ドラえもふ

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7名無し草
昔々、あるところに若い夫婦が住んでいました。

(,,゚Д゚)「それじゃ、そろそろ行こうか」
(*゚ー゚)「えぇ、今日も頑張りましょ」
 
2人は幼いときから仲良しで、何をするにも2人一緒でした。
いつものように毎朝同じ時間に起き、朝ご飯も一緒に食べ、
以前に2人で一生懸命頑張って作った畑で仕事をする………。

貧しいながらも幸せで平凡な暮らしをしていました。 
 
 
 
一見、幸せそうな、どこにでもいる夫婦のようですが、2人には1つだけ大きな悩みがありました。
8名無し草:2007/07/06(金) 23:17:38
( ´∀`)「やぁ、ギコにしぃじゃないかモナ。おはようモナ」
(,,゚Д゚)「おっモナー、おはよう!ツンちゃんも、おはよう」
ξ゚听)ξ「ギコさん、しぃさん、おはようございます」
(*゚ー゚)「おはよう、ツンちゃん。今日はお父さんのお仕事のお手伝い?」
ξ゚听)ξ「うん、畑のお手伝いするの」
 
ツンはお父さんの手を繋ぎながら、天使のような笑顔で元気よく返事をしました。
9名無し草:2007/07/06(金) 23:21:01
(,,゚Д゚)「しぃちゃんは偉いな。おじさん、関心しちゃうよ」
( ´∀`)「もう10歳モナ。そろそろ手伝わせてもいいかなって。それじゃ、僕たちは行くモナ」
ξ゚听)ξ「ギコさん、しぃさん、バイバイ」 
(,,゚Д゚)(*゚ー゚)「バイバイ」
 
同じ村にすむモナーはギコとしぃの幼馴染で、早くに結婚をし、子供もできました。
 
ギコにしぃ、それにモナーとツンは、それぞれの畑へと向かいました。
10名無し草:2007/07/06(金) 23:23:30
(,,゚Д゚)「………」
(*゚ー゚)「…ギコ?」
(,,゚Д゚)「……ん?」
(*゚ー゚)「………やっぱり気にしてるの?」
(,,゚Д゚)「いやいや、そんなことないよ」
(*゚ー゚)「ごめんなさい………きっと………私のせいだよね………」
(,,゚Д゚)「しぃのせいなんかじゃない!!俺はしぃと2人でいるだけで幸せだ!!!」
 
 
2人には子供ができなかったのです。
11名無し草:2007/07/06(金) 23:25:26
ギコはしぃを慰めながら、2人で一生懸命作った畑へと向かいました。
季節はもう秋。
畑に続く山道の木々は紅色に染まり、それはもう、
この世のものとは思えないほど美しい光景で………。 
紅色に染まった木々から零れる木漏れ日は、2人の行く道を照らしていました。
 
(*゚ー゚)「ごめんなさい………ごめんなさい………」
(,,゚Д゚)「しぃは気にしすぎだ………ほら、しぃの可愛い顔が涙で台無しだぞ」
 
しばらく山道を歩くと、2人の畑が見えてきました。
12名無し草:2007/07/06(金) 23:26:54
(,,゚Д゚)「しぃ、泣き止んだかい?それじゃ、今日も頑張るよ」
(*゚ー゚)「うん、頑張ろ♪」
 
今日の朝は少しだけ悲しい気分になりましたが、いつものように2人は畑仕事に取り掛かりました。
今年の冬は暖かく過ごせそうだ………。 
今年はいつもよりも豊作のようで、2人の作業もいつも以上にはかどりました。
 
一生懸命に仕事をすればするほど、時間が経つのを早く感じるもので、
2人が気が付いた頃には、お日様は真っ赤に染まりながら山の裏側に隠れようとしていました。

13名無し草:2007/07/06(金) 23:28:53
2人仲良く手を繋ぎながら、少し薄暗くなった山道を通り、村へと帰りました。
家に着く頃には、お月様が辺りを照らしていて、すっかり夜になっていました。
 
(,,゚Д゚)「うぃー、今日も頑張ったー。疲れたあ」
(*゚ー゚)「お腹空いたでしょ?すぐに晩ご飯の準備をするからね」
(,,゚Д゚)「楽しみだな。その間に最後の仕事するよ」
 
ギコはいつものように畑仕事で使った道具の手入れを、
しぃは近くの川で今日の晩ご飯で使う野菜を洗いに行きました。

14名無し草:2007/07/06(金) 23:32:47
しぃがいつもの川でいつものように野菜を洗っていると、
どこからともなく動物の鳴き声がしました。
 
「ゴラァ………ゴ………ゴラァ………」
 
(*゚ー゚)「何?……この聞いたことないような鳴き声………」
 
しぃは辺りを見渡すと、近くに子猫が倒れているのを見つけました。
毛は短く、雪のように白い子猫でした。 
どうやらその子猫は弱っているようです。
 
ミ,,゚Д゚彡「ゴラァ………」
(*゚ー゚)「びっくりした……ただの猫かぁ…ってこの子、様子が変ね………」

15名無し草:2007/07/06(金) 23:34:22
ミ,,゚Д゚彡「ゴ、ゴラァ………」
(*゚ー゚)「よしよし、どうしたの……あ…この子、ケガしてる………!!」
 
その子猫の左後ろ足には砂に汚れた大きな傷があり、
月明かりが子猫の血を不気味に照らしていました。
 
(*゚ー゚)「大変………!!」
 
しぃは野菜を洗うのも忘れ、その子猫を抱きかかえ、家へと走りました。
16名無し草:2007/07/06(金) 23:37:48
薄暗い夜道、しぃは何度も転びそうになりながらも、
その子猫を抱きしめ、なんとか家へと辿り着きました。
 
(,,゚Д゚)「おっしぃおかえり……って、どうしたんだ!?」
(*゚ー゚)「そこの川でこの子猫がケガをして動けずにいたの!!だから………!!」
(,,゚Д゚)「わかった。俺は薬草の準備をするから、しぃはその子猫を見てろ!」
(*゚ー゚)「うん!!」
 
ギコは家の裏山へ薬草を取りに行き、
しぃは子猫のために有り合わせの布でお布団を作ってあげました。
しぃの服と手には子猫の血がべっとりと付いており、
その傷がとても深いものだったことを物語っていました。

