かがみ、よってたかってつかさをいじめるなよ。ドジ踏みそうなのは否定できないが。
「キョン君までひどいよ」
 つかさは少し気を落とす。すこし遊びすぎたか?
「冗談だよ冗談。つかさは料理の方が得意なんだし、そっちに言った方がいいんじゃないかな?」
 泉がそうフォローを入れる。確かに以前つかさの料理を食べた時があるがあれは確かに美味しかったな。
「そ、そう?また今度作ってあげるね。キョン君」
 さっきまでの落ち込みようは何処へやら。つかさはすっかり元気を取り戻したようだった。
「まっ、接客は私とかがみとみゆきさんにながもん、それにみくるんとハルにゃんでやればいいんじゃない?残りの三人は厨房行きだね」
 今思い出したが、泉はコスプレ喫茶でバイトしてたんだっけか。経験者なんだし、ここは泉に任せるべきなのだろう。
「あのう」
 朝比奈さんが力のない声と力のない挙手をする。
「私、クラスのほうの喫茶店があるのであまり来れないんですけど」
 と言えば、今度はかがみが間髪入れず、
「あ、それなら私と有希もクラスで占いをやるから、たまにしかこっちに顔を出せないわよ?」
 それが普通だろうな。俺たちのクラスは出し物が出し物なだけに文化祭当日は暇だから、喫茶店の方にずっと居れることになるが。
「すいませんが、僕も劇がありますので。ですが劇は一日に二回しかないので結構こちらに来れる事は多いと思います」
 とどのつまり、五組の連中でどうにかするしかないようだな。まず無い事だが客が多すぎたらつかさにも接客を任せてしまう事になるかもしれんな。まず無いがな。
637名無し@18歳未満の入場禁止:2008/11/27(日) 18:10:14 ID:Kw46QMe70
 翌日、ホームルーム終了と同時に教室を駆け出して行くハルヒを追う形で、泉たちと一緒に部室へと行ってみると、部室には昨日まで無かった多数のメイド服となにやら黒いスーツらしき物が掛けられてあった。
 その立て掛けられた服たちの真ん中でハルヒは一人そのメイド服たちを見ていて、長門は相変わらずそのメイド服に目もくれず本を読んでいる。
 ハルヒは俺たちが入ってきたことに気づくと目を輝かせ、
「どう?完璧でしょう。全部みくるちゃんのと同じモデルよ!」
 そういえば改めてよく見ると朝比奈さんのと同じで可愛らしいメイド服である。何処で仕入れてきたんだか。それよりも気になるのは奥の方にある二つの黒服なわけで。
「あの服は何だ?」
「あんたと古泉君の分よ。もちろん、あんたたちにも接客はやってもらうんだからね」
「男のメイド……、つまり執事だねハルにゃん」
「まっ、そんなところよ」
 おいおい、全員接客にまわすつもりか?喫茶店って何をするところか分かっているのだろうか。
「それを考えるのはあんたたちの仕事でしょう。昨日ちゃんと考えたわけ?」
 俺は昨日話し合った内容を一言一句漏らさずに言ったのだが、こいつには俺たちの考えを言ったところでその意見を聞くわけも無く、結局はハルヒの独裁政治となるのだった。意見を聞かないくせに、意見を求めるのはどうかと思うね。
「いい?私は宣伝に回るから。一日中いろいろなところ行ってチラシを配るわ」
 なんだ、お前はメイド服を着ないってか。ずるい奴だな。
「何言ってるのよ。私も着るわよ。着ないでどうやってメイド喫茶の事宣伝するつもりよ。それに映画の宣伝も兼ねないとね」
 といっているのでどうやら着るらしい。ハルヒのメイド姿があまり見れないのは見れないで少し残念だな。
 つかさ、高良は物珍しそうにメイド服を見ている。朝比奈さんので見慣れているだろうが、いざ自分が着るとなると抵抗が生まれるのは仕方が無い。
「ハッハーン。私はそんな事無いのだヨ」
 コスプレ常習者である泉を除いてな。
「常習者ってひどくない?」
 泉の発言はさておき、その後古泉、かがみ、朝比奈さんが揃った所でハルヒが一度全員で着てみようということになった。
 女子が中で着替えるため、俺たちは追い出される形になったのだが流石に廊下で着替える自信も無く、隣のコンピ研の連中の部室を借りて着替える事にした。少し視線が冷たいのはやっぱりといったところか。
 古泉は生まれながらのルックスとその持ち前の爽やかスマイルのおかげもあってかやけに似合っている。こんな執事が居たらお嬢様としては嬉しい限りだろうね。
「ありがとうございます。あなたも中々お似合いですよ?」
 何を言ってやがる。こんな中世ヨーロッパの貴族が着るような姿俺には似合わないんだよ。
「そんなことありませんよ。さて、そろそろ部室へと戻りましょうか」
 コンピ研の部員に部室を借りたお礼と俺たちのやる喫茶店には来ないように伝えておきコンピ研部室を後にする。部室へ戻るとまだ着替えが終わってないらしく外で待たされいると、しばらくしてドアの鍵が開いた。

「入っていいわよー」
 とかがみが声を上げる。ドアを開けるとそこは本当にどこかの中世ヨーロッパの屋敷のように七人ものメイドが並んでいた。
 正直、物凄い風景である。谷口がいたら喜びそうだ。
「どうよ?皆似合ってるでしょ?」
 ハルヒは胸を張りそういった。確かに皆似合っているわけなのだが、
「どうして泉はポニーテールなんだ?」
「いやぁ、この服だと纏めてないと鬱陶しくてサ。それにメイドって清潔感が大事でしょ?だから纏めておいたのさっ」
 最後の口調が鶴屋さんになったのはともかく、メイドプラスポニーテールとは俺にとっては嬉しい限りだということは黙っておこう。
「そちらもお似合いですよ」
 高良が俺と古泉の服装を見て褒める。俺はともかく、古泉はお似合いだろうな。
「いえいえ、あなたも充分似合ってますよ?」
 ありがとう。お世辞でも嬉しいね。
「んじゃ、当日はこれを着て仕事をするように。因みに、喫茶店はこの部室だと狭いからどこか適当に場所を探しておくわ」
 まだ場所も決めてなかったのかよ。というより、服装以外何も決まって無いがな。
 その後、俺たちはハルヒにメイドとしての心得を聞かされた。客に対しては常に敬語で、客より上には立ってはいけない。とかいろいろ言われたのだがあまり覚えていない。
 結局、この日一日は全員そのままの姿で過ごす事となり、着替える時に再びコンピ研の部室を借りようとしたのだが既にコンピ研は帰っており、仕方なく廊下で着替える事となってしまった。
638名無し@18歳未満の入場禁止:2008/11/27(日) 18:11:33 ID:Kw46QMe70
 文化祭当日。
 なんとか教室の確保とメニューを決めた俺たちは今フル稼働で動いている。思った以上に人が来ているのだ。
 今、この場にいるのは宣伝に行ったハルヒを除く五組のメンバーだけで、これだけの人数相手には猫の手を借りたいほど忙しい状態となっている。
「いやー、思った以上に大変だネ」
「うるさい。そんな事言う暇があるなら早くメニューを聞いて来い」
「ほーい」
 そう言って泉は客の所へと駆け寄る。泉は慣れているからいいのだが、つかさと高良は客が来たときに言う「お帰りなさいませ、ご主人様」の言葉をまだまともに言えていない。
 なので、新しい客の先導、メニューを聞くのが泉で、メニューを持っていくのがつかさ。会計が高良となっている。
 俺としてはこんな喫茶店、閑古鳥が鳴くようなものかと思っていたのだが、谷口曰く「SOS団の女子のレベルは全員Aランクを超えている」と言ったのは正しいらしく、来ている客の九割が男性客である。
 となると残りの一割は女性になるわけで。古泉目当てで来ているのだろう。あいつも格好はいいからな。そんな古泉は女性客に「お帰りなさいませ、お嬢様」と言っている最中だ。
 古泉がいなくなれば俺があんな事をしなければいけないのか。虫唾が走るな。
 俺はというと一人で簡易厨房でせっせと注文の品を作っている。女性客は少ないし、今は古泉一人に任せておけばいい。俺だって一人前に料理はできるのさ。
 朝比奈さんのクラスがやっている焼きそば喫茶にも行きたかったがこの様子ではどうやら行けそうにない。
 すいません、朝比奈さん。せっかくの割引券を無駄にしてしまって何と詫びればいいか。
 しばらくしてかがみと長門がやってきてメイド服に着替え、接客を始めた。
 かがみがつかさのポジションに入り、つかさと長門が料理をして、俺が会計に入り、高良がかがみと一緒にメニューを持っていく役割と変更した。我ながらいいバランスを保っていると思う。
 そんな良好サイクルも束の間、二人が来たかと思うと今度は古泉がいなくなり俺が古泉の役割に回らなければならなくなった。そして、例の言葉を言わざるを得なくなった。
「お帰りなさいませ、お嬢様」
 くそっ、自分で言っておいて鳥肌が立つ。というより、古泉はいないわけだし、ここに来る意味はないだろう。
 しかしそんな文句を言っても仕方が無いと腹をくくり、次の客を案内する。

