ハルヒ「ちょっと!かがみ!」☆

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889抜いたら負けかなと思っている ◆qX1JPEBqE2 :2008/04/08(日) 00:28:43 ID:AkaCN4OnO
みなさんこんばんは。
すっかり遅くなりました。すみません。
『吊り橋』の続きを投下したいと思います。


-22-


「今日もつかさは休みなの」
朝、会ったかがみの第一声がそうだった。
少し残念だったが、仕方ない。私はかがみと一緒にバスに乗り込んだ。
いつものようにアニメやラノベネタの話で花を咲かせる。
教室ではみゆきさんも加わり、花は一層広がる…はずだった。
教室に着くと同時にかがみとハルにゃんが目を合わせた。途端に周りが凍ったようになった。
少し寒気がする。この2人の間には……いたくない。その気持ちからか、私は思わず2人から引いていたようだ。
気づくと、みゆきさんも隣にいた。何も言わないが、何が言いたいかはよくわかる。そんな顔だった。
しばらくして、かがみは鼻を鳴らして教室を出ていった。
一体何があったんだろう。
私はハルにゃんに理由を聞こうと思ったけど、ハルにゃんから出るオーラに負けて、聞くことは出来なかった。
放課後になり、私とみゆきさんはキョンキョンと一緒に部室に行くことになった。
かがみは今日もつかさの看病をするんだとか。偉いもんだねぇ。
部室に着くと、ハルにゃんとみくるちゃんが既に来ていた。
でも何か様子がおかしい。
みくるちゃんは俯いてしょんぼりとしている。
ハルにゃんは対照的に怒っているようだ。
みゆきさんもキョンキョンも「何事か?」という表情でポカンとしている。
そうしている私達にハルにゃんは声をかけてきた。
「あら、ちょうどいいわ。みゆきちゃん、ちょっとこっちに来なさい。それと…キョンとみくるちゃんは出ていって」
ハルにゃんがそう言ったと同時に、みくるちゃんが立ち上がり、キョンキョンの腕を取って出ていった。
みくるちゃんはえー、キョンキョンは何か言いたげだったな。
そんな感想を考えているとハルにゃんが「ほら!こなたも手伝って」
と言ってきた。
見ると、みゆきさんがセーラー服を脱がされそうになってた。
「涼宮さん、やめてくださ〜い」
みゆきさんが黄色い声をあげる。
「ちょ、ちょっと何してんのさ」
私は一応、止める側に立つ。
「決まってるでしょ、みゆきちゃんにメイド服を着せるのよ」
「……ああ、なるほど。OK」
私はすぐに納得、了承し、みゆきさんの着替えを手伝うことにした。
「泉さんまで…やめてくださ〜い」
「ごめんね、みゆきさん」
そう言って私はみゆきさんのスカートのホックを外した。
890抜いたら負けかなと思っている ◆qX1JPEBqE2 :2008/04/08(日) 00:31:24 ID:AkaCN4OnO
しばらくして。
高良みゆきメイドが誕生した。
「うう…涼宮さん、泉さん、恥ずかしいんですが…」
「そんなことないわ。とても可愛いじゃない」
「そだよ、みゆきさん。もっと自信を持ちなよ」
「で、でも…」
みゆきさんは顔が赤くなっている。だけどまたそれが萌えるんだよね。
「さて、これをキョンに見せないとね」
このハルにゃんの言葉に私は違和感を持った。何だろう…?
だけど、ハルにゃんの声で考える時間はなくなってしまった。
「もう入って良いわよー」
その声に反応してガチャリとドアが開く。
「おい、ハル…」
と言いかけたその口がそのまま開く。キョンキョンだ。
ここでも私は違和感を覚えた。何だろう。
「どう?キョン。なかなか似合うと思うじゃない?やっぱりみゆきちゃんは歩く萌え要素よね」
私は全面的に同意する。
「ああ、なかなか似合ってるな」
とってつけたような返事をするキョンキョン。
続けてキョンキョンは話し出した。
「それとハルヒ、今日はもう帰っていいか?」
「あら、どうして?まさか、みくるちゃんとどっか行くとか?」
「違う違う、実はシャミセンがまた病気でな。病院に連れていかないといけないんだ」
「また?シャミセンって意外に病弱ね」

シャミセンって…確かキョンキョンが飼ってる猫だっけ。
…そっか、違和感はこれか。キョンキョンが焦ってるのか。
「でも、そういうことなら仕方ないわ。その代わり、明日は絶対休まないこと!」
「ああ、分かったよ。それじゃな」
キョンがこっちも見てきたので、私も挨拶することにした。
「…あ、さよなら」
みゆきさんに先に言われてしまった。
「またね、キョンキョン」
キョンキョンは軽く片手を挙げると部室を出ていった。

「それにしても本当に良いわねぇ。みゆきちゃんのメイド姿」
ハルにゃんはほれぼれとした声を出す。
「本当に良いねぇ」
「そ、そうですか…?」
「いやぁすばらしいよ。かがみんやつかさもきっと誉めるよ」
そう言った瞬間、ハルにゃんの表情が変わった。笑いから憮然へと。
「…?どうしたの?ハルにゃん」
「……出さないでちょうだい」
「え?」
「その2人の名前を出さないでちょうだい!」
いきなり出した大声に私もみゆきさんもしこたま驚いた。
891抜いたら負けかなと思っている ◆qX1JPEBqE2 :2008/04/08(日) 00:46:32 ID:AkaCN4OnO
「ど、どうされました?涼宮さん」
「そ、そう。いきなりどしたのさ」
「あ、ゴメン…」
それだけ言うとハルにゃんは珍しくしおらしい顔をしていた。

それからの部活は重い空気が流れていた。
私はみゆきさんとオセロ(私が3戦3敗)、ハルにゃんは適当にパソコンをいじっていた(ネトゲっぽかった)だけなのに、なんとも言えない重圧感がそこにはあった。
そういえば、今日はみんな来ないなぁ。
何かあったのかな?