17名無し草:2007/07/06(金) 23:38:53
しばらくすると、ギコが裏山から薬草を取ってきて、
それをすり潰して子猫の傷に塗ってあげました。
悲痛な鳴き声が、狭い部屋に響き渡りましたが、
傷を治すためには仕方のないことでした。
薬草を塗ると、傷からは血が止まり、子猫も楽になってきたようでした。
 
その後、三日三晩、ギコとしぃはつきっきりで子猫の看病をしました。
 
そして2週間後………。
18名無し草:2007/07/06(金) 23:40:07
(,,゚Д゚)「それじゃ、そろそろ行こうか」
(*゚ー゚)「えぇ、今日も頑張りましょ♪」
ミ,,゚Д゚彡「ゴラァ!!」
 
子猫は元気を取り戻し、元気に歩けるようになりました。
2人と1匹は今日もいつもの畑へと向かいます。
19名無し草:2007/07/06(金) 23:42:29
ケガが治ってから、子猫はギコとしぃにとてもなつきました。
2人はその子猫にフサギコと名づけました。 
いつものように毎朝同じ時間に起き、朝ご飯も一緒に食べ、
畑へ向かう2人へ付いて行く………。
その日から2人と1匹はいつも一緒でした。 
フサギコは他の猫と少しだけ鳴き声が違いますが、2人にとても可愛がられました。
それはもう、まるで自分たちの息子のように………。
フサギコも2人のことをお父さんとお母さんだと思うようになりました。
20名無し草:2007/07/06(金) 23:46:06
フサギコはその可愛さからか、村で人気者になりました。
 
ξ゚听)ξ「フサギコちゃん可愛いね!ねぇねぇ、ナデナデしてもいい?」
(,,゚Д゚)「ああ、いいよ」
ξ゚听)ξ「フサちゃん可愛い!!」
ミ,,゚Д゚彡「ゴ、ゴラァ!!」
( ´∀`)「それにしても、ほんとに可愛い子猫だモナ。うらやましいモナよ」
(,,゚Д゚)「自慢の息子だよ。な、しぃ」
(*゚ー゚)「えぇ、フフフ」
ミ,,゚Д゚彡「ゴラァ!!」
21名無し草:2007/07/06(金) 23:47:47
お父さんとお母さんをを支配していた子供がいないという寂しさは、
まるでフサギコが全部食べてしまったみたいに、消えてなくなりました。
そのおかげで、お父さんとお母さんの間には常に笑顔が絶えませんでした。
 
フサギコはギコのお腹の上が大好きでした。
お父さんが仰向けになって寝転がると、すぐにお父さんのお腹の上に、顔の方を向いて乗っかりました。
 
(,,゚Д゚)「はは、フサギコは甘えん坊だな」
ミ,,゚Д゚彡「ゴラァ!!」
 
朝にお父さんを起こすとき、夜中に構ってほしいとき、
急に寂しくなったとき、お父さんが風邪をひいて寝込んでしまったとき………。
よくお腹の上に乗っかっていました。
22名無し草:2007/07/06(金) 23:48:55
そして時は過ぎ、フサギコがお父さんとお母さんの家に来て10年が経とうとしていました。
 
ぽかぽか陽気の中、一緒に桜の花を見に裏山まで散歩した、春。
暑い日差しの中、畑仕事の合間に木陰でじゃれあった、夏。
紅色に染まった木々の木漏れ日の中、里山を一緒に探検した、秋。
深い雪で村が埋まってしまった中、お父さんのお腹の上で一緒に暖かい春を待った、冬。
どれもフサギコにとっては、かけがえの無い思い出でした。
 
しかし、出会いがあれば別れもある………時というものは、とても残酷なもののようです。
23名無し草:2007/07/06(金) 23:51:51
(,,;Д;)「フサギコ!!大丈夫か!?しっかりしろ!!」
(*;ー;)「フサちゃん!!聞こえる!!??フサちゃん!!!」
ミ,,-Д-彡「ゴ………ゴラァ………」
 
この数日の間、フサギコには食欲も無く、
また、以前のように走り回れるような元気も残っていませんでした。
お父さんが知っているどの薬草をフサギコに飲ませても、
お母さんが作ったおいしい料理を食べさせようとしても、元気にはなりませんでした。
 
老衰………猫は人間の何倍もの速さで歳を取るらしく、
フサギコは人間でいうお爺ちゃんになっていたのです。
 
(お爺ちゃんになっても、俺はお父さんとお母さんの子ども)
 
それはフサギコにとって誇れるべきことでした。
24名無し草:2007/07/06(金) 23:53:35
ミ,,-Д-彡「ゴ………ラ………ァ………」
(,,;Д;)「フサギコ!!死ぬな!!!!フサギコ!!!!!」
(*;ー;)「フサちゃん!!フサちゃん!!!!」
 
お父さんとお母さんはフサギコを優しく、暖かく抱きしめてやりました。
 
ミ,,-Д-彡「………」
 
そしてフサギコはもう起きることのない、深い眠りにつきました。
25名無し草:2007/07/06(金) 23:54:52
ミ,,゚Д゚彡「何だ、ここは………ゴラァ………」
 
フサギコが目を覚ますと、そこにはどこまでも続く草原と、
限りなく青に近い澄み切った空が広がってしました。
 
ミ,,゚Д゚彡「あぁ………俺は死んだのか………ゴラァ………」
 
「フサギコや………フサギコや………」
 
何やら後ろの方から声が聞こえてきました。
26名無し草:2007/07/06(金) 23:56:38
ミ,,゚Д゚彡「誰だゴラァ!!!」
(´・ω・`)「こっちへおいで」
 
後ろを振り向くと、そこには大きな背の高い木があり、
その木の下に1人の老人が立っていました。
フサギコはその老人の下へ走っていきました。
 
ミ,,゚Д゚彡「誰だゴラァ!!!何で俺の名前を知ってるんだゴラァ!!!!」 
(´・ω・`)「まぁまぁ、そんなに怪しまなくてもいい。ワシは神様だ」
ミ,,゚Д゚彡「神様ぁ!!??」

27名無し草:2007/07/06(金) 23:58:07
白い布の服を身に纏った老人の髪の毛とヒゲは真っ白でとても長く、
立派な樫の杖を持っており、いかにも神様のような風貌でした。
 
