ここは一条ゆかり先生の「有閑倶楽部」が好きな人のためのスレッドです。
お約束
■sage推奨 〜メール欄に半角文字で「sage」と入力〜
■妄想意欲に水を差すような発言は控えましょう
*作品への感想は大歓迎です。作家さんたちの原動力になり、
スレも華やぎます。
前スレ、関連サイト、お約束詳細などは>2-10のあたりにありますので、
ご覧ください。特に初心者さんは熟読のこと!
◆作品UPについてのお約束詳細(よく読んだ上で参加のこと!)
・原作者及び出版元とは全く関係ありません。
・名前欄になるべくカップリングを書いてください(ネタばれになる場合を除く)。
・名前欄にタイトルと通しナンバーを書き、最初のレスに「>○○(全て半角文字)」
という形で前作へのリンクを貼っていただけると助かります。
・リレー小説で次の人に連載をバトンタッチしたい場合は、その旨を明記
して頂けると次の人が続けやすくなります。
・苦手な方もいるので、性的内容を含むものは「18禁」又は「R」と明記を。
・作品の大量UPは大歓迎です!
・作品UPが重なってしまうのを気にされる人は、UP直前に更新ボタンを
押して、他の作品がUP中でないか確かめるのがいいかと思います。
・作品UPが重なってしまった場合は、先の書き込みを優先でお願いします。
◆その他のお約束詳細
・無用な議論を避けるため、萌えないカップリング話であっても、
それを批判するなどの妄想意欲に水を差す発言は控えましょう。
・作家さんが他の作品の感想を書く時は、名無しの人たちも参加
しやすいように、なるべく名無しで(作家であることが分からない
ような書き方で)お願いします。
・あとは常識的マナーの範囲で、萌え話・小ネタ発表・雑談など
自由にお使いください。
・950を踏んだ人は新スレを立ててください(450KBを越えそうな場合は
950より前に)。
他スレに迷惑にならないよう、新スレの1は10行以内でお願いします。
テンプレ終了っと。
あとは10万ヒットを待つばかり(w
スレ立て乙〜。
1タン乙彼!マターリいきましょう♪
>>
http://that.2ch.net/test/read.cgi/nanmin/1051259777/821 続きを書きます。
では、なぜここに来たか。それは、百合子と万作は常々、もう一人二人子供が欲しいと
思っていて、それなのにこれまで授かることがなかったから。ひとりいるのだからと
充分と思って何度もあきらめようとした。実際、ここ2〜3年はあきらめていた。ところが、
自分の従兄が年若い妻と3人の娘を残して死んでしまったという連絡を受けて、いても
たってもいられなくなったのだ。
頼りがいがあって優しくて、男なのに美しくて、自分が幼い頃の憧れだった人。駆け落ち
して結婚した百合子の母を常に気にかけてくれ、百合子が高校卒業後に剣菱家に就職するに
あたって保証人となってくれた人。そんな従兄が、たった一つの失敗を皮切りに没落して
いった時、自分は何もできなかった。従兄と、ぷっつりと音信が途絶えてしまった。百合子は
それこそ、剣菱の力を使ってでも探し当てようとしたが、母がそれに反対した。無理に何かを
したところで、追い詰めるだけにしかならないと言って。それから、百合子は言いようのない
もどかしさに苦しみながら、ずっと連絡を待っていた。自分がいるところはわかっているの
だから、本当に何かある時は必ずここに連絡をくれるに違いないと信じることにした。
続きます。
10万ヒットキタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━ !!
(というか、今自分が踏みました)
>9
着々と物語が作られていって、面白そう。
続きを楽しみにしています。
>10
おお、おめでとう!
今見に行ったら100,010だったよ(w
こちらでは、お久しぶりです。
ついに10万ヒットを超えまして、なんだか夢のようです。
これもみな、素晴らしい作品を描いてくださった作家さん・絵師さん、
妄想ネタを提供し続けてくださった参加者の皆さん、そして何よりも
訪れてくださった方たちのお蔭です。本当にありがとうございます。
これからもスレに沿う形でマターリ続けていきたいと思っていますので、
どうぞよろしくお願いいたします。
それから、サイトの掲示板(したらば)の方にも書いたのですが、
芸の無い管理人ゆえ何のお礼もできず、本当に申し訳ありません。
いつもお世話になっている作家さんたちに、さらにお願いしてしまった
リクエスト企画は正直とても心苦しいのですが、一方で、一読者と
してはとても楽しみな企画でもあります。
作家さんたち、どうか無理の無い範囲でよろしくお願いいたします。
(もし本スレよりしたらばの方がUPしやすい、という方がいましたら、
したらばの短編スレなどを使ってください。また、他に必要なものが
ありましたら、本スレかしたらばの連絡スレッドで遠慮無くお申し付け
くださいませ)
嵐様、妄想スレの皆さん
====================================
1 0 万 ヒ ッ ト お め で た い !
飲めや 歌えや どんちゃん、どんちゃん、ちんどん、ちんどん
====================================
それでは、ここ妄想スレと嵐さんの妄想同好会の益々の御発展を祈って
不肖わたくし(以下略W
やった───!!!!!!
10万おめでとうございます!
嵐さま、皆さん、これからもマターリいきましょう。
山ほどのうp大期待(゚∀゚)
>13
あの6人が、どんちゃん騒ぎしてるところを想像してワロタ(w
嵐さま 並びに有閑妄想同士へ捧ぐ
>>
http://that.2ch.net/test/read.cgi/nanmin/1028904997/278のリクより。
「……なあ」
「ん?」
耳元での囁くと、くすぐったそうに身を捩りながら悠理は首を傾げる。
からからと扇風機が回る音がする。耳を劈くような蝉の音。
視線を巡らせると、板を張り合わせたような低い天井や、脆い砂壁、
そして障子を開くと海が望める古びたガラス窓がある。
サッシから風鈴が吊るされていたが、風ひとつないため音がしない。
布団の上でふたり。
眩暈がするほど暑い夏を感じている。
「海、どうする?」
悠理の浴衣の袂を割り、肌を弄る。言葉と行動が一致してないと我ながら思うが、
一応、朝食を食べれば海に行く予定だったのだから聞かないわけにはいかない。
「あたいはどっちでもいーよ」
そう言いながら、悠理は俺の頬に手を這わせる。
そうしてゆっくり口づけた。
防音のぼの字もない安い民宿だが、昼間っから海水浴も行かず、
睦みあってる人間など自分たちしかいないだろう。
先ほどから、ちっとも行為に夢中になってくれない悠理に焦れながら、
俺はすみずみまで知っている悠理の肌に手を伸ばす。
肌理こまやかな彼女の肌は、しっとりと俺の手の平に吸い付いた。
「んっ……」
小さく声を漏らして、身を捩る悠理に、俺は口に笑みを刷いた。
悠理は、こういう艶事には淡白であるらしかった。
はじめは、子供ゆえの無関心からくるものだと思っていたが、そうではないらしい。
こうして何度も身体を重ね、その身体が快楽を覚えても、
悠理がそれに溺れたところを見たところがない。
そんな悠理に俺は征服欲をかきたてられ、
またときに自分ばかりが溺れていくのではないかと不安になるのだった。
ああ、それにしてもどうしてこんなに暑いのだろう。
汗を吸う浴衣はすでに肌蹴け、手首に申し訳程度に絡みつくのみである。
後ろ手に手をつく悠理の唇を、悠理の首筋を、悠理の肩を、そっと唇でなぞる。
悠理の脇腹を、悠理の臍の上を、悠理の内股を。
舌で舐め取った。
そして悠理の茂みを。
「……なんかねちっこいってば」
甘やかな、それこそ俺を狂わしてやまない声音での抗議に、そっけなく答える。
「若さで押して、お前が狂ってくれんなら、いますぐ挿れるけど」
「……」
粘膜が潤っている。
赤く熟れたそこに指を差し入れると、悠理の一瞬背が弓なりにたわんだ。
「あっ…」
その声に助けられるように、指を抜き差しし、あるいは内部を擦りながら、
じっと俺は悠理を見る。
そろそろもどかしくなってきたのだろう。悠理のちっとも豊かではない細い腰は揺れ、
俺を誘うかのようだ。だが、悠理自身がそれを口に出すことはない。
たとえ、俺が「今日はここまでにしとこう」といって手を離してしまえば、
「ああそう」と快楽の余韻を感じさせない口調で起き上がるのだろう。
こんなにも、こんなにも囚われてしまっているのは自分ばかりで。
「あのさ」
「なんだよ」
「……魅録はなんか、思い違いしてるみたいだけど」
色を纏った悠理の表情は僅かに苦しげで、時折あげる声が俺をたまらなくさせる。
「あたいは」
顔が赤い。
それは果たして熱気の篭った部屋のためか。
それとも艶事のためか。
あるいは。
「魅録が思ってるみたいに、あたいは平気じゃないよ。あたいばっか魅録が好きで、
きっとずっと魅録以上に困ってる」
「そんなこと……」
咽喉がカラカラに渇いて、むしょうにコーラが恋しかった。
舌がはりついて、思うように言葉が出ない。
「だって」
泣き出したいような、眉が下がった悠理の表情を俺は。
「魅録ばっかり冷静で。抱かれてるとき、あたいはいっつも訳わかんなくて」
むしょうに可愛く思った。
「挿れるぞ」
そう言うと、俺は彼女の腰を捕まえて、ぐっと彼自身を押し込んだ。
「んっ 魅録……」
熱くてどろりとした感触に、なによりもきゅっと眉間を寄せた悠理の表情に、
どんな高価な酒を飲むよりも酩酊する。
腰をすすめ、悠理を味わいながら、今まで何度も重ねたどのセックスよりも、
俺は悠理に溺れてゆく。
声を我慢しようと奥歯をかみ締める悠理に口づけ、そして「声出せよ」と囁いた。
すると悠理は魔法にかけられたみたいに、甲高い声をあげた。
意味を成さない声の羅列の中に、自分の名前を聞き取る。
悠理の細い足を抱えこみ、ただ夢中だった。
「悪ぃ…。も、我慢、できな」
きっと俺は浅ましい獣のような目で悠理を見ている。
「イって、魅録。あたいも、も…」
悠理のその言葉を最期に、きわまり、視界が白濁した。
行為が終わったあとのけだるい時間に、俺は悠理を抱き寄せた。
「熱い〜。よせって」
悠理は嫌がりながら身を捩らせたけれど、
俺はそんなことお構いなしに更にぎゅっと悠理を抱き寄せる。
相変らず風鈴は鳴らず、代わりに扇風機がからからと煩い。
蝉の音あわんわんと耳の中に響き、そして窓からは潮の匂いがした。
「……海、行くか」
もう一度そうやって問いかけてみると、悠理は唇を尖らせて言った。
「やだ」
やっぱり俺はそんな悠理がむしょうに可愛くて。
彼女の汗の匂いを嗅ぎながら、もう一度唇を寄せた。
終わり
>夏の魚
10万ヒット祭だぁー!トップバッター(フライング除く)乙!