「お帰りなさいませ、お嬢様」
「うおっ、キョンじゃねーの?」
「それはそうよみさちゃん。ここはSOS団の店なんだから」
 そこにいたのはかがみと長門のクラスメートである日下部みさおと峰岸あやのだった。俺とは何回か話した程度である。何でお前らがここにいるんだ?
「いやー、ちょっと柊をからかいに来たんだよ」
 そして辺りを見渡してかがみを見つけると、
「うはっ、柊メイド服着てる。似合わねー」
 と言ってかがみの方を見て爆笑している。かがみも二人の存在に気づき、笑っている日下部を見て怒りバロメーターはマックスに達したのだろうが、状況が状況だけにどうやら耐えたらしい。あとが怖いぞ。
「来た理由はそれだけなのか?」
 未だに腹を抱えて笑っている日下部とその日下部をあやす峰岸に尋ねる。
「おい、キョン」
「何だ?」
「私たちはお客さんなんだぞ。そんな対応はねぇんじゃねぇのか?」
 くっ、痛いところを突きやがる。
「なんでございましょうか、お嬢様」
 ハルヒに教えられたマニュアル通りの返事をする。日下部は再び笑いそうになっているのを必死にこらえているし、峰岸までもが少し苦笑している。今ならかがみの気持ちがよく分かる。
「そうだなー。紅茶持ってきてくれよ、執事」
「あっ、私もお願い」
 日下部の見下した態度が気に入らんが、執事と言う役柄である以上ここは逆らうのを我慢する。
「かしこまりました、お嬢様」
 そう言って厨房のほうへと逃げるように歩いていく。
「紅茶二つ」
「はーい」
 可憐な天使が紅茶をコップへと注ぐ。って朝比奈さんいつの間に来てたんですか。
「さっき来たばかりですよ。クラスのほうも落ち着いてきたので、鶴屋さんに許可を貰って来ました」
 朝比奈さんが来たとなれば俺のこの精神的、肉体的疲労も一気に回復を果たすってものだ。
「はい、紅茶できましたよ」
「ありがとうございます」
 トレイに紅茶を二つ乗せ、日下部たちの場所へ行く。
 朝比奈さんの淹れた特上の紅茶を日下部たちに渡すと、日下部たちはそれを飲み「美味しい」と賞賛し、再びメイド姿で働いている同級生を散々見て笑ったあと、会計を済ませ帰ったのであった。
 本当に冷やかしに来ただけだったのかよ。
639名無し@18歳未満の入場禁止:2008/11/27(日) 18:12:08 ID:Kw46QMe70
 ピークを過ぎ人足も疎らになった頃、再びかがみと長門、朝比奈さんがそれぞれ自分の持ち場へと帰って行った。
 五組連中だけでも人手が余る状況となっている時、古泉が劇の衣装のまま戻ってきた。
「今、取って置きの情報が入りました。涼宮さんが、体育館で何か行うようです」
 古泉は俺たちにそう告げ、体育館に行くように促す。かといってこの店を開ける訳にはいかない、と言ったわけでもなくちょうどいいタイミングで人がきっぱりいなくなったので一時閉店し、体育館へ行く事となった。
 体育館へ向かうと都合よくどこかのバンドが演奏を終えたのか、新しいバンドが機材の準備をしていた。その準備している人たちの中にいたのが、ハルヒと長門だ。
 ハルヒはメイド服を、長門は占いと映画撮影に使っている黒い衣装を身に纏っていた。
 見たところハルヒはマイクを、長門はギターを持っている。あいつらが何でバンドに参加しているんだ?
「ハルヒが請合ったのよ」
 唖然としている俺の隣に現れたかがみがそう答えた。
「請合った?」
「そ。あのバンドのメンバーが怪我か何かで出られなくなったらしいのよ。でもあの人たちのバンド全員三年生らしいから、出れなくなったら今まで練習してきた事が無駄になるから意地でも出る、って言い張ってたらしいのよ。
 でもその本人たちはとても演奏したり出来る状況じゃなかったわけ。だからとりあえず無事な人たちでもバンドをさせてあげたいって事で、ハルヒが引き受けたのよ」
 なぜかがみがそんなことを知っている?
「有希の所へ来てギター出来る?って聞いてきたのよ。有希は出来るって言っただけで後は何も追及しなかったから私が代わりに追及したの。そしたらそんな理由があったってわけよ」
 何でハルヒは長門にギター出来るかと尋ねたのだろうか。
「そう、そこよ。何で有希に頼んだのかしら。まさか有希がギター出来るなんて思わないでしょ?それにまさか出来るなんて意外だったわ。この前の体育祭でもかなり足が速かったし、有希は一体何者なのかしら」
 考え込んでいるかがみに対し、宇宙人だからなんでも出来るのさ、とは言えない。かがみたちにも知る時が来るその時までは言わないでおこう。
 そんな会話をしているうちにハルヒたちの演奏が始まった。すまないが演奏の描写は割愛させてもらう。俺もなんて言ったらいいのか分からないからな。
 一言言うなら、ハルヒの歌唱力と長戸のギターには終始驚かされっぱなしだった。以上。

