【腐女子カプ厨】進撃の巨人雑談1510【なんでもあり】

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491かみやゆすら
おいおい図書委員としてそれはいいのか、と多少気になったけれど、午後の授業がもうすぐ始まろうという今、図書室にはもう自分達以外いないことを見て取って、リヴァイは肩を竦めるだけでそれを流すことにした。
「せんぱーい、学生証貸してください」
先程より随分気安くなった口調で、図書委員がリヴァイを呼ぶ。制服のポケットから取り出して渡すと、男にしては華奢な指が丁寧にそれを受け取った。
慣れた手つきでカードリーダーに通せば、パソコンの画面にリヴァイの情報がぱっと表示される。
画面をちらり、そうして手元の学生証をちらり、小首をこてんと傾けた図書委員の視線の動きが気になって何となく追いかけていると。
「リヴァイ、せんぱい」
小さな、小さな声で彼に名を呼ばれてはっとする。
彼の視線は既にリヴァイが借りる本に移ってしまっていて、きっと自分の呟きをリヴァイが拾ったことにも気づいていないんだろう。それでも、聞こえてしまったその響きがどうしようもなくくすぐったい。
いよいよ自分の頬の熱さを自覚して、リヴァイは慌てて彼から目を逸らした。
「貸し出し期間は一週間です。忘れずに返してくださいね」
手続きを終えた図書委員が重ねた本の上に学生証を乗せて、すっと差し出してくる。もごもごと口の中で了解の返答を呟いて、本を受け取った。
腕に伝わる、四冊分の重み。これがあれば課題はどうにかこなせるだろう。
リヴァイの用件はその時点で終わってしまって、だからさっさと教室へ向かえばいいのに何だか立ち去りがたくて、リヴァイは呆然とする。何だろう、この感覚。
「…先輩?」
こてんと、小首を傾げて彼が不思議そうな声を出した。何か、何か言わなければ。
「…名前、」
「…はい?」
「お前、名前、教えろ」
自分の口から飛び出した言葉の余りのたどたどしさに、リヴァイは言った瞬間に頭を抱えたくなった。もうちょっと言いようがあっただろうに、何を緊張しているんだ俺は。
今すぐ消えてしまいたいリヴァイの心境など知る由もない目の前の彼は、一瞬の間の後に、ふんわりとまた花の咲くような笑みを浮かべた。
「…エレン、エレン・イェーガーです。…また来てくださいね、リヴァイ先輩」
エレン、と舌の上で聞いたばかりの名前を転がしてみる。それが何だか癖になりそうな響きで脳に焼き付いて、リヴァイは腕の中の本をぐっと抱き締める。