スクライドの奇妙な冒険第2373部-常上手-

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88名無し草
「おい!出せっ!ここから出せぇっっ!!」
男の声が暗闇の中で虚しく木霊する。
「畜生っ!…なんで俺がこんな目にっっ!」
がっと岩でできた扉を蹴り飛ばす。
岩はびくともせずに痛みは全て自分に返ってくる。
「…っ、……俺はただの旅人だっ…!」
やがて男はずるずると湿った土の上に尻をつける。


村に訪れたのは数時間前のこと。
すべては自分の方向音痴が悪いのだ。
途中、地図から道を見失い今日中に着くはずだった村にはいっこうにつかない。
しかたない今晩は野宿になるだろうと思われた。
無駄に歩き回るのは良くないと考え野営の準備をしていたその時、暗くなってから
初めて気づいた。ちらちらと見えた灯り。村があったのだ。
その村は彼の知ってる村ではなかった。
地図にも載ってはおらずしなびた小さな村だった。当然宿もない。
しかし村長が彼を宿代わりに自分の家に案内してくれた。
彼も村長のそれを好意とうけとり素直に従った。
…その結果がこれだ。
村長の家で渡された水になにかしらの薬が混じっていたのだろう。
そこで一度彼の意識は途切れた。
次ぎに目覚めたのはここの岩戸だった。
松明が一本、投げ入れられている。
あたりを照らしてみる。岩戸の向こうは暗い洞窟が続いていた。
これがなければ灯りは失われ真の闇のなかでは気がどうにかなっていただろう…
…とにかく歩かなければ。
89名無し草:2006/11/02(木) 11:59:04
「くそ…っ」
松明の柄がもう少ししか残っていない。数分もしない内に燃え尽きるか…
焦りにかられてがむしゃらに走り出す。
どうせ一本道だ…迷うことはない。どこへでも出られさえできればいい、そう思ったその時…

――ひかりが見えた。

そこは霧深い森だった…
ひたすら歩き続けどれほど歩いたかわからなくなったころのこと―
「きゃぁあああ」
〈ゴォゥウァアア…〉
甲高い少女の悲鳴と今まで聞いたことのないような雄叫びが聞こえた。
少女が髪を振り乱しこちらに向かって走ってくる。
彼女を追いかけてくる謎の生き物はたくさんの気味の悪い触手を前にのばし蠢かしている。
少女は彼の元へ到達するまえに転んでしまった!
「…い…ゃやあああっっ」
少女に怪物が覆い被さる。
グチュグチュと粘着質な音をたてて怪物は少女の上にのり、我が物のように弄んだ。
〈グィゥォオオオ…〉
怪物はついに獲物を捕らえることに成功し歓喜をしているみたいに男にはみえた。
「あっ…あっ…あっ…ぁあああ……」
しゅるしゅると長い触手が少女の内股の中へと入っていくのをみた。
少女はビクビクと細い身体を痙攣させている。
仰向けになった少女は瞳に涙をためこちらに助けを求めるように手をのばしている。
男はなんとか少女を助け出せないかと懐をさぐる。
――しまった…彼が持っていた荷物はあらかた村の中に置いてきてあるようだ。
それでも衣服の中からいざというときのための護身用の小型のナイフが見つかった。
腰をひいて構える。
90名無し草:2006/11/02(木) 12:00:22

