◇◆◇◆有閑倶楽部を妄想で語ろう16◇◆◇◆

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「清四郎?」
呼び掛けの声は、教室の中からじゃなく、肩越しに聞こえた。

何というんだか知らないが(聞いたかもしれないが忘れた)、
甘い、あまりにもそいつにぴったりな匂いの香水が清四郎を我に返らせた。
美童は手に持ったノートで清四郎の肩を叩き、にやっと笑う。
天使のようだと賞される笑顔は、小悪魔の声を出した。
「複雑だねえ、お兄ちゃんは」
返答の前に美童はさっさと教室に入っていき、群がる男たちを簡単に散らして
ノートをその借り主に渡した。野梨子に何か言う。
野梨子は笑う。

美童が清四郎を呼ぼうと振り返る2秒前、
清四郎は辞典をそこにいた生徒に預け、その場を立ち去っていた。
清四郎がいたその場所が、必要以上に暗く見えた。