啓蒙主義のことを狭苦しくて感覚的に冷めていると感じた若者たちの反応は、
短い「シュトゥルム・ウント・ドランク」(Sturm und Drang、疾風怒涛、「
嵐と衝動」)の時代を作り出した。この運動のほとんどは、いかなる形の専
制にも抵抗するという信念をもった若者たちによって構成されており、彼ら
は芸術の領域においても他からの干渉を許すべきでないと考えていた。この
時代の特徴として、規範にしばられない「天才」という観念が流行し、古典
よりも自分たちをとりまく「今、ここで」起こっている問題に重きを置いて
いたという点がある。ヨーハン・ヴォルフガング・フォン・ゲーテは書簡体
小説『若きウェルテルの悩み』で感情豊かな不幸な恋のうちに自殺する若者
を描いた。フリードリヒ・シラーは戯曲『群盗』において父と秩序に反抗す
る若者を、ヤーコプ・レンツは『家庭教師』の中で知識階級の若者が抑圧さ
れた状況を表現した。これと並んで、感情と情念を主題とした抒情詩も重要
である。「シュトゥルム・ウント・ドランク」の時代は長くは続かなかった
。この運動の主役を担った若者たちは成長して別の精神的傾向に傾き、ある
いは情熱のおもむく果てに若くして命を失ったのである。ゲーテとシラーは
古典に回帰して次の時代を開き、レンツは彼を取り巻く環境に適応すること
を潔しとせずに孤独のうちに死を迎えた。