夏ですね…
何かうpされてる!と思ったら自分のリクした話でした。
魅×悠大好きなので、嬉しいです。
夏の日のむしむしした暑さが伝わってきます。その中での
セクースてのがなんともいいっすね。
気がつけば、何度も読んじゃいました。
リクエストに応えて書いていただいた方、どうもありがとうございました。
早々とウプがっ!
季節感が伝わってくるお話がイイ!です。
魅録と悠理には夏がよく似合いますねー
お互いに自分ばかりが・・・と思ってる
ところも、あの二人らしくてツボですた。
10万ヒット、おめでとうございます。
スレの発展を祈りつつ、感想。
>夏の魚
なんだか変な天気の今年の夏とは違って、すごい夏らしい話ですねー。
貧乏(そうな)旅館にとまって――ってことは、ツーリングのついで?
堪能しました。
>「魅録が思ってるみたいに、あたいは平気じゃないよ。あたいばっか魅録が好きで、
きっとずっと魅録以上に困ってる」
うおお、こんなこと言われたら男としたら溜まらんぜ、と思っている少数派の男の住人でした
男の人っていたんだ・・・新鮮な驚きw
有閑倶楽部自体は、男の人も楽しめそうな漫画だと思うけど、
ここみたいな妄想だと男の人にはつまらないだろうと思ってた。
>24
自分以外にも何人かぐらいはいると思うけど。
多分、場の雰囲気を壊さないようにネカマになってるとか。
>ここみたいな妄想だと男の人にはつまらないだろうと思ってた。
苦手な作品もあるけど、好きな作品もある。
ちなみに、原作もはじめは、美麗すぎるイラストが取っ付き難かった。
それしか読むものがなくて、退屈だったから読みすすめてるうちに、ハマった。
ここに男性がいたとは。
男の人はどういうのが好きなんですかね。
耽美系はダメとか?
>26
ダメな方を聞くと他の人の妄想意欲に水を差しかねないから、
好きな方を聞くのがいいんじゃない?
>>9 10万ヒットリクのうp中ですが、続きを書いてみます。
ところが、その場に駆けつけた百合子は自分達の他に2組の夫婦を見つけ、すこし
がっかりした。その誰とも面識がなかったが、おそらく、彼らは自分と同じく
従兄もしくはその妻の親戚にあたる人たちだろうとの予測はついた。3人の女の子の
母親は疲れきった表情で、3組の夫婦に、夫の意思に反してまで彼らを呼びつけた
理由を説明した。そして、それぞれの夫婦に、ひとりずつ娘を引き取ってほしいと
頭を下げた。これから新しい人生を歩むのに、これまでのつらく大変な生活を
思い起こすことがないよう、まるで最初からそれぞれの子供であったかのように
育ててもらいたいと。
その間、3人の女の子達は、母親の側で見たことのない大人達を不思議な顔で
見つめていた。その中の一人が、好奇心旺盛にもその大人達に近づいていった。
ようやく歩けるかというその女の子は、百合子の側で前につんのめりそうに
なった。百合子は思わず手を出し、その女の子を抱き取った。女の子は、
百合子に抱かれてキャッキャッと嬉しそうに笑った。それを見て、母親は
無言で百合子に微笑みかけ、星の形をしたリングを百合子に手渡した。これは、
ほとんどのものを売り払わざるを得なかった従兄が、なんとか娘達へ残した
最後の品々の一つだろう。だから母親は、それから相次いで自分の娘を抱き取って
くれた女性達にも、それぞれネックレスとイヤリングを手渡していた。将来、
もし女の子達が再会するようなことがあれば、ちゃんと事情を説明してやらねば
ならないだろう―。
続きます。
あと少しなので、続けます。
最後に、3組の夫婦がその場を去る時、母親は、手放さなければならなくなって
しまった娘達を思って自分達に深々と頭を下げていた。百合子はその気迫の籠った
姿に、胸を打たれる思いがしていた。
終わり
本編の続きをぎぼんぬです。楽しみにしてます。
>キャッツ
番外乙です。なるほど、三姉妹の実母は生きていたんですね。
これはどこかで会えるのかなあ。続きが楽しみです。
誰か…
やっぱウイルスでは。
もうしばらくの辛抱のはず。
夏枯れなのかねぇ・・・
それか、新作のプライドが面白いから、
みんなそっちに行っちゃったとか
静かな間に
>>
http://that.2ch.net/test/read.cgi/nanmin/1028904997/272 のリクのひとつに挑戦。
「有閑倶楽部を妄想で語ろう・8」211さんの後になります。
明日、新開に会う。
すでに、母にも、そして悪友達にも新開の誘いについて話している。
母は、『行くな』とは言わなかったが、賛成はしないと言った。
悠理はあからさまに反対した。
美童・魅録・野梨子の3人は、引き止めることによって可憐が意地になってしまうのを
懸念してか、可憐次第だと言った。
しかし、それら以上に可憐を迷わせていることがある。
あの、唇の感触だ。
『まともに恋愛なんかできそうにない』と思っていた男からの口付け。
気付いてしまった彼の思い。
そして自分の中での微妙な変化。
可憐は、これまでとは違う自分に戸惑っている。
いつもなら、ひとつの恋の途中で他の男に気を取られることなんかなかった。
2股3股かけて平気な美童を、仲間と一緒にからかってきた。
でも、今の自分は…。
可憐は、真っ暗な部屋でベッドに仰向けになり、天井を見つめながら一人苦笑した。
―答えはすぐそこにあるのに、あたしは、それを見ないようにしている―
あの男の言うことには、かなわない。
どなたか、続きをお願いします。
きゃー!なつかしい!!
>>思い出
すごーーーーく読みたかったんだよ。
うれしい!
