文学全体を結びつけた。このような、「反映としての文学」において「イ
ロニー」は、古典的理論の目指すべき芸術と人間の表現行為が乖離し、芸
術家の表現しようとする状態のイメージもまた信を置かれないという理想状
態として表現されている。一方で人間は文学作品の意味と無意味について
確かなことを知りえないのだから、芸術が到達する虚構性という危険を、
できるかぎり容認すべきなのである。断片というロマン派が愛した文学的
表現形式は、この文学の不完全性を自ら反映していて、理想状態を映し出
す自己完結的・古典的な文学の概念とは一線を画している。盛期ロマン主
義の代表者としてアヒム・フォン・アルニムとクレメンス・ブレンターノ
が挙げられる。彼らは『少年の魔法の角笛』というタイトルでドイツの民
謡集を発表した。アルニム夫人でありブレンターノの妹であるベッティー
ナ・フォンアルニムは『ゲーテとある子供との往復書簡』を編集し1835年
に発表した。この作品でベッティーナはゲーテの人気を伝えるばかりでな
くドイツの社会的政治的欠陥を幾度も指摘して話題にしている。(『貧民
の書』、『この本は王に帰属する』の特に最初の部分、および『ポーラン
ドパンフレット』)ヤーコプ・グリムとヴィルヘルム・グリムのグリム兄弟
が『民話集』を収集したのもこのころであり、ティークもこの時期に分類
できる。後期ロマン主義者で最も有名なのはE.T.A.ホフマンである。『雄
猫ムルの人生記述』と『砂男』においてロマン的イロニーは現代のように
心理的側面に向かい、観念的詩学のきざしはもはや見られない。後期ロマ
ン主義の詩人にはヨーゼフ・フォン・アイヒェンドルフがいる。ハインリ
ヒ・ハイネはロマン主義とそのモチーフにしばしば皮肉な態度を取ったが
、これにより彼は初期リアリズムに分類されるのが一番ふさわしいだろう
。