日も落ちてきた頃、ハルにゃんの解散宣言により私とみゆきさんは帰ることにした。
帰りの電車の中、私は疑問をぶつけた。
「ねえ、みゆきさん」
「どうしました?泉さん」
「……今日のハルにゃん、随分変だったよね?」
「ええ…そうですね。朝比奈さんに対する態度、私に対する行動、『かがみ』、『つかさ』の言葉に対する反応…確かにいつもとは違う様子でした」
「一体、ハルにゃんはどうしちゃったんだろう…」
「もしかしたら、かがみさん達と何かトラブルでもあったのではないでしょうか?」
「そういえば、今日は2人とも仲が悪かったっけ」
「何かあったのかもしれませんね…」
「つかさのことかな…」
「さあ…そこまでは…」
そこで会話は途切れた。
892抜いたら負けかなと思っている ◆qX1JPEBqE2 :2008/04/08(日) 00:47:03 ID:AkaCN4OnO

2人に何かあったのか。
もしかして私達は何か大きな事態に巻き込まれているのか………。
漫画かアニメの観すぎなのかもね。
少しは冷静になろう。
私はみゆきさんと別れ、家路に着いた。
明日もきっといつもの一日が始まるよ。
つかさが学校に来て、かがみんとハルにゃんは機嫌を直して、みくるちゃんがメイド服を着て…。

だけど。
そんなことはなかった。
そればかりか、事態は悪い方へと進んでいった。
しかも。
私のせいでー。
893抜いたら負けかなと思っている ◆qX1JPEBqE2 :2008/04/08(日) 00:48:01 ID:AkaCN4OnO
今回はここまでです。
感想、批判など何かありましたらどうぞ申しつけ下さい。
894抜いたら負けかなと思っている:2008/04/08(日) 01:24:37 ID:jgDknVmUO
>>893
乙でした。
ホヤホヤユカイな状況を投下で打ち破っていただきありがとうございますw
895抜いたら負けかなと思っている:2008/04/08(日) 02:39:16 ID:qGf7v9k+0
いまから、この土砂降りの中新聞配達に合羽着て行く俺になにか一言

>>888
いってる意味がわかんないんです ><
896抜いたら負けかなと思っている:2008/04/08(日) 10:29:09 ID:mfVddLE9O
>>895
………ユニーク
897抜いたら負けかなと思っている:2008/04/08(日) 16:44:37 ID:nbk6ZVgf0
>>694酸素〜!


昨日キョンがダブる夢見た。
誰かSSにしてくれ
898抜いたら負けかなと思っている:2008/04/08(日) 16:45:28 ID:nbk6ZVgf0
あ、↑ミスった
>>893
899抜いたら負けかなと思っている:2008/04/08(日) 18:23:01 ID:ROREMgW90
布団で全身を掛け布団に埋めて、放課後を思い出す。
…何で言った?……いいじゃないか。
900抜いたら負けかなと思っている:2008/04/08(日) 18:23:23 ID:ROREMgW90
言わないともう何も手がつきそうにないくらい日増しに膨らんでいくんだ。
見ているだけ、近くに俺という存在があるだけで幸せだったのは入学数ヶ月程度だけで。
いつからか俺は好きになっていた。否、自身の気持ちに否定的だったのかも知れん。
木の下や体育館裏、そんなものはよくあるシチュエーションではあるのだが、俺は二人きりで話せれば良かった。
廊下、誰もいない廊下だ。彼女以外。
彼女が一人で重そうにしてたから、何気なく手伝ってたんだ。
知り合いで、しかも女子だ。他に人目が無いなら、別に困る事じゃない。
「ありがとう」
これを言われた時、もう既に俺は理性がおかしくなっていた。
職員室で、担当の教師の机に2つのプリントの山を置いて、一礼して教室を出る。
二人きりというのはこの時しか無かったと思ってる。
次を待てば、いつになるか解らない。
言うか言わないか、2つの気持ちが葛藤していた。
自然に拳が固まってた。
隣で彼女は笑っていた。嬉しそうに。
それだけで充分…そんなワケなかった。
やる事を終えて、溜め息を吐く彼女も好ましい。
これを他人に言えば「変態だな」と言われるだろうな。
恋は盲目、これの意味がよく解る。
さっきまで話してた世間話をもう覚えていないんだ。
「柊」
901抜いたら負けかなと思っている:2008/04/08(日) 18:24:07 ID:ROREMgW90
「ん、何?」
腕を上に伸ばしながら彼女、柊かがみは振り返る。
「あ、あのな…」
胸が高鳴る、今自分が言おうか悩んでる時間はどんなものかも計り知れない。
体内時計が狂ってる。助けてくれ。
口が開いたままになってる。
あんだけハルヒに慎ましく「凡人たる我々は」とか説いてた俺という人格はもういないのか?
あの冷静さで言わせて貰いたいね。
誰だ、"恥じらい"なんつー感情を導入した神様は。
早くしろ、彼女は首を傾げてるぞ。
「その…」
出ろ、声!頼むからっ!
「どうしたの?キョン」
頼むっ!俺の声帯、活動しろ!
俺は後ろに回した左手で思いっきり太腿を摘まむ。
「いっ!」
声が出た!
「ひ…柊っ、…俺…お…お前の事が、す、好き、だ」
言っちまった。
「ふー……… へっ!?」
大きな目を更に見開く。ああ、可愛いな。
「…すまん、自己満足かも知れないんだが…、今言った通りなんだ」
後付けするのは良くないかも知れないが、性格上の問題だから仕方ない。
「え、あ、あの……」
柊は次第に頬を紅潮させて
「〜〜〜!!!」
俺に背を向けて走り去ってしまった。
追いかける気力なんか無いさ。言うのに帰る為の体力しか残してない、さ。
「ははっ」
何故か軽く笑えて来た。
そりゃそうだよな、あれだけ谷口も騒いでたんだ。彼氏がいてもおかしくねぇよな。
――言えて満足、と思っておこう。
壁に凭れ掛かって、暫く振り返る。
恥ずかしさに頭抱えて声にならない叫びをあげた後で、家に帰った。