魔物の身体はおぞましい動きで全身を脈動させている。
「あっ…あん…ぁぁあ…あは…あはははは」
ふいに身体を貪られていた少女が笑い出した。
男は目を見開き少女の変化を観察する。
「あは…ぁあん…はぁ…はぁ…あぁん…くすぐったいよぉ」
魔物の身体から伸びた細い少女の脚は無邪気な様子で宙を引っ掻いている。
まるで飼い犬と戯れる主人のように…
男は呆然として戯れる少女と怪物を見ていた。
「ここは『贄の森』って呼ばれてるのよ」
少女は泉で身体を清めていた。
男の視線を気にもせず艶めかしい裸身を晒している。
「…ようするにぃあなたは、『生け贄』にされちゃったの」
悪戯っぽい顔で男の顔をのぞき込む。くるくると動く少女の瞳に男は愛嬌を感じた。
「ま、待ってくれ。生け贄…ってことはそれを『糧』にする奴がこの森に棲んでいるってことだよな!?」
男の言葉に少女は意味ありげな様子で笑みを顔に刻む。
「?」
くいくいと腕を何かに引っ張られる。
さきほどまで少女と仲睦ましく遊びふけっていた『怪物』…
まさか…こいつが…?
「忠告しておいてあげる…この森はね、結界が張り巡らされている。だから出ようとしてもでられないんだよ…」
そういうと彼女はにっこりと男に笑いかけた。
91名無し草:2006/11/02(木) 12:01:03

『生け贄』だと?…しかも『怪物』まで出てきた。結界まで張ってあるだと!?
原因を作った理不尽な村人達に沸々と怒りがこみ上げる。
「お前も奴らの仲間か…?なんで俺が…!おい、どうしたらここから出られる!?」
がくがくと少女の肩を掴み揺らす。驚きたちまち泣き出しそうになる少女。
「わ…わかんないよ…、だってあたしだってここに閉じこめられてるんだもん…」
少女は唇を噛んで涙をこぼした。
ごしごしと涙を拭う様子を見ていると泣かせてしまったという罪悪感がこみ上げる。
そうか…この娘も生け贄にされたのか…。
「悪かったよ…。もう泣くな、な?」
気分のせいで出来の良い笑顔ではなかっただろうが彼女は微かに笑ってくれた。
男はホッと安堵の息をついた。


泉から上がった少女は彼女の住処に案内してくれた。
「こいつも一緒なのか?」
彼らの後から着いてくる『怪物』。ぐちゅりと触手が伸びてきて、男は気持ち悪さに肌が粟立つ。
「もちろん、あたしの家族だもん」
ぺろっと少女は赤い舌をみせた。
92名無し草:2006/11/02(木) 12:02:35
その日の夜。
男は眠れなかった。
疲れているはずだったし昨日は寝ずに歩いていた。
だがいろいろありすぎてとても眠れる感じがしない。
男は身を起こして外をぶらつくことにした。
少女が近くで眠っているだろうから静かに…
「…?」
少女の気配がない…

〈…あはは…あは…あぁん…〉

「外か…?」
聞き覚えのある笑い声が遠くから聞こえてくる。

徐々にその笑い声に近づいていく…
そして俺は見たのだ…

「あふ…あっ…あはぁっ…」
少女は自分よりもよほど大きな怪物に大きく脚を広げ跨っていた。
少女の広げられた秘肉をみてしまった。
蠢く触手の一つがそこを突き破っている。
白い粘液がそこから溢れ噴きだしている。
長い触手は少女の内部にすべてをおさめることは到底できない。
その余りの部分はそれでも奥深くを求めるようにぐねぐねとのたうっている。
「…ぅはぁあん…だめぇ…くるしいよぅ…」
少女は身体を捩って苦痛を訴える。
「あぅっ…もう…お仕置きしてあげるぅ」
おもむろに彼女は触手の一本を掴む。
それを口に含む。
93名無し草:2006/11/02(木) 12:03:06
「…ふぅっ…んちゅう…」
驚くことに少女はちゅぱちゅぱとそのおぞましい触手をしゃぶりだした。
余った片手で他の触手を手繰りよせる。
まるで手綱のように引き寄せたかと思ったらそれを激しくしごきだした。
ぬるぬると白っぽい粘液がそこから溢れ出している。
「…ちゅっ…んっ…ふふっ…気持ちいいよぅ…」
触手が集まってきて少女の身体にまとわりつく。
「あぁっ…さぁ…もっと…あたしを…悦ばせてっ!……あぁあんっっ」
甲高い嬌声が聞こえる。紛れもない嬌声が。
彼女はちっとも嫌がる様子はなくむしろ触手の行動を悦んでいる。
「…ぃいいよ…あぁん…あぅんっ、…ね…お前は…?」
『お前』というのはあの怪物か…
怪物は少女が悦んでいるのが嬉しいのか少女の中に繋げた一本でぐりゅぐりゅと
彼女の内部を激しくかき乱した。
「や…はげし……あ…あはぁーーーっっ」
びくんびくんと脚が痙攣している。
ぶしゅっっと音をたてて白濁が彼女の内部から噴きだした。
触手が激しく脈打っている。彼女の中に怪物の体液が流れ込んでいるのだろう。
彼女の細い手に握られた触手からも同様に白濁液が噴きだしていた。
大量の粘液に汚された艶めかしい肢体。
彼女の身体は反り返り怪物の上に仰向けになった。秘部にはいまだ触手が繋がっており
白い粘液を内部に吐き出している。
「…あぁん…ででるぅ…お前があたしのお腹にいっぱい…い…ぱい…」
恍惚の表情をうかべる少女。
少女はやがて安らかな息を空に吐き出した。
94名無し草:2006/11/02(木) 12:04:02
「……なんなんだ…これは」
男はぼんやりと口にした。
だが驚きはそこで終わらなかった。
少女の身体の下にいた怪物が痙攣しはじめた。
なま暖かい空気の中でやがてそれは収縮し……