 演奏が終わった後、俺たちは再び店に戻り営業を再開したがもう午後のお昼時もとっくに過ぎているため、人は来なかった。
 これが本来の姿なのだろう。さっきまでが多過ぎただけなのさ。
 ただ、午前からハルヒのドッキリ体育館ライブまでの間は沢山人が来てくれたおかげで、なんと黒字となっている。「そりゃ美女があんなにに居れば来たくなるわな」とは谷口の後日の弁だ。
 俺も朝比奈さんの喫茶店に行きたかった。
 結局その後は人が来ないまま文化祭は終了を告げ、清掃を始める。
 ハルヒはまだ来ていないので、それ以外の一年生で清掃をしていると、朝比奈さんがやってきた。
「私も手伝いますね」
 と、あまりこちらの店には出てきていないのにも関わらず手伝ってくれた。それにしても、ハルヒは何をしているんだ。お前も朝比奈さんを見習って早く来て掃除を手伝え。
 清掃が終わった直後にハルヒがやってきて全員で部室で打ち上げパーティをやることとなった。
 相変わらずハルヒや泉はテンション最高潮で暴走し、つかさたちは女の子らしく談笑をしていて、長門はお菓子を食べていたかと思えばすぐに読書へと戻っていった。
 俺は古泉といつも通り、オセロをやっていた。
「写真を撮るわよ」
 ハルヒはいきなり声を上げる。
「写真?」
「そうよ。どうせ撮るなら、記念として皆メイド服に着替えましょう」
 そういいながらハルヒはカメラを出す。俺としてはもうあれは二度と着たくなかったのだが、ハルヒに何を言っても無駄なので仕方なく外で着替える事となった。
 タイマー式にカメラをセットしたメイド服ハルヒがど真ん中に移動した後、シャッターが押された。
640名無し@18歳未満の入場禁止:2008/11/27(日) 18:12:40 ID:Kw46QMe70
 打ち上げパーティも終了し、ごみを片付け部室を出ようとする。
 時間はまだ六時少し過ぎたばかりなのだが、季節が季節なだけに外は暗闇に包まれている。
「キョン君」
 天使のようなか細い声で俺の名前を呼んだのは朝比奈さんだった。
 他の皆は既に部室を出ており、俺の後ろには朝比奈さんだけが残っていた。
「これ、私が作った焼きそばです。お店の方忙しくてこれなかったんでしょ?だから、これはその代わりです」
 そう言って俺に焼きそばの入ったパックを差し出す。俺はそれをありがたく受けとり、代金を払おうとポケットからお金を出そうとすると、
「あ、お金はいいです。もう冷めちゃっててあまり美味しくないかもしれませんから」
 と、ポケットに突っ込んだ俺の手をお金を出させないように掴み、上目遣いでこちらを見る。
 そんな頼まれ方をしても、まだ払おうとする奴がいるなら俺のところへ来い。俺がぶん殴ってやる。
 と言うわけで俺はその願いを了承し手に握っていたお金を再びポケットの中へ落とす。ポケットの中から何も持っていない手を見せると、朝比奈さんは極上スマイルでこっちを見て、
「それでいいんです。また今度、味の感想教えて下さいね」
 と言って俺に背を向け小走りで部室を出て行った。朝比奈さんの作った焼きそばなら冷めてようが美味しいに決まってるのさ。
 俺は焼きそばをこぼさないように鞄に入れ、部室を後にした。
 
 次の日からはいつも通りの部活が戻った。
 前と違う所は朝比奈さんの衣装ケースにかかってある多数のメイド服と少数の執事服、それに団長席の端に新しく写真が置かれてあるとこぐらいか。
641名無し@18歳未満の入場禁止:2008/11/27(日) 18:15:07 ID:Kw46QMe70
これで終わりです。駄文スイマセンでした
誤字脱字があれば指摘お願いします
一応お題の『執事』クリアって事で
題名は『メイクアメイド』でお願いします
642名無し@18歳未満の入場禁止:2008/11/27(日) 21:43:54 ID:uhf2o7aW0

異様な悪夢見て嫌な気分だったが癒された気がしないでも無いぜ
643名無し@18歳未満の入場禁止 ◆7SHIicilOU :2008/11/28(日) 02:15:08 ID:jVyaskArO
ふと、自分の過去の作品を見返して来て思ったんだが…













俺、…天才じゃね?
644名無し@18歳未満の入場禁止:2008/11/28(日) 02:16:25 ID:3Eb/sbnz0
じゃあ俺も天才で
645名無し@18歳未満の入場禁止:2008/11/28(日) 02:17:25 ID:jVyaskArO
やべー! 酉つけたままだった!?
646名無し@18歳未満の入場禁止:2008/11/28(日) 02:18:09 ID:3Eb/sbnz0
しらじらしいぜ変態
647名無し@18歳未満の入場禁止:2008/11/28(日) 02:48:28 ID:jVyaskArO
いや、マジな話
七誌でなく名無しとして発言したかったのに
ただのアホになってしまった








あ、いつも通りか
648名無し@18歳未満の入場禁止:2008/11/28(日) 02:56:29 ID:3Eb/sbnz0
うん、アホの子であるのに変わりない
649名無し@18歳未満の入場禁止:2008/11/28(日) 02:58:46 ID:jVyaskArO
マホ?
650名無し@18歳未満の入場禁止:2008/11/28(日) 03:00:03 ID:3Eb/sbnz0
このアホめ!
巨乳も貧乳も愛せるようになった俺に死角はないぜ!
651名無し@18歳未満の入場禁止:2008/11/28(日) 03:28:58 ID:jVyaskArO
爆乳から無乳までの俺はさらに上を行かせてもらう
652名無し@18歳未満の入場禁止:2008/11/28(日) 03:33:45 ID:3Eb/sbnz0
例え俺の守備範囲が骨壷から来世だとしてもお前は超えられるとでも?
653名無し@18歳未満の入場禁止:2008/11/28(日) 03:53:06 ID:jVyaskArO
年下にしか興味はありません!
654名無し@18歳未満の入場禁止:2008/11/28(日) 03:55:06 ID:3Eb/sbnz0
遅えんだよ!もう寝ちまったかと心配したじゃないか馬鹿……グスン
655名無し@18歳未満の入場禁止:2008/11/28(日) 04:05:35 ID:jVyaskArO
…ゴメン

ほら、これで涙を拭いて。また笑顔を俺に見せてくれるよな?
656名無し@18歳未満の入場禁止:2008/11/28(日) 04:12:17 ID:3Eb/sbnz0
きんもー☆


だめだ明日1限があったら死ぬ。具体的には殺される。けど休講だったような気もするけど芋が夜遅くに参上したせいだ。寝ないと死ぬ。おやすみ。愛してる。
657名無し@18歳未満の入場禁止:2008/11/28(日) 04:16:54 ID:jVyaskArO
ひでぇwww


そうか、残念だけど僕も君が大事だからね。
自分の我儘にこれ以上付き合わせる訳にもいかない。
学業に専念するんだよ? おやすみ。愛してる。
658名無し@18歳未満の入場禁止:2008/11/28(日) 06:12:06 ID:Glb23kj1O
なんだこの流れ
659名無し@18歳未満の入場禁止:2008/11/28(日) 08:33:16 ID:a878sMuAO
つまり、みんな女に飢えているアホのガチホモの変態ということですね☆