    ―――という所まで振り返って悶えた後、俺は眠るコトにした
902抜いたら負けかなと思っている:2008/04/08(日) 18:24:43 ID:ROREMgW90
翌日、ばったりと柊と接する事は無かった。
が、俺が何の気も無しに柊を見ると、俊敏に目線を逸らされてる気はする。
仕方ないか。
「俺、柊かがみに告白する事にしたんだ」
谷口は授業合間の休み時間にこそっと言って来た。
どうでもいいが国木田は今日欠席だ。
「ほぅ、また何でだ」
因みに谷口曰く、柊はAAAランクらしい。何処までランクがあるのか気になるね。
「AAAの後はSになるんだぜ? …ってそんな事はどうでもいい」
谷口は一回、教室の対角で泉こなた達と話している彼女に一目やってから顔を近づけて来る。
「調べたんだが、今彼女に彼氏はいないらしいぜ」
少し昨日の件で引っ掛かりを感じたが、無表情を装う。
「で、だ。もう俺は我慢出来ん」
こいつは外に発するタイプの俺か。
「実は今日、靴箱に手紙を入れて来た」
「…………は?」
「だから、今日、校舎裏に来てくださいって手紙をだな」
「お前バカか…、怪しい野郎からの手紙と認識して来なかったらどうするんだよ」
「大丈夫だ、ああいうタイプの女は絶対来る」
何故か親指を立てて、勝ち誇っている。
もう告白OKだと思っているのか。喜ばしい野郎だ。
「明日手を繋いでやって来てるの見てハンカチでも銜えてろよな!」
教師が教室に来た所で谷口が去り際に言ったセリフで解った。
バカじゃないなアホなんだな、と。

俺的解釈で、バカとアホの区別を語らせて貰おう。
まず、"バカ"
これは、学力的な衰えをさしていると思っている。
馬と鹿には失礼だが。
そして、"アホ"
これは、考えがトんでいってしまってる人だと思っている。
天才的な発想はアホの発想、そんな風に思っている。
認められれば天才、卑下にされればアホ。世知辛い世の中だな。
似たように"ボケ"が存在するが、これは的外れな回答返事をする時に用いるんじゃないかね。
あと、なんかあったっけ?昨日の事で頭はすっきりしたんだが…。
あ、"マヌケ"だ。
こいつは普通にぽけーっとしてる奴を示すんだろう。
従って、今授業にるんるん気分でいる谷口は"マヌケ"ではない。
結果として教師に当てられて答えられなかった点では"バカ"になるんだろうけどな。
903抜いたら負けかなと思っている:2008/04/08(日) 18:25:06 ID:ROREMgW90
そんな考えをして、気付けば放課後だ。
谷口はもう教室にいない。
さり気無く谷口に「いつ言うんだ?」と聞いてみれば「放課後、もっと言えば4時半だ」
今日の時間割を頭で思い浮かべて、SHR終了から30分ある事を知る。
俺は放課後突入してもゆっくりと机に頭を置いて、緩い日光を顔で感じていた。
耳は働いていて、泉や柊、高良の会話を聞き取っている。本当に現れるのかね。
泉は相変わらず、エロゲがどーとか教室で話している。面白いのか?エロゲって。
高良も知的な会話を日常会話の中に入れて言ってる。聞こえても字が思い浮かばん。
「っと、ゴメン」
柊の声だ。
「今日私用事あるんだ。じゃあねっ」
「そーだったのか、ばいにー」「では、また明日」
柊が急いで教室を出る姿をイメージしてから、俺も腰を上げる。
「帰るか」
さり気無く言ってみる。まぁ反応する奴はいないんだが。
国木田もいれば面白い事になってただろうな。というか、面白そうに行くだろうな。
明日報告してやるか。
教室を見回せば、案の定柊はいない。泉と高良も帰ったのかいない。
俺は少し早歩きで校舎内を歩く。