――それは人間の形を成した。

「見ていたのね…」
力つきたように横たわっていたはずの少女が先ほどまで怪物だった人間に抱き起こされていた。
少女は怪しく瞳で男の方を見ている。
「この『怪物』はねあたしに捧げられた『人間』なの…。あたしはこの土地に棲んでいた魔女でね、
生まれつき魔女の力のせいで嫌われ者。しかも力が強力すぎてあの土地の人達をなにもせずとも怖がせたわ」
じっとみつめられ男は金縛りにあったかのように動けないでいた。
「彼らはこの土地にあたしを封じ込めようとした…あたしも必死で抵抗した…」
「何をしたんだ?」
「呪いで村人を一人づつ怪物にしてあげたの」
少女はニィ…と口元をあげた。だがすぐに顔を引き締めた。
「でもあたしの力はね…あたしがこいつらと交わると弱まっちゃうの。どこからかそれを知った村人が生け贄と称して
結界の土地に投げ入れたの。それがすべてのはじまりよ…」
「俺もあんたの『生け贄』なのか…?」
「はじめにそういったでしょ?」
少女ははじめと同じように悪戯っぽい瞳でこちらを覗き込んだ。
「お…俺もこいつらと同じように…、怪物にされるのか」
にっこりと微笑む少女に男は血の気が一気に下がっていくのがわかった。
「…ぅ……ぅうわぁあああああ」
男は無我夢中で逃げ回った。
あんな気持ちの悪い怪物になんかされてたまるか!!
森を走る。
森の中で自分のものではない息遣い。これは…
95名無し草:2006/11/02(木) 12:05:49
じゅるる…
「怪物め…」
男は呻きまた逆方向に逃げた。
あちこちに同じような怪物がいる。否、人間か…

ようやく岩戸にたどりついた。
「くそ…開けっ」
どんっ岩を叩く。
「鬼ごっこは終わり?」
後ろから何者かがひたひたと近づく気配……
「…あたしは村人達の意に従ったわ。だって…こんなに楽しいんだもの」

