潔癖症
※精神障害描写注意
(幕間)
・強迫性障害を発症する原因
元々几帳面であったり、融通の利かない性格の持ち主が多く発症した事例を挙げられるが、詳しくは不明。
(融通の……っつーとこか)
・不潔強迫
身体の汚れが常に気にかかり、必要以上に洗浄行為を繰り返す。
(三橋が手を洗う場面はこれまでに何度か見てるけど、あれは確かにおかしかった)
・縁起恐怖
宗教的、もしくは社会的に不道徳な行為をしている・してしまったのではないかと恐れるもの。
(常に周りの様子気にしてビクついてんのはコレか)
・数唱強迫
不吉な数字や、ある規則に則った数字に異常に固執することがある。または、その数を回避する傾向がある。
(エースナンバーと……そういやこの間、13がどうとか言ってたっけ……)
(幕間)
どうやら鍵は揃ったみたいだ。
本に書いてあることを信じるなら、三橋はほぼ間違いなく強迫性障害を発症している。そして三橋の性格のことだ。他人に迷惑懸けるまいと、誰にも言わずに一人で抱え込んで来たのだろう。
今まで、三橋はずっと西浦のチームに馴染んでいると思っていた。過去のことを清算して、チームメイトの一員として、エースとして、仲間を頼ることも出来るようになったのだと思っていた。けれどその考えが間違いだった。
人は簡単には変われない。まして辛い過去を通過してきたなら、疑心も並大抵のことでは解れない。
三橋は変わったフリをして、ずっと遠慮をしていたのだ。誰にも迷惑をかけないように、自分だけ辛ければいいとすべてを背負い込んで……。
それでも、三橋は心のどこかで助けを望んでいた。そうして次第に自分を追い込むようになり、それが手を洗ったり、ドアノブに触れなかったりという強迫行為に繋がっていったのだ。
誰かに気付いてもらいたかった。だけど誰も気付かなかった。
三橋はいつも笑っていた。
『なんでもない、よー』
その時は既にボロボロに傷付いていたというのに……。
三橋は、三橋の癖に嘘を吐いていたのだ。チームメイトを、仲間を騙してきたのだ。
気付いてやれなかった自分に今更腹が立つ。
何が友達だ、何が副主将だ、仲間一人の異変にも気付けないで、今まで何をしていたんだ。
仲間。
ふと、気付く。
そういえば、あいつは。三橋と。三橋に。三橋の。三橋を。
そうだ。あいつだけ。あいつだけは。
ひょっとしなくても。
確かめなければ。