俺が校舎裏が見える所に来る頃には外は蒲色に照らされていた。
陽光は俺の後ろから差している。
フットサルがぎりぎり出来るくらいの空間に人影が2つ。
言わずとも柊と谷口だ。
しかし、柊2日連続とは…。
「俺、お前の事が好きでした!付き合って下さい」
谷口が思いっきり頭を下げる。
904抜いたら負けかなと思っている:2008/04/08(日) 18:26:05 ID:ROREMgW90
「……なんかの罰ゲーム…とかじゃなわよね?」
柊が半歩下がる。谷口は顔をあげてクエスチョンマークを浮かべている。
すまん、俺も多分谷口も本気なんだよ…
「え? いや、そんなんじゃないぞ?俺はお前が…」
「……えと…ご、ごめんなさいっ!」
柊が先の谷口に負けないくらい頭を下げる。
谷口は硬直して、呆けてしまった。
「あ、あのね…私」
もう谷口の視線は柊の頭上にあるじゃないかね。
柊は谷口の足元くらいに目を落として、手をもじもじさせている。
とりあえず俺はまだ陰に立ち尽くす。
「私、そ…その、好き、な、人がいて…」
ああ、だからか。……うん、びっくりさせてすまん、柊。
「う…うそだ……」
谷口は勇者に負かされたラスボスみたいに変に呟いている。
そのまま、膝が折れて地面に倒れ込む。
「ほ、ホントなんで……ってへっ!?……た、谷口?」
ああ、もう死んでるじゃないか。俺が見ててよかったな、っと。
俺は陰から姿を現す。
「すまんな、柊。俺がそいつは片付けておくよ」
「へっ!?きょ、キョン?…聞いてたの?」
柊は俺から2,3歩後退する。
「ん、ああ。すまん  よっと」
俺は構わず谷口の方へ駆け寄り、脇の部分に手を差して持ち上げる。
「おーい、谷口ー?」
返事がない、既にしかばねのようだ。な。
「そんじゃあな、……言っておくが俺もコイツも自分の気持ちで言ったんだっつーのを解っててくれ」
そのまま谷口を背負い、校舎裏から去った。
905抜いたら負けかなと思っている:2008/04/08(日) 18:26:50 ID:ROREMgW90
とりあえず昇降口の隅に寝かせておけば邪魔にもならんだろう。
付箋紙で『起こすな』と書き、それを谷口の額に貼って、俺は帰路を歩む。
「ちょっ…ねぇキョン!」
校門を出ようとした所、柊が後ろから呼び、俺の方へ来る。
「ん、どした?谷口ならもう大丈夫だぞ?」
「そうじゃなくてっ」
柊は胸に鞄を持ってない方の手を当てて、深呼吸する。
「えっと、昨日逃げちゃってゴメン…」
昨日のアレがフラッシュバックする。
柊が途端に踵を返し、廊下を曲がって行く所。
「ああ、別に。急に言った俺が悪いんだ」
「そっ、そうよ。急に言って来たから…」
「盗み聞きしてて何だが、好きな人がいるんだもんな」
校舎の方から教師が車でやって来る。
俺達は端っこに寄った。
「そうよ、私には好きな人が……」
「そういうのは言う前に知っとくべきだったな。悪い」
黒光りする車が低いエンジン音を鳴らして通り過ぎて行く。
「わ…、キョン、アンタが好き、なの…」
俺の後ろで反射した射光が柊の頬を赤らめている。…いや、違うか。本当に…。
「私の好きな人ってのは…キョン。アンタ、よ」
「……へ?」
「だーかーらー、ずっと私はアンタが好きだったって何度言わせればっ
    昨日アンタが手伝ってくれた時も嬉しかったわよ
    しかも、ただでさえ昂ってた気持ちをアンタが告白するもんだから…」
その後は、俯いて小さく呟いてるから聞こえなかった。
「…解ってるんでしょうね?」
上目遣い――但し睨み付けるタイプなワケだが――で柊は睨んでる。
906抜いたら負けかなと思っている:2008/04/08(日) 18:27:30 ID:ROREMgW90
「何がだ」
「私が告白したのよ、返事が必要でしょ?それよ!」
柊は俺の元へ歩み寄り、すぐ目の前で睨み始める。
こいつ、こんな奴だったのか。
思わず笑いが込み上げて来る。
「…何笑ってるのよ」
俺は、一度息を整える。
「俺も、お前が好きだ。…付き合って下さい」
一度言っちまった分、楽に言えた。
「そんくらい昨日もスムーズに言えたら…」
うるせぇ、告白なんて初めてのモンだよ。
柊、お前も返事して貰おうか?
「"こちらこそよろしくお願いします"…これでいい?」
「ああ、充分だ」
「あ、あのさ"柊"じゃなくて"かがみ"って呼んでよ。そっちの方が私も楽だし。…彼氏彼女っぽいでしょ?」
最後は、頬をまた赤らめて言っている。
「ああ、そうだな。――かがみ」
「…やっぱ恥ずかしいわね、でもまぁいっか」
ひいらg……かがみは照れ臭そうに頬を掻く。


―――よろしくっ
                                      ――ああ、よろしく
907抜いたら負けかなと思っている ◆yukichanHA :2008/04/08(日) 18:29:49 ID:ROREMgW90
以上、『牽攣-ケンレン-』でした。ありがとうございました。
ありきたり展開とか言うなよ?絶対言うなよ?
谷口踏み台。すまん。国木田がいなくてよかったな。

柊呼びも新しい感じがしていいですなぁ。

それじゃノシ
908抜いたら負けかなと思っている:2008/04/08(日) 19:51:45 ID:Up5HwCYNO



しかしかがみだけはヒロインに出来ない俺ガイル
909抜いたら負けかなと思っている:2008/04/08(日) 19:53:09 ID:ROREMgW90
俺はみゆきをヒロインに出来ないんだが
910抜いたら負けかなと思っている:2008/04/08(日) 19:59:50 ID:jgDknVmUO

たまにはこんなベタベタで甘甘なやつもいいな

俺は古泉だけはヒロインにできません、ガチです
911抜いたら負けかなと思っている:2008/04/08(日) 20:07:58 ID:ROREMgW90
言い忘れ言い忘れ。
今回の作品のキョン、冒頭は俺です
流石に悶えたりはしませんでしたが、その気持ちぶっこんでみました。