「逃 げ ら れ な い よ」


血塗れたように赤い月が、暗い空にふくよかな姿を晒し浮かんでいる。
闇を切り裂く、悲鳴すら少女には甘美であった。
「どうして、逃げるの?」
少女は夢見るような口振りで、逃げる男に近づく。
月のように赤い瞳は妖しく輝いて、恐怖に怯える男すら魅了した。
小さな桃色の唇は可憐で、しかし奇妙な笑みをうかべて歪んでいる。
「…あなたも、彼らと同じ醜い姿にしてあげるのに」
男は恐怖を顔に張り付け、拒絶し、喚き声をあげている。
「…頼む、助けてくれ!」
首を傾げた少女は憐れむように、手を差し伸べる。
「仕方ないじゃない…。あなたは、あたしに捧げられた生け贄なんだもの」
「いやだ…。やめてくれ…」
少女は赤い瞳を細めて、男を見据える。
そして可憐な姿とは似つかわしくない低い声で告げる。
96名無し草:2006/11/02(木) 12:06:42
「駄目よ…」
少女は男の首を鷲掴む。ぎり、と憎しみでも込めるように詰めが男の首に沈む。
「く…ぁっ…」
あまりの苦しさに男は呻き、唾液が顎をつたった。
少女は唇を、寄せそれを湿った舌ですくい取る。
掬い取った唾液を男に口移しで戻す。
可憐な唇が呪文を唱え始める。
呪いの言葉が男の身体に巻き付き、身体の奥にまで浸透していく。
「…あっ…っ…ぐぁ…」
男の身体が、痙攣を起こす。
「くぁ…ぐ…」
「ふふふ…」
呪文を唱え終わったのか少女は、楽しげに笑みを零した。
しかし、男はいまだ放たれた呪いと格闘している。
「ぎぁ…ぎぎぎ…き…ぉぉぉ」
「あははははははははははは……」
少女は高らかに笑った。それと共に男は咆哮をあげた。
「ぐごぉおおおおおおおおおおお…」
人外になった男の声は、大地をふるわせた。
少女はそれに、怯えることなく近づき、柔らかい肢体を怪物の身体に巻きつけた。
「…素敵よ、名前も知らない旅人さん」
語尾にハートがつきそうなくらいに少女の声は明るかった。
ぺろりと赤い舌が愛らしい唇を舐める。
「さっき、覗いていたんでしょう…悪い子」
97名無し草:2006/11/02(木) 12:08:42
化け物と少女の奇妙な戯れ。
歪な交わり。