ミ,,゚Д゚彡「その神様が一体、俺に何の用があるんだゴラァ!!!!」 
(´・ω・`)「君にご褒美をあげようと思って呼んだんだ」
ミ,,゚Д゚彡「ご褒美ぃ!!??」
(´・ω・`)「そうだ。ご褒美として願いを1つだけ叶えてあげよう」
28名無し草:2007/07/07(土) 00:01:08
ミ,,゚Д゚彡「ご褒美ぃ!!??何だって俺にご褒美なんかくれてやるんだゴラァ!!!」
(´・ω・`)「ワシは君の一生をずっと見てきた。君は子供のいない夫婦に、
      まるでその夫婦の子供のように振舞って、寂しさを忘れさせてあげた。
      ワシはそれを見て、とっても感動した。だからご褒美として1つだけ願いをかなえてあげよう」
ミ,,゚Д゚彡「本当か!!??それは本当なんだなゴラァ!!!」
(´・ω・`)「本当だ。神様は嘘付かない」
ミ,,゚Д゚彡「それなら俺を今すぐに生き返らせろ!!!
      生き返らせてお父さんととお母さんがいるところに連れて行けゴラァ!!!!」
29名無し草:2007/07/07(土) 00:02:13
フサギコはまだ死にたくはありませんでした。
もっとお父さんとお母さんに甘えたいし、きっと2人も悲しんでいる。
そう思ったフサギコは神様にそう頼みました。

(´・ω・`)「いいだろう。その願い叶えてあげよう。ただし、条件がある」
ミ,,゚Д゚彡「条件………?」
30名無し草:2007/07/07(土) 00:04:05
神様はフサギコを生き返らせる代わりに、4つの条件を出しました。
1つ目は生前の姿では生き返らせることはできないということ。
2つ目はお父さんとお母さんの前で「ゴラァ!!」と鳴いてはいけない。
3つ目はお父さんのお腹の上に乗ったり、お父さんとお母さんに以前のように甘えてはいけないこと。
そして最後の4つ目はお父さんとお母さんにフサギコの生まれ変わりだと気付かれてはいけないこと。
 
(´・ω・`)「どうだ?この条件、飲むか?飲まないか?」
ミ,,゚Д゚彡「………」
31名無し草:2007/07/07(土) 00:06:01
ミ,,゚Д゚彡「その条件、飲んだゴラァ!!!!!!!」
 
フサギコに迷いはありませんでした。
自分のことはどうでもいい。
とにかく、お父さんとお母さんが寂しくないように、
そばにいてあげなければ………。
フサギコは強い決心の下、神様に返事をしました。 
 
(´・ω・`)「よし、わかった。それではさっそく、君を生き返させよう」
ミ,,゚Д゚彡「ッッッ!!!???」

神様は持っていてた杖を振りかざすと、白くて眩しい光がフサギコを包み込みました。
32名無し草:2007/07/07(土) 00:08:35
ミ,,-Д-彡「ゴ………ゴラァ………」
ミ;゚Д゚彡「ゴ、ゴラァ!!!???」
 
気が付くと、そこはお母さんが10年前に助けてくれた川原でした。
川の音、それに砂利の冷たい感触………どれも10年前と変わっていませんでした。
月明かりが照らす水鏡で自分の姿を見てみると、
フサギコの体は茶色で長い毛で覆われており、以前の面影はまったくありませんでした。
 
ミ,,゚Д゚彡「ゴラァ………」
 
フサギコは一目散に、お父さんとお母さんが住んでいる家へと向かいました。
33名無し草:2007/07/07(土) 00:11:30
月明かりが照らす見慣れた薄暗い道をしばらく走り、10年間一緒に暮らした家に辿り着きました。
優しくて暖かい、そして懐かしい明かりが、暗い夜道を走ったフサギコの目に入り込んできました。
中からお父さんとお母さんの会話が聞こえてきます………。
 
(,,゚Д゚)「フサギコが死んで……もう半年か………」
(*;ー;)「そうね……早いね………」
(,,;Д;)「うぅ……フサギコ………」
 
ミ,,゚Д゚彡「………」
 
窓からこっそり中の様子を伺うと、そこには今まで見たことのない
お父さんとお母さんの悲しそうな表情がありました。
死んで半年………フサギコの知らない間に長い時間が過ぎていたようです。
ここで生きていたときのように元気よく中に入りたいのですが、
神様の条件を思い出し、そうもいきません。
このとき、フサギコは自分の無力さを恥じました。
34名無し草:2007/07/07(土) 00:12:47
今、ここで中に入るのは不自然だろう………。
フサギコはそう思い、トボトボと家から離れて行きました。
たまに後ろを振り向いて、優しくて暖かい、
そして懐かしい明かりが遠くなっていくのを確認しながら………。

行く当ての無いフサギコは、月明かりが照らす山道を歩いていきました。
今までお父さんとお母さんに、たくさん可愛がられたことを思い出しながら………。
 
しばらく歩くと、お父さんとお母さんの畑が見えてきました。
35名無し草:2007/07/07(土) 00:14:13
(今日はここで寝るか………。) 

行く当ての無いフサギコは、お父さんとお母さんが畑仕事の合間に
よく休憩場所として使っていた、大きな桜の木の根元に寝転がりました。
 
(そういえば………いろんなことがあったな………。) 
 
目を閉じると、10年間の思い出が、まぶたの裏に映し出されてきて、
知らないうちに大粒の涙が零れてきました。
今日は晴れていて、こんなにも月が明るくて綺麗なのに、
そこだけまるで雨が降っているかのように、たくさんの涙が零れ落ちていました。
お父さんとお母さんには感謝しても感謝しきれない………
たくさんの恩があるんだと、改めて思いました。

36名無し草:2007/07/07(土) 00:15:16
涙で濡れた顔をこすると、すぐ横に何やら石と花が置いてありました。
生きていた頃はこんな物はなかったはず………。
フサギコはそれが何なのかを、涙で滲んだ視界で確認しました。
石の大きさはフサギコと同じくらいで、周りには色とりどりの花々が供えてあり、
石には『フサギコ』と彫られてありました。 
 
(これは………俺の墓………?)
 
フサギコは改めて、自分という存在がこの世から消えてしまったということを自覚しました。
37名無し草:2007/07/07(土) 00:16:17
(俺のためなんかに墓なんか作ってくれた………。)
(俺のためなんかにたくさんの花を供えてくれた………。)
(俺のためなんかに悲しんでくれた………。)
(今度は………俺の番だ!!!) 
 
