オリジナルキャラ・バトルロワイアル その3

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1名無し草
オリキャラでバトルロワイアルをしようというスレです

前スレ
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過去スレ
http://mamono.2ch.net/test/read.cgi/nanmin/1210203608/l50#tag814

まとめwiki
ttp://www7.atwiki.jp/orirow/

会場地図
ttp://www7.atwiki.jp/orirow/pages/12.html

【ルール】
参加者全員で殺し合いをし、生き残った一人だけがもとの世界に戻れる
参加者間のやりとりに反則は無い
放送から放送までの間に死者が一人も出なければ全員の首輪が爆破される
2名無し草:2008/05/30(金) 13:11:34
【放送・禁止エリアについて】
放送は六時間おき(12時、18時、24時、6時)
禁止エリアの数は未定

【時間帯表記】
0〜3時:深夜
3〜6時:黎明
6〜9時:早朝
9〜12時:午前
12〜15時:昼
15〜18時:午後
18〜21時:夜
21〜24時:深夜
3名無し草:2008/05/30(金) 13:14:37
○蒼井燕/○靄場陸朗/○アリス・ナイラーザ/●アルベルト・ハインリヒ(平行世界)/○泉和哉/
○泉遥/●ヴェーヌ/●老本則夫/●大アジア帝国皇帝織田信長/○鍵谷絵理花/
○鍵谷幸一郎/○鍵谷美和子/○ケネス・シルバー/●ケンシロウ(自称)/○甲坂舞梨/
○ゴキブロス/○後藤戦/○伍宮瑞子/○コードネーム『シスター』/●坂木杏/
○坂木蕗/○坂木檀/○狭霧嘉麻屋/●佐藤健/○芝西湊/○ジュリア/○周参見椿/
●鈴木イチロウ/○ファシル(鈴木次郎)/○鈴木万吉/○鈴村佐知代/○捨流主麻亜太/
○勇者スポポロス/●高原恭司/○高水奈々/●只野模武/○剣時宗/○デンドロビウム/
○藤堂秀一/○ニャルロット/○墓凪可憐/○花子/●晴海雪/●日滝菅彦/○一一一/
●ピタゴラス/○ピピン/○フーリエ/○ポー/●マイルズ/○マグナム・ハンス/○真多秋生/
●松井垂加/○松井司/○松井哲也/○ミーウ/○ミルフィーユ/●美以葉子/○桃太郎/
●矢島泪/●山田太郎/○リリー・アップル・塔野/○ロアルド・アムンゼン(その1)/
○ロアルド・アムンゼン(その2)/○ロアルド・アムンゼン(その3)/
●ロバート・スコット/○李飛龍

48/67
4名無し草:2008/05/31(土) 08:40:57
>>1
遅くなったがスレ立て乙!
5名無し草:2008/05/31(土) 13:37:39
スレターテ=オツ
6名無し草:2008/06/01(日) 22:44:27
あと9レスか……
7名無し草:2008/06/01(日) 22:47:35
>>6

何が?
8名無し草:2008/06/01(日) 22:51:02
花子の伴侶が決まるまで
9名無し草:2008/06/01(日) 23:04:12
チキンレースが始まる…
10名無し草:2008/06/01(日) 23:10:26
オリキャラロワのキャラで恋愛シミュレーションゲーム発売決定!

攻略対象は
@アリス・ナイラーザ
A泉遥
B鍵谷幸一郎
Cジュリア
D花子
と個性的!
クリア後には松井司とデンドロビウムも攻略可能だ!
11名無し草:2008/06/01(日) 23:30:36
椿、泪、美羽、藍璃、ジュリエットのメンバーでカラオケ行きたい
12名無し草:2008/06/01(日) 23:35:01
先生!
坂木姉妹は追加ディスクですか!
13名無し草:2008/06/01(日) 23:47:07
杏←久司、遥(&檀、蕗)
檀←凪
蕗←秋生、アムンゼン2
三兄妹←デンドロビウム

坂木兄妹のモテモテっぷりは異常
檀がなんかかわいそうに見えるが
14名無し草:2008/06/01(日) 23:49:48
>>11
すげえはっちゃけてる椿
同じくすげえはっちゃけてる泪
ヴェーヌの近くに寄り添って服脱いでるミーウ
それを無視して次何を歌うか選んでるヴェーヌ
かったるそうにヴェーヌの隣でジュース飲んでるジュリア


ってか
15フーリエ:2008/06/01(日) 23:52:36
きっと神は私を許してくださる筈……!
16名無し草:2008/06/02(月) 00:02:23
…おめでとう、異種族間の婚姻は困難も付きまとうだろうけど、俺は応援してるからな!
17名無し草:2008/06/02(月) 00:03:15
>>13
まともなのが、十歩譲って遥くらいしかいねえwww
18 ◆Syk9Sx8L.s :2008/06/02(月) 01:34:42
鍵谷幸一郎、芝西湊、泉和哉で予約します
19名無し草:2008/06/02(月) 17:28:07
何という過疎
20名無し草:2008/06/02(月) 20:41:47
人いねぇ
21 ◆Syk9Sx8L.s :2008/06/02(月) 21:22:58
投下します
22おじいさんのおもいで ◆Syk9Sx8L.s :2008/06/02(月) 21:23:44
それはスピーカーから発せられるものとはまるで違う、まるで直接頭の中に響いてくるかのような声だった。
六時間ぶりに聞くその狂った科学者の声は、六時間前と変わらぬ調子でこれまでに死んだ人の名前を読み上げていった。
その数、十七人。
廊下に敷いた座布団の上に一人胡坐をかいていた俺はその一人一人の名前を聞き流した。
あの沙霧が殺した人数でさえ十二人だったことを考えると、とにかく多いという以外の感想が浮かんでこなかった。
ピンとこない、と言ったほうが近いだろうか。
幸いにも名簿に載っていた知り合いの名前は呼ばれなかったが、自分がいるのとまさに同じ場所に十七人もの人の死体があると思うと生きた心地がしなかった。

「そうだ……幸ちゃん!!」
嫌な胸騒ぎがして、俺は慌てて座布団を放り出すとキッチンへと走った。
やっぱり、一時とはいえ、同じ家の中とはいえ、小さな女の子を一人にするべきではなかったんじゃ……
そう思ってキッチンに飛び込んだ俺に、幸ちゃんは怪訝な一瞥をくれて
「なんじゃい騒々しい」
右手におたまを持ち、いささか丈が長いエプロンを着て台の上に乗り鍋をかき混ぜている。
あまり芳しいとはいい難い匂いが立ち込めていた。
ちなみにこのエプロンは幸ちゃんは嫌がったのだが、俺が半ば無理やりに着せたものである。
いや、服が汚れたら困るからであって、決して幸ちゃんのエプロン姿が見たかったとかいう理由からじゃないぞ。
ともかくも無事なその姿を確認して一息をつく俺の顔をしげしげと見て幸ちゃんは鍋を混ぜる手を止める。

「まさか、お前の知り合いが死んだのか? さっきの名前の中には、お前が言ってた名前は無かったと思うが」
23おじいさんのおもいで ◆Syk9Sx8L.s :2008/06/02(月) 21:24:44
「あ、いや、そんなわけじゃないんだけど……」
なんだか、その台詞はあまりこんな小さな女の子に言って欲しくないものだった。
「幸ちゃんは?」
「美和子も絵里花もそんなヤワではないわ。ワシはあいつらはさほど心配しておらん」
彼女の家族の美和子さん(おばあちゃんだろうか)と絵里花ちゃん(姉妹?)は確かにまだ名前を呼ばれていない。
しかし、だとしても家族が危険な状況にいるかもしれないというのは変わらないだろうし、幸ちゃんくらいの歳ならもっと心配したり怯えたりしてもいいと思うのだが……
「それより、お前は和哉の様子を見てやるんじゃなかったのか?」
再びおたまで鍋をかき混ぜ始めた幸ちゃんが咎めるような口調で言った。
「いや、でもやっぱり幸ちゃんを一人にしておくのは心配だし……やっぱりみんなで一緒にいたほうが」
「バカ者、和哉があの様子では精を付けさせるのが一番だろうが!! 男子厨房に入らずとは言うが、今は仕方あるまい。
料理が出来るもんがワシしかおらんのだからな」
そして俺は、蹴り出されるようにしてキッチンを追い出された。
……そりゃまあ、カップ麺くらいしか作ったことの無い俺は戦力にならんかもしれないけどさ。


さて、なぜ仲間と武器を求めて進撃していたはずの幼女率いる殺人鬼討滅隊がこんなところで足止めを喰らっているかというと、だ。

「おい和哉、大丈夫か?」
俺は座布団を置いたトイレの前の廊下にまで戻り、木製の古びたドアをノックした。
気配はあるが返事は無い。
しばらく時間を空けて、もう一度ノックしてみる。
「まだ腹痛いのか?」
「うん」
トイレの中からは弱々しい声が返ってきた。
ただの腹痛ならば出すものを出してしまえば治るのだろうが、これはそうはいかない。
考えてみれば当たり前な話だ。
まだ九歳の子供が誘拐されて殺し合いなんかに参加させられ、初めて出会った人を無残に殺され、さらには名簿の中に実の姉の名前を見つけてしまっては。
精神的なストレスから体調を崩してしまったとしても無理は無い。
さっき見たときは顔色も悪く、額に手を当てるとやや熱っぽかった。
「なあ、その……お前の姉ちゃんはまだ無事だからさ。だから少しは元気出せよ」
どこまで彼の心に届くかは分からなかったが、声をかけずにはいられなかった。
24おじいさんのおもいで ◆Syk9Sx8L.s :2008/06/02(月) 21:25:39
名簿には俺の家族の名前は無かったが、もし妹の名前でもあったらと考えてみる。
きっと、不安でパニック状態になり、何も手につかなくなるだろう。
和哉のように体調を崩してしまうかもしれない。
というか、むしろそうなるのが当然であって、子供なのにやたらと超然としている幸ちゃんのほうがおかしいのではないかと思う。
「……別に」
かなり時間が経ってから、ようやくトイレの中から声が返ってきた。
「別に、姉ちゃんのことなんか心配じゃないよ。あんな姉ちゃんなんか……」
トイレの中で強がってる和哉を想像して思わず頬が緩む。
まあ、あんな電波な姉では確かに苦労するのもわかるが。
「そう言うなよ。きっと姉ちゃんだって心配してるだろうしさ。
ちょっとでも楽になったら出てきてくれ。幸ちゃんがなんか旨いもん作って待ってるから」
「ん……わかった。もういいよ、そこにいなくても」
「そうか。じゃあ待ってるからな」
トイレの中に彼だけを残しておくのも心配だが、幸ちゃんのほうも気にかかる。
あれだけ元気そうに見えた少年がここまで弱るとは少し意外でもあったが、年齢とその体の小ささを考えれば無理もないだろう。
生意気そうに見えても所詮は子供というわけだ。俺の妹も似たような感じだからよくわかる。

で、もう一人の子供のほうはと言うと、だ。


「ところで幸ちゃん、この料理なんなの?」
俺はその、煮立った湯の中に白い不定形の塊が浮かんでいる不可思議なものを見て尋ねる。
「これか? 『ひっつめ』じゃ」
「ひっつめ?」
「ああ、これはワシの田舎のほうの呼び名でな。すいとんとも言ったかのう」
「すいと……」
それは流石の俺も知っている。小麦粉を捏ねたものを浮かべた汁料理のことだろう。
25おじいさんのおもいで ◆Syk9Sx8L.s :2008/06/02(月) 21:27:03
しかし、幸ちゃんの作った『すいとん』は明らかに何かがおかしかった。
普通、すいとんと言えども小麦粉をこねたもの以外の具を入れ、何かで出汁を取って汁料理の形にするものだ。
それが、この鍋の中にあるのは白い塊のみ。他の具が入っていないどころか、汁に色すらついていない。
さらに汁料理をした時に付き物であるはずのいい匂いも、ほんの少しも漂っていない。
つまり、このすいとんは出汁を取っていないのだ!!
要するにこれはただの小麦粉の塊が入ったお湯である。
小麦粉があるくらいなら出汁を取れるものなどいくらでもあったと思うのだが、なんでこんな終戦直後の日本人が飲んでたようなものを作ったのだろうか。
やっぱり、所詮は子供だからか。

「ちょうどいい湊、ちょっと味見してくれんか?」
幸ちゃんがすいとんを器に移して俺に差し出す。
湯気とともに嫌な雰囲気が漂っているそれを口に入れるのは躊躇われたが、幸ちゃんの満面の笑顔を前にするととても断りきれず、俺は器と箸を受け取って口の中にそれを流し込んだ。
が、すぐに吐き出した。
「何をするか、この罰当たりが!!」
「こんな味が無い料理が食えるか!!」
想像を絶する不味さだった。終戦直後の日本人なら有難がったかもしれないが、育ち盛りの俺達にこんなものを食わせるのはあんまりだ。
「全く、ワシらが若い頃はみんなこれで空腹を満たしたと言うのに」
そう言って腰に手を当ててぷりぷりする幸ちゃんは一体いくつなんだ。
「俺はまだ我慢してでも食べれるけど、和哉は絶対にこんなもん食わないと思うぞ……あ、いや」
言いかけて思い出した。確か和哉の姉の遥は料理が下手な設定だったはずだ。
それも漫画的な表現における「下手」なので、この幸ちゃんの料理よりさらに酷いものがよく登場する。
それを食べ慣れている和哉なら、案外このくらいなら許容範囲かもしれない。
26おじいさんのおもいで ◆Syk9Sx8L.s :2008/06/02(月) 21:28:19
そういえばその泉遥もこの会場のどこかにいる。
泉和哉という実例がすでにあるとはいえ、漫画のキャラが現実に存在しているというのはどうも奇妙な感覚だ。
名簿の中には他にも「さかぎけ」メインキャラの坂木家の三つ子や教師の日滝、松井兄弟らの名前もあった。
あと、子供向けアニメの「幸運勇者スポポロス」のキャラも二人いた。
俺も妹と一緒に見ていたが、シュールなギャグで結構俺でも楽しめる内容だった。
最終回なんか、倒しに行ったはずのヨモギーノと最後には意気投合して、国王や国民も交えて三十分間踊り続けるというカオス回だったからな。
まあかくいう俺もれっきとしたラノベキャラらしいのだが……

「そうとは限らんじゃろう」
俺の呟きを聞いた幸ちゃんが鍋をかき回しながら言った。
「全てがあのあるべるととかいう奴の仕込みの可能性もあるしのう」
「どういうこと?」
「お前の世界では和哉の世界がアニメで、和哉の世界ではお前の世界が小説じゃった。
多分他の世界同士も似たようなものになっていると考えたほうが自然じゃろう。
そしてそれもあるべるとの計らいの一つなのかもしれんということじゃ」
なるほど。確かにこれだけの力を持った学者ならそれだけのことをやってのけるかもしれない。
今回の実験に先駆けて、様々な世界で他の世界を舞台にした漫画やアニメが作られるように操作をしていたのかもしれない。
それにそう考えたほうが、むこうの世界ではこっちの世界がフィクションでこっちではその逆ということの説明がつきやすい。
「でも、なんでわざわざそんなことを?」
「天才の考えることなど凡人には分からぬわ。ワシには美和子でさえ理解するのに精一杯だというのに」
愚痴るように言って、コンロの火を消した。
鍋の中では色の無いお湯が煮立っている。
27おじいさんのおもいで ◆Syk9Sx8L.s :2008/06/02(月) 21:30:10
「それで、和哉のヤツはまだ参っているのか?」
「ああ。しばらくは一人でそっとしといてやったほうがいいかもな。流石に子供にこの状況は堪えるだろ」
「ふむ、まあ無理もあるまい。ワシのように経験豊富ならまだしも……」
「いや幸ちゃんもそんな変わらないでしょ。というか、幸ちゃんは逆によく平気な顔をしていられるぜ」
「従軍中は仲間が死んでいくのなど日常茶飯事だったからな」
「またそんなこと言って」
「む、湊、お前はワシの話を信用しておらんな!?」

誰が十二歳くらいの少女の戦争体験談を信用するというのか。
でも幸ちゃんは大分機嫌を悪くしたらしく、憮然とした表情で鍋の取っ手を掴んで持ち上げた。
「あ、手伝うって」
「かまわん」
すげなく言い返されたが、どう考えてもその鍋は幸ちゃんの体格には大きすぎる。
なんとかバランスを取りつつ台から降りようとしていたが、右足を一歩踏み出した途端に大きく体が傾き……

「あぶない!!」

俺はとっさに幸ちゃんの手から鍋を奪い取った。もう少し遅かったら中身ごと宙に舞っていただろう。
「だから言っただろ!! 無理するなって!!」
鍋を置くと、転んだ幸ちゃんを起こすために手を伸ばす。
「ええい、大したことではないわ!! これしきのことで手は借りん!!」
幸ちゃんは俺が伸ばした手を払いのけながら立ち上がり、年寄り臭い動作で腰を撫でた。
全く、どこもかしこも一片も子供らしくない子だ。
頬を膨らませる幸ちゃんの横顔をため息を吐きながら見ていたら、ふとその膝小僧に目が行った。
「おいおい、膝から血出てるじゃねえか!!」
「ふん、この程度ツバでも着けておけば治る!!」
「昔のガキ大将かお前は!!」
「気にするなと言っておろうが!!」
「ああもう、いいから黙ってじっとしてろ!!」
止血の必要まではなさそうだったが、このまま放っておけば黴菌が入るだろう。
俺は自分の鞄に入っていた応急手当セットから絆創膏を取り出す。幸ちゃんは終始迷惑そうな顔をしていたが、俺が絆創膏の裏紙をはがすとおとなしくスカートの裾をたくし上げて膝を出した。
28おじいさんのおもいで ◆Syk9Sx8L.s :2008/06/02(月) 21:32:22
「急に素直になったな」
「人の善意を無にするのは礼儀に反するからな」
相変わらずの口調で相変わらずなことを言う。
しかし俺の目の前にある脚は、そんな昔堅気の口に似合わない、すらりと細くて白い子供のものだった。
「なあ、湊」
「なんだ」
膝に絆創膏を貼ってやりながら上の空で答える。
「お前の仲間は強い者が多いのか?」
「さあな。俺はあんまりあいつらのことは良く知らないんだ。俺が知らない所で何かコソコソ活躍してるみたいだけど」
「お前は仲間が心配か?」
「……当たり前だろ。みんなそれぞれに不安で心配でしょうがないんだよ。俺も和哉もな」
そう言って目を上げると、そこには俺を心なしか潤んだ目で見下ろす幸ちゃんの顔があった。
「お前の仲間は強いそうだから、きっと大丈夫だろう……」
そう言ってきつく唇を結ぶ。
その言葉と表情の意味を知って、俺は彼女の頭に手を置いた。
「大丈夫だ。幸ちゃんの家族も絶対に死なないよ。自慢の家族なんだろ?」
その綺麗な髪をわしわしと撫でてやる。
「ば、バカ者、子供扱いするでない……」
そう言いながらも幸ちゃんは抵抗しなかった。

やっぱり幸ちゃんはちょっと口調が変でちょっと他の子とは違うことに興味を持つ、普通の女の子なんだろう。
29おじいさんのおもいで ◆Syk9Sx8L.s :2008/06/02(月) 21:33:02
【G-3 民家/一日目 昼】
【芝西湊】
【装備】無し
【所持品】支給品一式、応急処置セット、不明支給品1
【状態】健康
【思考・行動】
基本思考:幸一郎を保護する(ついていく)
1:狭霧嘉麻屋に対抗しうるだけの武器と人材を探す。
2:殺し合いはしない。
【備考】幸一郎をただの子供だと思っています


【鍵谷幸一郎】
【装備】無し
【所持品】支給品一式、不明支給品0〜3
【状態】健康
【思考・行動】
基本思考:この殺し合いを止める
1:狭霧嘉麻屋に対抗しうるだけの武器と人材を探し、倒す。
2:美和子と絵里花の事が少し心配
3:アルベルトを倒す。
30おじいさんのおもいで ◆Syk9Sx8L.s :2008/06/02(月) 21:33:28
息を殺して、なるべく音を立てないように扉を閉める。
なんとか二人に気づかれずに家の外に出られた。
まだ腹は痛むし、軽い眩暈もする。しかしじっとしているわけにはいかない。
和哉は歯を食いしばり、下腹部を押さえながら歩き出す。
口の中に酸味のする唾液が広がり、眼球の奥が針で刺されたかのように痛い。
和哉が湊たちのもとを離れたのには理由があった。
一つは、このまま一緒にいたらまた自分のせいで誰かが死んでしまうかもしれないという恐怖から。
自分を庇って人が死んだという事実は、子供の心にはあまりにも重いものだった。
もう一つは、鞄の中にあった支給品のうちの一つにあった。
それはクマのヌイグルミだった。ただし時限爆弾入りの。
和哉がそれが爆弾だという事実に気がついたのはトイレから出て、二人のいるキッチンに向かおうとした時。
トイレの前に置いていた自分の鞄から時計のような音がするのに気がつき、不思議に思って開けてみるとヌイグルミの表面にそれまでは無かった筈の文字が浮かび上がっていたのだ。

『これは時限爆弾を内臓しており、この文字が浮かび上がってから三時間後に爆発します。
爆発時間を一時間遅らせることが出来るコードは以下の通り』

そこから先のドイツ語は和哉には解読不能だった。
和哉に出来たのは、その耳無法一のような有様になったクマを前にしてパニック寸前になることだけだったのである。
湊や幸一郎に相談しようと言う考えすら浮かばなかった。
こんなものを持っていたらみんなの迷惑になる。
また、関係ない人を傷つけてしまう。
僕が、これをどこか遠くにまで捨ててこなければ……
幼い少年の頭では、そんな無謀な結論を出すのが精一杯だったのだ。
31おじいさんのおもいで ◆Syk9Sx8L.s :2008/06/02(月) 21:34:21
【G-3 路上/一日目 昼】

【泉和哉】
【装備】:木刀
【所持品】:支給品一式 時限爆弾入りクマのヌイグルミ
【状態】:健康 勃起
【思考・行動】
1:爆弾をどこか遠くに捨てる
2:絶対死にたくない、あと女の人の裸が見たい。

※爆弾は一定の手順を踏むことで爆発時間を操作できます
※ちなみに「さかぎけ」「猫ヶ丘探偵団!」共に万吉の世界にも存在しており、連載中です。
(嘉麻屋の話は深夜アニメ化した際の最終話になるような話。)
32名無し草:2008/06/02(月) 21:35:29
投下終了です
実は幸一郎の我侭に切れた湊が幸一郎のパンツを脱がせて尻を叩く展開もあったのだが流石に自重
33名無し草:2008/06/02(月) 21:37:26
>>21-31
乙です。
芝西君はほんと普通の男の子ですね(誉め言葉)
そして和哉……
34名無し草:2008/06/02(月) 21:40:02
死にたい人にお薦めの危険なロワ オリキャラロワ

北斗神拳伝承者なら大丈夫だろうと思っていたら女に瞬殺された
港から徒歩2時間の森で生首が三つ転がっていた
痛い人に会ったので無視すると絶叫してみると首と胴が別れを告げていた
毒サソリを使って他人を利用しようとしたら逆に襲撃され、気がついたら頭を撃ち飛ばされていた
殺人鬼がスナックのママに突っ込んで興奮した、というか殺した後から死姦する
民家の近くで後藤戦が暴走し、腐女子も「イチロウも」三人殺された
がやってきてから村を去るまでの数分の間に強盗に襲われた。
参加者の1/3が死亡。しかも大半が一般人という都市伝説から「一般人ほど危ない」
「そんな危険なわけがない」といって近付いた猫が数時間後頭を潰された
「主催者を倒したのだから殺されるわけがない」と生首を掲げた893顔が桃太郎に刺されて死亡した
分校から半径3200mの施設はマーダーの襲撃にあう確率が150%。一度マーダーから逃げてまた襲われる確率が50%の意味
オリキャラロワにおける死亡者は20人、うち8人の死因が射殺。
35名無し草:2008/06/02(月) 21:56:25
>>21-31
乙!
湊がかっこいいと思えてきたぞ。勘違いしっぱなしだけど。
おじいちゃんも家族が心配なんだな。
和哉は、うまくすればフーリエ組と合流可能だが……
36名無し草:2008/06/02(月) 22:16:28
>絶対死にたくない、あと女の人の裸が見たい。
まだそんな事いってんのか、和哉自重しろwww
しかしさかぎけのスポポロス最終回と探偵団のスポポロス最終回は違うんだなw
37名無し草:2008/06/03(火) 00:12:02
色んな世界がただのアニメや漫画という可能性はかなり低くなったが、
嬉々としてアニメや漫画の製作に励むアルベルトを想像したら吹くw
38名無し草:2008/06/03(火) 00:44:50
アルベルト「ネロが一晩でやってくれました」
39名無し草:2008/06/03(火) 00:46:46
スーパーペット現るw
40名無し草:2008/06/03(火) 01:05:08
そこは助手だろw
41名無し草:2008/06/03(火) 17:47:20
今気づいたが、芝西って今までの話全部一人称なんだな
探偵団作中ではキョンみたいなキャラだったんだろうかw
42名無し草:2008/06/03(火) 17:52:07
谷口とハルヒよりも遠い関係だと思うがなw
43名無し草:2008/06/03(火) 18:49:01
番外編の短編集の中の一話くらいでは主役張ったのかも
44名無し草:2008/06/03(火) 22:12:56
どんだけ脇役だよw
45名無し草:2008/06/04(水) 07:05:59
そろそろ過疎化が顕著になってきたし、対策でも話し合おうじゃないか。
46 ◆dEUulpVSzA :2008/06/04(水) 07:11:23
>>45
あっちこっちのサーバーで起きてる規制が原因かもな

アルベルト・ハインリヒ、ネロと
靄場陸朗、甲坂舞梨、ピピンでダブル予約
47名無し草:2008/06/04(水) 08:46:25
設定が入り組んできて、新規の人は書きにくくなって来たのかもね。
48名無し草:2008/06/04(水) 09:55:12
把握は他に比べればよっぽど楽なのにな
49名無し草:2008/06/04(水) 12:29:25
むしろどこが過疎?って話だが
よそに比べたら長さはともかく投下数は群を抜いてるぞ
50名無し草:2008/06/04(水) 12:44:27
あんまり過疎でもないのに過疎過疎言われると一種のネガキャンかと思えてくる
大手には叶うはず無いんだしそんな気負うな
51名無し草:2008/06/04(水) 13:01:28
書きたいけどリアルが忙しい自分涙目
あと一週間ぐらいは書けないぜorz
52名無し草:2008/06/04(水) 13:20:06
ちょいと掛け持ち先で予約中なのさー
53名無し草:2008/06/04(水) 16:26:29
保守
54名無し草:2008/06/04(水) 18:36:35
そろそろ投票でもやってみたいかも
キャラとSSで
55名無し草:2008/06/04(水) 20:03:24
君のその提案、イエスだね!
56名無し草:2008/06/04(水) 20:26:55
蒼井燕/靄場陸朗/アリス・ナイラーザ/アルベルト・ハインリヒ(平行世界)/
泉和哉/泉遥/伍宮瑞子/ヴェーヌ/老本則夫/大アジア帝国皇帝織田信長/
鍵谷絵理花/鍵谷幸一郎/鍵谷美和子/ケネス・シルバー/甲坂舞梨/ゴキブロス/
後藤戦/コードネーム『シスター』/坂木杏/坂木蕗/坂木檀/狭霧嘉麻屋/佐藤健/
芝西湊/ジュリア/周参見椿/鈴木イチロウ/ファシル(鈴木次郎)/鈴木万吉/鈴村佐知代/
捨流主麻亜太/勇者スポポロス/高原恭司/高水奈々/只野模武/ケンシロウ(剣四郎)/剣時宗/
デンドロビウム/藤堂秀一/一一一/ニャルロット/墓凪可憐/花子/晴海雪/日滝菅彦/
ピタゴラス/ピピン/フーリエ/ポー/マイルズ/マグナム・ハンス/真多秋生/
松井垂加/松井司/松井哲也/ミーウ/ミルフィーユ/美以葉子/桃太郎/矢島泪/
山田太郎/李飛龍/リリー・アップル・塔野/ロアルド・アムンゼン(その1)/
ロアルド・アムンゼン(その2)/ロアルド・アムンゼン(その3)/ロバート・スコット
アルベルト・ハインリヒ/アリシア・ハインリヒ/ネロ/アルムート・ハインリヒ/松井凪
秀猫院美羽/白部塗院藍璃/ジュリエット・シルバー/マイルズ・ホワイト/千恵原有子/森燐仙/その他キャラ

【投票するキャラ】:
【その理由】:


これで人気、不人気キャラの投票をやろうと思う。とりあえずキャラ一覧
57名無し草:2008/06/04(水) 21:11:53
住人数考えると一人五票はほしいかな
あとついでに第一回放送までのSS投票もやろうぜ
58 ◆dEUulpVSzA :2008/06/04(水) 21:15:47
とりあえず投下します。
主催者側キャラの話なのでチラ裏注意
59山と月が記す ◆dEUulpVSzA :2008/06/04(水) 21:16:45
儂が虎であるのは、一日の、24時間のうちの22時間だ(それがいつかは分からない)。アリシアは自室で昼寝をしている。の淵に、儂は正気に戻れる。くそ忌々しいあの男に媚びている。『虎』が眠るときだ。

「くそ忌々しいとは心外だな…ネロ」

アリシアの眠る部屋の隣にある吹き曝しのテラスで黄昏る儂の耳に響くのは決して心地よくない、今この場で噛み砕いて殺し捨ててやりたいほど憎い男―――

アルベルト・ハインリヒだ。カクテルグラスを飲みながら悠長にそいつは儂の前に姿を現した。

「昼間から酒か…」

「コープス・リバイバーだ。このカクテルには死者蘇生という意味がこめられているらしいが、実際は死者を蘇らせるなんてことはさすがの私でも無理だ。それに……」

「生物は死すのが常であり、死する側の滑稽さは死なぬ側が求める最上の喜劇である……」

「おぉ…その通りだ。私はそんな耳にタコができるほどキミに対し言っていたのか」

アルベルトの奴は儂がそう答えたのが不思議だったようだったのか、目を丸くして、先ほどよりもやや高いテンションで返してきた。

「虎である時も…四六時中耳に響いとるわい…研究員も皆知っとる……アリシアもな…」

アルベルトは口に向けて傾けていたコープス・リバイバーを止めた。

「アリシアに聞こえちゃ悪いような物言いだが……何が言いたいんだ?」

「今一度尋ねるぞ…あの娘があのままで本当にいいと、思っているのか?」

「……そんなことを尋ねるためにキミはあんなしかめっ面をしたのか?ご苦労様なことだ――――― 思っているに決まっているじゃあないか。人格や身体能力も、あそこまで到達させるのにどれだけ苦労したと思っているんだ?」
「まあ最も……ただの獣のキミには分からんだろうがな。」

「ただの獣じゃあない…確かに姿は獣かも知れんが貴様よりもまともな思考をしているぞ」
60山と月が記す ◆dEUulpVSzA :2008/06/04(水) 21:18:23
「言うじゃあないかロリコンジジイ。だがアリシアは好きで人を殺している。彼女の趣味をとやかく言うのは野暮なんじゃあないのか?」

「野暮なものか…彼女はいつか必ず我に帰る!その時に訪れる想像絶するものに……彼女はきっと耐え切れない……それに強化実験のリスクは知っているのか!?アルベルト・ハインリヒ!!」

「ああ知っている」アルベルトは冷淡にそう答えるだけだ。

「お前はあの子が大切じゃあないのか!!?」

儂は、必死になって全霊をこの男にぶつけたつもりだった。だがこの男はこう返す。

「全然大事じゃないよ。あんな物いくらでも代わりがいるし」

儂の心が怒るよりも先に、身体が動いていた。一直線に動く。スミロドンの如く長く鋭い牙が、アルベルトの肩にザクリと刺さろうとした。だがそれはすぐに止まる。

それはこの男のこの一言からだ。

「私が少しでも傷を負えば、アリシアの脳に仕掛けた爆弾を――爆破するぞ?」

止まらざるを得なかった。そして奴の前で、おとなしく頭を垂れなければ、いけなかったのだ。

「よろしい…じゃあキミも昼寝と洒落込むといい…ネロ……いや燐仙」

そうだ。儂の名は森燐仙。儂はこの男がたまらなく憎く、同時にこの男の、傀儡のような娘が不憫で仕方がない。
61山と月が記す ◆dEUulpVSzA :2008/06/04(水) 21:20:10
【名前】森 神虎院燐仙(もり じんこいん りんせん)
【性別】男
【年齢】437歳(1571年生まれ) 人格年齢は51歳
【職業】大アジア帝国2代目皇帝
【身体的特徴】人間時は髷を切った銀髪のオールバックのダンディーな初老の男。
【性格】一に国民、次点で自分と言う残虐さと優しさを兼ね備えた性格
【趣味】国立の孤児院を訪れ、子供たちと遊ぶこと
【特技】戦いはもちろんのこと、兵法にも長ける天才中の天才
【経歴】1622年にアルベルト博士に拉致され、虎に脳を移し変えられる(このことをアリシアは知らない) 2時間だけは正気に戻る。
【好きなもの・こと】子供(特にアリシア。ちなみにロリコンではない)
【苦手なもの・こと】アルベルト(虎の時は本能から媚びてはいるようだが、燐仙は彼を殺してやりたいくらい嫌い)
【特殊技能の有無】人間時もその強さはかなりのものだったらしい
【備考】アリシアのペット「ネロ」の真の姿。
ゲームを無事成功させれば姿を人間に戻した上でアリシアを養子にやるとアルベルトに言われている。アリシアはこのままでは絶対に幸せになれないと感じている。

誤字
× の淵に、儂は正気に戻れる。
○ 今日はその間に、都合よく正気に戻れた。

投下終了です。
もしアレだったら忘れてくれていいです
62名無し草:2008/06/04(水) 21:24:10
んー、こんな序盤から参加者に一切絡まない主催話を進めるのは良くないと思うが。
ぶっちゃけて言っちゃうと、内容的にも意味☆不明
63名無し草:2008/06/04(水) 21:31:26
これはネロが主催サイド裏切りフラグを立てたのかな?
名前からして美羽関連の人っぽいけど……
64名無し草:2008/06/04(水) 21:36:56
これがオリキャラロワといえなくもない。
65名無し草:2008/06/04(水) 21:40:18
鍵谷系の人物関係なり世界観なりがこんがらがってついていけなくなってきたので俺は忘れます。
66名無し草:2008/06/04(水) 21:41:38
というかダブル予約ってそういう意味だったんかい・・・
67名無し草:2008/06/04(水) 21:43:51
じゃあとりあえず自分の中でなかったことにしときます

明日の夕刻までには靄場、舞梨、ピピンのSS投下できると思うんで
68名無し草:2008/06/04(水) 21:44:24
保守
69名無し草:2008/06/04(水) 21:54:22
ま、挑戦するのは良いことさ。たぶんな。
70名無し草:2008/06/04(水) 21:59:37
国語の教科書に載ってた、虎になった中国の官吏の話
アレ思い出した……あの話が元ネタか?
71名無し草:2008/06/04(水) 22:54:05
タイトルからして山月記だからねえ。
72名無し草:2008/06/04(水) 23:37:06
パロロワwikiにオリキャラロワ追加してくれた人乙。
73名無し草:2008/06/05(木) 21:26:25
だれもいない?
やっとSS別キャラ追跡表作り終わった……
今日はこの辺で終わり。で次の日にはSSが増える状況には嬉しさと同時に軽い絶望を感じたよ。
74名無し草:2008/06/05(木) 21:41:08
>>73
乙。

もう少しだ、もう少しで書き上がる……
75 ◆dEUulpVSzA :2008/06/05(木) 21:46:43
書き上げたので投下
76ドブネズミみたいに ◆dEUulpVSzA :2008/06/05(木) 21:47:33
ウェルロッドは、サイレンサーを基本搭載した暗殺用の銃である。
分解すれば容易に衣服に隠しこめるが、装弾数は1発のみで、威力が低いため、一発で相手を仕留めたり、確実な致命傷を負わせる必要がある。
靄場陸朗は、もうすでに6発発射している。その都度弾丸を装填しているわけだ。
自分が殺したあの警察官の支給品だったベネリM3は、まだ使うわけにはいかなかった。威力は高い銃には間違いないのだが、ウェルロッドと違い銃声が響いてしまう。タブー中のタブーだ。

だからよほど危険な相手に出会わない限り使う気は全くない。彼がよく知る後藤戦に遭遇しても使用はしない。銃が通用しないことは彼自身がよく知っているわけだし。(どうでもいいけど装弾数7発のベネリの総弾数が20弾?)

自分の中のもやもやがいくらか晴れた彼は、再び思考をめぐらせる。
彼にそっち系の趣味はないのだが、よく見ると舞梨は少女にしてはやや発育がいい。
76、58、82と言ったところだろうか?スリーサイズについてはよく分からないが、成長性はAと言った感じだろう。(彼的には86、60、88がベストらしいが)

「な…なんですか?私に何か付いてますか?」
やや怪しみと畏怖を込めた瞳で靄場を見つめる舞梨の瞳を鬱陶しそうに見つめつつ、それでもそれは心の中に押し込めて再び笑顔でこう言う。

「いや…スカートにさひっつき虫がいっぱい付いてるから…」

「え?」舞梨がスカートを見渡すと、チェックのスカートにはオナモミが大量に付いていた。それを急いで彼女は取り払う。

時より揺れるミニスカートから、先ほどの黒いレースが本当に少しだけ見えたが、陸朗はもうなんとも思わなかった。
だが、彼はそーいうのとは別に、所詮憎悪対象でしかない舞梨を絶望の淵に突き落とす術を再び笑顔の壁に隠した状態で考える。
強姦、屍姦、殺しながら犯す。色々と考えていたが、どれも『作品』としては低俗だった。
どれもベタであり、甲坂舞梨を絶望の淵に叩き落すには一歩足りなかった。
だが、靄場の作家としての貪欲な本能が、『面白いネタ』を見つけた。
息を切らして、走ってきた地味そうな少女と、彼らは出会ったのだ。
77ドブネズミみたいに ◆dEUulpVSzA :2008/06/05(木) 21:48:16
ピピンの性根はとうに『曲がって』いた。鉄板や鉄の棒などを曲げに曲げると、それらは折れる。
ピピンの心にもそれは生じ始めていた。
誰からも蔑まれ、誰からも信用されないこの無能な彼女は、ドブネズミのような存在。決して愛されることのないドブネズミ。

「どうせ私は……ドブネズミ……」

性根が曲がると言うことは、それだけである種のトラウマだ。それだけで心は形状を変え、どれだけ苦労をしても曲がった性根は戻らず、そのトラウマがのこる。どっかの漫画はそれと同じようなことを言っていただろう。
だが、性根が『折れる』とどうなるだろう?それは、俗に言う自暴自棄だ。曲がった性根は枷にしかならないが、折れた性根は、『異常性を生む』

再びマテバを手にしたピピンは、清清しささえ感じられるような、今までにない顔つきで、靄場たちを見つめる。

舞梨は見逃さなかった。彼女の少し後方に、苦痛に身を歪めながら仰向けに倒れている死体の姿が(服装から判断するに恐らくさっき陸朗の前に現れた女性だろう)

「アナタが…彼女を殺したんですか?」舞梨は静かに問いかける。
「違う…私は悪くない」
彼女の言葉には心なしか恐怖は一切なかった。彼女の性根は、シスターを射殺した時点で折れていたのだ。
78ドブネズミみたいに ◆dEUulpVSzA :2008/06/05(木) 21:49:01
ピピンはマテバを舞梨に向け、一発発砲する。
もちろん舞梨はそれをたやすく躱すが彼女は未だ武器を上げない。
グロックで迎え撃ち、ピピンを殺害するのも彼女にとってたやすいことだが、舞梨はそれをしたくなかった。自分がこの手で殺した山田のことを思い出して。

「銃を下ろしてください…今ならまだ戦わなくて済むはずです…」

「どうせ私はドブネズミ…だったら私のほうからみんなを嫌いになっちゃえばいいんだ…怨めばいいんだ」

真顔で再びマテバの引金を、ピピンは引こうとする。殺ろうと思えばいつでも殺れるのだ。
だが、自分はあの時軽率過ぎたのだ。今思えば殺さなくても済んだかもしれない。監視すると言う名目で、保護する手があったかもしれない。
自分は能力や資格、名声などは手にしてきたが、それによって多少なりとも驕っていた。傲岸不遜に陥っていたのだ。舞梨はそれを心から反省し、ピピンと対峙している。
それは腐った蜜柑を見捨てず食べることと同じであり、自分自身を痛めることに直結する。だがピピンは、蜜柑ではないのだ。
蜜柑でないから、人だから捨てられない。この考えは、一部の人間には「甘い」の一言で片付けられるが、舞梨にはそれが無理だった。

銃弾はそれでも放たれる。躱すのは容易い。弾切れするまでやり過ごす自身も、彼女にはあった。
「お願いですから銃を収めてください!私は戦いたくない!!」

「優しい言葉はもうたくさんよ!!!!!」怒号と共に最後の弾数が放たれる。

だが、ここで舞梨に訪れるのは予期せぬ事態。彼女は躓いたのだ。出っ張っていた大きな石に。それは明らかに不注意からなるものであり、取り返しの付かないものだった。

「―――――しまった……考えに頭が行き過ぎた…やられちゃう…」

この間に、次の銃弾を装填する暇は十分あった。よろけた状態で、次弾を躱すのは流石の舞梨にも不可能。そう思いかけた刹那だった。

舞梨が地面に倒れこむと同時に、ピピンも倒れたのだ。ただ倒れたのではない。.32ACP弾を脳天に背後から喰らい、真っ赤な血潮が脳漿と共に流れ出る。

靄場は震えていた。
79ドブネズミみたいに ◆dEUulpVSzA :2008/06/05(木) 21:50:02
ピピンの脳裏に浮かぶのはデーヴァ星での辛かった過去。
孤独とネガティヴに板ばさみになっていた過去。
彼女の敗因を強いてあげるならばネガティヴ思想だろう。彼女は自分を無能なドブネズミと思いすぎた……

靄場の震えは、もちろん演技だった。だが鬼気迫る表情、冷や汗、震えの度合い。彼のそれには穴はなくケネス・シルバーに匹敵するほどの演技力と言ってもいい。

「……どうして撃ったんですか…陸朗さん…まだ説得できたかもしれないのに!」

舞梨は吼えた。自分の失態により、靄場が動いた(実際彼はいつでも動けたが)のだから。
「ゴメンよ……だがああするしかなかったんだ……」

ここで彼は少しだけ震えを引かせる。無論怪しまれないためにだ。

「……私は…もう人を殺したくなかった……」

「違う。舞梨ちゃんじゃないよ。やったのは僕だ。気負いすることは…」
「でも…」

「……キミは誰かを殺したのかい?」靄場は単刀直入にそう問う。対人関係を通常の環境では知識のみだったそれの穴である。

だが、今の舞梨にはそれは関係のないことだった。涙を流し、膝を落とす舞梨は名実共にただの子供。

靄場は「それ」にそっと寄り添い、彼女を抱きしめる。

「いいんだ。君は悪くないから……悪いのはアルベルト博士だから」

靄場は、本当はそんなこと思っちゃあいない。
彼女に抱いていた妙な違和感は、先ほどの彼女の強さだった。だが、それはもう彼にとって脅威ではない。あとは後藤戦対策として、この「兵器」は取っておくつもりである。
80ドブネズミみたいに ◆dEUulpVSzA :2008/06/05(木) 21:50:39
【一日目昼 D−3 森】

【靄場陸朗】
【装備】:ウェルロッド(銃弾13/20)
【所持品】:支給品一式、自家発電機内蔵電子レンジ(鍵谷美和子の発明品)、ベネリM3(銃弾20/21)、コルト・ガバメント(7/7)、.45口径弾(7)
【状態】:気分晴れ晴れ
【思考・行動】
基本:とりあえず全員殺そう
1:舞梨については今はもうただの高性能兵器としか思っていない
2:余裕があれば良質な『ネタ』を探したい

【甲坂舞梨】
【装備】:なし
【所持品】:支給品一式、グロック26(7/10+1)、マテバ 6 Unica(6/6)、、パイファー・ツェリスカ(4/5)、ツェリスカ予備弾5発、357マグナム弾(12)、ベレッタM92(15/15)、9mm.パラペラム弾(32)
グロック26予備マガジン(10発)×1、不明支給品0〜不明
【状態】:健康
【思考・行動】
基本:殺し合いを止めたいが、説得に応じない相手は殺すしか思いつかない。
1:靄場を信用している(信頼度60%)
2:けど、何か妙だ(疑心度40%)
[備考]:能力は超人的だが、何分子供なので極度の緊張や動揺には弱く、隙がそのときに生じてしまう

[備考]
その場に落ちていた武器はは全て靄場、舞梨によって回収されました

【ピピン 死亡】
残り46人
81名無し草:2008/06/05(木) 21:51:52
投下終了です。
旅に出ます
82名無し草:2008/06/05(木) 22:17:19
口説かれる幼女。飴を貰っても付いて行っちゃいけませんよー。
ていうか陸朗、なんだいその美味しい立ち位置は。ちょっと代わりなさい。GJ。

あとピピン南無。少々迂闊で、少々運の無い子だった。
83名無し草:2008/06/05(木) 22:40:53
乙。
靄場ほんと死ねww(良い意味で)
84名無し草:2008/06/06(金) 04:18:39
乙!
靄場は結局殺しを踏みとどまったか。
何だかんだでこいつも邪悪な奴だなw
ピピンはいつまで経っても場の空気を読めなかったのが敗因だな。
85名無し草:2008/06/06(金) 06:23:02
>>79
>対人関係を通常の環境では知識のみだったそれの穴である。

(・∀・)?
86名無し草:2008/06/06(金) 14:56:22
投下します
87ニードフル・シングズ:2008/06/06(金) 14:58:37

「椿」
「え?」
 唐突だった。
 ベッドに座り込んでいたミーウが、話し掛けて来たのだ。
 あの話から、二人はずっと黙り込んでいたのだけれど、しかしながら、それで椿はびっくりしてしまった。
 椿は一瞬逡巡しながらも、返した。

「何、ですか?」
「あたしね、あれから考えたの。三つくらい」
 その声調は相変わらず真剣なものであった。
 椿は、手を膝の上に置くと、聞く体制に入った。
 告白を聞いてから、椿はミーウに対してある種の警戒心を持っていたのかも知れない。
 ただ――変態から執行者へと評価が変わったに過ぎないのだが。

「一つ目はアルベルトの狙い。あたしは、多分何かの実験だと思う。
 あたし達を殺し合わせてデータを取ってるか、亜空間理論――つまり、あたし達を別々の空間から同じ空間に集める実験ついでにやってるのか」
 ――今まで混乱して、そんなこと思い付かなかった。
 確かに狙いもなくこんな大掛かりなことはしないだろう。
 あのアルベルトはその何かの実験、の為に自分達をこんな危険な目に晒させているのだろうか?
 どちらにせよ気分の良い話ではない。
「じゃあ、それって私達はたまたまこんなことに巻き込まれたって――」
「それも、目的の一つでしか無いと思うけど。わざわざあたし達を選んだ狙いとか、きっと他に何か狙いはある」
88ニードフル・シングズ:2008/06/06(金) 15:00:07
 そうだ。椿みたいなしがない高校生と李飛龍のような拳法家、ミーウやマイルズ、果てはゴキブロスのような人間ではない者まで、ほとんど共通点のない参加者同士を戦わせて何の意味があるのだろうか?
「他に――?」
「何か、そう、データの集計以外に何か理由があるかも知れないわ。或いは誰か個人の戦闘力を計る為だけに集めたのか。
 その個人が新しい実験動物なのか、イカれた犯罪者なのか分からないけど」

 そこで一息置いて、ミーウは続けた。
「それから、これからのこと。多分――これからも、誰か、やる気になった奴が襲ってくるかも知れないわ」
 触手男の例があった通り、いきなり自分達に襲い掛かる参加者が他にも居るかも知れない。
 いや、それは確実に存在する。
 放送で名前を告げられた十七人と言う人数が、それを明白にしているのだ。
「そのナイフをそいつに突き刺す覚悟はある?」

 ――殺す覚悟はある?
 ミーウはそう聞いている。
 先程、椿は「他人を踏み台にしてまで生きたくはない」とは思っていたが、しかし「他人を踏み台にしてまで生きようとする者」に対してはどう対処すべきなのか、までは思考がまるで及ばなかったのだ。
 椿は執行者としてミーウがどれだけの命を葬ったかは知らない。
 やはりミーウはそんな覚悟を遠い昔に決めていたのだろう。

 椿の結論としては、それは致し方ない。自分だけではない。殺さなければ仲間――友達が殺されるような状況も含めてならば――
89ニードフル・シングズ:2008/06/06(金) 15:02:36

「――本当に仕方なくなったら、その時はやるつもりです」
「それでいいわ。本当にこのゲームを潰すつもりなら、少なくともアルベルトを手にかける必要があるから」
 マイルズや泪が死んだと分かった時の虚無感はそれはひどいものだった。
 それこそ――二度と経験したくない。

「最後は」
 真剣だった先程とは打って変わり、ミーウのそれは急に妙に愛らしく聞こえた。
 ――椿にはもう読めていたのかも知れない。
「あたしと、あなた――のっ!」
 椿の掌底は口を近付けていたミーウの顎を綺麗に捕らえた。
 空手初段の椿の一撃はミーウをベッドに沈めたのだ。
 明らかに怪我人に行う行為ではないが、まあいい。
 少なくとも人間の規格を無視した状態のミーウならこの程度なんともないだろう。

 それから数秒もしない内に保健室のドアが音を立てた。
 敵襲かとも警戒し、椿は直ぐさまナイフを構えたがその必要は無かったようだった。
 ――開いた扉の奥から李飛龍と、椿と同じくらいの少女、なんだか特徴の無い男が立っていた。
90ニードフル・シングズ:2008/06/06(金) 15:04:41

――
「リリーさんって料理うまいんですね」
「食べるのが好きだから、暇があればよく料理してたのよ」

 リリー――自分より一つ年下の女の子の見事な包丁捌きに、椿は見とれていた。


 地味な男、捨流主麻亜太と少女、リリー・アップル・塔野は李飛龍が分校近くの道を歩いているところを見つけたらしい。
 李が仲間に誘ったところ、二人とも即座に快く了承した。
 ――そんな所だと聞いた。
 今は李を除いた四人が腹を空かせていたので、リリーと椿が保健室の隅にあったガスコンロ、麻亜太が持っていた包丁を使って料理していた。
 その間、李と麻亜太、ミーウは何かを話し込んでいた、ようだった。
 情報交換をしているのだろう。

 その内にテーブルの上に李が持っていた人参とキャベツ、ハムを使って無理矢理肉野菜炒めにしたもの、保健室にあったコーヒーや紅茶が五人分並べられた。
 待ち切れないと言った感じでリリーとミーウは席に座り、李と麻亜太はその二人からある程度離れた位置に座った。
 椿はミーウの隣に座った。と、言うのもやはり男の隣には誰であろうと抵抗があったからだ。それが李飛龍でも。

91ニードフル・シングズ:2008/06/06(金) 15:05:23
 周りがもう食べ始めている中、椿はよく焼けたハムを割り箸で掴み、口に入れ、よく咀嚼した。
 芳醇な肉の香ばしい風味が口の中に広がったことを確認し、それから飲み込む。
 続けて、食道からも温かい旨味が広がった。

 おいしかった。文句なしにうまかった。
 特に、血の臭いを嗅ぎ慣れた後では。

「どう?」
 リリーが、全員に向かって聞いていた。味付けに関してはほとんど彼女が行っていたので。
 それに最初に返したのはミーウだった。
「私の好みはもう少し辛みのある方が――」
「辛み? あれ、結構胡椒をかけたつもりだったんだけど」
「だって、ちょっとこれ薄くない?」

 ミーウは数時間前のミーウに戻っていた。
 そう――それは芝居なのだ。
 リリーや麻亜太、李はそれを知らない。
 ただ、狐の顔を持った変な子。それが共通のインスピレーション(麻亜太は少なからずそれに驚いていたようだったが)。
 執行者としてのミーウを知っているのは自分だけ――だけど、今はどうでもよかった。

 そんなミーウを見ながら椿は紅茶を啜った。
 こうしてみんなで食事を取っていると無闇に平和な気がした。
 ――まだ自分達がこの殺人ゲームの中に巻き込まれているのを分かっていたとしても、だ。
92ニードフル・シングズ:2008/06/06(金) 15:06:34
――
 李飛龍の誘いはありがたかった。
 李から聞いた化け物の存在は麻亜太にとっても少なからず脅威だったのだ。
 投射物しか防げないであろうリリーと二人だけでは間違いなく、確実に自分も含めてその触手の一撃の元に仕留められるだろう(李が嘘を言ってなければ、だが)。
 それならば、なるべく大勢の中に身を置いた方が生存確率は上がる筈だ。

 麻亜太ならやろうと思えば隙を突いてグループを疑心暗鬼に陥れ崩壊させることも十分に可能なのだが、しかし、それ単独ではあまりにリスクが高すぎる。
 それに六時間でこれだけの人数が減っているなら殺し合いに乗った参加者がそれなりに居る(一人で十七人も殺すって?)、これならその参加者の戦力次第でこちらが襲撃を受ける可能性も少なくはない。
 ならば――人数が減るまでは、グループを保たせ、そしてなるべくグループを動かして殺人者とかちあわせるようにすればいいのではないだろうか?
 麻亜太の様にじっくりと腰を据えるならともかく、積極的にゲームに乗ると言うことは基本的に誰も信用しないと言うこと。
 そうなると必然的に一人で行動せざるを得なくなる。
 こちらはなんだかんだで五人居るし、これなら負けることはまず無い筈だ。
 それを繰り返せばグループは消耗し、人数は減っていく。
 いずれは生き残るのはこのグループ、或いは麻亜太だけになる――

 気掛かりなのはこのまま分校に立て篭もる可能性もあったことだが、しかしそれ程大きな問題でもなかった。
 少なくとも行動を起こすにはアリス・ナイラーザを捜すと言う立派な口実があるのだ。

 さて、これからどう動こうか。
93ニードフル・シングズ:2008/06/06(金) 15:08:06
――
 ミーウは素詳を隠しながら、しかしリリーと麻亜太の二人を警戒していた。
 この内のどちらか――或いは両方がヴェーヌを殺していないとも限られてはないからだ。

 状況として――そう、やはり有利なのだ。大人数で行動した方が。
 仮に襲われたとしても、これだけの人数、少しの犠牲は出ようが、しかしまず負ける筈が無いのだ。

 周参見椿は、確実に信用出来ると何故か確信が持てた。
 李飛龍は触手男との戦いを思い出していれば、どちらかと言えば信頼に値する部類に入るだろう。
 マイルズ――は、そう、本来ならば彼が一応、ヴェーヌに並び、一、二番目に信じられた筈だったのだが、しかしもう彼は死んでしまった――
 ゴキブロスはあの危険な電波送受信野郎から自分達を逃がす為に、わざわざ囮になったのだ。しかし、それも何かの策略と言うのも有り得るけれど。

 問題は――リリー・アップル・塔野と捨流主麻亜太だった。
 リリーは、そう、確か――いつだか、街で子供二人が街中の人間を殺し回っていたのを記憶している。
 ジュリアはその子供二人と戦ったらしいが、しかし本当に二人とも強かったらしくその上邪魔が入って倒しそこなったと言う。
 ――リリーがそうだと有り得なくはないし、そして可能性としては十分である。
 何れにせよ、まだ警戒する必要があった。

 麻亜太は不気味な存在だ。
 話してみて、発音、表情をしっかりよく見ていれば分かるが、やはり事務的な話し方になっているのだ。
 そして、それは――何かを隠している証拠だ。
 あちらが探偵を何年やってるかは知らないが、執行者を何十年もやってきたミーウにとってそれを見破るのは造作もないことであった。
 あの施設に居た時、研究員が逃げ出す直前には、大方周囲にそんな話し方をしていたので。
 後はマークすれば、面白いようにどいつもこいつも一週間以内には資料を持って逃走を計ろうとしていたのだ。


 やはり警戒しなければならない。
 仮に本性を現すとしたら、それはもう自分達しか残っていないと言う状況になった時だけだろう。
 そう、そして椿に刃物の切っ先や銃口を向けた時――
 その時は、容赦なくグロックの鉛玉を撃ち込むつもりだった。

 ごめんね、――全部、椿を守る為なのよ。
94ニードフル・シングズ:2008/06/06(金) 15:09:59
【F-6・保健室/一日目/昼】

【周参見 椿】
【状態】:正常
【装備】:狭霧嘉麻屋のナイフ
【所持品】:支給品一式、狭霧嘉麻屋のハサミ、サンポール、生臭い赤い液体が入った袋、救急箱(マキロン、ガーゼ、包帯、風邪薬)
【思考・行動】 基本:生き残る
1:ゴキブロスの無事を祈る

【ミーウ】
【状態】:覚醒、下腹部に風穴(治療済、内臓は外れている)
【装備】:矢島泪のお守り、グロック19(13/15)
【所持品】:支給品一式
【思考・行動】 基本:椿を守る(椿が死んでしまったらゲームに乗り、優勝してアルベルトの元へ行って復讐する。この事は椿にも李にも伝えるつもりは無い)
1:しばらくは李に合わせて行動する
2:リリーと捨流主は少しでも怪しい真似をしたら撃ち殺す

【李飛龍】
[状態]:首に痣
[装備]:ヒョウ(14本)
[道具]:支給品一式、多量の食料、人間収縮機、民家で回収した何か
[思考]:このゲームを転覆させるッ!
1:強い意志、正義の心を持つ者には協力する
2:たとえ刺し違えてでも触手男を斃す
95ニードフル・シングズ:2008/06/06(金) 15:12:01
【捨流主麻亜太】
【状態】:健康
【装備】:ヘヴ山ゴッド子の杖
【所持品】:支給品一式 不明支給品なし
【思考・行動】
基本:他人を利用して生き残る(ステルスマーダー)
1:アリスを捜す振りをしながら、他者を陥れていく。
2:人数を減らしつつチームを消耗させる

【リリー・アップル・塔野】
【状態】:健康
【装備】:三得包丁
【所持品】:支給品一式、デジタルカメラ 不明支給品なし
【思考・行動】
基本:殺しあいを止める。打倒アルベルト。
1:アリス・ナイラーザ、及び殺し合いに乗っていない人物を探す。
96名無し草:2008/06/06(金) 15:13:00
投下終了。
一度ミーウが深い行為に走ったけどさすがにまずいと思い却下。
やっぱり生存を優先させるなら麻亜太はグループに入りざるを得ないんじゃないかと。
97名無し草:2008/06/06(金) 16:43:42
>>86
投下乙。
Wikiに載せときました。あと自分が書いた靄舞の話は加筆、修正を加えときましたんで。
98名無し草:2008/06/06(金) 19:11:10
乙!!
巨乳とつるぺたの出会いは後々軋轢を生みそうだな


しかし、どこの集団もステルスやら危険対主催やらを抱え込んでて安心出来そうにないなあ
99名無し草:2008/06/06(金) 19:29:40
椿:B94 W61 H90
ミーウ:B84 W59 H89

異論は認める
100名無し草:2008/06/06(金) 19:40:47
あ、>>93のミーウのリリーに関しての
>リリーは、そう、確か――いつだか、街で子供二人が街中の人間を殺し回っていたのを記憶している。

>ミーウは、そう、確か――いつだか、街で子供二人が街中の人間を殺し回っていたのを記憶している。

に修正してください
101 ◆dEUulpVSzA :2008/06/06(金) 20:15:01
後藤戦、ファシル、ゴキブロス、鈴村佐知代で予約
102 ◆dEUulpVSzA :2008/06/06(金) 23:16:48
できたてほやほやを投下します
後藤戦の名前が、『戦乱』の『戦』なのはわけがある。
W県蜜首村に、100年以上前に後藤家に戦は生まれた。
後藤家は代々帝国軍に太いパイプを持っていた大物中の大物だったが、同時に一族のほとんどが戦争ジャンキーだった。
名前に死や戦乱に関連する言葉を付け加えるのは当たり前。近親相姦により子孫を増やすため、ほぼ例外なく全員好戦的な性格に育つ。
後藤戦は、後藤争好(ごとう あれよし)と後藤刎(ごとう はね)の間に生を受け、その例に漏れることなく、好戦的に育つ。
そして、軍が密かに運営していた『寄生虫兵器プロジェクト』に志願し、寄生虫を受け入れた。
彼はその後、一族や軍関係者を皆殺しにし、残さず食らった。正気に戻ったころには、すでに自分の周りの人々は全て自分の胃袋の中。
自分を生まれて初めて恐ろしく思った。彼は村の奥地に身を潜め、寄生虫を抑えつけていた。それは約100年持続しはしたが、彼の精神は100年経ったちょうどその時に、寄生虫に喰らい尽くされる。
人間:後藤戦の最期の言葉は「俺を…殺してくれ……」

本鳶輪炒(ほんとび わいる)著書『寄生虫ゴトゥーザ』より抜粋
ちなみに本鳶輪炒とは、靄場陸朗のペンネームである。

今の後藤戦の傍らにあるのは、血痕と骨の欠片と思しき、少し黄ばんだ白い破片。
後藤戦は、食事終了後も貪欲に獲物を探し続け、匂いを辿った結果、たどり着いたのは民家だった。中には餌の匂い。
佐知代は、相変わらずテレビを観ていた。危機感を募らせず、自分のことだけを考えている彼女は、相変わらず誰に言っているわけでもなく愚痴をこぼす。
ジュニアズのアイドルやイケメン俳優が出てきたときだけ目の色を変えてテレビに齧りつき、女性アイドルが出てくるとそれは再び愚痴に戻る。
「この娘も大して可愛くもないのにテレビによく出てるわよね〜この番組もあんな乳臭いガキ使うんだったら私使いなさいよ〜全くもう…腹立たしいわ」

ボヴッ

佐知代はソファーにとても大きな音と共にかなり臭い屁を引っ掛けた。
それがいけなかったのだろうか。扉から触手は少しずつ侵入する。一本、二本、三本四本五本六本…
「ぎゃああああ気持ち悪いッ!!なによこれ!!!」

七本を越えた時点で、佐知代もようやくそれに気付き、ベレッタを手に取って発射する。

バァンッ!