そんだけです、
チラ裏も嫌なんでなんか安価↓頼むからわかりやs…いやなんでもない
912抜いたら負けかなと思っている:2008/04/08(日) 20:09:51 ID:qGf7v9k+0
キョンが主人公なら大丈夫だが
それ以外視点になるとてんでやる気が出ないのが俺なんだが
913抜いたら負けかなと思っている:2008/04/08(日) 20:11:38 ID:ROREMgW90
キョン以外の視点、で受け取った
914抜いたら負けかなと思っている:2008/04/08(日) 21:01:59 ID:qGf7v9k+0
>>913
あぁ、気付かなかった
悪かったなw
915抜いたら負けかなと思っている:2008/04/08(日) 21:43:31 ID:Up5HwCYNO
国木田とか扱いやすいと思うんだけどなぁ…
916抜いたら負けかなと思っている:2008/04/08(日) 22:16:31 ID:qGf7v9k+0
国木田はエロイムエッサイムになるからな〜
917抜いたら負けかなと思っている:2008/04/08(日) 22:39:47 ID:mfVddLE9O
唐突だけど誰か>>752の続き書いてくれる人募集
PCが天命を全うなされたので投下できなくなってさ
まぁ、別にどうでもいいことですが
918抜いたら負けかなと思っている:2008/04/09(日) 00:32:40 ID:lsl7LE6oO
一月経っても埋まってない事に今気づいた
919抜いたら負けかなと思っている ◆7SHIicilOU :2008/04/09(日) 01:31:06 ID:S+XVRJih0
さて、ちょいと長文だ
読み飛ばしても構わないが、できればこのスレの人には目を通して欲しいかな


スレ、まとめ、双方過疎化が進んでいる現在の原因は
まぁ考えるまでも無く、前に避難所住民に指摘された俺含めた書き手と一部長者住人の馴れ合いな訳だ
避難所とスレ住民で分かれて喧嘩するぐらい、分かれてたのに、避難所には現在ほとんど書き込みなんて無い
これはただ単に宣言通り愛想つかしていなくなったのかも知れん

とにかく、あの時関係改善やら間を受け持ったり
ここに引越しだとかの案を出したりしてあの時先頭に程近い位置にいた俺だが
ここ最近一番馴れ合ってるのも俺だ、これでは示しがつかないどころの話じゃない

最近SSに対するやる気が減ってるのも、SS無くても書き込めば反応してくれるしそこそこ楽しいから
昔の書いて、投下してやっと相手してもらえるような中でのハングリー精神を失ってるからに違いない
と俺は判断した

ここは自分の言った言葉を思い出して、一回初心に帰ってしばらく投下なしのときの書き込みを控えることにする

ほのぼのはいい、だけど温いべたべたした今の状況はよくないと思った

少し前の殺伐さを取り戻そうと思う



長文スマソ、ただこのままでは本当にダメになる気がする
920抜いたら負けかなと思っている:2008/04/09(日) 15:03:07 ID:dUhYhBvs0
ふむ・・
921抜いたら負けかなと思っている:2008/04/09(日) 15:41:28 ID:wTKeEime0
まぁ、目に見えていた事ではあるが

それが原因か知らんが人・書き込み共に減少してるのは目に見えてるしな
俺はいつかこのままフェードアウトすることが心配の種だったよ
922抜いたら負けかなと思っている:2008/04/09(日) 18:20:53 ID:Bii1yrh/O
真剣に話すべき話題に割って入って申し訳ないが
>>917でこう言われていたのでホームレス中学生読んだことないけど書いてみる
>>917が続きを書いたり、他の方が書きたいのであれば
俺はやめるので遠慮なく言ってください。


中学生というガキではあったが、やはり家を差し押さえられたことを
人においそれと話せるほど自尊心がないわけではなかったのだろう
俺はそれこそ誰にもこの理不尽な状況を相談することなく
貯めてきた小遣いを無駄のないように使ってなんとかその後二週間を過ごした
しかし、中学生の小遣い―それもうちのような中の下くらいの一般庶民の家の―では
家から突然放り出されて、二週間どうにか飢えずに暮らせただけでも行幸と言うしかない

しかし、食料事情は順調であったが、その間も小学生との不毛な争いは続いており
ついには保護者様ご一考まで呼ばれる目に遭ってしまった
大人気ない保護者たちに役所に言って立ち退いてもらうとまで脅され
その日のうちに俺は三週間慣れ親しんだ仮住まいに別れを告げるに至った
荷物はカバン一つ分だから準備しながら思い出に浸るほどの時間もない
……仮住まいでの生活は俺の一礼で幕を閉じた

公園の外からブルーシートが剥がされ、子供たちが我先にと
ジャングルジムに群がる様子をやるせない気持ちで眺めていると
遠慮がちに、けれど優しく、俺の肩を叩く小さな手があった
宿を失い茫然自失としていた俺だが、諦めずに何度も俺の肩を
トントン叩いてくるしつこさに胡乱な目で振り返った


むにっ


俺は、マンガ的手法でこの状態をあますことなく、なおかつ具体的に表現すると
満場一致でこの擬音語が使われるだろう、というくらい古典的な悪戯に引っ掛かった

まぁ、俺の後ろに立っていたのが控えめかつ可憐さを備える少女だったから
こんな悪戯されてもむしろお釣りが出るくらいの心情ではあったが
923抜いたら負けかなと思っている:2008/04/09(日) 21:01:30 ID:gPXc5D3l0
書いてみたいとは思ったがネタが余り膨らまず歯痒かく感じていた。
とにかくwktkなんだぜ


