>>49 死ね。
続きね。
ただ唯一この古畑の死生観こそが主たるテーマになったと言えるのが、『古い友人に会う』です。
ただしこの作品は、三谷さんが懇意にしていた某氏の自殺という事態を受けての、
たぶんに個人的かつ感情的な思い入れのある作品であり、倒叙ミステリという体裁こそ
とっていたものの、極めつきの異色作と位置付けることができます。
しかし、この作品は(少なくとも私にとって)後味が悪いものではなく、古畑のシンプルかつ
力強い死生観が、ある種の爽快さをもって描かれていました。
「偽装自殺」をたくらんだ安斎に対して古畑はこう語っています。「たとえ明日死ぬとしても
やり直しちゃいけないって誰が決めたんですか?」「彼ら(=強制的に死を選ばされた人々)
のためにも我々は生きなければならない。死ぬよりつらい日々が待っていたとしても」と。
ここにもやはり「生」への無条件の肯定を見て取ることができるのであり、それは心ならずも
殺されてしまった「被害者」に対してのみ向けられるものではなく、人生の苦境に陥り、
今まさに自殺しようとしている人に対しても向けられている「古畑の思い」なのです。