俺含
660名無し@18歳未満の入場禁止:2008/11/28(日) 09:34:51 ID:W07JEjRBO
なんか知らんがまとめの七誌のページが荒らされてる?
誰か復元頼む
とっとと俺がしときたいところだが帰るまではどうにもできん
661名無し@18歳未満の入場禁止:2008/11/28(日) 09:46:39 ID:3Eb/sbnz0
マジだ
なんかまっ白だ
662名無し@18歳未満の入場禁止:2008/11/28(日) 13:46:01 ID:jVyaskArO
なんと、俺に対するテロか?
663名無し@18歳未満の入場禁止:2008/11/28(日) 16:10:39 ID:3Eb/sbnz0
俺の芋野郎にたいする宣戦布告とはやってくれる…

帰ってきたら誰か既に直していてくれたらしい
664名無し@18歳未満の入場禁止:2008/11/28(日) 16:14:06 ID:lZ/BRbz70
660だけど
ちょうどついさっき帰ってきた俺がやったところだ
665名無し@18歳未満の入場禁止:2008/11/28(日) 17:34:44 ID:f5udSPGm0
なんかレベルの高い職人が多いからレベルの低い自分は見てるだけでいいかなとか思えてきた
666名無し@18歳未満の入場禁止:2008/11/28(日) 17:42:47 ID:a878sMuAO
芋の敵は俺の敵
芋は俺の嫁
667名無し@18歳未満の入場禁止:2008/11/29(日) 01:13:58 ID:24A2U3ouO
>>663
>>666


バッ、バカじゃないのあんた達!?
べ、べつにそんな事言われても嬉しくも何とも無いんだからねっ!
まったく、ほんとばかなんだから……


でも、…………ありがと
んもうっ!
668名無し@18歳未満の入場禁止:2008/11/29(日) 01:32:14 ID:21M1lWYn0
うん、きもいな
669名無し@18歳未満の入場禁止:2008/11/29(日) 09:45:22 ID:NSyMq0dGO
>>668

その言葉も快感になってきた今日この頃
670名無し@18歳未満の入場禁止:2008/11/29(日) 17:03:00 ID:ugbKm+M9O
芋たん(;´Д`)ハァハァ
671名無し@18歳未満の入場禁止 ◆7SHIicilOU :2008/11/29(日) 21:08:38 ID:24A2U3ouO
ダメだこいつら……、早くなんとかしないと……………
672名無し@18歳未満の入場禁止:2008/11/29(日) 21:57:25 ID:RH8Mif+I0
お前が言うなとはこの事か
673名無し@18歳未満の入場禁止:2008/11/29(日) 22:13:55 ID:IRwH5GcU0
>>671
で、どのあたりが天才なのか教えてくれないか
674名無し@18歳未満の入場禁止:2008/11/29(日) 22:15:36 ID:21M1lWYn0
>>671
天才の定義とその天才なお前からみた俺達を評してもらおうか
675名無し@18歳未満の入場禁止:2008/11/30(日) 00:34:39 ID:dvC+Q0zz0
芋はこれほどまでに人を動かすのか……
676名無し@18歳未満の入場禁止:2008/11/30(日) 03:11:02 ID:ZzPRksAfO
芋だからな
芋づる式に人が動くんだよ
677名無し@18歳未満の入場禁止:2008/11/30(日) 03:16:29 ID:3ZJqvbOQO
>>671
冗談はスパッツだけにして下さいよ
678名無し@18歳未満の入場禁止:2008/11/30(日) 03:22:16 ID:B5k78eM80
>>671
変態には発言権はありませんよ?
679名無し@18歳未満の入場禁止:2008/11/30(日) 04:06:50 ID:ZzPRksAfO
芋大人気だな
これがブログなら炎上で焼芋で季節感じゃないか
680名無し@18歳未満の入場禁止:2008/11/30(日) 07:03:55 ID:3ZJqvbOQO
薩摩の芋焼酎は甘くない
681名無し@18歳未満の入場禁止:2008/11/30(日) 12:03:42 ID:a6jBRLbFO
なんという変態カンフル剤
芋…恐ろしい子!
682名無し@18歳未満の入場禁止:2008/11/30(日) 17:24:48 ID:dvC+Q0zz0
芋の流れを断ち切るように投下するぜ。



『やる気の上げ方』

 二学期もそろそろ終わりを告げようとしている。
 巷ではそろそろクリスマスだとか、正月だとか言っているが、その前に学校では一大イベントが行われる。
 
 期末考査だ。
 
 こんなもの、生徒諸君にとっても先生方にとっても何のメリットもなく、点数の良し悪しだけで一喜一憂するだけと言ったどうしようもなくしょーもないイベントである。
 ちなみに大多数の人の一喜一憂に含まれる一喜は学年順位の一桁台だとか、点数が満点だとかかもしれないが、俺の中の一喜は赤点を免れる事である。
 無論、今回も期末もそうなるのだろうが、かといって格別やる気が出るわけもなくただこのテスト一週間前にも関わらず行われる活動に顔を出すのであった。

 流石に、テスト一週間前にもなると少し部室の空気が重いくピリピリしてるような気がする。
 古泉に朝比奈さんやかがみ、高良は数学のワークやらなんやらをやっていてとても話しかけられる雰囲気ではない。
 長門も相変わらず読書に耽っているし、つかさも勉強しようとノートを机に出したのはいいが、結局集中力が続かずノートに落書きをしている始末だ。
 ハルヒはネットに夢中になっている。
 では問題だ。俺の今のモノローグで出てきてない人物は誰だろうか?