>>919
確かに最近馴れ合いが過ぎるかとは思っていた
少しでも人を取り戻すにはやはり投下数を増やすのが最良なんだろうな


そういやブックマークから直接まとめに行くとパッと見閉鎖したようにも見える
横のメニューが出ない携帯なら尚更だ
まぁまさかそれで人が減ってるなんて事はないだろうが・・・
少なくとも次スレからテンプレのまとめのURL変えなきゃな
924抜いたら負けかなと思っている:2008/04/09(日) 22:49:08 ID:pZN7ZXw00
Fate/unlucky nightの続き投下だっぜ
925抜いたら負けかなと思っている:2008/04/09(日) 22:51:12 ID:pZN7ZXw00
 ――――見た事もない景色だった。
 頭上には炎の空。
 周りには無数の古泉。
 ………しかも全裸
 世界は限りなく古泉で、他には誰もいない。
 灰を含んだ風が駆け抜ける。
 古泉は樹木のように乱立し、その数は異様だった。
 だんだん近づいてきてるような気が……
 本能が訴える「掘られる」と
 俺は逃げようとする
 だが、時すでに遅し
 無限の古泉に完全に囲まれていた
「キョンたーーん!!」シャウトする 
 そして、一斉に俺に飛び付こうと――――――

 Fate/unlucky night〜三日目

「うわぁぁぁぁ!!!」
 目を覚ますと見知らぬ天井があった
 そういえば、俺の家が日本家屋になっていたんだったな
 日が昇って随分と時間が経ったのだろう、確かな陽射しが伝わってきた。
「――――――夢、か」
 見ていた夢を思い起こす。
 無限の古泉に襲わそうに……
 トラウマになりそうだ、気分がとんでもなく悪くなった。 
 ドタドタと足音が聞こえてくる
「ちょっと、どうしたの!?」
 慌てた様子で襖を開けて現れたのはかがみであった
 はて?なんでかがみが家にいるのやら
 そう考えている間に事件は起きた
「あっ」
 布団の端を踏み、足を滑らせ倒れるかがみ
 そして、俺の上に倒れんだしまった 
 ……互いにとても気まずい
「えと、その…」 
 そこに、運が悪いことに
「やふーー、どしたのキョンキョン?」
 こなたが部屋にやってきた
 傍から見れば、かがみが俺を押し倒しているようにも見えなくもない体勢なわけで
「うぉっ?!かがみん、大胆!!」
 要らん誤解を招いたようだ
「ち、違うわよ!!ちょっと転んだだけよ」 
 顔を真っ赤にして抗議するかがみ
「だからこうなっている、と。でも、二人ともいつまでそうしてるの?」
「そ、そういえばっ!」
 スッと立ち上がるかがみ
「…ご、ごめん…その…わざとじゃない…よ?」
「あ、ああ…その…スマン」
「なんで謝ってんのよっ!べ、別に…嫌……じゃ…なかった…し…」
「最後のほうが聞き取れなかったんだが」
「な、なんでもないわよ」
「かがみんも素直じゃないね。じゃ、なるべく早く居間に来てよね。先にいってるよ」 
 そう言い残し立ち去るこなた
 まあ、居間へ向かうとするか
「よっと」
 体を起こすと目眩がした。
 思わず倒れそうになって、なんとか壁に手を突いた
926抜いたら負けかなと思っている:2008/04/09(日) 22:52:14 ID:pZN7ZXw00
「ちょっと、大丈夫!?」
「少し貧血気味のようだ」
 よたよたと壁づたいに部屋を出る。
「無理しないで、ほら肩貸してあげる」 
 かがみの肩を貸りなんとか居間に到着。
 居間にはこなたと古泉がいた
「おや、もう体調はよろしいのですか?」
「誰かさんのせいで、あまり良くないんだが」
「どうもすいません。ですが、話しの流れ上はそうするしかなかったのです」
「……どういうことだ」
「簡単なことだよキョンキョン、あの場から逃れられる方法は二つしか無いんだよ」
「で、これがその方法の一つかよ。もう一つはどんなのなんだ?」
「バーサーカーに腹を引き裂かれて…」
「いや、死ぬだろそれ」
「だいじょぶ、そんなことで主人公は死なないよ」
「ちょっと待て、主人公って俺のことか?」
「そだよ」
 はぁ、どうしてこうも中心人物にされなきゃならんのだ
 脇役程度でかまわんのに
「ちなみにそいつはどんなやつなんだ」
「主夫で便利屋で自分より他人が大事で夢は『正義の味方』って人だよ」
「かなり滅茶苦茶なやつだな」
「はいはい、その辺にしときなさい。今の現状を確認するわよ」
 その後、どこまで進んだやらルートがどうだのと話しをして
 気が付けば夕方になっていた
 かがみは家から必要な物を取ってくると言い、荷物持ちとして古泉を連れて行った
 そして俺は強制的にこなたと夕飯の準備をするはめになった
「俺は料理なんて出来ないんだが」
「まあまあ、そう言わずにさ」
 渋々と台所に立った。そして驚いた
 無意識レベルで体が動き、みるみるうちに食材が料理になっていく
「おぉ、やっぱり料理できるみたいだね」
「これが俺が得た登場人物の能力かよ」
 どうせ手に入れるならテレポーテーションとかサイコキネシスのほうがよかったがな
 そして、料理は完成したのであった
 玄関の方で、何か重い荷物が落ちる音がした
 どうやらかがみと古泉が戻って来たようである
 とりあえず確認しに玄関へ向かう
 そこには、おっきなボストンバッグを足下においたかがみと古泉の姿があった
「……何が入ってるんだ」
「何って、家に戻って必要な物取ってきたんじゃない。今日からこの家に住むんだから当然でしょ」 
「これも、話しの流れなのか?」 
「そうよ」 
 話しの流れと言われると抗議できん、やれやれ
 四人分の食器を用意して、出来上がった夕飯を盆にのせる
 その居間に移動して、テーブルに盆を置いた
 メニューは無難にカレーとサラダ
