【キジョ】アンチサエコヲチスレ その8【既女】

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162中田光利
私はすぐにベッドから起きあがった。
「壁がない」

壁がなかった。あの壁が 私を包みこんでいた見えない壁が。見えない壁が見えていた私が異常だったが、
その壁は見えなくなったのではなく「無かった」。直感的に感じた。私を覆うバリヤーは消え去った。
しかし私は不安は感じなかった。

兄が 病室へ駆けよる。信じられないことだが あの時、兄はこう言っていた。
私は仲間と河原でバーベキューをしてて 少し酔ったまま川に入り、泳いで溺れたらしい。病院に運ばれた とのことだ。
そのとき私はアリスから連絡がどうのこうの 訳の分からないことを言っていたらしい。

私の意識は現実に戻った。顔を洗いにいくと、さほど男前とは言えない自分がいた。冷たい水で顔を2回洗った。
私は幼少から優秀でもなければ スポーツとは縁がない。高校の時に一度告白された経験があるのみ、
兄の紹介で地元の工場に勤めていた。アリスなんて彼女はいやしない。

仲間が何回か見舞いにきてくれた。壁が消え去った私は、何も心に隠すことなく話をした。普通に笑って普通に泣いた。
相手をバカとも思えないし、バカにされることもなかった。隠したりもしない。それでも心の中から声がしていた
「あなた傲慢ね」とアリスの声が。

「見えない壁の国のアリス」終わり。