フサギコはお父さんとお母さんに恩返しをする決心をし、眠りにつきました。
38名無し草:2007/07/07(土) 00:22:48
朝日がまぶた隙間から入り込んで、泥のように眠っていたフサギコを起こしました。
もうしばらく寝てよう………。
疲れてたフサギコはそう思い、再びまぶたに隙間ができないよう、固く固く閉じました。
 
(どうやってお父さんとお母さんに恩返しをしようか………)

そんなことを考えながら再び気持ちのいい夢の世界へ足を踏み入れようとしたとき、何かの気配に気がつきました。
 
(,,゚Д゚)「おっ?何だ?この猫………」
(*゚ー゚)「見かけない猫ね………」
 
ミ;゚Д゚彡「ッッッ!!!???」
 
そこにはフサギコを囲むようにしてしゃがんでこちらを見ている、
懐かしい顔………お父さんとお母さんの顔がありました。

39名無し草:2007/07/07(土) 00:25:31
ミ,,゚Д゚彡「………」
(*゚ー゚)「こっちへおいで」
ミ,,゚Д゚彡「ゴ………ッッッ!!!」
 
この前までなら、お父さんとお母さんに近づいて甘えるのが、
フサギコにとって何よりの幸せでした。
いつものようにお父さんに近づいて甘えようとしたとき、
神様の4つの条件を思い出しました。
 
ミ,,゚Д゚彡「………」
40名無し草:2007/07/07(土) 00:30:18
ミ#゚Д゚彡「フゥゥゥゥゥーーーーッッッッ!!!!!」
(*゚ー゚)「きゃっ、いきなり何!!??」
 
お母さんがフサギコに手を差し伸べた瞬間、
フサギコは全身の毛を逆立たせて威嚇しました。
今まで出したことのないような怒った声も、このとき生まれて初めて出しました。
 
ミ#゚Д゚彡「ウウウウゥゥゥゥゥーーーーッッッッ!!!!!」
(,,;゚Д゚)「人に慣れてない猫かな。野生のオーラが出てるよ」
41名無し草:2007/07/07(土) 00:31:51
(*゚ー゚)「この子………お腹が空いてるのかしら………」
ミ#゚Д゚彡「フゥゥゥゥゥーーーーッッッッ!!!!!」
(*゚ー゚)「よしよし………怖がらなくていいからね………」
 
お母さんはそう言うと、お昼ご飯のために作ったおにぎりを、フサギコの前に置きました。
 
(*゚ー゚)「はい。怖がらなくていいからね、お食べ」
(,,゚Д゚)「よしよし。それじゃ仕事するか」
ミ,,゚Д゚彡「………」
42名無し草:2007/07/07(土) 00:33:09
お父さんとお母さんはフサギコのすぐ横に荷物を置き、2人の畑へと向かいました。
目の前にはお母さんが作ったおにぎり………。
フサギコは昨日から何も食べていないせいか、何も考えずに食らいつきました。
喉が詰まりそうになりましたが、空っぽのお腹にお母さんのおにぎりを詰め込みました。
途中、神様の条件を思い出しましたが、何も起こらないようなので、
食べ物を貰うことは大丈夫なのだと確信しました。
おにぎりを半分くらい食べ終えた頃、フサギコは目頭が熱くなっていることに気が付きました。
43名無し草:2007/07/07(土) 00:34:15
お母さんが握ってくれたおにぎり………。
横に置かれたお父さんとお母さんの荷物からする懐かしい匂い………。
そして、お父さんとお母さんが働く様子………。
何も変わっていませんでした。
 
ただ変わっているのは自分の立場だけ………。
フサギコはお父さんとお母さんのそばに再び戻ってこれたことに
感謝しながら、残り半分のおにぎりを食べました。
 
残り半分のおにぎりは、なんだかフサギコにはしょっぱく感じてしまったようです。
44名無し草:2007/07/07(土) 00:36:24
お日様が1日のうち1番高くに昇る頃、お父さんとお母さんは
いつものように大きな桜の木の根元で休憩を始めました。
 
フサギコは心とは思っていることと反対のこと………
お父さんとお母さんから離れたところに、ちょこんと座りました。
 
(,,゚Д゚)「ふぅ、休憩しよう」
(*゚ー゚)「さ、お弁当にしましょ」
 
ミ,,゚Д゚彡「………」

お父さんとお母さんはいつものようにお昼ご飯を食べ始めました。
少し離れたところからお父さんとお母さんの様子を伺って………
そばに行きたいんだけど、行けなくて………。
 
ミ,,゚Д゚彡「………」
 
フサギコは、黙ってお父さんとお母さんを見ていることしかできませんでした。

45名無し草:2007/07/07(土) 00:38:11
(*゚ー゚)「あら……さっきの猫、まだいるよ」
(,,゚Д゚)「おっ本当だ。そんなとこにいないで、こっちにおいで」
ミ#゚Д゚彡「フゥゥゥゥゥーーーーッッッッ!!!!!」
(,,゚Д゚)「あら、やっぱりか。それじゃ仕事に戻ろう」
 
そういうと、お父さんとお母さんは畑仕事に戻っていきました。
フサギコの心の中は、寂しい気持ちと申し訳ない気持ちで、
薄暗い悲しい色に染まっていました。
46名無し草:2007/07/07(土) 00:40:46
フサギコは畑から少し離れたところで、お父さんとお母さんの畑仕事を見守っていました。
 
(これからどうしようか………。)
(どうやって恩返ししようか………。) 

そんなことばかり考えながらお父さんとお母さんを見守っていると、
いつのまにやら、お日様は真っ赤に染まりながら山の裏側に隠れようとしていました。
 
お父さんとお母さんも家へ帰る準備を終え、
フサギコの墓の前に座り込んで、目を閉じ、手を合わせました。
 
(,,゚Д゚)「フサギコや………今日も父ちゃんと母ちゃんはケガもなく、無事に仕事を終えることができたぞ」
(*゚ー゚)「今日はもう帰るけど………また………また明日も来るからね………」
(,,;Д゚)「グス………それじゃ帰るか………」
 
ミ,,゚Д゚彡「………」
47名無し草:2007/07/07(土) 00:42:09
フサギコは、自分が死んだせいでお父さんとお母さんが悲しんでいる、と思いました。
お父さんとお母さんの悲しみを無くすには、神様の4つの条件を破らないように、
以前のフサギコを忘れさせるように振舞えばいい。 
 
