369 :
名無し草:
その夜、馬場は中河内の部屋に泊まった。
正直、人を招くような部屋ではないと思う。狭いし、片付けも頻繁にはしていない。馬場の家を知っているだけに、若干抵抗はあった。
しかし、そんな杞憂を吹き飛ばす様に馬場は喜んでいた。
――だってさぁ、好きな相手がさ、いつもここにいるって、なんか超嬉しくない?
たくさん話した。抱きしめ合って、キスも、した。
さすがにそれ以上は無理だったが、舌を絡めとるキスをした後、彼は自分の体を抱きしめながら言った。
「…やべー。理性が」
「ん?」
歳は3つも離れているのに、馬場の体は自分より大きい。広い肩幅に腕を回しながら、中河内はその顔を見上げた。
困った表情で、やばいわぁと繰り返す。
「マジ…好きすぎんだけど」
長い腕に抱きしめられながら、少し早い心臓の音を聞いた。
よかった、と思った。
どんなに遠回りをしたって、道に迷ったって、こんな日がくるのなら、間違っていなかったのだ。
そう思えることが嬉しかった。