「オイファシルッ!今のァ!」
「そのようだな…」

ファシルとゴキブロスも、それには気付かざるを得なかった。民家の中に入るッ!
硝煙とともに、触手は止まった。扉に着弾した銃弾は、そのまま薄い木の板でできた扉をぶち破ったのだ。
触手の主は動かない。触手は七本全部地面にベチャリと沈む。

「はぁーっちょっと動いたら汗かいたわ…」佐知代は安堵を浮かべ、ガラス戸を大きく開け放つ。
そこから吹き込む風が、とても心地よい吹き込む風。
その吹き込む風は、先ほどの薄い扉を動かした。
その瞬間佐知代は驚愕する。触手は、すでに千切れていて、その主はいない。

「何よっ!!?ふざけんじゃないわよ!何でいないのよ!!この豚野郎!」この状況でも、佐知代は自己中心的な怒りを忘れない。だが、その怒りは、彼女にとって最期の怒りとなる。
頭上より振り子刃のように降り注ぐ触手が彼女に見えたとき、もう彼女に意識はなかった。
彼女のハムのような肉体は、ハムのようにきれいに輪切りとなった。
ファシルたちが駆けつけたときには、佐知代はすでにただの輪切りハムと化していた。
自身の精神を凄まじいほどに攻撃したあの化け物はすでにハムと化して、その化け物よりも遥かに恐ろしい化け物が、ファシルとゴキブロスの方にチラチラと目をやりながら、それでも触手でドリルのように肉を穿り出して口に運ぶ。
「どうするファシル……逃げるか?」小声で囁くゴキブロス。
「そうしたいところだが…これはチャンスでもある……この化け物を殺す…」

ゆっくりと、電動ノコギリを構えて、後藤に近づく。耳を劈く電動音にすら、後藤は微動だにせず、佐知代の新鮮な肉に舌鼓を打つ。どんどん近づき、ファシルは振りかざすッ!
「堕天使の欠片を持つ者よッ!!!死ねぇぇええええ!!」

振りかざされる電動ノコギリ。後藤戦は、一切叫ぶことなく、一切悶えることなくただただ沈む。黄色い血液や内臓が、物凄い勢いでファシルに飛び散るが、それでも止まらない。

電動ノコギリは床に沈み、後藤戦の上半身と下半身は、切り離されていた。
「フッ……フッ……フッ…」

黄色い血に塗れ、息を切らすファシルは、顔からそれを拭い取る。
「終わったぞ…ゴキブロス……」
達成感があった。ルシファー・アイがなくとも、自身が潜ってきた修羅場の数を考えれば、こんな危機乗り越えられて当然だった。

「だが用心しろ……そいつ何度でも再生するぞ…」

「用心か…する必要などない……どうせ動かな……い?」

動いていた。上半身から下半身が生えて、触手が、ファシルの腹のど真ん中に大きな風穴を空けていた。

「馬…鹿な………この勇者ファシルが…」

今更言うまでもないが、ファシルなんていない。今致命傷負い、虫の息と化しているこの少年は、鈴木次郎という普通の少年だ。

「ルシファー……ルシファー…いるか…」
『おぅいるぜぇ…へっへっへ…てめえは死ぬぜ。これで俺ァ晴れて自由ってわけだ』
「ふざける…な…俺はこんなところでは…………こんなところでは…」
『まあ俺もこんなんじゃつまんねえがな』
「何が言いたい……」
『どうせ死ぬんなら使いなや…ルシファー・アイを』
「……今の俺には…………」
『おんや〜逃げるのかいファシル君はぁ〜無様だねえ勇者がこんな雑魚相手に』

とても屈辱的だった。次郎、いやファシルの胸に響くのは忌々しいルシファーの声。
こいつの言いなりは癪だ。従いたくない。
今使えるかどうか不安だ。自信が無い…。

だが今は…やるしかないッ!
「『畏怖せよッ!!ルシファー・アイ』」


ルシファーとファシルの声は重なり、次の瞬間後藤戦の動きは止まる。

触手から解き放たれたファシルは、傷口を抑えて安堵に浸る。

「…癪だが礼を言う……ありがとよ…」

『………さっさとくたばれバーカ』

ルシファーの毒づきに対し、今だけは怒りを覚えず笑う。

だがその笑いはすぐに止まる。

ファシル…いや、鈴木次郎の顔には、巨大な風穴が開き、歯の破片や肉がこぼれ落ち、次郎は倒れた。ルシファー・アイは確かに作動していたが、安堵が長すぎたのと、動けないほどの致命傷だったからと言う理由から全く意味は成さなかった。当然である
「ここはどこだ?」
『地獄だよ』
「なんで俺は地獄にいる」
『地獄が次のステージなんだよ』

『ファシル』は、赤土の上に尖った石の突き刺さった場所で、ルシファーらしき悪魔と向き合って会話を進める。

「次のステージって何だ」
『お前は魔王四天王の最後の一人『ウネーリア』を倒した。正真正銘のボスキャラが俺だ…』

ファシルは気付いた。自身の腹には穴も空いていない。それどころか身に纏っているのは黄金の鎧『ゴルド・ヴェヴィア』…魔界の偏狭の金鉱山でのみ作られる幻の鎧だ。
そして手にしているのは最強の対魔の剣『ユジュヴェ・ヌアホート』……ファシルは自身の成長に静かに驚愕した。

『ウネーリアの腹の中にそれらはあったのさ…そんくらいでないと張り合いねえからな』
「抜かせッ!今日が貴様の命日だ!!」

「『うぉおおおおおおおおっ!!!』」二人は向き合って一戦に臨む。
ファシルの勇気が世界を救うと信じて!!

一方鈴木次郎は、顔を刳り貫かれた時点で即死していた。彼には最期の顔すらなかったのだ。
まあ二つの罪なき命と不用意に摘んだ結果とも言えるだろう。

「…ヤベエことになったなあ……だがお陰であの電波からようやく解放されたぜ…」
何もできないゴキブロスは逃げるだけである。そう。逃げるだけ。
【 F‐8 民家/一日目 昼】

【ゴキブロス】
【装備】:マイクロカメラ
【所持品】:支給品一式、ポーション
【状態】:触覚は千切れたが健康、色々と考え中
【思考・行動】
1:分校に向かう
2:後藤から静かに逃げる
3:今はミーウのことを心配している
4:秋生と合流したい

【後藤戦】
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:なし
[思考]:なし
1:なし
2:なし
[備考]鈴木次郎の死体を捕食し始めた。あとでハムも喰うつもり
ゴキブロスには気付きませんでした

【鈴村佐知代 死亡】
【ファシル(鈴木次郎) 死亡】
残り44人
111名無し草:2008/06/06(金) 23:29:05
投下乙。
さすがサッチーは油断し過ぎだwww
ファシルはやっぱり自分の実力と相手の実力を推し量れない状態だったから強マーダー相手だとまず勝てないな
112名無し草:2008/06/07(土) 00:57:32
投下乙
ファシルww
後藤の説明がおもしろかった。
113名無し草:2008/06/07(土) 01:12:31
投下乙!
後藤、真価を発揮しだしたなあ…
陸朗の「弱点」がなんなのか明かされるまで倒されそうにないぜ
114名無し草:2008/06/07(土) 15:50:09
ハムワロタwwwwwwwwww
115名無し草:2008/06/07(土) 15:57:53
ところで開始約7時間で23人ってやっぱハイペース?
116名無し草:2008/06/07(土) 16:42:44
それよりステルスマーダーやら危険対主催が集中的に減ってることが心配
117名無し草:2008/06/07(土) 16:56:17
取り敢えず残っているステルスマーダーはうまく集団に潜り込んだりして今は安全な感じ
それに残ってるマーダーが明らかにハイスペックばかりなので対主催が増えすぎても無問題
危険対主催は桃太郎とミーウが居るし
118名無し草:2008/06/07(土) 17:00:26
靄場ってステルスに数えられてんの?
119名無し草:2008/06/07(土) 17:22:00
後藤、狭霧、アム2だけで20人は殺せる気がする…
そこへ花子が加われば…おお、残り参加者の半分が削れるぞ
120名無し草:2008/06/07(土) 17:40:57
後藤は普通に弱点無し
アム2は接近銃撃両対応のオールラウンダーだけど同じタイプの相手だと苦戦を強いられそう
狭霧は接近戦メインだから銃撃戦に持ち込まれるとキツいかも知れない

花子は瀕死……
121名無し草:2008/06/07(土) 17:50:14
花子の活躍は悪のお守りがどこまでの加護をもたらすか、にかかってるなw
大暴れして散ってもそのお守りが受け継がれれば新たな強マーダー誕生だから、
実においしい立ち位置のキャラと言える。
122名無し草:2008/06/07(土) 17:55:49
             _   __
             /´=:ミ´二.ヾ\
            / '/ '´rー=、ヽ.ヽ 、ヽ
          i / 〃,イ|   | |_L| l l     私の加護は誰でもウェルカム
            |.l.l ル'__リヽ  ヘl_Nヽ!.l |      殺戮でも復讐でも
          | |.バ ̄o`  ´o ̄,"|l |      どうぞお気になさらず
.          レ1  ̄ 〈|:  ̄  !`|     ご自由にお楽しみください
          ド」 、ー-----‐ァ ,lイ!
      _,,... -‐| l ト、`¨二¨´ ,.イ.l lー- ...._
   ,ィ''"´:::::::::::::::| l.l ::::ヽ、__, .::´ :l.l |:::::::::::::::::`¨lヽ               r'つ
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ヽ::::::::::::::;イ:::::::::::::::::::::::::::V   V::::::::::::::::::::::::::::ト、:::::::::::::/::::::::::::::::::::::/
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_:/   |:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::|    \_:/
             ヘル海サタン美
123名無し草:2008/06/07(土) 17:56:48
ひょっとしたら花子よりもアム2の方が危機的状況に立ってるかもな
書き手さん次第だが
124名無し草:2008/06/07(土) 18:01:00
>>120
刃物の印象があるけど、実は狭霧は銃の扱いもプロフェッショナル。
しかもちょうど手に入れた所だし。
125名無し草:2008/06/07(土) 18:01:56
アム2には必殺の悪知恵があるからな…
手段を選ばんことにかけては定評があるぜ
126名無し草:2008/06/07(土) 18:48:07
現在の危険対主催ってどのくらいいるかな?
絵理香、ミーウ、舞梨、瑞子くらいか?
127名無し草:2008/06/07(土) 19:11:33
桃太郎も筆頭だろう
フーリエもある意味それだ

こうしてみると、どこのグループもステルスなり危険対主催なり誤解フラグの芽なりが混じってて
いい感じだな
128名無し草:2008/06/07(土) 19:16:15
フーリエは誰が死のうが絶対に対主催からは転がらないんだろうな
他の対主催と違って不殺を通そうとしてるし……


何この七原秋也犬
129名無し草:2008/06/07(土) 19:18:42
ニャルロットも密かに「襲ってきたやつは殺す」スタンスなんだよな。
130名無し草:2008/06/07(土) 19:32:28
アムンゼン3も紳士ではあるがある意味危険だw
131名無し草:2008/06/07(土) 20:01:36
どうでもいいが今のところ恋愛フラグ立ってるのが
爺と青年だけな件について
132名無し草:2008/06/07(土) 20:36:39
万吉乙
133名無し草:2008/06/07(土) 20:51:18
恋愛フラグなんて絶対必要なもんじゃない
ないならないで別にいいだろ
134名無し草:2008/06/07(土) 20:59:34
椿とミーウに期待だな
135名無し草:2008/06/07(土) 21:04:09
男女で動いてる組は多いんだけどね
まあ今後展開させようとしてるカップルは俺には三組ほどあるぜ
136名無し草:2008/06/07(土) 22:25:58
恋愛自体は構わないけど、無理やりするのはやめてくれよ
137名無し草:2008/06/07(土) 22:30:02
戦がハムにあたって活動を休止しそうだな
138名無し草:2008/06/08(日) 00:11:34
元ネタの寄生生物も食材の質には結構気を使っていたからな
……ちょっとやばいんじゃないかw
139名無し草:2008/06/08(日) 10:15:52
サッチーの頭部が肩から生えて来たりして
140名無し草:2008/06/08(日) 10:17:14
>>139
グロいw
141名無し草:2008/06/08(日) 10:32:16
SSの投下減ったね…
142名無し草:2008/06/08(日) 10:56:22
(だってさ……書いたはいいけど二人死亡話の後に二人死亡話って投下しにくくねえか!?)
143名無し草:2008/06/08(日) 11:02:34
>>142
構わん、やれ
144名無し草:2008/06/08(日) 12:07:55
GO!
145名無し草:2008/06/08(日) 13:20:22
投下マダー?
146名無し草:2008/06/08(日) 14:12:42
保守
147名無し草:2008/06/08(日) 18:30:54
>>142の投下はまだか? 何を書いてるかわからないから書きにくいぜ
148142:2008/06/08(日) 19:14:33
誰かが一話投下して被らなかったら投下するよ
遠慮なくどうぞ
149名無し草:2008/06/08(日) 19:27:29
じゃあ俺142が投下するまで書かないわ
150名無し草:2008/06/08(日) 19:28:07
じゃあ俺もプロットあるけど142が投下するまで(ry
というのは冗談だがみんなやれっていってるんだから投下しなさいよ
151名無し草:2008/06/08(日) 19:30:24
最近書いてなくて誤爆見て気づいた俺としても142には投下してほしいんだぜ
152142:2008/06/08(日) 19:58:04
待って。
ならせめてもう少し推敲させて、お願い……
153名無し草:2008/06/08(日) 21:13:18
は、はやくしなさいよね!!!
154名無し草:2008/06/08(日) 21:34:27
勘違いするなよ、俺が遅くまで起きてるのはユーロ観戦のためだ
決して眠れないほど期待してるわけじゃないんだぜ…?

待っててやるから、いいものにしろよな…
155名無し草:2008/06/08(日) 21:39:55
べ、別にあんたの投下を待つために更新連打してるわけじゃないんだからねっ
156名無し草:2008/06/08(日) 22:01:54
ああ道理でパソコンから書き込めないわけだ
157名無し草:2008/06/08(日) 22:41:24
ええいっ、投下はまだかね!?
158名無し草:2008/06/09(月) 01:05:52
よし、明日休みだし投下が来るまで寝ないぞ
159142:2008/06/09(月) 02:32:33
こっそり投下
160IMMACULATE:2008/06/09(月) 02:34:02

 島中に、日光がいつもの様に降り注いでいた。
 照らされているのが血溜まりなのか、或いはゴミの様に散らかった死体なのかはともかく。

 ジュリアは民家の裏で、探索をしていた。
 まだ多少の無気力感は残っていたものの、それが死に繋がるのだとスラム街暮らしで痛い程理解しているからだ。
 そう分かっていても、やはりジュリアは気分を沈ませずにはいられなかった。

 手にした古びた鎌をかなり切り詰めたジーンズの背に身につけ、ジュリアはデイパックを背負いなおした。
 民家で手に入った物は鎌、ストーブから調達した灯油を入れてコルクで詰めたコーラ瓶、それを使う為に必要なティッシュとマッチ。
 接近戦に持ち込まれて銃を使えない時はやはり刃物が必要だったし、民家に立て篭もる馬鹿には火炎瓶でも投げ込んであぶり出した方が手っ取り早い。

 とにかく、いかにして自分から多く殺せるかが重要だった。
 面倒なことになる前に他の参加者に支給品を渡さず、回収しなければならない。
 それに銃をもう一丁か欲しい、と言うのもあった。
161IMMACULATE:2008/06/09(月) 02:35:31

 もうゲーム開始以来初めて襲い掛かって来た男のように相手を逃がす真似をするつもりは無かった。
 もし仮にまた逃がして、恐らく組まれると思われる徒党の中にでも入り込まれ、ジュリアが殺し合いを始めた旨を伝えられたら。
 ――そんな失敗は許されないのだ。

 ジュリアはその場から立ち去ろうとし、しかし、向かいの民家の脇の道、何者かの影がちらりと見えた。
「待ちな!」
 ホルスターからシグザウアーを取り出しながら、ジュリアは叫んだ。
 近くの山に反響したのか、山彦が少しだけ、響いた。
 その人影は怯えた様子でこちらを向き、直ぐさま踵を返した。
 慌てて逃げようとしているのかも知れない。
「待たねえと撃ち殺すぞコラ!」
 どっちにしろ殺すけど。
 そう叫んだ途端、影の動きが硬直した。
 ジュリアは銃を構えたまま近付き、影に近寄る。
 そして了解した。
 それは数時間前、いきなり襲い掛かって来たあの男だったのだ。

162IMMACULATE:2008/06/09(月) 02:37:34
「お、俺はもう一人殺してるんだぜ! お前なんか!」
 手に細身の剣を構えながら(思いっきり震えてる)、男は叫んだ。
 どうせ虚勢か――勢いで殺したに過ぎないだろう。
 完全にやる気、とは見えなかった。単に臆病なだけだろう。
「へえ、あたしは二人だ。で、どんな奴を殺したんだ?」
 これだけは聞かねばなるまい。
 そう、もしヴェーヌを殺したのがこいつだとし――
「お前みたいな、猫の顔をした女だ、あいつ、俺を食い殺そうとしやがって――」

 次の瞬間、ジュリアは反射的に背中から鎌を取り出し、男――マグナム・ハンスに投擲していた。

「げうっ」
 バナナ状の、やや青錆が目立つ刃が美しく軌跡を描いた後、ハンスの首筋に生えた。まず、即死だ。
 懺悔の時間も与えられぬままハンスの手からレイピアが零れ、そのまま地面に倒れた。
 それでもジュリアは、ハンスの死体から鎌を抜き、痙攣を続けるその肉を無表情で執拗に斬り続けることを止めようとはしなかった。
163IMMACULATE:2008/06/09(月) 02:38:18

――

 役場よりも食料がある民家を優先させて、藤堂秀一ら三人は移動していた。
 確実に、無駄なく動く必要がある。
 無闇に動き、気付いていたら詰んでいた。
 これは初心者が将棋を打つ上でよく行ってしまうミスだ。
 命が賭けられている以上、ゲームを例に上げるのは不謹慎な気もしたが。

 此処まで歩き詰めだったのだが、高水奈々は疲れた様子を見せていない様だ。
 周参見椿(きっと名簿から適当な名前を取ったのだろう)は――何故か、何処か暗い表情を見せていた。

 目下の問題はやはり周参見(自称)であった。
 周参見(自称)を説得出来れば一番楽だったのだが、やはり簡単にことは運ばない。
 周参見(自称)が殺人を始めようとした理由を聞き出せれば説得もしやすいが、そうやすやすと教えるはずもない。
 とにかく――周参見(自称)はどうにかしなければならなかった。
 後一手で王手と言う場面で駒を動かした先に地雷が埋め込んであったと言う馬鹿げた事態は避けたい。
164IMMACULATE:2008/06/09(月) 02:39:32

 その時だった。通り掛かろうとした民家の陰から、何かが転がって来た。
 それは――

「きゃああああああ!」
 奈々が絶叫した。
 無理も無し、藤堂も周参見(自称)もその異常性に絶句せざるを得なかった。
 ――誰かの生首だった。

 そして何かが弾けたような音がしたと思ったら、その転がってきていた首が、飛び跳ねた。
 否――撃たれた?


 そのまま滑り込むように民家の陰からこちらに現れたのは、ライオンの顔をした人間だった。
 そして両手に一丁づつ拳銃を構え、既に銃口は奈々に向かっている――

「高水!」
 銃声が何度も響いた。
 藤堂は素早く鉄扇を広げ、銃弾から奈々を防いだ。
 が、しかし、連射され、鉄扇を通り抜けた弾丸の列が藤堂を貫き、そして、そのまま藤堂の身体が崩れ落ちた。

 奈々は茫然と一瞬で起きたその様子を眼前で、認めた。
「あ――」
165IMMACULATE:2008/06/09(月) 02:41:01
――

「高水、早、く――早く、逃げろ!」
 そんな叫びも聞こえないかのように少女が茫然としている中、女がその少女を誘導しようと引っ張っていた。
 ジュリアはシグザウアーを即座に二発撃ちだし、女の胸と脚を掠めたことを確認した。
 それを見た少女は、思い出した様に女を置いて一目散に逃げて行き、女は大腿部を押さえながらそれを追っていた。

 ツァスタバを既に構えていたのだけれど、距離的にもう拳銃の及ぶ範囲では無いことを悟ると、ジュリアは舌打ちした。
 それに、今はそれより――

「さてと、後はあんたにとどめを刺すだけなんだが」
 ジュリアは倒れ込んだ男にツァスタバとシグザウアーを向けると、そのまま近付いた。
 男は右腕で身体を浮かせ、それから言った。
「なんでこんな……こんなことをする前に、おめぇにも……守るものぐらい、あるんじゃ、ねぇか?」
 言ってる言葉の先々、男の口から血泡が発生した。
 肺に穴が空いてる、様だった。
「無理だ。あたしにはその守るものも無くなったんだ。さっき、放送で名前を呼ばれてたよ」
「そう、か……」
 何かを悟り、諦めた様に男は俯いた。
 今一つ、ジュリアには今の男の思考が理解できない。
 まあ今から死ぬような奴の考えなんて理解したくもないけど。
166IMMACULATE:2008/06/09(月) 02:42:25
「駄目なんだ、もう。あたしは、そいつをずっと守り、そして守られてきたのさ。今更他の奴を捜そうったって、絶対にうまくいかない」
 男はふっと笑い、しっかりとジュリアの目を見て、言った。
「もう……少し、おめぇと早、く、会えれば、よかったな……」

 ――。
「――私も」
 自分の鋭い獣の眼光に、一瞬だけ温もりが生じた、気がした。
「先に、あなたのような人に出会えてればよかった」
 佐藤健にこれから殺害する旨を伝えた時の様に、ジュリエット・シルバーとしての思考がまた浮かんでいたのをジュリアは理解していたが、しかし、それに関してジュリエットが出て来ていたことに、ジュリアは驚いていた。
 いや、実際ジュリアは自らそう意識していたのかも知れない。とにかく何故かこの男に、何か温かみのある言葉を言いたかった。
 そして区切るようにジュリアは一言、冷たく言った。
「……じゃあな」
 ジュリアは、静かにツァスタバの引き金を引いた。
 一度だけ、沈黙が続いた空間に大きな発砲音が響いた。
167IMMACULATE:2008/06/09(月) 02:43:08

 ――そのまま、銃声が止んだ頃には藤堂秀一は左胸に穴を空け、死んでいた。
 目は何処か遠く、空を仰いだまま半開きに、口は緩く光の届かない空間を形成していた。
 それがもう会えぬ家族のことを安じていたのか、或いは高水奈々が生き残ることを願いながらだったのかは、もう分からなかった。
 ジュリアは薄く開いたままの藤堂の目を閉じさせると、そのままデイパックを取り出しにかかった。

 藤堂の死体とデイパックを漁っている時、ジュリアは一枚の紙を見つけた。
 男女二人と、それに愛おしそうに抱えられる赤ん坊の写真だった。
 ――家族。
 今まで、ジュリアは何人も殺してきたし、第一殺した死体のことなんて考えもしてなかった。
 しかし――この男に関しては違ったのだ。
 拭いきれない何かをジュリアの深層意識の中に残した、そんな感じだった。

 ジュリアは大型のナイフをカバーごとふとももに括り付け、藤堂の死体に鉄扇と写真を持たせると、酒と一本の火炎瓶の中身を掛け、火を放った。
 マッチの小さな火はそれらに引火し、死体から大きな火柱が上がった。
 次第に上がり始めた灰混じりの煙は、太陽の光をなしてやがて細かい光の粒子を含みながら天へ昇って行く。
 ――ジュリアは、その様子をただ見つめていた。
168IMMACULATE:2008/06/09(月) 02:44:44

 完全に炎が広がった事を確認すると、ジュリアは直ぐさま松井哲也と高水奈々が逃げ出した方向へ走り出した。
 一人、足を撃ち抜いていた筈だ。
 少なくともそいつはまだ、それ程遠くには行ってない。ジュリアはそう予想していた。
 あの男には悪いとは思ったが、しかし自分以外の全参加者を殺さなければこの殺し合いは終わらないのだ。
 ――それがルールなのだから。


 ジュリアは藤堂秀一がどんな人間かは知らない。
 もう知る必要も無い。
 だが、藤堂にはある種、ヴェーヌ――かつて森白部塗院藍璃だった者と通じる部分があったのだ。
 誰かを思いやる気持ち、そう――藤堂はあの後に及んで、今から自分を殺そうとするジュリアのことを考えていてくれていた。
 そしてあの時も、藍璃は居場所が無かったジュリエット・シルバーを受け入れてくれた。
 だからこそジュリエットが救われたのだし、今のジュリアも居る。

 しかし、そうならば藍璃ではなく、ヴェーヌは――自分のことを、思ってくれていたのだろうか。
 最期の時まで。
 それももう、永遠に分からないのだけれど。

 ――それに、それが今更分かったところで何になる。
169IMMACULATE:2008/06/09(月) 02:45:54
――

「くそ」
 松井哲也は悪態を付き、ライオンに撃たれた右脚大腿部を押さえながら、逃げ出した高水奈々を追っていた。
 胸の前を通過した穴からは赤い血が零れていたが、しかしそれは哲也のものでは無かった。
 それは、哲也が奇襲用に仕込んでいたケースの中から漏れる血だったので。

 父親の松井垂加の死に関しては彼にとっても少なからずショックだった。しかしそれを決して表に出そうとはしなかった。
 藤堂秀一と高水奈々に不信させてはならなかったからだ。
 しかし。
 畜生、なんでよりによってこんな――

 しかし――それより何より、まずは高水奈々だ。奈々を捕まえなければ――
「待って下さい!」
 甲高い女の声で哲也は叫んだ。
 道路の百メートル程先、少女の影はまだ止まらない、様だった。
「高水さん、落ち着いてください!」
 しかし――かえって好都合だ。哲也は思った。
 藤堂があそこで犠牲になってくれたお陰で、脅威は去ったしこれで奈々をいつでも殺すことが出来る。
 蛇を使わずとも、体格差からして首を絞めるのも容易だろう。
170IMMACULATE:2008/06/09(月) 02:48:39

 そう思っていた。

 不意に後ろを振り向くと、もう一つ――影が見えた。
 一瞬藤堂かと思ったが、有り得ない。
 藤堂は明らかに致命傷を負っていた筈だ。
 ならば――結局そこまでに至る結論は、一つしかなかった。

 あのライオンが――こちらを追って来ている!
 哲也と同じくゲームに乗ったライオンが、銃を持って――

 しかし哲也は思案した。
 そう、あのライオンから銃を奪えないだろうか?
 毒蛇を失った今、武器が必要なのは明らかなのだ。
 何とかして奪えれば、それは司を生き残らせる為に大きく役に立つ筈だろう。


 だがそれ以前に――そもそもこのままだと自分の命も、危なかったのだが。
 哲也は、これが危険な賭けだと言うのはもうとっくに理解していた。
 逃げ延びるのか、追い付かれて殺されるか、武器を奪おうとして殺されるか、武器を奪えるか――
171IMMACULATE:2008/06/09(月) 02:50:17
【B-9 道路東部/1日目 昼】

【松井哲也】
【状態】:右大腿部に裂傷、左の頬に裂傷(治療が必要なほどではない)
【装備】:毒蛇の死骸
【所持品】:支給品一式×2、三宮葉瑠菜の体操服、
     ピタゴラスの研究ノート「亜世界の存在の可能性について」、
     鈴木万吉のノートパソコン(電源切れ)、真多秋生の手鏡
【思考・行動】
基本:弟を生かすために殺し合いに乗る
1:ジュリアに立ち向かうかどうか思案している
2:ジュリアを対処したら奈々を殺すつもりでいる


【高水奈々】
【状態】:パニック
【装備】:トリカブト三株
【所持品】:支給品一式、坂木檀のスクール水着(若干胸の部分が伸び気味)
【思考・行動】
 基本:死にたくない
 1:ジュリアから逃げ延びる
【備考】:ヴェーヌをマーダーだと認識しました。
     松井哲也の名前を「周参見椿」だと認識しています。
172IMMACULATE:2008/06/09(月) 02:51:20
【ジュリア】
【状態】:右腕に軽い裂傷、覚醒
【装備】:ツァスタバ CZ99(6/15)、シグザウアー SP2340(7/12)、古びた鎌、スペツナズナイフ(狭霧嘉麻屋の愛用品)
【所持品】:支給品一式、ツァスタバ CZ99のリロードマガジン(3)、シグザウアー SP2340のリロードマガジン(3)、解毒剤(4)、うんまい棒(9)、マッチ、ポケットティッシュ(3)、火炎瓶(3)、不明支給品(0〜4)
【思考・行動】
基本:もう目的は何もない。皆殺しにして優勝する
1:哲也と奈々を追う


【マグナム・ハンス 死亡】
【藤堂秀一 死亡】

【残り42人】
173名無し草:2008/06/09(月) 02:53:10

投下終了。
ハンスだけただ殺るだけじゃアレなので奈々を再びパニクらせようかと
また、覚醒した得物持ちのマーダー相手にグループ無傷は有り得ないので藤堂氏に犠牲になってもらいました
174名無し草:2008/06/09(月) 02:56:31
よく読んだら確かに佐藤健の時点でジュリア分裂症気味になってんのか
「お願い、死んで」はヤンキーの口調じゃないな
175名無し草:2008/06/09(月) 03:02:32
ぎゃああ、藤堂の爺さんまさかのリタイア!
つかジュリアも容赦ないけど重武装が素直に強いな、このロワ!
そして余計な考えが死亡フラグ直結な哲也とこのまま退いたら死亡確定の奈々、走る狂獅子、
どうするどうなる俄然緊迫してきた東北方面!

ハンスは…まあ、南無。
最後まで肉体のスペックに精神がついてこなかったね。
176名無し草:2008/06/09(月) 03:09:38
>>173
投下乙!
死亡二人が予告されてたとはいえ、まさか藤堂とは想定外の驚きでした。
ジュリアが一瞬の葛藤を見せ、松井長男は抱いてはいけない迷いを抱き、奈々は無力なくせに恐慌を起こし、と
皆がそれぞれ典型的な死亡フラグを立てていく場面で状態表が入って、そこで引くのか!とw
楽しませてもらいました。

>>175
ハンスだけテンション違いすぎw
177 ◆dEUulpVSzA :2008/06/09(月) 07:09:52
じゃあ蒼井燕、鍵谷絵理花、剣時宗、ケネス・シルバーで予約
178 ◆dEUulpVSzA :2008/06/09(月) 22:31:46
投下します
179隠し砦の三馬鹿人 ◆dEUulpVSzA :2008/06/09(月) 22:32:57
放送を聴いてあたしは驚いた。
あの憎き耄碌ジジイはすでに死んでいたのだから。

だが、その放送を流していたのは紛れもなくアルベルト・ハインリヒ。あの張り付くような気色の悪い声は紛れもなくアルベルト。
どう言う事か一瞬分からなかったが、この類まれなる才能を有する絵理花様に掛かれば、死んだアルベルトと生きたアルベルトが別人であることをちゃんと認知することはわけない。

「聞いたかい絵理花ちゃん!アルベルトは死んだんだって!!」

この馬鹿は少なくとも信じてるようだが。

「でもお兄さん平行世界って言ってたし放送してたのもアルベルトのおじさんだったからきっと別の世界から来たんじゃないかな?えへっ☆」

えへっ………我ながら恥ずかしい…この馬鹿に自身と同レベルの阿呆と思われるかもしれないと思うと、一瞬だけ死んだほうがマシなんじゃあないかなと思う。

「確かにアルベルト博士は世界は一つじゃないというようなことを開始前に少しだけ言っていたしね…絵里花ちゃん頭いいね!」

馬鹿はそう言って私の頭を撫でる。一瞬だけその『予想外の答え』に戸惑いはしたが、すぐに汚らわしい手で触れるこの馬鹿に対する怒りはぶり返す。

表「ありがとうおにいちゃ〜ん」
裏「テメエ汚らわしいんだよ触れるな!この童貞!幼女嗜好(ロリコン)!!短小!!!インポテンツ!!!!人生負け組!!!!!」

思いつく限りの罵詈雑言は、まだまだあったが、心の中で叫んだとしてもむなしいだけなので5つだけにしておいた。

家を出てから約10分と言ったところだろうか。時刻は家を出る前で13時過ぎ頃。
下がちょうど禁止エリア化したみたいだ。少々ゆっくりし過ぎたことを実感せざるを得ない。

移動を始めて、人と出会うのに、そんなに時間は掛からなかった。
180隠し砦の三馬鹿人 ◆dEUulpVSzA :2008/06/09(月) 22:34:39
一人は背の高い、特に特徴のない真面目そうな男。そしてもう一つは、バタ臭い顔の外人。なかなかの二枚目だが、態度が挙動不審すぎるのですごく怪しい。

「オイアンタ………誰かいたぞ…早速」
「……お前怪しまれてるぞ…」


こちらから彼らの声は聞き取り辛い。何を話してるか分からないが、何が目的だろう?
少し焦った馬鹿ならばここで攻撃のアクションを取り、真性の馬鹿ならば仲間になりたがるだろう(ハッキリ言って絶好の的だ)
だが、仲間になりたがる奴が、真性の馬鹿とは限らない。馬鹿を演じる『俳優』かもしれないのだ。

「こちらに敵意はない。君たちと行動を共にさせてはくれないだろうか」

両手を挙げて敵意がないことを示すと、外人はポールを捨て、もう一方の男は、銃をこちら側に蹴って渡した。

よしっ!これで私も戦える!!

「あっ!とこれはだめだよ絵理花ちゃんには危ない」

くぉんんんんのクソガキャアアア!!
181隠し砦の三馬鹿人 ◆dEUulpVSzA :2008/06/09(月) 22:35:20
上手く潜り込めたようだ。青年が一人に少女が一人か…彼らは兄弟か?その確率は低いが、そうだとしたら羨ましいものだ。
長男の良王(よしきみ)はボクシングのへヴィー級チャンピオンだし、三男で弟の公次(こうじ)は、ヤクザの抗争に勝手に首突っ込んで勝手に死んだ。良王兄さんは立派に自立して、
リング上では拳帝と称されるほど強いから生活面では困ってはいないだろう、公次についてはもういないし、いたとしても手の付けられないような悪態だった。四郎は、公次以上に手の掛かる奴だったが、公次とは違い真の通った奴だった。だが、四郎ももういない。
俺は気がつけば依存する弟を皆失っていた。
今あるのは空しさだけだった。それに耐えることは、今はできる。そうしなければいけない。
そうしなければこのゲームには勝てないのだから。

―――――

馬鹿はH&K社製と思しき銃を、そのまま自身のデイパック

「おい!いいのかよ!あの銃!」
「黙ってろ」

小声で何か喋っているようだが相変わらず聞き取れない。
だが聞き取る必要はない。私はこいつらを微塵も信用していないからな。

ま・せいぜい私のためにこき使われて私のために弾除けになって死んでくれたら私も気が楽ってもんだわ。

「あの…すいません……どっかで会ったことないですか?」突然馬鹿が話をくり出してきた。

外人にだ。

馬鹿はしばらく外人を見て、こう叫ぶ。

「やっぱケネス・シルバーだ!!ちょwwサインください!マジファンなんですよ!A賞受賞した映画観ましたよ!!」

馬鹿は感激したようだ。そしてA賞……だと……
182隠し砦の三馬鹿人 ◆dEUulpVSzA :2008/06/09(月) 22:36:20
ハッキリ言って私は洋画にはうるさい。よっぽど暇なときはほぼ確実に観てるし、吹き替え、字幕、字幕・吹き替えなしを3回全部観るくらい好きだ。

俳優も吹き替え声優も、知ってる。声を聞いてみて分かる。外人の声を吹き替えている(恐らく自動吹き替え機械みたいな仕掛けをアルベルトのジジイに付けられたのだろう)のは、ニコラス・ケイブ、スティーブン・スガール、
アレハンドロ・ヴァンデラスなどの吹き替えを手掛ける小塚明夫
の声だ。あんな渋い声聞き間違えたくても聞き間違えられない。それに、これはどちらかと言うとコミカル気味な声…どちらかというとアレハンドロの吹き替えの時によく聞くパターンだった。

「あ…ああアリガトウ。僕もファンは大好きだよ。全世界のファンを愛してる」

ここで一つ解せないのは、ケネス・シルバーなんて俳優知らないってことだ。

B級映画もしょっちゅう観るけど、それでも知らない。
観たところ演技力も無さそうだし、顔だけでA賞が取れるわけもない。いまいち信じられなかった。
アルベルトのように述べるならば、平行世界のスター俳優なんだろうが、それにしてもオーラも何もない。とてもじゃないが信じられない。

「そっちの娘(こ)も僕のファンかい?」ややぎこちなく、ケネスと言う俳優は切り出してきた。
183隠し砦の三馬鹿人 ◆dEUulpVSzA :2008/06/09(月) 22:37:15
「え…ええ…もちろん!!わたしもファンなんです☆」

どこの馬とも知れない自称俳優のファンを名乗るのは癪だったが、今は耐えるべきだった。

「え?でもあの映画R-15指定じゃ………」

馬鹿がいきなりそう切り出したこれだから馬鹿はぁああああああ

「やだなー燕お兄さ〜ん その映画は絵理花観てないよ☆」

全く…馬鹿はこれだから………

「とりあえず…これからどうしますか?」馬鹿は仕切ってる。とにかく腹立たしい。私は子ども扱いで会議には加えてはもらえないのだ。

だが、しっかりと聞く。奴らが何を画策しているのか、私にだって知る権利はあるから。

「北へ向かうべきだろうな」突然切り出したのは剣時宗という男。こいつはケネスや燕のような見るからに馬鹿っぽい奴らとは少し違うだろう。注意する必要がありそうだ。

結局馬鹿二人は意見を出さずに、時宗に簡単に丸め込まれていた。私が本気で会議に参加すれば、すぐさま説得力のある反論で行き先を変えれたかもしれないのに。

分校に行けないのがかなり腹立たしいが、今はこの環境に耐えるしかない。いざとなったらこの三枚の盾のどれかを弾除けに使えばいいのだし。
184隠し砦の三馬鹿人 ◆dEUulpVSzA :2008/06/09(月) 22:37:37
【F-3 道路/1日目 昼】
【蒼井 燕】
【装備】:ベレッタM92F(15/15)、煙玉1個
【所持品】:支給品一式(不明支給品なし)、H&K P7(14/18)、ベレッタの予備弾薬40発、工具
【状態】:健康
【思考・行動】
基本:弱者の保護、殺し合いを止める
1:絵理花の知り合いが居ないか確かめる
2:ケネスについては銀幕内のヒーロー像と同じ人物と思っている。時宗には警戒
※伍宮瑞子の参加に気がついていません

【鍵谷 絵理花】
【装備】:防弾チョッキ
【所持品】:支給品一式(不明支給品なし)、青酸カリ、煙玉2個、犬のぬいぐるみ
【状態】:健康
【思考・行動】
基本:生き残ってアルベルトを倒す、不要な人間は殺す
1:ぶりっこは疲れる……
2:死体から首輪を回収したい
3:色々と胡散臭い『自称俳優』に警戒。頭がキレ、『使える』時宗は利用するだけ利用してあげる (ケネスよりも時宗と警戒している)
4:銃は最低1丁は持っておきたい(隙を見て燕から奪う)
※主催者アルベルトの些細な言葉から『平行世界』の多彩性にいち早く気付きました(それでもケネスは警戒・俳優と思ってない)
185隠し砦の三馬鹿人 ◆dEUulpVSzA :2008/06/09(月) 22:37:59
【ケネス・シルバー】
【状態】:健康
【装備】:なし(ポールは捨てた)
【道具】:切れ味がほぼゼロになった果物ナイフ、その他食料
【思考】:基本:死にたくない
1:人死ににはできれば遭遇したくない。あとのことは3人に任せる。

【剣時宗】
【装備】:なし
【所持品】:支給品一式
【状態】:健康
【思考・行動】基本:何が何でも生き残る
1:燕、絵理花、ケネスを最後まで利用し、生き残る
2:ケネスの言っていた『なんかよく分からん怪物みたいなの』の話も一応頭の片隅に置いておく
3:銃を奪い返せる環境が整うまで根気良く待つ
186名無し草:2008/06/09(月) 22:43:16
ジャギがなんで「公次(こうじ)」になるのかわからん俺に教えてくれ絵理花たん。
187名無し草:2008/06/09(月) 22:43:24
投下乙!絵里花が恐ぇw何だこの悪ガキw
時兄さんも策略を巡らしてるな……絵里花との化かし合いに期待
燕とケネスは……なんか頑張れ、超頑張れ
「え…ええ…もちろん!!わたしもファンなんです☆」

どこの馬とも知れない自称俳優のファンを名乗るのは癪だったが、今は耐えるべきだった。

「え?でもあの映画R-15指定じゃ………」

馬鹿がいきなりそう切り出したこれだから馬鹿はぁああああああ

「やだなー燕お兄さ〜ん その映画は絵理花観てないよ☆」

全く…馬鹿はこれだから………

「とりあえず…これからどうしますか?」馬鹿は仕切ってる。とにかく腹立たしい。私は子ども扱いで会議には加えてはもらえないのだ。

だが、しっかりと聞く。奴らが何を画策しているのか、私にだって知る権利はあるから。

「北へ向かうべきだろうな分校に人が何人も集まるのを見たしあちら側には行かないほうがいい」突然切り出したのは剣時宗という男。

「賛成だ…あっちには何かよく分からん怪物みたいなのもいるしあっち側には行きたくねえ」

「こっちも依存はないです。ねえ絵理花ちゃん?」
「う…うん☆」

「よし…じゃあ早速移動する。あとケネス。その怪物についてはあとで話を聞こう」

結局なし崩し的にまとめ込まれてしまったこいつは他の見るからに馬鹿っぽい奴らとは少し違うだろう。注意する必要がありそうだ。

結局馬鹿二人は意見を出さずに、時宗に簡単に丸め込まれていた。私が本気で会議に参加すれば、すぐさま説得力のある反論で行き先を変えれたかもしれないのに。

分校に行けないのがかなり腹立たしいが、今はこの環境に耐えるしかない。いざとなったらこの三枚の盾のどれかを弾除けに使えばいいのだし。
189名無し草:2008/06/09(月) 22:45:41
>>186
中の人
190 ◆dEUulpVSzA :2008/06/09(月) 22:49:14
結局馬鹿二人は意見を出さずに、時宗に簡単に丸め込まれていた。私が本気で会議に参加すれば、すぐさま説得力のある反論で行き先を変えれたかもしれないのに。

これはなかった事にしてください。何度もすいません
191名無し草:2008/06/09(月) 22:51:21
>>189
あー。それか。ありがとさんだぜ。
192名無し草:2008/06/10(火) 02:40:59
ttp://takukyon.hp.infoseek.co.jp/cgi-bin/free_uploader/src/up0060.png

MAP更新しました。
気づけば背景の赤いキャラが増えてきましたねえ。
マーダー勢強し。
しかし、生存者も徐々に固まってきているので、今後は反撃のチャンスもある?
あと、猫組は早く動かないとばくs(ry
193名無し草:2008/06/10(火) 02:47:49
>>192
地図更新乙です!
猫たちはそろそろケツに火がついている頃でしょうかw
194名無し草:2008/06/10(火) 03:07:32
一人おいてきぼりの狭霧と海に浮かんだままのポー
195名無し草:2008/06/10(火) 06:49:02
狭霧はまだ一人しか殺してないからなぁ。
ここらで強マーダーの存在感を見せてほしい所。
196 ◆GpX6OKhRhU :2008/06/10(火) 06:53:30
狭霧予約します
197 ◆QPsoD/PrXE :2008/06/10(火) 07:02:47
泉和哉、桃太郎、フーリエ、鍵谷美和子、松井司を予約させていただきます。
198名無し草:2008/06/10(火) 09:01:11
こっちは初心者書き手歓迎で、もう一つクオリティ重視のオリロワがほしいなぁ。
正直、デメリットがメリットを押して来てるし、書く気を削がれる。
199名無し草:2008/06/10(火) 09:02:58
そんなこと言う前に一度ちゃんとしかるべき人に苦言を呈してみたらどうだ?
それで改善されるならそれでいいし
200名無し草:2008/06/10(火) 09:27:41
ずいぶんとご立派な発想ね。私みたいな凡俗にはあなたなんて理解できないわ。

……いやさ、気持ちは分からなくは無いが最後の一文は此処で言うことか?
予約中の人達の書く気を削いでる気がする……
201名無し草:2008/06/10(火) 10:06:24
よし、とりあえず書き手は全員誤爆スレ見て来い
オレに言えるのはここまでだ
あとは当人次第
202名無し草:2008/06/10(火) 10:23:12
>>201
見たことは見たんだが、だけどわざわざ隔離みたいな真似まですることか?
それより今のオリキャラロワが完結してから2ndでクオリティ重視にすればいいだろ。
同時進行させるつもりかどうかは分からんが、もしそうだとしたらお前の考えている事は全く持って浅過ぎだ。間違いなく書き手が中途半端に分かれて両方ともグダグダになるぞ
203名無し草:2008/06/10(火) 10:29:54
別に完結まで待つまでも無く、今からクオリティ重視にすればいいだろ
自分でそういう作品多く投下して、そういう作品しか投下できないような空気に持っていけばいいんだよ

なまじ繋ぎ話が長文化・高クオリティ化してるせいで死亡話に求められるハードルが上がっているのも事実だ
贅沢な悩みではあるが
204名無し草:2008/06/10(火) 11:13:13
あの人が消えれば問題解決じゃん!
205名無し草:2008/06/10(火) 11:15:22
一人消えた程度じゃ駄目だろ……まだ一人か二人居るみたいだし
206名無し草:2008/06/10(火) 11:17:51
>>203
その空気を読めてないから、ちょっと困るけどね。
207名無し草:2008/06/10(火) 11:19:39
なんか閉鎖的になってくなぁ
208名無し草:2008/06/10(火) 11:22:09
いやあ…普段感想もつけないような人の言うことをいちいち真に受ける必要はないと思うけどなあ。
209名無し草:2008/06/10(火) 11:24:21
つーか、こんなこと話しあう前に言っとくべきことがあるだろ

>all
・一人で死亡話を連発するのはあまり宜しくないです
・フラグ折りはやっていけないわけじゃないけどほどほどに もっとも過剰反応するほうも悪いが
・投下する前には推敲しましょう
210名無し草:2008/06/10(火) 11:26:47
>>203
…もちろん、お前さんが率先して「クオリティ高い話」を書いてくれるんだよな?
211名無し草:2008/06/10(火) 11:26:50
>>209
推敲してもどいつもこいつもあの程度なんだろw
212名無し草:2008/06/10(火) 11:28:31
これって初心者排除の流れ?
せっかく自分みたいな素人でも書ける場所なのに、今さらクオリティー重視とかあんまりだと思う
213名無し草:2008/06/10(火) 11:29:16
>>210
まあ一応投下数だけは多いですが……
214名無し草:2008/06/10(火) 11:29:39
>>203 >>211
…もうお前らこのロワ潰したいだけだろ
そこまで言う位なら自分でクオリティの高い作品でも書いて説得力付けろよ
215名無し草:2008/06/10(火) 11:33:33
投下数2位3位4位辺りの人が言ってたりして
216名無し草:2008/06/10(火) 11:38:31
今やってるのは野球初心者に向かって剛速球を投げてまともに打ち返せと言ってるようなものだからな
投げるほうがちょっと手を抜くか打ち返すほうが精進するか、だな
217名無し草:2008/06/10(火) 11:40:54
>>216
初心者に寛容になるべき派となんで初心者の為にクオリティを下げなきゃならないんだよ派に分かれるんですね。
分かります。
218名無し草:2008/06/10(火) 11:42:45
つーか、繋ぎ書き手と死亡話書き手が逆になれば(ry
219名無し草:2008/06/10(火) 11:51:29
まあ別に、書かない人間の言うことは気にせずこれからも書いてくれればいいよ。
ただ>>209は理解してね。

自分は書く側の人間だというのなら作品で自分の望む空気を作ってくれ。
220名無し草:2008/06/10(火) 12:08:59
>>219
それは彼には無理でしょう
やたらと設定を付け足したり、妙な名前を考えたりしてるのを見ると、リアルで厨ニ病なんだと思います
221名無し草:2008/06/10(火) 12:13:30
言いたいことは分かるし憤りもわかるが煽りみたいな真似はやめたほうがいいぞ
222名無し草:2008/06/10(火) 12:14:13
一人くらいそういうのも居て構わないとは思うんだが……
まあ空気は読んでほしいよ。そりゃ
どちらかと言えば繋ぎに回ったほうが際立つと思うし
223名無し草:2008/06/10(火) 12:19:00
>>220
>やたらと設定を付け足したり
お前ちょっと待て
このロワの特色自体を否定してどうする
それに事前に設定は付けられていた方がわざわざ自分で設定を追加するより書きやすいだろ
224名無し草:2008/06/10(火) 12:23:12
あの人ってWikiの管理人なんだっけ?
225名無し草:2008/06/10(火) 12:29:35
>>209
・SS内に「w」や記号を使うことを嫌う人もいますのでほどほどに
・前のSSにはよく目を通し、キャラの口調や性格などはなるべくブレ無いようにしましょう(オリキャラなので多少は致し方なし)

も付け加えたほうがいいかも

大集団を作ってくれることは大歓迎だ
どうやって崩すか考える楽しみが出来るからな

>>223
一人で付け足し過ぎるからじゃね?
言い方は良くないが
226名無し草:2008/06/10(火) 12:54:20
色んな意味でここはもう駄目だな
227名無し草:2008/06/10(火) 12:55:51
>>224
少なくともそれは違う、と言っておきます。
228名無し草:2008/06/10(火) 12:56:33
>>226みたいなゴミクズが沸いてくるからもう止めようか
229名無し草:2008/06/10(火) 13:17:03
ここももう潮時か…
230名無し草:2008/06/10(火) 14:06:19
>>228
だな、あとはいつも通り書けばいいだけだ。
どっから涌き出したのかは知らんが、投下後の感想がいつも一つ、二つなこのロワに
今更文句だけ言いにくる連中にいちいち反応することもない。
231名無し草:2008/06/10(火) 14:39:16
いい加減こんなのどう繋げばいいのか頭を抱えている書き手の意見は無視ですかそうですか
232名無し草:2008/06/10(火) 14:43:38
俺は大集団はどう崩壊させるかを考えて楽しんでる
大概どこも火種抱え込んでるし

一見無駄死にに見える死者でも放送後誰かに影響を与えるかもしれない

キャラが明らかに違うのは……うーん……
233名無し草:2008/06/10(火) 14:47:14
>投下後の感想がいつも一つ、二つなこのロワ

過去レスくらいは読んで
234名無し草:2008/06/10(火) 14:50:11
今問題視されてる(であろう)書き手すらいつも三つ以上は貰ってるな
235名無し草:2008/06/10(火) 15:47:19
問題視されてる書き手って自分かも知れん。
とりあえず自重するから空気を変えてくれ
236名無し草:2008/06/10(火) 15:53:11
>>231
じゃあ煽る前に自分でどうにか努力して繋げろよ。
他のロワと比べてどうにでもなるだろ

>>232
キャラが明らかに変になってる以外は意味はあると思う。
設定上あまりにおかしな死に方をしたヴェーヌも他の二人に大きい影響を与えてるしイチロウだって万吉のフラグ考察に役立つ筈

>>234
少なくとも三つ以上は付いてるよな。
最新話以外は
237名無し草:2008/06/10(火) 16:18:02
まったくどいつもこいつも好き勝手なことを言ってくれる

自分が立てたフラグがあっけなく無かったことにされる恐怖と戦いながら
繋ぎにくい話の繋ぎを考える

こんなスリルを味わえるのはここだけだぜ!!
238名無し草:2008/06/10(火) 16:20:01
>>237
だろ!?
だがそれがいい!
239名無し草:2008/06/10(火) 17:01:04
ややぁ、長文が投下されたと思ったら荒れてるのね
どうでもいいこと話してないでSS書こうぜ
240名無し草:2008/06/10(火) 17:05:22
>>239
SS書いてもあっさりズガンされそうで怖いんだよねー
マーダーばっか殺してる癖に自分の出した後藤とか靄場とかは活躍させてる書き手もいるしさ
241名無し草:2008/06/10(火) 17:08:52
つまりあの書き手こそがマーダーそのものだったのだよ!!
242 ◆Syk9Sx8L.s :2008/06/10(火) 17:12:23
泉遥、一一一、ニャルロット、デンドロビウム、ミルフィーユで予約します
243名無し草:2008/06/10(火) 17:34:05
>>241
な、なんだっ(ry


>>240
じゃあ殺し返せばいいじゃん
そいつら殺せるマーダーなら幾らでも居るぞ狭霧とかジュリアとか

こっちは繋ぎ話を書いたその次の話に瞬殺されると言う流れを二回されてるぜ!

そんなことより
>>196-197 >>242
頑張って下さい
244名無し草:2008/06/10(火) 17:39:34
うーん、ただの会話の流れの中で出てきた言葉とはいえ
ロワにおいて「殺し返せばいいじゃん」は無いと思うぞ
SSで黙らせるってのはそういう意味じゃないだろ
245名無し草:2008/06/10(火) 17:42:26
何もマーダーに殺させなくても対主催にだってそんくらいの奴はいるだろw
246名無し草:2008/06/10(火) 17:48:30
>>245
ただでさえ空気を読まない人にファシルとかの有望マーダー殺されてんのにこれ以上マーダー減ったらヤバいだろうがw
247名無し草:2008/06/10(火) 17:50:36
今対主催がマーダー殺す話投下したら荒れるだろうなあ……

つーか、さすがにもう個人攻撃はやめないか
どうやらあまり効果も無いようだし、もうSSの内容で対抗するしかないよ
248名無し草:2008/06/10(火) 18:25:58
あの書き手はこの中にいます!
249名無し草:2008/06/10(火) 18:36:08
よく考えたら感想の数って自演でいくらでも増やせるし、アテにならないよね。
250名無し草:2008/06/10(火) 18:49:37
>>248-249
よく考えたら煽りの数って自演でいくらでも増やせるし、アテにならないよね。

そんな訳で醜態晒してるだけなんだから巣に帰れ、な?
251名無し草:2008/06/10(火) 18:53:26
このまんまスルーして進めたらこの前の二の舞になりそうで怖いんだよなあ。
実際あの人のために「なるべく空気を読むように」とか「ズガンは少なめに」とかの暗黙の了解を明文化したのに、全く変わってないし。
252名無し草:2008/06/10(火) 18:53:57
ttp://jbbs.livedoor.jp/otaku/11491/
そろそろ必要かなって思って建てるだけ建てた。
適当に使って下さい。
253名無し草:2008/06/10(火) 19:00:55
ようやく死者スレが立つか
254名無し草:2008/06/10(火) 19:04:25
>>252
乙です
255名無し草:2008/06/10(火) 19:05:24
こんなネタロワにマジになってどうするんだ。
256名無し草:2008/06/10(火) 19:07:56
>>252
乙。


・前の話を良く読んでキャラの口調や性格や思考に矛盾が出ないようにしましょう
(オリキャラなので多少ブレるのはやむ無し)
・SS内に「w」や「(笑)」など記号を入れるのを嫌う人も多いので注意
・投下する前にはしっかりと推敲を
・リレー小説は共同作業です

この辺を次からテンプレに入れるか?
「一人で放送から次の放送までの間に殺し過ぎないように」
「一人でフラグを折りすぎないように」
なんてのは、わざわざ明文化するまでもないっつーか
それをやったらおしまいな気がする
257名無し草:2008/06/10(火) 19:12:35
「パンツ脱がしは惜しまないように」
258名無し草:2008/06/10(火) 19:13:33
>>257
wwwwww
259名無し草:2008/06/10(火) 19:14:19
つーか絵理香がアルベルトが違う世界云々言ってたのから二人いたと推理してるけど
それ以前にアルベルトが「もう一人の私が退場してちょっと残念」って言ってるよね?
260名無し草:2008/06/10(火) 19:40:34
叩けば埃が出るとはまさにこのこと
261名無し草:2008/06/10(火) 20:40:44
したらばが立ったわけだが、必要なスレってなんだろ
予約スレと死者スレくらいか?
262名無し草:2008/06/10(火) 21:09:13
あとテスト投下スレかな
263名無し草:2008/06/10(火) 21:24:41
いまさら誰もしたらばに行かない気がするなぁ。
264名無し草:2008/06/10(火) 21:29:41
アルムートさんが死者スレで一人ぼっちなわけですね。分かります。

死者スレといえば、杏のパンツを脱がすチャンスがまだあるってわけだ!
265名無し草:2008/06/10(火) 21:34:06
>>264
もう泪タソがヴェーヌタソをカラオケに誘ってた
266名無し草:2008/06/11(水) 11:38:03
ここってもう三人ぐらいしか人がいないんじゃないかと思えて来た・・・
勢い任せでテンプレ整備を怠ったのがマズかったのか・・・
267名無し草:2008/06/11(水) 11:58:02
>>256は次から入れて欲しいな
他所と比べれば遥かに緩いけどそのくらいで丁度だろう
268名無し草:2008/06/11(水) 12:02:35
馬鹿、>>266は書き方から見てどう考えても煽りだ
269名無し草:2008/06/11(水) 12:07:08
いつまでも序盤の勢い保てってのが無理な話だろう
毎日問題作が来るより週一回良作が来たほうがいいんだから
270名無し草:2008/06/11(水) 12:14:52
煽りだとしてもテンプレに入れて欲しいのは事実だな
271名無し草:2008/06/11(水) 13:19:16
>>269
正直その問題作を受け止められないお前も悪いんだぞ、それは
問題作問題作言っているなら何故その問題部分を指摘してやらない
272名無し草:2008/06/11(水) 13:26:33
>>269
はっきり言うけど、それ企画に死ねって言ってるのと同義だからね
273名無し草:2008/06/11(水) 13:48:14
つーか今回の件、なんで本人にはっきり問題点を突きつけて修正要求を出すとか自重を促すとか
そういう段階をスパッと飛び越してるんだよ
まあここまで騒がれれば普通はわかるだろとは思うが、はっきり指摘したわけでもないのに
「あの人は言ってもわからないから」みたいに言うのは流石に酷じゃないか?