フサギコに大きな目標ができました。
目標のできたフサギコは、気付かれないように、お父さんとお母さんの後を追うことにしました。
夕焼け色の少しだけ薄暗い家路は、フサギコにはとても懐かしく感じさせるものでした。
でも、以前のようにお父さんとお母さんに甘えながら家に帰ってはいけないので、なんだか心細い気がしました。

48名無し草:2007/07/07(土) 00:44:29
(*゚ー゚)「あれ?さっきの猫………ついてきてるわ………」
(,,゚Д゚)「あの猫はきっとツンデレなんだろう」
ミ,,゚Д゚彡「………」
 
家に着くと、お父さんとお母さんは家の中に入っていきました。
フサギコは神様の4つの条件が気になって、中に入ることは出来ませんでした。
暗かった家に暖かな明かりが灯り、お母さんはすぐに川へ野菜を洗いに行きました。
49名無し草:2007/07/07(土) 00:45:50
(お母さん1人で夜道は危険だ………。)
 
玄関から出てきたお母さんを、フサギコは少し離れて後を追いました。
 
(*゚ー゚)「あら?さっきの……ついてきちゃったんだ」
ミ,,゚Д゚彡「………」
(*゚ー゚)「フフ………お腹空いてるんでしょ。後でご飯あげるからね」
 
月明かりが照らす夜道を、フサギコとお母さんが歩きます。
フサギコとお母さんの間に少しだけ距離はありましたが、
それはまるで、フサギコが生きていたときのような光景でした。
50名無し草:2007/07/07(土) 00:47:26
川に着くと、お母さんはいつものように野菜を洗い始めました。
フサギコはお母さんに寄り添いたい気持ちを一生懸命抑え、
少し離れたところでちょこんと座りました。
 
(*゚ー゚)「フフ………すぐに終わるから待っててね」
ミ,,゚Д゚彡「………」
 
そのときでした。

「ウウウウゥゥゥゥゥ………ワン!!!!ワン!!!!!」
「ヴヴヴヴヴヴ………」

51名無し草:2007/07/07(土) 00:48:31
フサギコがいる反対側の、お母さんから少し離れた暗闇の中から、
獰猛そうな野犬数匹が現れました。
今にもお母さんを襲いかかるかのように、涎を垂らしながら威嚇していました。
 
(*゚ー゚)「きゃ………ちょっと………」
ミ;゚Д゚彡「ッッッ!!!!!!!!」
 
(お母さんを守らなきゃ………!!!)  
 
フサギコはそれ以外のことは考えず、自分よりも何倍も大きい野犬に全速力で立ち向かっていきました。
52名無し草:2007/07/07(土) 00:50:00
ミ,,-Д-彡「………」
ミ;゚Д゚彡「ッッッ!!!???」
(,,゚Д゚)「おっ、起きたみたいだぞ!」
(*;ー;)「よかった………よかったぁ………」
 
目を覚ますと、お父さんとお母さんの顔がフサギコを覗き込んでいました。
懐かしい天井の色、家の暖かい明かり、生きていたときに布団として使っていた座布団………。
どうやら家の中にいるようです。
53名無し草:2007/07/07(土) 00:51:04
ミ,,゚Д゚彡「………」
 
(お母さんは………!?)
 
お母さんを見てみると、ケガはしていないようです。
どうやらお母さんは無事みたいです。
フサギコは安心しました。
そして、すぐに神様の4つの条件が頭をよぎり、家を出るために起き上がろうとしました。
 
ミ;゚Д゚彡「………ゴッッッ!!!???」
 
少しでも動こうとすると、それを拒むかのように全身に激痛が走りました。 
体のいたるところに薬草を染み込ませた包帯が巻かれてあります。
54名無し草:2007/07/07(土) 00:53:14
(*;ー;)「ありがとね………私なんかのために、本当にありがとね………」
(,,゚Д゚)「お前はとても強い猫だ。たった1匹で野犬をやっつけてしまうなんて」
ミ,,゚Д゚彡「………」
(,,゚Д゚)「それにしても酷い傷だ。治るまで、ここで休んでいくといい」
 
全くそのときのことは覚えていませんが、どうやら野犬を全部やっつけたようです。
その代償として全身にたくさんの傷を負ってしまいました。 
神様の4つの条件が気になりましたが、冷静に考えてみると、
どうやら家に入ることは大丈夫なんだと確信しました。
55名無し草:2007/07/07(土) 00:58:14
恩返しのためにお母さんを助けるつもりが、逆に世話になってしまった………。
フサギコは、これからもっと恩返しをしなければならないと、強く強く心に決めました。 
お母さんが助かったことを知ってホッとしたのか、フサギコは急に眠たくなり、目を閉じました。
 
(,,゚Д゚)「おっ寝ちゃったか……なんだか寝顔がフサギコに似ているな」
(*゚ー゚)「フフ………そうね」
(,,゚Д゚)「そうだ、この猫もフサギコって呼ぼう」
56名無し草:2007/07/07(土) 00:59:43
それから数週間、フサギコは、家の中で療養しました。
神様の4つの条件が気になり、お父さんとお母さんが
フサギコに触ろうとすると、相変わらず全身の毛を逆立たせて威嚇しました。
それでもお父さんとお母さんはフサギコを嫌いになんかならず、家に居させてくれました。

フサギコは申し訳ない気持ちと、感謝の気持ちで一杯でした。
ケガが治ると、フサギコはお父さんとお母さんと共に行動しました。
 
畑仕事をするとき、山に薬草を取りに行くとき、お母さんが川に野菜を洗いに行くとき………。
生きていたときよりも少しだけ距離はありましたが、
お父さんとお母さんを守るため、ずっとずっと着いていきました。
57名無し草:2007/07/07(土) 01:00:44
フサギコは何度も何度もお父さんとお母さんに甘えそうになったり、
「ゴラァ!!!」と鳴きそうになりました。
 
だけど、一生懸命我慢し、お父さんとお母さんへの恩返しをしました。
家にいるネズミを全部捕まえたり、畑仕事に行くときに忘れ物があると教えてあげたり………。
フサギコは一生懸命に頑張りました。
 
 
しかし、ある日の晩に事件が起こりました。
58名無し草:2007/07/07(土) 01:03:14
フサギコとお父さん、お母さんが眠りに着いた丑三つ時………
1人の男が家に忍び込もうとしました。
 