 何事も無く夕食をすませた
 その後の後片付けも終わり
 夕食の最中に後で部屋に来るようにと言われたのを思い出し
 かがみが陣取った部屋へとむかった
「やっと来たわね」
927抜いたら負けかなと思っている:2008/04/09(日) 22:52:46 ID:/37IpGCE0
四円
928抜いたら負けかなと思っている:2008/04/09(日) 22:53:13 ID:pZN7ZXw00
「で、何の用だ」
「キョンが魔術を使えるようするのよ」
「そういえば俺も魔術が使えるんだったな」
「そうよ、でもちゃんとした方法で使わないと危険なのよ」
「だからその方法を教えるってか」
「そういう事、魔術を使うって事は、魔術師ってものを知るって事だから。
 はい、キョンはそこに座って。大事な話だからちゃんと腰を落ち着かせて聞くこと」
「ここでいいのか? ……よし、始めてくれ」
 ぐっ、気合いをいれてかがみの目を見る。
 こっちの真剣ぶりが伝わったのか、かがみは満足げに頷いた。
「じゃあ簡単な話から入るけど。魔術を使うのに必要なものが魔力だって事は知ってるわよね? 
 魔術さえ発動させられるなら、それらは全て魔力と言い換えても差し支えはないわ。
 魔力の種類は千差万別。
 自分だけの精神力をもって魔術を使用する者もいれば、 自分以外の代価をもって魔術を使用する者もいる。
 マナとオド。マナが自然、世界に満ちてる魔力。オドが個人が生成できる魔力のことね
 じゃあそのマナを用いた魔術から順に説明するわ
 自身の力だけでは足りないから、代価を用意して取り引きする、という魔術形式。
 これなら術者の魔力が希薄でも魔術は作用する。なにしろ使用する魔力は自分からではなく他所から借り受けるものだから、術者はただ儀式を行うだけでいい
 ……けどまあ、こういうのは知識がないと出来ないからね。キョンには無理だし、そもそもこういう血生臭いのよね
「……だな。俺も鶏の生け贄とか、魔法陣を敷いて一晩中祈るとか、そういうのはやりたくない」
「でしょ。
 じゃあこれは置いておいて、次はオド、つまり魔術師個人の力で行う魔術の事。
 もう言うまでもないと思うけど、これがわたしや貴方の基本的な魔術行使よ。
 他者の力を借りないでする、自身の魔術回路だけを頼りにした魔術」
 どうやら話が本題に入ったようだ。
「その、自分だけの魔力を生成する機能―――“魔術回路”っていうのは、魔術師が体内に持つ擬似神経のことで
 マナを汲み上げて人間に使えるようにする変換機みたいなものなの。
 一度魔術回路を開いてしまえばスイッチの切り替えでオンオフできるようになるんだけど、キョンには
 そのスイッチが無いの。だから、使わせなかったのよ」
 まあ、ぶつかるまで止まらないブレーキの無い車みたいなもんだしな
「さて、一通り説明も済んだことだし」
 かがみは荷物から缶のような物を取り出した。
 その、外国の子供が愛用していそうな、色とりどりのドロップが入った缶だ。
 日本でも類似品をよく見かける。
 何種類かのあめ玉が入っていて、白色をしたドロップはハッカ味っていうアレだ。
929抜いたら負けかなと思っている:2008/04/09(日) 22:54:14 ID:pZN7ZXw00
「キョン、手、出して」
「?」
 とりあえず手を出す。
 かがみは缶をふって、赤っぽいドロップを出した。
「はい、それ飲んで」
「???」
 とりあえず、言われた通りに口に運ぶ。
「……甘くない」
 いや、むしろ味なんてない。
 それにこの舌触り、飴っていうより石なんじゃないだろうか。
「……ん……」
 ごくん、と無理やり飲み込む。
「うわ、いたっ。食道がヒリヒリするのだが、今のはなんだ」
「なにって宝石に決まってるじゃない。見て判らなかった?」
 しれっと。
 とんでもないコトを口にする。
「な、宝石って、なんで……!?」
「仕方ないでしょ。薬も用意してきたんだけど、矯正するにはそんな物じゃ効かないの。だから一番強いのでスイッチを開くしかないなって」
「いや、そういうコトじゃなくてだな……なんだって宝石なんか飲ますんだ、そんなもの消化できるか!」
「……あのね。不安がるならもっと別のコトを不安がりなさい、ただの宝石じゃないんだから。
 今のは、強制的に判らせる為の強制装置。そろそろ溶け始める頃だから、気合い入れてないと気絶するわよ」
「気絶するわよ、ってなにさわやかに物騒なコ―――」
 そう言いかけた矢先、
 その異状はやってきた。
「――――――――!?」
 体が熱い。
 手足の感覚が麻痺していく。
 背中には痛みとしか思えない熱さがかたまっている。
 意識を眉間に集めて、ぎゅっと絞っていなければ立っていられない。
「大丈夫、苦しいでしょうけど今の状態を維持していれば少しずつ楽になるわ」
 ……なんか言い返してやりたいのだが、そんな余裕はない。
 今はただ、体が倒れないように全力でバランスを整えるしかできない。
「一度でも魔術回路を体内に作ってしまえば、あとは切り替えるだけでいい。
 スイッチを押して、自分の中でオンとオフを切り替えるだけで魔力は成るわ」
 ……呼吸を落ち着ける。
 自分を抑えてさえいれば、状態が悪化する事はないようだ。
「いい、今の宝石はね、そのスイッチを強制的にオンにするものよ。もとの状態に戻りたかったら、自分の力でオフにするしかない。
 それが出来たのなら、あとは宝石の助けなんていらないわ。以後は比較的簡単な精神の作用で、魔術回路を操れるようになる」
「っ……それは、判った、けど」
 この体の熱さは、なんとかならないものか。
 それにスイッチのオフだなんて言われても、そんなものどうしろっていうのか。