>>272
毎日問題作が来るような状況がいつまでも続いたらどっちみち死なないか?
274名無し草:2008/06/11(水) 14:23:11
>>273
過疎るよりはずっとマシさ
275名無し草:2008/06/11(水) 15:36:08
過疎ではないが問題ありすぎて荒れて滅亡するロワと
細々だけどまともなSSのおかげで続いていくロワ
276名無し草:2008/06/11(水) 15:41:50
>>275
その細々と続けようとして気付いたら潰れてんだろ、過疎ロワは
277名無し草:2008/06/11(水) 16:06:25
過疎ロワに夢見すぎというか、過疎ってことの怖さを本当の意味で知らんのだろうな。
278名無し草:2008/06/11(水) 16:12:10
要はどっちにしろ潰れるって言いたい訳か。
279名無し草:2008/06/11(水) 16:38:19
それならどっちにしろ潰させないよう頑張るだけだ
280名無し草:2008/06/11(水) 17:08:23
そんじゃはっきりと指摘しておく。

>どう言う事か一瞬分からなかったが、この類まれなる才能を有する絵理花様に掛かれば、死んだアルベルトと生きたアルベルトが別人であることをちゃんと認知することはわけない。
そもそも放送の時にアルベルトが「一人の私がそれほど活躍しなかったのが残念ですね」って言ってる

>家を出てから約10分と言ったところだろうか。時刻は家を出る前で13時過ぎ頃。
>下がちょうど禁止エリア化したみたいだ。少々ゆっくりし過ぎたことを実感せざるを得ない。
放送が12時にあったんだから、いくらなんでもあの会話だけで約一時間経過ってのは無理がある。

>馬鹿はH&K社製と思しき銃を、そのまま自身のデイパック

>「おい!いいのかよ!あの銃!」
>「黙ってろ」
何が起こってるのか分かりません。

>ま・せいぜい私のためにこき使われて私のために弾除けになって死んでくれたら私も気が楽ってもんだわ。

>「あの…すいません……どっかで会ったことないですか?」突然馬鹿が話をくり出してきた。

>外人にだ。

>馬鹿はしばらく外人を見て、こう叫ぶ。

>「やっぱケネス・シルバーだ!!ちょwwサインください!マジファンなんですよ!A賞受賞した映画観ましたよ!!」

>馬鹿は感激したようだ。そしてA賞……だと……
日本語でおk

後、全体的に前の話と比べてキャラがおかしい。
改行も多すぎ。
281名無し草:2008/06/11(水) 18:30:51
文章が小学生レベル。
一人でキャラを殺しすぎるなど、空気読めてない。
282名無し草:2008/06/11(水) 18:35:58
>どう言う事か一瞬分からなかったが、この類まれなる才能を有する絵理花様に掛かれば、死んだアルベルトと生きたアルベルトが別人であることをちゃんと認知することはわけない。
>そもそも放送の時にアルベルトが「一人の私がそれほど活躍しなかったのが残念ですね」って言ってる
ただ虚勢を張ってるだけかも
そこら辺の描写が必要だけど

>家を出てから約10分と言ったところだろうか。時刻は家を出る前で13時過ぎ頃。
>下がちょうど禁止エリア化したみたいだ。少々ゆっくりし過ぎたことを実感せざるを得ない。
>放送が12時にあったんだから、いくらなんでもあの会話だけで約一時間経過ってのは無理がある。
他に会話があったんだと思う
そこら辺の描写が必要だけど

>馬鹿はH&K社製と思しき銃を、そのまま自身のデイパック
>「おい!いいのかよ!あの銃!」
>「黙ってろ」
>何が起こってるのか分かりません。
よく分からないがもしかしたら行動の途中で会話が入ったのかも知れない
そこら辺の描写が必要だけど

>ま・せいぜい私のためにこき使われて私のために弾除けになって死んでくれたら私も気が楽ってもんだわ。
>「あの…すいません……どっかで会ったことないですか?」突然馬鹿が話をくり出してきた。
>外人にだ。
>馬鹿はしばらく外人を見て、こう叫ぶ。 >「やっぱケネス・シルバーだ!!ちょwwサインください!マジファンなんですよ!A賞受賞した映画観ましたよ!!」
>馬鹿は感激したようだ。そしてA賞……だと……
>日本語でおk
元々日本語で書いているつもりなのかも知れない
そこら辺の描写が必要(ry

>後、全体的に前の話と比べてキャラがおかしい。
ミーウやジュリアの様に何か性格を一変させる出来事があったのかも?
そこら辺の描写が(ry

あれ……?
283名無し草:2008/06/12(木) 00:08:49
保守
284名無し草:2008/06/12(木) 01:16:51
とりあえず、具体的に指摘される程度には不自然な箇所があるわけだから
書き手さんから何らかのレスポンスが欲しいところだな。
色とりどりの家屋が並ぶ住宅街。
ごく普通の家もあれば、テレビでとり上げられるようなカラフルな家や面白い形の家もある。
平和な日常ならばそれら一つ一つに目をやり、感想なども言えたのだろう。
だが今はそんな日常とはかけ離れた殺し合い。
故に注意すべきは家の造形ではなく人の有無である。

チャイムも押さずに門を開け家の敷地内に入ると、都会の方では滅多に見られないような広い庭が目に入る。
本来は綺麗な庭だったのだろうが、手入れがされていないのか草が鬱蒼と生い茂っている。
庭の端にポツンと配置されている小さな池にも苔が張り付いており、育てられていただろう魚も見当たらない。
門の正面にある玄関までの道は人が通れるくらいには綺麗になっており、足をとられる心配もない。
門から玄関へ繋ぐ石畳を黙々と進んでいき、入口扉の取っ手に手をかける。
鍵は掛かっていなかったのか扉はスムーズに開いたが、別に誰も無用心などとは思わなかった。
このような寂れた家に住人がいるとは思えなかったし、何より今は殺し合いの最中である。
玄関には当然靴が脱ぎ捨てられているわけもなく、靴箱にも同様に靴は見当たらない。
だがだからといってこの家が無人だという証明にはならない。
靴も脱がずに家の中に入るが、誰もそれを咎める事はない。
全員が現状を理解しているからだ。
声をあげ、中に誰か居ないか呼びかけるも反応はない。
しかし怯えて隠れているだけという可能性もあるので中も探索する。
余計なものが置いていない綺麗なリビング。
長机に花瓶が置いてあるだけの簡素なダイニング。
食品サンプルが入った冷蔵庫があるだけのキッチン。
人が隠れるには向いていないトイレやシャワールーム。
2階に上がり、タンスと勉強机とベッドが置いてあるだけの子供部屋。
中身のない表紙だけの本しか置いていない書斎。
空っぽの押入れ。ベッドしかない寂しいベッドルーム。
全ての部屋を廻るも、人はおろか物さえも見事に何も無かった。
これで何件目だろう。
たくさんの家を探したが、みなどこも似たようなものだった。
おそらく主催が事前に有用な物は撤去しておいたのだろう。
随分と用意のいい事だ。
お陰で成果も無く、時間だけが無駄に過ぎていく。

玄関から外へ行き、再び道路に出る。
もうここら一体の家は大体のところ探し終えただろう。
「ここら辺にはもう誰もいないのだろうか」
「そうですな……」
独り言のように呟かれた言葉にフーリエは頷いて答える。
「家を一軒一軒虱潰しに探すよりも、もっと大胆に探していった方が良いのでは?
 神に祈ればきっと導いてくれますよ」
フーリエの言葉に一同は悩むように唸り声をあげた。
確かにその方が効率は良いのだろう。
だが弱き人間を守りたいという考えを持つ桃太郎は、あくまでも片っ端から探して、隠れているであろう弱者を保護したかった。
『神』を信じ、全ての結果を神に委ねてしまっているフーリエとは相容れない。
「確かにこのままじゃ時間の無駄だが……」
フーリエに賛同するのは良いことなのだろうか、と司は思う。
神を信じる者の考え方を変えさせる事は困難だが、だからと言ってこのままで良いとは思えない。
そんな考え方ではいつか誰かに利用されて殺されてしまう。
だからといって桃太郎の考えも良いとはいえない。
彼女の考え方は『正義』というモノに凝り固まっていて、それゆえに大局を見失いがちだ。
それに彼らの考えが相反している限り、殺し合いに乗った者と対峙した時に危険だ。
しかしそれに変わる考えがあるかと言えばそうでもない。
司もフーリエ達と同様に沈黙するしかなかった。
「そうねえ、こうしたらどうかしら」
その沈黙を破ったのはやはり美和子だった。
皆の顔が美和子に向いたことを確認して彼女は言葉を続けた。
「桃太郎ちゃんが大まかに捜して行って、フーリエちゃんは細かく探していくの」
その意見に1人と1匹は目を丸くした。
お互いが自分の主張と違う行動をとらされる事に疑問を抱いているのだ。
「桃太郎は強いから1人で大胆に探索しても安心だ。
 逆に俺達は殺し合いに乗ってる奴に見つからないように慎重に細かく探していった方がいい。
 両方の意見を取り入れてこうすれば効率がいい。美和子さん、そういう事でしょう?」
美和子の意図に気付いた司は彼女の言葉に補足する。
彼らは本当かどうかを確認し、美和子の頷く顔を見て納得する。
しかし美和子の本当の意図は、それとは別のところにあった。
(フーリエちゃんも桃太郎ちゃんもお互いの考えを理解してくれればいいのだけど……)
互いの提案をそれぞれ別に受けさせることにより、互いの考えを理解させる。
そうやって少しずつでも歩み寄って欲しい。
そう考えての事だった。
「そうですな、それならいいでしょう」
「そうであるな」
両者はその提案に快く了解する。
そして暫くの間分かれて散策する事になった。

  ◆  ◆  ◆  ◆

太陽から降り注ぐ熱が暑苦しい羽織に篭もる。
桃太郎のいた時代と違いコンクリートが蔓延している現代、桃太郎は普段より多く暑さを感じていた。
その暑さを不快に思いつつも、桃太郎は弱者を守る為に人気のない住宅街をひた走る。
流れる汗は暑さの為か、それとも焦りの為か。
先ほどは美和子の一声で有耶無耶になったが、フーリエとの口論は確実に桃太郎に影響を与えていた。
今までも何度か感じてきた事がある。
鬼が島で鬼を退治した時に抱いた疑問。
日滝菅彦を退治した時の桃太郎を見るピピンの表情。
そしてフーリエの主張。

それ即ち、これまで討ってきた者は『悪しき者』ではなかったのではないか、という事。
そう思うたびに何度も否定してきた。
私は鬼ではない、正義だ……と。
だが、一人になった今じっくり考えてみると、気付いた事がある。
鬼が島の鬼の時は従者達が彼らを悪だと言い、日滝の時はピピンが彼を悪人顔だと言った。
どちらにしても、彼らが悪行を行なったところを見たわけではないのだ。
周りが彼らを悪と言っただけで、自分が彼らを悪だと確認したわけではない。
これまで信じてきた正義とはなんなのだろうか。
今まで行なってきた事はなんだったのだろうか。

暗くなっていく考えを変えるように桃太郎は声を張り上げる。
忘れるように、逃げるように。
「誰かいないのかー!」
大声で叫ぶ事の危険性も考慮して油断なく走る。
しかし相変わらず反応もなく、人がいる様子もない。
やはりここら辺には生きている人間はいないのだろうか。
そう思い、美和子達の所へ帰ろうとしたその時、何やら慌てた様子で遠くへ走っていく少年を見つける。
もし桃太郎の主張どおり家を一軒一軒探していたら見逃すところだった。
この事に関してはフーリエの考えが正しかったのかもしれない。
そう思い、追いかけようと思うも、美和子達に報告をしなくてはならないと思いとどまり、合流地点へ走る。
(たとえ過去がどうあれ……某は弱者を守るだけだ)

  ◆  ◆  ◆  ◆

桃太郎が去った後、フーリエ達は先ほどと同じように他の家を探索していた。
彼らの間に無駄な言葉はなく、ただ仕事を行なうかのように黙々と探す。
一向に成果の出ない作業に疲れが来ているのかもしれなかった。
『――― 無理するなって』
ふと2階のある部屋の扉を開いた時、微かにフーリエの耳に声が届いた。
部屋をよく見てみると西の窓が開いている。
フーリエは窓に走りより声のするほうに耳を澄ます。
人よりも何倍も発達しているフーリエの聴力が遠くの声を聞き取る。
「おい、何かあったのか?」
フーリエの方へ走ってくる司に、静かにするようにと人差し指を口の前へ持っていく。
『―――おいおい、膝から血出てるじゃねえか』
『―――気にするなと言っておろうが』
『―――人の善意を無にするのは礼儀に反するからな』
次々と聞こえてくる声。
他の参加者だと確信して、美和子を呼ぶ。
「美和子さん、司さん、人の声が西の方から聞こえてきました。
 どうやら悪人ではないようです」
「あらあら、それは良かったわねぇ」
美和子の言葉に二人は頷く。
ようやく人が見つかった事。
その人が殺し合いに乗ってなさそうな事。
それは彼らにとって僥倖と言えた。
「それで、片方の人がコウちゃんと呼ばれているのですが」
フーリエは聞こえてきた情報を簡単に二人へと伝える。
湊、コウちゃん、和哉と呼ばれた名前。
そしてコウちゃんには家族が居るという事。
「……おじいさん」
名簿の中に『コウちゃん』と呼ばれそうな名前で家族が参加している人物は、鍵谷幸一郎しかない。
思わぬところで見つけた家族への手がかりに、美和子はしばし呆然とする。
「美和子さん、どうなされますか?」
家族が近くにいる事が分かったのだ、フーリエとしては美和子がそこへ向かうのに文句があるはずもない。
司もさも自分の事のように笑顔を見せる。
「そうね、先ずは桃太郎ちゃんが戻ってきてからにしましょうね」
美和子は変わらぬ笑顔でそう答えた。

  ◆  ◆  ◆  ◆
桃太郎とフーリエ達は合流し、互いに成果を話し合う。
桃太郎が見つけた様子のおかしい少年の事。
フーリエが聞き取った、近くにいる幸一郎らの事。

「某は、確実に弱者だと思われる少年のほうを追っていきたい」
正義の道を進む桃太郎は当然のようにそう答えた。
「だが家族が見つかった美和子殿達に無理についてきて貰う訳には行かない。某が一人で追いかけていこう」
そう言って去って行こうとする桃太郎だが、フーリエは桃太郎の手を掴みとめる。
「私も着いて行きます。もしその少年が誰かに襲われたというのなら、私はその人を説得しなければなりません」
桃太郎を一人にしては同じように悪を切り捨てられると思ったのだろう。
自分がそれを抑えて悪ですら改心させる、とフーリエは心の中で誓う。
「しかし美和子殿達が……。フーリエ殿の耳がなくては幸一郎殿達との合流も難しいであろう」
フーリエがついてくること事態に文句があるわけではない。
しかし美和子の事を思うと素直に了解するわけにもいかなかった。
その最もな桃太郎の切り返しにフーリエも言葉を詰まらせる。
これはただの我侭だと分かっていたから。
少年が誰かに襲われていたと確定しているわけではない。
桃太郎に少年を任せて自分が幸一郎の所へ案内すれば、それで多くの人を救えるのだ。
だけど桃太郎の信念がフーリエにとって受け入れられないのもまた事実。
彼女を行かせる事で無駄な血が流れる可能性を考えると、やはり一人で行かせたくは無かった。

当の美和子本人を差し置いて悩む二人に司は呆れる。
「美和子さん、どうするんですか?」
司は美和子がどういう答えを出すか分かっていたが、あえてそう口にする。
「私も桃太郎ちゃん達に着いて行くわ、それなら構わないでしょう?」
その言葉に二人とも驚きを露にする。
それはそうだろう、近くに身内がいるのが分かっているのに他人に付き合うなんて普通は考えられない。
だが美和子はここでフーリエとであった時、彼に付き合うと決めていた。
もちろん司もそのつもりだった。
しかし二人にはその意図が分からないのだろう、動揺する。
「たしかにおじいさんも大切な家族だけど、あなた達も私の大事な大事な家族なのよ」
普段と変わらない笑顔でそう言う美和子の表情は、おそらくこれまでに見た誰よりも美しかっただろう。
桃太郎はそれに故郷のおばあさんを思い出し、フーリエはその笑顔を神のように思い、涙を流す。
フーリエと美和子の関係を知っている司も思わず涙を流しそうになった。
「それにおじいさんには信頼できそうな方がついているから」
少し心配そうな顔をしつつも美和子はそう答える。
桃太郎も美和子の心情は理解できるのだろう。
腰を下ろし、こう言った。
「なら早く少年を保護して、幸一郎殿と合流いたしましょう。背中に乗ってください」
老人に走らせないようにとの配慮だ。
「あらあら、じゃあ甘えちゃおうかしら」
そう言って桃太郎の背中に乗る美和子の姿を見て、司はまるで彼らが本当の家族のように思えた。
そしてそのほほえましい姿を見て、彼らには誰にも死んで欲しくないと思った。

  ◆  ◆  ◆  ◆

こそこそと忍び足で一軒家の裏口から外に出て大分離れるまでに、和哉はこれまでにないほど気を使った。
嫌いな姉の部屋に忍び込みライトノベルをこっそり借りた時なんかとは比べ物にならない。
任地堂の大乱交スマッシュブラジャーズSEXに参戦していたヌネークもこんな気分だったのだろうか。
誰にも見つからずに外に出て、危険な爆弾を処理する。
ゲームでなら楽しんでやれたその任務も、現実に起こってしまえば恐怖以外のなにものでもない。
それでもパニックになる事だけはしなかった。
これ以上誰にも迷惑を掛けたくない。
優しく気を使ってくれた湊達に、さらに悩みの種をプレゼントするわけにはいかない。
頭の中にあったのは、誰にも迷惑を掛けずに爆弾を捨ててくる事だけ。
そのためには島の中央なんて目立つ場所に捨てていくわけにはいかなかった。
そして海に投げ込めば誰の迷惑にも掛からないだろうと思いついた。
『文字が浮かんでから三時間後に爆発』する爆弾の文字が、いつ浮かんだか分からない以上できるだけ早く捨てなければならない。
見覚えのある道を戻っていけばスタート地点の海の近くに簡単に辿り着けるだろう。
ただその考えから和哉はここへ来た道を戻っていた。
時限爆弾を早く安全に捨てる事だけしか考えていなかった和哉は、それがどういう事なのか気付かなかった。

爆弾というものを見て、冷静さを失っていた事。
子供ゆえの安直な考えで、海へ捨てると思い立った事。
地図というものの見方が分からなかった為、来た道を戻るという方法をとった事。
どれか一つでも一致しなかったら。
もうちょっと冷静になれていれば。
他の爆弾の処理方法を思いついていれば。
地図の読み方さえ分かっていれば。
こんな不運な事は起きなかっただろう。

「また、会ったね。少年」

腰まで伸びた綺麗な髪をなびかせ。
美しい顔に似合わない縞々の服を着て。
細身の体とアンバランスなゴツイ鋸を持った長身の男が。
……少年の行き先を遮っていた。
「さ、狭霧嘉麻屋!」
こうして、和哉は史上最悪の男と望まぬ再会を果たす。

和哉は唐突な再会に、動く事が出来ない。
狭霧の背後に見えるのは、見るも無残な姿となった晴海雪。
生前の姿を知っている和哉からすれば、とても耐えられるものではなかった。
最悪の殺人鬼が居るというのに、跪いて胃の中のものを吐き出してしまう。
あまりにも無防備な姿。
その隙をこの男が黙ってみている訳はなかった。
和哉の背後に立ち、電動ノコギリのエンジンを稼動させる。
狭霧はじっくりと恐怖を与える為に、ゆっくりと刃を振りかぶる。
刃を回転させるエンジンの騒音に晴海の最後を思い出し、和哉は必死の形相で跪いたまま前へ進んで避ける。
その瞬間、土を削る音と共に雑草が空を舞う。
狭霧は和哉をより痛めつける為に足元を狙った為、辛うじて避ける事ができた。
「今度は逃がさない」
初遭遇の時逃がした事と今避けられた事、二重の意味で宣言する。
和哉はあまりの恐怖に失禁をし、動く事もままならない。
逃げようとするも力が入らず、意味の分からない言葉を発する事しかできなかった。
先程とは違い素早く刃が振り下ろされる。
その一瞬で和哉の片足が胴体と離れる。
「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!!!」
これまでに感じた事のない痛みに、絶叫をあげ半狂乱となり逃げ出そうとする。
しかし立ち上がろうとするも、バランスを取れずに無様に倒れてしまう。
あまりにも現実とかけ離れたかのような現実に、和哉は片足が無くなった事にさえ気付かない。
狭霧はそんな和哉の姿を見てもなんの感情を表す事もなく、同じようにもう片方の足を奪い取る。
腕だけで逃げようとする和哉の片腕を切り取り、それでも逃げようとするので最後の腕も切り取る。
その頃には叫び声すら上げずに、時たまビクビクと動くだけになっていた。
「……はるが、おねえ、ぢゃ…………じに、だぐ……な゛いよぼぉ…………」
和哉が涙をボロボロと流し、途切れ途切れそう口にする。
少年が最後に助けを求めたのは、あれほど嫌っていた姉だった。
いつも姉に一方的な悪口を言ったりしていたのに、和哉が困った時には助けてくれていた優しい姉。
死の間際に気付く。
姉を嫌っていたのは、煙たがられても優しくしてくれる姉への照れ隠しだったのだと。
しかし狭霧は和哉の呟きを聞き、口を開く。
「安心しろ。その遥お姉ちゃんも直ぐに殺してやろう」
その言葉に和哉の顔が絶望に染まった。
和哉の表情を目に焼き付けると、狭霧は刃を振り上げる。
生を望み、助けを請う小学生の祈りすら一蹴し、慈悲もなく無残に殺戮する。
狭霧のその行動は見事に悪を演じきれていた。
(正義よ、まだ現れてくれないのか……?)
そう思いつつ小さな命を奪う為に、電動ノコギリを心臓に向けて振り下ろす。
悪を示す為に、正義を望む故に。
「やめろおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!」
刃が和哉を切り裂く瞬間、狭霧の願いが通じたのか正義の味方が現れた。
だが刃は止まる事はない。
無情にもバックパックごと和哉を切り裂―――かない!
電動ノコギリはバックパックに入っていたものにあたる。
それは和哉がここに来る事になった原因。
即ち時限爆弾入りクマのヌイグルミ。
危険を感じた狭霧が咄嗟に後ろへ跳びのくも、既に刃はヌイグルミ内に届き、内部にあった何種類もあるコードを全て切り裂いていた。
間違ったコードを切ってしまえば時限爆弾は爆発する。
その例に漏れず、この爆弾もすぐ下に居た和哉と跳びのこうとした狭霧を巻き込み爆発を起こす。
如何に狭霧といえど、爆弾を隠し持った相手と戦った事はなかった。
これまで殺してきた相手は無力な一般人だけ。
唯一殺し損ねた猫ヶ丘探偵団も、そんな物を所持しているはずもない。
だからこそ爆弾に気付けなかった。
一帯に閃光が走り、爆発音が鳴り響き、周囲を粉塵が支配する。
悲劇をとめられなかった桃太郎達は、思いもよらぬ結果に我を忘れていた。
ふと桃太郎の足元に何かが転がってきて我に返る。
粉塵の舞う中目を凝らしてそれを見てみると、桃太郎の目に少年の虚ろな目が飛び込んできた。
あと少しで助けられた少年の無残な姿を見て怒りがこみ上げてくる。
もう少し早く辿りつけていれば、発見した時に直ぐに追いかけていれば。
後悔と怒りで頭の中がない交ぜになる。

煙が晴れる。
彼らの目に映るのは、四散した和哉の死体。
『細工』された晴海の死体。
そして片腕を途中から失ているだけの狭霧嘉麻屋。
煙の舞う中止血したのか、服を破って傷口を縛ってある。
これほどの傷を負いながらも不敵に笑う狭霧を一同は不気味に思った。
「これは貴様がやったのか……?」
今度こそ間違えないように、念の為に狭霧に問う。
「その通り。私が目をくり貫き、腕を切り飛ばし、足を切り飛ばし、臓物を―――」
「もうよい!」
延々と自分がしてきた事を上げていく狭霧の口を、叫んで止める。
そんなおぞましい事聞きたくもなかった。
憤怒の表情で無言のままハルバードを構える桃太郎。
司も、庇うように美和子の前に出る。
一同に緊張が走る。
……が、フーリエが前へ進み桃太郎を諌めた。
「待ってください! きっと彼も神のお言葉をお聞かせすれば改心してくださります!」
しかし狭霧はフーリエの姿を見、その言葉を聴き、不快感を露にする。
「獣風情が神を語るか……不愉快だ。
 神がもし居るとしたら、なぜ犯罪が無くならない。なぜ悪が蔓延する……!」
今まで冷静に不敵に佇んでいた狭霧は、別人のように激昂する。
「神は―――」
「黙れ……この少年はなぜ死んだ? 悪に……私に殺されたからだ。
 罪もなき少年が死に、私が生きているのが神の居ない証拠」
フーリエの言葉を遮り、狭霧は和哉の死体を踏みつけ言い切った。
桃太郎は狭霧の言葉に、狭霧の行動に不快感が募ってくる。
「フーリエ殿! これでも悪しき者が改心するというのか!」
「それでも! 誠心誠意心を込めて説得すれば必ず改心してくれます!」
桃太郎はフーリエに怒鳴りつけ、フーリエも負けじと言い返す。
その光景に司は改めてフーリエの考えの危険さを感じた。
美和子も悲しそうな顔でフーリエを見つめていた。

埒が明かなくなったのか、桃太郎はフーリエを押しのけて一歩前に進み出る。
ハルバードを再度構えなおし、狭霧に刃先を突きつける。
対する狭霧もベレッタを取り出し、桃太郎に銃口を突きつけた。
「某はもう迷わない。誰かが悪だと言ったからではなく、某が貴様を悪だと認めたから……某の正義の証明の為に、貴様を斬る!」
「ならば私を殺して正義の存在を証明してみせろ!」

前口上とともに、正義を望む二人の戦いが幕を開ける。


【I-3 平原/1日目 昼】
【桃太郎】
【状態】:健康
【装備】:ハルバード
【所持品】:支給品一式 不明支給品×0〜2
【思考・行動】 基本:弱き人間を守り、悪しき人間を倒す
1:狭霧嘉麻屋を討つ
2:司・美和子・フーリエを守り、他の弱き人間も探して守る
3:アルベルト打倒

【松井司】
【装備】:毒蜂
【所持品】:支給品一式
【状態】:健康
【思考・行動】 基本:主催者を絶対に許せない
 1:狭霧嘉麻屋に対処する。
 2:美和子とフーリエと一緒に行動し、フーリエが死にそうになったら守る。
 3:兄(哲也)を探す
 4:桃太郎とフーリエに理解しあってほしい
【鍵谷美和子】
【装備】:なし
【所持品】:支給品一式
【思考・行動】 基本:知り合いを探し、そのあと会場から脱出する
 1:狭霧嘉麻屋に対処する。
 2:フーリエの傍を離れない
 3:できれば首輪を分析したい
 4:幸一郎のことが心配

【フーリエ】
【状態】:正常
【装備】:アラモボーイ(サバイバルナイフ)
【所持品】:支給品一式
【思考・行動】 基本:仲間を捜し、不戦を呼び掛ける
 1:狭霧嘉麻屋を説得し、改心させる
 2:折をみて桃太郎を再び説得する
 3:次に遭遇した参加者を説得する

【狭霧 嘉麻屋(さぎり かまや) 】
【装備】:ベレッタ
【所持品】:支給品一式 ×2 不明支給品1〜2 (チョコパン一個消費、ヨーグルトパンのヨーグルトだけ消費)
【状態】:片腕途中から欠損
【思考・行動】 基本:正義の実在を証明するため、姑息に、残酷に、無惨に、手段を選ばず殺し合う
1:目の前の四人を殺す。
2:遥という名の女を殺す。

※壊れた電動ノコギリと壊れた木刀がI-3に転がっています。

【泉和哉 死亡確認】
【残り41人】
298名無し草:2008/06/12(木) 06:00:16
代理投下終了、そして投下乙!
鳥を使ったフェイク予約とは…正直、投下しようとして初めて気づいたよw

悪を必要とする正義と正義を求める悪、邂逅は必然とはいえ予想よりずっと早かったな。
そしてフーリエ、坊主が死んでも主張を貫くお前の頑なさには逆に感動させられてしまったよ。
299名無し草:2008/06/12(木) 07:43:51
ちょっと感動した所で、大乱交スマッシュブラジャーズSEXってなんじゃそりゃw
300名無し草:2008/06/12(木) 11:36:55
乙!!
ここでこの二人の戦闘か……
フーリエのバーローっぷりもここまで来るとカッコいいなw
あと和哉南無。
301 ◆Syk9Sx8L.s :2008/06/12(木) 17:00:43
ごめんなさい、延長させていただいてもいいでしょうか……orz
302名無し草:2008/06/12(木) 21:41:28
了解。待ってますー
303 ◆Syk9Sx8L.s :2008/06/13(金) 14:40:54
遅くなりましたが投下します
一一一の人生はいつどの瞬間を取り出してみても苦渋に満ちていた。
それは、他の人間なら見ないふりをして通り過ぎていく色々なものを彼は見逃すことができなかったからだ。
彼の世界はそんな一一のような人間にはとことん不親切に出来ている。
愛し合っている恋人たちのこととか、健やかに育って欲しいと思っている子供たちのこととか、夢を育んでいる若者たちのこととか、そんなことはこの世界はちっとも考えてはくれない。
だから一一は世界を、せめて自分の国を動かせるような立場の人になろうとした。
当然、総理大臣という職に就くには清濁を併せ呑む覚悟も必要だった。
それでも彼は、全ての国民に笑っていて欲しかった。

しかし、やっとの思いで手に入れたその地位も、彼が一番人を助けたいと思ったときには何の役にも立たないものになっていた。

放送を聴き終えた時、一一はもし目の前に食器でもあればそれを割っていただろうし、壁でもあればそれを殴っていただろう。
しかし今は周りには彼の怒りを受け止めてくれるものなど何も無い。
もちろんこうなることを予想してはいた。すでに殺し合いに乗っている人間がいることも知っていた。
だが、十七人の死者の中に何人幼い子供や若者がいただろうか。
こんな理不尽な理由で、家族や恋人や友人を置いて逝くことがどれだけ無念だっただろうか。
それを思うと、とても一国の長としてあるべき冷静さを保っていることなど出来なかった。
自分は十七人もの人が命を奪われることを許してしまった。
これでは、自分は何のために総理大臣になどなったのか。

だが、いつまでも自分を責めているわけにはいかない。そんなことは後からいくらでもすればいい。
今彼の隣にいるのは、政治家としてそれなりに汚いものも見てきた自分などとは比べ物にならないくらい脆い普通の少女なのだから。
そう思って、おそらく自分以上にショックを受けているであろう遥の様子を伺うと。
「ははは……なあんだ」

一一はそれを見てある種の戦慄を覚える。
遥は笑っていた。やっと笑ってくれていた。
ただでさえ平均以上と言っていい美少女がまるで何かから解放されたのように笑う仕草は、普段であれば一国の老いた総理の頬すらも染めさせただろう。
それはまさに一一が、全ての国民にこんな風に笑って欲しいと願っていたその笑顔に相違なかった。だからこそ彼の胸は激しく痛んだ。
なぜ、今ここで彼女がこんな風に笑っているのか――

「きっと、こんなの全部夢なんですよね? そうに決まってますよ」
同意を求めるように一一に微笑みかけた。
「だって、高原くんは昨日久しぶりに学校に来たときは全然元気だったんですよ!?
不良ぶってるけど本当は優しい人で、女の子には優しいところもあって、
それに日滝先生だって昨日はいつもみたいに授業してましたよ!?
顔は怖いけど生徒思いの先生で、杏くんたちにも慕われてて、授業もわかりやすいし、
だから、だから死んじゃうはずなんか無いんですよ!!」
ただ一一に一言でも同意して欲しい一心で畳み掛ける。しかし一一は間違ってもここで首を縦に振るわけにはいかない。
遥は笑っていたが、それは一一にとって余りに悲しい笑顔だった。
彼は自分の国民にこんな風に笑って欲しかったわけじゃない。
「そうですよ。大体檀ちゃんが私を殺そうとするはずが無いし、和哉や杏くんたちがここにいるわけも無いし、大体、スポポロスとかニャルロットとかアニメやライトノベルのキャラクターの名前があるなんておかしいじゃないですか!!
だからこれはきっとただの夢なんですよ。目が覚めたら元通りです」
そう言ってからからと笑う。いつも教室で杏たちに見せているのと同じような笑顔で。
彼女の気持ちは痛いほど理解できた。一一だってそんな考えの中に逃げ込めたらどれだけいいだろう。
だが、これはアニメや漫画でもなければ夢でも無いのだ。そんな空想の中に逃げてしまっては自分の死期を早めるだけでしかない。
「遥ちゃん」
一一は彼女の肩に手を置いた。
「これは現実なんだ。高原くんも日滝先生ももう亡くなったんだ。もう帰っては来ないんだ!!」
努めて穏やかに言おうとしたが、自然と語気は険しいものになってしまった。
遥は限りなく無表情に似た笑顔を貼りつかせたまま、
「違いますよ。これはただの夢ですよ。だってそうじゃなきゃおかしいです。こんな簡単に人が死ぬわけが無いんですから」
「貴方の気持ちはわかる。だがこれは夢なんかじゃない」
「だって、アニメのキャラクターまでいるんですよ?」
「平行世界の説明を聞いただろう。ここには様々な世界の人たちが集められているんだ。
アニメと似たような世界がどこかに存在するのかもしれない。貴女だってさっきまでそう言っていたじゃないか」
「でも……」
「でも、じゃないんだ!!」
国会で野党と論戦している時も、総選挙前に街頭演説をしている時も、これほど必死に言葉を紡ごうとしたことは無かった。
今、一一はまさに一人の人間の生死と向き合っているのだから。
「現実から目を背けて何になる!! ここでは何人もの人がすでに誰かに殺されていて、貴女の友人や先生も命を落としていて、それは確かに許せないことだけど、でも事実なんだ!!」

一一が総理大臣をやっていた世界でも、許せないことは沢山あった。
でも、いくら許せないことでも、どんなに悲しくて辛いことでも、それが存在するのは確固たる事実だった。
それを見たくないことだからといって目を背けるのは、今苦しんでいる人を見捨てることでしかない。
だから一一は、どんなに受け入れたくない現実ともまっすぐ向き合ってきた。それは一一のような妥協を嫌う人間にとっては余りに辛い生き方だった。
それでも決して何からも逃げようとしなかったことが一一の誇りでもあったのだ。

「貴女は友達を助けたいんだろう? 殺し合いに乗った友達を止めたかったんだろう!?
貴女の友達がここにいて、彼女のお兄さんや妹もここにいるということも紛れも無い事実なんだ!!
それに貴女の弟だってここにいるんだ!! 貴女がしっかりしなくて誰が彼を守るというんだ!!」
それはすべて、まさに遥が懸念していた事態だった。
名簿の中に二人の兄妹の名前を見つけた檀という子は果たして何を思うだろうか。
それは一一よりも遥のほうが正確に想像できるはずだ。
――なのに、目の前の少女は。
「それも、みんな、みんな夢なんですよ。あ、それか、ひょっとしてみんなで私を騙しているんですか?
檀さんも一総理も、みんな私をからかって面白がってるんじゃ」
「っ――――」

破裂音に似た音が辺り一面に響き渡った。
遥は尻餅をついた姿勢のまま、固まった笑顔で一一を見上げている。
泣き出すわけでも赤く腫れた頬に手を当てるわけでもない。
一一は思ったより痛んだ拳に自分の老いを感じた。
人を殴るのは本当に久しぶりのことだ。国家の要職にある身分でそんなことをすれば、野党やマスコミが黙ってはいない。
それ以前に、自己を律することが誰よりも求められる立場にありながら短絡的に暴力に頼るような真似は絶対にしたく無かった。
だが、遥を正気に戻すにはもはやこうするしか無いと思った。かつて、遠い昔に自分が父親にそうされたように。

「すまない。だが分かってくれたかね?」
腰をかがめ、遥と目線の高さを近付ける。今度こそ、自分の言葉が彼女に届くことを信じて。
しかし、彼女の口からきっと良い返事が聞けるに違いないと信じてその言葉を待っていた時。

「う、う、うあああああああああああああ!! 遥ちゃんに何するッスかああああああ!!」
意味の無い咆哮を上げて、一匹の巨大なミジンコが一一に体当たりした。


「にゃあ、あいつがお前の探していた一人にゃにょは間違いにゃいにょだにゃ?」
子猫が傍らに控える巨大ミジンコに問いかける。
「は、はい、そうッス!!」
背中についたプロペラで空中に浮いているミジンコはしどろもどろになりつつ答える。
子猫にミジンコ、そして兎の鞄を背負ったゴスロリ少女。
そんな出来損ないの魔女とそのペットみたいな集団が、目当ての人物の一人と遭遇できたのにも関わらず息を潜めているのにはそれぞれにわけがあった。
デンドロビウムにとって、遥の前に自分が姿を現すというのは避けたいことだった。
瑞子との出会いなどによって少しは人見知りを克服できたとは言え、知らない人間の前に出ることと知っている人間の前に出ることは全く違うことだった。
なのでまずはニャルロットとミルフィーユが接触する必要があったのだが、どう考えても今はおいそれと出て行けるような状態では無かった。
二人の会話の内容までは分からなかったが、巨漢の男のほうは深刻そうな顔をしているのに遥らしい少女のほうは終始笑顔ということからして通常ではないことを見て取った。
口論をしているといった険悪な様子でもなかったが、それ故に安易に声を掛けるのも躊躇われる。
「ニャルロットさん、ネコならここから二人の会話聞こえませんか?」
「ワガハイはそにょ辺にょ能力は退化してしまっているからにゃ……にゃ?」
それは一瞬の出来事だった。
男のほうが遥の頬を拳で殴ったのだ。会話の流れが分からない分、それは彼女たちにはあまりに唐突に見えた。
ミルフィーユは思わず口元を手で押さえる。
「ニャルロットさん……!!」
「静かにするにゃ」
ニャルロットには男が敵意を持って暴力を振るったのではないであろうことは分かっていた。それは二人の表情をここから伺うだけでもわかる。
そのことはミルフィーユにも一応は理解できていた。おそらく非は男のほうには無い。
これだけであの男を危険人物と結論付けるのは早計だ。
しかし、今まで人と接するということを徹底して避けてきたデンドロビウムの目はそういう事実を透かして見ることは出来なかった。
ただ彼の目に映ったのは、『大柄な男が遥の顔を殴った』という事実だけ。
なぜ遥が殴られたのか?
遥が何かをしたようには見えなかったのに。
あの男は一体遥をどうするつもりなのか?
このまま放っておいたら……
人前に出るのは怖い。
悪い人間の前に出て行くのは怖いし、知っている人間の前に出て行くのも怖い。
しかし、今そうしなければ遥はどうなってしまうのか。
怖いからと萎縮して……それで全てを失ってしまうのなら。

それは、デンドロビウムが生まれて始めて手にした勇気だった。

「う、う、うあああああああああああああ!! 遥ちゃんに何するッスかああああああ!!」
デンドロビウムの体当たりを受けた一一はよろめいて数歩後退した。
老体とはいえ、武道で鍛え上げたその巨体は特大ミジンコ如きの体当たりで倒れるようなものではない。
即座に体勢を立て直すと、突然の乱入者に対して警戒しつつ構える。
それがミジンコだったのには流石に驚いたが。
一方、攻撃をしかけたほうのデンドロビウムは見る影も無いほどに震えていた。
頭が煮えたぎるように熱く、何も考えられる気がしない。
触覚と腕が彼の動揺を的確に伝えようとしているかのように小刻みに震える。
発声器官が痙攣し、声を発することも出来ない。
視界が真っ白になりそうになる。
その頼りない姿は、風でも吹けばあっという間にどこかへ飛んでいってしまいそうだった。
彼をその場に留めているのはただ、『遥を傷つけた人間を許せない』という一心だけ。
それだけで、見知らぬ男とたった一匹で向き合うという彼にとってはあまりに過酷な行動を取ることが出来たのだ。
一方の一一にとっては、巨大な空飛ぶミジンコに突然わけも分からず襲われたようなものだった。
本来ならすぐにでも退けるべきだが、得体の知れない相手ゆえにうかつに手を出すわけにもいかない。
膝を抱えるようなポーズで硬直する遥を尻目に、二人はどこか落ち着かないような様子で向かい合っていた。
「待て」
その不安定な均衡を突き崩したのは若い女のものに似た声だった。
しかしその声の主を見て一一はさらに目を丸くする。それは何の変哲も無い赤毛の子猫だったのだ。
さらにその後ろから、学芸会の衣装みたいな格好をした小学生くらいの少女が駆け寄ってくる。
「驚くにょは無理にゃいが、ワガハイたちはこう見えても殺し合いにはにょっておらん。
だからそんにゃ怖い顔をしにゃいで欲しいにゃ。
そしてデンドロビウム、お前も少し落ち着け。見ている限りではこの男も殺し合いには……」
「あははっ!!」
ニャルロットの声は場違いなほど明るい笑い声に遮られる。
それまで石のように固まっていた遥がお尻をぱんぱんと払いながら立ち上がった。
「ヘンなの。しゃべるネコさんに、えっと、あなたはミジンコさん? まるで御伽話みたい」
そう言いながら、服のポケットに手を入れる。
「やっぱり私、一人になりたいです。殴られるのもイヤだし、私のせいで人が喧嘩するのもイヤ」
そこから取り出したのは、手の中に納まるほどの小さなボールだった。
「だ……だ、だ、ダメっす!!」
真っ先に動いたのはデンドロビウムだった。
瑞子に聞いたステルスボールの説明を思い出す。
ここで彼女にそれを使われてしまっては、せっかく見つけた意味がなくなる。
「ごめんなさい、一総理」
腕が振り下ろされ、ボールが地面の上ではじける。
遥の姿は掻き消えた。


「遥ちゃん!! どこにいるんだ!! 返事をしてくれ!!」
一一は見えない遥に向かって呼びかけるが、それに答える物音すら無い。
「無理だろうにゃ。あの様子では自分から出てくることはあるまい。
あいつは自分の意思で姿が見えにゃくなるボールを使ったんだからにゃ」
「そうはいかないんだ!! 彼女は危険な状態だ、一人にするわけにはいかない!!」
一一はニャルロットの言葉を遮ると、まだそばにいるはずの遥を捜し求める。
赤毛の子猫はため息をつくと、動揺を隠そうともしない老人に対して咎めるように告げた。
「一国の総理ともあろうもにょがその様はみっともにゃいにゃあ」
総理は足を止めて口を噤んだ。
「うん、大体さ、最初からおかしいと思ってたんだよね。
殺し合いをしろなんて言われた状況で、そう簡単に見ず知らずの人を信じられるわけないもん。
あの人だって、本当は私のことを邪魔だって思ってたんだ」
遥は自分を探す男の姿を遠目に見ながら小さくつぶやいた。
戦中生まれの一一にとっては、子供を殴ることに対してそれほどの抵抗感は無かった。
だが、親にすら滅多に手を上げられたことのない遥にとっては、一一に持っていた信頼を打ち消すのに十分なことだったのだ。
もちろん、放送で知っている人間が死んだことを知らされたこと、その事実から逃げようとしたら一一に否定されたこと、それらが全て重なった上での結果だ。
遥にも本当は分かっていた。そんなのは自分の得意な逃避に過ぎないと。
だが、一言でも一一に「そうかもしれない」と言ってもらえたら、あるいは頭ごなしの否定ではなくもっと納得できる形で諭してもらえたら。
それで悪い夢は終わるはずだったのに。
「なんて、身勝手だよね、私」
もう一一と一緒にはいられない。あの人と一緒にいたら私の心が壊されてしまう。
じゃあこれからどうしよう?
このボールで姿を消している間は多分誰に誰にも殺されることは無い。ずっとそうやって隠れていようか。
ボールの数には限りがあるけど、でも無くなった後のことなんかその時考えればいいや。
それとも、本当にこの殺し合いが全部夢だと思い込み、空想の世界に逃げ込んでしまうか。
それは遥にとってはあまりにも魅力的な選択だった。
檀が自分を殺そうとしたことも、一一が自分を殴ったことも、全て忘れてしまおうか――


「遥ちゃん……」
遥の背後にデンドロビウムはいた。
他の人たちからは姿が見えなくなっている遥の姿が自分にだけ見えるのは、おそらく自分もステルスボールの効果を受けているからだろう。
実際、自分自身の姿もニャルロットやミルフィーユからは見えなくなっているようだ。
本当なら姿が現れるようになるまではニャルロットたちの側を離れないほうがいいのだろうが……
せっかく見つけた遥をまた見失ってしまうこと、遥をこのまま一人にしてしまうこと、そのことのほうがずっと怖かった。
それに、あの遥を殴った男は信用できない。ニャルロットたちはなぜか気を許しているようだが。
逡巡している間に、遥は自分を探している男に背を向けてどこへともなく歩き始めた。
もう迷っている暇は無い。
デンドロビウムは遥の背中を音も無くつけていった。声を掛けるタイミングをうかがいながら。

【G−6 平原/一日目・昼】

【泉 遥】
【装備】無し
【所持品】ステルスボール×1
【状態】右の頬に浅い切り傷(治療済)、左の頬に打撲痕
【思考・行動】基本:殺し合いはしない。
1:一一たちから離れる

【デンドロビウム】
【装備】なし
【所持品】支給品一式(不明支給品1〜2)
【状態】健康
【思考・行動】
1:遥のあとをつける
2:遥に話しかける
3:人は殺さない
※一一を危険人物だと思っています
※自分の姿を普通の人間が見たら怖がると思っています。
 ですが、きちんと話せば理解しあえるのではと思い始めています。
※ニャルロットの知り合い、勇者スポポロス、一一一についての情報を得ました。
「なるほど。君たちも伍宮先生と会ったのか」
ようやくいつもの総理大臣としての冷静さを取り戻した一一は、ニャルロット及びミルフィーユから話を聞いていた。
子猫が喋っているのにはもう慣れた。
むしろ一一にとっては、ミルフィーユが着ている華美と地味をうまく折衷したような異様な衣装のほうが怪異なものに見えた。
「そうだ。そこで泉遥という娘が一という総理大臣と一緒に行動していると聞いたにょで、遥と一緒にいたお前がそうだとわかったというわけだにゃ」
「あの、総理大臣って私の世界で言ったら国王様みたいなもの、でしたっけ?」
ゴスロリの銀髪幼女が横から尋ねる。
「まあ権限とかが色々と違うが、大体おにゃじようにゃもにょだにゃ」
「ええええ、だったら凄く偉い人じゃないですか!?」
ミルフィーユは突然緊張し始めたように居住まいを正す。目は虚ろなままなのでどこかちぐはぐな雰囲気だが。
「君、それは違うな。総理という仕事は偉いわけではない。責任が他の仕事よりもずっと重いというだけだ。
ちょっとした失敗が国の、国民たちの未来を左右してしまうこともある。
偉くなれるからというだけの理由でなろうとする人にはとても勤まらないんだよ。
もちろん私も、自分が立派に今の職務をこなしているとは思っていないけどね」
なにしろ全ての国民を幸せにすると誓っておきながら、たった一人の少女すらも守ることが出来ないのだから――
自分の前から姿を消した遥の笑顔が瞼の裏に焼きついて離れない。
本当なら一刻も早く見つけ出したかったが、ステルスボールの効果時間中はいくら探し回っても無駄だということはニャルロットに言われるまでも無くわかっていた。
「それにしてもデンドロビウムまでいなくなってしまうとは困ったもんだにゃ。せめて声を掛けてくれれば存在を知覚することも出来るというにょに」
「そう言えば、デンさんももうこの近くにはいないんでしょうか?」
「単に人見知りで隠れているだけかもしれんが……」
しかし、あの時のデンドロビウムの様子を見る限りではおそらく遥と同様にこの側にはいないだろう。
(全く、身勝手な依頼人というにょが一番困るにゃ)
まだ仕事を終えてもいないのに依頼人がいなくなってしまっては元も子もない。
増してやデンドロビウムが依頼を解決する前に命を落としでもしたら、探偵としてこれほど不名誉なことはない。
(本来にゃら依頼料をたっぷり積んでやらにゃきゃ割にあわにゃいにゃ)
苛立ち紛れに尻尾で地面を叩いた。

「ところで、そろそろ君たちの名前を教えて貰ってもいいかな?」
一一にそう言われて、まだ名を名乗っていなかったことに気がついた。
「申し遅れていたにゃ。ワガハイはニャルロット。探偵業を営んでいる」
「私はミルフィーユと申します。好物はバナナです。そういえばもしかしてバナナお持ちじゃないですか?」
「こにょ期に及んでまだ言うか!! 大体好物は聞かれとらんわ!!」
益々苛立ったように尻尾を振り回すニャルロットと、頬を膨らませて「えーバナナ欲しいんですよー」とごねるミルフィーユを見ながら一一は驚きを隠せなかった。
「ニャルロットさんと……ミルフィーユ、ちゃんだって?」
「ん? どうかしたにょかにゃ?」
総理はしばし何かを考えるように顎に手を当てていたが、
「……ああいや、なんでもない。それよりも、これからどうするかだが――」
これは、第一回放送がかかるよりも少し前の話。
運動不足気味な遥を引き連れた一一の移動速度は芳しくなく、診療所からさほど離れていない場所で二人は何度目かになる休憩を取っていた。
念のため鞄から名簿を取り出して開いてみると、そこにはさっきまでは無かった参加者全員の名前が載せられていた。
「これほど沢山の人たちが……」
改めてここで行われていることに対して戦慄を覚えずにはいられない。
そして一一は遥と一緒に、名簿に彼女の知り合いの名前が無いかどうかを確認した。
「なるほど、この杏くんと蕗ちゃんは檀ちゃんの三つ子の兄妹なんだね? そして、この和哉くんというのが……」
「はい、弟です……」
最もあって欲しくなかった名前が次々と見つかることに遥は驚愕を隠せない様子だった。
他にも高原というクラスメートと、日滝という数学教師。
「大丈夫だとも、心配しなくていい。みんなきっと無事に帰れる。私が総理大臣として保証しよう」
そう言うと、遥はいくばくかは安心したようにため息をついた。

「それにしても、随分と変わった名前の人が多いようだが」
「あ、あの、多分その中の何人かはアニメのキャラクターだと思いますっ」
「アニメの?」
にわかには信じがたいことだった。しかし平行世界という言葉の意味を考えればあながちありえないことだとも言い切れない。
「なるほど。じゃあ遥ちゃん、この中で遥ちゃんから見て注意したほうが良さそうな人物というのは誰になるかね?」
「そうですねえ……まずこの狭霧って人は危ないです。ヤバい殺人犯ですから。
あとは……この、ミルフィーユって人ですね。この人は勇者スポポロスの仲間だったんですけど、最終回で裏切って、国王の命令でスポポロスに毒を盛って殺しちゃうんですよ。
そのあと怒った民衆によって裸にされてバナナの木に吊るされて口にバナナをいっぱい詰め込まれて殺されちゃうんですけどね」

【G−6 平原/一日目・昼】
【ニャルロット】
【装備】なし
【所持品】支給品一式(不明支給品1〜2)
【状態】健康
【思考・行動】
1:一と情報を交換する
2:デンドロビウムと遥を探す
3:殺し合いには乗らないが、襲ってくる奴は殺す。
4:主催者に多額の依頼料を支払わせる。
※デンドロビウムの知り合い、勇者スポポロス、一一一についての情報を得ました。
※瑞子には若干の危険性を感じています。

【ミルフィーユ】
【装備】なし
【所持品】支給品一式 (不明支給品0〜1)モゲラヨモギの汁(残量100%)
【状態】健康
【思考・行動】
1:一と話す
2:デンドロビウムを探す
3:バナナが食べたい。
※デンドロビウムの知り合い、ニャルロットの知り合い、一一一についての情報を得ました。
※一一と遥が知っているミルフィーユとこのミルフィーユが同一世界から来たのかどうかはわかりません。



※モゲラヨモギの汁
 悪のヨモギ屋モゲラッチョ・ヨモギーノの作り出した毒草の汁。色は青汁のような緑。
 直接飲ませたり注射したりする事で使う猛毒で、数滴なら体が痺れる程度ですむが
 一定以上の量を使うと全身の筋肉が弛緩して死にいたる。
【一 一一】
【装備】なし
【所持品】支給品一式(不明支給品0〜2)
【状態】健康
【思考・行動】基本:殺し合いを止める。
1:ニャルロット、ミルフィーユと話す
2:ミルフィーユを警戒
3:遥とデンドロビウムを探す
4:和哉・杏・檀・蕗を探して保護する
5:殺し合いに乗っていない人を集める
※瑞子が立派な医者だと勘違いしています。
318名無し草:2008/06/13(金) 15:26:23
投下乙!
って(平行世界の?)ミルフィーユ…w

スポポロス世界観は設定と支給品で真価を発揮してるなw
319名無し草:2008/06/13(金) 16:48:15
投下乙、ミルフィーユ何気に危険人物だったのかよw
遥も精神が一気に不安定に……しかも弟はすでに死亡済み……
頑張れデンさん、遥を救えるのは(たぶん)君だけだ!
320名無し草:2008/06/13(金) 16:50:12
>裸にされてバナナの木に吊るされて
うp
321名無し草:2008/06/13(金) 16:54:33
っていうかスポポロスが毒殺される世界ってエロゲなんじゃねぇのか?
裸ってwwwwwwwwww
322名無し草:2008/06/13(金) 18:54:08
一総理かっけー!
で、ミルフィの最期w
323 ◆Syk9Sx8L.s :2008/06/13(金) 23:41:10
あ、泉遥とデンドロビウムの状態表にこれを入れるのを忘れてましたorz

※ステルスボールの使用により他の参加者から姿が見えなくなっています
 ただし遥とデンドロビウム同士は姿が見えます

差し支えなければ追加していただければ幸いです
324 ◆w2G/OW/em6 :2008/06/14(土) 02:31:27
Sy氏投下ご苦労さま&乙でした。

自己リレーになってしまうのですが、伍宮瑞子を予約したいと思います。
反対意見があったら、遠慮なく言ってください。
325名無し草:2008/06/14(土) 15:45:28
ユーやっちゃいなよ!!
326名無し草:2008/06/14(土) 21:30:58
今、書き手紹介作成中なのですが
五つ以上のSSを書いている書き手さん限定で作成させてもらってます。

◆Syk9Sx8L.s氏
◆qD/48vMrg6氏
◆2MhMI9dv8k氏
◆tU0k3bQVSE氏
◆2MhMI9dv8k氏
◆dEUulpVSzA氏
で合ってますか?
五作以上の書き手さんを探すだけで時間掛かってしまった……orz
327名無し草:2008/06/14(土) 21:37:19
◆lYiZg.uHFE氏(6作)が抜けてますよー!!
てか俺が二人いるww
328名無し草:2008/06/14(土) 21:40:20
抜けサンクス
やっぱり二人いるのか……これって見破らないと自分の能力がないようで嫌だなw
329名無し草:2008/06/14(土) 21:40:28
失礼、今は七作でしたねor2
まあただのコピペミスかもしれないけど一応指摘
330名無し草:2008/06/14(土) 21:52:24
流れぶった斬るけど例の二人のデータを分かりやすくまとめてみた

【名前】森秀猫院美羽(もりしゅうみょういん・みう)
【性別】女
【年齢】17?
【職業】皇女(ジュリアの記憶から)
【身体的特徴】黒髪の美少女(マイルズの記憶から)
【性格】ミーウと同じくレズっ気があるらしい(ジュリアの記憶から)
【経歴】1930年代辺り、マイルズ・ホワイトに白人奴隷の解放を求めていた(ミーウ曰く。ジュリアの記憶だと十九世紀頃にアメリカの視察に行った)。
    何かあって表歴史から消えた後は研究員に捕まったらしく、ある鉱物と多分狐を混ぜられてミーウとなる。
    それからは執行者として生きてきたらしいが、解放されてから再びヴェーヌと再会するまで何をしていたか謎。
    此処までの経歴の記述はミーウが椿に語ったのとマイルズの最期の記憶から。

【名前】 ジュリエット・シルバー
【性別】 女
【年齢】 21?
【職業】 皇女の護衛?
【身体的特徴】 金髪蒼眼。ジュリアと同じく体格は普通らしく、美乳。
【性格】 ジュリアの様に荒々しい訳でもなく、至って普通
【経歴】十九世紀頃、どうのこうのでアメリカには居られなくなったので大アジア帝国の森白部塗院藍璃(ヴェーヌ)に身を置かせてもらっていたらしい。
    何かあって表歴史から消えた後は研究員に捕まったらしく、ある鉱物と多分ライオンを混ぜられてジュリアとなる。
    それから解放され、スラム街で必死に生き抜いている内(この間に性格が変わった模様)にヴェーヌを発見。
    彼女がレイープされているところを助けだし、彼女に言われてようやくまともな職に落ち着いた。
    此処までの経歴の記述は全てジュリアの記憶から。
331名無し草:2008/06/14(土) 22:08:03
乙。
かなり助かる気がしますw
332名無し草:2008/06/14(土) 22:09:53
>彼女がレイープされているところを助けだし、
そんな描写あったっけ
333名無し草:2008/06/14(土) 23:36:22
『隣り合わせの死と青春』に、

>でも、舞台が終わった裏では、あいつは、団長含めた団員全員に手込めにされていた。
>――行き掛けの駄賃。金を奪うついでに、あたしはその旅芸人一座を皆殺しにした。

とある。
334 ◆FBECTmyb.U :2008/06/14(土) 23:49:44
先にこっちで

◆qD/48vMrg6氏……オリロワのカオスは全て俺のもの“狂気の暴走機関車”カオス・トーマス
代表作:『円卓の騎士(前編)(後編)』『シンジラレナイ』

短編ながらもオリロワのロケットスタートに大きく貢献してくれた書き手さん。
何故か前編だけ投下されたり、同じキャラばかり書いていた。オリロワのカオスの象徴のような方
しかし、この人がいなければロケットスタートはあり得なかったであろう。



◆Syk9Sx8L.s氏……桃太郎の背景がエグ過ぎる?そんなの関係ねぇ!“桃色銃”ストロベリー・ガン
代表作:『見果てぬ夢』『冷たい正義』

初めて鳥付きで投下してくれた書き手さん。
この人がいなかったら、もしかすると鳥付きで投下することはなかったかもしれない。
織田信長のかっこいい死に様、桃太郎の掘り下げは圧巻の一言。



◆lYiZg.uHFE氏……いい繋ぎばかりで安心と油断するなブラック細工の作者だぞ!“無音鬼畜”シークレット・ザンキ
代表作:『意地があんだよ、ゴキブリにもなぁ!』『南極を制す者は氷をも制す』

上手い繋ぎをしてくれる良書き手さん。
『南極を制す者は氷をも制す』ではそこまでのSSの超展開を主催者アルベルトの思惑とすることで
それまでの偶然を必然に変えてくれた。
335 ◆FBECTmyb.U :2008/06/14(土) 23:50:01
◆2MhMI9dv8k氏……マーダー出さなくて何を出す!“解剖散華”マーダー・スキャナー
代表作:『父親達のバトルロワイアル』『鏡の中の君』

キャラ登場話ではマーダーを必ず生産している書き手さん。
生かされることはなかったが毒サソリを使って
マーダー化させるなど展開にも定評がある。



◆dEUulpVSzA氏……殺害数トップは俺のもの!“人形殺害者”リアル・キラー
代表作:『ドブネズミみたいに 』『ソードマスターファシル【完結篇】』

殺しに殺しまくってる正にあんたがマーダーだろ!な書き手さん。
SS五話で六名の殺害数を誇る。フラグを持っていたキャラも含まれているため賛否両論あるが
それがよかったか悪かったか分かるのはまだ先の話。
邪気眼ファシルの死亡後の話も邪気眼全開であり、最後までファシルらしく散れた。



◆tU0k3bQVSE……俺が二人いるかも?そんなの関係ねぇ!“傀儡発掘人”エンドレス・スプリガン
代表作:『怪人悪男』『Way of him』

一言で言うとサイコーな書き手さん。
とにかく『怪人悪男』が圧巻、ただの登場話なのだがキャラの掘り下げが凄すぎる。
オリジナルキャラという利点を最大限に生かし狭霧嘉麻屋をサイコーな形のマーダーへと仕立ててくれた。
336名無し草:2008/06/14(土) 23:55:40
………orz
鳥は忘れてください。
337名無し草:2008/06/15(日) 00:23:11
乙です
338 ◆w2G/OW/em6 :2008/06/15(日) 01:41:52
多少不安な所があるので、仮投下スレに投下します。
339名無し草:2008/06/15(日) 02:47:46
私としては展開的に何も問題は無いと思います。
知り合い設定の追加についても別に良いんじゃないでしょうか。

あとは21レス目の
>給油室にに置いてあった水筒にアツアツの紅茶を注ぐ。
という部分ですが、給油室ではなくて給湯室の間違いではないでしょうか。
「給湯」は「きゅうゆ」ではなく「きゅうとう」と読むので覚えておくと良いかと思われます。
340名無し草:2008/06/15(日) 14:43:18
http://www7.atwiki.jp/orirow?cmd=upload&act=open&pageid=15&file=%E4%BA%BA%E7%89%A9%E7%9B%B8%E9%96%A2%E5%9B%B3Ver007.jpg
ちょっと勇み足な気もしますが。テスト投下分までの人物相関図更新しました。
いつものように抜け、ミスがあると思うので指摘お願いします。
341名無し草:2008/06/15(日) 15:33:43
気が早いなw
342 ◆w2G/OW/em6 :2008/06/15(日) 17:31:28
仮投下分を本投下します
人間に備わっている欲の内、最も強いものを三大欲求という。
即ち食欲、性欲、そして……


「くかー……」

睡眠欲、である。
I−5の診療所の待合室のソファにて、伍宮瑞子は惰眠を貪っていた。
その無防備さたるや、とても殺し合いの場とは思えない。

「うー……もう食べられないー……」

何ともデフォルトな寝言を呟き、ごろりと寝返りをうつ。
その結果ソファから体が大きくはみ出し、

「めがっ!?」

冷たい床に落下した。

「あー、いつの間にか寝ちゃったのかー……いけないいけない。」

そう言いながらポリポリと頭を掻きながら起き上る仕草からは、とても反省の色は感じられない。
むしろ『よく寝たー』とでも言いそうである。
起き上った瑞子はソファにどっかと腰掛け、壁に掛けられた時計に目をやる。

「うわぁ、もうすぐ12時なんだ……てことは、もうすぐ放送?」

改めてよく寝た事を自覚。
下手すれば放送を聞き逃していたかもしれないのだ。
死者の名前と人数はさして重要ではないものの、禁止エリアの情報は聞いておかないと大変な事になりかねない。
間近に迫った放送に備え、先ほど枕代わりにしていたデイパックから地図を取り出す。
その時ふと思いつき、参加者名簿もいっしょに取り出す。

「一応、死んじゃった人の名前とかも確認しとかないとねー」

遥ちゃんとおじーさんは、檀という少女に出会えたのであろうか。
ニャルロット達は、探している少年少女達を見つける事が出来たのであろうか。
その事も考えつつ、今まで一度も開いた事のなかった名簿を開き……

「………え?」

その名簿の一番上に書かれた名前を見て、顔から呑気な笑顔が消えた。


――フフフ……まず最初の六時間を生き延びることが出来た皆さん、ごきげんよう。


まさにその時………第一回目の放送が、不気味な笑い声と共に始まった。








この場に来てから、間違いなく一番真剣な表情で地図に禁止エリアを書き込む。
名簿の死亡した参加者の名前に線を引き……最後の『ロバート・スコット』に線を引いた後、大きく息をつく。

「あー……まいったなー。」
瑞子の視線は名簿の一番上の名前を見つめる。

「何でいるのよ……燕先輩。」

蒼井燕。
彼女の高校時代の先輩であり、同じ部活――写真部――の部長だった。
呆れるくらい熱血で、単純で、お人よしだった先輩。
事あるごとに『将来は戦場カメラマンになる!』という夢を語り、実際にその夢を叶えてしまった凄い人物。
楽しい事優先でたびたび騒ぎを起こしていた自分をよくフォローしてくれたり、庇ってくれてりした恩人。
決して、死んで欲しくはない存在。

視線はゆっくりと下がり、中間あたりの名前で再び止まる。

「……奈々ちゃん。」

高水奈々。
バイトとして、家庭教師をしている先の女子中学生。ある意味教え子と言ってもいい存在。
いつもニコニコと笑っていて、騒がしいくらい元気な少女。
何故か薬物に興味深々で、面白がって自分の知ってる知識を教えていた結果、いつの間にか自分よりも詳しくなってしまった。
今では自分が薬学の試験前には色々教わっているくらいである。
決して、死んでいい筈ない存在。

視線はまた下へ動き、また別の名前で止まる。

「……剣先生。」

剣時宗。
大学で病院に実習に行った際、病院の案内をしてくれた医師。
検死医という事で他の学生には気味悪がっていた人も何人かいたが、自分はそんな事欠片も思わなかった。
むしろ心優しそうな、立派な医者に思えた。
まあ、医学生その1だった自分の名前なんて覚えているはずないが……それでも。
決して、死んでしまうのは嫌な存在。

他にも最近どこぞで賞を取って話題になっている俳優ケネス・シルバーの名前を見つけたが、それはどうでもいいので無視。
結論としてこの殺し合いには、彼女の知り合いが3人もいるということ。

そして、彼らが死ぬ事は彼女にとって「楽しくない」事。
だが……

「先輩達の為に他の人殺すってのも……なんかねー。」

人を殺す、というのはおそらくとても大変な事だ。
彼女の支給品『モゲラヨモギの汁』を飲ませる事が出来れば、簡単に人は死ぬだろう。
だが、飲ませるまでには少なからず苦労がつきまとう。
それにこの毒液では一度に殺す事の出来る人間は限られている。
第一、彼ら3人と自分が生き残ったとしても……生き残ることができるのは、一人。

「ああもう……やんなっちゃうなー」

結局、どっちにしても彼女にとって「楽しくない」事が起きてしまうのだ。
せっかく、死んでも構わないと決意したのに。
最後の最後まで楽しく生きて、それから潔くさっくり死んでやって、アルベルトをヘコませてやろうと思ったのに。

「これもアルベルトの思惑って訳なのかな?あー腹立つ………ん?」

イライラしながら白衣のポケットに手を突っ込み……手に触れた物を取り出す。
何の事はない、モゲラヨモギの汁の小瓶だった。

ふと、自分に支給されたもう1つの小瓶を渡した風変りな少女を思い出す。
ご飯をご馳走した時も『バナナは無いんですか?』とずっと問い続け、
結局バナナが無い事を知ると目に見えてがっくりしていた。
一緒にいたお人よしの巨大ミジンコはそれを一生懸命慰め、赤毛の油断ならない子猫は関係なさそうにご飯を食べ。

彼らは自分にとってとても面白く、とても「楽しい」存在だった。


「………ふふっ。」

真剣な表情が、笑みへと変わる。










「ふんふふ〜ん♪ふふんふんふ〜ん♪」

茶葉をポットに茶さじで数杯。
やかんのお湯を注ぎ、しばらく待つ。

「……そろそろかなー?」

適当なティーカップに出来上がった紅茶を注ぎ、一口。

「……ま、いっか。」

よく考えたら紅茶の良し悪しなんて分からない。
まぁこんな場所に高級な紅茶を惜しみなく置いておくなんて考えられないから、普通の茶葉なんだろう。
給油室にに置いてあった水筒にアツアツの紅茶を注ぐ。

そして白衣のポケットから出した小瓶の中身を数滴、垂らす。

「んー……臭いとかはそんなに変わんないみたいねー。」

元々毒液の臭いが見た目に反してあまり無かった事、そして紅茶の香りが結構強い事。
これなら常人には分からないだろう。

「……ついでにこっちにも。」

やかんの残りのお湯を再びポットに注ぎ、そこにも数滴。

「完成、毒入り紅茶ー♪」

楽しそうな口ぶりで、非常に物騒な事を言う。
ミルフィーユの話によれば、この量なら飲んだ人間は体がマヒする程度のはず。おそらく死ぬ事はないだろう。

給油室を離れ、荷物をまとめる。診療所内にあった救急箱も入れる。
紅茶を入れた水筒も、もちろん忘れない。

「さてと……行きますかー。」

伍宮瑞子は「楽しい事」が好きだ。
殺し合いは「楽しくない」事だ。

なら、楽しくすればいいじゃないか?
殺し合いなんか、どうだっていいじゃないか?
スリル満点のアトラクションみたいなもんだと割り切ってしまえばいい。
だったら最後まで、そのスリルを味わいまくってやろうじゃないか?