('A`)「今日はこの家にするか」
 
男の名前はドクオ。
夜な夜な人の家に忍び込み、お金を盗んで生計を立てている泥棒です。
 
('A`)「さて………仕事するか………」

ドクオは物音1つ立てずに、家に忍び込みました。
土足のまま、タンスのある部屋へ入っていきました。 
 
('A`)「まずはタンスの中を拝見させて頂きますか………」
 
ドクオがタンスを開けようとしたとき、ドクオも気付かないような
カタッという小さな音が出てしまいました。
 
ミ;゚Д゚彡「ッッッ!!!???」
59名無し草:2007/07/07(土) 01:05:32
フサギコはすぐに異変に気付き、タンスのある部屋へと走っていきました。
 
('A`)「おっと………お財布発見」
ミ#゚Д゚彡「フゥゥゥゥゥーーーーッッッッ!!!!!ゴラァァァアアアアア!!!!!!!!!」
(('A`))「ビクッ、す…すいませんっ」
('A`)「って、ただの猫じゃんかよ………驚かせやがって……… ブ チ 殺 す ぞ 」
ミ#゚Д゚彡「ゴラァァァァァアアアアアア!!!!!!!!!!!!」
 
フサギコはこの男が泥棒だと確信し、力いっぱい足に噛み付きました。
60名無し草:2007/07/07(土) 01:08:11
('A`)「イッテェェェェエエエエエエ!!!!!何すんだこの糞猫!!!!!!!」
 
フサギコは何度もドクオの片方の足で蹴られながらも、一生懸命噛みました。
フサギコの口がドクオの血で一杯になったところで、口を離しました。
 
ミ#゚Д゚彡「フゥゥゥゥゥーーーーッッッッ!!!!!!」
('A`)「この野郎………俺を傷つけやがって………殺してやる!!!!」
61名無し草:2007/07/07(土) 01:09:41
(,,゚Д゚)「うるせえ誰だコラァァァアァァアアアアアアア!!!!!!!!」

騒ぎに気付いたお父さんが、タンスのある部屋へと勢いよく入ってきました。
 
('A`)「ヤベ!!気付かれた!!!ドロンします」
ミ#゚Д゚彡「フゥゥゥゥゥーーーーッッッッ!!!!!!」
 
お父さんに見つかったドクオは一目散に家を飛び出し、夜の闇へと消えていきました。
お父さんは部屋の様子と、それにフサギコの逆立った毛を見て、一体何が起きたのか把握しました。
62名無し草:2007/07/07(土) 01:10:55
(,,゚Д゚)「フサギコ………お前、泥棒が来たのを教えてくれたのか?」
ミ,,゚Д゚彡「………」
(,,゚Д゚)「そうかそうか。お前は賢い猫だ」
 
フサギコはとても嬉しく思いました。
お父さんとお母さんの役に立てた………。
フサギコはこれからもずっとずっと、お父さんとお母さんに恩返しをしていこうと心に決めました。
63名無し草:2007/07/07(土) 01:12:37
時は過ぎ、フサギコがお父さんとお母さんの家に戻ってきて3年が経とうとしていました。
ぽかぽか陽気の中、少し離れて歩いたけど、桜の花を見に裏山まで散歩した、春。
暑い日差しの中、お父さんとお母さんの畑仕事の手伝いをした、夏。
紅色に染まった木々の木漏れ日の中、お父さんとお母さんのために栗やキノコを採ってきた、秋。
深い雪で村が埋まってしまった中、お父さんとお母さんのために暖を取るための木の枝を運んできた、冬。
 
フサギコはいつも一生懸命に頑張りました。
そんな、もうすぐ夏になろうとしている、梅雨の雨の日のことでした。
64名無し草:2007/07/07(土) 01:13:44
(,,゚Д゚)「………ゴホッゴホッ………」
(*゚ー゚)「ギコ………大丈夫………?」
(,,゚Д゚)「ああ……大丈夫………ゴホッゴホッ………」
ミ,,゚Д゚彡「………」
 

お父さんは病気で倒れてしまいました。
65名無し草:2007/07/07(土) 01:15:17
あんなに元気だったお父さんが、ここ数日の間に
起き上がることもできないくらいに病気で衰弱してしまいました。
フサギコが裏山からいろんな薬草を持ってきて、
お母さんが煎じてお父さんに飲ませても、治りませんでした。 
お医者さんに見せても、どうすることもできないと言われました。
お医者さんが言うには、現代の医学では治すことができず、
持って残り数日の命だということでした。
 
ミ,,゚Д゚彡「………」
 
お父さんに何もすることができないフサギコは、
自分の非力さに情けなくなりました。
部屋は、雨が瓦に叩きつけられる音と、フサギコとお母さんの悲しみで支配されていました。
66名無し草:2007/07/07(土) 01:16:46
ある日の晩、フサギコはお父さんが寝静まったことを確認し、お父さんの顔を覗き込みました。
お父さんは以前のような、ふっくらとした顔ではなく、骨と皮だけの、可哀想な姿になっていました。
寝息も以前のような、気持ちよさそうな夢心地のものではなく、
とても苦しそうな地獄で息をしているようなものでした。 
 
フサギコは変わり果てたお父さんの姿を見て、目頭が熱くなっているのがわかりました。
初めてフサギコを拾ってくれたこと、野良猫なのにちゃんとお世話をしてくれたこと、
生まれ変わってからも優しくしてくれたこと………。
 
思い出と感謝の気持ちはフサギコの心から溢れるくらいあるのに、
助けることができない………。
フサギコは自分の非力さに情けなく、悔しくなってしまいました。
67名無し草:2007/07/07(土) 01:19:41
そのとき、目頭に溜まったフサギコの涙がお父さんの額に零れました。
どうやら、お父さんはフサギコが枕もとにいることに気付いたようです。
 
(,,゚Д゚)「ゴホッゴホッ………フサギコかい………?」
ミ,,;Д;彡「………」
(,,゚Д゚)「ごめんな……ゴホッ……咳がうるさくて寝れないのか……ごめんな……」
ミ,,;Д;彡「………」
(,,゚Д゚)「フサギコや………お願いがあるんだ………」
ミ,,;Д;彡「………」
(,,゚Д゚)「もう………ゴホッ……俺は長くないから………、
    俺の代わりに………し、しぃを………守ってほしい………」

68名無し草:2007/07/07(土) 01:21:01
お父さんの震える声がフサギコの心に突き刺さりました。

(お父さんへの最期の恩返しは、お父さんの代わりにお母さんを守ること………?)
 
