阿部「三橋…お前のIDさらけ出せよ…」

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90抜いたら負けかなと思っている
人を拾った。
高校生くらいの少年。
色素の薄いふわふわの髪と常に水気を帯びている目が印象的な少年だ。
俺が何かを話しかけるたびに体を跳ねさせ視線を逸らす。
ずっと地面を見つめているかと思えば時折俺をじっと見つめて俺の心臓を跳ねさせる。
言葉はどれも難解でコミュニケーションが難しい。
俺の見当はいつも外れるから少年はいつも首を横に振ってばかりだ。
しかし偶に首を縦に振るとその後に眩しいくらいの笑みを零す。
小動物みたいだと思った。


「な、なんでも します から、こっ、ここに、おいて くださ い…。」
仕事帰りの俺を待っていたのは見知らぬ少年。
マンションの俺の部屋の前で膝を抱えて座り込んでいたその少年は
俺の姿を見るなり俺の胸の飛び込んできて必死にそう言った。
その双眸から溢れる透明な水が俺の真っ白なワイシャツに染みを作った。

これが俺と少年の出会いだった。
奇妙な共同生活はここから始まる。