まあ中には殺し合い大歓迎!な人もいるだろうが、その時はその時。
逃げるなり、毒紅茶を飲ませてやるなり、さっくり死ぬなり、誰かを囮にするなり……適当に考えて対処すればいい。

「先輩、奈々ちゃん、剣先生……みんなどこだろ?」

トラブルに呼ばれて巻き込まれちゃってるかな?
何だったら自分も巻き込まれてもいいかなー。
みんなが十分楽しくやれるなら、文句は無いし。

「さーて……いっちょ、殺し合いを味わいましょっか。」

敵は「楽しくない殺し合い」
簡単に楽しくできるとは思わないけど……。
「ま、青春じゃないけど……いいじゃないか?」


23 :バトロワいいじゃないかっ ◆w2G/OW/em6:2008/06/15(日) 01:46:49
【I‐5 診療所前/一日目 昼】


【伍宮 瑞子】
【装備】白衣(現地調達)
【所持品】支給品一式、赤いペンキ、ステルスボール×2、煙幕、モゲラヨモギの汁(残量90%)
     フーリエの聖書、毒入り紅茶の入った水筒(残量100%)、救急箱
【状態】健康、生への諦め
【思考・行動】基本:楽しく生きる。その為にはできるだけ苦労したくない。
1:とりあえず診療所を出て楽しい事を探す。
2:蒼井燕、高水奈々、剣時宗を探す。できたら一緒に楽しく行動。
3:蒼井燕、高水奈々、剣時宗にはできれば死んで欲しくない。
※一総理とは別世界のようです。
※デンドロビウムの知り合い、ニャルロットの知り合い、勇者スポポロスについての情報を得ました。
※マーダーと会った時、どのような行動を取るかはその時しだいです。

※I−5 診療所の給湯室に毒入り紅茶の入ったポットが置かれています。
 飲んでも死にはしませんが、しばらく体が動かなくなります。
>>350訂正

「ま、青春じゃないけど……いいじゃないか?」



【I‐5 診療所前/一日目 昼】


【伍宮 瑞子】
【装備】白衣(現地調達)
【所持品】支給品一式、赤いペンキ、ステルスボール×2、煙幕、モゲラヨモギの汁(残量90%)
     フーリエの聖書、毒入り紅茶の入った水筒(残量100%)、救急箱
【状態】健康、生への諦め
【思考・行動】基本:楽しく生きる。その為にはできるだけ苦労したくない。
1:とりあえず診療所を出て楽しい事を探す。
2:蒼井燕、高水奈々、剣時宗を探す。できたら一緒に楽しく行動。
3:蒼井燕、高水奈々、剣時宗にはできれば死んで欲しくない。
※一総理とは別世界のようです。
※デンドロビウムの知り合い、ニャルロットの知り合い、勇者スポポロスについての情報を得ました。
※マーダーと会った時、どのような行動を取るかはその時しだいです。

※I−5 診療所の給湯室に毒入り紅茶の入ったポットが置かれています。
 飲んでも死にはしませんが、しばらく体が動かなくなります。


>>348訂正

やかんのお湯を注ぎ、しばらく待つ。

「……そろそろかなー?」

適当なティーカップに出来上がった紅茶を注ぎ、一口。

「……ま、いっか。」

よく考えたら紅茶の良し悪しなんて分からない。
まぁこんな場所に高級な紅茶を惜しみなく置いておくなんて考えられないから、普通の茶葉なんだろう。
給油室にに置いてあった水筒にアツアツの紅茶を注ぐ。

そして白衣のポケットから出した小瓶の中身を数滴、垂らす。

「んー……臭いとかはそんなに変わんないみたいねー。」

元々毒液の臭いが見た目に反してあまり無かった事、そして紅茶の香りが結構強い事。
これなら常人には分からないだろう。

「……ついでにこっちにも。」

やかんの残りのお湯を再びポットに注ぎ、そこにも数滴。

「完成、毒入り紅茶ー♪」

楽しそうな口ぶりで、非常に物騒な事を言う。
ミルフィーユの話によれば、この量なら飲んだ人間は体がマヒする程度のはず。おそらく死ぬ事はないだろう。

給湯室を離れ、荷物をまとめる。診療所内にあった救急箱も入れる。
353 ◆w2G/OW/em6 :2008/06/15(日) 17:41:49
投下終了しました……訂正等で読みにくくなってしまってすみません
354名無し草:2008/06/15(日) 20:02:43
乙!
瑞子さん楽しそうに怖いこと言ってるなー
355名無し草:2008/06/15(日) 20:09:44
乙!
ついに先生動くのか。下手なステルスより危険人物になりそうだなw
356名無し草:2008/06/15(日) 20:11:16
乙!
これは面白そうな展開になってきたな。
動けない程度の微量の毒って言うのがいやらしいぜー
357無題 ◆lYiZg.uHFE :2008/06/15(日) 22:33:50
「おや、どうしたというのかね? そんなに呆然として……
 めでたいではないか。あれほど君の会いたがっていた兄に会えたのだぞ?」
デクのように立ち尽くす蕗に、アムンゼンはいやらしい笑みを浮かべて言う。
とどまる事のない悪夢という名の現実に、蕗は思わず我が目を疑っていた。
「うるさくフキ、マユミと叫んで情けない兄だったよ、キョウは……まあ中々愉快な見せ物だったがね。
 百……君たちの国の通貨は円だったかな、それぐらいは見物料として払ってもいい程だったよ」
話を続けるアムンゼンの声など、殆ど聞こえてこなかった。
突然突きつけられた兄の死なんていう現実は、そんなすぐに受け入れられるものではない。
破顔したアムンゼンの楽しそうな話し声だけが、森の静寂をかき消していた。


【B-3・森/1日目 昼】

【坂木蕗】
【装備】:なし
【所持品】:なし
【状態】:絶望、恐慌、現実逃避、ぱんつはいてない
【思考・行動】基本:死にたくない……
1:……

【ロアルド・アムンゼン(その2)】
【装備】:SPAS12(2/8)、勇者スポポロスの剣
【所持品】:支給品一式、首輪探知機
【状態】:両足に軽い凍傷
【思考・行動】 基本:参加者を皆殺しにして、再び永遠の眠りにつく
 1:目の前の蕗を犯して殺す
 2:平行世界の自分を苦しめて殺す
 3:見かけた人間を手段を選ばず殺す。なお少女なら犯した後に殺す

※杏の持ち物の内、透視スコープは杏の懐に、ローラーボードは遺体の近くに落ちています。
※手斧は杏の手ごと、遺体の近くに落ちています。
358 ◆lYiZg.uHFE :2008/06/15(日) 22:34:46
投下終了。これだけです。
359名無し草:2008/06/15(日) 22:42:08
ちょwwwww短文ってレベルじゃねーぞwwwwwwwwwwwww
でも一応乙
360名無し草:2008/06/15(日) 22:50:20
なんという衝撃の100話www
状況が数秒分しか進展してないw
361名無し草:2008/06/15(日) 22:50:30
いいと思うぞwwww
投下乙
362名無し草:2008/06/15(日) 22:53:02
これはひどいwwwwwwwwwwwwwwwww
363名無し草:2008/06/15(日) 22:54:19
いや……これ、冗談ぬきで通すのどうかと思うぞう
364名無し草:2008/06/15(日) 22:55:24
テラルーファウスwwwwwwwwww
365名無し草:2008/06/15(日) 22:55:49
折角の100作目に、これはどうかと……
366名無し草:2008/06/15(日) 22:57:54
たまにはこういうのもいいじゃない
最近クオリティクオリティで無駄に長いのばっかりだし
367名無し草:2008/06/15(日) 22:57:55
何か事情があったのなら予約延長してもいいと思うよ
368名無し草:2008/06/15(日) 22:58:11
別に何かが破綻している訳でもないと思うが
369名無し草:2008/06/15(日) 22:58:48
いや…でもこれ通すと例のあの人が悪い意味で息を吹き返しそうで怖い
370名無し草:2008/06/15(日) 22:59:46
>>369
その時は最初から全力で指摘すればいいさ
371名無し草:2008/06/15(日) 23:00:35
カオスロワじゃないんだから
372名無し草:2008/06/15(日) 23:00:36
文のあまりの短さ以外は破綻してないんだけどさ…
「100作目なんでちょっとふざけてみました」って意図なら勘弁してくれ
373名無し草:2008/06/15(日) 23:01:24
>>357
何かあったのか?
374名無し草:2008/06/15(日) 23:01:25
またあの人が一人で騒ぎ出したか
375名無し草:2008/06/15(日) 23:02:34
>>374
376 ◆lYiZg.uHFE :2008/06/15(日) 23:02:53
えーと、すんません。
予想はしていましたが、思ったよりも紛糾読んでしまいましたね。
ただ、100話記念に縦読みがしたかっただけなんです。
破棄した方がいいですね。
377名無し草:2008/06/15(日) 23:02:58
あの人ってどの人だ
378名無し草:2008/06/15(日) 23:03:12
たてよみかよwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww
379名無し草:2008/06/15(日) 23:03:54
縦読みを誰も見抜けなかった辺りこのスレの民度の低さが覗えるorz
380名無し草:2008/06/15(日) 23:04:14
縦読みwwwwww
いい!!最高にいい!!
381名無し草:2008/06/15(日) 23:04:25
>>379
誰が予想できるかバカヤロウwwwwwwwwwwwww
382名無し草:2008/06/15(日) 23:04:39
何が縦読みだよ
ふざけていいところと駄目なところがあるだろ
お前は二度と書くな
383名無し草:2008/06/15(日) 23:05:07
         ___
        /⌒  ⌒\         ━━┓┃┃
       /(  ̄)  (_)\         ┃   ━━━━━━━━
     /::::::⌒(__人__)⌒:::: \         ┃               ┃┃┃
    |    ゝ'゚     ≦ 三 ゚。 ゚                       ┛
    \   。≧       三 ==-
        -ァ,        ≧=- 。
          イレ,、       >三  。゚ ・ ゚
        ≦`Vヾ       ヾ ≧
        。゚ /。・イハ 、、    `ミ 。 ゚ 。
384名無し草:2008/06/15(日) 23:05:42
>>382
三行目は同意しかねる
385名無し草:2008/06/15(日) 23:06:02
>>382


386名無し草:2008/06/15(日) 23:07:51
イギリスからきました
なんという昔のノリ
387名無し草:2008/06/15(日) 23:07:52
>>382
お前ちょっとジュリアの胸に飛び込みに逝け
388名無し草:2008/06/15(日) 23:09:15
バカスwwwwwwwwwwwwww
通すのはムリでも、没ネタとして掲載するのはどうだろうか?wwwwwww
389名無し草:2008/06/15(日) 23:09:20
これは有りでいいだろw
有って何か困るわけでもないし
390名無し草:2008/06/15(日) 23:10:10
すまん、気づけなかった俺の目が節穴だった!
ちょっと舞梨の前でマーダー宣言してくる!
391名無し草:2008/06/15(日) 23:11:02
何も進展してないってことは、無かったものとして進めても問題ないってことじゃん
面白いし通しでいいよ
392名無し草:2008/06/15(日) 23:11:05
うん、そういうネタなら全然おk
つかネタをネタ(ry でスマンかった
393名無し草:2008/06/15(日) 23:11:53
     ど
 
     う


                                       て

                い





(´・ω・`)
394名無し草:2008/06/15(日) 23:12:01
クソ吹いたwwwwwwwwwwwww
395名無し草:2008/06/15(日) 23:12:15
>>393
ねーよwwwwwwwwwwwwwwwwwwww
396名無し草:2008/06/15(日) 23:12:27
とりあえずこの話を通して困ることって何かある?
397名無し草:2008/06/15(日) 23:13:08
本人が破棄でいいって言ってんなら破棄でいいんじゃないか?
でも没ネタとしてどっかに乗せて欲しい
398名無し草:2008/06/15(日) 23:13:27
一部「なら俺も短文!」って調子こく奴が出かねないぐらい
399名無し草:2008/06/15(日) 23:13:43
ただの短文かと思ったら縦読みwwww
気付けなかった俺バカスwww

これは通さざるをえないだろう。
重要な局面でもあるまいし。
400名無し草:2008/06/15(日) 23:13:57
特にない。
強いて言えば、見る度に気づけずに文句言った自分が恥ずかしくなるくらい
401名無し草:2008/06/15(日) 23:14:11
これは通しでいいと思う……けど、作者さんが破棄って言ったからやっぱり破棄?
402名無し草:2008/06/15(日) 23:16:35
糞長いツナギには感想があまり付かないのにこのネタには住民入れ食い
やめろってか
403名無し草:2008/06/15(日) 23:17:55
>>402
ところで何キレてんの?
力抜けよ
404名無し草:2008/06/15(日) 23:18:21
>>402
お前ここは始めてか?ケツの穴の力抜けよ
405名無し草:2008/06/15(日) 23:18:30
>>402
そのネタやめろwwww
406403:2008/06/15(日) 23:19:58
ちょっとあの紅茶がぶ飲みしてくる
407名無し草:2008/06/15(日) 23:20:01
クソ長い繋ぎばっか書いててゴメンよ
でも自重はしない
408名無し草:2008/06/15(日) 23:21:35
>>402の人気に嫉妬(性的な意味で)
409名無し草:2008/06/15(日) 23:21:55
短いSSで展開進めてごめんなさい
でも自重はしない
410名無し草:2008/06/15(日) 23:22:54
書き手が破棄発言したのはそれまでの流れを読んでの話じゃない?
流れ変わった今なら大丈夫でしょ

そもそも破棄するとは断言してないし
411名無し草:2008/06/15(日) 23:32:08
狭霧とか桃太郎とか花子とか総理を長文繋ぎで掘り下げてくれた人たちがいなければ
今のこのロワは無いと思うんだが
大体オリキャラだしさ、そういうのはむしろ必要不可欠じゃない?
412名無し草:2008/06/15(日) 23:37:42
っていうか序盤を乗り越えたこの状況でいつまでも短文を認めてるのもどうかと思う
いい展開は短文で淡白に済ます書き手に取られるし
413名無し草:2008/06/15(日) 23:39:38
>>412
お前この状況が分かって言ってるの?
今はいいよ
414名無し草:2008/06/15(日) 23:40:08
短文書き手必死だなw
415名無し草:2008/06/15(日) 23:40:15
>>412
しつこい
416名無し草:2008/06/15(日) 23:42:58
長文書き手が頑張ってフラグを立て、キャラの思考を整理

短文書き手が暴れてフラグへし折り、キャラ変

これがこのロワの持ち味ですから
いまさら他のロワと比べて普通にするのもおかしいと思う
417名無し草:2008/06/15(日) 23:43:23
>>414
煽って何が楽しいの?
自重をしろよ自重を。
418名無し草:2008/06/15(日) 23:44:40
序盤カオス気味で勢いが付いたのはいいんだが、今になって響いてきてるなあ……
とりあえず、変な所があった場合は今までみたいに勢いで進めず、きちんと指摘するって事でいいんじゃね?
419名無し草:2008/06/15(日) 23:45:33
>>418
それかなり前から言ってる気が
何を今更
420名無し草:2008/06/15(日) 23:46:59
>>419
かなり前に決まったのは、ズガンとか自己リレーは自重ってだけだぞ。
今までは修正もほとんどなくて、例の人に指摘が入ったのもつい最近だろw
421名無し草:2008/06/15(日) 23:49:28
つーか誰かは指摘していた
その書き手が直す気無いまま通過しちゃってたが
422名無し草:2008/06/15(日) 23:51:02
いい加減な書き手多いよな
もっとしっかりして欲しい
423名無し草:2008/06/15(日) 23:54:55
          ____
       / \  /\ キリッ
.     / (ー)  (ー)\
    /   ⌒(__人__)⌒ \   いい加減な書き手多いよな
    |      |r┬-|    |    もっとしっかりして欲しい
     \     `ー'´   /      
    ノ            \
  /´               ヽ
 |    l              \
 ヽ    -一''''''"~~``'ー--、   -一'''''''ー-、.
  ヽ ____(⌒)(⌒)⌒) )  (⌒_(⌒)⌒)⌒))





          ____
        /_ノ  ヽ、_\
 ミ ミ ミ  o゚((●)) ((●))゚o      ミ ミ ミ
/⌒)⌒)⌒. ::::::⌒(__人__)⌒:::\   /⌒)⌒)⌒)
| / / /     |r┬-|    | (⌒)/ / / //  だっておwwwwwwwwwwwwwwwwwww
| :::::::::::(⌒)    | |  |   /  ゝ  :::::::::::/
|     ノ     | |  |   \  /  )  /
ヽ    /     `ー'´      ヽ /    /     バ
 |    |   l||l 从人 l||l      l||l 从人 l||l  バ   ン
 ヽ    -一''''''"~~``'ー--、   -一'''''''ー-、    ン
  ヽ ____(⌒)(⌒)⌒) )  (⌒_(⌒)⌒)⌒))
424名無し草:2008/06/15(日) 23:56:26
長文書き手と短文書き手が対立してるわけでもないのになんで読み手だけカッカしてるんすか
読み手様ですか?
425矢島泪:2008/06/15(日) 23:58:51
みんなー! 喧嘩するのはやめてー!
426名無し草:2008/06/16(月) 00:00:49
長文か短文かは書き手の好みによるだろ
で、結局あの話はどうするんだ?破棄なのか通すのか
個人的には破棄をお願いしたい
427名無し草:2008/06/16(月) 00:01:41
ポー「湖で頭を冷やすといいのである」
428名無し草:2008/06/16(月) 00:02:41
短文と長文の書き手の展開だけとっかえれば理想的なんだけどな〜
まあポーさえ今のままならしばらくはいいやこれで
429名無し草:2008/06/16(月) 00:02:59
自分は通しでいいと思う。
たまにはあんな話もいいだろ
430名無し草:2008/06/16(月) 00:06:13
むしろなぜ破棄するかがわからない
いつからここはそんな生真面目なロワになったんだ
431名無し草:2008/06/16(月) 00:07:36
ミーウ「やっ……ん……あっ、あっ、あ、あっ、ああっ――」
432名無し草:2008/06/16(月) 00:10:01
>>426
破棄にしたいという理由を明確に述べてくれ
433名無し草:2008/06/16(月) 00:13:37
>>427
ポーさん油の浮いた池で何やってるんスか

>>431
ミーウさん椿を下敷きにして何やってるんスか

>>426
>>432に同じ
434426:2008/06/16(月) 00:28:04
理由としては、100話だからって悪ふざけしすぎだと思ったからなんだが
確かに元々生真面目なロワじゃなかったけど、ふざけすぎても困ると思ったんだ
これを通すと後々「あれがよかったんならこれもいいだろ」的なものが出るかもしれないし
435名無し草:2008/06/16(月) 00:31:20
委員長かお前は
なんか萌えてきたぞ
436名無し草:2008/06/16(月) 00:34:20
数行で死人が出る話とか、数行で参加者のスタンスが大きく変わる話とかは流石にすんなりとは通らないだろう
そんなのが来たらその時に議論すればいいんだし、でよくね?
例のあの人あたりがそんなのやってくれそうで心配というのもわかるけどさ
437名無し草:2008/06/16(月) 00:36:56
>>434
ある意味惚れた。結婚してくれ
438426:2008/06/16(月) 00:40:20
>>436
まぁ正直、自分も絶対に破棄してほしいってわけではなかったし…
きつく言いすぎたかもしれん、ちょっと後藤に食われてくる
439名無し草:2008/06/16(月) 00:43:58
むしろ花子に喰われて来い
もちろん性的な意味で
440名無し草:2008/06/16(月) 01:09:59
この流れに乗じてちょっと質問
このロワでは、一話で対主催チームがマーダーと遭遇→戦闘→戦闘終了、スタンス変化とかいろいろ
まで一気に書いても大丈夫かな?
441名無し草:2008/06/16(月) 01:12:08
スタンス変化の理由とかがしっかりしてれば大丈夫だと思う
442名無し草:2008/06/16(月) 01:28:55
いいけど、短文でそれを全部やって大問題になったことがあるからその点だけ注意な
443名無し草:2008/06/16(月) 23:26:08
このまま放っておいても仕方ないし、そろそろ結論出そうぜ
あの100話をwiki掲載することに断固として反対する人、いる?
444名無し草:2008/06/16(月) 23:44:05
>>443
昨夜の段階で問題なし、が大勢だったし通しでいいんじゃないの?

それより、92話「ドブネズミみたいに」が投稿版とwiki収録版でかなり相違があるんだけど、
たとえ作者氏本人であっても大幅な設定や描写の加筆を無断でするのはやめてほしい。
過去作が変わることで以降の作品に矛盾が生じる可能性が出てきてしまうので。

追加部分を削除して投稿版準拠に修正したいと思うんだが、これに関して作者である
◆dEUulpVSzA氏の見解を聞きたい。
リアルの都合もあるだろうし、72時間待って回答がなければ無言の容認と考えたいがどうだろう?
445名無し草:2008/06/16(月) 23:44:31
自分は通しに一票
これを破棄させるのはさすがに神経質過ぎる気が
446名無し草:2008/06/16(月) 23:45:31
どっちの提案にも異議なし。
447名無し草:2008/06/16(月) 23:45:39
自分は断固として反対しない
448名無し草:2008/06/17(火) 00:45:13
先走って噛み付いた一人だけど作者さん縦読み気づけなくてゴメン
というわけで通しに一票

>>444
それでいいと思う
449名無し草:2008/06/17(火) 06:59:46
そもそも、こんな議論してる時点で何かズレてるよな
「ワロタwww通し通しwwww」ってなるべきだったと思うな
450名無し草:2008/06/17(火) 07:27:10
必ず誰か噛み付くからなあ
451名無し草:2008/06/17(火) 08:18:57
縦読みに気付かないのがオリロワクオリティらしいっちゃらしいなw
452名無し草:2008/06/17(火) 20:14:53
文句を言う時だけ人がなだれ込むのもオリロワクオリティ
IDないから実際どんだけいんのかわかんないけど
453名無し草:2008/06/17(火) 20:38:30
まぁ、人が少ないのは確か
書き手もほぼ固定化されて来たし
454名無し草:2008/06/19(木) 07:19:28
アルベルト「フ、フフフ、十分な成果だ……この辺りで切り上げるとしよう……ポチッとな」
バトロワ会場は核の炎に包まれた……。


------全員死亡。

こうして事件は幕を下ろした……。
455名無し草:2008/06/19(木) 07:32:19
>>454
ねーよwwwwwww
456名無し草:2008/06/19(木) 11:34:23
蕗「今回の同人はこういうストーリーにしようと思うの」
杏「いやいや、俺が死んだあたりで確実にやる気なくしただろ」
檀「ちょっと、私完璧悪者じゃない」
457名無し草:2008/06/19(木) 14:48:12
日滝「ちょっと指導室に来い。色々と問い詰めたいことがある」
458名無し草:2008/06/19(木) 14:50:23
死者スレでやれw
459 ◆Ek9St4HTQk :2008/06/21(土) 03:30:29
桃太郎、松井司、鍵谷美和子、フーリエ、狭霧嘉麻屋で予約。
460名無し草:2008/06/21(土) 03:52:27
久々の予約ktkr
461名無し草:2008/06/21(土) 07:30:32
しかし、このままじゃマズいぜ。
もう初心者でも良いから、どんどん書いてくれ!
3レスでもOKさ!
462名無し草:2008/06/21(土) 09:27:18
>>461
人に言う前に自分で書けば?
463名無し草:2008/06/21(土) 11:33:28
書いてるっての。
最近書いたのは>>454だな。
464名無し草:2008/06/21(土) 13:09:16
別に、よほどの盛況所じゃなけりゃこんくらいのペースが標準じゃない?
465名無し草:2008/06/22(日) 10:39:35
毒吐き別館には人いっぱいいるぜ保守

http://jbbs.livedoor.jp/otaku/8882/
466誰も誰かを救えない ◆Ek9St4HTQk :2008/06/22(日) 18:20:03
銀弧が閃く。
桃太郎の斧槍が空を切り裂いていた。
神速の踏み込みから流れるような袈裟懸け。
が、既に狭霧の姿は刃の軌道上に存在しない。
軽く一歩を退いたその影だけを貫いた斧槍の切っ先に笑みを映し、狭霧が引き金を引く。
乾いた音と共に吐き出された弾丸が抉ったのはしかし、戦人たる少女の肢体ではなく干からびた地面である。

「ほう。時代錯誤なナリをして拳銃を知っているかよ、正義の味方」
「なめるなよ悪党。貴様らの手口は存分に見知っている。それが礫を飛ばす暗器の類と気付かいでか」
「―――面白い」

交錯は一瞬。
振り抜かれた斧槍の柄を蹴るようにして、狭霧が距離を開く。
同時に桃太郎も駆け出している。
拳銃という機械の仕組みは知らなくとも、一合を交わせばその機能と危険性、そして特性までを理解するのが
桃太郎という人物である。
足を止めれば狙い撃ちされるという認識が桃太郎を突き動かしている。

「お止めください! かの者は主の愛を知らぬのです!」

背後の声を、桃太郎は聞いていない。
考慮に値せぬ戯言を吐く犬の声を聞く耳など、少なくとも戦に臨んだ桃太郎は持ち合わせていない。
ただ目の前の悪を斬り、己が心胆を安からしめるという、それだけが桃太郎の見る世界であった。
許せぬ、と思う。
下から凪ぐように刃を振り上げながら、桃太郎はそれだけを思う。
視界の隅で、年端もいかぬ少年が死んでいる。
五体を断たれ、全身を焼け爛れさせ、白く濁った瞳で少年が死んでいる。
それを許せぬと桃太郎は思う。
許しては世が成り立たぬものが、この世界にはある。
桃太郎が悪と呼ぶ、それは世界に巣食う病だった。
病は元から断たねばならぬ。
罹った者を放っておけば、いずれ病は拡がっていく。
467誰も誰かを救えない ◆Ek9St4HTQk :2008/06/22(日) 18:20:25
弱い病であるならば、弱き者たちで対処もできよう。
だが、ひとたび強い病が拡がってしまえば、弱き者たちには太刀打ちできぬ。
なればこそ、悪を断つ刃が必要なのだ。
強き悪という病を断つ、正義という鋭い刃が。
それが汝よと幼い頃より言い聞かされて、桃太郎は育った。
少女が己を刃となす理由の、それがすべてであった。
それ以外の生き方を、知らぬ。
許せぬという思いの他に何も持たず、がらんどうの少女は斧槍を振るっている。


***


フーリエは神とその教えを信仰している。
否、信仰という体系の上にフーリエの思考は存在していた。

(―――何故、彼らは主の御心に耳を傾けようとしないのか)

人でもなく、犬でもない。
誰とも同じでない、誰からも同じと見られない、薄気味の悪い化け物。
それが自分だと、フーリエは正しく理解している。
来歴も記憶も同族もない、そんな彼に名と居場所、つまりは生きる意味を与えたのが信仰である。
神の家の住人は、このような得体の知れぬ化け物を寛容に受け入れ、愛してくれた。
それが彼女ら自身の人間性によるものでなく、信仰という行動様式に則ったに過ぎないことを理解したとき、
フーリエが覚えたのは嫌悪ではなかった。
彼女らに自身の価値判断を超えて薄気味の悪い化け物を愛させた、信仰というものに対する畏怖と衝撃が
フーリエを打ちのめしていた。
信仰とは、神の愛とは、それを知る人の世界を変えるのだと、彼が思い知った瞬間である。
以来、フーリエの生は信仰を拠り所として続いている。
己が存在に意味を与えたのが神の教えであれば、その意味もまた神の教えの上にあるべきだと彼は認識していた。
468誰も誰かを救えない ◆Ek9St4HTQk :2008/06/22(日) 18:20:43
フーリエは思う。
銃やナイフや棒切れや、そういうものを言葉の代わりに振るうのは、彼らが飢えているからだ。
主の愛に触れる前の、自分の貧しさをフーリエは思う。
何も持たず、愛を知らず、生きる意味を知らず、ただ疎まれ、怯えの中で生きていた。
主を知らぬものは飢えている。
肉体の飢餓ではない、心の空腹に喘いでいるのだ。
その飢えを紛らわすために、彼らは暴力を振るう。
己を満たす何かを得ようと、必死に足掻いているのだ。
それが過ちだと、彼らは気づかない。
主の愛を知らぬ彼らには、それで得られるものなどないと気づけない。
なればこそ、それを諭す者が必要なのだ。
主の愛を説き、正しき道に人々を導く言葉を伝える者が。

(私は化け物だ)

人でもなく、犬でもない、薄気味の悪い化け物だ。
だが、そんな自分をすら、主の愛は寛容に許容する。
たとえどのような過ちを犯そうと、いつか主の愛に触れ、悔悛の情に涙する日が来るのならば、
人はそこへ導かれねばならぬ。
この場に導く者がいないのならば、それこそが自分の役割なのだ。

「―――耳を! 主の教えに耳を傾けてください! 殺し合いが何になります!」

空っぽの実験体はだから、自身の存在の意味を叫んでいる。


***


鍵谷美和子は状況の推移を見つめている。
桃太郎の思想にも、フーリエの主張にも揺れぬ、冷厳とすら言える瞳で見つめている。
469誰も誰かを救えない ◆Ek9St4HTQk :2008/06/22(日) 18:21:27
思想とは個性で、個性とは人を彩る装飾品だ。
それ以上の意味を持たぬ。
鍵谷美和子の、それが哲学であった。

だから彼女が見つめるのは状況という情報である。
対峙する男の危険性と一枚岩ではない自分たちの不安定を、美和子は感じている。
少女は刃を振るうことをしか知らず、実験体は救いを盲信し、そして哀れな青年は
眼前に繰り広げられる非日常の光景に言葉を失い、動けずにいる。
均衡は崩れるとき、それが吉と出ればよし、だが凶と出るならば。
最悪の事態を避けることだけを、考えなければならないかもしれない。

思うに任せぬ老体の無力を噛み締めながら見つめる美和子の眼前で、状況が、動いた。


***


「せぇぇッ―――!」

裂帛の気合を込めた一閃が、狭霧を薙いだ。
悪を裂けと振るわれる一撃はしかし、僅かに届かない。
斧槍を持つ手が重い。
息が上がっている。
それでも、桃太郎は刃を止めることなく振るい続ける。
ステップバックした狭霧の正面に立つことを避けながら、右へ流れた斧槍の遠心力を利用して身体ごと回転。
踏み込んだ左足を軸に、更にもう一歩を踏み込んで渾身の一撃を叩きつける。
胴を捉えるかと思えた剣閃。
しかし隻腕の殺人鬼は退いて躱しきれぬとみた瞬間、逆に距離を詰めていた。
鈍い手応え。刃の内側、芯を外された柄での一撃は重いものにはならない。
口づけをするかのようなクロスレンジで、狭霧が笑む。
血の臭いのする吐息を頬に感じ跳び退ろうとする桃太郎。
しかしそれは果たせない。狭霧が胴にヒットした斧槍を、右の脇に手挟んでいた。
470誰も誰かを救えない ◆Ek9St4HTQk :2008/06/22(日) 18:21:56
銃を持った右手を封じられている殺人鬼を、だが桃太郎の研ぎ澄まされた勘は危険と判断。
得物を手放してでも距離を開けるべきと思考した瞬間、その視界の左半分がブラックアウトした。
頭突き。原始的だが、対人に極めて有効な攻撃手段。
男女の体重差と頭蓋の厚さがそのままダメージとなる。
左の眼窩、咄嗟に閉じた瞼の上から叩きつけられた衝撃をしかし桃太郎は無視。
斧槍を掴んだ手を放すや、拳を固めて振るう。
確かな手応えがあった。
片目の視力、遠近感が失われていようと、吐息を感じる近さであれば関係ない。
ぐ、と呻くような声と共に、斧槍を手挟む力が緩んだ。
左手でそれを保持したまま、右の拳は振り抜いた勢いを反転。
打撃によって移動した狭霧の頭部を追うようにもう一撃、今度の手応えは顎。
脳が揺れたか、狭霧の膝が落ちかける。
そこへ肘。こめかみを狙ったそれが、正確にヒットする。
今度こそ、狭霧が崩れ落ちた。
斧槍に寄りかかるようにしゃがみ込む狭霧に、桃太郎の足蹴が入った。
胸を突くような前蹴りに、たまらず狭霧が仰向けに倒れる。
間髪入れず自由になった斧槍を振り上げる桃太郎が、唐突に横へと跳んだ。
ほぼ同時に銃声が響く。
仰向けに倒れた狭霧の構えたベレッタの銃口から薄く陽炎が立ち昇っていた。
めくら撃ちにされた黒光りするそれを、桃太郎の斧槍が正確に薙ぎ払った。
金属同士のぶつかる硬質な音がして、ベレッタが弾き飛ばされる。

「終わりだ、悪党」
「……強いな、正義の味方」

桃太郎の振り上げた斧槍のぎらぎらと光る刃が、狭霧の皮肉げな笑みを映していた。
意に介さず、桃太郎は刃を返す。
振り下ろせば、それで終わる。
桃太郎に躊躇はなく。一つの悪は滅びる。
その、筈だった。

「―――何故! 殺すのです!」
471誰も誰かを救えない ◆Ek9St4HTQk :2008/06/22(日) 18:22:19
声が、響いていた。
背後から聞こえたその犬の声の響きは、何かに似ていた。
昔聞いた、何かに。
それを桃太郎は思い出せない。
真っ二つに裂けた子の亡骸を抱いて涙を流し叫んだ、『鬼』の母親の絶叫を、桃太郎は思い出せない。
通じぬ言葉で叫ばれたその『鬼』の、自らが斬った『悪』の最期の言葉を桃太郎は思い出せず、
しかしその響きだけが、桃太郎の奥底に刺さった小さな棘を、揺さぶっていた。
剣筋が、ほんの僅か、揺らいだ。
刹那、狭霧が、隻腕の殺人鬼が、跳ねた。

「―――」

吹き抜ける風が、鮮血の臭いを運ぶ。
桃太郎の頬についた赤い飛沫は、確かに狭霧の返り血であった。
しかし。

「ああ、ああ。強いな、お前は強い、正義の味方。だが―――」

隻腕の殺人鬼は、斃れることなく、笑んでいる。

「―――あまりに、軽い」

その、肘から先の喪われた左腕に、深々と刃が食い込んでいた。
食い込んでいたが、それだけだった。
骨と肉とをがっちりと噛み込んだ斧槍の刃は、押すも引くも叶わない。
ぐ、と狭霧の顔が、迫る。
痛みを感じぬとしか思えぬ、その表情は笑みを浮かべている。
噴き出す生温い返り血が、桃太郎の頬を伝って、垂れた。

「私を断つことすらできぬ―――お前の語る正義の、これが軽さだ」
472誰も誰かを救えない ◆Ek9St4HTQk :2008/06/22(日) 18:22:49
囁くような声が、桃太郎の耳朶を犯す。
その弓のように細められた目に満ちる嘲笑と失望と、そして明快な殺意に、桃太郎が半ば反射的に
身を反らそうとした、その一瞬。
死角となっている桃太郎の左の視界、その下側から閃いたものが、赤黒く腫れ上がった少女の左目を、裂いた。

「……ひ、ぁ……っ!?」

思わず漏らした己が声の、生娘の如きか細さに、桃太郎は愕然とする。
鼓動が早鐘のように桃太郎の全身を打ち据えていた。
からり、と音がして、斧槍が地に落ちた。

「お前の知る悪党は、奥の手を用意することもできぬ程度の連中か、正義の味方」

狭霧の声がどこか別の世界から響くように脳裏を反響する。
眼前の悪党はまだ短刀の類を懐に隠し持っていたのだと今更のように理解しても、遅い。
傷は浅い。傷は浅い。傷は浅い。
言い聞かせるような心中の声が、ひどく遠い。
瞼を裂かれ、眼球の表面を薙いだ傷から、じくじくと血が漏れ出していく。

 ―――命に別状はない。戦闘の継続は可能だ。戦え、戦え、戦え!

空しく響く心の声に、それでも経験が、信念が、微かに応えようとする。
斧槍を握りなおそうとした、その瞬間。
桃太郎の無防備な腹に、容赦のない打撃が叩き込まれていた。
けく、と息が抜ける。

「下らん。下らんな正義の味方」

短刀の柄頭を鳩尾に叩き込まれ、
473誰も誰かを救えない ◆Ek9St4HTQk :2008/06/22(日) 18:23:08
「悪たる私をすら裁けぬ、正義の味方―――」

崩れ落ちた顔面を思うさま蹴りつけられ、

「僭称する正義をすら貫けぬお前が―――」

鼻血と砂埃とに塗れた顔を、桃太郎は大地に擦り付ける。

「全体、何者で在れるというのだ?」

裂けた眼窩に靴先を捻り込まれる激痛に、桃太郎の意識が薄れていく。

「そこで寝ているがいい、正義の僭称者。殺してやろう、お前の仲間を。
 ―――お前の迷いの代償に、貫き得ぬ正義の形代に」

やめろ、という声は出ない。
掠れた喉から漏れるのは、悲鳴じみた吐息だけだった。


***


滑るように迫る殺人鬼の影を、手にしたナイフが陽光を反射して鈍く輝くのを、
美和子はじっと見据えている。
殺人鬼の言葉、その思想。情報の断片を組み合わせれば、そこに一つの真実が見える。
正義の実存証明。アンチテーゼとしての悪。
おそらくはそれこそが、迫り来る影の行動原理。
打てる手はない。
抗う術はない。
だが、できることはあった。

「―――逃げなさい!」
474誰も誰かを救えない ◆Ek9St4HTQk :2008/06/22(日) 18:23:26

瞬きもできぬ刹那の中、それだけを、叫ぶ。
最悪を避ける、最悪だけを避けるための、それが手段。
この男が望むのは生き残ることでも、皆殺しでもない。
ただ純粋な、悪の誇示。
ならば、この場の命のすべてを奪うことを、この男は嫌うだろう。
悪を喧伝する、その声が必要なのだから。
喪われる命は一つでいい。
老い先短い一つで済むのならば、それで。

静かに目を閉じようとした、美和子の視界に飛び込んできたのは、長い毛並みだった。


***


叫びは届かない。
主の愛は届かない。
刃は迫っていた。
迷う暇は、なかった。


***
475誰も誰かを救えない ◆Ek9St4HTQk :2008/06/22(日) 18:24:02
 
薄れかける意識を繋ぎ止めたのは、声。
何故殺す、と声が言う。
お前は何だと声が言う。
正義を示せと声が言う。
戦えと、抗えと、悪を討てと、声が言う。
嗄れた喉が、潰れた左眼が、抗えと、命じていた。
桃太郎を突き動かす、それは沢山の、唯一つの、声。

伸ばした手に、触れるものがあった。

***

流れるような、その一瞬。
飛び込んだフーリエの背に突き立つ銀色の凶々しい刃を誰しもが想像した、刹那。
刃はしかし、違う軌道を描いていた。
美和子が、フーリエが、凍りついたような時間の中で、狭霧嘉麻屋を、見た。
目を見開いた美和子が手を伸ばす、その先で―――隻腕の殺人鬼は、嗤っていた。
ナイフを放り棄てた狭霧の手が、フーリエを、その毛皮を掴み、体を入れ替える。
押し出されるようにたたらを踏んだフーリエの目に映ったのは、もう一つの、刃。

***

声が、桃太郎を突き動かしていた。
悪を討てと、病を祓えと、声が命じていた。
手には刃、悪を討つための斧槍があり、心には声、病を祓うための覚悟が、あった。
半分になった視界の中で、ただ、刃を振るうべき相手の背だけが、見えた。

渾身の力を込めて振るった斧槍は、止まらなかった。
獣人の高い悲鳴が、糸を引くように響き。
濡れた音が、地面に落ちた。
476名無し草:2008/06/22(日) 18:30:07
つ、続きは!?
477名無し草:2008/06/22(日) 18:38:16
したらばに投下されてた

投下乙!
って欝過ぎるーー!?
畳み掛けるような悪意の描写が読んでて辛い!(いい意味で)
GJでした!
478名無し草:2008/06/22(日) 18:44:32
SUGEEEEE!!
なんだこの掘り下げ…どうやったらこんな風に書けるんだ…?

劣等感に押し潰されそうだぜ…
とにかく圧倒的な作品、GJ!
479名無し草:2008/06/22(日) 18:55:59
乙!
フーリエ……そりゃあれだけでしゃばればそうなるw
狭霧関連は本当に深いなあ
480名無し草:2008/06/22(日) 18:57:47
久々の投下乙。
犠牲者なしでは終わらないとは思ったが…正直、司が死ぬとばかり思ってたよ。
さらばフーリエ…痛み分けというにはあまりに重いが。
桃太郎に疑心フラグ、司には自爆フラグと残された火種も満載で
やはり希望の星は美和子ばあちゃんだけか…。
481名無し草:2008/06/22(日) 19:12:34
GJ!
狭霧は恐ろしいな。武器や片腕失ったのに弱くなった気がしない。
フーリエ…
それにしても全員の心理描写すごいな。

ついでに仮投下分を代理投下します。
482誰も誰かを救えない ◇Ek9St4HTQk:2008/06/22(日) 19:13:42
***


何もかもが、掛け違ったボタンのように噛み合わず。
伝わらぬ言葉と、ばらばらの想いが、すべてを踏み躙っていく。

呆然と己が手の内の斧槍を見詰める桃太郎が、
刻々と拡がっていく血だまりの中心に倒れ伏すフーリエが、
悲鳴を押し殺すように両手を口に当てた鍵谷美和子が、
憑かれたように嗤う狭霧嘉麻屋が、
誰もかれもがこの場の混沌の一翼を担い、加速させていた。
ただひとり、ただひとりの無力な青年を除いて。

「―――全員、動くな―――!」

すべての命の外側で、松井司が立っていた。
がちがちと歯を鳴らし、今にも零れんばかりの涙を真っ赤な目に溜めて、松井司は立っていた。
ぶるぶると震えるその手には、黒光りする何かが握られている。
ベレッタM92。
それは、桃太郎が弾き、狭霧が取り落とした、一丁の拳銃であった。
定まらない銃口は辛うじて狭霧の方を向いている。

「……もう……、いい加減にしろよ……!」

奇妙に静まり返った場の中心で、司は声を震わせる。

「どいつもこいつも、殺すとか、殺されるとか……もう沢山だ!
 子供が死んで! 皆で血を流して! そんなのはもういいだろう!」

血走った目が、ぎろりと周囲を見渡す。
激昂が司を支配しているのは、誰の目にも明らかだった。
483誰も誰かを救えない ◇Ek9St4HTQk:2008/06/22(日) 19:14:17
「殺しあって! 皆死んで! それで満足か!? ふざけんな!
 もう終わりだ、もう沢山だ、もう血なんて見たくないんだよ馬鹿野郎!」

銃口の先に立つ狭霧は、眉筋一つ動かさず司を見つめている。
震える銃と、それを持つ司と、無表情の狭霧とを見比べて、斧槍で体を支えた桃太郎が口を開く。

「討て……、今こそ悪を討て、司殿……」
「……ッ! ざっけんじゃねえぞ、てめえ!」

掠れた声に、すかさず司が怒鳴り返す。

「まだ血が見たいか! そいつを斬ってまだ足りないか!」

叫び睨んだのは、毛並みを真っ赤に染めて倒れ伏す獣人だった。

「お前が! そいつを殺してる間に! 俺たちはみんな死んでいく! 何でそれが分かんないんだ!
 逃げるんだよ、逃げるんだよ畜生! そいつが死んじまう前に!」

半ば泣き声に近い、それは絶叫だった。
言葉の接ぎ穂を失い口を噤んだ桃太郎の前に一歩を踏み出したのは、美和子である。

「……お嬢さんの言うとおりにしましょう、桃太郎ちゃん」

加熱した場に冷水を注すような、静かな声音と表情。

「しかし、美和子殿……」
「私じゃ、フーリエちゃんを抱えてあげられないでしょう」

なおも言い募ろうとする桃太郎を諭すように、小さく首を振る美和子。
桃太郎が舌打ちとも溜息ともつかぬ吐息と共に頷いたのは、しばしの間をおいてのことだった。
484誰も誰かを救えない ◇Ek9St4HTQk:2008/06/22(日) 19:15:28
「……」

充血した目で周囲の人間を睨み続ける司を横目に、桃太郎がフーリエを抱え上げる。
血液の大部分が流れ出した獣人の体は軽く、冷たい。
傷口から覗く腹の中では腸管が裂け、漏れ出した糞が残った鮮血と溶け合って腹腔内に散乱している。
そこに命の温もりはない。
ただ生命活動が継続しているというだけ、まだ死んではいないというだけの、それは躯だった。
自らが斬ったその躯に、しかし桃太郎の冷たい隻眼は向けられない。
ただじっと狭霧と、そして司とを、見つめていた。


***


獣人を抱えた少女が踵を返し、少年の小さな骸を抱いた老婆が後を追い、最後に銃を向けた青年が
平原の向こうへと姿を消すまで、狭霧嘉麻屋は動かずにいた。
誰一人としていなくなった、幾つもの血だまりだけが広がる平原の真ん中で、狭霧は静かに息をつく。

狭霧が青年の言葉どおり抗わなかったのは別段、その銃口に脅威を抱いていたからではない。
むしろあの場で抵抗をすれば面白いことになったかも知れぬとすら考えている。
青年の拾ったあのベレッタは、陣羽織の少女のハルバードによって一撃を受けている。
冷静さを欠いていた青年には判らなかったかもしれないが、その銃口には見た目にも明らかな歪みが生じていた。
きわめて暴発の危険性の高い銃を振り回して必死に威嚇する青年の表情を思い返し、狭霧は苦笑する。
485誰も誰かを救えない ◇Ek9St4HTQk:2008/06/22(日) 19:16:32
それでも狭霧は彼らを追わぬ。
もとより目的は皆殺しなどではない。
あの犬は死ぬだろう、傷ついた少女の眼は癒えぬだろう。
仲間の死に、癒えぬ傷に復讐の炎を燃やす彼らは、喧伝してくれる。
ここに悪が在ると、打倒すべき悪がいると。
それに応える者は、義憤をその心に宿している。
中には猫ヶ丘探偵団の面々もいるかも知れぬ。
ならば狭霧は準備を整え、それを待ち受ければいい。

「君たちの信じる神の刃が……いつか、私を裁く日の訪れんことを」

呟いて嗤う狭霧の表情には、一片の曇りもない。
ベレッタが、ナイフが、腕の一本が失われようと、彼の為す悪は変わらない。

【I-3 平原/1日目 昼】
【桃太郎】
【状態】:重傷(左目欠損)
【装備】:ハルバード
【所持品】:支給品一式 不明支給品×0〜2
【思考・行動】 基本:悪しき人間を倒す、司に対する強い不満
 1:悪を討つ
 2:弱き人間を守る
 3:アルベルト打倒

【松井司】
【状態】:激昂
【装備】:毒蜂、ベレッタM92(残弾9/15、銃口に歪み、暴発の危険度高)
【所持品】:支給品一式
【思考・行動】 基本:もう誰にも目の前で殺し合いをさせない
 1:フーリエを看取る。
 2:美和子とフーリエと一緒に行動する。
 3:兄(哲也)を探す
486誰も誰かを救えない ◇Ek9St4HTQk:2008/06/22(日) 19:17:48
【鍵谷美和子】
【状態】:健康
【装備】:狭霧のナイフ
【所持品】:支給品一式、泉和哉の遺体
【思考・行動】 基本:知り合いを探し、そのあと会場から脱出する
 1:フーリエを看取る。
 2:できれば首輪を分析したい。
 3:幸一郎のことが心配。

【フーリエ】
【状態】:瀕死(出血多量、内臓全損)
【装備】:アラモボーイ(サバイバルナイフ)
【所持品】:支給品一式
【思考・行動】 基本:仲間を捜し、不戦を呼び掛ける
 1:―――

【狭霧嘉麻屋】
【状態】:片腕途中から欠損
【装備】:なし
【所持品】:支給品一式 ×2 不明支給品×1 (チョコパン一個消費、ヨーグルトパンのヨーグルトだけ消費)
【思考・行動】 基本:正義の実在を証明するため、姑息に、残酷に、無惨に、手段を選ばず殺し合う
1:さしあたって武器を探す。
2:遥という名の女を殺す。


※壊れた電動ノコギリと壊れた木刀がI-3に転がっています。





代理投下終了します。
487名無し草:2008/06/22(日) 20:21:09
これは面白い展開、乙です。
狭霧関連は本当いいですねぇ。
フーリエも最後まで信仰を貫いて立派だったよ。
488名無し草:2008/06/22(日) 22:36:20
投下乙!!
全員の掘り下げSUGEEEEEEE!!
桃太郎とフーリエももちろんだけど、司と美和子ばあちゃんもカッコよかったよ
489名無し草:2008/06/22(日) 22:52:21
投下&代理投下乙です
うわあ…タイトル通り、まったく誰も救われない展開…
胃がキリキリするような無常感がすごくロワらしかったです
GJでした
490名無し草:2008/06/22(日) 22:56:59
投下乙です!
これは随分とまあ美和子組に爆弾が仕込まれましたねぇ。
狭霧は武器なくなったけどそれでもなんかやらかしてくれそうだ。
今後の展開が気になってきましたよ。GJ!
491名無し草:2008/06/22(日) 22:59:39
しかしなんつーか、家族参加組は全員ことごとくロクな目にあってないようなw
492名無し草:2008/06/22(日) 23:05:47
え?
家族参加ってそれ自体が悲劇の火種じゃないの?w
493名無し草:2008/06/22(日) 23:15:48
松井家も坂木家も一人欠けちゃってるし両方とももう一人殺されかけてるし
まだ無傷なのが鍵谷家か

この状況なら哲也が死んでも蕗が死んでも後で楽しいことにはなるが
494名無し草:2008/06/25(水) 23:03:01
ポー予約しません
495名無し草:2008/06/25(水) 23:04:38
きさまwwwwwwwwwww
496名無し草:2008/06/25(水) 23:48:26
銃で撃たれる

 司→……死ぬよ?
 椿→撃たれりゃ死ぬよ
 ニャルロット→いや死ぬって
 桃太郎→耐えますよ、根性で
 ジュリア→いや人間がベースですから
 李→かなり効くけど即死ってホドでも
 (故)フーリエ→神のご加護で何とかなると思い込んでる
 狭霧→当たったらヤバイ
 舞梨→避けます
 後藤→かなり痛い


こんな感じ?
497名無し草:2008/06/25(水) 23:59:18
銃で心臓を撃たれる

司→即死
椿→即死
ニャル→即死
桃太郎→即死
ジュリア→即死
すもも→即死
フーリエ→即死
狭霧→即死
舞梨→即死
後藤→心臓? そこ急所じゃないよ?
ゴキブリ→心臓じゃなくても拳銃当たったら木っ端微塵じゃね?

こんな感じ
498名無し草:2008/06/26(木) 00:08:30
拳銃弾が直撃したら後藤以外は最低でも瀕死レベルだろw
触手はなんか弱点の属性弾でも当てとけw
499名無し草:2008/06/26(木) 00:33:01
・アムンゼン1VS花子
・アムンゼン2と蕗
・万吉&可憐
・アリス&真多
・奈々&哲也とジュリア
・靄場&舞梨
・塔野&捨留主&李&ミーウ&椿
・時宗&ケネス&燕&絵理花
・幸一郎&湊
・桃太郎&司&美和子&フーリエ
・遥とデンドロ
・一一一&ニャルロット&ミルフィーユ
・アムンゼン3&檀&スポポロス
・後藤
・狭霧
・ポー
・ゴキブロス
・瑞子

今のところこんな感じか。
結構複数グループ増えたな、どこも火種抱えてるけど。
500 ◆Syk9Sx8L.s :2008/06/26(木) 01:02:08
後藤戦、アムンゼン3、勇者スポポロス、坂木檀で予約します
501名無し草:2008/06/26(木) 02:19:39
おおこの組み合わせは期待
502名無し草:2008/06/26(木) 03:25:39
ゴトゥーザが意外な方向に使われたな
そっちの組相手に来るとは想定外
503名無し草:2008/06/26(木) 03:58:38
後藤だろうと首輪爆発で死ぬ
504名無し草:2008/06/26(木) 04:20:16
首輪で思ったがゴキブロスって首輪も小さいから解除大変そうだなw
505名無し草:2008/06/26(木) 04:40:48
>>503
だが弱点フラグをスルーするのはKYと言わざるを得ない
506名無し草:2008/06/26(木) 05:54:13
靄場が弱点云々言ってるけど後藤のプロフィール見ると弱点無しになってるな・・・
まあその矛盾をなんとかするアイデアは考えてあるから別にいいんだけど
507名無し草:2008/06/26(木) 12:47:12
ポー「金的を狙うである」
508名無し草:2008/06/26(木) 13:18:59
お前、とりあえず水から上がって物を言えw
509名無し草:2008/06/26(木) 13:43:47
ニャル「今日はポーについて、みんなの思っている事を出し合うにゃ」

リリー「役立たず」
アリス「クッションにするとなかなか心地良くってよ」
ニャル「ペンギンの肉は美容に良いと聞いた事があるにゃ」
アリス「あら、それは初耳ですわね」
リリー「ポー、あなたの事は忘れない」

ポー「生命の危機を感じるのである……」
510名無し草:2008/06/26(木) 13:45:46
探偵団ヒドスwww
511名無し草:2008/06/26(木) 18:31:13
ニャル→紅
アリス→翠
リリー→蒼
ポー→雛

こうですね。わかります
512名無し草:2008/06/26(木) 18:37:39
犬肉より旨いとアムンゼンに吹き込んだ日には……
513名無し草:2008/06/26(木) 19:32:14
アルベルト「フフフ、緊急放送ですよ。
      最近知ったのですが、ペンギンの肉はどんな食べ物にも勝る至高の味だという話です。
      緊急放送を終わります、みなさん頑張って(ポーを)殺しあってください、フフ、フフフフ」
514 ◆h8kCbLu2Ns :2008/06/26(木) 21:56:22
この流れに水を差すようでアレですが、ポー予約します
515名無し草:2008/06/26(木) 22:01:31
>>514
激しく期待
516名無し草:2008/06/26(木) 22:25:17
水中だけにな!
517名無し草:2008/06/26(木) 22:35:56
ポー愛されてるなwwwwwwwww
518名無し草:2008/06/26(木) 22:59:23
水中だけにな!
519名無し草:2008/06/26(木) 23:05:06
ポー愛されてるなwwwwwwwww
520名無し草:2008/06/26(木) 23:34:01
あれ…
疲れてるのかな
何かループしてるように見えるんだけど…
521名無し草:2008/06/26(木) 23:55:50
水中だけにな!
522名無し草:2008/06/27(金) 00:26:06
無限ループって怖くね?
523名無し草:2008/06/27(金) 00:50:34
水中だけにな!
524名無し草:2008/06/27(金) 01:19:49
やめwwwww腹筋痛いwwwwww
525名無し草:2008/06/27(金) 01:21:16
水中だけにな!
526名無し草:2008/06/27(金) 01:26:30
あれ…
疲れてるのかな
何かループしてるように見えるんだけど…
527名無し草:2008/06/27(金) 10:53:00
ポー「一発ヤらせるである」
528名無し草:2008/06/27(金) 11:08:31
ポ-「股間がはちきれそうである」
529名無し草:2008/06/27(金) 11:44:45
ポー「水中には奇妙な生物がたくさんいるのである」
530名無し草:2008/06/27(金) 15:18:02
ムツゴロウ「ペンギンの肉はですねぇ、私も大好物なんですよ」
531名無し草:2008/06/27(金) 16:08:22
そろそろ、ポーVSマーダー連合の超バトルが投下される頃だな!
532名無し草:2008/06/27(金) 16:38:40
いやいや、ポーが溺れ死ぬ話が投下される頃だろ!
533名無し草:2008/06/27(金) 17:06:01
ミーウ「そろそろ食べちゃおうかな」
534名無し草:2008/06/27(金) 17:10:40
ポーVSマーダー連合五番勝負

先鋒 パー VS ファシル
次鋒 ピー VS ジュリア
中堅 プー VS 狭霧嘉麻屋
副将 ペー VS アムンゼン2
大将 ポー VS 後藤戦
535名無し草:2008/06/27(金) 18:47:28
何このポーの扱いwwwwwwwwwwwwwww
536 ◆Syk9Sx8L.s :2008/06/28(土) 00:08:58
ごめんなさい、二回連続になってしまいますが延長させていただけないでしょうか?
537名無し草:2008/06/28(土) 00:11:58
>>536
大丈夫です
無理せずじっくり書いてください
538名無し草:2008/06/28(土) 00:12:28
お待ちしてますよ〜
539 ◆h8kCbLu2Ns :2008/06/28(土) 06:15:40
ポー、投下します。
540真実の在処 ◆h8kCbLu2Ns :2008/06/28(土) 06:16:52
中二病……もとい、ファシルからの逃走に成功した後、ポーは一直線に北へと向かう事はしなかった。
その原因は、先ほど彼が発射した熱視線。
(……何度やってもアレは慣れないのである。なるべく温存しておきたかったのであるが……)
いくら普通とは違うとは言えどペンギンはペンギン。体内で高熱を作る以上、アリスやリリーのように気軽に使える能力ではない。
一回使えば最低でも二時間は使用不能と言う不便な物だ。
(ストーン・ヘッド・ロケットも何度も通用する技ではないし、このままアリスと合流する事に成功したとしても足でまといになるだけであるな。荷物の事も気になりはするのであるが……まあ、こうして水の中にいる以上今更取り出しても遅いのである)

と言う訳で、しばらくの間、ポーは水中で一時休憩を行っていた。
決してファシルが追ってきてはいないかと何度も後ろを確認していたり、「水の中は快適である」とか言って隠れてたりしていた訳ではない、多分。




――時は流れ、放送後。

(……たった六時間で4分の1、であるか)
自分に危機感が無かったとまでは言わないが、どこか楽観視をしていた。
いつものように、どんな事件でも最後には全員で笑いあえると思っていた。
……しかし、その認識は改めなければいけないらしい。
かつての依頼人である、晴海雪の死。特に親しいと言う訳では無かったが、知人の一人が亡くなった事がアリス達に悪い影響を与えなければいいのだが。
ファシルの名前も呼ばれておらず、未だに脅威は去っていない。
探偵団が一人も欠けていない事が幸いだが、やはり気が重くなる。
541真実の在処 ◆h8kCbLu2Ns :2008/06/28(土) 06:18:19
(さて……休憩も終えて、そろそろ移動を始めるべきであるが……考える事が増えたであるな)
死者に黙祷を捧げた後、ポーは移動と同時に思考を開始する。
まずは、放送で呼ばれた名前について。
(織田信長にピタゴラス、ロバート・スコット……突っ込み所満載にも程があるのである)
誰でも一度くらいは聞いた事があるであろう名前が呼ばれているのは一体どういう事なのか。
確かに「様々な世界から集めた」だとか言っていたが、それは時間の概念をも無視できるような物なのだろうか?
本当に別の世界から拉致を行ったとしても、歴史上の人物まで共通しているのだろうか?