>想い出がいっぱい編
まゆこ272です。35サン、リクに応えて頂きありがとうございました。
同好会の方で読んで続きが気になって仕方がなかったのですが、
ずいぶん昔のリレーなので無理かもしれないなあと、なかば諦め半分の気持ちでした。
ですので、喜びもひとしおです。
本当ありがとうございましたvv
それにしても、自分でリクしておきながら、漢字間違ってましたね。
スミマセン・・・
http://that.2ch.net/test/read.cgi/nanmin/1028904997/277 嵐さん、いつも有り難うございます。
からん。
グラスの中の氷がまた一つ溶け、飲み口に辛うじて引っ掛かっていたレモンを
アイスティーの中へと誘った。
小ぶりなレモンの輪切りは、抗うでもなく表面にぷかりと漂っている。
その様子は、マイタイ王国で野梨子と共に見た夕暮れを清四郎に思い起こさせた。
清四郎は汗をかいたグラスを手に、彼の母親と談笑している野梨子を見遣った。
傍目から眺めれば、まるで本物の母娘のように見えるだろう。
その事実に清四郎はふと口元を緩めた。
二人からすっと視線を外し、窓枠の外を眺める。オレンジ色の光を浴びた大木が風を浴び、
さわさわと立てる葉音がガラス越しにも聞こえてきそうで、清四郎は眼を細めた。
からん。
清四郎は目の前の人物が立てた涼しげな音色に誘われ、現実に意識を引き戻した。
今日の野梨子は、クラシカルなデザインの白いワンピースを着ている。
如何にも避暑地を訪れた良家のお嬢さんといった感じで、ストイックな印象すら受けてしまう。
それにしても――清冽な一輪の花のような幼馴染を見つめながら、
清四郎はこっそりと嘆息した。その様子に気付いたらしい隣席の姉、
和子が日頃の恨みとばかりに清四郎の後頭部をすぱんと叩く。
「いきなり何をするんですか!」
「なによ、楽しい旅行の最中に溜息なんて吐いちゃって。何が不満だっていうのよ。
今朝から野梨子ちゃんと口もきいていないじゃない。喧嘩でもしたの?」
後頭部を摩りながら、清四郎は恨めし気に和子を睨み付けた。
菊正宗一家が総出で旅行へ出掛ける、といったことは皆無に等しい。
全ては多忙を極める父親のせいであったのだが、その父親が長時間の手術が相次ぎ腰が痛い、
だから温泉に行きたいと言い出した。三日前のことである。
それでなくても休みが重なるこの時季に旅館が取れるはずがない、
そう冷たく言った和子の言葉を聞いていた人物が居た。
父親と碁を打つ為に、たまたま菊正宗邸を訪れていた野梨子の父、清州である。
門弟で旅館を経営している人物が居るので、なんとか頼んでみましょうと清州は請け負い、
折角なので我が家もご相伴にあずかりたいと言い出し
――とんとん拍子で週末の両家合同の家族旅行が決まったのだ。
今更、家族で旅行というのも気恥ずかしかったが、その反面で野梨子と共に
温泉というのも悪くはないと、清四郎は密かに旅行を楽しみにしていたのだが――
「正確に言えば、僕が話し掛けても無視されている状態です。
まあ、喧嘩の範疇と言えるでしょうね」
「そんなこと冷静に分析してどうするのよ。全く……」
今度は和子が溜息を吐く。頬杖を付き、ちろりと上目遣いで弟を眺めながら訊ねた。
「何があったの?」
彼の視線に気付いているであろうに、自分の方を見ようともしない
野梨子の整った容貌を見つめながら、清四郎は昨日の遣り取りを和子に話し始めた。
「野梨子が男子生徒たちから渡された山のような手紙を、
例の如く差出人を確認することすらせずにごみ箱へと直行させましてね。
可憐が『眼を通すのが礼儀というものでしょう』と咎めたんですよ。
『そんなことじゃ嫁き遅れるわよ』って。
だから僕もつい『誰かと付き合ったほうが良いんじゃないですか』と冗談を言ったら
……この有り様です」
「……あんたって、本当に馬鹿ね」
「馬鹿とはなんですか」
むっとして清四郎が問うた。和子は髪を掻き上げながら、呆れたように応える。
「もし本当に野梨子ちゃんが誰かと付き合って、あんたは平気なわけ?」
「……だから、冗談だって言ってるでしょう」
子供のように唇を尖らせながら言う清四郎を前に、
心底呆れ果てたような溜息を吐きながら、和子が言う。
「だから馬鹿だって言ったのよ。自分の首を絞めるような冗談言うのは、
金輪際止めておくことね」
清四郎は返す言葉を見つけられずに、憮然としたままストローを噛んでいた。
曇りガラス越しに存在するかのように、月は滲んで見えた。
濡れた空気で輪郭がぼやけ、丁度灯りのないトンネルの中から終着口を
遠く見たかのような光景である。其処から光が溢れ出ているかのように、
闇夜に包まれた下界を照らし出している。
「ほら、清四郎も呑まないか」
機嫌良くお猪口を差し出す父親を母親が諌めている様子を、
清四郎は苦笑しながら見遣った。
まあまあ、と宥めるように清州が清四郎の母と野梨子の母に酒を注ぎ、
輪になりながら酌み交わす様は、清四郎の胸に暖かなものを去来させた。
きな臭い風が清四郎の頬を撫でた。
腕を組みながら旅館の中庭を眺めると、浴衣に着替えた野梨子と和子が花火を楽しんでいた。縁側でその様子を見守っていた清四郎に気付いた和子が手招きしながら言う。
「そんな処に突っ立っていないで、あんたも此方に来なさいよ」
誘われるがままに清四郎は鼻緒を引っ掛け、緩りと二人に近づいた。
「線香花火ですか」
野梨子は無言のまま、清四郎に一本を差し出した。
清四郎もまた無言のまま、それを受け取り、地面に置かれた蝋燭でそっと火を点けた。
しゅっ。
音だけは勇ましく、しかし発される灯りは何処までもたおやかに、
花火はその命を燃やしていた。野梨子も自らの花火に火を点け、
空間を彩る炎をじっと凝眸ている。
さあっと風が吹いた。野梨子は花火を風から庇うように片手で覆った。
野梨子の白い手が闇に浮かび上がるように光って見える。
清四郎の花火から、まあるいオレンジ色の球がぽとりと落ち、地と同化した。
しかし清四郎はそれにも気付かぬほど、傍らの情景に眼を奪われていた。
ぱち……ぱち……
清四郎が先程敢え無く落下させたオレンジ色の球を、野梨子は大事に保っている。
微かな閃光が野梨子の輪郭を浮かび上がらせ、長い睫毛に縁取られた双眸を染めた。
じ……
堪えきれずに、火種が落ちた。清四郎も野梨子も、言葉もなくその行方を見つめていた。
そんな二人の後ろ姿を肴に、父親達はご機嫌であった。
「いやあ、それにしても良いですな。こうして両家で旅行というのも」
普段は口数の少ない清州だが、アルコールの力で今日は妙に雄弁である。
「そうですな。どうです、いっそのこと本当の親戚になるというのも」
清四郎の父が清州に徳利を差し出しながら言う。清州がお猪口でそれを受けながら、
相好を崩した。
「いいですな。清四郎くんは実に立派な青年だし、これ以上のご縁はありませんよ」
「うちの方こそ、野梨子ちゃんのような才色兼備のお嬢さんを戴けるのなら……」
二人を中庭に残し、一足先に部屋へと戻っていた和子が会話を遮るように言う。
「もうお父さんたら、そんな話を親だけで勝手に進めてるってあの子達が聞いたら、
眼を剥いて怒るわよ。あら? お母さん達は?」
「風呂に行ったよ。本当に女ってのは温泉が好きだなあ。
いやあ、それにしてもいい湯だったなあ。なんだか眠くなってきたよ」
「ちょっとお父さん、こんなところで寝ないでよ。おじさんも、布団で寝て下さい」
和子が慌てて父親達を揺さぶるが、二人は早くも夢の中に誘われ、軽く寝息を立てている。
「もう!」
怒りに任せて和子が父親の尻をぺちんと叩いたが、父親はぽりぽりと尻を掻くだけで、
起きる気配はない。
「部屋割り、どうするのよ……」
和子の呟きに父親が、があと鼾で返事をした。
「やれやれ、世話が焼けますね」
清四郎が肩に手を遣りながら呟いた。重たい中年男を布団に運ぶという作業は、
清四郎をもってしても重労働であったらしい。
「お疲れ様」
和子が大きな欠伸をしながら布団に潜り込んだ。
結局、父親達が寝込んでしまったため、もう一つの部屋は子供たちで使うことになったのである。
同じように布団に潜り込もうとする野梨子に気付いた和子がむっくりと起き上がり、
二人を縁側へと追いやった。
「和子さん? どうなさったんですの?」
「あんたらは仲直りするまで、部屋に入ってきちゃ駄目」
「姉さん、そんな無茶苦茶な……」
慌てて清四郎が抗議するが、二人の背後でぴしゃりと障子は閉められてしまった。
そしてそのまま室内の灯りが消され、辺りは漆黒の帳に包まれた。
「……座りましょうか」
言い乍ら清四郎が腰を下ろすと、野梨子も黙ってそれに従った。
二人を取り巻いていたのは、高くで溶けそうに滲む月と、沈黙だった。
「……すみませんでしたね、あんなことを言って」
ぽつりと清四郎が言った。野梨子がふと俯いた。
「いえ……もういいんですの。清四郎の本心も分かりましたし」
「本心? 違いますよ、野梨子。あれは冗談で、決して本意ではありません」
清四郎が野梨子に向き直るが、野梨子は足元で風にそよぐ名も知らない草を見つめたままだ。
「それでも、自分の中にない言葉は口からは出ては来ないものですわ。
清四郎は心の何処かで、私が誰かと付き合えばいいと思っていたんですのよ、きっと」
「違います」
「違いませんわ」
「違います! あれは野梨子が僕以外の誰とも付き合わないだろうという安心感が
前提にあって、つい口から出た言葉でして……」
言い掛けて、清四郎は慌てて口を噤んだ。野梨子は暫くの間、足元の闇を見つめていたが、
清四郎の言葉に引っ掛かるものを感じたのか、つと顔を上げた。
「……今、僕以外の、って……」
「いや、ですからその、野梨子と付き合う誰かというのが自分であればいいなという
願望というか、寧ろ自分でありたいと希望する気持ちがあの台詞を言わせたというかですね。
じゃなくて、ええと……」
言葉を紡げば紡ぐほどに墓穴を掘っているのだが、野梨子の憤りを解こうと
必死になっている清四郎は気付いてはいない。
そんな清四郎の姿を目の当たりにして、初めはきょとんと彼を見つめていた野梨子だったが、
やがて清四郎の言葉の意味するところを理解したのか、恥ずかしそうに顔を伏せた。
(――あら?)