「私だヨ」
 正解は俺のモノローグを読んでいたかのように発言した泉こなたである。
「いや、しっかりと聞こえてるよ?」
 何とモノローグが言葉に出てしまっていたらしい。恥ずかしい限りだ。
「そんなことより、何で私がモノローグに出てこなかったのさ」
 膨れっ面をし、俺に解釈を求める。
 この泉こなた、本来の学力なら俺やつかさに引けをとらない悪さなのだが、なぜか一夜漬けだけは上手でそれだけでテストを乗り切っているのである。
 そのため、今現在も泉は携帯ゲーム機を起動させゲームに興じている。
「いや、お前も俺も勉強してない組だからな」
「なんで?ハルにゃんもしてないじゃん」
 そう言ってハルヒのほうを指差す泉。
「あいつは勉強しなくても根っから頭がいいんだよ」
 天才とはまさにあいつの事を指すのかもしれない。博学で運動神経がよく、その上ルックスが良い。
 しかし人間とは全てを総合したらプラスマイナスゼロになると言うのは本当か否かは分からないが、あいつの奇抜で横暴な性格方がハルヒの良い点を全て無にしてしまっている。寧ろマイナスにいっているのかも知れない。
 非常に勿体無い。
「だったらつかさは?」
「はうっ」
 落書きしている所を泉に指摘されたつかさはとっさにノートを隠す。残念だが、落書きの内容は全部見えてたぞ。
 それにつかさは勉強しようと言う意欲はあるからまだマシだ。俺や泉は勉強しようとする意欲すらないんだからな。
「意欲ねぇ……。頑張った分の見返りがあるなら私も頑張れるのになぁ」
 泉は溜息混じりにそう答えた。
「頑張った分点数が上がるじゃない。それで充分よ」
 かがみが泉に返答をする。
「そんなんじゃなくってサ。何かこう……順位が何番以内だったら何か買ってくれる、見たいなさ」
「あんたはバイトしてるんだからそのお金で買いなさいよ」
「いやー、バイトの金ってあんまり使いたくないんだよネ。それに、そういう目標があったら人間何かしらやる気が出るじゃん?」
 かがみはそう答える泉を見て「駄目だな、コイツ」といわんばかりに肩を落とし勉強へと戻っていった。
「そうだ!」
 かがみとの問答を終了した後、泉はいきなり大声を上げて目を輝かせながらこっちを向いた。
 嫌な予感がするのは何でだろうね。
「キョンキョン」
「何だ?」
「もし私が今回のテスト良かったら何でもするって約束して!」
 何を言ってるんだこいつは。勉強してないくせに勉強ノイローゼにでもかかったのか?
「違うヨ。さっき言ったじゃん。人間何かしら目標があったほうがやる気が出るって。だから、キョンキョンにお願いを聞いてもらう事を目標にするのだヨ」
 なるほど、そう言う事か。だが何で俺なんだ?そんなものお前の親父さんにでも何か買ってもらったりするほうがいいんじゃないのか?
「イインダヨ。とにかく、約束だから、ね?」
 泉は顔を近づけこちらをじっと見つめる。ここまで威圧されると俺にも願いを拒否する気も失せ、渋々了解した。
683名無し@18歳未満の入場禁止:2008/11/30(日) 17:25:32 ID:dvC+Q0zz0
「こ、こなちゃんだけずるいよ」
 今のやり取りを聞いていたつかさが泉に反論をする。
「何でずるいんだ?」
 そう尋ねるとつかさは顔を赤らめモジモジしだした。
「そ、それは……と、兎に角っ!私にも約束して」
 だからなんで俺なのかとか、それよりさっきの質問に答えてくれとか言いたい所だが、どうせ聞いても無駄だろうから聞かない事にして、了承の返事をする。
 その後、続けざまにかがみ、高良に古泉と同じような事を聞いてきたのだがこいつらは元から頭が良い訳ため、その願いは断っておいた。
 それより、何で古泉まで俺に願うんだよ。それとかがみ、高良、いくらなんでも落胆しすぎだ。

 次の日からはより一層部室の空気がピリピリし始めた。
 泉とハルヒまでもが勉強をし始め、この部室に居るメンバーの中で勉強をしていないのは俺と長門だけになってしまった。
 長門は思わないだろうが、俺は非常にこの空気に居たたまれない気持ちになり、数学のワークを開き、問題に取り組む事にした。
 見たところ、つかさも落書きせずに真面目に勉強をやっているあたり、昨日の事が相当効いているのだろうか。
 泉もつかさも積極的にかがみや高良に質問をしているし、どうやら俺に願いを聞いてもらいたい気持ちは本物なのだろう。
 さて、どんな願いなんだろうね。罰ゲーム的なことをされないといいのだが。
 それにしても、ここの空気は重すぎる。このままだと圧死してしまいそうだ。
 こんなのが後いつか近く続くのか。はてさて、耐えられるかどうか。

 何とか圧死されずに済み、期末考査当日を迎えた。
 あの苦しい空気の中、必死に耐え抜き勉強した俺も今回のテストには中々の自信がある。
 少なくとも、赤点を免れる自信があるね。
 そして当の本人達はと、テストを終わった後の泉とつかさの顔を見ると自信ありげな顔をしていらっしゃる。
 あの顔は赤点を免れて喜んでいる顔ではなく、約束の順位より上である自信がある顔なのだろう。
 
 テストが終了し、返却される。
 俺も自信の通り赤点を免れる事ができ、国木田からは「今回は頑張ったね」と褒められ、谷口からは「お前、裏切ったな」などと結んでもない同盟を破られたような言いがかりをしてきた。
 一方の泉とつかさも大変順位が上がったらしく、かがみからも、黒井先生からも驚愕されるほどとなっている。
 さて、テストが全て返却された日の放課後、いつものように部室へいくと泉とつかさだけが既に来ていた。
 長門が居ないのは珍しいな。
「じゃ、私たちの願いを聞いてもらわないとネ」
 ちょっと待て、お前らが約束の順位を取れたと決まったわけじゃないぞ。
「この点数を見てもそんなことがいえるのかな?」
 泉とつかさは俺に全てのテストを見せる。無論、それは全て平均点以上を保っており、恐らく約束は果たせたのだろう。
 仕方がないと腹を括る。
「わかった。お前らの願いはなんなんだ?」
684名無し@18歳未満の入場禁止:2008/11/30(日) 17:26:06 ID:dvC+Q0zz0
「十二月二十四日を空けとくように!」
 と泉に言われ、
「私は十二月二十五日だよ」
 とつかさに言われた。
 クリスマスとクリスマスイヴに何かするのか?
「それはそのときに伝えるよ。絶対破っちゃ駄目だからね?」
 言われなくても、俺はクリスマスとイヴの日に一緒に遊びに行く相手もいないためいたって暇なのだから破るはずがないだろう。
「はい」
 とつかさは小指を差し出す。もしかしてこれは指きりげんまんをしろというのか?
「そうだよ。破らないように、ね?」
 俺も小指を差し出し指きりげんまんを唱える。それを見ていた泉とも同じ事をして二人は面向かって笑いあい、その後はいつものように戻っていった。
 多分クリスマスとイヴには何かを買わされるのだろう。それまでに頑張って貯金をしなければ。

「恋の力って凄いわね」
 読書をしていたかがみがふと俺に呟く。
「何でだ?」
「いや、アンタ気づいてないってわけじゃないでしょ?」
「気づくってなににだ?」
 かがみは溜息を一つつく。
「何かこなたたちがかわいそうになってきたわ」
 はて、どうかわいそうなのか。テストの順位も良かったわけだし、充分幸せだとは思うがな。
「やっぱりかわいそうだわ」
 そうかがみは言っている。だが実際かわいそうなのは俺だろう。
 キリストの誕生日とその前日に買い物に突き合わされるであろう俺の方がな。

 クリスマスとイヴの日にもまたいろいろとあったのだが、またそれは別の話。
685名無し@18歳未満の入場禁止:2008/11/30(日) 17:27:50 ID:dvC+Q0zz0
終わりなんだぜ
テスト前なのに勉強がはかどらなくてムシャクシャしてやった
後悔はしていない

誤字・脱字があればご指摘願います
あと、変態どもの流れを切ってすまんかった
686名無し@18歳未満の入場禁止:2008/11/30(日) 17:49:18 ID:J87pSAF/O
>>685
乙っすー。
そういやもうクリスマスまで1ヶ月切ってるんだな
687名無し@18歳未満の入場禁止:2008/11/30(日) 21:03:16 ID:9plFXOLp0
乙ー
古泉混ざんなwww


クルシミマスなんてこなけりゃいいのに
688名無し@18歳未満の入場禁止:2008/11/30(日) 21:25:35 ID:3ZJqvbOQO
>>685
乙ー
クリスマス?平日だよね。
689名無し@18歳未満の入場禁止:2008/11/30(日) 21:51:06 ID:ZzPRksAfO
シングルベール♪ シングルベール♪
芋がなく♪ 彼女がいなくて寂しいなー♪