……心当たりはある。
いつだったか、猫ヶ丘探偵団は『未来人』に依頼を受けた事がある。
結局は事件が解決した後に元の時代に去っていき、その一度だけで再会もしていないのだが……。
その技術を使い、過去の人間を拉致してきたとしたらどうだろうか?
(しかし、それをどうやって手に入れたかが問題であるな……。確認のしようがない事だし、この件は保留である)

続いて、同じく放送で呼ばれた「アルベルト・ハインリヒ」について。
まさか単なる同姓同名などと言うオチはないだろう。やはり平行世界から連れてきたのか、それともクローン人間か何かか。
これも先ほどと同じように、いくら考えた所で今は答えを導き出す事は出来ない。
重要なのは、その後のアルベルトの発言である。

『もう一人の私がそれほど活躍しなかったのが残念ですね……まあ、彼の遺体絡みで面白いものが見られ――』
542真実の在処 ◆h8kCbLu2Ns :2008/06/28(土) 06:19:09
この何気ない言葉から、ある事を推測する事が出来る。
それは、現在も行われているであろう参加者の監視に関する事だ。
首輪が存在する以上、常に監視・盗聴をされている事は分かっている。しかし、この参加者の数では膨大な手間がかかる事もまた明らかだ。
監視だけが目的ならば、その人物が死亡した時点で監視を外して残りの監視に集中した方がいい。
にも関わらず、既に死亡している人物の監視を続け、「面白いものが見られた」とまで言っているのは何故か?
――答えは簡単、他に目的があるからだ。
アルベルトは『どのくらいの参加者が死にどのようなドラマが起こるのか』とも言っていた。
つまり、真の目的は参加者を見張る事ではなく、「多種多様な人物が殺し合いをしたらどんな出来事が発生するのか」を知るためだ。
それだけのためにこんな大規模な事件を起こすとは考えにくいため、別の目的もあるのだろうが、『実験』の目的の一つである事は間違いないだろう。

無論、この推理も間違っている可能性はある。
例えば、何か重要な事を見落としていた場合。
例えば、先ほどの言葉が単なる出任せであった場合。
例えば、アルベルトが完全な異常者であり、理屈も何も通じない相手であった場合。
やろうと思えばいくらでも否定の材料は出てくる。
543真実の在処 ◆h8kCbLu2Ns :2008/06/28(土) 06:19:54
それでも、何も考えず行動を続けるよりはよっぽどマシだ。
そして、何より――――自分の推理すら信用出来ずに、何が猫ヶ丘探偵団の一員か。
(……さて、そろそろ陸地であるな)

彼の推理が当たっているのか、的外れな物なのか。それは現段階ではアルベルトにしか分からないが、一つハッキリしている事がある。


……もう少し速く出発していれば、特に悩む事もなくすぐ近くにいたアリスと合流出来ていただろう。

【D-6 湖北部/1日目 昼】
【ポー】
【状態】:健康
【装備】:フライパン
【所持品】:支給品一式x2、虫眼鏡、ノートパソコン、
デリンジャー(2/2)、.41リムファイアー弾(10/10)、ウィンチェスターM1897(残弾数5/5)、
ウィンチェスターM1897の予備弾(30発分)
【思考・行動】
1:とりあえず、アリスを探すである
2:あのファシルとかいう男…本当にただの精神がアレな奴であるか?
3:何としてもアルベルトに対抗するのである
※ミーウを変態と認識しました。
※ゴキブロスには気付いていません。
※デイパックは防水加工されているようです。
※『シショー』とはニャルロットのことで、アリスは(押しかけた)彼女から(強引に)
探偵のいろはを学んだようです。
※熱視線は一回使うと最低でも二時間は使用不能になります。
※アルベルトの目的の一つを「多種多様な人物が殺し合いをしたらどんな出来事が発生するのかを知るため」と考察しています。
544 ◆h8kCbLu2Ns :2008/06/28(土) 06:21:23
投下終了しました。
感想、指摘等があったらよろしくお願いします。
545名無し草:2008/06/28(土) 06:33:00
ポーが空気だった理由の解明、GJですw
546名無し草:2008/06/28(土) 13:44:50
投下乙。さりげなくポーが武器庫だwwwww
547 ◆Syk9Sx8L.s :2008/06/28(土) 23:27:46
>◆h8kCbLu2Ns氏
投下乙です。ポーも探偵団の端くれ、考察させたら光るようですね。


私が予約していた後藤戦、アムンゼン3、坂木檀、勇者スポポロスの話ですが、少し展開に問題がある可能性があるので
こんな期限ギリギリの時間ですが仮投下スレをお借りしたいと思います。
548名無し草:2008/06/29(日) 00:10:59
懸念されてる事に関して、一書き手としては問題ないんじゃないかなと思います。
549名無し草:2008/06/29(日) 00:15:41
>>547
投下乙でした。
「宿主」の弱点は必ずしも「寄生虫自身」の弱点とは限りませんし何の問題も無いと思います
550 ◆Syk9Sx8L.s :2008/06/29(日) 00:25:06
ご意見ありがとうございます。
それでは期限も迫っておりますので本投下させていただきます。
551届かない言葉 ◆Syk9Sx8L.s :2008/06/29(日) 00:25:39
(あれ?)
檀がいたのはいつもの見慣れた教室。
檀自身が所属しているクラスの教室ではなく、そこよりも休み時間や放課後を過ごすことの多い杏の教室だ。
檀はそこの遥の席に座っていた。
窓の外からは西日が差し込んでいて、時計を見なくても今が放課後なのだとわかる。
外を覗けば運動部の練習風景でも見られるかもしれない。
教室の中には彼女の他に誰もいなかった。
さっきまでいたはずの殺し合いの空間の中とは全く繋がらない、あまりにいつも通りの場所だった。
(ああそうか。これは夢の中なんだ)
檀は時々自分が夢の中にいることを自覚することができる。
特に役に立ちそうも無い特技だ。でもし自覚出来なかったら、この夢から覚めたときにずっと辛い気持ちになるだろう。
(それにしても、どうせ夢なら知り合いでも出てきてくれればいいのに)
この教室で同じ時間を過ごした仲間たちの顔が自然と浮かんできた。
久司と凪には多分もう二度と会うこともないだろう。
そして、もしかしたら遥や兄や蕗とも……

「よお」
その声に顔を上げると、黒板の前に立つ背の低い人影があった。
「……お兄ちゃん」
いつからそこにいたのだろう。いつも学校で見るのと同じブレザー姿。教壇の上に立ってもはっきりわかるくらい背が低い。
もっともそれは檀も同じ。まったく、どうして三つ子なのに蕗だけが背が高くなったんだろう。
「なんか教室も懐かしい気さえするよな。実際には一日ぶりくらいなのに」
杏は教壇から降りて、一番前の列にある自分の机の上に書かれている久司の落書きを撫でるように指でなぞる。
「うん。なんか今までのことのほうが夢で、こっちのほうが現実なんじゃないかって思いたくなるわよ」
本当なら、兄に無事なのか、今どこにいるのかと問いかけたい。でもそんなことに何の意味もないことは分かっている。
これは自分の心が生み出している幻影に過ぎないのだから。
552届かない言葉 ◆Syk9Sx8L.s :2008/06/29(日) 00:26:29
「ねえ、お兄ちゃん」
檀はその実態を持たない兄の姿に問いかける。
「お兄ちゃんは、私が人を殺したら許してくれる?」
「許せねえよ」
期待通りの答えが返ってきて檀は安堵を覚える。
多分兄なら、そんなことをしたらお前を殺して俺も死ぬくらいのことは言うだろうし実際にそうするだろう。
「でもな……やっぱりそれよりは、俺はお前が死んでしまうことのほうが嫌かも知れないな。勝手な言い分だとは思うけどさ」
杏はそうつぶやくと自分の机の上に腰を下ろした。
休み時間になる度に、この机を中心にみんなが集まってどうでもいい話題で毎日盛り上がっていたのを思い出す。
そういえば、今の自分はまだバイオリンの弾き方を覚えているのだろうか?
「お前や蕗が他人を傷つけたり、他人に迷惑をかけたりするのはそりゃ嫌だけど……
だけど俺は、お前らがどんな卑怯で最低な奴になってもいいから……生きてて欲しいよ」
「お兄ちゃん?」
「自分が生きるためなら、どんな狡猾で冷酷なことでもやる。そんな人間にはそりゃなって欲しくはないよ。
でも俺は、お前や蕗が例えどんな人間になったって、それでも生きてて欲しいって思う」
いつもの兄と同じ口調で続ける。
多分それは杏には出来ないことだろうと檀は知っていた。杏はあまりにまっすぐ過ぎるから。
どう答えたらいいのだろうと思案しているうちに兄が立ち上がった。
「さて、そろそろ潮時か。蕗や遥によろしくな。ああそれと、もし生きて帰るようなことがあったら久司に伝えてくれ。
悪かった、ってな。俺は本当はあいつの気持ちに気付いてたんだけどさ、俺は……が好きだったから」
「え?」
最後のほうの声がよく聞こえなかった。
杏の声が、杏の姿が、目の前にいるはずなのに徐々に輪郭を失い、遠ざかっていくかのような感覚がした。
夢が終わってしまう。この幸せな夢から覚めてしまえば、またあの悪夢のような殺し合いの中に戻されてしまう。
何より、このまま夢から覚めてしまったら二度と兄と話が出来ないのではないか……そんな気がした。
「おにい……」
「じゃあ檀、元気でな」
杏が手を振ると、檀の意識は霧散した。
553届かない言葉 ◆Syk9Sx8L.s :2008/06/29(日) 00:27:08
「お目覚めですか、レディ?」
次に目を開けた檀の視界に入ってきたのは、ニヤついたような顔で自分と向かい合っているアムンゼンの顔だった。
椅子に座ったまま寝たときにいつもそうなるようにお尻が痛い。
「気分は最悪ね」
頬に微かに残る涎の跡を慌てて袖で拭き取った。
そうか、家の中でアムンゼンと向かい合って話してるうちに疲れが溜まったせいかどうしても眠くなり、やむを得ず彼に言われるまま仮眠を取ることにしたのだったか。
「それはさぞかしいい夢を見ていたのでしょうね」
「ええ」
多くを語る気などない。もう一度目を閉じたらまた兄に会えるのだろうか、という想像をため息と共に打ち消した。
(どんな人間になってもいいから生きろ、か……)
檀は自分が生き残ることになど興味はない。ただ、兄と妹を生き残らせることさえ出来ればそれで十分だ。
もちろんそのためには手段を選ばない、はずだった。放送を耳にするまでは。
自分の中に浮かんだ迷いの正体さえ分からないまま、檀はゆっくりと首を上げた。
「そういえばアイツは?」
「あのジェントルマンでしたら、そこに」
アムンゼンが指差したベッドの中では、勇者スポポロスが未だに寝息を立てて眠っていた。
「私より先に寝始めたくせに、まだ起きないの?」
呆れると同時に、そういえばこいつはアニメの中でもこんなキャラだったなと思い出す。
さっきまでどうにかスポポロスとアムンゼンを相討ちさせられないかと考えていたのだが、冷静に考えてみればとても実現出来そうには無い。
スポポロスとアムンゼンの間の力量差は歴然としている。スポポロスがアムンゼンに襲い掛かったところで子供のように軽くあしらわれるだけだろう。
一方のアムンゼンは自ら殺し合いに乗ろうとはしない。少なくとも、少し唆したくらいで扇動できるとは思えない。
かと言って、この二人が他の参加者を殺すように仕向けることもやはり簡単には出来そうに無かった。
ならば、やはり自分の手で隙を見て殺すしかないのだろうか。
その想像をしたら再び胃液が喉元まで駆け上がってきた。
554届かない言葉 ◆Syk9Sx8L.s :2008/06/29(日) 00:28:07
自分がアムンゼンから刀を奪ってその切先で彼の喉を突く所を想像してみようとするも、その情景が自分の中でどうしても焦点を結ばない。
代わりに瞼の裏に浮かんだのは、夢の中で見た兄の顔だった。
それと同時に、夕日の差し込む教室の中で兄が言った言葉が耳の奥から聞こえてきた。

『俺は、お前らがどんな卑怯で最低な奴になってもいいから……それでも、生きてて欲しいよ』

(お兄ちゃん……それ、本当? 私がどんなことをする人間になっても、お兄ちゃんは許してくれる?)
「どうかされましたか、レディ?」
アムンゼンの声で我に返る。白人の男は心配そうに檀の顔を覗き込んできた。
あまりポーカーフェイスを保つのは得意なほうではない。
声の調子で心中を窺われるのも嫌だったので、無言のまま首を振った。
「もしかして悪い夢でも見たのですか? 例えば、自分が再び人を殺してしまうような」
その言葉に思わず口を開いて何かを叫びそうになった。
カマをかけられていることくらいはわかっている。それでも檀の表情は彼女の動揺をあますところ無くアムンゼンに伝えてしまった。
仕方が無いので、嘘はつかないことにする。
「違うわよ。それにね、私が殺したと思い込んでた子も本当は死んでなかったわ」
「それは幸甚です」
アムンゼンはまるで自分のことのように喜ぶ。それが檀の苛立ちをさらに増した。
「仲間を失うのも、仲間が他の誰かを傷つけてしまうのも、私はもう懲り懲りですからね」
仲間――それはもしかして自分のことなのだろうか。
なぜ出会ったばかりの、それも出会い頭にいきなり殺そうとした自分などをそこまで信用しているのだろう。
そもそも、自分たちは無事にここから生きて帰れるに違いないと信じているその楽天的な思考が気に食わなかった。
「ねえ、本気で信じてるの? 誰も傷つけずにここで生き残るなんて、出来るわけないじゃない」
「レディ、一流の冒険家とはどんな人間のことか知ってますか?」
まるで話をはぐらかすかのようなアムンゼンの返答にいぶかしみながらも首を振る。
555届かない言葉 ◆Syk9Sx8L.s :2008/06/29(日) 00:29:00
「それは自分自身や隊員たちはもちろん、冒険の前に立ちはだかる敵すらも一人も傷つけずに目的を達成した後無事に帰還する冒険家です。
私はこれでも一時は名を上げた冒険家です。冒険家という者は、厳しい状況に置かれればこそ犠牲を最小限にする努力をしなければならない。
この世界に無駄に失われていい命などあるとしたら、それは犬だけです」
それはアムンゼンほどの力も無い檀にとってはただの奇麗事にしか聞こえないことだった。
そんな戦い方が出来るのは強い者だけだ。檀のような力などない弱い者には、『どんな狡猾で冷酷なことでも』やらない限りは生き延びることも仲間や家族を守ることも出来ない。
「あなたがそう思うのはいいけど、私は冒険家じゃないわよ」
「誰でも同じですよ。人が人の命を奪う、という結果には違いが無いのですからね。
ですが、ここであなたとこうしてディベートを続けるよりも」
アムンゼンはおもむろに腰を上げた。
「目の前の危険に対処するのが先決のようですね」
鞘が床に落ちる。アムンゼンは抜き身の信長の愛刀長谷部国重を腰に構えて摺り足でリビングのドアへと向かった。
そして檀は、この期に及んでようやくその扉の向こうに自分たち三人以外の誰かの気配がしていることに気がついた。
アムンゼンはそこにいる誰かに声をかけることもせず、まるでその誰かが自分たちに敵意を抱いていることを確信しているかのような足取りでドアの前に立った。
睨み合いの間などは存在しなかった。
突如ドアの隙間から伸びてきた黒くて太いタコの足のような何かを、アムンゼンの刀の一閃が腰車に切り捨てる。
それは床の上に転げ落ちると、切られたばかりのトカゲの尻尾のようにのたうち回った。
しかし檀もアムンゼンもそれにもう目を向けようとはしなかった。
侵入者はドアを踏み倒すように破壊してリビングルームに堂々と入ってきたのだ。
檀はそれを見て声を失う。
アムンゼンと向き合って佇んでいたのは、口と耳から生やした無数の触手を線虫のように動かしている上半身裸の男の姿をした何かだった。
おそらくそれは、かつては人間だったのだろう。だが双眸は光を失い、頬はこけ、ただ自らの内に巣食う蟲を生かすためにのみ生き続けている今のその姿は人間とも、生きているとも呼べるようなものでは無かった。
556届かない言葉 ◆Syk9Sx8L.s :2008/06/29(日) 00:29:38
「やれやれ、日本人は礼節を重んじる温厚な民族だと聞いたのですが。レディといいジェントルマンといい、私と縁のある日本人は少々血の気の多い方が多いらしい」
アムンゼンはそう嘯くと、打刀を八双に構える。
効率よく犬を狩るために世界中を旅して身に着けた格闘術の中には当然ながら剣術も含まれる。
傍若無人な訪問者は口から出ている何本もの触手をアムンゼンへと伸ばした。アムンゼンは袈裟切りにそれらを切り落とす。その数は七本。しかしそれほどの深手を負ったというのに侵入者は痛がるそぶりも見せない。
それどころか、切られたその場から次々と触手が再生してきた。
その様子はあまりにもおぞましく、ある種の背徳的なものすら含んでいるような印象さえ受ける。
アムンゼンは即座に後ろに下がり男との間に距離を取る。
「レディ、貴女の国では口の中に怪物を飼うような趣味でもあるのですか?」
肩越しに檀を振り返って冗談を飛ばすアムンゼンの顔にも、先ほどまでの余裕は無かった。
男は光の移らない眼でアムンゼンと檀のいる方向を見つめると、表情を微塵も変えずに彼らの元へと足を進めてきた。
その中には最早殺意と呼べるものすらない。ただ本能のままに生命を貪り食う殺戮兵器だ。
「レディ、足は動きますか?」
「馬鹿にしないで」
「ならばそこで寝ているジェントルマンを連れて、ベッドの脇の窓から外に逃げてください」
アムンゼンの視線が、窓から差し込む昼の日差しを受けて心地よさげに眠っているスポポロスに向けられる。
「あんたまさか、『こいつは自分が引き付けておくからその間に遠くに逃げろ』とかいうベタなことを言うつもり?」
「何かご不満でも?」
言い争っている暇は無さそうだった。
檀は思い切って男の脇を抜けるようにして走った。アムンゼンのほうに向かっていた男が足を止め、顔を檀のほうに向ける。
その隙を逃さず、アムンゼンは男に向かって踏み込むと刀を振り下ろした。
刃は狙い通りに男の腕を切り落とす。その感触のあまりのあっけなさにアムンゼンは驚く。
それは例えるならば長年生きて老朽化した人間のそれか、もしくは生まれたての人間のような脆さだった。
557届かない言葉 ◆Syk9Sx8L.s :2008/06/29(日) 00:30:12
しかしアムンゼンの真の驚愕はこの後に訪れる。
男の腕の切り口から粘度の高い液体がにじみ出てきたかと思うと、それはまるで粘菌のように蠢いて瞬く間に男の腕の形になってしまったのだ。
触手と同様に、この男の体もまた無限に再生できるということらしい。
流石の歴戦の冒険家もその余りにも得体の知れない敵を前にして戦慄を隠せなかったが、すぐに我に変えると叫んだ。
「レディ、急いで!!」
檀は言われなくても分かっていると言いたげに目を合わさずに頷いて、ベッドの中から引きずり出したスポポロスを脇に抱えながら窓を開ける。
幸い、彼ら二人が楽に潜り抜けられるほどの広さはある。
檀は先に、この騒動の中でも一向に目を覚まそうとしないスポポロスを担ぎ上げて窓から投げ捨てると自らも窓枠に足を乗せた。
彼女たちの風習に反して室内でも靴を脱がなかったのは正解だったようだ。
檀が窓の外に飛び降りようとしたまさにその時、彼女とほんの一瞬だけ目が合った。
その時彼女の中にどんな思いがあったのか、果たして自分の思いをどれだけ伝えられたのか、アムンゼンにはわからない。
檀の姿も窓の外に消える。そこには何の未練もありはしなかった。

(さて、真正面からぶつかっても勝ち目は無さそうな方ですね)
アムンゼンは檀とスポポロスの無事を祈りながら侵入者――後藤戦に急ぎ目を戻す。そして、彼の取っているあまりに奇妙な行動に気がつく。
後藤はアムンゼンの前できょろきょろと辺りを見回すかのような仕草をしていた。
まるでこちらの攻撃を誘っているかのような余りに隙だらけの行動だ。
そして逡巡のような行動の後、後藤が歩を進めたのは窓のほうだった。
無論そこにはすでに檀とスポポロスなどいない。
(何故? 私のほうが近くにいるというのに)
しかし後藤が背中を見せている今が好機なのは違いない。
アムンゼンは余計な考えを断ち切ると、刀を再び八双に持ち直す。狙うは男の首。
これほどの再生力を持つ相手でも、頭を切り落とせばあるいは……
しかし、アムンゼンが後藤に向かって一歩足を進めたのとほぼ同時に、ベッドのほうへと向かっていた後藤の触手は全てがアムンゼンへと矛先を変えた。
558届かない言葉 ◆Syk9Sx8L.s :2008/06/29(日) 00:31:58
「なっ……」
即座に距離を取ろうと下がるが間に合わない。鞭のようにしなる触手の群れのうちの一本がアムンゼンの左手首に絡みつく。
とっさに刀を右手一本に持ち替えた。そうしなければ落としていただろう。
何しろその左手は、手首から先がごっそりと触手に千切りとられてしまったのだから。
後藤は摘み取ったアムンゼンの左手首を口に運び、ゆっくりと咀嚼を始めた。
傷口からは鮮血が迸る。とっさに自分のわき腹に切り口を押し付けた。
たいした止血効果があるとも思えないが、何もしないよりはマシだろう。
幸いにして痛みはそれほど感じない。あまりのことに脳が麻痺をしているのかも知れなかった。
(やれやれ。ここは格好をつけずに、レディたちと一緒に逃げておくべきでしたね)
唇の端を歪めながらも目の前の男の突破口を考える。
さっき見せたあの隙の多い動きは何だった? 単に自分の攻撃を誘うための罠か?
いや、あるいは――

アムンゼンはついさっき受けた攻撃を思い出す。
男はアムンゼンが足を踏み出すと同時に触手をこちらに向けてきた――いや。
アムンゼンが踏み込むのと、男の触手が俄かに動きを変えるのは全くの同時ではなかった。まるでアムンゼンの動きを合図とするかのように僅かに遅れて男も動いたのだ。
(やってみるべきかどうかを吟味している時間はありませんね)
自分の体の一部を咀嚼している目の前の男の目には光が映っておらず、どこにも焦点を結んでいない。
この男はとうの昔に光を失っている。ならばどうやって獲物を感知しているのか?
アムンゼンは刀の柄を口で咥えて切先を床に付き立てて刀を杖のようにして自分の体を支えた。
そして自由になった右手を腰のポケットに入れる。
中から取り出したのは、表面に『中』という漢字が刻印されている白い小さなドミノのようなもの。
自分の支給品の中にあったものの一つで、檀には『麻雀牌』と呼ぶものだと教えられた。
こんなものでも何かに役に立つかもしれないと何個か身につけていたのだ。
アムンゼンは、なるべく物音を立てないように細心の注意を払いながらそれを振りかぶって部屋の隅――ちょうどアムンゼンのいるのとは反対の隅に投げた。
後藤の反応は顕著だった。
559届かない言葉 ◆Syk9Sx8L.s :2008/06/29(日) 00:32:29
それまでアムンゼンに対して伸ばしていた触手を引っ込めると、今度は反対側の隅に転がる麻雀牌に向かって伸ばしたのだった。
(やはり!!)
この男――いや、正確には彼の中に巣食っている化け物だろう――は獲物の在り処を「音」もしくは「振動」で察知している。
もちろん嗅覚などでも大まかな位置はわかるだろうが、より正確な狙いは音を頼りにつけているのだ。
檀が窓から外に飛び降りた直後にアムンゼンから興味を失ったような素振りを見せたのも、アムンゼンが足を踏み出すと同時に再び狙いをアムンゼンへと変えてきたのも、おそらくはそのせいだ。
この化け物は単純に「自分が最後に聞いた音のする方向に触手を伸ばす」という性質を持っているのだ。
アムンゼンは再び腰のポケットにそっと手を入れ、今度は漢数字が刻印された牌を取り出す。
もし少しでも余計な音を立ててしまっては失敗だ。
口だけで刀を支えるのが楽なことであるはずも無く、ともすれば切先が滑って刀ごと自分の体が倒れそうになる。そうなったら最後、自分は悲鳴すら上げる暇も無く物言わぬ肉塊と化すだろう。
アムンゼンの額には大粒の脂汗が浮かんでいた。左手首からの出血のためか、不快な眠気まで襲ってくる。
(ここまで生きるか死ぬかという状況も、久しぶりですね)
冒険家として前人未踏の地を踏査していた頃のほうが、犬狩りとして世界中のスラム街を渡り歩いていた時代よりも遥かに胸躍るような体験をすることが多かった。
それは命の危機と向き合ったことによって生まれる高揚感によるものだ。
生きるか死ぬかという自然界との駆け引きこそが冒険の醍醐味なのかも知れない。
――だが、そもそも冒険とは生きて帰ってこその冒険なのだ。
560携帯から ◆Syk9Sx8L.s :2008/06/29(日) 00:38:05
規制くらいましたorz
一応避難所に全文があるので申し訳ないですが今日はそちらのほうで……
561名無し草:2008/06/29(日) 00:41:27
じゃ、代理投下いきますー
アムンゼンは刀を手に持ち変えると、大股で出口の方向に走った。
そして間髪を入れず、再び刀の柄を口に挟むと掌に握っていた麻雀牌を出口とは反対の方向に投げた。
やはり、後藤の触手が追ったのは麻雀牌の方だった。冒険家の顔にようやく笑みが戻る。
(これでなんとか、逃げおおせるくらいは出来るでしょう)
檀とスポポロスももう十分遠くに逃げているはずだ。
牌を二つ失ってしまったが、いつか檀に教えてもらうつもりの麻雀というゲームには支障がないことを祈る。
そう思った時、アムンゼンの顎の筋肉がついに音を上げた。
アムンゼンの口から滑り落ちた刀は切先を下にして、不気味なほどにゆっくりと倒れていく。
体を裁いて手を刀に伸ばそうとするも、刀が倒れる音がリビングに響くほうが僅かに早かった。
麻雀牌が落ちた辺りを触手でまさぐっていた後藤の動きが一瞬にして止まる。
アムンゼンは刀の刀身の峰を握って拾い上げると受身の要領で床の上を転がった。
後藤の触手がアムンゼンのわき腹の僅か横の床板を打ち破っていく。
ふと冷静になって見てみれば、床の上には自分の逃走の経路を示す紅い血痕が延々と続いていた。
昔もこんな景色を見たことがある。あの時鮮血が染めていたのは、どこまでも続く雪原だった。
(――この男は、)
刀の柄を、右手の掌の中にしっかりと握りこむ。脳に回る血がよほど減っているのか、目の前の景色が霞んで見え始めている。
恐らく次に撃てる一撃が自分の最後の攻撃になるはず。
(生かしておいてはなりませんね――!!)
かつて、隊員たちを生かすために隊の犬を殺すという決断をした時のように、アムンゼンはまた冒険の中で誰かの命を奪うという冒険家にとっては恥でしかない行動を取ることにした。
後藤はアムンゼンの息遣いから彼の居場所を察知したのか、振り向いて触手を伸ばしてくる。
アムンゼンはそれに向かって手首から先のない左腕を差し出した。
触手はそれに絡みつくと、果実を?ぐよりも容易く毟り取った。
「腕の一本などはくれてやりましょう!!」
新たな収穫を手にして僅かに触手を引っ込めたその隙をアムンゼンは見逃さない。
手の内を緩めて横に構えた日本刀を、後藤のこめかみに向かって真一文字に抜き付ける。
男の頭の上半分が宙を舞った。腐った果実を切るような、もしくは新芽を刈るような柔らかい感触だった。
軽快な音を立てて床の上に落ちた男の頭を、更に正中線に沿って真っ二つに切り結んだ。
「さらばです、野蛮なるジェントルマン。貴方の魂が救われんことを」
男の頭蓋骨が二つに割られて、本来なら脳があるはずの内部が顕わにされた。
そしてアムンゼンは、自分が対峙していた本当の敵の姿を初めて見ることになる。
そこにいたのは、緑色の球体が十個ほどくっついて形作られたグロテスクな生き物だった。
生きている証にその表面は空気を欲するように脈動している。そしてその下から無数の触手が伸びているのだ。
これこそが後藤戦の体と精神を食い荒らして乗っ取り、数え切れないほどの命を吸い上げてきた忌まわしきパラサイトであった。
まるで異教の悪魔が顕現したかのようなあまりに禍々しい姿にアムンゼンは息を呑む。
その隙を待ち構えていたかのように、その寄生虫は触手をバネのようにして飛び上がった。
気がついたときには、それはアムンゼンの左腕があった場所に絡み付いていた。
振り落とそうとする間さえ与えず、それは左肩の傷口からアムンゼンの中へと逃げ込むように侵入してくる。
それは気が狂いそうになる感覚だった。自分の中にもう一つ別の生命、確固たる別の意思を持った存在が入り込もうとしている。
それを阻止しようと、壁に左肩をぶつけ、床の上をのたうち回り、無事に残っている右腕で左肩の傷口を掻き毟る。
それでも侵食の感覚は全く減退してはいかなかった。
自分の血管が心臓が肺が消化器が肝臓が皮膚が眼球が骨が、脳が自分ではない何者かに犯されている。
痛みも吐き気も無い、ただ自分の内側から体を掻き毟られるような感覚だけが続いた。
果たしてどれほどそうしていただろうか。やがてアムンゼンは気付いた。
それがもうすでに、自分の体の自分でさえ触れられないような場所にまで潜り込み、自分と一体化してしまったということに。
体が一心同体になったというだけではない。もっと深い場所で、もっと深くそれと自分は繋がってしまった。
推測したわけではない。そう、『それ』に教えられたのだ。
「……ぐっ――!!」
自然と意味の無い声が漏れた。
そしてそこに至ってようやく、さっきまで自分を喰おうとしていた男が目の前で触手もろとも朽ち果てた姿になっているのに気がついたのだった。
それは、寄生虫に去られた宿主の末路であり、一族の血のために家族も仲間も自分自身すらも犠牲にしてきた男のあまりに哀しい最期だった。
「私という宿主が見つかったから、もう彼は用済みというわけですか?」
問いかけても、自分の中にいるそれは答えない。
いつの間にやら左肩からの出血は止まり、痛みも消えていた。
それどころかさっきまで感じていた失血による気だるさや眠気なども完全に回復されている。
皮肉なことだが、これに関してだけは寄生虫に感謝をしないわけにはいかなかった。
アムンゼンは刀を脇に置くと床に片膝をつけ目を閉じる。
さっきまで命を奪われかけていた相手の冥福を祈るためだ。極地で散った隊員たちを弔ったのと同じ流儀で彼の死を悼んだ。
自分も彼と同じ道を辿るのだろうか。今にあんな化け物になって、周りの人を手当たり次第に食い散らかそうとするのだろうか。
これ以上犬でもない者を殺すのなど御免だ。
「やれやれ、あんな偉そうなことを言った矢先にこの有様ですか」
目を開けたアムンゼンの頬には諦観に似た自嘲が窺えた。

『真の冒険家とは、自分や仲間はもちろん、襲い来る敵さえも傷つけずに済ませるものだ』

あの少女に得意顔で言った言葉。
それがこの様だ。
自分も傷つき、敵も傷つけた。もう目の前で人が死ぬところを見るのなど、二度とごめんだと思っていたのに。
目の前で隊員たちが一人また一人と冷たくなっていった、あの雪と氷に閉ざされた日々を思い出す。
自分は結局、あれから冒険家として何一つ成長してはいなかった。
が、彼の仲間たちはまだ生きているはずだ。
檀という名の少女とスポポロスという名の少年。彼らは今のアムンゼンにとってかけがえのない仲間たちだった。
それも、二人とも一時たりとも目を離せないような手のかかる仲間だ。特に檀は、人を殺すのがいかなる罪悪かというのがまだ分かっていない。
すでに人を殺した自分が言うのもおこがましいが、一刻も早く合流し、二人にそのことを教えてやらねばならない。
――願わくば、この蟲が自分の全てを食い尽くしてしまう前に。
アムンゼンは何箇所も刃毀れをおこしている長谷部国重を手に取ると血振るいした。
「全く、いくら逆境は嫌いでは無いとは言ってもここまで来ると流石に遠慮したくなりますね」
自分に残されている時間はあといくらあるのか。それだけが気掛かりだった。
【G-7民家/一日目 午後】

【後藤戦  死亡】

【ロアルド・アムンゼン(その3)】
【装備】ククリ、長谷部国重@信長の愛刀
【所持品】支給品一式、松井垂加の麻雀牌
【状態】左腕欠損 体内に今まで後藤戦の体内にいた寄生虫が侵入
【思考・行動】
基本思考:殺し合いはしたくない。犬だけは出会ったら必ず食べる。
1:スポポロス、檀と合流する
2:この会場から脱出する方法を考える
3:自分が化け物になるのではないかという不安
4:ところで犬はどこだ!?


「いい加減に起きなさいよ!!」
檀は背中に担いでいたスポポロスを背負い投げの要領で思い切り地面に叩きつけた。
スポポロスは二、三度体を痙攣させてやっと目を開けた。
「はっ!! 僕様は一体何をしていたのだ!? って、お前はヨモギーノの手先!!」
「だから違うって言ってるでしょ!!」
地面にナメクジのようにへばりついているスポポロスの頭をローファーのつま先で蹴り上げる。
「いたたた!! ええいクソっ、って武器もなくなってるのだ!! 貴様なんて卑劣な奴だ!!」
「私じゃないわよ!!」
「そういえばお前一人しかいない? あの男はどこへ行ったのだ?」
頭を踏みつけられて完全に主導権を奪われているのにも関わらず相変わらず僕様発言をやめないスポポロスだった。
そもそも彼の世界では、どんなピンチになってもこんなことを言っていればそのうちに全ての事態が勝手に好転してくれるのだ。
「……裏切られたのよ。あの男、私の味方をするようなフリをして近づいておきながら、いきなり不意をついて襲い掛かって来たの。
だから私はあんたを背負って逃げてきたのよ」
「な、なんだと!! 裏切るとはなんて許せない奴なんだ!! そんな奴は僕様が許しておかないのだ!!」
――よし、予定通り。
スポポロスは人を疑うことを知らないし、誰かに「あいつはヨモギーノの手先だ」と吹き込まれたらそのまま信じ込んでしまう軽率さを持っている。
もちろんアニメ「幸運勇者スポポロス」の世界では、それが彼のキャラクターとしての魅力になっているのだが。
それを踏まえた上で、檀はさらに嘘を重ねることにする。
「あのね、私が言ったこと覚えてる? あなたこのまま元の世界に帰っても、国王とミルフィーユに裏切られて殺されちゃうのよ?」
「なんだと!! あの二人が僕様を裏切るわけが無いのだ!! 貴様どうしてそんなことが言えるのだ!!」
「わかるわよ。私は預言者だもの」
「な……」
スポポロスは口をぽかんと開けて、少し焦ったような顔で檀を見ている。もう半分以上は信じ込んでいるはずだ。もう一押し。

「なんならここで言ってあげようか? あんたの家族の名前や生まれた場所、勇者と呼ばれることになったいきさつから今までどんな戦いをしてきたかまで、隅から隅まで余す所なくね」
そして実際に、スポポロスの生い立ちから今に至るまでを――それも、スポポロス本人以外には決して知りえないようなことを訥々と語り始めた。
スポポロスの顔色を見ているだけで、彼の中で檀への畏怖心が高まっているのが分かった。
ここまで上手くいくと本当に笑ってしまう。
「ね? そろそろ信じる気になった? あなたは例え生きて帰れてもどうせ殺されちゃうのよ。それも味方に裏切られてね」
「そ、そんなの僕様はイヤなのだ!! 大体僕様だってなりたくて勇者になんかなったわけじゃないのだ!!
なんでそんな目に遭わないといけないのだ!!」
「大丈夫よ、そんなに怯えなくて。あなたは私が導いてあげるから」
檀はそう言ってスポポロスに屈託の無い笑顔を向け、前かがみになって手を差し伸べる。
それを見たスポポロスは少し戸惑ったように顔を赤らめた。
自分の器量の良さは伝聞で知っていた。さらに蕗や遥に比べて自分の胸が大きいことも自覚していた。
しかし今まではそれを武器にしようなどという考えは間違っても思いつかなかった。
そんなのは卑怯で愚劣なことだと思っていたからだ。
「ほ、本当なのか? お前の言う通りにすれば僕様は助かるのか?」
全く、人を騙すのがこんなに楽しいなんてこれではいくら取り締まっても詐欺師がいなくならないわけだ。
アムンゼンは恐らくあの化け物に殺されただろう。あんな奴を相手にして無事ですむとは思えない。
檀の目にはもうスポポロスの顔など見えてはいない。
ただ彼女の瞳に映っているのは夢で見た兄の顔だった。
(お兄ちゃん。私は、どんなに卑劣で冷酷な手を使ってでも、お兄ちゃんたちを助けて見せるから。
そして、お兄ちゃんのいった通り、自分もそんな風にして生き残ってやるからね)

【G-7 平原/一日目午後】

【坂木檀】
【装備】坂木杏の居合刀(刃はありません)
【所持品】支給品一式×2、不明支給品2(武器ではない)
【状態】健康 ぱんつはいてない
【思考・行動】
基本思考:兄と妹以外の人間を(知り合いであっても)殺す
1:スポポロスを利用して他の参加者を殺してもらう
1:チャンスがあればスポポロスを殺す
2:自分の手で殺すことに対しては躊躇 しかし人を騙すことの快感を覚えた

【備考】
遥が死んだのかどうか疑問を持っています。
この会場で死んだら死体が消えるのかも知れないという考えに疑問を持ちました。
パンツは捨てました
「坂木檀の唾液まみれのパンツ」はI‐7 路上に放置されています
【勇者スポポロス】
【装備】:なし
【所持品】:支給品一式
【状態】:健康、 後頭部打撲、頭に靴の跡
【思考・行動】
1:檀の言うことを聞く
2:杖を取り返す
3:佐知代を取り戻す
4:街に行って占い道具を探す
【備考】:
ケンシロウ(自称)のヌンチャクは海に流されました
坂木檀を預言者だと思い込んでいて、彼女の言葉は何でも信じるような気分になっています
570名無し草:2008/06/29(日) 00:47:44
代理投下終了ですー
571 ◆Syk9Sx8L.s :2008/06/29(日) 00:55:04
>>561-570
ありがとうございます!!
お手数をおかけしました。
572名無し草:2008/06/29(日) 01:34:04
おお、ここで後藤が死ぬか!
そして取り付かれたアムンゼンに洗脳されるスポポロス
誤解フラグも広まっていい感じですね〜、GJですよ〜
573名無し草:2008/06/29(日) 02:01:44
うわあ、さすがに賞味期限切れかけてた後藤を使って、そういう発展形で来るかー!
これはテクニカルというか、技ありの一作だなあ。
素晴らしい。
574名無し草:2008/06/29(日) 02:07:20
投下します
575宝箱 ◆lYiZg.uHFE :2008/06/29(日) 02:07:52
木々が所狭しと枝を伸ばしている森。
その枝と枝の隙間から、太陽が光の恵を大地にもたらしている。
コンクリートに囲まれた都会では味わえない自然。
深呼吸でもすれば、新鮮な空気が肺一杯に満たしてくれるだろう。
こんな中で森林浴すればさぞや気持ちいいに違いない。

そこに、恐怖に顔を歪め死んでいる二つの死体さえなければ、だが。
もっとも僕はそんな事これっぽっちも気にならないのだが。

「ずみまぜん……迷惑かけてじまって……」
舞梨は涙を拭って僕に言う。
本当に迷惑だ。僕があの女を殺してからどれだけ経ったと思っているのか。
これからも人を殺すたびにこの様子じゃあ堪らない。
いくら強かろうが所詮中身は子供という事か。
貴重な戦力だからこの程度で捨てるなんて事は考えないが。
「構わないさ。何度も言っているように舞梨ちゃんは悪くない」
僕はそんな考えをおくびにも出さずに、舞梨に答える。
この答えも何度目になるのか。
幾ら言おうとも納得はせずに、全てを自分で背負おうとする。
他人が殺した心の痛みまで背負おうとするとはご苦労な事だ。
どうせ背負うならいつまでも引きずって欲しくなんてないんだけどね。
舞梨は謝りつつも一向に動き出す様子はない。
僕はじれったくなり、困ったような笑みを浮かべて舞梨に手を差し出した。
「さぁ、行こう。舞梨ちゃん?」
その行動に漸く僕の手を握って立ち上がる。
僕達はそのまま歩き出そうとし、盛大に後ろにひっくり返った。
576宝箱 ◆lYiZg.uHFE :2008/06/29(日) 02:08:21
どうやら荷物を持ちすぎたようだ。
襲ってきた女と『シスター』の荷物を片っ端から僕たちのバックパックに詰め込んだから重すぎたんだろう。
舞梨はまだ小学生、10kg以上も背中に背負っていたら流石にひっくり返るか。
僕はそれでも持ちきれない程ではないが、手を繋いでいたので倒れる舞梨に引っ張られ、一緒に転んでしまった。
まあそれでなくても体力を使う程には重いので、仕方ないから荷物の整理をする事にした。

「ぷっ……あははは、ちょっと重かったみたいですね」
「はは、そうだね」
さっきのドリフのようなズッコケに、舞梨はやっと持ち前の明るさを取り戻してきた。
不幸中に幸いという奴だ。
僕達は笑いながらバックパックを背中から下ろし、ジッパーを開く。まずは舞梨の荷物からだ。
最初に取り出したのは手榴弾。死んでいる二人の荷物になかったから舞梨の支給品の一つなのだろう。
次々と出てくるが、どうやら1つ1つが全部、閃光弾、焼夷弾、音響弾と種類が違うみたいだ。
ようは手榴弾セットといった所か。
「これ、どうする?」
僕は舞梨に聞く。僕としては持っておいたほうがいいと思うが、問題は舞梨の行動方針だ。
ぎりぎりまで説得をしたいと考えている以上、いざ行動に移すときには既に致命的なほど接近されているだろう。
そんな状況では使えないし、舞梨自身もこの武器を使うつもりはないだろう。
「あの……私はやっぱり出来るだけ説得したいのでそれは使えません」
案の定、だ。
「そう、か。それじゃここに置いて行こうか」
それに対して食い下がっても不信を煽るだけだから、とりあえずは舞梨にあわせる。
「でもコレなんかは使えると思うんだけど」
僕はそう言って発煙弾や催涙弾などの殺傷目的でない手榴弾を手にする。
わざわざ全部捨てる必要はない。
こんな物でも身を守るには十分だ。
「そうですね。じゃあそれは持ってますね」
発煙手榴弾、照明手榴弾、音響手榴弾、催涙手榴弾の四つを右側に―――持っていく物だ。
破片手榴弾、攻撃手榴弾、黄燐手榴弾、焼夷手榴弾の四つを左側に―――置いていく物だ。
それぞれ分けて置いた。
577宝箱 ◆lYiZg.uHFE :2008/06/29(日) 02:08:52
次に取り出したのはグロック26とその予備マガジン。
グロック26は軽めの銃だ。残弾数も予備含めて17発と申し分ない。右に置いておく。
次はマテバ 6 Unicaと357マグナム弾。
リボルバーという事で装弾数は少ないものの、それほど重くないので持っていてもいいだろう。右に置く。
次にベレッタM92と9mm.パラペラム弾だ。
重くもなく、装弾数も多く、残弾数も多い、とこれを置いていくのはアホの極みだろう。勿論右に置いておく。
最後にやたらでかい銃、パイファー・ツェリスカと予備弾を取り出す。
この銃はでかさに見合うだけの重量がある。持ってる感じ5、6kgぐらいあるだろう。
こんな物を戦闘中に上手く扱えると思えない。
勿論他に武器がなければこれも持っていくのだが、生憎銃器は有り余っている。
「舞梨ちゃん、これは置いていった方がいいんじゃないかな。重いし」
こういう持ち運びに疲れるだけで、あまり使わなそうなのは持っているだけ損だ。
僕はそう思い、舞梨に提案する。
本人もそう思っていたのか、快く頷いてくれた。
重量を減らす為に整理していたのだから当然といえば当然か。左側へ置く。
これで舞梨の荷物整理は終わった。しかしやたらと武器が多かったな。

次は僕の荷物だ。まずベネリM3を取り出す。
これも中々の重さだが貴重なショットガン、置いていくつもりはない。当然右へ。
次にコルト・ガバメントと.45口径弾。
主に舞梨に戦わせるつもりだとはいえ、僕も拳銃を持っていたほうがいいだろう。右へ。
続いてウェルロッド。
1発しか装弾できないといえ、分解して隠し持てるというのが利点だ。捨てるという選択肢はない。
もっともその利点も、あの女に使ってしまったため舞梨には通用しないのが痛いが。
舞梨へのアドバンテージにする為に、ベネリM3の方を使っておけばよかったかもしれない。
武器も増えたのだから、今後はどれを使うかもちゃんと考えよう。これも右へ。
最後に僕の荷物の中で一番重たい電子レンジだ。
なぜ僕はこんな重たいものを態々持って行こうとしたのだろう。
持っていっても疲れるだけだ、これは置いていこう。左へ。
578宝箱 ◆lYiZg.uHFE :2008/06/29(日) 02:09:22
とりあえずはこんなものだろう。どっちも大分軽量化された。
これならさっきのような事は起こらないだろう。
右に置いた持って行くものをそれぞれのバックパックに入れる。
後は出発するだけでいいのだが、攻撃に使える手榴弾を丸々置いていくのも勿体無い。
どうにか舞梨に気付かれないように回収したいが……。
ふと舞梨の方へ振り向く。
先ほどからチラチラと死体の方を見ているようだが、やはり完全には立ち直れていないのだろう。
流石にずっとひきずられたままではこっちとしても困る。
舞梨にこの女達の墓でも作らせて踏ん切りをつかせよう。
そういった行為は死者の為ではなく、生者の納得の為に行なうものだからな。
「舞梨ちゃん、やっぱり彼女達をこのままにしておくのもなんだし、簡易にお墓を作ってあげたらどうかな。
 死体を整えてあげて花を供えるだけでも、さ」
できるだけいい人に見えるように、そう演じる。
「僕もやってあげたいんだけど、やっぱり男に弄られるのも嫌だろうしね」
それに殺された相手にそんな事されても嬉しくないだろう、と苦笑して言う。
「だから僕はこの置いていく支給品を彼女達のバックパックにまとめておくよ」
舞梨が墓を作ってる間に、僕はこっそり手榴弾の一部を回収するわけだ。
それにその間にバックパックを使って罠を作っておきたい。
宝物に罠はつきものだ。
女と『シスター』のバックパックを取り、女の方にパイファー・ツェリスカと予備弾を入れる。
自分のバックパックにこっそり破片手榴弾、黄燐手榴弾を入れる。
579宝箱 ◆lYiZg.uHFE :2008/06/29(日) 02:09:52
そしてここからが本番、罠作成だ。
女のバックパックのジッパーを開き電子レンジを入れる。
バックパックの中で電子レンジを開ける。勿論中は狭いので少ししか開かない。
開けた電子レンジの扉と本体の隙間に焼夷手榴弾を挟み込む。
そうする事により、電子レンジはこれ以上開かず閉まらずに、焼夷手榴弾を固定してくれる。
続いて焼夷手榴弾の隣に攻撃手榴弾も置いておく。
ポケットから、ぐしゃぐしゃと丸めて突っ込んでいたカップ焼きそばの蓋を取り出し、クルクルと丸く巻いていく。
そして出来た紐の片端と焼夷手榴弾のピンと結びつける。
バックパックのジッパーを4分の3程閉めて、その隙間から紐のもう片端を外に出す。
もう片端はジッパーの取っ手についた穴に括りつけ、ジッパーを完全に閉じる。

これでバックパックの中を見ようとジッパーを開いた時に、紐に釣られてピンが外れるだろう。
まさか中にピンの外れた手榴弾が入ってるとは思わないだろうから、開けたら自動的にかかってくれるはずだ。
しかも焼夷弾が燃えてから、その火により攻撃手榴弾も炸裂という二段仕掛け。
まあ慎重な奴はかからないだろうが、別に構わない。
かかったらいいな、程度のものだ。

そろそろ舞梨の方も終わった頃だろうか、様子を見る。
舞梨が『シスター』の見開いた目を閉ざしてあげ、花を手に持たせて手を組ませていた。
「さようなら、名前も知らないお姉さん達」
目を瞑り手を合わせる。
僕も一応そこらに生えた花を抜いて死体の上に置き、形だけでも冥福を祈っておく。
それが終わったら、思惑通り舞梨は踏ん切りがついたようで
「陸朗さん、私、絶対に殺し合いを終わらせて見せます」
力強くそう宣言した。
ああ、僕も手伝ってあげるよ。
生存者が1人になれば殺し合いは終わるもんな。
内心を微塵も見せることなく、僕達は再び出発をした。

580宝箱 ◆lYiZg.uHFE :2008/06/29(日) 02:10:21
【一日目昼 D−3 森】

【靄場陸朗】
【装備】:ウェルロッド(銃弾13/20)
【所持品】:支給品一式、ベネリM3(銃弾20/21)、コルト・ガバメント(7/7)、.45口径弾(7)、破片手榴弾、黄燐手榴弾
【状態】:健康
【思考・行動】
基本:とりあえず全員殺そう
1:舞梨については今はもうただの高性能兵器としか思っていない
2:余裕があれば良質な『ネタ』を探したい

【甲坂舞梨】
【装備】:なし
【所持品】:支給品一式、グロック26(7/10+1)、マテバ 6 Unica(6/6)、357マグナム弾(12)、ベレッタM92(15/15)
9mm.パラペラム弾(32)、グロック26予備マガジン(10発)×1、発煙手榴弾、照明手榴弾、音響手榴弾、催涙手榴弾
【状態】:健康
【思考・行動】
基本:殺し合いを止めたいが、説得に応じない相手は殺すしか思いつかない。
1:靄場を信用している(信頼度70%)
2:けど、何か妙だ(疑心度30%)
[備考]:能力は超人的だが、何分子供なので極度の緊張や動揺には弱く、隙がそのときに生じてしまう

※D-3にあるピピンのバックパックを開けたら中の焼夷手榴弾と攻撃手榴弾が爆発します。
581宝箱 ◆lYiZg.uHFE :2008/06/29(日) 02:10:52
投下終了です
582名無し草:2008/06/29(日) 21:10:47
お、新作が二本も来てる。どっちも乙ですよ。

>『届かない言葉』
 他ロワではできない、メタフィクション要素を生かした展開がいい感じ。
 続きが楽しみになる話ってのは良いよね。

>『宝箱』
 二人合わせて殺害数を結構稼いでるコンビの筈なのに、妙にマイペースでイイ。
 レンジ爆弾は忘れた頃に悲劇を呼びそうな予感で楽しみ。
583名無し草:2008/06/30(月) 00:29:25
投下乙です。
エラい重装備ですね、この二人。
靄場は「かっこいい外道」としての地位を確立してきたような。
罠はかかりそうな参加者が多いだけに楽しみ。
584名無し草:2008/06/30(月) 02:11:23
104話までの色々まとめです

■初期支給品リスト
蒼井燕:ベレッタM92F(15/15)、ベレッタの予備弾薬40発、防弾チョッキ
靄場陸朗:サイレンサー搭載ウェルロッド(銃弾20/20)
アリス・ナイラーザ:リボルバー(残弾8発 予備16発)、メイド服
アルベルト・ハインリヒ:マグロ切り包丁
泉和哉:木刀、時限爆弾入りクマのヌイグルミ
泉遥:ステルスボール×5
伍宮瑞子:赤いペンキ、モゲラヨモギの汁(残量100%)×2、フーリエの聖書
ヴェーヌ:レイピア、不明支給品0〜3(ハンスと合計で0〜4個)
老本則夫:ベネリM3(銃弾21/21)
織田信長:三宮葉瑠菜の体操服、ピタゴラスの研究ノート「亜世界の存在の可能性について」
       鈴木万吉のノートパソコン(電源切れ)、真多秋生の手鏡
鍵谷絵理花:青酸カリ、煙玉3個
鍵谷幸一郎:不明支給品0〜3
鍵谷美和子:人力飛行機組み立てセット
ケネス・シルバー:肉切り包丁、H&K P7(18/18)
コードネーム『シスター』:コルト・ガバメント(7/7)、45口径弾(14)
甲坂舞梨:パイファー・ツェリスカ(5/5)、ツェリスカ予備弾5発、手榴弾セット
ゴキブロス:チャクラム、マイクロカメラ、ポーション(全てゴキブロスサイズ)
後藤戦:不明支給品(個数不明)
坂木杏:透視スコープ
坂木蕗:不明支給品2
坂木檀:ククリ、不明支給品2(武器ではない)
狭霧嘉麻屋:電動ノコギリ、不明支給品1
佐藤健:SIG Sauer P220(弾数:8/8)、予備マガジン×2、不明支給品0〜2
芝西湊:応急処置セット、不明支給品1
ジュリア:ツァスタバ CZ99(15/15)、SIG Sauer SP2340(12/12)、養命酒
      ツァスタバ CZ99のマガジン(3)、シグザウアー SP2340のマガジン(3)
585名無し草:2008/06/30(月) 02:11:54
周参見椿:狭霧嘉麻屋のハサミ、狭霧嘉麻屋のナイフ
鈴木イチロウ:ボウガン(残弾30発)不明支給品0〜1
鈴木次郎:電動ノコギリ、ピピンの実験薬
鈴木万吉:カレーの王子様、拡声器
鈴村佐知代:長谷部国重、ベレッタ(9/10)
捨流主麻亜太:支給品リスト、三徳包丁、坂木蕗のMDプレーヤー
スポポロス:剣四郎のヌンチャク
高原恭司:SPAS12(8/8)
高水奈々:狭霧のスペツナズナイフ、坂木檀のスクール水着、トリカブト三株
只野模武:おそらく自家発電機内蔵電子レンジ
剣四郎:ベレッタM92(15/15)、9mm.パラペラム弾(32)
剣時宗:大鎌
デンドロビウム:不明支給品1〜2
藤堂秀一:鉄扇
一一一:煙幕、不明支給品0〜2
ニャルロット:不明支給品1〜2
墓凪可憐:李飛龍の青龍刀
花子:闇のお守り、不明支給品0〜1(ゴリラに理解できない物)
晴海雪:ベレッタM92(15/15)、狭霧のナイフ、不明支給品1
日滝菅彦:トカレフTT-33(8/8)
ピタゴラス:デリンジャー(2/2)、.41リムファイアー弾(10/10)
ピピン:マテバ 6 Unica(6/6)、357マグナム弾(18)
フーリエ:アラモボーイ
ポー:ウィンチェスターM1897(5/5)、虫眼鏡、ノートパソコン
マイルズ:馬上鞭
マグナム・ハンス:南部十四年式拳銃(試作モデル)(8/8)、不明支給品0〜3(ヴェーヌと合計で0〜4個)
真多秋生:双眼鏡(100倍ズーム)、坂木蕗のネコ耳カチューシャ
松井垂加:毒サソリ、解毒剤×5
松井司:毒蜂
松井哲也:毒蛇
586名無し草:2008/06/30(月) 02:12:24
ミーウ:矢島泪のお守り、グロック19(15/15)
美以葉子:人間収縮装置
ミルフィーユ:不明支給品0〜1
桃太郎:ハルバード、不明支給品0〜2
矢島泪:スパナ
山田太郎:グロック26(10/10+1)、グロック26予備マガジン(10発)×1、不明支給品0〜不明
李飛龍:ヒョウ(17本)
リリー・アップル・塔野:ヘヴ山ゴッド子の杖、デジタルカメラ
ロアルド・アムンゼン(その1):ローラーボード
ロアルド・アムンゼン(その2):勇者スポポロスの剣、手斧
ロアルド・アムンゼン(その3):松井垂加の麻雀牌、坂木杏の居合模擬刀
ロバート・スコット:首輪探知機