障子の向こうでぼそぼそと交わされていた会話がふっと途切れたのに気付き、
和子は布団から半身を起こした。
拗れたのだろうか。詰まらない喧嘩であっても、意地っ張りな二人のことだ。
互いに頑として譲らないであろう事は容易に想像がつく。
(一肌脱ぐしかないのかしら)
やれやれ世話が焼けるわと、内心で嘆息しながら行燈の灯を点けようとして、
その手を止める。
障子に影絵が映っていた。
対峙する山のように二人の影が向き合っている。大きな山が小さな山に一本の橋を架けた。
大きな山は小さな山を取り込もうとするように、そっと橋を小さな山に絡み付かせた。
そして二つの山は、そうあることが自然であるように緩りと重なり、一つの山となった。
(……今度来るときは、本当に親戚同士になっているかもね)
近い未来に思いを馳せながら、和子はくすりと笑った。
<終>
>影絵
うっわーーー!!!
嬉しい!嬉しい!
普段得意のはずのおしゃべりでドツボにはまる清四郎がかわいい…。
障子に映る影、というのが美しい表現ですね。
すばらしいでつ。堪能しました(*゚∀゚*)≡Зムッハー!
まゆこ277タンもナイスリクですた!グッジョブでつ!
お!4作目?
なんだか若いお二人だわーいいわー。
おばちゃんでスマソ
>影絵
墓穴を掘る清四郎がいいですねー。
野梨子に説明する時の、普段の冷静さとは違う不器用で危なっかしい
感じがドキドキしました。
本編でも野梨子相手にたまに冷静じゃなくなってるような時があります
けど、そういう清四郎も結構好きなので。
あと、この話の和子ねえさん、なにげに好きだ(w
>影絵
まゆこ277です。
リクエスト時に色々指定しちゃったので書いてもらうのは難しいかなあと思っていた
のですが、リクエストに応えていただいて本当に嬉しかったです。ありがとうございます。
自分の中で家族旅行の妄想はあったのですが、一度ぜひここの作家さんに書いて
いただきたくて。
月明かりの下での情景の描写も素敵だし、何よりかわいらしい二人が良かったです。
両家の皆も楽しそうだし、いいなあ〜。
素敵な作品を本当にありがとうございましたv
今後もここでの作品、楽しみにしていますね。
>影絵
作者タソ、グッジョブ!
和子さんがとてもいい感じですた。おとーと思いなのねw
野梨子なら菊正宗家へ嫁いでも、嫁V.S姑&小姑はありえないだろーな
とうらやましく思いますたよ。
>影絵
私も野梨子相手にオタオタする清四郎好きでつ!
うつむく野梨子がかわいくて好き。
リクとは関係ない新作うpします。時間のある方、読んでいってください。
野梨子は、2週間の予定でこの街に来ていた。
国際交流の一環として茶道を披露してほしいと請われたのだ。
到着直後から時間に追われ、数え切れないほど人を紹介され、正直疲れきっていた。
野梨子は小柄で華奢で、もともとハードスケジュールに無難にこなす方ではない。
今日こそ、午後からホテルでゆっくりしようと思っていた。
だが、今日の誘いはパーティーではなく、この街の、新進気鋭のデザイナーの仕事場を
案内するというものだ。
野梨子は、そのデザイナーの名前を知らなかった。
が、デザイナーの仕事場に簡単に入れないということは知っていたので、好奇心を
抑え切れなかった。
その旨を告げた時、野梨子はふと、親友のことを思い出した。
ファッションに対して並外れた感覚を持ち、いつも華やかな雰囲気を湛えている親友。
彼女はいつも、野梨子ともうひとりに、ファッションに関する薀蓄を並べ立てる。
一緒に買い物に行こうものなら、あっという間に上から下まで自分に合うものを
恐ろしいくらい的確に見つけ出してくる。
ああ、この誘いは、いい土産話になるに違いないと、野梨子はすこし嬉しくなった。
野梨子は、同伴者に連れられて、とあるビルの10階にあるその仕事場へ入っていった。
早速デザイナー本人が前に進み出て、野梨子に自己紹介をした。
野梨子も自己紹介した。
気の良さそうなデザイナーは、色々と説明をしながら一つずつブースを案内してくれる。
確か3番目のブースだったか、野梨子が足を踏み入れた途端、一人の男と視線が合った。彼は見覚えのある大和撫子に、思わず声を上げる。
野梨子も驚きの表情を隠せなかった。
「やぁ、野梨子じゃないか。どうしてこんなところにまた?」
「美童…」
野梨子は、彼がモデルを職業としているのは知っていた。
しかし、誰とどこでどのように仕事をしているかまで把握しているわけではない。
そもそも、モデルの仕事とというものがあんまりわからない。
野梨子の知る彼は、学生時代そのままに、お気楽な『いい人』である。
それが―
彼との付き合いは中学時代に遡る。
初めて行ったディスコで、友人に紹介された。
来日したての彼は、金髪碧眼からは想像できない完璧な日本語を話した。
その日から、彼とは友人になった。
それから10余年の間に、野梨子と彼を含めた6人は親友となった。
生徒会役員の名の元に学校を牛耳り、学生生活を謳歌し、今もそのまま付き合いがある。
現に1ヶ月前、珍しく6人全員揃って集まったばかりだ。
目の前の彼は、およそ野梨子が知っている彼ではなかった。
優しく、穏やかな雰囲気は変わらないが、どこかストイックなものを感じさせる。
それを、人はプロフェッショナリズムと呼ぶかもしれない。
野梨子は、知らず知らず、心もち緊張している。
デザイナーと同伴者は二人の間の空気を察知したみたいだ。
同伴者は彼に会釈し、二人は野梨子をその場に残して別のブースへと去っていった。
ブースの中にいたアシスタントも気を利かせてブースから出て行く。
「パリで仕事と聞いてましたけど…」
「ああ、1週間前まではね。日本に帰ろうと思った矢先に急にこの仕事入ったんだよ。
で、野梨子はひとりで来てんの?」
彼は、野梨子が何でこの街に来ているかはわかっている。
「ええ、母さまの代理で」
「なんかこんなところで野梨子に会うなんて、なんかうれしいなぁ、ほんとに。ねぇ、
これ終わったらご飯一緒に食べようよ。僕、正直なところ、仕事がらみの人に飽き
ちゃったんだ」
彼の口調は、いつもどおりだ。
いつもの、野梨子が知っている、フェミニスト。
続く
>ニューヨーク
わぁー!美×野大好きです!