690名無し@18歳未満の入場禁止:2008/12/01(日) 01:23:43 ID:WRzHuYnNO
キョン×キョン妹のエロってどうよ
691名無し@18歳未満の入場禁止:2008/12/01(日) 01:50:09 ID:hW+7adRsO
>>690
すごくいいとおもう
692名無し@18歳未満の入場禁止:2008/12/01(日) 05:08:02 ID:fycPnrgX0
>>690
あるとおもいます
693名無し@18歳未満の入場禁止:2008/12/01(日) 05:14:09 ID:30Il4hdbO
>>690
正直辛抱たまりません
694名無し@18歳未満の入場禁止:2008/12/01(日) 10:08:03 ID:WRzHuYnNO
わかった善処する
695名無し@18歳未満の入場禁止:2008/12/02(日) 00:04:15 ID:RhFd25LEO
>>685なわけだが
調子に乗ってみなみ書いたぜ

ttp://imepita.jp/20081201/857300

下手だし写メだから見えにくいがなんかあったら言ってくれると嬉しいんだぜ
696名無し@18歳未満の入場禁止:2008/12/02(日) 00:22:16 ID:KjVt1cdXO
>>695
気の利いたことなんて言えやしないけど
とりあえずみなみが可愛いことは再認識できた
697名無し@18歳未満の入場禁止:2008/12/02(日) 00:29:18 ID:CRDqOH3nO
>>695
かなり癒された

みなみかわいいよみなみ
698名無し@18歳未満の入場禁止:2008/12/03(日) 17:50:07 ID:hpbmRQmm0
突然思ったけどキョン達は初めてみなみに会ったとき声が長門とほぼ同じだと気がつかなかったのかな?
699名無し@18歳未満の入場禁止:2008/12/03(日) 18:16:54 ID:YXzEiVtl0
こなた「キョンキョーン。この子が私の従妹のゆーちゃん。んで、その友達のみなみちゃんだよ」

ゆたか「はじめまして。……えーと」

キョン「ああ、キョンでいいよ。よろしくな」

ゆたか「あ、よろしくお願いします。キョン先輩」

みなみ「はじめまして」

キョン「(ん?この声……)みなみちゃん、だったか。少し言ってもらいたい言葉があるんだが」

みなみ「……?」

キョン「『対有機生命体コンタクト用ヒューマノイド・インターフェース』って言ってくれ」

みなみ「対有機生命体コンタクト用ヒューマノイド・インターフェース。……でいいんでしょうか?」

キョン「ああ、ありがとう。やっぱり似てるなー」

ゆたか・みなみ「??」

こなた「確かにながもんには似てると思うけどサ。何?その対有機生命体なんちゃらってやつ。キョンキョンも電波入っちゃったの?」



こんな感じかな?
700名無し@18歳未満の入場禁止:2008/12/03(日) 18:41:30 ID:aX9UYWXZO
(●´∀`●)/700
701名無し@18歳未満の入場禁止:2008/12/04(日) 21:21:36 ID:BQEambMAO
クソスマスまでに1000いくかな?
702名無し@18歳未満の入場禁止:2008/12/04(日) 22:48:04 ID:sGdgpGhcO
過疎具合が芋がいた時とは大違いだ
703名無し@18歳未満の入場禁止:2008/12/04(日) 23:18:06 ID:TiulZLEH0
誰か俺の単位を保障してくれるならスレにこの身をささげよう!





字を書きすぎて腱鞘炎になりそうだぜヒャッハーSS最近書いてね―なチクショー
704名無し@18歳未満の入場禁止:2008/12/05(日) 00:30:50 ID:erPAYHbD0
ここで今頃こんなクロスオーバー場があることを知った俺が通りますよ
705名無し@18歳未満の入場禁止:2008/12/05(日) 00:32:55 ID:2fl4tre+0
当スレでの新規客は荒らさない限り歓迎されます。ようこそ。
706名無し@18歳未満の入場禁止:2008/12/05(日) 00:44:22 ID:erPAYHbD0
キョンの天然ジゴロによるniceboatにより周りがナイス暴徒と化す
フラクラハーレムっぷりが癖になりました。
707名無し@18歳未満の入場禁止:2008/12/05(日) 00:51:07 ID:2fl4tre+0
ナイス暴徒でちょっと吹いた
どうぞあなたも今日からSS職人へ
708名無し@18歳未満の入場禁止:2008/12/05(日) 02:06:56 ID:sA5g+S0dO
>>706
誰が巧いこと言えと
709名無し@18歳未満の入場禁止:2008/12/05(日) 13:25:27 ID:nTu/NCLYO
賑やかな日溜り
艶やかな血堪り
軽やかな死黙り

そこに佇む、素敵に不敵に詩的な影
頬には血液か涙液かもしくは他の体液が津々浦々に流るる
その伝う液体を異様に長い舌で舐め、口角を上げ、笑みの形に表情を彩る
氷上の表情を、形作る
まるで、意地のように
自分の行為の結果に対し、駄々をこねるように



710名無し@18歳未満の入場禁止:2008/12/05(日) 13:26:53 ID:nTu/NCLYO


「は?」
問う、と言うには余りにも意思の伴わない反射に近い発声。
しかしそれは俺の理解力不足や思考速度の低さを指摘するには些か無茶が過ぎる。
いや、この場合無茶と言うよりは酷であるの方が正しい、
「私は君の事、殺したい程愛してる」等と言う台詞は一般的な許容から離れた言葉で。
まだしも、自らの想い人ないし恋人の発言ならばいい、
これは比較級であって普遍性は有してないが、それでもこの情景よりはまだ"見られる"筈だった。
「な、なにを言っているんだ突然…?」
故に戸惑い、動揺、混乱。
俺は一種の恐慌、そこに陥った。
チラと教室の、誰も居ない静寂の空間の出口を確認する。
彼女と二人きりでこの場に居ることが酷く落ち着かなくさせる、逃げたいと思う気持ちが反して起きる。
そんな俺の挙動を見て。柔らかく微笑み。その笑みを型どる口で。

彼女は。少女は。歌うように繰り返す。

「私は、キョン君の事を愛してるって言ってるのよ」

殺したいほどにね。と最後に続けて、少女は、峰岸あやのは、柔和に、穏和に、
そして絶無に微笑む。
それを美しいと言うのは、思うのは簡単で
しかし少女の言葉を一メートルと離れていない距離で直接受けた俺は。
「う…、あっ……」
冗談や嘘やドッキリだったりの可能性が無い、ただの本心、本音を吐露されてると知り
言葉と言えぬ呻きしか洩らせずに。

711名無し@18歳未満の入場禁止:2008/12/05(日) 13:27:56 ID:nTu/NCLYO

「あぁでも、勘違いしないでね。キョン君の事を直接的に殺したい訳じゃないのよ?
裏切られたりしたら悲しくて哀しくて、選択肢に殺しちゃうってのがでるくらいって意味だからね?
あれね、愛しさ余って憎さ百倍の理屈なの、それくらい愛してるのよ」