■放置アイテム
B-2:剣四郎のバックパック、山田太郎のバックパック
B-2森林:坂木蕗の汚れたパンツ
B-3山林:カレーの王子様、拡声器
B-3森林:透視スコープ、ローラーボード、手斧、坂木杏のバックパック
B-8役場:松井垂加のバックパック、毒サソリの死骸
B-9雑貨屋内:佐藤健のバックパック
B-9民家付近:南部十四年式拳銃(試作モデル)(0/8)、レイピア、マグナム・ハンスのデイパック
         ヴェーヌのデイパック、藤堂秀一のデイパック、燃やされている鉄扇
C-1森林:高原恭司のバックパック、ロバート・スコットのバックパック
C-2森林:坂木蕗のバックパック(不明支給品2)
D-2洞窟内:只野模武のバックパック、老本則夫のバックパック
D-3森林:ピピンのバックパックと自家発電機内蔵電子レンジと焼夷手榴弾と攻撃手榴弾で出来た罠
      コードネーム『シスター』のバックパック、パイファー・ツェリスカ(4/5)、ツェリスカ予備弾5発
587名無し草:2008/06/30(月) 02:12:53
E-7民家前:肉切り包丁
E-7民家:刃先の欠けたヒョウ×3、マイルズのバックパック、マイルズが民家で回収した何か、馬上鞭
      佐藤健の不明支給品0〜2、SIG Sauer P220の予備マガジン×2、チャクラム(ゴキサイズ)
      SIG Sauer P220(弾数:0/8)、ボウガン(残弾28発)、鈴木イチロウの不明支給品0〜1
      鈴木イチロウのバックパック
F-8民家:ベレッタ(9/10)、ダイヤのイヤリング、鈴村佐知代のバックパック、スパナ、電動ノコギリ
      ピピンの実験薬(空)、鈴木次郎のバックパック、矢島泪のバックパック
F-3民家庭:作りかけの人力飛行機
F-5森林:アルベルト・ハインリヒのバックパック
F-6分校前:刃先が砕けた大鎌の刃
F-7:ケネス・シルバーのバックパック
G-4:マグロ切り包丁、トカレフTT-33(7/8)、アルベルト・ハインリヒの首、日滝菅彦のバックパック
G-7:麻雀牌2個
G-10海:剣四郎のヌンチャク
I-3平原:爆砕した電動ノコギリと爆砕した木刀
I-5診療所:痺れる程度の毒入り紅茶
I-7路上:坂木檀の唾液まみれのパンツ

E-7もしくはその周辺:後藤戦のバックパック(不明支給品個数不明)
F-6からF-3までの道程:先の尖った大鎌の柄


■不明支給品リスト
マグナム・ハンス+ヴェーヌ分(0〜4個):現在ジュリアが所持
鍵谷幸一郎分(0〜3個)
後藤戦分(0〜不明個):スタート地点に放置だと思われる
坂木蕗分(2個):C-2に放置
坂木檀分(2個):武器でない事が確定
狭霧嘉麻屋分(1個)
佐藤健分(0〜2個):E-7に放置
588名無し草:2008/06/30(月) 02:13:23
芝西湊分(1個)
鈴木イチロウ分(0〜1個):E-7に放置
デンドロビウム分(1〜2個)
一一一分(0〜2個)
ニャルロット分(1〜2個)
花子分(0〜1個):ゴリラに理解できない物と確定
晴海雪分(1個):現在狭霧が所持
ミルフィーユ分(0〜1個)
桃太郎分(0〜2個)
山田太郎分(0〜不明個):現在舞梨が所持


■気になった事
048 隣り合わせの死と青春 にてシグザウアーの残弾が減っていない。
051 静かな湖畔の森の影から にてファシルの支給品一式数が減ってない。
同話にてデリンジャーの弾数が増殖している。
063 人の為に、自分の為に にて坂木蕗のMDプレーヤー、支給品リストが行方不明。

■地図
ttp://takukyon.hp.infoseek.co.jp/cgi-bin/free_uploader/src/up0071.png
589名無し草:2008/06/30(月) 02:13:53
ついでに前回からの感想続きです

>第一回定時放送
最初の放送が終わり、参加者にどんな影響があるのでしょうか。
そしてアルベルトの娘の登場。またしても普通じゃないロリ。
アルベルトの性癖が窺えるいい作品でした。

>スーパー佐知代タイム
やはり危険な時でも女性は汗を気にするものなのでしょう。
風呂→ビール→テレビと殺し合いにあるまじきリラックスぶり。呆れるしかありません。
そして養父(おい)の死を知ったファシルの決意、これからどうなるんだろうと思った直後!
佐知代のムチプリダイナマイトな熟れた肉体に、エロGと厨房が悩殺。女性の全裸を見れて彼らも本望でしょうね。

>欺き欺かれて
なんと、好きな人の死により突然執行者という存在が発覚。すっかり欺かれてしまいました。
それにしても、脅されても屈しない強い心を持った椿。ミーウが好きになるのも当然ですね。
あと彼らが歴史の表舞台から抹殺された理由は今後明らかになるのでしょうか。楽しみです。

>英雄の条件
一緒に戦うことで友情が出来るというのは物語としてはもはや王道の展開です。
アムンゼンと一緒にいるのを嫌がっていた杏といえど、その例には漏れませんでした。
友情ゆえにアムンゼンに逃がされた杏が、深い絆でアムンゼンと再会するのも頷けます。
逃がして早々再開しちゃった照れ隠しにアムンゼンが思わず銃を撃ってしまうのも仕方がないですね。

>冷たい正義
正義を信じるものは、それゆえに正義という言葉に依存しがちです。
そう言った点においては宗教と似てるかもしれません。
神と正義、別々の信仰をもつ彼らが対立するのも無理はありませんね。
その対立が宗教戦争に発展しないようにただ祈るばかりです。
590名無し草:2008/06/30(月) 02:14:23
>君たちの知らない、いくつかの出来事
ロワのお約束というものを知っている故に、予想外の事に動く事が出来ない。
彼はいつ気付くのでしょうか。全ての書き手がセオリー通りに事を運ばせるわけではない事を。
そして杏の絆の強さに脱帽しました。会いたいと願う人物に次々会えるというのも良し悪しだと思うがね。

>もし戻れるならば
機微に疎く空気の読めない現代の若者である佐藤がこうなるのは避けられない結果なのでしょう。
もし彼がもっと真剣に殺し合いについて考えられる能力があればこうはならなかったのかもしれません。
これを読んでる皆様も殺し合いに巻き込まれた時は現実逃避をしないように気をつけてくださいね。

>無題3
精神状態により行動が左右されるというのは当然の事です。
冷静になり、今まで感じていなかった殺人への恐怖を抱いた檀はそれを克服する事ができるのでしょうか。
さらに幸運勇者スポポロスの驚きの結末。まさか国王がステルスマーダーだったとは思いませんでした。

>しすたあのなく頃に
比較的まともと思われた千恵原まで妄想に囚われるとは、予想外もいいところです。
やはりファシルの兄弟であり自分を空想のキャラだと妄想する万吉に出会ったのがいけなかったのでしょうね。

>俳優は希望を抱く
演じる事を得意とする俳優ですが、殆どはシナリオがあってその通りに動くだけです。
故に自ら思い通りの展開に動かしていく事が得意というわけではありません。
死を招く監督の仲間になった今、彼が役者としての本領を発揮できる事を期待しています。

>家に落書き
まさか蕗が二股をかけようとしていたとは、それとも秋生に飽きたから高原へ逃げようとしたのでしょうか。
いずれにせよ女性というものはやはり恐ろしいものです。
それにしても探偵団がヒュムノス語を習得しているとは、彼女達はレーヴァテイルなのかもしれませんね。
591名無し草:2008/06/30(月) 02:14:53
>おじいさんのおもいで
保護者というものは意外と大変なものです。
保護をする者として、キチンと子供に目をやっておくのは義務と言えます。
しかし、少し目を離しただけで子供が死んでしまうという事件が後を絶ちません。
悪戯盛りの少年から目を離してしまったのは湊の落ち度といえるでしょう。

>ドブネズミみたいに
現実でもそうであるように、ネガティブな考えというものは本来の実力を発揮するのを邪魔するものです。
また、自分の力を過信する人物も同様です。
自分をひたすら下に見るピピンに何もかもを背負おうとする舞梨。
そんな彼女らを、自分の実力を見極めている靄場が玩ぶというのは自然の流れなのでしょうね。

>ニードフル・シングス
このような状況に陥ったときにつり橋効果で恋愛感情を抱くというのは、物語の常套手段です。
ミーウもヴェーヌを失った反動で、なおの事椿を好きになるのは当然でしょう。
なのに重傷を負って、行為を寄せてくれるミーウを、空手有段者が有無を言わさず攻撃するとは、人は見た目に寄りませんね。

>ソードマスターファシル【完結篇】
相変わらずのフリーダムな佐知代、殺し合いの事などすっかり忘れているのでしょうか。
呑気にテレビなどみているから、楽しそうな番組に釣られた後藤と鉢合わせする羽目になるのです。
哀れ、佐知代はテレビを楽しむ後藤のおつまみになってしまいました。

>IMMACULATE
1対1で、且つ倒した駒を自分で使える将棋に例えたのが藤堂の敗因でしょう。
この殺し合いは敵の駒がどこにあるかも分からずに、建物の影からハンスの首が飛び込んでくる事だってあるのですから。
しかし藤堂流での戦いなら王を取られない限り敗北ではありません。
そしてこのロワにおいて『王』に近い職業の人物は一総理。彼の動向により藤堂の勝敗が決まるといえるでしょう。
592名無し草:2008/06/30(月) 02:15:23
>隠し砦の三馬鹿人
このタイトルはケネスと燕と時宗をさしているようにも見えますが、実はそうではない。
燕とケネスがバカだというのはもはや分かりきっていますが、最後の一人は絵理花の事を言っているのでしょう。
ぶりっこを演じる為に後手後手に回っていて思う通りにいかないのがその証拠ですね。

>正義の証明
3匹のお供を連れた桃太郎が次にする事といえば勿論鬼退治です。
正義の味方と悪の鬼が対峙するのは当然とは言え、結末まで同じになるとは限りません。
何せお供の犬が役立たずなのですから。猿と雉がその分頑張ってくれる事を祈っています。

>気づかれずに女の子をストーキングする方法
ステルスボールを使ってストーキングとは思いもよりませんでした。
もしこれが真多に渡ってしまったら大変な事になりますね。
しかし国王がステルスマーダーな上に国民はロリコンだらけだとは……悲しい国です。

>バトロワいいじゃないかっ
まさか楽しく生きる事から殺し合いを楽しくする事に鞍替えとは、恐ろしい思考の持ち主です。
毒を飲んじゃった人はSOSって事っさー、そのアイデアには流石の私もめがっさびっくりにょろ。

>無題4
流石のアムンゼンさんと蕗ちゃんも100話越えには祝わざるを得ないようですね。

>誰も誰かを救えない
意志の力は強いですが、意志だけではどうにもならない事もあります。
ですから、鬼を一方的に虐殺してきただけの桃太郎が本物の悪に敵わないのは仕方のない事なのかもしれません。
味方が足を引っ張ったことによりの敗北とは言え、やはり正義の反対はまた別の正義という事なのでしょう。

>真実の在処
ポーが空気扱いされている中、水面下で何をしてたかの話です。水中だけにな!
一人予約なので考察があると思ってましたが、探偵なだけあり頭脳は一定水準に達しているようですね。水中だけにな!
593名無し草:2008/06/30(月) 02:15:53
>届かない言葉
勇者に仲間はつきものです。占い師の次に仲間になったのは預言者。
それにしても勇者と遊び人×3に勝るとも劣らない偏りっぷりですね。
そういえばミルフィーユも呪術師でしたね。スポポロスは霊能呪術フェチなのでしょうか。

>宝箱
大当たりの宝箱とハズレの宝箱の選択というのはよくある話です。
こう言った場合、大当たりを手に取っても欲をかきすぎた人物がハズレまで手にしてなんて事になったりします。
このデイパックを見つける人物は欲深い者なのか、それとも欲無き者なのでしょうか。


というわけでまとめ&感想でした。
594名無し草:2008/06/30(月) 02:28:54
ちょwww感想の人色々乙ですwwww
595名無し草:2008/06/30(月) 02:33:32
超乙と言わざるを得ない
不明支給品もまだ結構ありますね
しかし信長の支給品は当たりなんだか外れなんだかw
596名無し草:2008/06/30(月) 02:56:19
なんかもう色々と乙っす!
597名無し草:2008/06/30(月) 03:06:42
ごめん、訂正

『初期支給品リスト』と『不明支給品リスト』の狭霧嘉麻屋の分の不明支給品はないや。
あと山田太郎の分のもない。

それにしても後藤がいたE-7とF-8は宝の山だ。
598名無し草:2008/06/30(月) 17:16:13
感想の人乙!水中だけにな!
599名無し草:2008/07/02(水) 01:49:42
杏の想い人って誰だったんだろう
普通に考えれば遥だが、久司みたいなキャラもいるのなら檀か蕗って可能性も……
600名無し草:2008/07/02(水) 07:26:44
さかぎけアブノーマルだな
601名無し草:2008/07/02(水) 07:32:25
松井凪だったりして…不参加だけど
602名無し草:2008/07/02(水) 10:36:56
檀はどう見ても度を越したブラコンだしな
603名無し草:2008/07/02(水) 11:52:47
ほかのロワに比べて家族が多いから、家族の悲劇や愛情が軸になるかと思ってたけど、あんまりなかったね……。
604名無し草:2008/07/02(水) 12:11:27
日滝先生ですね。わかります
605名無し草:2008/07/02(水) 12:53:35
むしろ家族参加者のせいで悲劇が加速されてるからな
家族の夢枕に立って「マーダーになれ」と唆した奴なんてなかなかいないぞw
606名無し草:2008/07/02(水) 21:09:11
用語集作成した人乙
そろそろ書き手紹介も欲しいかもね
607名無し草:2008/07/02(水) 22:40:52
ところでマップの1マスって結局縦横何メートルなんだっけ?
608名無し草:2008/07/02(水) 22:54:14
250m説と500m説とがあるけど、話題に出すたびにスルーされてる状態
せっかくだからYOU決めちゃいなYO!

ちなみに250mは狭くね? 500mでよくね? っていうのが最後に話題に出たときの主流だった
609名無し草:2008/07/02(水) 23:00:15
250mだと、学校周辺に溜まりすぎてるから難易度が激高くなる予感。

李飛龍・ミーウ・周参見椿・リリー・捨留主麻亜太組
ニャルロット・ミルフィーユ・一一一組
デンドロビウム・泉遥組
坂木檀・スポポロス組
アムンゼン3
ゴキブロス

とこんだけ集まってるからな。やっぱ500mでいいんじゃない?
610名無し草:2008/07/02(水) 23:32:59
下手すりゃ学校が序盤のクライマックスになるのか……
611名無し草:2008/07/02(水) 23:50:24
今1番空気なのって誰だろうな
ポーは除く
612名無し草:2008/07/02(水) 23:58:54
個人的には芝西&こーちゃん組が何してるんだか全然思い出せないくらい空気…
613名無し草:2008/07/03(木) 09:14:08
ちょっと町と町の距離が近いのが難点だなぁ。
人探しに町に行くキャラは多いけど、次の町まで距離がないからあんまり動かせない。
614名無し草:2008/07/05(土) 07:44:42
何か落ちそうなんでageとく
615バーニング:2008/07/06(日) 21:53:04
悪い奴ほどよく眠るという言葉がある。極悪人は己の犯した罪を全く悔いないから、殺めた者の悪夢を夢に見ないから、よく眠れると言う意味だ。
この男、狭霧嘉麻屋こそまさにそうだと言いたいところだが、実はそうであってそうではない。
これでは恐らく分かりにくいだろう。
だが、狭霧嘉麻屋にとって殺人は忘れられるものではない。無論罪の意識に苛まれるからではない。自分の手でその命を摘む瞬間は、忘れ難いほど愉しいものなのだ。
命は簡単に崩れ落ちる。たとえどんなに健康な人間でも、直径数mm大の穴が空いたりするだけで死ぬし、外傷が全くない人間でも、病気などで唐突に死ぬ。
人間の命はいつだって脆い。そんな人間が、食物連鎖の頂点に立てる所以は、彼らがどうしようもなく姑息だからだ。

――――短い人生の中、姑息に足掻くからだ。

私はあの集団を見逃した後に、民家に身を寄せていた。
一応この囚人服を噛み破り応急処置をしたものの、如何せんこれは気休めだ。
だが私は運がいい。200mほど北西に行くと民家が見えた。その民家は本当に好都合と言うべきだろうか。まず特出すべくは大きな工具用の倉庫が玄関のすぐ右に合ったことだ。
私は、壁にいかにもという感じに立て掛けられていたマチェーテ…日本で言う山刀(…まあ似て非なるものだが)を手に取る。
この刃はどちらかと言うと切れ味は良くない。だが、岩にぶつけても刃毀れがしにくい。
だが、それと対局するように錆びやすいらしいため、防錆を兼ねた潤滑油を吹きかけて手入れをする必要がある。どちらかと言うと日本で深く知られる山刀(日本刀と鍛え方が同じだから)
まあ贅沢はいえないだろう。私はそれを2本回収した。そして次に止血だ。
家屋に侵入し、台所に足を踏み入れた。リビングもそうだが生活観のかけらはまるでない。
冷蔵庫にあるのは、卵が10個とビニールに包まれたベーコンが数枚、そしてスパム缶が5つ。
私は熱の良く通るステンレス製のフライパンを強火で一気に熱し始める。だが、別にベーコンエッグが食いたいわけではないし、フライパンには油すら敷かれていない。
2分、3分、5分…ただひたすら私はフライパンを空焚きする。何をするか、普通の神経の人間には分からないだろう。

私は――――爆発により千切れた傷口から布を破くと、フライパンに押し付けた。
616バーニング:2008/07/06(日) 21:54:51
「……ぬぅぅう…………………」
文字通り肉の焼ける刺激臭に似た独特の臭い…人を一度生きたまま焼いたことはあるが、彼はその時この苦しみを味わったことだろうな。
普通の人間がこんなことをやるとショック死し兼ねないほどの痛みが、熱と共に伝わってくる。
熱の効率が低くなれば、再び熱し、傷口に擦り付ける。
骨は焼け焦げた。皮はさらに焦げ、真っ黒になってチリチリと落ちる。
激しい痛みが、終止符を迎える頃には、傷口ははっきり言って見られないものになっていた。脂肪が蒸発するような臭いが香ばしい。一応、数十分腕を冷蔵庫に突っ込んでおいた。
そうして傷口に、今度は不衛生な囚人服ではなく、衛生的な包帯を巻いておく。菌の侵入を防ぐためだ。
さて…もうこの家屋に用はないな。火を消さないままフライパンをコンロから退けると、リビングへ向かい、窓からカーテンを千切り、コンロに放り込む。そして潤滑油を半分程度それに撒き散らし、準備完了だ。
私がその家を出る頃には家の半分が燃えていた。もちろん煙も上がっている。
さあこれで少なくとも一人…いや二人はこの場に来るだろう…
私は誰かを殺したい。だがそれと同時に誰かに殺されたい。願わくば正義の手によりこの薄汚れた命が洗われん事を祈ろう。
全く…我ながら矛盾しているな……


【一日目昼 H-2 民家近く】

【狭霧嘉麻屋】
【状態】:片腕途中から欠損(傷を焼き潰して止血)
【装備】:マチェーテ
【所持品】:もう一本のマチェーテ、支給品一式 ×2 不明支給品×1(チョコパン一個消費、ヨーグルトパンのヨーグルトだけ消費)、マチェーテ用潤滑油、
【思考・行動】 基本:正義の実在を証明するため、姑息に、残酷に、無惨に、手段を選ばず殺し合う
1:遥という名の女を殺す。
2:自分を妥当する正義の襲撃をしばらく待つ(10数分しか待たない)

※狭霧はH-2の民家の一つに放火しました。数分で家中に火が回り、煙を上げて焼け落ちます。
617名無し草:2008/07/06(日) 21:56:34
ゲリラ投下させていただきました
あとボツキャラ一覧をWikiに作りたいんですが構いませんかね?
618名無し草:2008/07/06(日) 22:04:50
個人的にそんな簡単に刃物入手ってのはなぁ……
619名無し草:2008/07/06(日) 22:36:58
投下乙。
対主催ならツッコミ入れるけど、武器喪失したマーダーだし
どっかで入手エピソードは必要かな、と思ってた。
620名無し草:2008/07/06(日) 22:40:50
投下乙っす。
戦力が衰えた様子もなく、さらに殺しを加速させようとする様はさすが狭霧!

マーダーの武器の現地調達はロワでは普通かと。
逆に素手のほうが困るし。
621名無し草:2008/07/06(日) 23:01:24
う〜ん、そこら辺にいくらでも支給品が転がってるってのが1つ。
不明支給品があるから、そこから適当なのを出せるってのが1つ。
武器手にいれるだけの作品に見えるってのが1つ。
せめてマチェーテ1つだけにしておけってのが1つ。
現地調達にしても、まんま武器じゃなくて間に合わせ的なの作るとかもできるってのが1つ。

パッと思いついたこれだけの事から苦言を呈した。
622名無し草:2008/07/07(月) 19:17:49
ROMり率ほぼ100%には驚いたがパロロワスレでは普通か…
623♯あの世の桶屋:2008/07/09(水) 11:15:16
携帯から予約できるか分からんがジュリア、松井哲也、高水奈々で予約
624名無し草:2008/07/09(水) 11:16:10
できなんだ。
625 ◆lkmgpozbsU :2008/07/09(水) 11:38:23
よっしゃ! 俺に任せろ!
ポー予約ッ!
626 ◆lkmgpozbsU :2008/07/09(水) 11:42:01
そしてポー予約破棄ッ!

携帯でも予約可能である!
627名無し草:2008/07/09(水) 11:47:38
♯と#の違いですな!
628♯あの世の理髪師:2008/07/09(水) 14:31:12
改めてジュリア、松井哲也、高水奈々、ポー予約
629 ◆lkmgpozbsU :2008/07/09(水) 14:33:56
改めて予約。
何度も済まない。
630 ◆8THbCQ7qkY :2008/07/09(水) 15:07:50
何故か鳥被った…
改めて予約
631名無し草:2008/07/09(水) 20:09:49
あとは学校周辺か
632名無し草:2008/07/10(木) 00:06:13
うあ、したらばで予約被ってる…
よりによってあの人か…勿体無い…
633名無し草:2008/07/10(木) 00:18:30
マジか、ってマジだな
救いのない欝に定評のある氏だったら、どんな話になったんだろう
634名無し草:2008/07/10(木) 00:25:25
一応投下してきたけどハッキリ言って自信がない
635名無し草:2008/07/10(木) 00:42:37
投下乙。
面白かったよ。
正直に言えばこれ以上過去を複雑にするのかよと思ったし、一人くらい殺してくれてもとは思ったけど、
それでもちゃんとジュリアの心境は伝わってきたと思う。
今後にも期待したいな。
636名無し草:2008/07/10(木) 01:35:21
投下乙です。
哲也、いろいろと無茶しすぎだw
637名無し草:2008/07/10(木) 16:15:57
藤堂「火火火火やっと本気か 高水」
638 ◆d3hAP9FFr2 :2008/07/10(木) 20:12:57
投下します。
639フラグ青年M ◆d3hAP9FFr2 :2008/07/10(木) 20:15:39
深い森の中、俺は必死に次の行動を考えていた。

くそー、あの美少女セオリー無視か? いや、この際小さいセオリーは全て捨てて、
ロワ進行を円滑に進めるためにすることは何かを考えてみるべきか。

まず時間は第一回放送後、この時刻を書き手視点で考えるなら、
序盤の山場がすべて終了し、放送直前特有の殺し自重雰囲気を乗り越えて一気に人減らしが活性化するとき。
さらにあの美少女の行動はまさに急展開というべき行動のはず。
知人が放送で呼ばれたのであろうことはすでに推測済みである。
ならこの付近で起こるイベントの可能性は

1.死亡イベント直前である。
2.鬱展開の発生合図
3.対主催合流イベント

ぐらいか。
ただし一人で勝手に走り出すというマイナス方向の行動から考えると3はない。
どう考えてもロワ進行上において盛り上がる死亡、鬱イベントの発生だな。
そうなるとあの美少女に追いつくことは、自分自身の死亡イベント発生の可能性も高くなることになるか。

「……残念だけどあの美少女は諦めるか」

本当に残念だ。あの美少女が俺の彼女になる予定だったのになぁ。

「あのシスターの後には死亡フラグ付き美少女かー。
早く安全な恋愛フラグが欲しい所だぜー」

ふう。一通り愚痴ってすっきりしたし、さてどうしよう――
640フラグ青年M ◆d3hAP9FFr2 :2008/07/10(木) 20:16:46
「誰……?」

しまった! 思いっきり声に出してたぜ。もう一人美女のお姉さんがいたんだった。
まずはお姉さんの様子を確認する。しかしダメだ……思いっきり警戒されてる。

くっ、まずったな……もう少し警戒が解ける状態になってから声を掛けたかったんだけどな。
ん、まてよ……。
いや、これはチャンスだ!
俺の脳裏にキュピーンと閃くものがあった。うひひ、これで恋愛フラグゲットだぜ。

「お、お、おねーさん、ふひひ、け、警戒しないでよ。俺はゲームには乗ってないから」
「……」

無言な上さらに警戒されてしまった。
しかし大丈夫だ。今回の相手は病弱美女。人の助けは必ず必要になる。
ならこっちが多少怪しかろうが攻撃しない限り話を聞いてくれるはずだ。

「お、おねーさんは、さっき走っていった美……コホン。あの少女のことが心配なんでしょう?」
「……なんで蕗のこと知ってるの?」

返答があった。これはいい。こちらの真意を正そうとしている。
俺はお姉さんに協力するように見せかければいい。

「さ、さっきまで見ていたから……あ、誤解しないで欲しい。き、君たちが危険人物じゃないか観察していたんだ。
それで……大丈夫だと思って声を掛けようとしたら、あの少女が走っていったから声掛けそびれたんだ。
そ、それでさ、提案なんだけどさ。あの少女を追いかけよう。今のあの少女には人の助けが絶対必要だと思う。
お姉さんならきっと彼女を支えてあげられる。俺がお姉さんの足になってあげるからさ」
「……」
無言が続く。しまったな。もう少し言い方があったか?
もう20秒ぐらい黙ってる気がするぞ。
なんとかもう少し説得するべきか?
641フラグ青年M ◆d3hAP9FFr2 :2008/07/10(木) 20:19:00
「……本当に? お願いしていい?」

よしっ! 乗ってきた! 予想外のことでよっぽど慌てているな。
さっきまでの警戒がウソのようだぜ。
後は……



俺はできるだけ急ぐように装いながら、女性の車椅子に手をかける。

「分かった。じゃ、いくよ」
「お願い。早く追いつかないと。彼女に何かあるかわからないから」

大丈夫。きっとあの美少女は碌な目にはあってないから。
そう思いながら、俺は軽く車いすを押す。思った以上に力が要りそうな森の道に感謝だ。
後は怪しまれない程度にゆっくり車いすを押して追いつけないようにする。
できるだけ遅く、できればイベントがすべて終わった後にたどりつきたい。
イベント終了直後なら、さらに死亡イベント発生の可能性は低く、
また、脱出フラグになりそうな支給品を拾う可能性も出てくる。
さらにこのお姉さんの信頼も得られれば、燦然と輝く恋愛フラグもゲットできる!
一石3鳥ぐらいいきそうだ! やはり俺は最高だ! 俺って今輝いてるぜ!

「……ところで君の名前聞いてなかったね」

あ、そういえば基本中の基本。自己紹介をするのを忘れてたぜ。失敗失敗。
「お、おれの名前は鈴木万吉」

そういった途端、お姉さんの顔色が変わった気がする。
おい。まさか俺がマーダーとかいう誤解フラグ、まかれてないよな?
642フラグ青年M ◆d3hAP9FFr2 :2008/07/10(木) 20:20:56
「え? 万吉? ……まさか……私の名前は墓凪可憐よ。……わかる?」
「……え? なにが?」

いや、本当に分かりません。

「父親の名前が鈴木イチロウ、弟の名前が鈴木次郎だよね?」
「そ、そうだけど……?」

ま、まさか……

「私……君のいとこの墓凪可憐よ。君が5歳の時に会ったのが最後だから、忘れててもしょうがないけどね」
「……」
おい……

「良かった。知ってる人に会えて。……あ、ごめんなさい。
こんな殺し合いさせられる場所に呼び出されているのに喜んじゃって」
「……」
おい……

「……ぁ……まさか……もしかしてあの放送で呼ばれたのは……」
「ああ、親父だな。たぶん」
「……ごめんなさい」
「大丈夫。可憐が気にすることはないよ」
「でも……」
「いいんだ」
「……ありがとう」
頭が真っ白になりながらかろうじて受け答えをする。
その状態の俺を見て、可憐は俺に親父の死を思い出させてしまったとか思ったのだろう。
可憐は心配そうに振り返り、上目遣いで俺の顔を覗き込んでいる。
普段ならそれだけで舞い上がってしまう俺だが、今はそれ所ではない。
643フラグ青年M ◆d3hAP9FFr2 :2008/07/10(木) 20:22:51
「……大丈夫?」
「……あ……ああ」
思わず声が漏れるのはしょうがない、と思うことにする。

……ちょっとまて。同じ世界、しかも血縁者と序盤に出会ってさらに仲間になるなんて、
どう考えても惨劇、鬱展開発生フラグじゃないか!
美女だが従姉だし。血縁ですよ血縁。血がつながっているですよ奥さん!
やばいです。危険度MAXです!
脱出エンドでも、大抵は同一世界で一人ずつしか生還できなかったりするんですよ!


いやまて……
そうだ! 血縁だろうが従姉なら色々OK。恋愛フラグ立てて最後まで突っ走ってもOKだ!
相手はおそらく俺のことを信用し始めている。恋愛フラグを立てるには絶好の機会に他ならない!
くそう! 俺はどうしたらいい!

――俺はどうしたらいいんだー!!!!



「……本当に大丈夫?」
「ダイジョウブデス」

この問題はとりあえず後で考えることにしよう。今は近くに潜むイベントをどう乗り越えるかだ。
644フラグ青年M ◆d3hAP9FFr2 :2008/07/10(木) 20:23:41
【B-3・森/1日目 昼】

【墓凪可憐】
【装備】:李飛龍の青龍刀
【所持品】:支給品一式
【状態】:健康
【思考・行動】
 基本:殺し合いはしない。 万吉を信用し始めている?
1:蕗を追う
2:蕗を守る
3:蕗の家族を探しながら脱出する方法を考える。

【鈴木万吉】
【装備】なし
【所持品】支給品一式
【状態】健康
【思考・行動】
基本:恋愛フラグを立てて生還する!
1:怪しまれない程度に遅い速度で可憐と一緒に蕗を追う
2:恋愛フラグを育てる。
3:死亡フラグからは何があっても逃げる
4:何ロワイヤルなのかを考察する。
5:生活については帰ってから考える
645フラグ青年M ◆d3hAP9FFr2 :2008/07/10(木) 20:24:07
投下終了です。
646名無し草:2008/07/10(木) 20:29:28
>>645
投下乙です。
リアルタイムで投下されててビックリしましたよ。
ところでそろそろWiki編集してもいいかい?
ダメならしない。
647名無し草:2008/07/10(木) 20:58:36
よろしくお願いしまっす!
648名無し草:2008/07/10(木) 21:00:33
おっと、>>645投下乙。
万吉空気嫁としか言いようがないw
649名無し草:2008/07/10(木) 21:33:40
投下乙っす!
やっぱ万吉はアホだなぁ
上手く合流時間をずらしたのもナイスだぜ
650 ◆lYiZg.uHFE :2008/07/17(木) 23:11:45
李飛龍、ロアルド・アムンゼンその3、ジュリア、ゴキブロス、ミーウ、リリー・アップル・塔野、捨流主麻亜太、周参見椿、坂木檀、勇者スポポロスで予約させてもらいます。
651 ◆lYiZg.uHFE :2008/07/17(木) 23:19:28
あっ、すいません……避難所の方で予約被ってたのみたいなので予約撤回します。
652 ◆8THbCQ7qkY :2008/07/17(木) 23:30:18
>>651
もしかしたら破棄するかも知れないんで一応書いてください。お願いします。
氏のほうが書き手として勝ってると思われるので
653名無し草:2008/07/19(土) 11:13:36
一応朝の3時ごろに投下しておいたと言うべきだろうか
654名無し草:2008/07/19(土) 11:59:02
う〜ん……
655名無し草:2008/07/19(土) 12:06:28
>>654
やはりそうなるか
投下したのが避難所でよかったわ
656名無し草:2008/07/19(土) 17:13:27
麻亜太は物音を立てずに逃げようとしてたから、触手が麻亜太を狙ったのは修正が必要かな。
657名無し草:2008/07/19(土) 19:03:54
さすがにブラックホールはやりすぎなんじゃなかろうか
猫ヶ丘探偵団でそんな凶悪な能力は使えない気がする…
658名無し草:2008/07/19(土) 19:52:44
これは・・・どうなんだろう・・・・・・
659 ◆8THbCQ7qkY :2008/07/19(土) 20:24:27
ここで>>651の出番だと信じたい
パロロワに携わって力不足をただただ痛感させられたよ。3回ほど
660 ◆d3hAP9FFr2 :2008/07/19(土) 22:19:20
坂木蕗、花子、ロアルド・アムンゼン(その1)、ロアルド・アムンゼン(その2)
を予約します。
661名無し草:2008/07/19(土) 22:30:32
ついにアムンゼン同士が出会うのか!!w

>>659
破棄なり修正なり、対応をはっきり言ってくれたほうがありがたいと思います
蛇足ながら、今後も頑張っていただきたい
662 ◆d3hAP9FFr2 :2008/07/20(日) 06:59:42
投下します。
:side huki


今の心境を言葉で表すとしたら、たった一言で済むだろう。

――絶望

目の前で兄の体が――血に塗れ、片腕がなくなった兄の死体が無造作に転がっている。
近くには恐怖という言葉が姿形を持った、そんな存在がいた。

「フフフ、そんなに茫然としなくてもいいではないか」

アムンゼンはごく自然な動作で坂木杏の躯をけり飛ばす。
躯の向きが変わり、顔が蕗の方に向く。

その顔は青ざめ、血に濡れていることをさらに印象づけている。
口はだらしなく開いたまま。唾液が口の端から流れ、鈍く光る。
眼は目一杯見開かれ、しかしその瞳には光はない。

思考はその現実に追いつかない。いや、追いつくことを拒否している。
ついに立っていることすら叶わず、尻もちをつくように座り込む。

「おや、今度は逃げないのかね。まあ、その方が好都合だがね」

アムンゼンはゆっくりと近づいていく。そのことにすら反応できない。
もう、どうすることもできない。
絶望が、すべての感情を、行動を奪っていく。

――もう、どうでもいい
:side 1


連続して投げられる巨大な幹を避け、避けられなければ逸らし、しかしそれが限界だった。
杏を離脱させてなお、どうする事も出来ない実力差があった。
花子は不自由な足を引きづるようにしながら、それでも少しづつ近づいていく。
距離を開けなければ完全に捕えらえる。そうなれば、何もできず殺されるだけ。
だがアムンゼンは焦らない。
冷静に現状を見つめ、今、何がベストか考え続ける。
ここは戦場ではあるが、今、この場所にいるのは殺し合いのためではない。

「レディ! レディが怒っているのはわかる! だが少し待って――」

言葉は途中で遮られる。信じられないことが起きた。
花子の跳躍。足を怪我し、しかしそのすべてを無視した動きは一瞬にして彼我の距離を0にする。
直後振われた拳を氷の槍によって受け止め、しかし逸らし切れず吹き飛ばされる。
距離にして5mは跳ねとばされた。
地面に強烈に叩きつけられ、一瞬息が詰まる。
口から血は流れないことは幸いだ。まだ内臓に損傷はなさそうだ。

今の一連の流れではっきりと理解する。
自分の力量と相手の力量を測り、いまの状態で説得することは不可能であると。
勇気と無謀は違う。今行わなければいけないのは杏が逃げるまでの時間稼ぎだ。
そう、時間稼ぎ……!

少しづつ後退しつつ、ある考えが唐突に浮かび上がり――
一瞬の硬直が隙になる。

再び花子の跳躍。横に跳び回避。
しかし、そこには花子の拳が待つ。
また氷の槍で受け止めるが、その威力は氷の強度を凌駕する。
ついに氷の槍は砕け散った。
直撃――


今度は10mは吹き飛んだ。
最後の瞬間後方に自らとび、勢いを幾らか軽減できたが、それでもすでに左腕は使い物にならないだろう。
痛みが後から襲ってくる。

もはや残された道は戦術的撤退しかない。

花子の動きに注意しながら、しかし躊躇なく走り出す。
逃げる方向は坂木杏と同じ方向にする。
先ほど浮かんだ考え。
あのレディを撃ったクソッたれが、まだ近くにいる可能性に思い至ったからだ。
あれほどクレイジーなことをする野郎と杏が遭遇することがどれほど危険か。
急がなければならない。


戦略的撤退を強いられ、杏の元へ急ぐ。
すでに攻撃される距離ではないが、同時に逃げきれてもいない距離。
森の空気が血の臭いが混じるのを嗅ぎ取る。最悪を想定し、あえて足をそちらへと向ける。
可能性はあった。だが今まで考えるのをあえて止めていた可能性。
それがにわかに現実味を帯び、自身の油断と認識不足に歯がみをする。
視界が広くなった。
そこで目撃した光景を見たとき、意識は怒りへとシフトした。

そこにあったのは一つの死体、ここにきて初めて出会った少年の体。
足は撃ち抜かれ、片手は切り離されていた。
虚ろな躯となりはてていた。
そこまでは最悪の予測ではあるが、それでもそのこと自体はまだ予測範囲内だった。
だが、

その横には1組の男女がいた。

少女はぐったりと横になり、ぴくりとも動く気配を見せない。
男はけだるげに動くと、横に置いていた剣を取る。
声が聞こえる。
「さて、と、フキ。残念だがそろそろお別れだ」

その言葉にフキと呼ばれた少女は反応を示さない。
ただ息をしているだけ。生きているのはかろうじて分かった。
「ふん。完全に壊してしまったか? ま、いい」

それだけ言うと剣を振りかぶり、

「待て!」

声を上げる。せめて最悪を超えた最悪は止めなければならない。
それに反応し、振り上げた剣を止め、男は振り返る。
その顔を認識することで、眉間の皺を深くすることを止めることはできなかった。

「やあ、もう一人の軟弱な私。遅かった。実に遅かった。そう、すべてが終った後だ」

同じ顔をした並行世界のアムンゼン。
その所業に、怒りを抑えつけることができない。

「ユーはなにをした!……イカレタ平行世界のミーは――」

激昂に、しかしもう一人のアムンゼンは平然としたままだった。
「ふむ、この愚かな少年は確かに私が殺したな。
ああ、私のことを蔑んだ目で見ていたロバートも殺した。
そういえば、黄色いサルはもう一匹殺したなあ。確か……タカバラ? タカラバ?
ま、そんな名前だったよ。ほかには」
「もういい……ユーをこれ以上放っておくわけにはいかないことは分かった。
自分のしたことの後始末は自分でつける。
このクレイジーなクソ野郎!」

特攻。足に残った全ての力を速度へと変えて突進する。

「私がクレイジー……? 違うな、もう一人の私。……君が実に甘く、愚かなのだよ」

対してもう一人のアムンゼンは冷静にSPAS12を向ける。

だが、その交差は実際に行われることはなかった。
一つの咆哮に二人は同時に反応し、飛来する破壊槌を回避する。
:side hanako

あの男が二人いる。
そのことに花子は驚きはしなかった。
もとより、目の前の人間を殺すことだけが目的だった。
二人は争いをしているようだが関係ない。
ただ憎しみのまま殺す。それだけだった。
手始めにそこらの木を引き抜き投擲する。

二人はそれに反応する。避けられる。
ここまでは予測範囲。だから、一気に距離を詰める。
跳躍――
すでに足の痛みなど感じない。
二人の間に飛び込むと、両手を広げ旋回。二人ともまとめて吹き飛ばす。

回転を止め、敵を探そうとし背中に痛み。
「ちっ! 所詮は獣か」

声が聞こえる。
SPAS12の一撃が背中を叩き、一部は体内にまで食い込んでいる。
だが、そんなことは関係ない。
ただ、潰す。それだけである。

「うほっ!!!」
咆哮が響き、その振動は衝撃破となる。、銃を持った方を足止めする。
そのまま拳が届く距離まで詰め、ハンマーのような一撃を飛ばす。

剣でその一撃を受け止めた人間は、そのまま宙に跳ぶ。
その方向にはもう同じ姿形をした人間。
後方にいたもう一人とぶつかり二人ともバランスが崩れた。
計画通り。
後は丸太を投げるだけ。決して避けられない。
それで終わる。憎き顔した人間を殺すことができる。


ただ、それだけだったはずなのに――


足に、小さな手が触れられる。
気付かなかったが、足元に一人の人間がいた。
何も感情がない虚ろな表情で、手だけがこちらに触れている。
その人間は攻撃するわけでもなく、触れているだけである。
ゆえにその小ささ、その手の温もりを感じてしまう。
同時に自分の子供を思い出しそうになる。
その人間が、自分の子供に重なって見えた。

「うほっ」
威嚇する。だがその人間は動こうとしない。
殺さなければならない。今は子供のことを頭から追い出す。
先にこの人間を踏みつぶそう。
そう思い、片足を上げようとしたその時
「う……」
苦しむような一音、ただそれだけで行動が阻害される。
再び、思い出されるのは夫と子供。
子供を外敵から必死で守り、夫と寄り添って暮らしていた。
病気になった子供を抱き締め続けたのを思い出す。
そのころを思い出すと、少しだけ幸福な気持ちになる。
体に満ちていた力が減退している気がする。だが、一度思い出すと止まらない。

それが隙になった。
目の端に銃を構えた人間を捕えた。
すでに何度も食らった攻撃。その攻撃範囲も体で覚えている。
あの攻撃は足もとにいる人間も確実に巻き込む。

そう悟った時、また、その人間と自分の子供の姿が重なった。
似ても似つかないはずなのに、それは子供に見えてしまった。

そう思った時、体が勝手に動いていた。

発砲音がやけに遠くに聞こえてくる。
:side huki

「ああ……」
このゴリラはその身を盾にし、銃弾の雨から私を守った。
そうとしか思えなかった。そんな動きだった。
何故守られたかなんてわからない。
ただ、わかったのは、私を護ろうとした者はみんな死んでいくという事実だけ。
それもあの悪魔のような男によって。
お兄ちゃんも、高原君も、そしてこの子も……

心は空っぽになったはずだった。
もう何も感じないはずだった。
それでも――あの男は許せなかった。
どうしても許せなくなり。その心の闇は飛び火した。

助けに来ない可憐が許せなくなった。
助けに来ないお姉ちゃんが許せなくなった。
ここにいるすべての者が許せなかった。
ここにいないすべての者が許せなくなった。
許せない
許せない!
許せない!!
許せない!!!
許せない!!!!

心というタンクにある絶望という空の容器に、憎悪という液体が並々と注がれていく。
あっという間に満タンになり、なおあふれてくるそれ。
後は火花一つで燃え上がらせるだけだった。それだけで動くことができる。ではその方法は?

何かが目に入る。それはお守りの形をしていた。
一目でわかった。蕗はよく知っているお守りだった。
手を伸ばし、軽く触れる。
「ああ、そっか。あなたの気持ち分かったよ」
「う……ほ?」
このゴリラの心はまさしく憎悪に塗りつぶされていた。だからこのお守りは力を貸した。
だけど――

「……ああ、そうなんだ。それの本当の使い方、わからないんだね」
そう、これがただのお守りのはずがなかった。
これはヨモギーノ最強の武器であり盾であり鎧なのだから。

「私を守ってくれてありがとう。
あなたの気持ち、分かったから。痛いほどわかったから。
大丈夫だよ。あなたの恨み、私が引き受けたよ。
うん、そうだ。あの二人は私が必ず殺すから」
触れたお守りをゆっくりと掴む。
「だから、おやすみ」

目を閉じ、お守りをそっと取る。
その瞬間。あの子から急速に力が抜けていく。
ゆっくりとその体が傾いていく。
「う……ほ……」
私はゆっくりあの子をなでていく。
「……大丈夫……大丈夫……もう、怖くない。もう怖くないから」

あの子は眼を閉じる。
その表情は満足そうに見えた。
:side 2

突然動かなくなったゴリラ。
撃ったのは確かだが、とどめを刺すまでには至っていないはずだった。
とどめを刺したのはおそらく蕗だろう。
だが、どうやったのかはわからない。
隣の私は疑問を表情だしている。私も同じ表情だろう。今は状況を見守る。
そこに声がかけられる。

「ね、幸運勇者スポポロスって知ってる?」
それは蕗の声。今までは触れれば折れてしまいそうなか弱い少女だった。
今もその姿は変わらない。

「簡単にいうとね。勇者スポポロスがヨモギーノを倒すお話」
だが、なにかが違う。か弱い少女の雰囲気はすでになく、人形の雰囲気もまたなく、
先ほどあのゴリラに感じた感覚を、今、あの少女から感じる。

「最後はダークな終わり方だけど、概ね勧善懲悪なお話」
その言葉と共に服装が変わっていく。

「子供向けの番組だから、悪役は悪役のまま終わるんだけどね」
そこには先ほどまでの少女はいなかった。

「スポポロスの設定資料集にはね、子供には見せられないような裏設定も色々載ってるのよ」

――その右手には闇色の剣を持っている。

「モゲラッチョ・ヨモギーノが魔王になる前は、兄と二人暮らしの普通のヨモギ屋の看板娘だったのよ」

――その左手には闇色の盾を持っている。
「ただ、そのヨモギ屋の立地条件が良い場所で、地上げ屋が脅しを繰り返してね。
ついにはヨモギーノの兄を殺害し、ヨモギーノは○された。
その後、殺されかけた時に声をかけたのがヘル海サタン美。
その加護によってヨモギーノはその場にいた全員を殺し、
さらに関連する者を調べていくうちに、地上げを王様が扇動していたことを知ったの」

――その背には6対の闇色の翼を纏っている。

「だから、モゲラッチョ・ヨモギーノは魔王となってその国を潰そうとしたの」

瞬間、蕗の姿がかき消える。
いや、あの少女が出せるはずのない速度だった故、理解が追い付かなかっただけ。
悪く言うと油断だった。
体を動かそうと思う危機感すらマヒしていた。全く動くことができなかった。

「ね、今の私ってヨモギーノに似ていると思わない?」

背後から声が響く。
しかし金縛りに会ったように動くことができない。

「今、私はヘル海サタン美の加護を最大限受けている。加護の使い方も知ってる。
だから、こんなこともできるのよ」

ぼとり、と音がする。

私の左手親指、別の私の右手親指、それが切り取られずり落ちた音。
一拍遅れてひどく鋭く、熱さを伴う痛みがやってくる。

「あなたたちは、お兄ちゃんの敵、この子の敵。……だから」
:side none

もしアムンゼンたちが蕗の顔を見ることができたなら、微笑みを浮かべていたことに気づいただろう。
彼女がまるで騎士のように、闇の剣を正面に構えていることに気づいただろう。
しかしアムンゼンたちは動けない。今起こったことが理解できない。
あの今にも死にそうな、か弱い少女が行った事がいまだ理解できていない。

「私が考えられる限りの苦痛を与えてから殺してあげるね」

アムンゼンたちが全て理解し振り返ったとき、まさに魔王の宣告が下された。

【花子 死亡】
【残り 39人】


【B-3 森の中/1日目 昼】

【坂木蕗】
【装備】:闇のお守り(闇の剣、闇の盾、闇の翼を作り出しています)
【所持品】:なし
【状態】:深い絶望、激しい憎悪、ぱんつはいてない
【思考・行動】
 基本:皆殺し
1:アムンゼンならいたぶりながら殺す
2:参加者を全員殺す。
3:アルベルトを殺す。
備考:闇の剣、闇の盾、闇の翼の威力は負の感情の強さによって変わります
【ロアルド・アムンゼン(その1)】
【装備】:なし
【所持品】:支給品一式
【状態】:全身擦り傷、右手親指欠損 左腕骨折
【思考・行動】
 基本:アルベルトを倒す
 1:…………
 2:杏を弔う
 3:アルベルトを倒すための仲間と武器を探す

【ロアルド・アムンゼン(その2)】
【装備】:SPAS12(0/8)、勇者スポポロスの剣
【所持品】:支給品一式、首輪探知機、全身擦り傷
【状態】:右足に軽い凍傷、 左手親指欠損
【思考・行動】 基本:参加者を皆殺しにして、再び永遠の眠りにつく
 1:目の前の蕗から逃げる。
 2:平行世界の自分を苦しめて殺す
 3:見かけた人間を手段を選ばず殺す。なお少女なら犯した後に殺す



※杏の持ち物の内、透視スコープは杏の懐に、ローラーボードは遺体の近くに落ちています。
※手斧は杏の手ごと、遺体の近くに落ちています。

※闇の剣、闇の盾、闇の翼について
アニメでモゲラッチョ・ヨモギーノがスポポロスの決戦の際に取った
モゲラッチョ・ヨモギーノ最終戦闘形態。
その威力は闇のお守りと同様、所持者の悪意に反応して有限に上昇する。
ちなみに剣は攻撃力と技術、盾は防御力、翼は速度担当といえます。
また悪意が強ければ強いほど力が湧くが、善意が強くなると途端に力が弱くなります。
投下終了です。
サルさんくらったの初めてだ。
678名無し草:2008/07/20(日) 10:17:18
投下乙です
どんどんカオスになってゆく…だがそれがいい
679名無し草:2008/07/20(日) 12:27:42
投下乙。
って蕗ぃぃぃぃぃぃ!!w
まさかお守りが彼女に受け継がれるとは……
花子は南無
680名無し草:2008/07/20(日) 14:09:27
投下乙、ついに明かされるヨモギーノの真実……!
花子は最後にホロリと来るような事をするじゃないかw
アムンゼン同士の再会も気になるけど、1番気になるのは魔王蕗の今後だな
ともかくGJ!
681名無し草:2008/07/20(日) 20:56:27
一応避難所に投下したと言っておきます
682名無し草:2008/07/20(日) 23:59:08
まず、前のSSについて何か一言お願いします
683名無し草:2008/07/21(月) 00:10:00
ある意味ショックだったよ
684名無し草:2008/07/21(月) 00:25:25
そうだね、ショックだったね
685名無し草:2008/07/21(月) 03:02:12
ショックだったよ
686名無し草:2008/07/22(火) 13:24:35
本投下が無い以上、今回のSSと前回のSSについては破棄とみなしていいのかな?
687名無し草:2008/07/22(火) 18:35:21
いいよ
688名無し草:2008/07/22(火) 18:54:52
書き手さんの反応もないし、いいんじゃないか?
689名無し草:2008/07/22(火) 22:38:09
ところでだな、アム2は行間で……その……れ……げふんげふん
690名無し草:2008/07/22(火) 23:29:56
アム1も杏が気絶してる間になんかやってたのかもしれん
691名無し草:2008/07/22(火) 23:46:50
(その1)さんはそんなお人やない!
692名無し草:2008/07/23(水) 10:27:58
アム3は触手プレイ間近
693名無し草:2008/07/24(木) 19:30:05
>>689
俺も○されたとしか思えなかった……
そんな自分が嫌になる……
694名無し草:2008/07/26(土) 04:28:49
学校周辺はあの人が予約するかも……と、みんな手を出さないでいるのかな?
695名無し草:2008/07/26(土) 12:34:04
視聴率全体が下がっているわけだからTV離れは進んでるんだろうね。
696名無し草:2008/07/29(火) 20:06:20
「うわっ、足を滑らしたである!」

【ポー 死亡】
697名無し草:2008/07/29(火) 20:44:59
「デイパックが落ちている……」
 靄場はデイパックを開けた。

「おおっとテレポーター!」
*いしのなかにいる*

【靄場陸朗 消失】
【甲坂舞梨 消失】
【残り37人】
698 ◆Syk9Sx8L.s :2008/07/29(火) 21:33:56
ポー、松井哲也、アリス・ナイラーザ、真多秋生で予約します
699名無し草:2008/07/29(火) 22:09:48
お、ついにポーとアリスが再会かw
700名無し草:2008/07/29(火) 22:43:54
でも哲也の存在が危なすぎwwwww
701名無し草:2008/07/29(火) 22:44:33
リリー「私、ネタないし自殺でもしとくか」

【リリー 死亡】
702名無し草:2008/07/29(火) 23:27:55
そろそろ寒いと気付け
703名無し草:2008/07/29(火) 23:35:08
むしろ夏い
704名無し草:2008/07/29(火) 23:46:46
ザジネタぐらい流せよ
705名無し草:2008/07/30(水) 00:07:04
それがオリロワ住人クオリティ
706 ◆Syk9Sx8L.s :2008/07/31(木) 14:44:27
すいません、急な事情によって期限までに投下することができなくなったので破棄させて頂きたいです。
本当に申し訳ありません。
707名無し草:2008/07/31(木) 14:59:22
残念です、とはいえ最近の投下ペースからいって早々当該パートが埋まるとも思えないので
もしご都合があえば無予約投下をお待ちしております。
708名無し草:2008/08/03(日) 05:18:01
ここにも毒吐きにも人いないけど大丈夫か?このロワ
709名無し草:2008/08/03(日) 12:56:12
もうちょっと待って、来週中には投下するから
710名無し草:2008/08/03(日) 14:11:23
いちおう書いてはいる
711名無し草:2008/08/03(日) 20:02:19
>>708
せめて投下までのネタフリでもしろということですね

ttp://www.dotup.org/uploda/www.dotup.org17346.zip.html
ダウンロードパス:orirowa
解凍用パス:orirowa

絵なんて書けないから、あるソフト使って作ったもの。
まずかったらすぐに削除します。
突貫で作ったのでおかしいところあるだろうな。
このソフトでは男性キャラは作れません。残念だ。
712名無し草:2008/08/03(日) 20:26:27
>>711
まずいのかどうか私には分かりませんがまあこれだけは言わせてください


GJ!
713名無し草:2008/08/03(日) 20:55:52
>>711
これはGJ!いい感じに特徴が出てる
サッチーの美化率ふいたw
714名無し草:2008/08/03(日) 23:25:25
>>711
GJ!!
サッチー美化吹いたwww
遥とか坂木姉妹とか感じ出てますよ〜
715名無し草:2008/08/03(日) 23:38:56
>>711
GJ!
…えーと、盾と羽、例のところに来てるよ?
716名無し草:2008/08/04(月) 01:55:30
>>711氏に触発されて追加キャラなんか作ってみたり。
バグ狐・獅子娘・武士娘(和装が巫女服か格闘忍者しかない…)。

ttp://www.dotup.org/uploda/www.dotup.org17735.zip.html
717名無し草:2008/08/04(月) 01:59:31
あ、dlと解凍のパスは>>711氏と同じで。
718名無し草:2008/08/04(月) 02:05:16
>>716
げええええ!
俺の中の桃太郎像が一変した…やべえ、これ以上追い詰めるような展開が書けそうにねえ…
つかバグ狐エロ過ぎるだろJK…とにかくGJと言わざるを得ない!
719名無し草:2008/08/04(月) 02:30:11
ファイルシークで変換出来ないだとっ……
720名無し草:2008/08/04(月) 02:38:19
携帯じゃzip解凍できないでしょw
流れの速いろだだけど多分2,3日は大丈夫だから明日PCで見なさいなw
721名無し草:2008/08/04(月) 02:58:35
>>711 >>716
ここだからできる支援といった感じですね。いや素晴らしい。
他意なく素直に言うんだけど、科学の進歩ってのは凄いですな。
722名無し草:2008/08/04(月) 23:40:28
>>720
いや、最近のファイルシークはzipも解凍できるぞ
一応自分も携帯で試してみたが確かに途中で駄目だったな
723名無し草:2008/08/05(火) 12:06:34
だってpassかかってるし…
724名無し草:2008/08/09(土) 20:05:26
ところで>>711>>716って何だったの?
725名無し草:2008/08/09(土) 20:44:43
>>724
まあ残念だったとしか言いようがないな
726名無し草:2008/08/09(土) 21:22:17
>>725
そうか、残念な物だったのか。
じゃあいいや、ありがとう。
727名無し草:2008/08/09(土) 21:54:59
そうじゃなくてね
728名無し草:2008/08/11(月) 14:52:05
>>711>>716は大変なものを盗んでいきました…
>>724がエロスに目覚める可能性です
729名無し草:2008/08/12(火) 19:09:34
>>709-710の投下を待っている
730名無し草:2008/08/12(火) 20:39:21
すんません、夏風邪で腹痛がやばいんです
731名無し草:2008/08/13(水) 00:55:58
>>729
ごめんね、ゲームやっててごめんね。
だからあまり期待しないで。
732名無し草:2008/08/13(水) 22:45:56
絵もSSもかけないのが歯痒いが保守は出来るな
733名無し草:2008/08/14(木) 03:06:26
絵板を巡っていたら大乱交スマッシュブラジャーズの名前のスクリプト宣伝を見つけて噴いた
本文は痛々しい程ただの宣伝だったが
734名無し草:2008/08/15(金) 06:33:08
2ndは遠いか……
もし次があったら登場話を書けるのは、どこでもいいから2作以上書いた事ある人ってしたほうがいいね
735名無し草:2008/08/15(金) 20:14:18
お前は何を言ってるんだ?
736名無し草:2008/08/15(金) 21:23:31
あと5日で1ヶ月間投下なしなわけだが
737名無し草:2008/08/15(金) 21:30:35
登場話は問題になってないだろ。
唯一アレなのはモブと若本ズガンで貴重な枠が潰れた話くらいだよ。それも騒ぐほどの事ではない。
ミルニャルデンドロも、花子やゴキポーに続いたのもあって出落ち感があり文句は出たが、それほどでなかったし。
それに作数なんてあてにならんよ。
738名無し草:2008/08/15(金) 21:59:10
今となっては全てどうでもいいだろ
739名無し草:2008/08/15(金) 22:38:32
ラウンジクラシックでキャラ作りからやり直すという手もあるが
740名無し草:2008/08/15(金) 22:57:38
やり直すのか?
正直このまま続けられるかと言うのも微妙だが……

それなら新規+前回+前回没から40人って感じでいいと思うけどな
741名無し草:2008/08/15(金) 23:18:19
それを決めるのはスレの住民たち
やるとしたら今度は軽々しくズガンるのをちょっと自重したほうがいいかもな
742名無し草:2008/08/15(金) 23:32:23
未だに矢島泪とサッチーとヴェーヌがなんで死んだか理解出来ない自分が居る
743名無し草:2008/08/15(金) 23:35:45
なんにしてもここで全部手放すのはあまりにも惜しい動かしにくいキャラが多かったんだと思う
やるとしたら今すぐにでもそっちに立ててくるがもっと意見を聞かせて
744名無し草:2008/08/16(土) 00:49:20
2nd議論するなら、したらばにスレ立ててやったほうがいいんじゃ?
あそこならIDでるし。
745名無し草:2008/08/16(土) 01:22:49
746名無し草:2008/08/16(土) 10:13:53
数人の固定書き手氏たちはどう考えておられるのだろう?
747名無し草:2008/08/16(土) 10:14:11
投票で継続参加キャラを決めたらどうだ?
748名無し草:2008/08/16(土) 10:21:43
諦め早いよ。
今まで書いてくれた人を何だと思ってるんだろう。

書きにくくなってる問題点を改善して1stをなんとか完結させようって気はないの?

まず中央に街が多く、キャラも密集している点。
これは地図を一新して、バラバラに転移させればもんだい無し。
アルベルトなら気まぐれで、「ここから第2ステージです」とかもありだし。

次に、おいしいキャラがズガンされた点。
これはまぁ、ロワだししょうがないといえばしょうがないけど、気持ちはわかる。
ここでもアルベルトなら気まぐれで、
「ここから第2ステージなので、5人敗者復活させましょう」とか言いそうでしょ。
これでロワが活性化されるなら多少は許容されてもいいと思う。

749名無し草:2008/08/16(土) 10:32:26
>>748
その通りだよ。
でも復活はどうかと思うぞ。




だいたいリスタートで2nd始めたって新規キャラ入れにくいじゃないか
750名無し草:2008/08/16(土) 11:21:36
セカンドは全部新キャラでやるもんだと思ってた
せいぜい似たようなキャラが出るぐらいかなと
751名無し草:2008/08/16(土) 11:35:50
このゲーム終了後ってのはどうだろう

数個の平行世界において同一者で行われたゲーム(つまり1st)の優勝者数人(7人くらい)+新キャラ(35人)で42人ってのは
752名無し草:2008/08/16(土) 11:54:30
それは1stが終わってから議論することでは?
753名無し草:2008/08/16(土) 13:25:36
今さらだが分岐制にすれば良かったな
これならあの書き手も大した問題にならんかったし
754名無し草:2008/08/16(土) 20:08:45
ズガンが続いたこともあるけど、わけの分からない難解な設定が続出したことも原因の一つだと思うんだが
お互いの世界のことをアニメとして知ってるとか、同じ過去を持ってるはずなのに記憶が食い違ってたりとか
キャラを自由に設定できるからって、好き勝手やりすぎた
755名無し草:2008/08/16(土) 21:01:38
あの人はミーウとジュリアのアレをどうまとめるつもりだったんだろうか
第一ヴェーヌが死ななきゃあんな事態にもならんかったんだよな
マイルズの回想程度止まりだった筈
756名無し草:2008/08/16(土) 21:16:10
アニメ設定は他の書き手が上手いこと纏めてくれたが、記憶違いは纏めようがあるかな……
757名無し草:2008/08/16(土) 21:43:34
うまいことまとめたってか、こじつけたって感じだよね
まあ今さら言ってもしょうがないが
758名無し草:2008/08/16(土) 21:56:49
お互いアニメぐらいならまだしも、
マルチエンドのゲームじゃあるまいし世界によって中身が異なってたりしてんのがややこしい
759 ◆d3hAP9FFr2 :2008/08/17(日) 06:56:00
投下します。
「さて」
舞台を教室の一つに移し、私――捨流主麻亜太は口を開く。

「差し迫った危険についての情報交換は済みました。だが、すべての情報を共有できたわけではない。
まずは自分が知っていること、特にここにいる他の参加者について話すべきだろう」

その言葉にほぼ全員(狐だけは何を考えているかわからない)居住まいを正す。
情報、その価値はある意味、金などよりよほど価値があるもの。
人の弱みなども少ない情報をつなぎ合わせることで分かってくる。ゆえに私は情報の開示を求める。
この行動には私の職業が探偵であることがプラスに作用しているだろう。
ほぼ全員が前向きに検討している。後は情報開示のテンプレートを用意するだけだ。

「まずは私からだな。改めて、名前は捨流主麻亜太。職業探偵。
腕っ節には自信はないが、私の武器はこの頭だな。
次にこの場に知り合いは……」

すでに覚えた参加者名簿を新ためて見直す――フリをする。
一度見た者を完全に記憶する、そのような特技のことはあえて伏せておく。
嘘は言ってない、しかし完全に本当のことを言っているわけでもない。
自分が持つ情報について伝える範囲は、支障のない程度に少なくする。

「一人は真多秋生。この男は私の依頼人だったことがある。
どのような調査か具体的にいうことは、彼のプライバシーに関わることなのでいうことはできない。
ただ言えることは殺し合いには向かない性格。……だが実際今どうなっているかまではわからない」

一旦区切って全員の顔を見る。狐以外は真面目に聞いている。
狐は……興味ないフリかも知れないし、そうではないかもしれない。

「坂木杏、坂木蕗、坂木檀、泉和哉、泉遥、高原恭司、日滝菅彦。
いずれも調査対象だった人間と、その周りの人間たちだ。
高原恭司と日滝菅彦はすでに死んでいるな。
放送で呼ばれなかった中では泉和哉は小学生。他は高校生だ」
「最後に、一一一はおそらく現総理大臣だな……なんだ全員知らないのか?
ならばここにいる中で、私は君たちとは違う世界から来た可能性が高いな。
以上だ。さて次は……?」

一気に言い切る。これでどこまでいうかの目安にはなるだろう。


すぐに目の前で李飛龍が手を挙げる。

「では次は俺だな。李飛龍。職業、といえるものはない。武者修行中だった。
路銀を稼ぐためにボディーガードのようなことはしていたがな。
腕に自信はあるが、触手男は例外だな。自身の未熟さを痛感した。
知り合いは……うむ、何人かいるな」

ふむ、やはり拳法家かなにかか。この強さは使えるか?