スッゲェ嬉しい〜〜
>ニューヨーク
美×野は中々ないから嬉しいです。
しかも、卒業後の話なんですね。
美童がモデルというのは、ピッタリだと思います。
まゆこ288タンと有閑を愛する同志へ!
まゆこ288タンと有閑を愛する同志へ!
ウルトラプラトニックです。
「…なぁ。行こうぜ?なに、清四郎の許可がないとみたいな」
「ちっ、違いますわよ!ええいいですわ。では今夜7時に」
(7時に…なんです?2人でどこかへ行くんですか、野梨子)
放課後、いつものように生徒会室にやってきた清四郎。
しかし聞こえてくる話し声に彼の足は部室のドアの前で止まってしまっていた。
野梨子が自分以外の異性とどこかへ出かけるなんて聞いたことがない。
魅録は彼女に何か特別な想いを抱えているのだろうか。
「……」「……ええ」野梨子の鈴の音のような声が微かに聞こえてくる。
ガチャ
素知らぬ顔をして彼が入ってくると、2人は会話をやめた。
「清四郎。お疲れー」「今、お茶をいれますわね」
席に着いた彼を悶々とした想いが取り巻く。
説明できそうにない。はっきり「嫌だ」という言葉が浮かんでくるわけでもない。
静かな胸騒ぎの波が起こる。わからない。わからない。
魅録に目をやってみても彼はバイク雑誌を読んでいる。いつもとなんら変わりない。
「…み」
「あー腹へったぁ〜野梨子!なんかお菓子ない!?」元気よく悠理が入ってきた。
そしてメンバーが揃って、生徒会室はいつもの空間へ戻っていったが、
清四郎の心に生まれた不思議な感覚は消えることがなかった。
帰り道。
たわいのない言葉で2人の空気が埋まっていく。ついに今夜の話題は出なかった。
家の前まで来ると清四郎は言った。
「今夜一緒に夕食どうです?親戚から果物が届いたんですよ」
「…こっ今夜は、だめですの。課題がたくさんあって。明日じゃいけませんかしら?」
(どうして、言わないんです。魅録と出かけるって)
何か隠しているのが一目で分かる。彼女の大きな瞳にウソは隠せない。
それ以上に。
自分にだけわかるのだろうと思う。魅録にはわかりっこない。
(──まただ)
あの、不思議な胸騒ぎ。野梨子本人を前にしても自分が彼女をどう思っているかわからないのに。
それは徐々に波を高めつつある。
「わかりました。では明日、お待ちしております」「ええ」
気を取り成しておどけて笑う。つられて笑う野梨子の、揺れる黒髪。
2人は門の前で別れた。小さな後ろ姿。自分だけがいつも見てきた、それを疑うことがなかった──
『まかせなさい。いつでも絶対助けますから』いつか言った自分のセリフがリフレインする。
清四郎の胸に、淡い羽が積もっていく。
『すっげえ夜景が綺麗なところがあるんだ。野梨子に見せたい。一緒に行かないか──?』
『なに、清四郎の許可がないとみたいな』
バイクに乗って切る風の中、交わした言葉が頭の中を駆け巡る。薫る夜の風。
あんな風に真剣な瞳で見られたのは初めてだった。
まるで他人のように見えた魅録。いま自分の前にいる。あったかい背中。
野梨子は不思議な想いに包まれていた。
「はい、ご到着。お疲れ様でした」「ありがとう」誰もいない展望台。
パシュッ 缶コーヒーを渡してやる。夏だというのに肌寒い。
静けさに響く、車の走る音。些細な音を吸収していく沈黙。
「ホラ。すごいだろ?」「ええ…」一面に散らばる光たち。宝石箱をひっくり返したようだ。
目の前に広がる夜景を心に映しても、自然に跳ね返ってはこない。
ただ『この景色は、綺麗なんだ』という事実を先に頭で理解しようとするだけだ。
「なっ。見せたかったんだ。コレを」屈託なく笑う魅録に胸が痛む。
(──痛む?どうして…)浮かび上がる疑問に答えようとするその先に見える映像は、そう胸の痛む、原因の…
「野梨子」ふっと引き戻される。魅録のまっすぐな、いつもあたたかい瞳。
でも。いつも見ているそれとは違う。
(嫌だ、今ここにいるのは魅録)必死で振り払おうとする。
「今までダチやってていきなりこんな事言うの変かもしれないけど」彼は細い息を吐いた。
「──好きだ」 「!!」
「なんでかわかんないけど、好きになってて。お前のこと、守ってやりたいって思うんだ」
(…?)魅録を目の前にして、今、何が自分の心にあるのだろう。
もどかしい。見えそうで見えない。
いや、見たくない、気付きたくないとどこかで自分が言っているのだろうか?
「…」潤んだ瞳。うっすら開いた赤いくちびる。魅録が見つめる。肩にそっと手を置いた。
彼の想いと、温もりが。
細い肩を通してじんわり伝わってくる。
「オレが、いつでも絶対、助けてやる」ゆっくり、近づくシルエット。
バンッ 頭の中で音が響く。そして、あのセリフと、彼の瞳が。
『いつでも絶対助けますから』
「──ダメ」両手で彼を押した。「ごめんなさい、魅録…」
涙はこぼれない。大きな瞳に張る切なさの膜。自分の気持ちがわからない。糸がからまる。
「わからないんですの。何にも」
彼はやわらかく笑って言った。「うん。ゆっくりでいいし。…帰るか」
帰りの道路で、野梨子の心は溢れ返っていた。
自分は誰を見ているのだろう。わからない。わからない。この気持ちを恋愛というのだろうか。
今の自分では答えは出せない。
(清四郎は、何を考えているのかしら──)風が頬をすり抜ける。
いつかわかる日が来るだろうか。心の底辺で漂っている、取りとめもない想い。
家に着いたのは夜中だった。隣の幼馴染みの部屋の電気は、野梨子が寝る頃にもまだ、消えていなかった。
今日と明日でおわります。全部で10なので。
はじめのほうなんだかすみません。
まゆこ288です。
すごい漠然としたリクだったので無理かなと思っていたのに、
作家様ありがとうございます。
モヤモヤしている原因が分かりそうで分からない二人に萌え。
このもどかしさがたまらなく好きです。
幼馴染の共有した時間って強力そうだし、魅録も辛いところですね。
でもこのあと清四郎がどう出るのかワクワクです。
続き、楽しみにしてます。
久しぶりに来てみたら、リクエスト作品がいっぱいで嬉しいです。
>影絵
まとまりのある綺麗な文章で読みやすかったです!清潔な感じの二人が素敵ですね。
しかし、この二人と同室の和子さんは辛かったはず!(藁
>ニューヨーク
背景が斬新ですね。こういう新しいアイデアに溢れた作品を読ませてもらうと
うれしくなっちゃいます。続きを待ってます〜
>君の左は僕の右
当て馬っぽい魅録が個人的にはかっこよく見えたりして。早く続きが見たいです。
次の朝。
2人はいつものように通学路を歩く。
朝の澄んだ空気。昨日のことは両方とも触れない。野梨子は野梨子で、彼に告げる想いなんて
ないつもりだったし何より自分の中で波が静まるまで言葉に出来る気がしなかった。
清四郎にはただ少しのキッカケがないことと、彼のプライドがそうさせなかった。
会話を重ねるごとに、野梨子の脳裏には昨日の魅録が写真のようによみがえる。
そして自然にそれを今見上げている幼馴染みと比べている自分に嫌気が差した。
よく通る澄んだ声。何でも見透かす瞳。
適当な会話を交わし、まばらに笑顔を返す。
見上げた空は突き抜けるように朝の青を展開しているというのに。
そうあればある程、心が締め付けられる。
2人でいるのに、どうしてこんなにひとりを感じるのだろう。
お互いの瞳の奥に、2人は自身の想いの答えを見つけようとしていた。
昨日から続く悶々とした想いは一向に消える兆しがない。
頬づえをついて、ぼんやりと窓の外を見つめる。
と、昨日自分の幼馴染みとどこかへ出かけたらしい仲間が体育の真っ最中だった。
サッカーをやっている。
聖プレジデントのおぼっちゃま達にまみれて、彼はひときわ目だって見えた。
(──野梨子にも、そうみえるんでしょうかねぇ…)
自身の独り言に気付いて、もう一度見つめ返す。
自身の気持ちを正面から見つめる魅録の事を考える。
自分はどうなのだろう。
きっと、いつまでたっても答えは出ないような気がした。
思い出すのは、いつも一緒に歩く道の、その2人の距離。
触れない、その幼馴染みの、とくべつなあいだ。
それでも。
四角い教室へ切り取ったように入ってくる青い空。
一瞬の風が頬を撫でる。清四郎の想いへ吹き込む風。
教師の声が遠くに響く。
(…魅録には、野梨子の隣は務まりませんよ)
昨日の事は誰にも言っていない。
不思議な熱さを抱えた胸と、波打つ鼓動を抑えて授業を受ける。
「じゃ、白鹿さん?」 「…は?」
「問い3をお願いします」「えっ、あの…」あわてて教科書を探す。
「a=2、b=1です、白鹿さん」「あ、a=2、b=1」
彼女を助けてくれる男子生徒など山ほどいる。
(─いやですわ…)
続く先生の講義も全く耳に入ってこない。持っているシャーペンも彼女のイライラを表す点を描くだけだ。
こんなに胸が騒ぐのも、もどかしさに襲われるのも。
昨日魅録に触れられた肩。
今日の朝幼馴染みと並べた肩。
どうして、今。こんなに熱いのだろう。
気付いていてしまった。
かわるがわる思い浮かべた、はずの、その残像が自分を見つめる。
はじめから、比べてなんかいなかった。
言葉で紡いだり出来ない。傍にいるのが当たり前の人。
それを伝えるだとか、触れたいだとかいうことじゃない。
きっとこの関係を表す言葉を捜すには時間がかかるだろう。
それでも、自分なりの答えを。
窓から吹き込むつかの間の風が、彼女の髪を梳かしていく。
放課後。生徒会室。
魅録の様子が昨日とかすかに違う。
6人が集まって談笑している中、あえて野梨子に話を持ちかける。
「昨日楽しかったな」「!?」野梨子は答えることが出来ない。
「2人でどっかいったのかよ?」悠理が興味を示す。「まあな」
(ダメ…清四郎!)