なんのフォローにもなっちゃいない。
だが、今現在自分に直接的な危険が迫ってる訳ではないのは理解した。
全身から強張りを多少解いてやっとここで初めて意味の通る言葉を口にする。
「……彼氏、が居たんじゃ……、なかったか?」
「ん? あれはもういいの、もう要らないから捨てちゃった。」
あっけらかんと物品扱い、廃品扱いする目の前のあやのに再び戦慄に似た冷たさを感じる。
「本当は棄てたかったんだけどね。みさちゃんに悪いから」
クスクスと変わらぬ笑みでそんな風にぼやくあやのに俺は。俺は。
結局なにもできずに。あやのが次の台詞を言うまで呆然と茫然としていた。

「で、キョン君」

戦慄を感じる、旋律に乗せた歌声に近い細い声で

「それを踏まえて私と付き合ってくれませんか?」

俺を明に暗に酷薄な告白をするのだった。


712名無し@18歳未満の入場禁止:2008/12/05(日) 13:29:32 ID:nTu/NCLYO


「キョン君、お昼食べよ」
「あ、あぁ…、いまいく。じゃああとでな国木田、ついでに谷口」
あれから、光陰のように気付けば一週間経って、
俺とあやのが付き合っていることは互いのクラスではそれなりに公然となっていた。
圧倒的な量のメール着信や異常な束縛、嫉妬などもなく
―それはメールが少ない、また嫉妬しないと言う意味では決してないが…―
懸念していたあれやこれやは杞憂に終わり。


俺とあやのはそこそこ仲睦まじくそれなりに平穏に過ごしていた。
それは当然切っ掛けを、俺が交際を承諾した理由を忘却しさえすればの話であるが。
しかし、実際問題あの日のこと見ないでこの一週間に焦点を当ててあやのを語るならば
文句をつけようのない素晴らしい恋人だった。
昼食に食べる手製の弁当は見た目も味も見事だったし、
料理スキルをあまり持ってない俺にはパッと見では理解できないが栄養だって
小学校の給食並みにバランスがよいのだろう。
部活のことも理解して、一緒に帰れないのにも愚痴を言わず。
教養があり聡明で外見も整っている。
髪は細く柔らかく艶やかにたおやかでポニーテールもよく似合う。
713名無し@18歳未満の入場禁止:2008/12/05(日) 13:34:22 ID:nTu/NCLYO

一週間前の事が夢幻のように感じられる程に、穏やかだった。

「なに、ぼんやりしているのかなキョン君は?」
「ん…、あやのの事を考えてた」
「あら嬉しい」
言いながら、さらに密着してくるあやの。
そこで気付いたとばかりのリアクションを立てて、
唇を俺の顔に寄せて、ありかちに張り付いた米粒を舌先でべろりと生物的な動きで取り除く。
「ふふっ」
「……」
慣れた。と言うには毎度感情面を揺さぶられているが
しかし理解はした。
あやのは、そのパーソナルとして、現状付き合ってから異常さは見せていないものの
代わりとしてか、やたらと物理的な一時的な接触を積極的に行ってくる。
まだ、性的な面に及んでは居ないものの、それを時間の問題とわかる程度に。
「暖かいねぇ」
「…そうだな」
中庭、晴天下。
ぽかぽかと眠くなる日差しの下。いくつか設置されたベンチに
両端にかなりの空間を余らすほど密着する俺達。
俺の頭を預けて、肩から、肘から、腰から、太ももから、
膝から、足首から、爪先まで、徹頭徹尾密接している。
「キョン君」
「…なんだ、あやの」
「キスして欲しいかな」
そういって再び顔を寄せるあやの。
「わかった」
キス、たった一週間で。
もはや回数など数えられやしない、さもありなん。俺は結局恐ろしいまでに囚われているのだ。




自ら望んでまで
714名無し@18歳未満の入場禁止:2008/12/05(日) 13:36:13 ID:nTu/NCLYO

今日は親がいないので俺が食事を作らないといけない。
俺単身ならば、カップラーメンや焼そばで事足りるのだが
妹は俺が明らかな手抜きを行うと親にチクるので、仕方がないと言える。
「キョン君、まだー?」
「もう少し待ってなさい、箸を振り回すのも行儀が悪いから止めろ」
椅子をカタカタと鳴らしてリンリンと茶碗を叩く妹、
その行為によって先日可哀想な食器が一つ砕けた事を忘れてはいけない。
「ほら、出来たぞ愚妹よ」
「わぁい!」
妹は暴言を暴言と気付かない優れた脳をお持ちだった、
俺はそんな妹を眺めつつ、一つの大きな皿に青椒肉絲をどっかりと盛る。
帰ってきた親の分も含有している事を差し引いても中々の量だった。
715名無し@18歳未満の入場禁止:2008/12/05(日) 13:37:20 ID:nTu/NCLYO
「いただきます!」
「いただきます」
箸を持ったまま両手を合わせてから、茶碗とおかずが盛られた皿の間で
素早く妹の箸が行き来する。あっという間に妹の茶碗は青椒肉絲丼になる。
「……」
俺は、まぁ注意する義務を放棄して代わりにテレビをつける。
義務を放棄しても依然権利は握ったままの俺。

『―高校で、盲洩夫婦さんが包丁で首を刺されて死亡した事件で
県警は盲洩さんの交際相手である女生徒を殺人、死体遺棄等の疑いで書類送検する見通しです』

チャンネルを回す手を止めた。
繰り返し頭の中で反芻し理解する。
なんて、本当になんてタイミングで、
「キョン君、どうしたの? なんか変な顔ー」
妹がそう言って顔を覗き込んでくる、
キョン君、呼び方の所為か余計に思考が進む。

「キョン君大丈夫?」


「……あぁ」
716名無し@18歳未満の入場禁止:2008/12/05(日) 13:38:04 ID:nTu/NCLYO







俺とあやのはクラスが違うため当然教室も違う
それは期間の短さも相まってるのかも知れないが
上記の理由故に一緒に登校してきた事に冷やかしを食らうことも過去にはなく

だからこれは初体験に相成るのだろうかと、
俺は廊下の窓から寒風を受けながら徒然と思うのだった。

まぁこれを冷やかしや野次の類いと同一視していいものか、まだ俺には判断しかねるのだが……

717名無し@18歳未満の入場禁止:2008/12/05(日) 13:39:02 ID:nTu/NCLYO


今朝、俺は家から学校に至るまでの道程の途中であやのと合流、
あやのと自転車二人乗り(違法)にて登校。
その合間に交わした会話はなんの変哲もない他愛の無いもの。
今日の授業とか、今日の分の弁当の中身とか、
昨日、妹に付き合って夜中までマリオカートをやったこととか、
日下部が柊もあやのも昼になるとクラスからいなくなるため寂しがってることとか。

一秒後には忘れてるような軽い世間話を訥々と、話していた気がする。
だがそれも例の坂に差し掛かると俺は会話に割く酸素がなくなるため中断し。
「がんばがんば!」
と、女子の制服の性質上横向きに座るあやのは投げ出した脚を揺らして
落ちないようにたちこぎ真っ最中の俺のベルトに指をかけて応援。
返すことはできない受けるだけのそれを背に坂を登り続け
あやのを校門で降ろしてから
普段は坂下の駐輪場に停めてるので坂をもう一往復する分の燃料はない俺は
教師陣にバレない、そして窃チャされない場所を探し
そこに自転車を無断駐輪(迷惑行為、減点一)してお互いの教室に向かって、

