※これまでのあらすじ
親戚の子を預かったら、そいつがとんでもないキモ弟だった。
一つ屋根の下の・・・
まずい、と思った時には、腕にチクッとした痛みが走っていた。
オレはすぐに弟を突き飛ばして2階に駆け上がり、自室に飛び込んで鍵を閉めた。
床にへたり込んでいると不意に頭がクラッとした。
体温も段々冷えていく気がする。
すごく怖い思いをしているせいだと思う。でも、さっきチクッと刺された注射が気になる。
一体何を打たれたんだろう。もし何か危ない薬だったらどうしよう。
そう思うと震えが止まらない。
いや、きっと大丈夫。
すぐに突き飛ばしたから、針が刺さっただけで、薬はほとんど打たれていないはずだ。
それに、いくらなんでも命に関わるようなものではないだろう。
鍵をかけたからもう大丈夫。弟はもう来れない。
オレは冷えていく体を両手でさすりながらそう思いこんだ。
しばらくして、ギッ…ギッ…ギッ…、という階段を上がる音が聞こえてきた。
足音はオレの部屋の前でピタッと止まる。
ガチャガチャと何度もドアノブを捻る音がした。オレはなるべく音を立てないようにそっと部屋の奥に移動して耳を塞ぐ。
しばらくして諦めたのか、激しいドアノブの音はやがて消えた。
「よかった…。」
練習の後で体がベタベタだったけど、お風呂に入るのは弟が寝静まってからにしよう。
おなかもすごく空いているけど、朝までガマンしよう。
大丈夫。この部屋の中でじっとしていさえいれば平気だ。
オレはベッドにもたれかかり、息を殺して真夜中になるのを待った。
だいぶ時間がたったが、一向に弟が何かしてくる様子はない。
オレはほっとして少しうとうとしてきた。
カチャカチャ・・・
ドアのほうから何か小さな、物音がする。金属がふれあうような、かすかな音。
な、何してるんだろう・・。
そう思って這うようにしてドアに近づくと、カチリ、という音がして、鍵が開いてしまった。
びっくりしてもう一度鍵を閉めようとした時、ものすごい力でドアが開かれた。
「っ・・!」
「お兄ちゃん、おなか空いたでしょ?ご飯の時間だよ。」