野梨子の様子に気付いた悠理はハッと口をつぐんだ。
あとの2人はヒヤヒヤした顔で野梨子、魅録、清四郎の顔を見比べている。
「またどっか行こうな。2人で」そう言い残すと魅録はさっさと帰ってしまった。
「魅録!」鞄を掴むと走って追いかける野梨子。
「皆さん今日は失礼します」
言うやいなや、清四郎も弾かれたように部室を飛び出した。
「野梨子!」彼女が立ち止まる。魅録に追い付くことは出来なかった。
「昨日のこと…」「……」
隣に並んで帰り道を歩き出す。いつもの帰り道。
「知ってましたよ」「…え?」
「さぞ、楽しかったでしょうね。僕ら4人に秘密にして」「そっ、」「魅録はかっこいいですしね」
「…清四郎は、魅録とお付き合いをしろって言うんですの!?─そうですわね。
優しくて、自分を素直に表現してくださる魅録なら…次の約束も」「断って下さい」
「!?」野梨子がこちらを向く。「次持ちかけられたら断れと言ってます」
「…何なんですの?魅録はかっこいいだの、断れだの。清四郎にそんな事言う権利ありませんわ。何の理由がありますの!?」
「それは」
「気付いてたなんて言って、言わないでどれだけ私が」「──不自然だからです!」
「野梨子の隣が僕以外の人では、不自然だからです」「…!」目を見開く。
なんてぴったり合う言葉なのだろう。
隣にいないと、不自然──
「…」「…」
黙ったまま、いつもの帰り道を歩く。軽く手が触れた。あわてて引っ込める。
君の左には、僕がいて、僕の右には、君がいる。
5分後には、あなたは僕の腕の中かもしれない。
10分後には、キスしてるかも。
(──明日になったら魅録と出かけてるかもしれませんわね)
わからない。わからない。
それでも。2人とも、わかっている事は。
触れていない手が熱い事。
そして。
この道がもう少し長かったらいいのに── と、思える事だけだ。
おわり
ありがとうございました!
>>57の続きです。
彼の誘いは、野梨子にとって渡りに船だ。
彼となら、ゆったりと気兼ねなく食事を楽しめるだろう。
慣れているとはいえ、知らない人と会食することがどうにも嫌になってくることがある。
野梨子は迷わず、『お願いしますわ』と答えた。
彼は、『どういたしまして』というように微笑んでいる。
と、ちょうどその時、同伴者がブースに戻ってきた。
同伴者は、野梨子に、この後どうするかを尋ねてきた。
野梨子は同伴者に彼を紹介し、彼と久しぶりに話がしたいと伝えた。
理性では、この続きで一緒に食事に行くべきだとわかっていたが。
同伴者はその意味するところを悟り、とりあえず野梨子をホテルまで送ることを申し出た。
野梨子は素直に応じた。
彼は、野梨子の滞在しているホテルの名前を聞いた。
「野梨子、結構待ったよね」
彼はレセプションで野梨子の部屋に連絡を取ってもらい、ロビーのソファに座って待っていた。
10分ほどで、ライトブルーのツーピースを着た野梨子が降りてきた。
「いえ、少し横になれて、ちょうどよかったですわ」
「そう、それならいいけど」
彼は、野梨子に自分の隣のソファを勧めた。
野梨子はそれに軽く腰掛ける。
「それで、どこに連れて行ってくださるの?」
少し、いたずらっぽく訊いてみる。
決して、彼のセンスを疑っているわけではない。
彼は、野梨子の瞳の中を探るように覗き込む。
「ここのレストランなんてどう? 野梨子、ちょっと疲れてるみたいだから、
外に出ない方がいいかなって」
そういうと、彼はソファから立ち上がり、冗談めかして野梨子の手を取った。
野梨子は彼に微笑みかけて立ち上がったものの、一瞬、胸騒ぎを覚えた。
理由のわからないそれに戸惑うも、そんなことはおくびにも出さない。
彼にエスコートされるままに、最上階のレストランへ繋がるエレベーターへと向かった。
続きます。
>君の左はぼくの右
危うさがイイ感じですねー
>(──明日になったら魅録と出かけてるかもしれませんわね)
この一文が、凄く利いてると思いますた。
>ニューヨーク
美童のエスコートぶりが楽しみー
>ニューヨーク
やっぱ美童は紳士ですね…ホゥ。
どっちが先に恋に落ちるのでしょうか?
楽しみです。
>君の左はぼくの右
くうう、もどかしい〜、もどかしいよう。
後ろから清四郎の頭をすぱーんと引っ叩いてやりたいわ。
恋愛が絡むとなぜあの二人は途端に鈍になるのでしょう。
明晰な頭脳はいったい何処へ行ってしまったの!?