「一人はピピン。1年前、武者修行中熊に襲われていたのを助けた。あの時14歳程度の外見の少女だったな。
自分のことをデーヴァ星人だとか言っていた電波だ。
結局半年ほど勝手についてきて、いい加減相手するのが疲れたので適当な街においてきてそれっきりだ。
……む、なんだその眼は。なに、強ければ生きていけるし、弱ければ死ぬだけだ。
ピピンについては確かに心は弱いが、戦闘力という意味での強さは中々のものだったぞ。
死ぬことはないだろうと思っていた。ここに名前があるということは実際死んでいなかったのだろう。
殺し合いに乗っているかは……わからんな」

……ふむ。人を助ける情はあるが、容赦はないか。扱い注意か?

「もう一人はマグナム・ハンス。これは武者修行の際に戦った相手だ。
プロレスのヒール役で腕は確かだった。
ただ、ひそかに小心者でな。この状況下でどうしているかはわからんな。
以上だ」
次に手を挙げたのは周参見椿。傍目にもまだショックを引きずっているようだ。

「次は私ね……周参見椿。職業、高校生。
空手を習ってる。でも李さん程の強さは期待しないでね。
友達は、矢島泪……でも、もう……」

「ああ、いいよ。それ以上は言わなくていい」

すでに分かっていること、これ以上の進展はないだろう。
他の事を言わせたほうがいいだろう。
周参見はしばらく沈黙を保っていたが……

「後は……鈴木万吉。でも泪から聞いただけだから名前しか知らない」

残念ながら情報なし。あまり役には立たない少女かもしれん。

「次はあたしね」

遮るように狐が言う。ふむ、周参見に対する気遣いだろうか。
今までの行動から察すると、周参見に対して保護と同時に依存の傾向がみられる。
周参見を使えば色々と駒に出来るかも知れない。

「名前はミーウ。職業、店の会計係。お腹がこんな状態だし戦うのは無理。
知り合いはヴェーヌとジュリア。終わり」

なるほど、本当に最小限しか教えない……か。
できれば知り合いが危険人物かどうか知りたかったが、雰囲気が拒絶に意志を示している。
けが人ではあるし、最低限の警戒ですむかと思ったが、警戒レベルを上げるべきか。
この状況下、この中では一番人を信用していないな。
取扱い注意。周参見しだいで暴発する恐れあり、だな。
「あ。最後は私ですね」
最後に手をあげたのは先ほどまでの同行者だった。

「リリー・アップル・塔野。職業、高校生
知り合いは……結構いるみたい」

参加者名簿を見ながら話していく。

「まずはアリス・ナイラーザ。私と同じ高校生。運動苦手だからできれば早く見つけたい。
ニャルロットさん。外見猫の探偵さん。結構強いから心配はあまりしてないよ。
ポー。アリスのペットのペンギン。喋るけど、外見ただのペンギンよ。
芝西湊。ただの同級生の男性……え、なに? ええ、"ただ"の同級生よ。
……まずここまでは殺し合いにのってないと思う。
次に狭霧嘉麻屋。有名な殺人鬼で、今回もきっと殺し合いに乗ってると思う」

狭霧嘉麻屋か……聞いたことはないな。
全員が似たような表情をしていることにリリーは気づいたのか言葉を付け足す。

「えーと。 狭霧のことだれも知らないの?
そうか……私もここにいる中ではみんなとは違う世界から来た可能性が高いのね。
……あ、と、いうことは一応言っとかないといけないのかな」

リリーは私に視線を向ける。なんのことかわからないが情報を勝手にだすのだ。
頷いておいた。

「私とアリス、一応ニャルロットとポーも……かな。いや、猫やペンギンがしゃべる時点で普通じゃないからいいか。
ま、ともかく私とアリスについてね。私たちは割と普通じゃない能力を持っているの。
たとえば私は」

そう言って、リリーは机に置いていたバッグを触れることなく引き寄せる。
「こんな風に私自身に物を引き寄せたり、物と物を引き寄せることができるの。
一応、他の人の体にも有効だけど、その効き目はぐんと落ちるし、
距離があってもパワー自体が落ちてしまうの」

そういってリリーは見回す。その挙動は警戒か、恐れ。
ふむ、私たちの能力についての反応を怖がっている節ありか。
能力に対するトラウマでもあるのだろうな。
そう考えていると、李がリリーに声をかける。

「何、力を怖がることはない。少々便利な機能があるとでも思えばよいのだ。
それにピピンも似たような能力を持っていた。少なくても一人ではない」

「あ、ありがとうございます」
少し顔を赤くしながらリリーは言っていた。李……お前実は天然タラシだったりするのか?
いや、今のところどうでもいい情報だな。

リリーが言葉を続ける。

「アリスについては……これから言うことを、
実際アリスに会った時、必ずリリー・アップル・塔野から教わったって言って下さい。
これはアリスにとっても難しい話、でも知らないといらない誤解を与えそうなことだから」

皆が頷くことを確認してからリリーは言葉を続ける。
「アリスは人の感情を常時見ているの」

……どういうことだ? 察する力が高いという意味か?
それぐらいなら探偵にとって必須な技能だが。

「感情が見える?」
李が聞き返す。それにリリーは頷き淡々と答える。

「うん。例えば、喜ぶ、怒る、悲しむ、楽しむみたいな単純な感情だけじゃなくて、
相手が"嘘をついてる"、とか"殺意を持っている"とかそういった複雑な感情が……本人いわく色で見えるって言ってた。
だから……"嘘つく"も、もしくは"嘘は付いていないけど隠し事はしている"とか、隠していてもアリスには分かる」

ふむ……本当ならそれはまずいな。私のような人間にとって天敵だ。
これはアリスを探すのはできれば止めにしたいが……

「普段アリスはこのことを隠してるけど、たまに裏表のない人間に会ったりすると、ぽろっとその事を言うこともあるのよ。
まったく、変なのに捕まってなければいいけど……」

いつも間にかアリスへの心配に変わっていったリリーの言葉を、李が遮るように話す。

「なるほど、それはいい人材だな。うまくいけばアルベルトが何を考えているかがわかるかもしれん。
必ず見つけ出そう」
「ええ……それに早く他の人も見つけたいです」

やはりそういう流れになるか。
さて……と、心の中で呟く。なかなか厄介な能力だな……できれば合流したくない人間だ。
だが、阻止するように動くのは不自然か。
惜しいが全員で行動するとアリスが見つかった際には一瞬にして不利になってしまうな。
ならばやることは一つか。
私はあえて口を出して話をまとめることにする。
「以上で終わりだな。次にこれからの方針を決めよう。
まずはアリス君を含む仲間になりそうな人材を探す。
この役は李とリリーの二人に任せる」

「二人で探索をするということか?」
李が聞き返してくる。もっともな疑問だがすでに答えは用意してある。

「ああ、この中で戦闘力が高いのが君たち二人だ。大抵のことは独力で何とかなるだろう。
それにミーウさんの怪我のことがある以上、全員で動くのは効率的ではない。
だからここにも誰か残っていなければならない。
最悪逃げることがあれば、けが人を抱えるための人員が必要だろうからな。
その役は周参見と私が行う」

一見すると戦闘力や人間関係を考慮した役割分担に見えるはず。
私が逃げない、という前提があればこそだが。

「なるほど……」
李が納得の頷きをするのを待って回りを見回す。

「集合時間は18時、ここに集合できないときには……E−5の展望台に24時までに集合。
また、さらに禁止エリアになった場合、一つ南のエリアに集合場所を変更する。
以上でいいか?」

うなずく面々。最後に荷物の分配をする。
荷物のうち重くなりそうなものは学校に残す。
武器は積極的に活動組に。ただし最低限の武器はこちらに残すのも忘れない。
自分の身を守る分の武器は欲しい。
「では行ってくる」
「行ってきます」

「ああ、無理はするな」

リリーと李の二人を見送りながら、しかし考えることはたくさんある。
……とりあえずこれで急場をしのげるか。もしアリスが合流することがあれば、私の立場が危うくなる。
それに居残り組の不安要素はミーウだ。敵が来ればさっさと置いて逃げるつもりだが……行動が読めない。
さっきまでの話に積極的にかかわらないのも不気味である。
周参見が危ないことにならなければ大丈夫だろうが……。
まあいい。後はここから逃げるか留まるか、ゆっくり考えるとしよう。

【F-6・学校外/一日目/昼】

【李飛龍】
[状態]:首に痣
[装備]:ヒョウ(14本)
[道具]:支給品一式、、人間収縮機(後藤戦に対し約8時間使用不可能)、民家で回収した何か
[思考]:このゲームを転覆させるッ!
1:強い意志、正義の心を持つ者には協力する
2:たとえ刺し違えてでも触手男を斃す
3:リリーとともにアリスその他を探す。


【リリー・アップル・塔野】
【状態】:健康
【装備】:三得包丁 、狭霧嘉麻屋のハサミ
【所持品】:支給品一式、デジタルカメラ 不明支給品なし
【思考・行動】
基本:殺しあいを止める。打倒アルベルト。
1:アリス・ナイラーザ、及び殺し合いに乗っていない人物を探す。
2:李飛龍とともにアリスその他を探す。
【F-6・学校教室/一日目/昼】

【周参見 椿】
【状態】:正常
【装備】:狭霧嘉麻屋のナイフ
【所持品】:支給品一式、サンポール、生臭い赤い液体が入った袋、救急箱(マキロン、ガーゼ、包帯、風邪薬)多量の食料
【思考・行動】 基本:生き残る
1:ゴキブロスの無事を祈る
2:学校で待機


【ミーウ】
【状態】:覚醒、下腹部に風穴(治療済、内臓は外れている)
【装備】:矢島泪のお守り、グロック19(13/15)
【所持品】:支給品一式
【思考・行動】 基本:椿を守る
(椿が死んでしまったらゲームに乗り、優勝してアルベルトの元へ行って復讐する。この事は椿にも李にも伝えるつもりは無い)
1:しばらくは李に合わせて行動する
2:リリーと捨流主は少しでも怪しい真似をしたら撃ち殺す
3:学校で待機

【捨流主麻亜太】
【状態】:健康
【装備】:ヘヴ山ゴッド子の杖
【所持品】:支給品一式 不明支給品なし
【思考・行動】
基本:他人を利用して生き残る(ステルスマーダー)
1:このチームから離脱するか考える
2:人数を減らしつつチームを消耗させる
3:学校で待機してこれからのことを考える。
投下終了です。
770名無し草:2008/08/17(日) 19:03:22
久々の投下乙です。
大集団がひとまず分断されましたね。

しかし、知り合いや出会った人がことごとく死んでる李さん……
771名無し草:2008/08/19(火) 11:11:15
しかし誰も感想書かないな。
1stを盛り上げる気が無いんだったら、2ndを始めても問題ないね?
772名無し草:2008/08/19(火) 16:06:01
1stがこの惨状じゃ2ndだって無理だと思うけどな
773名無し草:2008/08/20(水) 01:06:17
通りすがりだがオリキャラだから愛着湧かないからかなぁ・・・・・・
ゴキブロスあたりはポケモン板でたまに見かけるから湧くが
774 ◆EGv2prCtI. :2008/08/20(水) 03:47:49
ゲリラ初投下
775黒の礁湖 ◆EGv2prCtI. :2008/08/20(水) 03:48:52
 ミルフィーユが用を足すと言って二人から離れてから既に二分が経過していた。
 本来ならばすぐにでも泉遥とデンドロビウム(特に、こいつは)を探さなければならない状況だったが――どうやって何の手段も持たずに透明人間など見つけ出せと?
 当座、そんな道具も能力も誰も持っていないのだ。

 ニャルロットは耳を下ろし、神経質に尻尾を揺らしながら再び溜息をついた。
 これは本当にまずいと。
 依頼人であるデンドロビウムの生死はニャルロットの探偵としての威厳と名誉に関わるのだ。
 あのデンドロビウムの状態からして冷静な判断は出来ないのは目に見えている。
 人から見えないのならば襲われる心配はまず無い。その点については大丈夫だった。
 しかし――あの娘、遥が錯乱してデンドロビウムに襲い掛かったり、或いは、何かの拍子に見つかったら?
 デンドロビウムは遥を説得しようとしたり、遥を守ろうとするだろう。
 少なくとも、逃げようとはしない筈だ。そして、それは――

 とにかく、その点だけが気掛かりで、ニャルロットは目を細めてもう一度大きく尻尾を横に動かした。
 本当に、生き残ったら依頼料をふんだくってやる。
776黒の礁湖 ◆EGv2prCtI. :2008/08/20(水) 03:50:03

「ニャルロットさん」
 隣の大柄な男、一一一総理がふいに話しかけてきた。
 ――?
 ニャルロットは、一瞬間を置いてから、返した。
「にゃんだ?」
「これは言わなければならないと思う」
 一一の顔は、かなり深刻そうに見えた。


 ミルフィーユの本性と末路。
 それを話し終えたところで、一一は区切った。
「遥ちゃんから、そう聞いたんだ」
 あのミルフィーユの裏の顔は実際そうなのだろうか?
 ニャルロットは思考を続け、ある結論に至る。
「ワガハイにはあいつからは殺気にゃんて感じられにゃいが」
 殺気はどんな一流の犯罪者だろうと完全に抑え切ることは出来ない(狭霧は別だ。あいつは常に殺意モロ出しだから)。
 視線や表情を見ればすぐ分かることだ。
 ミルフィーユには、少なくともそれが見当たらなかった。
 アリス・ナイラーザが持っていた能力とは違うが、しかし、ここ五十年近く培われたニャルロットの洞察力はそれにも負けない程のものになっていた――筈だ。
 しかし、それならば――

「しかしその話も嘘とは思えにゃい」
 一一は、ただ黙ってそれを聞いていた。
「だから、その遥が言っているミルフィーユはアルベルトの言っていた平行世界のミルフィーユにょ可にょう性もある」
777黒の礁湖 ◆EGv2prCtI. :2008/08/20(水) 03:51:46
 続けて、実際ミルフィーユがどうなのかはわからない。そう言おうとした。
 しかしニャルロットは口を開こうとし――
 物音を耳に捉えた。
 毛を逆立て、ニャルロットは素早くその方向へ視線を向けた。
 一一もそれにつられて首を回した、様だった。
 あちらの数十メートル離れた民家からだろうか?
 方向はそちらで合っている。
 その内に、民家のドアが音を立てて開いた。
 そこから血にまみれた……

「あ――」
 後ろから声が、聞こえた。
 ニャルロットと一一は同じタイミングで、素早く振り返った。
 その声は二人の背後に居た、いつの間にか戻っていたらしいミルフィーユのものだった。
 いや、今はそれどころではない。
 ミルフィーユも、たった今見えたあれを見て驚愕の表情を浮かべているのだろう。

 その、民家の玄関から出てきた人物。
 恐らく、男だ。
 やたら服を着込んでいるのが目に入ったがしかしそれよりニャルロット達の目を引いたのは、そんなことではなかった。
 ――明らかに左腕が消失していた。
 赤く染まり、光沢を持った服から見て、腕を失ったのはつい先程と見て間違いはないらしい。
 いや、しかしそれならば――何故男は普通に歩いていられる?
 まるでまだ腕が存在するかのようにバランスを取れているではないか。
778黒の礁湖 ◆EGv2prCtI. :2008/08/20(水) 03:53:20
「大丈夫ですか!?」
 一一が飛び出そうとしたが、それを直ぐにニャルロットが尻尾で制した。
「総理、待て!」
 何か、裏がある。
 罠ではないにしろ、ニャルロットの第六感に危険を感知させる、重大な何か、が。
「様子がおかしい」
 とにかく慎重になるべきだった。
 今危ないのは男ではない、圧倒的に自分達だ。
 ――そんな悪寒がした。


「ジェントルマン!」
 多分、背の高い一一しか見えてないのだろう。
 そう叫んだ男はこちらに近付いて来た。
 いや、それよりなにより、男は何事もなかったかのようにピンピンしているではないか。
 そのまま男はすぐ目の前まで近付いてきたが、依然、ニャルロットは警戒を解かなかった。
「おさげの髪のレディを見掛けませんでしたか?」
 一一も、ニャルロットも、ミルフィーユもみんな首を横に振った。
「いや」
「私はロアルド・アムンゼン。とは言え、残念ながら今は時間がありません。しかしあなた達に伝えておかなければならないことがあります」
779黒の礁湖 ◆EGv2prCtI. :2008/08/20(水) 03:54:35
――
 アムンゼンの説明を聞き、一度民家に行って灰塵となったそれを一同は見ていた。
 焼き殺したとも言えないその死体から、あながちその化け物の話にも信憑性はあった。
 そんな化け物に会ったのだから、今更喋る猫であるニャルロットに関してもやはり驚かないのだろう。
 民家の玄関前まで戻ると、アムンゼンが告げた。
「私もいつか、この人間のように化け物に操られてしまうかも知れません。その前に、レディ達を見つけ――」
 そこで突然アムンゼンは一旦口を止め、血相を変えて顔を左肩に向けた。
 もしかして傷が痛んだのだろうか。
 一一は呑気にそんなことを考えた。
 しかし、それがただの常識から来る幻想だったと言う事はすぐに分かった。

 左腕の断面から――何か生えている。
 そしてそれが形をなすまで、数秒もかからなかった。
「な」
 ニャルロット達は絶句した。
 そこには、再び腕が生えていたのだ。
 一片の欠けも無く、何事も無かったかのように、腕が。
「……この有様です」
780黒の礁湖 ◆EGv2prCtI. :2008/08/20(水) 03:55:37

 一一とミルフィーユが青ざめた顔でアムンゼンの左腕を見つめ続ける中、ニャルロットは少しの間だけ俯いてから顔を上げて、言った。
「寄生する怪物にょ話は分かった。それが本当にゃらば今、貴様を殺さにゃければ面倒なことににゃる」
 そう言い、ニャルロットは背中のミニサイズのデイパックの口に尻尾を入れ、銃を取り出した。
 三人は目を見開いた、ようだった。当然だが。
 一一は叫んだ。
「ニャルロットさん!」
「意識がにゃくにゃるにょなら、もう貴様にはどうにも出来にゃくにゃると言うことだろう」
 アムンゼンは黙ったままだった。
 ――自分の判断が間違っている訳ではない。
 ニャルロットは確信していた。
 寄生した怪物を取り出すことは出来ない。
 出来たとしても、こんな場所では恐らく無理だ。
 やがてアムンゼンは少なくともアムンゼン自身が腕一本を失わなければ勝てない程の化け物になる。
 そうしたら――自分達やデンドロビウム達にも危害が加わるのだ。
「無差別殺人をしたいにょか?」
 しかし、無抵抗の人間を即座に殺す事に関してはさすがのニャルロットも抵抗があった。
 後味が悪い。それは。
781黒の礁湖 ◆EGv2prCtI. :2008/08/20(水) 03:58:32
 アムンゼンが口を開きかけた。
 ――さあ、どうするつもりだ?
 自分を命を投げ出すか? 我が身大切さに逃げ出すか?
 どっちにしろワガハイは撃つけどな。
 ――。
 そこでニャルロットは気付いた。
 アムンゼンは、もうニャルロットに虚ろな瞳を向けているだけだった。

 次の瞬間にはニャルロットは素早く前足を横に流し、滑り込むように走り出していた。
 尻尾に僅かに何かが掠めた。
 もう少し遅かったらニャルロットも既に怪物の養分にされていたに違いない。
 アムンゼンの口から触手のような物が飛び出したのだ。

 一一が再度叫んだ。
「なんだ! なんなんだあれは!」
「叫んでにゃいでとにかく撃て」
 銃底を地面に押し付け、尻尾を器用に動かして撃つ。
 はっきり言って人の姿で撃った方がもう少し楽だっただろうが、しかしニャルロットはそうはしなかった。
 色々と不便なのだ。あの姿も。
「あれがアムンゼンに寄生している怪物にゃんだろう」
 立て続けに三発撃ち、ニャルロットは後退した。
 だが、アムンゼンの胴体の三つの弾痕も、すぐに収縮を始めてやがて消えてしまった。
 再生力も化け物だと言うことか。
 一一はミルフィーユを庇うような体勢でその様子を伺っており、ミルフィーユはただ身体を震わせている。
 二人はとても戦える様子ではなかった。
782黒の礁湖 ◆EGv2prCtI. :2008/08/20(水) 04:00:09

 くそ――どうする?


「ニャルロットさん、ミルフィーユちゃん、先に逃げるんだ」
 唐突だった。
 何かを決心したように早口で一一がアムンゼンの横に飛び出したのだ。
「総理!」
 ニャルロットの制止を振り切り、一一が走りざまにアムンゼンに向けて何かを構え、撃った。
 一瞬だけ、触手の動きが止まる。
 一一はうまく道端の草地に飛び込み、振り返るとむと、何度もそれを撃った。
「ミルフィーユ!」
 ニャルロットは銃をしまい込み、アムンゼンから離れるようにその場から抜け出した。
 ミルフィーユが追ってくるのを確認すると、そのまま民家から平地に走った。
 アムンゼンは一一の方に向かっているようだった。
 当座、もう走る必要は無いだろう。
 しかし――

 もっと面倒なことになった。
 ニャルロットは思った。
 あの総理が無事とは限らなかったし、何よりこれで更に捜さなければならない人物が増えてしまったのではないだろうか。
 とにかく――このままでは、まずかった。

 茫然とミルフィーユがニャルロットを見つめながら立ち尽くす中、草と木のざわめきがその場を支配していた。
783黒の礁湖 ◆EGv2prCtI. :2008/08/20(水) 04:01:12
――
 激しい目眩を起こす中、一一は民家の壁沿いにひたすら走っていた。
 あの触手はもう追ってこなかった。一一を見失ったようだ。
 一一は手頃な大きさの岩に腰掛け、頭を抱えながら息をついた。

 最近デスクワーク続きだったので、激しい動きをして反動が来たのだろうか。
 取説も大して読まなかった奇妙な銃を脇に置いて、少し立ち上がって周囲の様子を見て、再び座った。
「しかし……ニャルロットさん達とどう合流しようか」
 多分、ニャルロット達はもうあの場には居ないだろう。
 居たとしても、アムンゼンを避ける為に回り道になる。
 とにかく、そんなに休んではいられないようだった。

 ――何より、あのミルフィーユのことも気掛かりだった。
784黒の礁湖 ◆EGv2prCtI. :2008/08/20(水) 04:02:36
【G−6 平原/一日目・昼】
【ニャルロット】
【装備】ブルーノCz・M75カスタムスピアハルバード(12/15)
【所持品】支給品一式、Cz・M75のマガジン×2
【状態】健康
【思考・行動】
1:一とデンドロビウムと合流する
2:遥を探す
3:殺し合いには乗らないが、襲ってくる奴は殺す。
4:主催者に多額の依頼料を支払わせる。
※デンドロビウムの知り合い、勇者スポポロス、一一一、寄生虫についての情報を得ました。
※瑞子には若干の危険性を感じています。 ※アムンゼン3が危険だと認識しました

【ミルフィーユ】
【装備】なし
【所持品】支給品一式 (不明支給品0〜1)モゲラヨモギの汁(残量100%)
【状態】健康
【思考・行動】
1:?
2:バナナが食べたい。
※デンドロビウムの知り合い、ニャルロットの知り合い、一一一についての情報を得ました。
※一一と遥が知っているミルフィーユとこのミルフィーユが同一世界から来たのかどうかはわかりません。
※アムンゼン3が危険だと認識しました
785黒の礁湖 ◆EGv2prCtI. :2008/08/20(水) 04:03:54
【G−7 集落/一日目・昼】
【一 一一】
【装備】サイオニックガン
【所持品】支給品一式(不明支給品0〜1)
【状態】精神力消費(中)
【思考・行動】基本:殺し合いを止める。
1:ニャルロット、ミルフィーユと合流する
2:ミルフィーユを警戒
3:遥とデンドロビウムを探す
4:和哉・杏・檀・蕗を探して保護する
5:殺し合いに乗っていない人を集める
※瑞子が立派な医者だと勘違いしています。
※アムンゼン3が危険だと認識しました。


【ロアルド・アムンゼン(その3)】
【装備】ククリ、長谷部国重@信長の愛刀
【所持品】支給品一式、松井垂加の麻雀牌
【状態】気絶 寄生虫の侵食が始まった
【思考・行動】
基本思考:殺し合いはしたくない。犬だけは出会ったら必ず食べる。
1:自分が化け物になるのではないかという不安
2:スポポロス、檀と合流する
3:この会場から脱出する方法を考える
4:ところで犬はどこだ!?
※断続的に寄生虫に意識を乗っ取られている状態です。
786黒の礁湖 ◆EGv2prCtI. :2008/08/20(水) 04:05:33
【ブルーノCz・M75カスタムスピアハルバード】
ジュリアの愛銃。
チェコ製Cz・M75のバレルとスライド部分の肉を引き伸ばし、バランスを幾分調整したことで反動が片手でも無理なく撃てる程にマイルドになり連射性も向上している。
その代わり耐久性が低く、冷却しないままの連続使用に向いていない。
9mm.パラペラム弾使用の十五発マガジン。

【サイオニックガン】
能力を上手く扱えないデーヴァ星人が非常事用に使う手の平に収まるサイズの銃。
一般のデーヴァ星人並のサイコキネシス、テレパシーによる通信、エレキウィップが使用できる他、前方の生物を軽く麻痺させる音波を放つ機能、肉体に悪影響を及ぼす虹色の光線を撃てる機能がある。
ちなみに非常に高価な為、ピピンはこれを持っていない。
普通に能力が扱えれば不必要な物。
動力は使用者の精神力。
787 ◆EGv2prCtI. :2008/08/20(水) 04:07:41
投下終了
ジュリアの元ネタはこれでいいんかね
788名無し草:2008/08/20(水) 09:55:24
投下乙!!
アム3はこっちの組に行ったか……
789名無し草:2008/08/20(水) 18:37:33
>適当な決断
ミーウを危険視してるのに一人で残ってステルスは大丈夫なのだろうか。
まぁステルス的にはこの選択肢しかなかっただろうが。
いかに瞬間記憶能力持ちとはいえ、墓穴をほらない事を祈ろう。

>黒の礁湖
次々にバラバラになる総理組。
なのに彼らが一番安全のような気がするのはなぜだろう。
790名無し草:2008/08/20(水) 20:27:17
>>787
投下乙です。
一一相変わらず頑張ってるなー。
ミルフィール、仮にも勇者の仲間なのに、触手モンスターに呆然とするなんて……
触手系とは出会わなかったのか?
はっ! まさか触手にトラウマがあるのか!?

サイオニックガンの説明で七色光線ネタを思い出したのは秘密だ
791名無し草:2008/08/20(水) 20:29:16
ミルフィーユの思考が?に切り替わっているのは…
792名無し草:2008/08/21(木) 02:33:39
う゛ぇーぬさんがあまりに不憫なのでアナログ絵を
ttp://uproda11.2ch-library.com/src/11112047.jpg.shtml
ttp://uproda11.2ch-library.com/src/11112050.jpg.shtml
正面顔は微妙

パスはorirowa
793名無し草:2008/08/21(木) 05:47:10
この前のにヴェーヌ居なかったんだっけ?
794名無し草:2008/08/21(木) 21:29:04
居ないことにすら気づかれないヴェーヌカワイソス。

>>792
乙です。
これで女性は全員画像でそろったな。
画像はwikiのそれぞれの参加者詳細に張り付けた方がいいんだろか?
前のはもう見れなくなってるし。
795名無し草:2008/08/21(木) 21:34:22
いや、別にこれが公式設定になるわけじゃないんだからしなくていいだろ。
貼り付けたいなら支援のページでも作って、そこに今までの含めて張るくらいにとどめておけ。
796名無し草:2008/08/21(木) 21:49:01
サッチーあれでいいのかw
797名無し草:2008/08/21(木) 22:22:13
返答サンクス。確かにそうだな、止めとくよ。
798名無し草:2008/08/25(月) 20:24:57
ttp://www7.atwiki.jp/orirow?cmd=upload&act=open&pageid=15&file=%E4%BA%BA%E7%89%A9%E7%9B%B8%E9%96%A2%E5%9B%B3008.jpg

そろそろ更新箇所が少なくなってきましたが、人物相関図更新しました。
799 ◆Syk9Sx8L.s :2008/09/10(水) 00:43:21
一部自己リレーになってしまいますが、坂木檀・勇者スポポロス・ニャルロット・ミルフィーユで予約を入れたいと思うのですがよろしいでしょうか?
ご意見伺いたいです。
800名無し草:2008/09/10(水) 05:37:15
問題無す
801 ◆Syk9Sx8L.s :2008/09/10(水) 23:20:56
それでは、正式に坂木檀・勇者ミルフィーユ・ニャルロット・デンドロビウムで予約します
802愚神礼賛 ◆Syk9Sx8L.s :2008/09/12(金) 22:43:41
悪のヨモギ屋、モゲラッチョ・ヨモギーノが私たちの国に現れたのはまさに突然だった。
それは私たちの国が今まで対峙してきたどの敵とも違った。
その力の強大さでも、その真の目的を決して明かそうとしない得体の知れなさでも。
国王や軍は自分たちの立場を守るだけで精一杯。
国中に勇名を轟かせた力自慢の者も技自慢の者も、戦況の悪化に連れて一人また一人と国を離れていった。
それは彼らが自分の家族や友人を守るために取った決断であり、もとよりヨモギーノに抗しようなどという思いすら持たなかった私に責める資格などありはしない。
もう国内に誰一人ヨモギーノに刃向かおうなどと考える人間などいるはずが無かった。

なのに、ある日自分よりも年下の少年が突如現れて、誰一人として歯が立たなかったヨモギーノの手下たちをやっつけた。
そして彼はあっという間に軍をも超える「勇者」と呼ばれる存在にまでのし上がった。
一見軽佻浮薄に見えるが、どんな苦境に立たされても震え一つ見せず前に進み続けるその姿に私たちはどれだけ勇気付けられただろう。
そんな小さな体一つでも、巨悪と戦えることを教えてくれた。
そして、私に生きる意味を教えてくれた。
あの瞬間から、勇者様は私の―――



なぜか急に強くなった風が、草や木を揺らして耳障りな音を立てる。
その真ん中で、ニャルロットさんはさっきから無言で佇んでいた。その沈黙は、ニャルロットさんすらもこの後取るべき行動を決めかねていることを示していた。
ここにいても一総理と再び合流できる保証は無い。
しかし、下手に動いたらデンさんだけでなく、一総理とも離れ離れになってしまう可能性が高い。
じゃあもう一度あの場に戻って、一総理と一緒にアムンゼンという男と戦う?
無理だ。私の呪術程度ではあの男の片手を封じる事さえ出来ないだろう。
背中のぬいぐるみに魂を移したところで、あれだけのリーチの差のある敵を前にしては無力もいいところだ。
大体あんな敵とは私たちはまだ一度も戦ったことが無い。相手の攻撃パターンも弱点も分からない。
そして何より、ここには勇者様がいない。
803愚神礼賛 ◆Syk9Sx8L.s :2008/09/12(金) 22:44:33
「―――勇者様……」
思わず声が漏れた。ニャルロットさんに聞こえていたかは分からない。
こんな時、勇者様がいたらどうしただろう?
決まっている。何も考えずに総理を助けるためにあの場に戻り、そして、実際にあっという間に敵を退けてしまうのだ。
勇者様にあるのは勇気と力と機転だけではない。あの方には生まれながらの『強運』が付いている。
それはきっと選ばれた者だけに神様が与えた能力だ。
だから勇者様と一緒にいるだけで私たちは勝ち抜くことが出来た。
しかし、今は私一人だけ。私には勇者様のような運も、勇気も、力もありはしない。
……でも、もし勇者様が私と同じ状況に陥ったら?
強運も奪われ、武器も失い、それでもなお窮地に陥っている仲間を助けたいと思ったら?
そんなのは決まっている。勇者様が勇者である理由は、国民に祭り上げられたからなんかじゃない。
「にゃあ、ミルフィーユ」
ニャルロットさんが頭をあげた。まるで、私の心を見透かしていたかのようなタイミングだった。
「お前は呪術師だというはにゃしだったが、具体的にはどんにゃ呪術を使うにょだ?」
その質問の意味を、私は即座に理解する。
「そうですね……一応一通りの呪術は習得しましたが、わりとまともに使えるのと言えば影縫い術ですね」
「影縫い術?」
「はい。こういう針で相手の影を固定し、影を踏んだり叩いたりすることで相手本体にダメージを与えたり相手を操ったりする、直接攻撃系の呪術です。
私の使える呪術の中で即効性のある呪術はこれくらいです」
私はそう言って、ポケットから影縫い用の針を出して示した。
「では単刀直入にいくが……お前にょそにょ術で、あにょアムンゼンを足止めすることにゃどはできるにょか?」
「自信はありません。この術はある程度力を持った相手には簡単に破られてしまいますから。でも、やってみたいです」
それを聞いて、ニャルロットさんは大きく頷いた。
そう、これが今私たちが取るべき最善の策。ニャルロットさんも私と同じ考えだった。
ここでいつまでも待ち続けるよりも、すぐにでもあそこに戻ったほうがいい。
804愚神礼賛 ◆Syk9Sx8L.s :2008/09/12(金) 22:45:21
「倒そうにゃどとは考えんことだにゃ。お前にょ術でアムンゼンにょ行動を封じ、そにょ間に総理を連れて逃げるにょだ」
「はい、分かってます」
「それでは早速きた道を……」
その時、突然私とニャルロットさんの間に割って入るようにして一人の男が登場した。
「ゆ、勇者様!?」
その顔を見て、私は思わず喜びの声を上げる。顔が綻ぶのを止めようが無かった。
ようやく、ここへ来て一番合流したかった人に会うことが出来たのだから。
だから、私は―――

その時勇者様の持っていた剣の切先が、私の鳩尾に向いていたなんて気付きもしなかったんだ。



その男(というより、まだ少年だが)は、無言でワガハイとミルフィーユとの間に割って入ってきたかと思うといきなり持っていた剣でミルフィーユを突いた。
ミルフィーユは当然ながら鳩尾を押さえ、膝をついて倒れる。
「ミルフィーユ、よくも今まで僕様をだましてくれたのだ!! どうせ最初から僕様を殺すつもりで近づいたのだ!!
お前に裏切られて殺されるくらいなら、僕様がここでお前を殺してやるのだ!!」
男はそう叫んで、さらにミルフィーユに剣を振り下ろす。
が、あの剣には刃がついていない。だから、さっきの刺突でもミルフィーユの服すら斬れてはいない。
いったい何のつもりなんだ?
ついでに言えば、構えも斬り方も滅茶苦茶だ。
ミルフィーユは二戟目をなんとかかわし、信じられないものを見たような目で男を見上げる。
「ゆ、勇者様……なんで……なんで私を……」
「自分の胸に聞いてみるがいいのだ!! 大体僕様は、勇者になんかなりたくてなったわけじゃないのだ!!
僕様は戦いたくなんか無いのに、お前や国民たちが勝手に祭り上げたのだ!!
その挙句に殺されるだなんて、僕様はまっぴらなのだ!!」
会話から察するに、あの男がミルフィーユが言っていた『勇者スポポロス』らしい。
ミルフィーユの話とはかなり違う男に思えるのだが……
本来ならミルフィーユを助けに入るべきなのだろうが、刃の無い模擬刀では人を殺せるわけがないし、どうも緊迫感に欠ける。
805愚神礼賛 ◆Syk9Sx8L.s :2008/09/12(金) 22:46:43
ただ、ミルフィーユの様子は明らかにおかしかった。
まるで親に捨てられた子供のような、絶望感に満ちた表情でスポポロスを見上げている。
単なるちょっとした勘違いが原因のいざこざならば、手を出さずに当事者だけで解決させるのが得策なのだが……
(ん?)
その時ワガハイは気が付いた。
ちょうどミルフィーユの背後から、木陰に隠れるようにしてこちらの様子を伺っている少女の姿に。
彼女はスポポロスとミルフィーユによる喧嘩とも戦闘ともいえないようなものを見ながら、薄く口元を歪めて笑っていた。
(まさか……)
考えてみれば、勇者スポポロスがミルフィーユが言ったとおりの人格の所有者であれば、自分から仲間を疑うことなどは考えにくい。
誰かに入れ知恵されたと考えるのが自然だ。
そして、その入れ知恵を行った人間が彼女なのか?
(一体、にゃんにょ為に?)
ただ単に仲間割れを引き起こして同士討ちを狙う、などというわけではないだろう。
ならば、模擬刀という殺傷能力の無い武器だけを持たせて、どんな武器を持っているかわからない相手と戦わせるような真似はしないだろうからだ。
彼女の狙いは、他にある。
それも、かなりよくないことを……

岩を刀で引っかいたような、鈍い音がした。
(しまった!!)
あの傍観者に気を取られていてスポポロスとミルフィーユの喧嘩から目を離してしまった。
それというのも、いくらなんでもこの程度の相手と戦っても大怪我を負うようなことはあるまい、と考えてのことだったのだが……
「勇者……様……」
地面に座り込んだミルフィーユは、右目から鮮血を流していた。
806愚神礼賛 ◆Syk9Sx8L.s :2008/09/12(金) 22:48:17



私には親の記憶が無い。
他の家族も最初からいなかった。
なぜ呪術を身に着けようとしたのかすら、とうに忘れてしまった。
おそらく、他にすることが無かったんだろうと思う。
あるいはこの世界にある色んなものから自分の身を守るためだったのか。
私は国の辺境の地にある森の中の庵に一人で住み、そして死ぬまでずっとそうするのだと信じていた。
誰にも必要とされず、誰にも求められず―――

その人が噂に聞く『勇者』だというのは見た目からすぐに分かった。
その時彼は敵の魔物に追われていた。私の目から見ても、明らかに劣勢だった。
所詮勇者といえどもこの程度か、と私はその場を離れようとした。
厄介ごとに巻き込まれるなんてごめんだ。
それは全くの偶然だった。
足早に勇者と魔物の側から逃げようとした私は、石にけつまずいて呪術に使うために摘んできた薬草を籠から落としてしまった。
こぼれた薬草は偶然風に乗って運ばれ、そして偶然魔物の口の中に入った。
その薬草が、一部の魔物にとっては猛毒として作用するものだなんてことは、私も目の前で魔物が泡をふいて死んだその時まで知る由も無かった。
息絶えた魔物を目の前にしてへたり込む私に、彼は慌しく駆け寄ってきて言った。
「よくやってくれたのだ!! お前が毒草を投げてくれたお陰で助かったのだ!!」
「え、えええ?」
「そうだ、お前良かったら僕様の家来になるのだ!! 僕様も、そろそろ勇者というからには家来の一人でも欲しかったところなのだ!!」
「……家来に? こんな私が? 勇者様の?」
「ああ、もちろんなのだ!!」
人に必要とされたのは生まれて始めてのことだった。
そして、自分の身に着けた呪術を自分以外の誰かの為に使いたいと思ったのも生まれて初めてだった。
森の奥の庵に篭っていた私の手を引いて、色んな世界を見せてくれた。

だから、あの時から、あなたは私の全てでした。
807愚神礼賛 ◆Syk9Sx8L.s :2008/09/12(金) 22:51:09
【G−6 平原/一日目・午後】
【ニャルロット】
【装備】ブルーノCz・M75カスタムスピアハルバード(12/15)
【所持品】支給品一式、Cz・M75のマガジン×2
【状態】健康
【思考・行動】
1:スポポロスを止める
2:一とデンドロビウム、遥を探す
3:殺し合いには乗らないが、襲ってくる奴は殺す。
4:主催者に多額の依頼料を支払わせる。
※デンドロビウムの知り合い、勇者スポポロス、一一一、寄生虫についての情報を得ました。
※瑞子には若干の危険性を感じています。
※アムンゼン3が危険だと認識しました

【ミルフィーユ】
【装備】なし
【所持品】支給品一式 (不明支給品0〜1)モゲラヨモギの汁(残量100%)
【状態】右の眼球を損傷
【思考・行動】
1:呆然
※デンドロビウムの知り合い、ニャルロットの知り合い、一一一についての情報を得ました。
※一一と遥が知っているミルフィーユとこのミルフィーユが同一世界から来たのかどうかはわかりません。
※アムンゼン3が危険だと認識しました
808代理投下:2008/09/12(金) 22:59:04
【坂木檀】
【装備】なし
【所持品】支給品一式×2、不明支給品2(武器ではない)
【状態】健康 ぱんつはいてない
【思考・行動】
基本思考:兄と妹以外の人間を(知り合いであっても)殺す
1:?
2:チャンスがあればスポポロスを殺す
3:自分の手で殺すことに対しては躊躇 しかし人を騙すことの快感を覚えた
【備考】
遥が死んだのかどうか疑問を持っています。
この会場で死んだら死体が消えるのかも知れないという考えに疑問を持ちました。
パンツは捨てました
「坂木檀の唾液まみれのパンツ」はI‐7 路上に放置されています

【勇者スポポロス】
【装備】:坂木杏の居合刀(刃はありません)
【所持品】:支給品一式
【状態】:健康
【思考・行動】
1:ミルフィーユを殺す
2:檀の言うことを聞く
3:杖を取り返す
4:佐知代を取り戻す
【備考】:
ケンシロウ(自称)のヌンチャクは海に流されました
坂木檀を預言者だと思い込んでいて、彼女の言葉は何でも信じるような気分になっています
809名無し草:2008/09/12(金) 23:02:36
投下乙です!

ミルフィーユ……カワイソス
スポポロス、お前本当にダメなやつだなぁ
ここはニャルロットだけが頼りだな
810名無し草:2008/09/14(日) 13:33:25
ミルフィーユ視点とは意表を突かれた
今まではいてもいなくても変わらんようなキャンだったが、この掘り下げがどう出るか
811名無し草:2008/10/14(火) 23:49:30
ちょうどオリロワ語りなので感想続き投下しますよ。

>バーニング
正義に殺されたいと思っているのに運悪くマチェーテを2本もゲットしてしまうとは。
シスターを殺した事があるだけあって、神に嫌われているのかもしれませんね。

>プリーズ・ヴァイジャヤンティー
猪突猛進タイプは、上手くいくときはとことん上手くいきますが、ひとたび策に嵌ると無様なほどに負けてしまうものです。
ジュリアもその例に漏れず、直情的になったが故に素人の美少女にさえあっさりやられてしまいました。
この敗北を糧に迷いを捨てたジュリアが、今後活躍する事を期待しています。

>フラグ青年M
相変わらずフラグに固執する万吉ですが彼は気付いていないのでしょうか。
死亡フラグなんてものはどこにでも転がってるし、ふとした事が簡単に死亡フラグになる事を。
そしてあからさまに死亡フラグを避け続ける事は贔屓とみなされるかもしれない事を。

>伝わった気持ち -Woman in the dark-
まさか蕗が花子の子供だったとはなんという展開でしょう。
魔王にと変化したのも、彼女が人間ではなくゴリラの魔物だったからなのでしょうね。
これから更なる強敵の出現により、敵同士だったアムンゼンらが共闘する燃え展開になるのか、
それとも同作品キャラ合流による欝展開フラグが発動するのか見逃せません。
812名無し草:2008/10/14(火) 23:51:42
>捨流主麻亜太の適当な決断
探偵は鋭い洞察力、観察力などが必要です。今回捨流主はそれをフルに使い場を誘導しました。
感情が見えるアリスと合うのはマズイ。そこで隠し事をしているミーウ達と共に学校に残るように仕向けたのは流石ですね。
アリスを探さずに、さらに疑わしい相手に恩を売る事が出来たのですから。

>黒の礁湖
ついにアムンゼン3も触手プレイの虜になってしまいました。
しかしそんな淫らな行為は総理が許しません。身体を張って触手から幼女と雌猫を守ってくれました。
いくら女難の相であっても女を守る総理の男気に感動してしまいますね。

>愚神礼賛
シームレスバイアスは零崎軋識の持つ武器です。そして零崎は理由無く人を殺します。
このタイトルから考えて、檀がスポポロスにミルフィーユを襲わせたのも理由無い事なのでしょう。
ただ彼女にとっては「かるーく、坂木を始めるちや」という程度のことなのですから。
魔王に零崎と坂木家は恐ろしい一族ですね。


いい機会だからついでに>>650の時の没も避難所に投下してみた。途中までだけど。
813名無し草:2008/11/04(火) 10:13:36
a
814御魔森ハ蕗ノ物 ◆lYiZg.uHFE :2008/11/13(木) 01:57:43
一発の銃弾が切っ掛けだった。
たった一人の狂男によるたった一発の凶弾。
それが、全ての元凶だった。

凶弾は一匹の獣に人間を恨ませ、その心に悪意を募らせた。
獣の強靭な力から少年を守る為に、冒険家は少年を先に逃がせた。
少年は逃げた先で狂男に襲われ、一矢報いることなく殺された。
少年の死体を見た肉親の少女は、絶望から全てを憎んだ。
憎悪は次々と湧き上がり、サタンの加護を得た少女は、魔へと変貌する。
そうしてここに魔王は誕生した。

次々と生み出されていく悲劇。
止まる事のない悪夢。
それはまだ始まりにしか過ぎず、さらに加速していく。

魔王が誘うのか死者が呼ぶのか、次々と大森林へと集まっていく参加者達。
死に限りなく近いこの森で、彼らのうちどれだけが死に、どれだけが助かるのだろうか……。


  ※  ※  ※  ※  ※

815御魔森ハ蕗ノ物 ◆lYiZg.uHFE :2008/11/13(木) 01:58:13
民家の壁に暗号を書いたあと、アリス達は湖を西周りに目的地まで向かっていた。
「それでアリスちゃん、これからF-5の森に行くんすよね?」
前を歩くアリスは後ろから聞こえてくる声に足を止め、振り返る。
「ええそうですわ、18時までは時間があるとは言え何が起こるかわかりませんし、
 早めにE-5の展望台まで行って、18時近くまでそこで人を探す予定ですわ。
 生憎とあなたの支給品も双眼鏡ですし、人を探すのには十分ですわ」
そう言うアリスだが秋夫はまだ疑問があるようで、再びアリスに声をかけた。
「それは分かったっスけど、どうして森を通って行くんすか?
 人を探すのなら建物の多い東の方から行く方がいいんじゃないんすか?」
「いいですこと? 建物が多いと言っても一軒一軒虱潰しにするわけにもいきませんでしょう?
 効率も悪いですし何より時間が掛かり過ぎますわ」
その疑問に、教えるかのようにアリスは答える。
秋夫はその答えに納得したのか、なるほどと頷く。
「それに……」
口を開きかけ、聞こえてくる咆哮に言葉を一度止める。
先ほどから何度か同様に咆哮が響いてきていた。
障害物もない平地だからか、森から結構離れていた老人の死体の場所まで声が聞こえたのだ。
「あの森で何かが起こっているのは間違いありませんですしね」
秋夫から森へと視線を移し表情を険しくさせる。
何か、とは間違いなく殺し合いだろう。
既に死者は出ている。
確実に殺し合いは進んでいる。
その事実にアリスは焦燥を感じていた。


  ※  ※  ※  ※  ※

816御魔森ハ蕗ノ物 ◆lYiZg.uHFE :2008/11/13(木) 01:58:44
木々が生い茂った森に車椅子を押す一人の男がいる。
凸凹の大地、出っ張った木々の根、露に濡れた地面の中で大変そうに車椅子を押していく。
その動きは遅々として進まず、時間が無駄に流れていた。
移動の最中に二人は情報交換をしていたが、それを終える頃になっても追いつく気配はない。
険しい森の道と男の非力さを考えても遅すぎるその進行に、車椅子の少女は少しの不快を表す。
「ねぇ万吉、もっと早くならないの!?」
思うのは先程まで一緒にいた少女の事。
好きな人の死を放送で知らされ、不安定になっている少女。
早く追いかけて守ってあげなくてはとの思いが、悪くないはずの万吉に強く当たってしまう。
「む、無理だって……道がでこぼこしてるから、足をとられて、け、結構、体力使うんだって」
万吉がそう言うと、手を抜かれている事に気付かない可憐は口を塞ぎ俯いてしまう。
遅れている原因は可憐自身にもあるのだから、これ以上強く言えなかった。
車椅子という重荷のせいで蕗のもとへ急ぐ事ができないのだと。
「ねぇ、私のせいだよね」
「え……?」
ポツリと呟いた可憐の言葉に、万吉は疑問の声をあげる。
「私が車椅子だから早く進めないんだよね」
悲痛な表情で今度ははっきりと、そう口にする。
万吉は言いにくそうに口をもごもごさせていたが、やがて口を開く。
「そ、それは、そうかもしれないけど……か、可憐が悪いわけじゃないよ。
 おれに体力がないから……」
わざと遅らせているという罪悪感もあって、若干申し訳なさそうに答える。
気まずさからか二人は沈黙する。
817御魔森ハ蕗ノ物 ◆lYiZg.uHFE :2008/11/13(木) 01:59:15
早く移動する方法はあった。
今まで、可憐があえてそれを選択してこなかっただけだ。
体力を使うから。微妙なコントロールが難しいから。車椅子がないと不便だから。
色々と理由をつけて力を使って移動することを避けていた。
万吉の優しさに甘えるのは楽だった。
でもそれじゃダメなのだ。
蕗を守る為には一刻も早く彼女に追いつかなくてはいけないのだから。
だから可憐は自分の力を打ち明けることを決める。
「ごめんなさい万吉、私、隠していたことがあるの」
可憐が沈黙を破ると、万吉は唐突なその言葉に動揺する。
「私、空飛べるの……」
そう言うやいなや車椅子から重みが減り、可憐の身体が空中へと浮かぶ。
突然の出来事に呆気にとられる万吉。
「だから、車椅子は置いていっていいから、早く蕗を追いかけよう?」
「え…………ああ、分かった」
その言葉に万吉は我に帰り、少しの時間を置いて頷いた。

先を飛ぶ可憐。
その後ろで、万吉は冷や汗を流しながら後を追っていた。
あの場でついていかなければ、下手に誤解を受ける可能性がある。
もとより後を追うように言ったのは万吉自身なのだから。
ここでなんとかやり過ごしたとしても、後々支障が出る事は確実だ。
退路を絶たれた万吉は、前へ進むしかなかった。


  ※  ※  ※  ※  ※

818御魔森ハ蕗ノ物 ◆lYiZg.uHFE :2008/11/13(木) 01:59:48
何もない平原を4人の集団が歩いている。
前に細身の男、後ろに外人の男と小学生の少女と色黒の男という並びだ。
後ろの少女と色黒の男が他愛も無い話で盛り上がり、外人の男もたまに話に加わる。
そんな光景が何度も繰り返されていた。
細身の男はただ一人、緊張感のない彼らの輪に加わることはせずに、
たまにその様子を見ながらも、周囲の警戒を忘れずに進む。

「そろそろ森に入るぞ。森を暫く進んだら情報交換を始めよう」
先頭を歩いていた時宗は、視界一杯に広がる森を見て彼らの話に割り込む。
開けた場所で情報交換をするのは危険。
尤も森であっても危険は変わりないのだが、見晴らしのいい場所よりはマシである。
その考えから、森の中で情報交換をする事になっていた。
「絵理花ちゃん、あと少しで着くって」
「うん☆」
「なんとか無事に着きそうだな」
それぞれが反応し、森へと足を踏み入れていく。
819御魔森ハ蕗ノ物 ◆lYiZg.uHFE :2008/11/13(木) 02:00:19
暫く森を進んでいくと、休めそうで比較的広い空間が見つかり、
それと同時に、反対側から歩いてきた一組の男女を発見する。
一瞬互いの間に緊張が走るも、舞梨と名乗った少女が前に出て、
殺しあうつもりは無いと熱心にいう事により、両者の緊張が解ける。
そして靄場と名乗った男と時宗の薦めにより、お互いに情報交換をする事になった。
彼等は思い思いに、木に寄りかかったり根っこに腰を下ろしたりする。
「地面に座ったら汚れちゃうよ〜」
「じゃあ僕の足の上に座るかい、絵理花ちゃん?」
「ありがとう、おにいちゃん!」
文句を言った絵理花に燕が提案をすると、嬉しそうに足の上に座る。
舞梨はそんな二人の様子をじっと見ている。
「君も座るかい?」
視線に気付いた燕は、笑顔で舞梨を誘う。
「あの……その……お、お願いします!」
恥ずかしそうにしながら舞梨は答えた。
舞梨が燕の足に座るのを見届けると、時宗がわざとらしく咳をする。
「両手に花で楽しそうな所に悪いが、これから情報交換をしたい。いいかね?」
バツが悪いのか燕は頭をかきながら頷いた。


  ※  ※  ※  ※  ※

820御魔森ハ蕗ノ物 ◆lYiZg.uHFE :2008/11/13(木) 02:00:51
魔王は眼下に居る二人の男を見下ろし微笑を浮かべる。
「みんな殺してあげる、でも先ずはあなたたちからよ」
同じ顔をした二人の男は、さっきまでの少女との違いに戦慄していた。
「ふ、蕗……?」
アムンゼンはやっと搾り出すように声をあげる。
信じられないとでも言うように。
もう一人の男も驚きに満ちた顔で蕗を見上げている。
「……杏は、バディはそんな事望まない」
己の不注意で死なせてしまった少年の事を思い出して言う。
彼は優しい少年だった。
妹が自分の死をきっかけに殺し合いに乗ってしまうというのは、彼にとっては心苦しいものだろう。
なればこそ、彼女の心を救わねばならない。
死なせてしまった杏への詫びとして。
助けられなかった花子への詫びとして。
「あなたが……お兄ちゃんを殺したあなたが、お兄ちゃんを語らないで!」
表情を怒りに変え、漆黒の刃がアムンゼンたちを襲う。
二人は咄嗟に避け、刃が地面を抉った。
誤解されていると悟ったアムンゼン。
こうなればもはや説得しても逆効果だろう。
だがアムンゼンは諦めない。
彼女を救わねば杏に会わせる顔がなかった。
821御魔森ハ蕗ノ物 ◆lYiZg.uHFE :2008/11/13(木) 02:01:22
「もう一人の私。ここは一時的に共闘しようじゃないか」
突如ロアルドがそんな言葉を口にする。
豹変した蕗を相手に一人では勝てそうに無い。
そして逃げ切れるとも思えなかった。
だからこその提案。
「ユーと協力? 何をバカな―――」
「君は彼女を救いたいと思っているのだろうが、手加減ができる相手でない事は君も分かっている筈だ」
何かを言おうとするアムンゼンの言葉を遮って、ロアルドは言葉を続けた。
その言葉にアムンゼンは口をつぐむ。
「それに見た所私たちが全力で戦って、やっと互角かといったレベルだよ。あれは」
理屈では言ってる事は分かっている。
しかしこの男が蕗を殺すつもりなのではないかと思うと、容易に同意する事はできなかった。
「ふむ、私がフキの事を殺すだろうと心配しているのかね?
 分かった。彼女を倒したら手を出さずにこの場を去ることを誓おう」
アムンゼンはその言葉を信用できない。
杏を殺し、蕗をあんな目にあわせたロアルドなど信用できるはずもない。
だがロアルドの言っているように、協力しないと勝ち目が無いこともまた事実。
悩むアムンゼンに、ロアルドが止めの一言を言った。
「やれやれ、何を悩んでいるのか知らないが、
 このままだとフキが参加者を皆殺しにして終わるだけだぞ。
 そんな事を、キョウが、望むのかね? ん?」
キョウの部分を強調して嫌味たらしくロアルドは言う。
そしてその言葉にアムンゼンは折れた。
自分が殺させなければいいのだと自分に言い聞かせて。
「クッ……分かった。ユーと共闘しよう……」
「ハハハハハハ……ではよろしく頼むよ、バディ?」
心苦しげに承諾するアムンゼンに、ロアルドは再び嫌味たらしく笑った。
822御魔森ハ蕗ノ物 ◆lYiZg.uHFE :2008/11/13(木) 02:01:52
「話は終わった?」
蕗は再び微笑みを取り戻し、二人へと対峙する。
アムンゼンの右腕は親指が無い為使えない。
だから骨折した左腕を氷で無理矢理固定して、杏の握っていた手斧を左手に取る。
ロアルドも剣を右手で構える。
「じゃあ殺してあげる」

戦闘の準備の整った二人を見て、蕗は攻撃を開始する。
殺意を剣に込めて、闇の剣が二人の足を目掛けて薙ぎ払われる。
剣の未熟さを速度で補いながら、間をおかずに次々と執拗に二人の足を狙う。
それは二人の逃げられないようにし、死ぬまで甚振る為。
そんな怒涛の攻めをなんとかかわしながら、二人は一息に別方向へと跳ぶ。
一箇所に固まると同時に攻撃されてしまうからだ。
蕗は正反対の場所へ跳んだ二人を見比べると迷うことなくロアルドの方へ攻め入る。
同じアムンゼンなら兄を殺した方を優先という事だろう。
少しも躊躇わずに向かってきた蕗に避ける事も適わず、ならばと切りかかる。
蕗は足を薙ぎ払おうと振りかかった剣を咄嗟に軌道修正してロアルドの剣に切り結ぶ。
切っ先を交差させ、そのまま鍔迫り合いを始める。
速度が乗っていたとはいえ、体格はロアルドの方が上。
押し切る事は適わずに、そのまま膠着が続く。
その膠着を打ち破るべく、アムンゼンは後ろから手斧で切りかかる。
蕗は即座に退くが、鍔迫り合いをしていたロアルドは勢いそのままにアムンゼンへと突っ込んでいく。
同士討ちを避ける為に両者は無様に横へと転がり込む。
その隙を狙って蕗は二人へと切りかかる。
倒れている二人には攻撃を避けるのは不可能。
しかしロアルドはデイパックからSPASを取り出し、銃口を蕗に向けて引き金を引く。
これには流石の蕗も動きを止め、銃弾に備える。
だが弾は発射されない。いや、できない。
SPASはすでに弾切れを起こしていた。
二人が起き上がる時間を稼ぐためのフェイクだった。
823御魔森ハ蕗ノ物 ◆lYiZg.uHFE :2008/11/13(木) 02:02:23
「やはり厳しいな……」
今回は上手く言ったが、次からはSPASでの威嚇も通用しないだろう。
空を飛んでいる為、カウンター狙いでないと攻撃できないのも厳しかった。
「あの翼さえなんとかできれば……」
苦戦を強いられる主な原因となっている黒翼を苦しそうに睨みつける。
「ミーなら……少しだけ動きを止められるかもしれない……
 その間に翼を切ってしまえば……」
同じように苦々しい表情でアムンゼンは言った。
まだ蕗を傷つけるのには抵抗がある。
しかし彼女の力を削がない限り、話を聞いてもらう前に殺されるだけだ。
「少しの時間ユーが蕗をひきつけてくれれば、その為の準備ができる」
「ふむ……ならばそれに賭けてみよう」

