アニメ最萌トーナメントについて難民が語るスレPart845(3668)

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974名無し草
月が嫌いだ。
闇を照らし、僕に付きまとう。
いくら逃げても月は僕を追いかける。
そして僕をせせら笑うんだ。
闇に隠れて泣いている僕を照らして。
975名無し草:2009/02/14(土) 07:50:47
「新しい検体だ。やりすぎて壊すんじゃないぞ」
研究所にやってきた少女は自分が何をされるのか分からずにきょとんとしていた。
前回来た検体は少々やりすぎて壊してしまった。
今度は優しく扱わなくちゃな。
そう思って精一杯の笑顔で挨拶した。
「こんにちは、よろしくね」
少女は全身を使って答えた。
「れま、です!こんにち、わ!」
力を入れすぎたため顔を赤くまでしていた。
思わずくすっと笑ってしまった。
ここがどこかも忘れてしまった。
976名無し草:2009/02/14(土) 07:51:08
少女は僕にしかなつかなかった。
僕は少女の担当になった。
977名無し草:2009/02/14(土) 07:51:28
研究は過酷を極めた。
少女の身体を切り刻み、回復具合を探る。
薬品に漬かせて様子を見る。
どんな研究もある一つの結論を導き出していた。
少女は正真正銘の不滅の肉体を持っている。
978名無し草:2009/02/14(土) 07:51:45
同僚たちは歓喜の声を上げた。
これを突き詰めれば最大の戦果を上げられる。
すなわち不死の薬。
研究所は異様な空気に包まれた。
一度は諦めた主題を果たせるかもしれない…!この機を逃すな!
同僚たちは躍起になって少女に群がった。
だが、少女は僕の前だけでしか従順にならなかった。
他の人間がいると泣き叫び、それだけならいいが、機材が壊れるのである。

少女は再び僕のものとなった。
979名無し草:2009/02/14(土) 07:52:01
「おにいちゃん」
少女はいつしか僕のことをお兄ちゃんと呼ぶようになった。
「おにいちゃんはやさしいね!」
思ってもいないことを言われ、少々戸惑った。
「それにね、ほっとするの!」
「ぼくといると・・・?」
「うん!ここんとこがぽかぽかするの!」
そう言って胸を押さえた。
僕は赤面していたのかもしれない。
正直なまっすぐな感情をしかも好意を正面から言われたのは初めてだった。
「ありがとう」
思わず言ってしまった。さして考えもせず、だからこそ心の底から。
少女は破顔し、僕に抱きついて来た。
そんな彼女の何もかもが僕を嬉しくさせた。
そんな彼女の何もかもが僕を変えさせていった。
980名無し草:2009/02/14(土) 07:52:17
「おにいちゃん・・・おつきさまだよ」
ある日、月が研究室を照らしていた。
地下室に設けられた研究所の唯一下界を映す窓は昼間は隠されていた。
機材が傷むからというのが理由の第一だったが、
外に情報が漏れるのを防ぐねらいもあった。
夜は彼女の願いで窓を露わにしていた。
その申請は通った。
彼女は窓から見える月が好きだった。
唯一変化を楽しめる存在だったので当然のことかもしれない。
だが、僕は月を見るたび不愉快な気分になっていた。
この場所を覗き見られている。
後ろめたい感情があったからかもしれない。
僕が彼女にしていることは到底許されることではなかった。
「おにいちゃん、おつきさまがきらいなの?」
本心をつかれた気がして、正直むっとした。
「大、嫌いだ!」
そう言って、彼女を置いたまま部屋を後にした。
981名無し草:2009/02/14(土) 07:52:47
何を馬鹿な事をしているんだ!
僕は心の中で絶叫していた。
何も彼女にあたらなくてもいいじゃないか。
彼女が頼りに出来るのは僕以外にいない。
その僕が彼女を拒絶してどうするんだ。
謝ろうと思った。
だけど、謝りに行く事が出来なかった。
意地になっていたのかもしれない。彼女のこととなるとなぜかムキになっていた。
結局その日は彼女に会うこともしなかった。
982名無し草:2009/02/14(土) 07:52:54
次の日、研究所はちょっとした騒ぎに包まれていた。
「お前、あの子に何をしたんだ!」
同僚の一人が僕の胸倉をつかんで言った。
彼女が熱を出して寝込んでしまったというのだ。
これが事実だとすれば今までの研究が水泡に帰す。
彼女は不滅の肉体などではない。
それは彼女の「廃棄」を意味していた。
僕は同僚の腕をはがすと彼女の部屋へ駆けて行った。
983名無し草:2009/02/14(土) 07:53:05
彼女の部屋には同僚のペイドリックがいた。僕の必死を見てくすくすと笑った。
「何を笑っている!一大事なんだぞ!」
「あぁ、一大事だろうよ。検体にとってはな」
意表をつかれて立ちすくんでしまった。
彼女が?
「おにいちゃんにきらわれちゃったよぉ…てな。ひどい男だ。大事にしてやれよ」
ペイドリックは僕の肩を叩くと研究室を後にした。
なんてことだ!
僕に嫌われたかもと、思いつづけるあまり熱を出して寝込んでしまうなんて!
なんて
なんておばかさんなんだ!
984名無し草:2009/02/14(土) 07:53:16
僕はくすくすと笑いながら彼女の横たわるベッドに座り、
寝ている彼女の額に自分の額を重ねた。
幸いなことに熱はもう引いていた。
起きたらこの大きな目で僕をどんな風に見つめるんだろう。
起きたらなんて謝ろう。
そんな考えが浮かんでは消えた。
レマの顔を見ていると全てがどうでもよくなっていた。
レマには僕の思い全てをそのまま打ち明けてしまえばいい。
レマはこの小さい体で僕の全てを受け止めようとしたのだ。僕も…
「おにいちゃん・・・?」
レマが起きた。
「おにいちゃん、きてくれたの・・・?」
「あぁ、もう離れないよ。レマ」
僕はレマの可愛らしい顔を見つめながら決心した。
「レマ…今日の月は綺麗だよ。元気になったら一緒に月と踊ろう」
僕はレマの手を両手で包むと非常に安らかに告げた。
レマは顔をぱぁっと明るくさせると僕の胸に飛び込んだ。
「うん・・・!」