だがそれもまた良し!(w
リクに応えてくださった作家様、素敵なお話をありがとうございました。
>ニューヨーク
この心配り、さすがだなあ。
こういうシチュの美童は本領発揮!という感じで一段とかっこいい。
本編でも美童のこういう面をもっと出して欲しいなあ。
いえ、情けない美童ももちろん大好きなんですが。(w
続きを楽しみにしています。
>>75の続きです。
「野梨子、結構待ったよね」
彼はレセプションで野梨子の部屋に連絡を取ってもらい、ロビーのソファに座って待っていた。
10分ほどで、ライトブルーのツーピースを着た野梨子が降りてきた。
「いえ、少し横になれて、ちょうどよかったですわ」
「そう、それならいいけど」
彼は、野梨子に自分の隣のソファを勧めた。
野梨子はそれに軽く腰掛ける。
「それで、どこに連れて行ってくださるの?」
少し、いたずらっぽく訊いてみる。
決して、彼のセンスを疑っているわけではない。
彼は、野梨子の瞳の中を探るように覗き込む。
「ここのレストランなんてどう? 野梨子、ちょっと疲れてるみたいだから、外に
出ない方がいいかなって」
そういうと、彼はソファから立ち上がり、冗談めかして野梨子の手を取った。
野梨子は彼に微笑みかけて立ち上がったものの、一瞬、胸騒ぎを覚えた。
理由のわからないそれに戸惑うも、そんなことはおくびにも出さない。
彼にエスコートされるままに、最上階のレストランへ繋がるエレベーターへと向かった。
すみません。ダブってしまいました。次はちゃんと書き込みます。
こちらが、正しい
>>75の続きです。
照明が仄かに暗く、人々は囁くように話している。
街中の、押し付けがましいほどの光はここまで届かない。
ゆったりと、まったりと、時間は古き良き時代に舞い戻ったかのごとく流れている。
窓際の席に向かい合わせに座った2人は、ほぼ食事を終え、それぞれ窓の外の暗闇を
眺めていた。
普段はおしゃべりな彼が、何故か、微笑んだまま話し掛けてこない。
野梨子も、どこか心地のよい沈黙に甘えて、あえて言葉を発しない。
誰にも急かされることなく、そのままの状態でどのくらい時間がたったのだろう、
視線の遠い先にあった1点の電気が突然消えた。
2人の視線が硝子越しに絡み合う。
野梨子は、慌てて目を伏せた。
そんな野梨子を見て、彼は口を開いた。
「野梨子、今日は、付き合ってくれてありがとう。ほんと、忙しいのにね。もう、
だいぶ時間も遅くなったから、出ようか」
彼の微笑は変わらないものの、その声のトーンはわずかに翳りを帯びている。
「…ええ…」
野梨子が呟くように答えると、彼は席を立った。
あくまでも優しい彼に、野梨子の、記憶の奥底に封印した傷が疼き始めていた。
多分誰も知らないことだが、野梨子は彼から想いを告げられたことがあった。
大学3年の時だ。
高校のときとは違い、同じキャンパスに通っていたのは野梨子と彼だけ。
自然と顔を合わす回数が増え、それらしい雰囲気になっていったのは否めない。
しかし、それは野梨子にとって晴天の霹靂。
軽くかわして、何事もなかったかのようにしてしまった。
彼がそのために、すべての女性関係を清算していたことを知ったのは、ずっと後のことだ。
その時にはすでに、彼には彼女がいて、野梨子にも婚約者がいた。
全てが遅すぎて、ただ、言いようのない悲しみが心に残った。
彼が、変わることなく野梨子の親友であり続けてくれていることだけが、救いだった
―あの人は、こうなってしまうことを望んでいたのだろうか―
夜明け前に、野梨子は目を覚ました。
少し身を起こして傍らに眠る彼を見つめ、その横顔に自分の指を滑らせている。
彼は静かに寝息をたてていて、その表情は何とも言えぬほどに穏やかで優しい。
野梨子は、戻ることのできない日々に想いを馳せ、これは必然だったのだろうか、
それとも、偶然だったのだろうかと自分に問い掛けてみる。
だが、答えは見えてこない。
「…Jag……älaskar……dig…」
ふと、彼から、聞き覚えのあるようなないような言語で寝言が発せられているのに気付いた。
野梨子は、その唇に自らの唇で触れてみる。
彼を起こさないように、そっと。
すると、寝ていたはずの彼の両瞼が、ゆっくりと開いた。
そして、野梨子を引き寄せて抱き締める。
野梨子は、抗うことなく、その身をまかせた。
全ての思考を停止した。
サイドテーブルには、外された指輪が2つ、その輝きを失ってひっそりと佇んでいた。
これで終わりです。どうもありがとうございました。
>ニューヨーク
二人とも指輪持ちだったんですか!
わお、衝撃の事実。指輪の相手が誰なのか気になります。
でも旅先でふと、というのも判る気がする。まして大学時代の
ことがある二人であれば。
続きがすっごい楽しみです。
あれ。これで終わりだと思ってた>NY
プリンものだったんですね。美童の寝言はなんて言ってたんだろう。気になる〜
>ニューヨーク
>これで終わりです。
もう終わり?今回は終わり??
何にしても不倫かぁ…ってか大学3年美童切ないーー
綺麗でスッゴイ好みな文体です。
誰もいないので書き逃げ!
妄想小説の中で好きなセリフ。
「……… あんたが……、見えないわ……」(恋をしに、と彼女は言った)
皆様は?
5分後には、あなたは僕の腕の中かもしれない。
10分後には、キスしてるかも。
私は絶対ここ・・・・・綺麗な文体だわん。
セリフ談義の途中ですが、少しだけ。
翌日。
可憐はホテルのロビーに一人座って新開渉を待っていた。
(いったいどうしたらいいっていうのよぉ)
この期に及んでも、可憐の心からは迷いは消えない。
清四郎が自分に向けたやりきれない想いがくさびのように
心から抜けてくれないのだ。
「清四郎があんなに悔しそうな顔をするなんて…」
それも自分一人のために。
「可憐!」
スーツ姿の新開が靴音を響かせながら駆け込んでくるのを
見て、あわてて可憐は立ち上がった。
「待たせてすみません。仕事が立て込んでしまって」
「気になさらないで。お仕事の方は大丈夫?」
「もちろん」
新開が可憐の肩を優しく抱き寄せる。
「あと2、3日で片がつく。全部終わったら君を連れて
日本を離れるつもりです」
「……渉さん」
「一緒に来て欲しい」
いつも気になっていた寂しげな眼差しを向けられて、可憐は
思わずうつむいた。
(こんな目で見つめられて、行かないなんて言えないわよ。
助けてよ清四郎……)
可憐はぎゅっと目をつぶった。
短くてすみません。どなたか続きをよろしく〜。
ちょっと思いついたので、書かせてください。
その日、美童は珍しく家にいて、携帯電話を片手に考え込んでいた。
電話すべきかどうか、おせっかいを焼くべきかどうか。
美童は、9割9分、誰かがあの男の背中を少し押してやるべきだと確信している。
だが、残りの1分、躊躇っている。
美童は、完璧すぎるほどのあの男の中の、ものすごく弱い部分を傷つけてしまいは
しないかと危惧しているのだ。
決心がつかないまま携帯の画面を見続けていると、電話がかかってきた。
悠理からだった。
「美童、今、大丈夫か?」
「うん、まあ」
「今日、可憐があの男と会う日だよなぁ」
「そうだね」
「あたい、絶対、可憐を行かせちゃダメだと思ってるんだけどさ…」
「けど?」
「清四郎って、なんであんなに素直じゃないんだろうな」
「確かにね」
「あたい達じゃ、どうしようもできないのに…」
「……」
「美童?」
「悠理、今日可憐が新開に会うのって、確か新開のあのホテルだったよね。」
「うん。美童、どうかした?」
「ごめん、また連絡する」
美童は、悠理の次の言葉を待たずに電話を切った。
すぐさま、清四郎の携帯へ電話する。
美童が2度、3度掛けるも、清四郎は一向に電話に出なかった。
美童は、だんだんといらついてくる。
ついに、この頃滅多に掛けない自宅に掛けてみることにした。
清四郎の母親が出て、ちょっと待ってくれと言われた。
耳元で聞こえる保留の音楽が、延々と続く。
嫌というほど待たされた後、ようやく清四郎が出てきた。
中途半端ですが、どなたか続きお願いします。
>想い出
リレー小説再開ってなんだか懐かしい友達に
会うようで嬉しい。どうする!?清四郎!