ロアルドはアムンゼンから離れるように疾走し、蕗もそれを追いかける。
「どうしたのかね、そんな調子ではキョウの復讐も、雪辱も、何も果たせないぞ」
蕗がロアルドだけに集中するように多少の挑発も交えながら。
「思えば愚かな男だったね。
 瀕死の状態で勝てそうに無いと言うのに、必死で私に歯向かって来たよ」
怒りで単調になる攻撃を、時にかわし、時に剣で受ける。
「余りにも滑稽だったからね、チャンスをやったんだ。私に復讐をするチャンスをね。
 瀕死の状態のまま数メートル離れた私の元まで辿り着けたら私に切りつけていいとね」
もはや足を狙うなんて事はしてこなかった。
ただ我武者羅に剣を振り回すだけ。
「そしたらなんと彼は辿り着けたんだ。私には約束を守るつもりなんて更々なかったのにね。
 地面に血の跡を残しながらやってきて、それを告げた時のキョウの顔といったらなかったよ。
 ほら、その時の血の跡がそれだ」
ロアルドが指し示した方向に思わず目をやる蕗。
その隙に、ようやく準備を終えてやってきたアムンゼンが蕗へとデイパックを投げつける。
突如飛んできた物体に、蕗は思わず反射的に切りつける。
切りつけられたデイパックは当然そのまま切り裂かれ、
―――中に入っていた沢山のペットボトルごと二つに分かれる。
824御魔森ハ蕗ノ物 ◆lYiZg.uHFE :2008/11/13(木) 02:02:55
花子と杏とアムンゼン、三人分の支給されたペットボトルが入っていたそれから、
大量の水が蕗へと降りかかり、その瞬間にアムンゼンは思いっきり冷気を吐く。
周囲の気温がみるみる下がり、次々に凍らされていく蕗の身体。
被った水の量が多すぎて蕗は動く事ができない。
「今だっ!」
二人が蕗に飛びかかり、渾身の力を込めて両翼を叩き切る。
地に落ちた翼が闇へと消えていった。
とりあえずの作戦成功に二人は息をつく。

「フフフフ……」
だが、落とされた翼の事など気にするふうもなく、蕗はさも可笑しそうに笑う。
その様子をアムンゼンたちは怪訝そうに見つめる。
「何が……可笑しい、フキ」
「可笑しいわ。だって翼を落とした程度で喜んでるんだもの」
蕗の言葉の直後、二人は驚きに目を見開く。
「な……!?」
蕗の背中から、落としたはずの翼が生えてきた。
彼等は知らない。闇のお守りの効能を。
所持者が悪意を持つ限り、有限に力を与えるという効能を。
蕗は殺意を強くさせ、氷の枷を力ずくで破壊する。
そして驚愕したままのアムンゼンに近づき、右足を切断する。
「が……ああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ―――!!!」
アムンゼンは痛みに悶え、叫び声をあげる。
瞬間、敗北を悟ったロアルドはアムンゼンを見捨て、近くに転がっていたローラーボードを使い逃げる。
「……っ、お兄ちゃんの敵、逃がさないわ!」
逃げたロアルドと倒れたアムンゼンを見比べて、蕗は一瞬迷うもロアルドの方を追っていった。


  ※  ※  ※  ※  ※

825御魔森ハ蕗ノ物 ◆lYiZg.uHFE :2008/11/13(木) 02:03:28
あれからC-4の森に入って暫くした頃だろうか。
定期的に聞こえてきていた咆哮は、いつの間にかに聞こえなくなっていた。
それが意味するだろう事は、戦闘の決着。
それを察したアリスの歩行はやがて早足からやや駆け足へと変わっていく。
「あっ、待ってくださいっス!」
後ろから秋夫の制止の声が聞こえたが、無視して進む。
何度も秋夫がアリスを呼ぶが歩く速度は変わらない。
そして十数回ほどそれが繰り返された時、アリスは不意に足を止めた。
「また……ですの?」
眉をひそめさせて目の前の光景を見つめる。
「どうしたんっすか、アリスちゃ……」
秋夫が遅れてやってきて、これまた顔をしかめさせる。
そこには三つの死体が倒れていた。
老人の死体の時とは違い、どれも酷い有様だった。
「さっきの咆哮は……あのゴリラのもののようですわね」
全身を血に塗れさせたゴリラの死体を見やりながら言う。
あれほどの傷を負いながら、なぜか安らかな顔をしているのがせめてもの救いだろう。
次にアリスとさほど年齢も変わらなそうな少年を見る。
足に銃痕があり、手首も切断されている。
こんな事に巻き込まれなければ幸せな日常を送っていただろうに、
大口を開けて死んでいる少年の顔を見ると、アルベルトへの憎しみが募ってくる。
ふと、さっきから沈黙を続けている秋夫に気がついた。
老人の死体を見たときは口々にうるさかったと言うのにどうしたのだろうかと秋夫の方へ向く。
すると異常に沈んだ顔をしていた。
アリスの視線に気がついたのだろう。秋夫は徐に口を開いた。
「この人、蕗ちゃんのお兄ちゃんッス……見たことあるッス」
「そう……ですの……」
アリスはなんと言っていいか分からなかった。
「蕗ちゃんは三つ子の兄妹で、とても中の良い兄妹だったんス」
だからアリスは無言で秋夫の話を聞き続ける。
「いつも……いつも嬉しそうに兄妹の話をしてくれてたッス」
826御魔森ハ蕗ノ物 ◆lYiZg.uHFE :2008/11/13(木) 02:03:59
秋夫の感情にいつものふざけた色が無かったから。
「自慢の兄だって言ってたッス……」
秋夫の感情が悲しみの色に染まっているのが見えたから。
「それなのに……蕗ちゃんが可哀想ッス!」
叫ぶように言った秋夫の瞳からは涙が流れていた。

「―――う、ぐうぅ……」
その時、突如うめき声が聞こえてきた。
声の方向を見ると、死体だと思っていた残りの一人がピクリと動いたのだ。
秋夫の叫びに反応したのだろう。
すぐさまアリスは駆け寄る。
「大丈夫ですの!?」
「ふ、蕗が……」
アリスの言葉が聞こえてるのか聞こえてないのか、アムンゼンは森の奥を指差して呟く。
その単語に咄嗟に反応する秋夫。
「蕗ちゃんがどうしたんッスか!」
「落ち着きなさい!」
掴みかかりそうな秋夫を抑えながらアリスが次を促す。
「蕗が、杏を目の前で殺されて、負の感情に、囚われている。
 今の蕗は、とても危険な状態、だ。
 六翼に、黒い剣と盾、の、悪魔のような力も、手に入れ、ている。
 ミーも、その力に、やられた……。
 今は、もう一人のミーを、狙って、あっちへ向かった、はず、だ」
「そんな、蕗ちゃん……」
アムンゼンが告げた事実に二人は息を呑む。
「レディ、ボーイ、頼む、ふきを、す……く…………」
その言葉を最後にアムンゼンは動かなくなった。
「失血死……ですわね」
目の前で死んでいった男の残した言葉に二人は沈黙する。
827御魔森ハ蕗ノ物 ◆lYiZg.uHFE :2008/11/13(木) 02:04:30
「アリスちゃん……」
秋夫が沈黙を破る。
そして普段とは比べ物にならないほど真面目な表情になって口を開いた。
「アリスちゃん、お願いがあるッス」
対するアリスもその雰囲気を察して、真剣な顔で秋夫に向き直る。
「蕗ちゃんを正気に戻してあげてくださいッス。蕗ちゃんは悪い娘じゃないんす。
 本当はそんな事する娘じゃないんす。だから……お願いッス!」
そう一息に叫んで頭を下げる。

アリスの答えは決まっていた。
今の秋夫の様子を見ればたとえ感情の色を見るでもなく、真剣に頼んでいる事が分かっていたから。
普段はどうしようもない駄目な男だけど、彼女の事を本気で思っているのが分かったから。
だからアリスは秋夫に笑顔で答えた。
「ええ、もちろんですわ」
「ほ、ホントっすか!?」
「この探偵アリス・ナイラーザが、坂木蕗を正気に戻すという依頼をバッチリこなしてみせますわ!」
一人の探偵として、依頼を受ける。
そして、受けたからには絶対にやり遂げると心に誓う。
それが探偵の師匠であるニャルロットに教わった、探偵として一番大切な事だから。
828御魔森ハ蕗ノ物 ◆lYiZg.uHFE :2008/11/13(木) 02:05:01
「でも、その前に……」
アリスは、アムンゼンの死体の目を閉じてやり、続けて杏の死体へと向かう。
そして、腹這いになった杏を仰向けに寝かせて、同じように目を閉じてやる。
「今は時間がありませんからこれだけしかできずに申し訳ありませんけど……」
「蕗ちゃんのお兄さん、蕗ちゃんは必ず止めてみせるッス。
 だからせめて安らかに眠ってくださいッス」
秋夫がそう言うと、それに答えるかのように杏の懐から何かが転がり落ちた。
アリスはそれをおもむろに拾い、そして付属されていた説明書を読む。
「これは透視スコープというらしいですわね……ありがたくいただいていきますわ」
「じゃあアリスちゃん、そろそろ行こうっす!」
秋夫がそう言って、アムンゼンが指していた方向へと走り始める。
「お待ちなさい!」
その後をアリスが慌てて追いかけて、秋夫の肩を引っ掴み止める。
「どうしたんッスか、急がなくちゃ蕗ちゃんが!」
「ええ、分かっていますわ。
 でも正直に言うと、わたくしたちだけで止められるとは思えませんわ。
 聞いた限りでは凄い力を持っているみたいですし。
 それにもう一人の彼とやらが味方である保障もありません。
 それでもわたくしなら場慣れしているから大丈夫でしょうけど、
 あなたは戦力になるどころかかえって足手まといになりますわ。
 もし彼氏であるあなたが彼女を説得するとしても安全になってからですわ」
不満そうに言う秋夫に厳しい言葉をなげかける。
その言葉に秋夫は何もいう事ができない。
「ですから、あなたにはこれで人を探して、助けを呼んでもらってほしいんですの。
 接触するなら殺し合いに乗ってなさそうな、集団行動をしてる人ですわよ」
アリスは透視スコープを手渡して言う。
これを使えば視界の悪い森でも人探しが容易にできるだろう。
「分かったッス。アリスちゃんに蕗ちゃんの事は任せたッス。
 じゃあ助けを呼んでくるッス」
そう言うと、秋夫は一秒でも惜しいと森の奥へと走っていった。
829御魔森ハ蕗ノ物 ◆lYiZg.uHFE :2008/11/13(木) 04:01:13


  ※  ※  ※  ※  ※


アムンゼンは倒れた。そして魔王は一人で戦える相手ではなかった。
だからロアルドは必死に走る。
後ろから追ってくる魔王から逃げる為に、ただひたすらに走る。
逃げ切れるはずがないと分かっていたが、それでもロアルドは諦めなかった。
首輪探知機を手に持ち、近くの光点へと走る。
あわよくば他の参加者にぶつけようと考えていた。
しかしそこに映る名前は彼に少しの希望を抱かせる。
墓凪可憐―――ロアルドが見た限り、少し前まで蕗と同行していた参加者だ。
ロアルドは考えた。
流石にさっきまで一緒に居た人物を前にしたら心が揺らぐはずだと。
そこに勝機、または逃亡の隙が見出せるのではないかと。
もはや、少女だったら犯し殺すなんて事を考えている余裕は無い。
考えられるのは、いかにしてこの状況を切り抜けられるかだけ。
そうしてロアルドは、光点と接触した。
830御魔森ハ蕗ノ物 ◆lYiZg.uHFE :2008/11/13(木) 04:01:43
可憐と万吉は前方から凄い形相で走ってくる男の姿に怯む。
ただそれだけに目を取られていたから、男の後ろからやってくる少女の事にも気付かない。
そして、怯んで動きが止まっていれば、為す術もなく捕らえられるのは当然だった。
ロアルドは低空飛行をしている可憐の身体を一瞬にして捕まえ、首に腕をまわす。
万吉はそれを為す術もなく、唖然としてみているだけだった。
「フキ、動くなっ!」
ロアルドの叫びで、可憐達はようやく蕗の存在に気付く。
そして可憐は人質に取られたのだ、とも。
蕗は可憐たちの姿を見て動きを止める。
その顔は憤怒の表情を見せていた。
それは可憐を人質に取ったロアルドに怒っているようにも見えただろう。
事実、ロアルドも可憐も、蕗の表情をそう受け取っていた。
だが蕗の内心は違っていた。
杏を殺したロアルドを憎んでいた。
そして杏を助けなかった可憐の事も同じように恨んでいた。
蕗は憎むべき相手を見た事により怒っていたのだ。
彼女の内心など可憐は知らない。万吉は知らない。ロアルドは知らない。
そんな事、誰も分かろうはずがなかった。
831御魔森ハ蕗ノ物 ◆lYiZg.uHFE :2008/11/13(木) 04:02:14
可憐は考えていた。
人質になってしまった今、何が出来るのかを。
この男は殺し合いに乗っているのだろう。
以前蕗が怯えながら話していた男の特徴とも一致している。
そんな男が人質を取ってする事など決まっている。
何も出来ないのをいい事に犯され、殺されてしまうのだ。
こんな状態になってしまったのなら可憐はどの道殺されてしまうのだろう。
ならばせめて、可憐の為に怒ってくれる蕗だけでも助けたかった。
怖くは無いと言えば嘘になる。
でも自身の死が確定していたとしても、蕗を守る為にならそれも我慢が出来た。
こんな弱い自分にも出来る事がある。
こんな役立たずな自分でも蕗を守る事ができる。
そう思うことで、勇気を湧かせる事ができた。
だから可憐は言ってしまった。
「蕗ちゃん……私の事は見捨てて逃げて!」
言わずとも結果は変わらなかったかもしれないけど、その言葉は確実に蕗のタガを外させていた。
「お兄さん達に会うんでしょ、だったら私の事は構わずに逃げて!」
「黙れ、ハカナギカレン!」
可憐は杏が死んだ事を知らない。
蕗が消えてから何があったのかを一切知らない。
だからその言葉がどんな影響を起こすかなど知るはずも無い。
蕗は、お兄ちゃんを見捨てておいて何を白々しい、と思っただろう。
お兄ちゃんが死んだのはお前のせいだ、とも思っただろう。
理不尽かもしれないが、蕗にとってはその考えは正しい事だった。
憎悪が憎悪を呼び、彼女の考えを狂わせていた。
悪魔の力に頼っておいて、代償が何も無いはずが無い。
力を求めれば求めるほど、魔へと侵蝕されていく。心を、身体を侵されていく。
そうやってお守りから力を引き出していくのだ。
832御魔森ハ蕗ノ物 ◆lYiZg.uHFE :2008/11/13(木) 04:02:45
蕗は一切の躊躇をする事もなく可憐を見捨てた。
「馬鹿なっ……」
「蕗ちゃ……?」
「ひいっ……!」
それも、可憐ごとロアルドを切り殺そうとするという方法で。
その場に居た三人は三者三様の驚き声を発する。
可憐は信じられないと言った顔で真っ二つに切り裂かれ、
ロアルドも咄嗟に避けるが、見るからに焦った顔をする。
万吉にいたっては尻餅をついて、恐怖で動けないでいた。
ズズズ、と可憐の身体が断面からずり落ち、内臓を溢れさせる。

アリスがその場にやってきたのはその時だった。
目の前で広がる惨劇に、アリスは悔しさがこみ上げていた。
だが、今すべき事は蕗を止めることだった。
「蕗、おやめなさい!」
残った二人に止めを刺そうとしている蕗へ、銃口を向けながら言う。
「秋夫もあなたにそんな事をして欲しくないって言っておりましたわ!」
その言葉に動きを止める。
やはり恋人の言葉というものは影響が多いものなのかとアリスが思った瞬間。
「秋夫って誰?」
「……へ?」
思わぬ蕗の言葉に、マヌケな声を発してしまった。
833御魔森ハ蕗ノ物 ◆lYiZg.uHFE :2008/11/13(木) 04:03:16
「あなたの恋人の事ですけど……」
「私に恋人なんていないよ?」
「あの男……わたくしに嘘を教えましたわね!」
蕗の断言にようやくアリスは騙された事に気付く。
あの時の秋夫の勝ち誇った顔がやけに憎たらしく感じてきた。
「私の恋人なんて騙ったのは誰?
 そんな気持ち悪い人、お兄ちゃんを殺したこの男と同じように、苦しめて殺してあげるわ」
だがそんな秋夫への気持ちも、蕗のその言葉で吹き飛んだ。
秋夫がいくらどうしようもない駄目人間でも殺させるわけにはいかない。
「そうですわ。わたくしが受けた依頼は彼女をもとに戻す事。
 秋夫が彼女の恋人でなくとも、それは変わりません。
 受けた依頼は必ずこなす。それがこのアリス・ナイラーザが先生から教わった事ですわ」
そう呟いて、気を引き締める。

「そこのあなた、逃げなさい」
どうみても戦力になりそうもない、尻餅をついた万吉に声をかける。
その声で正気に戻ったのか、情けない声をあげて逃げていった。
秋夫と同じように、誰かを呼んできてもらうように頼むべきだったかと少し後悔する。
そしてもう一人の、先程看取った男と同じ顔をする男を見る。
「あなたは戦えますわよね」
「……ああ」
事前に予想していた通り、感情を見る限り味方ではないようだった。
しかし蕗から狭霧を思い出すほどに強い殺気を感じ、思ったより分が悪い事を知る。
そこで背に腹は変えられずに共闘を願った。
ロアルドにとってもまたとない申し出であろう。
アリスの感情を読む力さえあれば、不意打ちをされることもない。
獲物を狙う時には殺気が強くなり、感情の色も濃くなる。
ただそれにだけ注意をすればいい。
それがあの狭霧相手にも善戦できた最大の要因でもあるのだから。
834御魔森ハ蕗ノ物 ◆lYiZg.uHFE :2008/11/13(木) 04:03:46


  ※  ※  ※  ※  ※


合計6人の集団が一同に会してから暫くが過ぎた。
既に時宗、燕、絵理花が情報交換を終え、次の人物へと視線が移る。
「俺の番か」
そう言って皆の顔を見回すケネス。
「知ってるやつもいるかもしれないが、俺は俳優をやっている。
 だから、知り合いは特にいないが一方的に知られている可能性はあるな。
 ここに来てからの事は、後で詳しく話すがE-7の辺りで変な怪物にいきなり襲われた。
 それでなんとか学校近くに逃げてきたところに」
「私と会ったわけだな」
「ああ、そうだ。それでそこからはずっと一緒さ」
時宗の言葉に頷き、そこで言葉を切る。
「それで、その怪物……とは一体?」
目深に被ったハンチング帽から目を覗かせ、靄場は先を促す。
彼の脳裏に浮かぶは、よく知っている怪物の姿。
果たしてそれの事なのかどうか、聞き逃さないように耳をすませる。
その妙な迫力にやや気おされながら、ケネスは続けた。
「あ、ああ、そんな急かすなよ。それで怪物の事だったな……。
 気持ち悪いからあまり思い出したくないんだが……触手が伸びてきたんだよ」
「……触手?」
思い出して震えているケネスの言葉に時宗が疑問の声をあげ、靄場は無言で先を促す。
「ああ、うにょうにょと気持ち悪い触手だ」
「それで、大丈夫だったんですか?」
その様子を想像したのか、燕が気持ち悪そうな表情で心配をしている。
「弱点だったのかどうか知らないが、煙草の火を押し付けたら悶えて触手が灰になったんだ」
そこまで言ってケネスが話を終えると、靄場は納得の言ったように頷き、口を開いた。
835御魔森ハ蕗ノ物 ◆lYiZg.uHFE :2008/11/13(木) 04:04:17
「恐らくそれは後藤戦という参加者だと思いますね」
「ほう、君は知っているのか?」
靄場の言葉に、時宗は興味深そうに聞く。
それに答えるように、淡々とその根拠を話す。
「ええ、僕はホラー作家という奴でしてね。僕の著書に、その特徴と一致する化け物が登場するんです。
 そしてこの名簿にも名前が載っている。となればそうだと考えるのが普通でしょう」
「ふむ……では君はその化け物の弱点なんかも知っているのではないか?」
「おお、そうだ。それが分かれば……!」
ケネスは時宗の言葉に興奮して言う。
その様子に苦笑しながら靄場は話始めた。
「ケネスさんが言っていた通り、後藤戦自体の弱点は火です。
 彼の一族は近親相姦を繰り返していた為に、彼は極端に火の弱い身体で生まれついたんです」
「後藤戦『自体』?」
靄場の発言に時宗は目ざとく反応する。
「ええ、後藤戦には寄生虫がついているんです。それに寄生された人間は触手人間となってしまいます。
 そして寄生虫は寄生先の特徴も引き継ぎます。それが弱点であっても」
「なるほど。貴重な情報をありがとう」
「では次は僕の番ですね」
そう言って靄場が話し始めようとした時、突然。
「蕗ちゃんを助けて下さいッス! お願いッス!」
一人の男がそう言いながら現れた。

ただ事ではなさそうなその様子に、燕と舞梨が駆け寄り事情を聞く。
男の話をまとめるとこうだった。
彼の名前は真多秋夫。
秋夫の彼女の兄弟が彼女の目の前で殺されて、怒りで暴れているらしい。
それと六翼に漆黒の剣と盾という力を得たらしい。
彼女を元に戻したい。
感情を読めるらしいアリス・ナイラーザという参加者が先に向かっていて、増援を頼まれた。
836御魔森ハ蕗ノ物 ◆lYiZg.uHFE :2008/11/13(木) 04:04:49
「聞く限り我々でも厳しいのではないか?」
秋夫が全て話し終えたのを確認して、時宗は難しそうな顔で言った。
ケネスもそれに頷く。
「でもこのままじゃ秋夫さんが可哀想です。私たちで一緒に行ってあげられませんか?」
「舞梨ちゃんの言うとおりですよ」
反対に舞梨と燕が賛同の声をあげる。

「じゃあこうしよう」
突然靄場がそう言って立ち上がる。
みんなの注目を浴びる中、黙々と話始める。
「僕と、時宗さん、ケネスさんの3人で秋夫君の彼女のもとへ向かおう」
「しかし、危険でないのか?」
「そうだぜ、聞けば触手野郎みたいな化け物に変貌してるっていうじゃないか」
時宗とケネスが咄嗟に反論する。
「行くなら全員で行ったほうが……」
「そうですよ」
燕と舞梨も、また別に意見をいう。
「いや、絵理花ちゃんのような子供を危険に晒すわけには行かない。
 そのために燕君、きみには残ってもらいたいんだ。僕みたいな華奢な男では戦力的に不安だしね」
「そういう事なら分かりました」
納得する燕をよそに、舞梨が口を開こうとする。
「陸朗さん、私は」
「舞梨ちゃん。君もまだ子供だ。進んで危険に飛び込む事はない。
 僕達大人に任せておくんだ」
しかし靄場の咄嗟の返しに口を噤む。
そして時宗のほうへ向き、言葉を続ける。
「時宗さん。確かに危険では在りますが、彼女が正気に戻らなかったらいずれぶつからなくてはいけません」
「それもそうだが……」
「それにどんなものにだって弱点はあります。ケネスさんも身を持って知っているでしょう?」
ケネスはその問いに頷くしかできない。
837御魔森ハ蕗ノ物 ◆lYiZg.uHFE :2008/11/13(木) 04:05:20
全ての文句を説き伏せた靄場は舞梨に向き直る。
「舞梨ちゃん、時宗さん達に銃を渡してやってくれないかい。それと手榴弾をいくつか」
その言葉に、時宗たちが武器を持ってないことを思い出し、舞梨は慌ててデイパックを漁る。
燕も思い出したようにH&K P7を取り出し、時宗へと渡した。
「これ、返しますね」
「ああ、すまない」
そして舞梨はケネスへとベレッタM92と予備弾を、時宗へと催涙手榴弾と発煙手榴弾を渡す。
「では案内してくれ」
「みなさん、本当にありがとうッス!」
準備が整うと早速秋夫を促して出発していった。



秋夫に案内されて出発をして暫く後、靄場は思い出したように秋夫へと質問を始める。
全員足を止めることなく、前を向きながらそれを聞く。
「そういえば他に何か知っている事はないかい?
 他の危険人物とか、そういうのでもいいんだけど」
秋夫も手伝ってもらうのだからそれくらい話してもいいと思ったのだろう。
又聞きの情報だが、それを靄場達へと伝える。
「そうッスねぇ。確かアリスちゃんが、狭霧って男は危険な連続殺人犯だって言ってたッス」
「その男の特徴は?」
「腰まで伸びた長髪に長身の美形の男って言ってたッス」
三人はその情報を脳内にきっちりと記憶する。
「あとアリスちゃんが、金髪ツインテールの娘がお爺さんを毒殺したって推理してたッス」
「毒か……厄介だな」
潜伏している人間が一番厄介だと言うのは彼ら自身が一番知っている。
三人はその少女についても記憶にとどめておく。
「他には何かあるかい?」
「う〜ん………………あっ、そうッス!」
靄場の言葉に秋夫は唸ったかと思うと、やがて何かを思い出したのか大きな声をあげた。
838御魔森ハ蕗ノ物 ◆lYiZg.uHFE :2008/11/13(木) 04:05:51
「大事な事をアリスちゃんに言い忘れてたッス!
 変貌した蕗ちゃんの姿、どこかで聞いたと思ったら、モゲラッチョ・ヨモギーノッス!
 蕗ちゃんの事を調べる過程で見ただけッスから忘れてたッス!」
興奮したように話す秋夫の言葉に三人は怪訝そうな顔をする。
「モゲラッチョ・ヨモギーノ? 何だい、それは?」
「ヨモギーノは幸運勇者スポポロスってアニメのラスボスキャラッス!
 それで蕗ちゃんの格好はその最終形態ッス!
 スポポロスがヨモギーノを倒して元に戻してたから、蕗ちゃんも元に戻せるッス!」
質問には律儀に答えながらも益々ヒートアップしていく。
その様子に多少引きつつ、重要な事を言ってるのに気付き、聞き返す。
「元に戻せる? どうやってだい?」
「蕗ちゃんはきっと闇のお守りでパワーアップしてるッス。
 だから闇のお守りさえ蕗ちゃんの手元になければ、当然元に戻るッス。
 あともう一つ方法があるッス。闇のお守りの力は有限ッス。
 だから力を引き出し続ければ空になってこれまた元に戻るッス。
 剣や盾や翼を壊し続けたり、蕗ちゃんの攻撃を避け続けてるだけでも大丈夫ッス」
少し叫び疲れてきたのか声を落としながら一気に話す。
「そうか、これは貴重な情報だ。ありがとう。これで彼女も何とかできるな」
靄場はその情報に笑顔になり、秋夫をねぎらう。
「でも君はこれで用済みだ」
その瞬間、醜く笑った靄場は銃を撃った。


  ※  ※  ※  ※  ※

839御魔森ハ蕗ノ物 ◆lYiZg.uHFE :2008/11/13(木) 05:37:13
惨劇の場から逃げていった万吉は必死の形相で蕗達から離れていた。
死というものに馴れていたはずだった。
パロロワの中にも、読んでて気持ち悪くなるようなのだってあった。
だから死体を見たとしても大した事はないと思っていた。
でも目の前で可憐が死んだのを見たとき、とてつもない吐き気を催してしまった。
架空の物語程度で、死なんてものに馴れているはずがなかったのだ。
ただつもりになって、無意識にソレへの恐怖をさけていただけ。
それが可憐の死で打ち砕かれた。
初めて見た現実の死体。それも親族の死体。
老衰や病気で死んだわけではない。
紛れもない他殺死体だ。
ついさっきまで生きていた人間が、ちょっとした悪意で物言わぬ肉になってしまったのだ。
そのグロさは、いつも喜んで書いていたパロロワとは比べ物にならない。
目の前で起きた死は、熱血の中死ぬわけでもなく、感動を呼び起こす死でもなく、
驚くほどあっさりで、気持ち悪いほどリアルで、そして何よりも、救いが無かった。
身近で起きた死に、万吉はなおの事生への欲求が強まっていた。
何より、間近で浴びた物凄い殺気が彼の恐怖心を煽っていた。
死にたくない。誰かに助けてもらいたい。ただそれだけを考えてひた走る。
そんな時に、4人組の男達の姿を発見する。
相手がどんな人間か、殺し合いに乗っていそうかどうか。
心細さから、そんな事など考えてもいられなかった。
しかし、声をかけて助けてもらおうと思った直後、彼は見てしまった。
一人の男が不意打ちで一人の男を撃つ場面を。
彼は涙目になりながら、見つからないようにその場から逃げ出した。
840御魔森ハ蕗ノ物 ◆lYiZg.uHFE :2008/11/13(木) 05:37:52
彼の心は限界に達していた。
支給品に、死亡フラグの代名詞とも呼ばれるカレーと拡声器を渡され、
最初に出あったアリスは危険な釘宮のジンクスを持つ参加者で、
可憐と合流してみれば、可憐は同作品キャラのジンクスに該当する親族で、
話の流れで死亡フラグと思われる蕗のもとに自ら進まなくてはならなくなり、
突然マーダーに可憐が人質にとられ、
消えた蕗が帰ってきたと思ったら、これまたマーダーになっており、
そこに現れた別の少女は、最初に出あった少女の名、アリスを騙っている怪しい人物で、
さっき見た集団はステルスが混じっていた。
おまけに可憐が最初に出あった少年もマーダーだったというではないか。
万吉の周りには死亡フラグとマーダーだらけ。
こんな狭い範囲にこれだけの数が集まるとはどう考えても異常だ。
万吉には、書き手が万吉を殺しに来てるとしか思えなかった。
それに、蕗の突然のセオリー無視ともいえる行動に変貌。
序盤に死亡フラグやマーダーの一点集中。
あっさりとしたズガン死。
おまけに開催時に個人で説明を受けたことと、名簿が真っ白だったこと。
これらの事から、彼はこれがカオス系統のロワだと予想していた。
そしてカオス系統のロワなら、誰がどんな変貌をしているか分からない。
殺し合いをしそうにない善人でも狂マーダー化している可能性もあるのだ。
だからもう誰も信用できなかった。


  ※  ※  ※  ※  ※

841御魔森ハ蕗ノ物 ◆lYiZg.uHFE :2008/11/13(木) 05:38:23
「燕さん……やっぱり私も行きたいです」
舞梨は、靄場たちが出発してからずっと迷っていた。
もし相手が危険なようだったら、靄場はきっと交渉せずに殺してしまうだろう。
そうやって死んだピピンを思い出す。
靄場が悪いわけじゃない。自分が甘いだけなんだって分かっている。
それでもできるだけ誰にも死なないでほしかった。
ぎりぎりまで説得をしたかった。
もう太郎の時のように自分ひとりではないのだから。
押さえ込んで縛ることも出来る。なにも殺す必要なんかない。
そう思うと居ても立っても居られなかった。
「駄目だよ舞梨ちゃん、危険だよ」
「そうだよおねえちゃん、私たちが行っても何もできないよ」
しかし彼女らは舞梨の実力も心中も知らない。
だからそう答えるのは当然と言えた。
「私なら大丈夫です!」
「何が大丈夫だって言うんだい、舞梨ちゃんはまだ子供じゃないか?」
燕とて戦場カメラマン、子供の兵士などいくらでも見てきた。
普通なら外で元気に遊んでいるべき少年が銃を手に持ち、敵兵を殺していく。
そして何れ同じように敵兵に殺されていく。
そういう日常が世界にはあるという事など嫌というほど知っていた。
しかしそれは紛争地帯の、そうでなきゃ食べてもいけない場所での話だ。
彼女は平和な日本人の女の子。
戦えるはずがない。人など殺せるはずがない。
そう思っていた。そしてそう願っていた。
「私は戦えます!」
だが舞梨のその言葉に彼は悲しくなる。
「戦場って言うのは人を殺す覚悟のない人から死んでいくんだ!
 そういう殺伐としたのは僕たち大人に任せておけばいいんだよ!
 舞梨ちゃんみたいな子供が、そんな覚悟持つ必要ないんだ!」
だから舞梨の言葉を否定したくて、考え直してほしくて必死に言葉を紡ぐ。
しかしそれは既に意味の無い事だった。
842御魔森ハ蕗ノ物 ◆lYiZg.uHFE :2008/11/13(木) 05:39:13
「私はもう……人を、太郎さんを殺してしまいましたから……」
燕はその言葉に絶句した。
「太郎さんは殺し合いに乗ってました。説得もしたけど聞いてくれませんでした。
 だから私が太郎さんを殺さなきゃ、被害が広がっていくから……」
舞梨の重い告白に言葉が出ない。
確かに今は殺し合いを強いられている。
戦わなきゃ生きていけないかもしれない。
でも、だからこそ燕は子供たちに戦ってほしくなかった。
人を殺してしまった子供が平和な日常に戻れる筈がない。
そして少しでもそんな事をする子供が減るように、世界が平和になるようにと、
そう願ってありのままの戦争を世界に伝えようと思ったのだから。
しかし、すでに決意を持ってしまった彼女を止める言葉が見つからなかった。
ふと燕の視界に絵理花の姿が映る。ヒートアップしていたため彼女の事を忘れていたようだ。
「舞梨ちゃんを一人で行かせるわけにはいかない、そうなれば僕も行くよ。
 でも絵理花ちゃんを一人にするわけにもいかない。
 そうなると今度は絵理花ちゃんが危険だ」
今度は絵理花をだしにする形で思いとどまらせようとする。
もう形振り構っていられなかった。
だが舞梨は一切引かない。
「武器ならあります。これでも足りないようだったら、北へ少し向かったところに、
 重くて持ちきれなくなった武器を置いてきたので、それもあります。
 燕さんに迷惑はかけません!」
燕が本気で身を案じてくれているのが分かった。
だから暗に、自分の身は守れるから絵理花の身だけを守ってあげるように言う。
「おにいちゃん、行くかどうかはともかく、その武器だけでも取りに行くのはどうかな」
仕舞いには絵理花までそんな事を言うに到り、ついに燕は折れた。


  ※  ※  ※  ※  ※

843御魔森ハ蕗ノ物 ◆lYiZg.uHFE :2008/11/13(木) 05:39:43
銃声と共に秋夫が前のめりに倒れる。
その背中には穴が開いていた。
「な……ごふっ、なんで……」
「集団でいるから安全だと思ったんだろうけどね、僕みたいなのもいるから気をつけたほうがいいよ。
 もっとも今更気をつけてたところで手遅れけどね」
秋夫は倒れたまま靄場を睨みつける。
動こうとしているようだが、身体がピクピクとしか動いていない。
背中に空いた穴から血が見る見るうちに流れていく。
時宗は医学の見地から、彼が助からないだろうことを悟った。
突然の凶行に時宗達は驚きを隠せなかった。
咄嗟に二人は靄場へと銃を構える。
「一体どういうつもりかね」
時宗の詰問にも靄場は全く臆さない。
どころか微笑を浮かべながら言った。
「どういうつもりも何も……、このまま助けに行ったら困るのは時宗さん達でしょう?」
「何を言っている……」
その言葉に動揺するが、それを抑えて言う。
「彼がアリスさんの力の話をした時、お二人は随分と動揺なさっていましたよね。
 それに、彼を助けることに対してやたら否定的だった。
 もしかしたらアリスさんと会うとまずい事を考えているんじゃないか、って思ったんですよ。
 例えばそう……集団へと隠れて中から殺す、とかね」
秋夫が蕗ちゃん、アリスちゃんとうわ言のように口ずさむ。
それを横目で確認しながら、時宗は答える。
「……何のことだか分からないな。私達はただ単に、無闇に危険へと飛び込みたくないだけだ」
必死で動揺を押さえつけるが、彼はそれができているかどうか自信がなかった。
「確かにそれもあるかもしれませんね。ですが隠す事はありませんよ」
確信に満ちているのだろう。靄場はニヤリと笑う。
「おい、あんた、一体何なんだ!」
ケネスが耐え切れずに怒鳴った。
何もかもを見透かされている、これほど不気味な事はなかった。
844御魔森ハ蕗ノ物 ◆lYiZg.uHFE :2008/11/13(木) 05:40:43
「見ての通り、僕も殺し合いに乗っているだけのただの男ですよ」
もはや靄場が何を考えているのか理解できなかった。
「分からないな、君が彼と一緒に行こうと薦めたのだろう。
 なぜ殺し合いに乗っているのに彼と行こうとした。
 彼を殺したのはアリスと会いたくないだけなのだろうが、
 それなら態々ついていかなくても彼の頼みを断ればよかっただろう。
 そうすれば私たちに正体をバラさずにもすんだ」
「ええ、会いたくないだけならそうしたかもしれません。
 でも僕はどうせなら彼女に死んで欲しいと思っているんです。
 蕗って娘も死ねばいう事はありません。
 だから僕たちで来たんですよ、余計な人達が助けに行こうとしないようにね」
靄場のアリスと蕗に死んで欲しいという発言に、秋夫が悔しそうに歯噛みをする。
「余計な人? 蒼井燕一人が行った所で何も変わらないだろう」
率直な疑問をあげる。
「いえ、彼ではなく舞梨ちゃんが問題なんです。
 彼女は正義感もあるようだし、あれで中々強いんですよ。
 下手に助けに行かれるとアリスさんが生き残ってしまう可能性が増えるのでね」
靄場が話した舞梨の情報に二人は驚く。
「それでまあ、あなた達も殺し合いに乗っているようですから、こうして一緒に来てもらったんです。
 彼を始末するのも簡単になりますからね」
「それで、それを我々に打ち明けてどうするつもりかね。
 君が殺し合いに乗ってるから、私達に死んでもらうという訳でもないんだろう」
「単純なことです。協力をしませんか?」
彼等には、ハンチング帽から覗く靄場の目がギラリと光ったような気がした。
845御魔森ハ蕗ノ物 ◆lYiZg.uHFE :2008/11/13(木) 05:41:14
「いきなり彼を撃った君を信用をしろとでも?」
「別に信用しなくても構いません。あくまで利用しあうだけです。
 お互い殺し合いに乗っているんですから当然でしょう?
 まあ先ずはアリスさんたちの戦いの決着を待ちましょう。
 戦いが終われば、どういう結果になろうとも大分疲弊しているはずです。
 そこを僕達が仕留める……と。
 僕としてはその後も協力できると嬉しいですがね。
 後藤戦に狭霧とまだまだ強力な参加者はいますから。
 その時に都合よく集団に潜り込めてるとは限りませんし」
靄場は二人が勧誘を受け入れると半ば確信しながらそう言った。
秋夫はいつのまにかピクリとも動かなくなっていた。

時宗は暫く黙考する。
だが今ここでこの男と敵対するのは得策ではないという結論に到った。
今ここで殺すのは簡単だが、舞梨達の信用を失ってしまう。
下手すれば秋夫、靄場殺しの犯人と思われるかもしれない。
そうなれば他の参加者にも色々と吹聴される可能性がある。
それだけは避けたい。
それにこの男は信用はできないし、機を見て切り捨てた方がいい危険な男だが、
この男の能力は生き残る上でも捨てがたい。
少なくとも蕗という少女やアリスを殺すまでは協力しても構わないと判断する。
「分かった……協力しよう」
時宗は銃を下ろし、そう言った。
846御魔森ハ蕗ノ物 ◆lYiZg.uHFE :2008/11/13(木) 05:42:13
ケネスはその様子を見て、気が気ではなかった。
どう見ても靄場が危険である事は分かっていたし、何より彼の目つきが嫌だった。
それにケネスの命を脅かしたあの触手人間。
あれを生み出した男が彼だと言うではないか。
あんなおぞましいモノを創作する、どう考えても正気の沙汰じゃない。
頭がイカれてないとあんな化け物は生み出せない。
後藤戦の出生にしてもそうだ。
近親相姦を繰り返す一族なんて、どんな頭をしたら思いつくというのか。
ケネスにとっては靄場も、こんな殺し合いを始めたアルベルトとなんら変わらなく見えていた。
だが時宗が協力する以上、ここで協力しないと言えばそのまま殺される。
なら今は従っておいて、隙を見て殺すべきだと判断した。
「分かったよ、俺も協力するさ……」
時宗に続き、ケネスも銃を下げて言った。


  ※  ※  ※  ※  ※


舞梨の案内に従い、置いてきた武器の元へとやってきた燕達。
そこにあったのは二つの鞄と二つの死体。
死体は整えられており、そのすぐ近くにデイパックが置かれている。

燕はなんだかんだでこれまで危険という危険にあってこなかった。
だが死体を見て、今二人を守れるのは自分だけなのだと気を引き締める。
荷物を探っている時なんかは隙だらけになってしまう。
そのため、念のためにと周囲の警戒を始める。
だから、二人への注意を疎かにしていた。
847御魔森ハ蕗ノ物 ◆lYiZg.uHFE :2008/11/13(木) 05:42:44
舞梨は真っ先にデイパックへ向かっていた。
置いてきた武器の手榴弾とパイファー・ツェリスカ。
全部舞梨が持っていったら、以前のように重くて持ち運べないだろう。
だから手榴弾は兎も角パイファー・ツェリスカは、マテバを燕に渡して舞梨自身が持つ。
蕗の所へスムーズに行く為に、そんな事を考えながらデイパックに手をつけていた。
だから、警戒することなくデイパックを開けてしまった。

燕を横目で見ながら、これは武器を手元に置いておくチャンスだと絵理花は思っていた。
燕が見ている時に武器を見つけてしまうと、以前のようにとり上げられる可能性がある。
だけど今は周囲の警戒で、絵理花の方を見ていなかった。
人を殺したと告白した舞梨を少し警戒しながら。
だがこの殺し合いの中、他人に命を預けなくちゃならないというのは不安なのだ。
自分でも自衛の武器を持っておきたかった。
出会う相手出会う相手、思い通りに行かないこともあって、焦っていた。
だから、無警戒にデイパックを開けてしまった。


―――そして人知れず手榴弾のピンが外れる。


燕の身体に突如凄い悪寒が走る。
彼はこれまでの経験で知っていた、これが危険が訪れる予兆であるという事を。
彼には生まれつき危険察知能力が備わっていたのだ。
だから戦場カメラマンとして奥の奥まで取材をしてもこれまで無事に生きてこれた。
その彼が、少女の危険を感じ取る。
燕は荷物も捨てて咄嗟に駆け出していた。
その際に自分がどうなるかなんてのは考える必要もなかった。
ただ、これ以上子供の死なんて見たくなかったから。
大人の勝手なエゴで、子供が犠牲になるなんて我慢ができなかったから。
だから燕は死ぬのを覚悟しつつも危険へと飛び込むのだ。
848御魔森ハ蕗ノ物 ◆lYiZg.uHFE :2008/11/13(木) 05:43:13
絵理花はデイパックに腕を突っ込みながら燕の咆哮を耳にする。
何事かと振り向いてみると、必死な顔で絵理花へと走ってくるのが見えた。
その形相たるや凄まじく、思わず危険を感じ、デイパックを持ったままじりじりと後ろへ下がる。
「絵理花ちゃん、危険だ、逃げろ!」
その言葉に、燕を警戒しながらも舞梨を見る絵理花。
しかし不審なことをしている様子は無い。
ただ絵理花と同じように驚いているだけ。
すぐに周囲も見回してみる。
しかしやはり誰も居らず、結局何が危険かも分からなかった。
だが一応言葉に従って、走る。
重い荷物を持って。

燕は自分の言葉を後悔していた。
自分でも驚くほどに焦っていたのだろう。
思ったまま叫んだせいで、何がどう危険なのかを言うのを失念していた。
おかげでちゃんと自分の言葉が伝わらなかったらしく、デイパックを持ったまま逃げている。
彼はあのデイパックが危険だとなぜか確信していた。
今ここにきて、彼の勘は驚くほど冴え渡っていたのだ。
そしてこのままでは絵理花が助からないことも分かってしまった。
しかしこのまま諦められるはずもなかった。
自分はどうなろうと、まだ幼い絵理花は助けたかった。
その思いで全力で走る。
火事場の馬鹿力という奴だろう、燕は自分の足が僅かに早くなるのを感じた。
子供で運動が苦手というのに加えて、重いものを持って走っている事もあって直ぐに追いつく。
そしてデイパックを掴み、渾身の力で絵理花を突き飛ばした。
走っている勢いもあって、絵理花はゴロゴロと転がっていく。
そして自分はデイパックに被さるように倒れこむ。
その瞬間、デイパックは燕を巻き込み炎上、爆発した。
849名無し草:2008/11/13(木) 08:37:09
むむっ?
とりあえず支援
850名無し草:2008/11/13(木) 09:40:28
続きはしたらばに投下されてるっぽい
851御魔森ハ蕗ノ物 ◆lYiZg.uHFE :2008/11/13(木) 15:56:17
舞梨は突然駆け出した二人を見て、開けたデイパックをそのままに慌てて追いかけていた。
しかし彼女が追いついた時、爆音と共に燕が燃える。
舞梨はなぜ彼が燃えているのか分からなかくて、ただ呆然としていた。
「舞梨、ちゃ……絵理花ちゃん、無事で、よかっ…………」
燕は暫く熱さと痛みで悶えていたが、舞梨と絵理花の無事を確認すると気絶するように息を引き取る。

「おいテメェ……どういう事だ!?」
絵理花は起き上がると演技をするのも忘れて、睨みながら舞梨へと近づく。
その言葉に舞梨は我に返った。
「え……?」
「テメェがこのデイパックに誘導したんだよなぁ……、忘れたとは言わないよな?」
「!? そ、そんな、私知らな―――」
「しらばっくれるな!」
絵理花は否定の声をあげる舞梨の言葉を切り捨てるように怒鳴る。
一歩間違っていたら死んでいたのは絵理花の方だった。
怒るのも当然と言えるだろう。
「そうか、これがテメェのやり方か……
 そうだよな、テメェみたいなガキが生き残るには騙し討ちしかないもんなぁ?」
「違う! 私はそんなつもりない! 信じてください!」
「信じられるか!」
疑心暗鬼に陥る絵理花に必死で弁解する。
だが絵理花は一切聞かずに、燕が突き飛ばした時に腰から零れ落ちたのだろう銃を拾って、舞梨に突きつけた。


  ※  ※  ※  ※  ※

852御魔森ハ蕗ノ物 ◆lYiZg.uHFE :2008/11/13(木) 15:56:49
一発の銃弾が切っ掛けだった。
たった一人の狂男によるたった一発の凶弾。
それが、全ての元凶だった。

魔王は、冒険家を殺害し、さらに女性も殺害した。
冒険家に導かれた探偵は、青年に助けを呼ばせ、
女性の死により、一人の書き手に恐怖を植えつけた。
青年は集団に助けを求め、集団を二つに別れさせた。
作家の集団は探偵を殺すために青年を騙して殺し、
残された少女も作家の罠により疑心暗鬼に陥った。

次々と生み出されていく悲劇。
止まる事のない悪夢。
それは未だ終局を見せることなく、加速を続ける。

騙す者、疑う者、戦う者、そして死ぬ者。
世界の全ての悪意が詰まったようなこの魔の森で、未だ殺し合いは続いていた……。



【B-3 森の中/1日目 昼】
853御魔森ハ蕗ノ物 ◆lYiZg.uHFE :2008/11/13(木) 15:57:19
【坂木蕗】
【装備】:闇のお守り(闇の剣、闇の盾、闇の翼を作り出しています)
【所持品】:なし
【状態】:深い絶望、激しい憎悪、ぱんつはいてない
【思考・行動】基本:皆殺し。
1:アムンゼンならいたぶりながら殺す。
2:参加者もアルベルトも全員殺す。
備考:闇の剣、闇の盾、闇の翼の威力は負の感情の強さによって変わります

【ロアルド・アムンゼン(その2)】
【装備】:SPAS12(0/8)、勇者スポポロスの剣
【所持品】:支給品一式、首輪探知機、ローラーボード
【状態】:右足に軽い凍傷、左手親指欠損 、全身擦り傷
【思考・行動】 基本:参加者を皆殺しにして、再び永遠の眠りにつく。
 1:アリスと共闘して蕗を倒す。
 2:平行世界の自分を苦しめて殺す。
 3:見かけた人間を手段を選ばず殺す。なお少女なら犯した後に殺す。

【アリス・ナイラーザ】
[状態]:健康
[装備]:メイド服、坂木蕗のネコ耳カチューシャ、リボルバー(残弾7発 予備16発)
[道具]:支給品一式(花子の不明1)
[思考]:基本行動方針:他の参加者と協力し、脱出。狂人を止める。
第一行動方針:アムンゼンと共闘し、蕗を止める。
第二行動方針:狭霧嘉麻屋を捜し出し、可能なら拘束するか殺す。
第三行動方針:さっきの少女や狭霧嘉麻屋が危険人物だと、できるだけ多くの人に教える。
第四行動方針:18時までにF-5に到着する。
[備考] 特殊能力:相手の感情が色で見える。


854御魔森ハ蕗ノ物 ◆lYiZg.uHFE :2008/11/13(木) 15:57:50
【C-3 森の中/1日目 昼】

【靄場陸朗】
【装備】:ウェルロッド(銃弾13/20)
【所持品】:支給品一式、ベネリM3(銃弾20/21)、コルト・ガバメント(6/7)、.45口径弾(7)、破片手榴弾、黄燐手榴弾
【状態】:健康
【思考・行動】 基本:とりあえず全員殺そう。
1:時宗・ケネスと協力して、アリスと蕗を殺す。
2:舞梨については今はもうただの高性能兵器としか思っていない。
3:余裕があれば良質な『ネタ』を探したい。

【ケネス・シルバー】
【状態】:健康
【装備】:ベレッタM92(15/15)
【道具】:切れ味がほぼゼロになった果物ナイフ、その他食料、9mm.パラペラム弾(32)
【思考】:基本:死にたくない。
1:隙を見て靄場を殺す。
2:時宗・靄場と協力して、アリスと蕗を殺す。

【剣時宗】
【装備】:H&K P7(14/18)
【所持品】:支給品一式、発煙手榴弾、催涙手榴弾
【状態】:健康
【思考・行動】基本:何が何でも生き残る。
1:ケネス・靄場と協力して、アリス・蕗を殺す。
2:靄場は機をみて切り捨てる。
855御魔森ハ蕗ノ物 ◆lYiZg.uHFE :2008/11/13(木) 15:58:21
【鈴木万吉】
【装備】なし
【所持品】支給品一式
【状態】健康
【思考・行動】 基本:生還する。
1:死にたくない。
2:生活については帰ってから考える



【D-3 森の中/1日目 昼】

【鍵谷 絵理花】
【装備】:防弾チョッキ、ベレッタM92F(15/15)
【所持品】:支給品一式(不明支給品なし)、青酸カリ、煙玉2個、犬のぬいぐるみ
【状態】:健康、激昂
【思考・行動】
基本:生き残ってアルベルトを倒す、不要な人間は殺す。
1:舞梨を殺す。
2:死体から首輪を回収したい。
3:色々と胡散臭いケネスに警戒。頭がキレ、使える時宗と靄場は警戒しつつも利用するだけ利用する。

【甲坂舞梨】
【装備】:なし
【所持品】:支給品一式、グロック26(7/10+1)、マテバ 6 Unica(6/6)、357マグナム弾(12)、
       グロック26予備マガジン(10発)×1、照明手榴弾、音響手榴弾
【状態】:健康、混乱
【思考・行動】基本:殺し合いを止めたいが、説得に応じない相手は殺すしか思いつかない。
1:絵理花を説得する。
[備考]:能力は超人的だが、何分子供なので極度の緊張や動揺には弱く、隙がそのときに生じてしまう
856御魔森ハ蕗ノ物 ◆lYiZg.uHFE :2008/11/13(木) 15:58:51



※透視スコープと双眼鏡(100倍ズーム)は秋夫の遺体の近くに落ちてます。
※李飛龍の青龍刀は可憐のデイパックの中にあります。
※煙玉1個と工具は燕のデイパックの中or燕の懐にあります。
※ベレッタの予備弾薬40発は燕のデイパックの中にあります。



【ロアルド・アムンゼン(その1) 死亡】
【墓凪可憐 死亡】
【真多秋夫 死亡】
【蒼井燕 死亡】
【残り35人】
857御魔森ハ蕗ノ物 ◆lYiZg.uHFE :2008/11/13(木) 16:00:01
長かったですが投下終了です。
858名無し草:2008/11/13(木) 20:39:50
投下乙です!魔王蕗怖ぇ……だけど、戦闘力は一般人のはずなのに靄場が蕗より怖く見えるのは俺だけだろうか。
大人数が絡み合っていく臨場感がすごかったです。
859名無し草:2008/11/13(木) 21:02:26
まずは大作GJ!
感想は落ち着いてからじゃないとできそうにないです。
今はすごい! という言葉しか思い浮かびません。
860名無し草:2008/11/14(金) 21:56:45
投下乙!
大人数を上手くさばけてると思いました。
861名無し草:2008/11/14(金) 23:44:17
移転に気付かなかった…
862名無し草:2008/11/15(土) 05:12:26
色々wiki更新しといたけど、伝わった気持ち -Woman in the dark-のSSの最後のキャラ追跡表的なのだけができない。
テーブル作ろうとすると何か本文の改行が全部なくなって訳分からなくなる。
というわけで誰か頼んだ。
863名無し草:2008/11/15(土) 15:46:58
すげえ大作だ……最大限の賛辞をあなたに!
864名無し草:2008/11/22(土) 09:02:40
ウツボスレ
865名無し草:2008/11/22(土) 09:18:31
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866名無し草:2008/11/22(土) 13:29:51
活性化に一石を投じたいが保守しか出来ん
867名無し草:2008/11/22(土) 15:14:21
死者スレとか書いてみたいけどネタが浮かばないw
868瞼の裏には母の姿 ◆d3hAP9FFr2 :2008/12/10(水) 20:04:59
投下します。
869瞼の裏には母の姿 ◆d3hAP9FFr2 :2008/12/10(水) 20:05:58
平原を歩く3人の人影。
誰一人話すことなく、ただ荒い息使いのみが聞こえてくる。
その様子は、あえて例えるなら――死者の歩み。
ただ、休む場所、手当をできる場所を求め、歩き続ける。

――診療所が見えた時、わずかな期待が松井司の心に沸いたのは無理もないだろう。

3人の人と、背負われた1匹は診療所へと入っていく。
そこはすでに誰もいなかったが、同時に誰かがいたことを伝えてくれる。
人のわずかな残り香、体温の残滓、そして立てかけられた看板がそれを伝えてくれた。
フーリエを横にし、桃太郎の治療を始める。
とはいえ、桃太郎の治療は応急処置に毛が生えた程度のものでしかないが。
血を洗い流し、消毒をし、包帯を巻く。その程度。

そして――フーリエはすでに誰が見ても致命傷だった。
手を着けることは誰にもできない。
そのにいる人々は、ただ、自らの無力を感じるだけしかできなかった。

人がいるのにも関わらず音のしない、独特の空気の重さ。
それを破ったのは、一匹の、声。

「か……あ……さん?」
その声に反応したのは鍵谷美和子だった。
すっと、フーリエに近づき、その前脚を取る。
「ええ、そうですよ」
柔和な声が静かな診療所に響く。
フーリエはその声を聞き、薄く笑った。
瞼は閉じたまま、すでに動かすことができない。
870瞼の裏には母の姿 ◆d3hAP9FFr2 :2008/12/10(水) 20:06:40
「はは……かあさん……やっと……会えた……」
「ええ」
「探して……た」
「私もですよ」
「今度……は……離れない?」
「ええ、もう離れないわ」
「そ……う……う……れ……なんだか……あんしんしたら……ねむく……」
「……眠るまで私が側にいますよ」
「う……ん……お……や……す……」

フーリエの声が途切れる。前脚に込められた力が抜ける。
命のともしびが消え、躯となった体は、ただ、そこにある。
ただ、重い空気が包んでいた。わずかな紅茶の香りとともに。



フーリエの躯、そして泉和哉の遺体を埋めようと、
重症の桃太郎を診療所へと残し、二人は外に出る。
司は穴を掘りながら、気になったことを尋ねようと口を開く。

「美和子さんのこと……母さんって。フーリエも美和子さんのこと、分かっていたのかな」
司が声をかける。彼女が研究員として働いたことはすでに本人の口から聞いている。
だから、司はフーリエも彼女のことを知っていたのかもしれない、そう考えていた。

だが、
「司ちゃん。それは違うのよ」
美和子の声の意味は否定だった。その声はいつもの柔和な声でなく、固い。
その言葉に、口調に驚き、司は目を見張る。
美和子は柔和な笑みは崩さぬまま、固い口調で司に告げる。
871瞼の裏には母の姿 ◆d3hAP9FFr2 :2008/12/10(水) 20:08:12
「まずは実験が何回も失敗した原因から話しましょうか」
美和子の雰囲気が変わる。縁側のおばあちゃんから冷徹な研究者のそれに。

「多くの失敗の原因。それは発達した知能に対し、それを使う記憶が足りなかったから。
知能は向上し、多くの事が出来るようになった。でも何が危険で、なにが危険ではないか。
そのとっさの配慮がわからない。本能レベルで人のような危険を察知することができない。
多くはやりすぎて、良くて機械を、悪くて自身の体を破壊していった」

一拍の沈黙、その後、美和子は再び口を開く。

「だからその解決策として、本能と呼べる部分に人としての記憶をあらかじめ加えたの。
そうすることで、本能の部分でも人間と同レベルで自己の体を防衛するようになるから。
まだ、初期完成形のフーリエは単純に人間の母を持つという記憶にとどめたわ。
その後、動物によっては、文字通りストーリーを持った"人間だった時の記憶"を埋め込まれた。
仲の良かった3匹には、その関係そのままの人間としての記憶とその後の設定を与えた場合もあった。
実は自分が大統領だったという記憶をもった動物もいたわ」

「そんな……そんなの……」
司の声は衝撃に震える。それ以上の言葉が出てこない。

美和子の雰囲気にも、いつの間にか暗い影を落としていた。
「それでも作られた記憶は矛盾をはらむ。
だから、肉体的、精神的に死の危険が感じられ、本能が表に出る時、
その時だけ、その記憶が表に出るように細工をした。
それでも、自ら死ぬことはなくなったから、それでよかったの。
……だから、フーリエにとっては、あの時、人間の女性ならだれでも"母"だったのよ」
872瞼の裏には母の姿 ◆d3hAP9FFr2 :2008/12/10(水) 20:08:48
美和子の説明。それは命をもてあそぶ罪の告白でもあった。それに司は答えられない。
それに答えを持てるほど、人生経験を積んではいない。
お互い無言のまま、土を掘り返す音だけが響く。

長いような、短いような時は過ぎ、フーリエと和哉の埋葬が終わる。
二人は無言のまま、診療所に戻る。


そこにはソファに横になる桃太郎がいた。
司は慌てて駆け寄るが、目を閉じ息をしていることに安堵する。
どうやら疲れのためか眠っているようだ。

「しばらく、ここで休憩しましょうか。桃太郎ちゃんが起きるまで」
美和子の提案に乗り、司も休憩をする。
疲れ果てた体は確かに休憩を欲していた。



テーブルには桃太郎が飲んだと思われる紅茶の匂いが漂っていた。


【フーリエ 死亡】
【残り34人】
873瞼の裏には母の姿 ◆d3hAP9FFr2 :2008/12/10(水) 20:09:49
【I‐5 診療所/一日目 午後】

【桃太郎】
【状態】:重傷(左目欠損)
【装備】:ハルバード
【所持品】:支給品一式 不明支給品×0〜2
【思考・行動】 基本:悪しき人間を倒す、司に対する強い不満
 1:体が……動かない……
 2:悪を討つ
 3:弱き人間を守る
 4:アルベルト打倒

【松井司】
【状態】:冷静、衝撃を受けている。
【装備】:毒蜂、ベレッタM92(残弾9/15、銃口に歪み、暴発の危険度高)
【所持品】:支給品一式
【思考・行動】 基本:もう誰にも目の前で殺し合いをさせない
 1:休憩する
 2:美和子と桃太郎と一緒に行動する。
 3:兄(哲也)を探す

【鍵谷美和子】
【状態】:健康
【装備】:狭霧のナイフ
【所持品】:支給品一式
【思考・行動】 基本:知り合いを探し、そのあと会場から脱出する
 1:休憩する
 2:できれば首輪を分析したい。
 3:幸一郎のことが心配。
874瞼の裏には母の姿 ◆d3hAP9FFr2 :2008/12/10(水) 20:10:20
投下終了です。
875名無し草:2008/12/10(水) 21:30:46
おお、先を超されたか。乙です。
ややこしい動物組を上手く処理するとは……。
なるほど、そういう方法があったか。思いもよらなかった。

あと毒吐きスレでオリロワ紹介してくれた人ありがとう。嬉しくて悶えた。
876名無し草:2008/12/11(木) 13:51:49
投下乙です。
フーリエ……やはり逝ったか。最後までまっすぐだっただけに救いが無かったな。
そして設定保管乙。
877名無し草:2008/12/22(月) 20:29:15
 
878名無し草:2009/01/04(日) 18:49:46
(´ρ`)
879名無し草:2009/01/11(日) 11:06:02

880名無し草
もう凍結して2ndに移行しようぜ