フサギコはお父さんへの恩返しを、そんな形で終わらせたくはありませんでした。
お父さんが天国へ逝ってしまう前に、何かできないんだろうか。
フサギコは小さい頭の中で一生懸命考えましたが、答えを導き出すことはできませんでした。
 
フサギコは、お父さんが再び眠りにつくのを見届けて、寝ることにしました。
69名無し草:2007/07/07(土) 01:22:02
フサギコはお父さんにしてあげる、最期の恩返しのことを考えながら、
夢の世界へと入っていきました。 
 
ミ,,゚Д゚彡「………ん?何だ、ここは………ゴラァ………」
 
ミ,,゚Д゚彡「………あぁ、夢か………ゴラァ………」 
 
気が付くと、そこにはどこまでも続く草原と、限りなく青に近い澄み切った空が広がっていました。
でも、それはいつか見たことのある、素晴らしい光景でした。 
 
ミ,,゚Д゚彡「ここは………来たことがあるぞ!!!………ゴラァ!!!!!!」
 
「フサギコや………フサギコや………」
 
何やら後ろの方から声が聞こえてきました。
70名無し草:2007/07/07(土) 01:24:08
ミ,,゚Д゚彡「誰だゴラァ!!!」
(´・ω・`)「こっちへおいで」
ミ;゚Д゚彡「お、お前は………!」
 
後ろを振り向くと、そこには大きな背の高い木があり、
その木の下に1人の老人が立っていました。
白い布の服、真っ白でとても長い髭と髪、立派な樫の杖、
それに特徴的な喋り方………あのときの神様のようです。
フサギコはその神様の下へ走っていきました。
 
(´・ω・`)「久しぶりだね、フサギコ。」
ミ,,゚Д゚彡「何の用だゴラァ!!!俺はちゃんと約束を守っているぞゴラァ!!!!」 
(´・ω・`)「まぁまぁ、今日はそんなことで君を呼び出したんじゃないよ」
71名無し草:2007/07/07(土) 01:26:35
ミ,,゚Д゚彡「何だと!!!???」
(´・ω・`)「君を生き返えらせてから、今日までずっと君の事を見ていたよ」
ミ,,゚Д゚彡「だから何なんだゴラァ!!!!」 
(´・ω・`)「まぁ、落ち着いてほしい。ちょっと条件を破りそうな危ない感じのときもあったけど、
      君はワシが出した条件をちゃんと守って、あの2人のために恩返しをしている姿を見て、
      ワシはまた感動したんだ」
ミ,,゚Д゚彡「………」
(´・ω・`)「だから、今回も君にご褒美をあげよう」
ミ,,゚Д゚彡「ッッッ!!!???」
72名無し草:2007/07/07(土) 01:28:25
(´・ω・`)「君のお父さんは、君がこの夢から覚めて5時間後に死ぬ」
ミ,,゚Д゚彡「な、なんだって!!!???」
(´・ω・`)「だから君のお父さんを助ける方法を教えてあげよう」
ミ,,゚Д゚彡「ほ、本当か!!!???」
(´・ω・`)「ああ本当だよ。神様は何だってできる」
ミ,,゚Д゚彡「だったら、さっさと教えろゴラァ!!!!!!!!」
73名無し草:2007/07/07(土) 01:32:29
(´・ω・`)「そう慌てない。なーに、簡単なことさ」
ミ,,゚Д゚彡「………」
(´・ω・`)「君のお父さんのお腹の上で『ゴラァ!!』って鳴いて、
      自分が初代フサギコの生まれ変わりだってことを気付かせれば、
      1発で治る。次の日から現場復帰可能さ」
ミ,,゚Д゚彡「わかったぞゴラァ!!!わかったから、さっさと夢から覚ましやがれゴラァ!!!!!」
(´・ω・`)「まぁまぁ、最後まで話を聞きなさい」
ミ,,゚Д゚彡「………」
(´・ω・`)「ワシが出した条件は君が死ぬまで有効だってことを忘れてはいけないよ?」
74名無し草:2007/07/07(土) 01:35:27
ミ,,゚Д゚彡「え?そ、それじゃ………俺は………」
(´・ω・`)「そう。君のお父さんが元気になる替わりに、君が死ぬんだ」 
ミ,,゚Д゚彡「そんな………」
 
神様が言った一言は、フサギコの小さな体に重く圧し掛かりました。

(次こそ本当に死んでしまう………。)
(もうこれ以上、お父さんとお母さんのそばにいることはできない………。)
 
だけど、答えはもう決まっていました。
  
ミ,,゚Д゚彡「わかった!!やってやる!!!!だから、さっさと夢から覚ましやがれゴラァ!!!!!」
(´・ω・`)「よし、わかった。それでは起こすよ」
ミ;゚Д゚彡「ッッッッ!!!!????」
 
神様は持っていてた杖を振りかざすと、白くて眩しい光がフサギコを包み込みました。

75名無し草:2007/07/07(土) 01:37:02
ミ,,-Д-彡「………」
ミ;゚Д゚彡「ッッッ!!!???」
 
フサギコは目を覚ますとすぐに、お父さんたちが寝ている部屋へと走っていきました。
今日は梅雨の時期には珍しく、窓の外は青空に染まっていたのですが、
フサギコはそんなのには目もくれず、急いで走りました。
 
(一刻も早くお父さんを苦しみから解き放ってあげたい………。)
 
フサギコの頭の中は、それしかありませんでした。
76名無し草:2007/07/07(土) 01:38:05
部屋につくと、お父さんは苦しそうな寝息を立てながら眠っていました。
お母さんのお布団は片付けられていました。
どうやら朝ご飯の支度をしているようです。
 
フサギコは、その小さな口にお父さんのお布団を咥え、
上半身が出るくらいまで捲り上げました。
そしてフサギコはお父さんのお腹の上に乗り、力いっぱい鳴きました。
 
ミ,,゚Д゚彡「ゴラァ!!!!!!!ゴラァ!!!!!!!!!!!!!」
77名無し草:2007/07/07(土) 01:40:25
(,,-Д゚)「ん……お………フサギコ………?」
ミ,,゚Д゚彡「ゴラァ!!!!!!!ゴラァ!!!!!!!!!!!!!」
 
