田中れいなこと田中れいにゃを応援しょぅと II

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96名無し草
中古期における源氏物語の影響は大まかに二期に区切ることができる。第一期は院政期初頭まで、第二期は院政期歌壇の成立から新古今集撰進までである。

第一期においては、源氏物語は上流下流を問わず貴族社会でおもしろい小説と
してひろく読まれた。当時の一般的な上流貴族の姫君の夢は、後宮に入り帝の
寵愛を受け皇后の位に上ることであったが、源氏物語は、帝直系の源氏の者を
主人公にし彼の住まいを擬似後宮にしたて女君たちを分け隔てなく寵愛すると
いう内容で彼女たちを満足させ、あるいは人間の心理や恋愛、美意識に対する
深い観察や情趣を書きこんだ作品として貴族たちにもてはやされたのである
。この間の事情は菅原孝標女の『更級日記』にくわしい。

すぐれた作品が存在し、それを好む多くの読者が存在する以上、源氏
物語の享受はそのままこれにつづく小説作品の成立という側面を持った。
中古中期における源氏受容史の最大の特徴は、それが源氏の文体、世界、
物語構造を受継ぐ諸種の作品の出現をうながしたところにあるといえるだ
ろう。十一世紀より十二世紀にかけて成立した数々の物語は、その丁寧な
叙述と心理描写のたくみさ、話の波乱万丈ぶりよりも決めこまやかな描写
と叙情性や風雅を追求しようとする性向において、あきらかに『宇津保物
語』以前の系譜を断ちきり、『源氏物語』に拠っている。それがあまりに
過度でありすぎるために源氏亜流物語という名称さえあるほどだが、例えば
『浜松中納言物語』『狭衣物語』『夜半の寝覚』などは源氏を受継いで独特
の世界をつくりあげており、王朝物語の達しえた成熟として高く評価するに
足るであろう。(なお、後期王朝物語=源氏亜流物語には光源氏よりも薫の
人物造型がつよく影響を与えていることが知られる。源氏物語各帖のあらす
じの「第三部」参照。)