主婦だが何かへ哀をこめて3
知っていたのさ おまいが変人だったこと
おまいは強がりだから 先に叩かなきゃダメってこと
通天閣を モレは一人歩く
主婦 おまいがパチふた箱とったなら
どんなに楽かと モレは一人歩く
呼び込み兄ちゃんの声がきこえる
のせられ店に 連れ込まれたら
サイフの¥は消えるだろうか
わかっていたんだよ おまいがカユイ女だってこと
おまいが人の知らないとこで 水虫掻き掻きしてたことを
夜の戎橋をモレの原付が走る
主婦がモレの後ろで モレが捕まっていたら
さっさと帰るだろうさ モレは一人派出所
サービス定食で一時に食事
熱苦しいオヤジの匂いが 激しく目眩を誘う
おまいは今頃もうイビキをかいているだろうか
主婦だが何かへ哀をこめて4
おまいの好きな堤防沿いを走る モレの軽トラにおまいを乗せて
エジソンの思想は モレとおまいの熱いディペート
窓ガラスないわよ? モレの耳毛がそよぐ声
モレはゆっくり隣を見る そこにミイラがいた
助手席のドアをあけ モレはおまいを突き飛ばす
ドサリとおまいのカツラがとれる
あわてて押さえる主婦だが何か
竜巻が おまいのカツラをさらっていく
お気に入りだったのに 泣き出しそうなモレ
おまいは笑う 怖がるモレがおかしくて
急発進で 軽トラを出す
怒り狂う主婦だが何か
全速力で 追い抜かす
フロントガラスに 立ちはだかるおまい
やがておまいは身を乗り出し
モレの首根っこを信じられない怪力でつかむ
主婦だが何かへ哀をこめて5
モレの哀した主婦だが何か
今日のおまいの狂いっぷり回転いいよ
興奮したおまいの頭上は桜島
生暖かい風に香る蚊取り線香
キーを叩く指はたどたどしく
妖気漂うおまいの姿がモレを涼しくする
ああ、哀しているよ主婦
おまいほどの女はいない
モレはおまいに出会って初めて人を恐れた
無職の愛
だからモレはおまいを見守り続ける
最強の女
主婦だが何か
おまいはなぜそんなにもモレの心を掻きむしるのか
愛とはキレやすいものなのか
それならキレながら共に歩もう
モレは逃げ出そう、おまいとモレの因縁から
おまいの綴る文字のひとつひとつが
モレの中で不協和音を奏でる
町内のゴミ収集所で薄笑いを浮かべてただずむおまいは
なんて恐ろしいんだろう
モレはチビリながら後ずさりする
ああ、ああ、モレの哀する主婦よ
助けてくれ、助けてください
おまいだけが
いま、モレをこんな恐怖に突き落とすよ