それを覗いた男、否、今は怪物になった男に彼女は母親のように窘める。
「…ふふ、お仕置きされたい?それとも、甘えて可愛がられたい?」
怪物の顔をなでつけながら、囁く。
怪物の目から黄色い濁った、涙が流れた。
「ご…うご…うぉ…」
「ああ…泣かないで。……あなたの汚い涙が、あたしの身体についちゃうでしょ?」
少女は身体に流れた黄色い粘液を、いかにも汚いとばかりにはらった。
「ぐぅ…」
「そ〜ねぇ。この場合は、やっぱりお仕置きかしら」
やおら、2、3本の長い触手をまとめて掴む。
尖端を握り、ぎゅっと握力を込める。
「痛かった?でも許してね…お仕置きなんだもん。だって、覗いてたんでしょ?」
悪戯っぽく尖端にキスをする。
触手の尖端を握る手をは逆の腕を、触手の付け根に移動させる。
98名無し草:2006/11/02(木) 12:11:49
「…いくよ」
ずッ…
長い触手の付け根から尖端まで、一気に掻きおろす。
怪物は醜い体を大きく揺らす。
「…皮膚、まだやっこいね」
少女は首を傾げて、怪物を覗きこむ。
「時間が経つと、もっと皮膚はかたくなるよ。でもね、いまが一番、刺激に敏感な時期なんだよ?」
「ぎぃ…ぁぎぃ…ぎぃ…」
のたうつ怪物に妖しく微笑みながら、少女は手の平で触手をしごいていく。
「ほら、ほらぁ、もっとしてあげる!」
ズッ、ズッ…ズル、ズル、ジュリッ…
興奮した少女の声と粘液を滲ませた触手のしごかれる音が重なる。
「ふふっ…痛いの…?それとも嬉しい?」
楽しげに少女はぺろり、と触手の穂先を舐める。
粘液が溢れて、地面に滴る。
手の動きは、先より、早くなっている気がする。
怪物の粘液が動きをより、スムーズにさせているのだ。
「ギュイァアァアアアァァア!!」
暴れ出そうとする怪物に、少女は笑ってしがみついた。
「逃げちゃ、だぁめ…。どうせ、逃げられないの。仲良くしよう?」
ぴしっと、怪物の顔を指で弾いた。
「ギュウア!!」
少女の言葉通り皮膚の感覚が敏感らしく、怪物は鋭く鳴いた。
「…あぁ…」
少女は息をひとつ吐くと、くすくすと楽しげに笑ってみせた。
「…もっとよ、もっと醜く鳴いてみせて…」
少女は、狂ったように、怪物の触手の束を掴みしごく。
怪物の身体がビクン、ビクンと震える。
びゅるっと、少女の顔に粘液が飛ぶ。
「…っ!」
すると彼女は顔をしかめて、怪物の顔に塗りつける。
99名無し草:2006/11/02(木) 12:28:29
「汚い…醜い…臭い…、これは本当に人間だったのかしら?」
少女はそんなことを、ぽつりと漏らした。
その時、怪物も反撃に出ようとするように、少女に捕らわれていない方の触手を
彼女の身体に絡みつく。
「…っは!」
「ぎゅいぃ」
「…何するの?」
白い腿に長い触手が、きつく巻き付く。
腕にも、同様にそれが、縛り上げるように巻き付いた。
少女は、怪物を睨む。
しゅる、と一本の細い触手が腿の間へと、潜っていく。
「…っ、…は…、ぁ…」
少女の頬に血の気が上がり、呼吸が乱れ始めた。
くちゅ、くちゅ、と粘着質な水音がしだした。
「んんっ…、やめ…ぁっ…」
触手が膣の奥で蠢くと、少女のぴくっとつま先が、突っ張った。
とろ…、と腿の内側を粘ついた汁が、つたう。
「ぁああんっ…!」
ついに少女の口から、嬌声が上がった。
その開いた口の中に、今だとばかりに触手は入り込む。
「うふぅっっ、…んぐっ、…あぁんっ」
少女の肢体が、快楽に震える。
粘液と少女の汗が混じり合い、淫靡な香りが辺りを包む。
「あ…ぁあん、…もぅ…いい…はぁん…」
少女は唇を唾液で濡らし、怪物の与える快楽に酔いしれた。
「…あっ…ああっ…、はぁっ…あふぅっ…」
閉じた瞳から透明な液体が溢れる。…涙だ。
「…ああぁ…いやぁん、…あはぁっ…」
少女は怪物に身体を預け、地面から足を浮かせた。
粘液を纏わせた触手の動きは、より激しくなり彼女を狂わせた。
「はっ…、…んぁっ、…ひぅっ…あっ、あっ、あっ」
怪物が、大きな口から長い舌を伸ばし、少女の乳首を一舐めした後、吸いつく。
100名無し草:2006/11/02(木) 12:31:09
柔らかそうな髪が、振られた頭を追い、揺れている。
触手が、大量の白濁を少女の膣内にぶちまける。
少女は、目を開き身体を痙攣させた。
「…ぁあああっっ、…あはあっ…、はあっ…ああっ…」
膣の最奥で、何度も何度も、吐き出される。
「…ぁあああっっーーー!!!」
そのたびに、強い刺激が少女の身体を襲い、彼女は身を狂わせた。
そして、少女は絶頂の中、そのまま意識を闇にゆだねていった。


少女が目を覚ますと、夜は明けていた。
…そこには誰もいなかった。
「…ふん、弱虫。薄情者」
鼻を軽く鳴らし、少女は気だるい身体を起こした。
立ち上がると「ふぁ…」と、あくびを零す。
「どうせ、結界からは抜け出せないわ…」
(…わたしも、いつになったら出られるか分からないんだもの…)
少女の瞳に陰が落ちた。
草場の影が、ガサゴソと揺れる。
目を向けると、少女は瞳を瞬かせ、微かに笑った。
「…あら、おはよう。帰りが遅いから心配したの?」
彼女が『怪物』に、近づく。
それは、昨夜の『怪物』になった男よりも、もっと古くに『怪物』になった者だった。
「そういえば、お前だけは私から離れなかったのね」
少女は優しく、彼をなでた。
少女は彼に、身体を預ける。
「……帰ろっか」
少女は穏やかに言い、その場をあとにした。