彼女に捕まった。



718名無し@18歳未満の入場禁止:2008/12/05(日) 13:39:59 ID:nTu/NCLYO

窓の外は見慣れたをさらに通りすぎて見飽きた一辺倒な風景。
それに背を向けるようにして俺と坂中はやや間隔をあけて隣り合う、

まだ、授業が始まるには間がある。

「最近、どうなの?」
なにが
「んと、……調子?」
いや、疑問形で寄越さないでくれ
「ほら、キョン君この所教室にいることが前に増して減ったし」
増して減ったとはこれ以下に。
だが確かに部室で会うハルヒや、付き合いも結構長く仲の良い国木田と谷口以外で、
クラスの人間と雑談に興じる機会は減ってるのかもしれない。
元から大して無かったことと毎日姦しく話している女子高生の目線、
これらを考えるとそれは皆無とも言えるのかもしれない。
「……まぁ、いいんじゃないか? 少なくとも悪くはないな」
「ふぅ、うん?」
チラとしかし露骨にこちらを窺う坂中、なんだろう、
ハルヒにでも偵察任務、もしくは動向調査を授かったのだろうか、
それはあまり坂中のキャラに似合わない仕種だった。
719名無し@18歳未満の入場禁止:2008/12/05(日) 14:01:17 ID:nTu/NCLYO
「ま、いいのね。仕方ないと言えば仕方ないしね、交友関係の九割を
女子で埋めてるキョン君は彼女さんの手前一人にならざるを得ないもんね?」
 俺は屈託のない笑みで悪意のない発言に苦笑いを浮かべて、
……でも結局一瞬で、脳裏に浮かんだ情景に掻き消された。

 いや違う、浮かんじゃいない、そもそも沈んでない。常に表層にはそれがあった
あの時から欠片も霞むことなく俺はあの情景をリピートし続けている。
あの日からいままでのどこかでもし俺が死んで、俺の網膜が移植されれば
間違いなく、まごうことなく、あの柔和な笑みが、穏和な表情が、
自動的に再生され、移植された相手を苛む事になるだろうと言えるほどに。

「キョン君大丈夫?」
 別に叫びだしたり呻きをあげたり頭を抱え込んだ訳じゃない、
にもかかわらず坂中は本気で俺を心配げに見上げてきていて。
その純朴な瞳がまたもなにかを喚起させそうで俺は咄嗟に顔を背ける、
坂中の、息を飲むような声が聞こえ。
視界の端に明らかに傷ついた様子の坂中が見えたのだが、しかし俺はそれに取り合うことはなく
結局鐘が鳴り担任教諭が来たところで若干、
しかし確実に気まずい雰囲気の中俺達は別れた。
720名無し@18歳未満の入場禁止:2008/12/05(日) 14:04:11 ID:nTu/NCLYO


 …まったく、これでは雑談参加率がさらに低下の一途の予感だが、
まぁ、仕方ない、坂中の発言はいささか的外れではあったが
しかしあながち間違ってもいないのだし、
どんな形であれ俺はあやのと付き合ったのだから
確かに他の人間関係は手抜きになってしまう。
俺はある程度の終末が見えるまでは
あやのの全てに付き合わなくてはいけない、徹頭徹尾全てに
狂おしい愛と、絶対的な追従の。
俺とあやのの恋愛契約。

 いまはまだ、準備期間なんだろう。
仲のいい初々しい恋人同士の構築、周囲の認識の浸透。
いわば書類が通り、査定にかけられてる段階。




 あぁ、全く素晴らしい、
醜くも美しい。
儚くも賢しい。
辛くも苦しい。

気高くも穢らわしい。


この世界にどうか祝福を
721名無し@18歳未満の入場禁止 ◆7SHIicilOU :2008/12/05(日) 14:07:13 ID:nTu/NCLYO
……まぁとにかく、うん
そういう感じで
さるは怖いね
722名無し@18歳未満の入場禁止:2008/12/05(日) 19:30:00 ID:EjEWFNeoO
放置プレイ乙
723名無し@18歳未満の入場禁止:2008/12/05(日) 20:20:47 ID:9i0ykseo0
平日だったから仕方あるまいなどと言い訳してみる

>>721
乙ー
正直七誌が携帯から投下するとは予想外だったぜ


あやの怖いよ〜
724名無し@18歳未満の入場禁止:2008/12/05(日) 20:34:59 ID:lTT9XyZs0
>>721
七誌のssってずいぶんと久し振りじゃないか。待ってたよ
725名無し@18歳未満の入場禁止:2008/12/05(日) 21:35:44 ID:9i0ykseo0
そうだ、重要なことを忘れていた
>>709-720にタイトルがあれば以下略


あとそろそろ次スレの季節ですね
726名無し@18歳未満の入場禁止:2008/12/05(日) 21:58:09 ID:Gdq2GyhGO
芋も書いたわけだしあやのの長編が欲しくなってきたな
727名無し@18歳未満の入場禁止:2008/12/05(日) 22:09:18 ID:ni3JdOZGO
>>726
まとめのこと?
728名無し@18歳未満の入場禁止:2008/12/05(日) 22:26:27 ID:nTu/NCLYO
分類が曖昧だから、短編と長編じゃなくて
単発と連載にしたらどうかね?


題名ね、『無我霧中』 ないし『無身夢愁』

しかしあまり慣れないベクトルの内容だった
729名無し@18歳未満の入場禁止:2008/12/05(日) 23:42:30 ID:9i0ykseo0
あやののページ、確かにそろそろ作ってもいいかもねー

>>728
ん? ないしということは『無我霧中』 または『無身夢愁』 ってことか?
俺に選択権を渡されても困っちまうさ


そういや確かに曖昧だな、まとめの分類
一応7〜8レスくらいを境にしてはいるが
730名無し@18歳未満の入場禁止:2008/12/05(日) 23:50:14 ID:CrEgarNl0
>>729
だったら結局はあやのの長編は二つだけになるな
確かに芋の言うとおりにした方がいいのかもしれない
731名無し@18歳未満の入場禁止:2008/12/05(日) 23:52:28 ID:UsjC8IT5O
>>721
愛してる
732名無し@18歳未満の入場禁止:2008/12/06(日) 04:23:12 ID:JDsKzhDYO
>>731
あ、あのぅ……。こ、困りますよぅ…。
733名無し@18歳未満の入場禁止:2008/12/06(日) 06:27:24 ID:yohMEj2w0
おおきもい きもい

さて準ヒロインというか出したいキャラを二人か三人ほど↓
734名無し@18歳未満の入場禁止:2008/12/06(日) 10:30:37 ID:q58KDDo9O
黒井先生
735名無し@18歳未満の入場禁止:2008/12/06(日) 11:16:25 ID:JDsKzhDYO
桜庭教諭
736名無し@18歳未満の入場禁止:2008/12/06(日) 11:31:45 ID:eYiqvmHZO
橘京子
737名無し@18歳未満の入場禁止:2008/12/06(日) 17:39:00 ID:JDsKzhDYO
そこは流れ的に保険医先生を連れて来るだろ…JK
738名無し@18歳未満の入場禁止 ◆7SHIicilOU
>>729
そういや、いまさらだがタイトルは゛『無我霧中』ないし『無身夢愁』゛
フルで











ってか実はまだ続きがあって長すぎるから途中で投下したら
切りがいい感じになったなんて言えないよなぁ