どうやらお父さんは起きたようです。
これで自分を初代フサギコの生まれ変わりだと気付いてくれれば………。
 
フサギコは休まず鳴き続けました。
 
ミ,,;Д;彡「ゴラァ!!!!!!!ゴラァ!!!!!!!!!!!!!」
78名無し草:2007/07/07(土) 01:41:44
フサギコの目からは大粒の涙がお父さんのお腹の上に零れ落ちていました。
(これでお父さんとお母さんとは最期なんだ………。)
フサギコは泣かずにはいられませんでした。
 
ミ,,;Д;彡「ゴラァ!!!!!!!ゴラァ!!!!!!!!!!!!」
 
(,,゚Д゚)「フサギコ………?」
79名無し草:2007/07/07(土) 01:43:53
ミ,,;Д;彡「ゴラァ!!!!!!!ゴラァ!!!!!!!!!!!!!」
(,,゚Д゚)「そうか………お前は………あのフサギコだったのか………」
ミ,,;Д;彡「ゴラァ!!!!!!!ゴラァ!!!!!!!!!!!!!」
(,,゚Д゚)「フサギコや………ゴホッ………今まで気付かなくて、ごめんな………」 
 
(*゚ー゚)「ちょ、ちょっと!!!!フサちゃんなの!!!???」
 
お母さんもフサギコの鳴き声に気付いたようで、台所から走ってきたようです。
80名無し草:2007/07/07(土) 01:44:54
これで最期………お母さんに気付かれてもいいだろう………。
昨日までフサギコの頭の中を支配していた無力感は充実感へと変わっていました。
 
(これでお父さんは助かる………本当に恩返しができたんだ………。)
 
ミ,,;Д;彡「ゴラァァァァァアア!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
 
フサギコは最期のお別れの意味も込めて、大きな声で鳴いて部屋を走って出ていきました。
81名無し草:2007/07/07(土) 01:46:02
フサギコは一生懸命は走りました。
雨上がりの空は、フサギコの透き通った心のように限りなく青に近い色でした。
毎日、お父さんとお母さん一緒に歩いた山道を抜け畑へ………。
これで来るのが最期となる畑を名残惜しく思いながら、畑の先にある誰も入らない山へと入っていきました。
フサギコの亡骸はお父さんとお母さんに見られたくない………。
フサギコはそう思いながら、誰も入ることない山の奥深くへと走りました。
82名無し草:2007/07/07(土) 01:47:03
(ここまで来れば見つかることもないだろう………。)
 
そう思った瞬間、強烈な眠気に襲われました。
大きな木の根元で無意識的に横になると、まぶたが重たくなってきました。
しっとりとした、少しだけ冷たい土がとても心地よく感じてしまいまい、
よけいに眠たくなってきました。 
 
(………あぁ………これで最期か………。)
 
フサギコはお父さんとお母さんとの思い出を思い出しながら、最期のときを待つことにしました。
83名無し草:2007/07/07(土) 01:48:09
ケガをした自分をお母さんが拾ってくれて、お父さんが傷を治してくれたこと………。
お父さんとお母さんと一緒に毎日、畑へ通ったこと………。
お父さんとお母さんと楽しい10年間を過ごしたこと………。
死んでも自分のことを忘れてくれなかったこと………。
畑の近くに立派なお墓を作ってくれたこと………。
生まれ変わってもなお、優しくしてくれた3年間………。 
どれもフサギコにとっては宝物でした。
 
今までの思い出が映し出されているまぶたの裏のスクリーンが、段々と白く薄くなってきました。
 
(………これで………これで本当に最期か………。)
 
フサギコはお父さんとお母さんの、これからの幸せを願いながら、眠りにつきました。

84名無し草:2007/07/07(土) 01:49:34
ミ,,-Д゚彡「………ん?ここは………ゴラァ………」
ミ,,゚Д゚彡「………本当に死んでしまったようだな………ゴラァ………」 
 
気が付くと、そこにはどこまでも続く草原と、限りなく青に近い澄み切った空が広がっていました。
フサギコは本当に死んでしまったことを実感したようです。 
 
「フサギコや………フサギコや………」
 
後ろの方から声が聞こえてきました。
85名無し草:2007/07/07(土) 01:51:45
ミ,,゚Д゚彡「………」
(´;ω;`)「こっちへおいで」
ミ,,゚Д゚彡「………」
 
大きな背の高い木の下に、白い布の服、真っ白でとても長い髭と髪で、
立派な樫の杖を持った特徴的な喋り方の………あの神様が立っていました。
フサギコはその神様の下へ歩いていきました。
 
(´;ω;`)「うぅ……感動したよ………泣いたのなんて何百年ぶりだよ………グスッ………」
ミ,,゚Д゚彡「約束は………約束はちゃんと守ってくれたんだろうな?ゴラァ………」 
(´;ω;`)「うんうん………君のお父さんはちゃんと元気になったよ………グスッ………」
ミ,,゚Д゚彡「………」
86名無し草:2007/07/07(土) 01:54:00
(´;ω;`)「今日は何て素晴らしい日なんだ。心が晴れ晴れしているよ」
ミ,,゚Д゚彡「………」 
(´;ω;`)「よし、ワシを感動させてくれたお礼として、またご褒美を上げるよ」
ミ,,゚Д゚彡「………」 
(´・ω・`)「安心しなよ。今回は何の条件も付けない。さぁ、何でも叶えてあげよう」
ミ,,゚Д゚彡「俺は………」 
(´・ω・`)「うんうん」
ミ,,゚Д゚彡「俺は………俺はまた、お父さんとお母さんの子どもになりたいゴラァ!!!!!!」
87名無し草:2007/07/07(土) 01:56:43
(´・ω・`)「お安い御用だよ。それではさっそく、お父さんとお母さんの子どもになあれ」
ミ,,゚Д゚彡「ッッッッ!!!!????」
 
神様は持っていてた杖を振りかざすと、白くて眩しい光がフサギコを包み込みました。
 
(´・ω・`)「これだけ強くなったんだ………きっと、あの2人を守れるような
      強い子どもになれる…今度こそ……今度こそ幸せになるんだよ……」
 
その10ヵ月後………桜が例年以上に咲き誇った春………
お父さんとお母さんの間に、それはそれは可愛い子どもが生まれました。

 
 
 
                   おしまい