390 :
1/3:
朝食を一緒にとりながら、英介はマスミンに月影の様子を聞く。
マスミンは、少し痩せていたが相変わらず気丈だったと答える。
「他に変わったことは?」
マヤに去り際に、一真ではないので阿古夜のセリフなんて言えないと
言われたことが浮かぶが、何もないと話す。
月影がそんなに気になるのかと、今度は反対に英介に聞き、
英介は上演権を気にしているだけだと言う。
「あの娘が紅天女に決まったらやっかいだの。おまえをとことん嫌っておるからの」
「ええ承知しています。月影千草がお義父さん、あなたをとことん嫌っているようにね」
本当の親子でもないのに、誰かのファンになって舞台を観るのが生きがいになり、
そのためになんでもしたいと思うようになった事が、義父と似ているとマスミンは思う。
(気がついたらいつのまにか自分だけが恋におちていた…どんなに相手から嫌われても
その思いは形を変えて心の奥深くに眠る…お義父さん…ぼくはやっとあなたの気持ちが
わかった気がする…いままでどんなに苦しくせつない日々を過ごしてきたのかを…
今ぼくも同じ道を歩もうとしている…)
食事をすませ席を立ったマスミンは、山盛りのパフェが好きか突然英介に聞く。
英介は飲み物をふき出し、ふざけたことを言うなと声高に言い、マスミンはあるわけないかと思う。
マスミンが去った後、危ないところだったと英介はホッとし、マヤは役者として才能以上に
大事なものをそなえている娘だ、あなどっていたかも…とお付きの者に語る。
391 :
2/3:2009/09/25(金) 10:09:14
マヤの稽古場に紫織が見学に来る。
稽古するマヤをじっと見つめながら、もう二度と紫のバラは贈らせないと心に誓う紫織。
一方、オンディーヌの稽古場では亜弓が検査入院から帰り、キャストたちが喜びの声をかける。
亜弓は医者に、両眼の後ろに血腫ができていて眼球を圧迫されており、手術前提で治療を続けないと
失明の恐れがある、稽古なんて無茶だと言われていたが、試演が終わるまでは通院して
治療すると無理に退院していた。
サングラスをはずし、稽古場をじっと見る亜弓は誰にも気づかせないと稽古に入る。
稽古の休憩時に、紫織はマヤをお茶へ連れ出す。
試演が終われば速水と結婚すると、誕生石を使っているという大きな婚約指輪を
見せながらマヤに話し、マヤは指輪を見て、きれいでそんな大きな宝石見たことないと褒める。
392 :
3/3:2009/09/25(金) 10:13:05
紅天女にマヤが選ばれたら、速水を憎んでいることは知っているが大都で上演させてほしい、
信じられないだろうが、速水はとても心のあたたかいやさしい人だと話す紫織。
「わかっています…」
「えっ…?」
「わかっています。あたし…!」
少し顔を赤らめながら言うマヤに、憎んでいるはずのこの子がなぜ知っているのか紫織は戸惑う。
紫織がマヤの手に触れたさいに、持っていたマヤのカバンが落ち中身がバラまかれる。
そっとマヤのハンカチに指輪をつつみ、紫織はカバンにハンカチを戻す。
紫織と別れ、紫織はマスミンをよっぽど愛しているのだとマヤは感じ胸が痛くなる。
会社のマスミンの元へ鷹宮家から紫織が倒れたと連絡があり、急遽紫織の元へ向かうマスミン。
マスミンの心の中から、マヤを心の中にかけらも残さないほど追い出すと思いながら、
紫織はマスミンの到着を待つ。
稽古が終わり、カバンを開けたマヤはハンカチの中に紫織の指輪をみつけ、
なぜこんなものが入っているのかわからず立ちつくす。
次号につづく