可憐がビルの中に消えていくのを見送った後、制服を着て外にいるのを忘れ、胸ポケットから
マルボロを一本取り出して火をつける。
いつになく緊張していたのか、その一本が身体中に染み渡ると、筋肉という筋肉が
ほぐれてくるのを感じた。
「さては、帰るか」
一人呟いて、バイクを置いたままにしてある場所へと、今来た道を戻り始めた。
久しぶりに『歩く』ことが新鮮で、子供のように周りの風景に気を取られている。
それは確かに、バイクや車から見るのとは全く違って見えた。
これまで霞んでくぐもっていた魅録の心は、ようやく少し晴れてきた。
可憐の心の中に清四郎がいるとわかっていても、可憐を愛している。
まだ、続きます。