「スイッチそのものは、今の状態を落ち着けよう、早く楽になろうって体の方で勝手にオフにしてくれるから。
 あとはそのスピードを自分の意志で速くするだけ。ね、簡単でしょ?」
「……いや……だから、全然判らない。
 スイッチだなんて言われても実感湧かないぞ、俺」
930抜いたら負けかなと思っている:2008/04/09(日) 22:55:07 ID:pZN7ZXw00
「今はそうだけど、そのうち明確にイメージできるようになるわ。頭の中にぽんってボタンが浮かぶようになるから。あとはそれを切り替えるだけで、とりあえず魔術回路は簡単に開けるようになるわよ」
「………だといいけどな。いまは、ともかく気持ち悪い……」
「でしょうね。ずっと魔術回路が開いている状態だもの。いつでも全力疾走しているようなものだから、苦しいのは当たり前よ」
「…………う」
「それじゃ強化をしてみて」 
 ちょっと、待て。
 まだ体が全然動かないっていうのに、おい。
「今は魔力のコントロールもできないだろうけど、その状態に馴れてもらわないとね。
 大丈夫、ランプは山ほど持ってきたし。何十回失敗するか判らないけど、強化が成功するまで休ませてなんてあげないから」
 にっこりと笑って、ろくに動けない俺にランプを手渡してくる。
「…………う」
 それは四十度の熱がある男に、長い長い綱渡りをしろと言っているのと大差ないのだが……
「……まいったわ。まさか、こっちが先に根を上げる事になるなんてね」
「………………いや。面目ない」
「わたしの見通しが甘かった。まさか三十個全部壊されるなんて思いもしなかったから。
 ……やっぱり強化は成功率悪いわね」
「……う」
 いや、俺だって努力はしたぞ。
 こんな、釜茹されて煮上がったような体で頑張った。
 頑張ったが、結局、一回も強化が成功しなかっただけではないか。
「……あのさ。ガラスが割れただけなら、直せるだろ。以前に窓ガラスを直してただろ」
「無理。アレは普通に破損したものでしょ。こっちは魔力に耐えきれなくなって割れたものだもの。他人の魔力を帯びた物に干渉するのは難しいって、覚えておいて」
「そうなのか」
「そうよ。……いいから、キョンは休んでいいわ。今日はスイッチを呼び起こしただけでよしとしましょう。
 コントロールできるようになったら、この続きを教えるから」
「……ふう。休んでいいのは有り難いが。この続きって、何を教えてくれるんだ?」
「投影の魔術よ」
「……? 投影ってなんだっけ、覚えはあるんだけど」
「物を複製するって魔術よ。
 強化みたいに、もとからある物に手を加える魔術じゃないわ。
 基本的には無から、一から十を全て自分の魔力で構成するものだから、難易度的には最高ね
 投影で作り上げた物はすぐに消えてしまうのよ。
 十の魔力を使って作り上げた投影の剣と、一の魔力で強化させた剣とでは、強化の剣の方が強くなる。
 強化は手を加えるだけでいいから効率がいいってわけ。
 その点、投影は魔力を使いすぎるからメジャーに使われる魔術じゃない
 でもキョンの場合は特殊な例だから、投影の方が使い易いの」
「だから投影を練習するってか」
「そういう事。さ、質問が済んだのなら終わりにしましょう。……足下もおぼつかないようだし、部屋の前までぐらいは送っていってあげるから」
 部屋の前まで送ってもらう。
 さんきゅ、と頷きだけで答えて、とりあえず部屋へ移動する。
 ……そうして、気が付けば夜空を見上げていた。
 今夜教えられた事と、まだ熱いままの体を持て余して、こうして夜風を浴びているだけだった。
「……しかし。スイッチとやらが本当に使いこなせるようになったら、あとは手順の問題だ。
 あんなに失敗するようじゃ、先が思いやられるな……」
 呟きながら、土蔵から持ち出した角材に魔力を込める。
 ぱきん、という音。
 やはり強化はうまくいかず、角材には罅が入っただけだった。
「……中の構造まで把握してるのに。どうして、こう魔力の制御ができないかね」
 そういえば俺は投影のほうが使い易いんだっけ
 やってみるか
「――――投影開始」
 魔術回路に魔力が流れる
 想像するのは、学校で古泉が使っていた白と黒の双剣
「――――投影終了」
 両手に重みを感じる、成功のようだ
見た目はそっくりだが、なんというか中身がない
 使うのには問題がなさそうだが
 根本的に何かが足りない。考えてもわからない。
「明日、かがみにでも聞けばいいか」
 そう思い、布団に潜り込んだ 
931抜いたら負けかなと思っている:2008/04/09(日) 22:56:32 ID:pZN7ZXw00
以上だよ
あじゅしたー
932抜いたら負けかなと思っている:2008/04/09(日) 23:03:39 ID:/37IpGCE0
おつじゅしたー
933抜いたら負けかなと思っている:2008/04/09(日) 23:26:20 ID:9sm88tR20

っ旦~
934抜いたら負けかなと思っている:2008/04/10(日) 12:20:43 ID:UGW+bd92O
久々にお題でもやるかね

↓人+物orシチュ
935抜いたら負けかなと思っている:2008/04/10(日) 12:56:40 ID:qbDuOQzUO
つかさ
936抜いたら負けかなと思っている:2008/04/10(日) 16:42:58 ID:c6V4rfYh0
>>935
把握

一応ながら同一人物でさ
937抜いたら負けかなと思っている:2008/04/11(日) 00:18:17 ID:U+EqVp92O
>>923
遅くてすまん
とりあえず
管理人にメールと避難所に書いとく
938抜いたら負けかなと思っている
一周年したらまた立ててみるか?