>>89さんに続く。
「あたい、ちょっと偉そうだったな。ごめん」(恋をしに、と彼女は言った)
が好きです。すごく、悠理がいいヤツで。
夕日が差し込む頃になると、仲間達は次々と帰途につき、生徒会室は2人きりになって
いた。
野梨子は湯飲みに緑茶を注ぐと、清四郎の前へと置く。彼は「ありがとう」と微笑むと
手にしていた新聞に目を戻した。
その真向かいの席に着き、黙ったまま茶を啜る。
軽く目を向けると、清四郎はいつもと変わらず静かに読み耽っている。彼の知識欲に好
奇心はとどまる所を知らない。落ち着いた様子からは窺い知れないが、あの頭脳の中には
今も大変な速さで様々な出来事が吸収されているのだろう。元々の資質は天賦の物には違
いないが、それに甘んじず日々磨きをかける彼の姿勢を、野梨子は尊敬していた。
鞄から取り出した文庫本を机に広げながら、数回密かに彼を覗き見ていた。その度に心
が仄かに温まる。真面目な彼の姿に好感を抱いたからだけではない。新聞の影から除く涼
やかな目元が、それを持つ細長い指が胸に甘やかな喜びをもたらしていた。
野梨子は小さく息をつくと僅かに熱を持った頬に手をやった。
「僕の顔に何かついてますか?」
顔を上げると、清四郎が新聞を机に置きこちらを見ていた。口元が可笑しそうに歪んで
いる。
人一倍敏い彼が、自分の様子に気づかない訳はないのだ。野梨子は自身の頬がますます
熱くなるのを感じる。
恥ずかしい。そして、自分に腹が立つ。迂闊な行動を取ってしまった事、物心付いた時
から一緒にいた彼に見とれるなんて、全くいつからそんな目で彼を見るようになってしま
ったのだろう。
「どうしてそんな顔してるんです」
「なんでもありませんわ」
清四郎の顔が見られない。数ヶ月前に気持ちが通じた後も、それを露にするのはためら
われた。
変わって行く自分に戸惑っていたのだ。
10万ヒット企画の作品うpはもう終わりかなあ。
たくさん読めてうれしかったわん。
『病院坂』『恋チカ』そろそろ連載再開してくれませんか〜〜〜〜。
苦しいんです、続きを待っているのが・・・(T_T)
「なんでもないようには見えませんけどねぇ」
その言葉と共に清四郎が野梨子に近づいてきた。体がきゅっと強張る。
肩にがっしりとした手のひらを感じて、髪を揺らし顔を隠すように前へとやる。
「野梨子」
顎に彼の指が触れた。唇に熱い感触がすると、野梨子はうっすらと目を開け、また閉じた。
そう、戸惑っているのは、幼馴染であったはずの彼に恋し、求める自分であった。
見ているだけで幸せな気分になった。だが、心の奥には別の想いも確かに存在していた
のだ。見ているだけでなく、触れて、彼からも愛されたい。彼と体を重ねるようになって
からさらにその想いは強さを増した気がする。
清四郎はこんな自分を見て、どう思うのだろうか――。
「んんっ」
その疑問は新たな刺激に吹き飛んでいった。いけない、そう思いつつも体が痺れていく
。制服の上から胸を手のひらで優しく撫でられていた。彼の指が布越しに胸の先端を刺激
している。
抗議の言葉を出そうと唇を離そうとするが、彼の舌は野梨子に絡み付き離れない。肩を
押すがびくともしない。
(……ああ)
その間にも執拗な愛撫に体の中心が潤むのが分かる。でも、どうしてこんな所で……。
「清四郎、駄目ですわ」
ようやく口づけから開放されると、椅子から立ち上がり背を向ける。
「学校ですのよ? 誰かが入ってくるかもしれませんわ」
「鍵を掛ければいいでしょう」
清四郎はドアに向かうと、さっさと鍵を下ろし、野梨子を後ろから抱きしめる。
「そういう問題じゃありませんわ……」
抗いながらも、野梨子の体には甘い疼きが残っていた。潤んだ場所が思いとは裏腹に行
為の続きを求めている。
「学校でするって野梨子は興味ないですか?」
もう、変態ですわ……。少々野梨子は呆れた。好奇心が強いのにもほどがあると思う。
先ほど、少しでも彼の事を尊敬したのを恥じた。全く……、それとも、男の方は皆そうな
のかしら?
「興味なんてありません」
きっぱりと響くように野梨子は清四郎に告げる。
「そうですかねぇ」
言いながら、彼は野梨子の首筋に唇を落としていく。その途端ぴくんと体がはねる。
「清四郎……だ…め」
力が抜けていく体を振り立たせようとする野梨子の耳に悪魔の声が聞える。
「何事も経験ですよ」
ほとんどの生徒は下校したのだろうか。運動場の方から部活動に励む――おそらく野球
部であろう――威勢の良い掛け声が聞えるほかは、校内に物音はない。
かすかな息遣いさえも響くような気がして、野梨子は唇を噛み締めた。
「……は……んん…う……ん」
それでも唇からは自分の喘ぐ声が漏れ出てくる。
清四郎の唇は執拗に野梨子の首筋や耳元を攻め続けていた。その度に体が蕩けていくよ
うな感覚を覚え、野梨子は立っていられなくなり、清四郎に寄りかかるような格好になった。
清四郎の指がだんだんと下に下がっていく。――この音は……ああ、ボタンを外す音だ。
野梨子は思い当たり、それでも抗う気になれず、彼の為すままに身を任せていた。
しかし、ぼんやりとした頭に不安がよぎる。生徒会室のカーテンは今は窓の左右にまと
められ、金色の光がまぶしいほどに差し込んでいる。そこから、誰かに見られるかもしれ
ない。
「清……四郎、窓……」
やっとの思いで彼に伝える。清四郎は制服のボタンを外し終わり、その下のシルクのキ
ャミソールの上から愛撫を始めたところだった。
「ああ、窓ですね……。恥ずかしいですか?」
なぜそんな当たり前のことを聞くのかと言いたかったが、言葉にならず野梨子はただ首
を縦に振った。
清四郎は野梨子の体ごと窓辺に近づく。が、その手はカーテンに伸ばされる事なく、清
四郎は窓に寄りかかる。そのまま野梨子を抱え込み、また続きを始めのだ。
(いやぁ)
一応、清四郎の体がすっぽりと覆ってはいるかもしれないが、それでも不自然な体勢に
、彼の体から伸びているであろう自分の腕などは見えてしまうに違いない。何をしている
か気づく者もいるだろう。こんな所を他人に見られるなんて……耐えられるわけがない。
「お願い……やめてくださいな」
その言葉に清四郎の吐息が耳にかかる。
「大丈夫ですよ、そうですね……見られたとしても2、3人でしょうから」
それだけいれば十分である。だというのに彼の指はさらに野梨子を恥ずかしい格好にさ
せていく。
ブラジャーをずらして胸の先端をつまむ。ウエスト部分に手を入れそれは下へと移動し
ていく。やんわりと秘所を撫でられ、羞恥は快感に取って代わろうとしていた。
(でも……このままじゃ……)
かろうじて理性を踏みとどまらせ、野梨子は頭を振る。
「……やっ」
「分かりましたよ。その代わり……そこに寝てもらえますかね」
「……そこって?」
カーテンが閉まり急に薄暗くなったためか、清四郎の顔がよく見えない。少しずつ目が
暗さへと慣れていく。目にした彼の顔は楽しそうに微笑んでいた。
「そこですよ」
細長い指は長テーブルを指差していた。
「そんな事出来ませんわ」
野梨子は清四郎の手を払うと彼を見上げる。
「じゃあ、カーテンを……」
「それも駄目ですわ」
慌てて彼の腕を抑える。
「どうしてですか? ベッドの代わりですよ」
清四郎は野梨子を軽々と持ち上げた。そのままテーブルの上に降ろされる。清四郎が側
を離れたので野梨子は体を起こした。制服の前をかき合せる。
こんな事、やっぱり変ですわ。しかし反発する気持ちとは裏腹に、心臓の鼓動は高鳴っ
ている。その奇妙な興奮に野梨子は決まりが悪くなった。
テーブルから降りる気にもなれず、かと言って学校でこんな行為を行う事についてのた
めらいが頭から離れない。
野梨子は横座りのまま、清四郎の姿を探した。
「清四郎?」
その途端、野梨子は目をぎゅっと瞑った。眩しい光が暗闇に慣れた目を射たのだ。
耳元で囁きが聞える。
「では、始めましょうか」
続きます。
99です。サンドイッチになってしまってゴメンナサイ
清×野Rリアルタイムで読めて幸せです。
これから何が起こるのか楽しみ・・・ムフフ
>104の続きです
白い電灯が辺りを照らしていた。。普段は彼の部屋のベッドでシーツにくるまりながら
である。ここには体を覆うものが何もない。ここが学校であるというより、彼に自分の体
を隅々まで見られてしまう、今は、その事で野梨子の頭は占められていた。
清四郎はテーブルの上に起き上がった野梨子を引き寄せ、キャミソールごと上着を脱が
そうとした。抗うが、下着の上から胸をゆっくりを揉まれると力が抜けていく。その隙に
剥がされる。さらにブラジャーを外す彼の腕を野梨子は掴む。
「灯り……消してくださいな……」
「嫌ですよ」
その言葉には似合わず優しく野梨子を倒す。野梨子はなおも言い募ろうとする。
「だって、恥ずかし……あっ」
清四郎は立ったままテーブルに腕を着き寄りかかっていた。その姿勢で、唇を胸につけ
ちらちらと舌を動かしている。
痺れが走り体の中心に到達した。それは疼きへと変わると、深いところで大きさを増し
ていく。
「あ……ああ」
清四郎の手がスカートに伸びている。もうすぐそれも取られてしまうだろう、とファス
ナーと降ろす彼の動きを感じながら思う。
「清四郎……やっぱり私……」
「きれいですよ。野梨子」
本当だろうか? 彼がそう思ってくれているなら嬉しいが、野梨子はまるで自分の体に
自信がなかった。細いばかりで女らしい丸みにかけた自分の体、そんなものを清四郎は愛
してくれているのだろうか。
(どうしたら……)
混乱しながらも、野梨子は救いを求めるように周りを見る。
体をずらすとひんやりとしたテーブルが熱い肌を冷やした。目に映る黒板や本棚、見慣
れた生徒会室の様子が現実を自覚させる。
頬に熱を感じた。なんて恥ずかしい状況なのだろうか。
テーブルに寝かされ、脱がされ清四郎の愛撫を受けている自分。そして、じっとりとそ
の自分を見つめる彼の視線――。
(私、変ですわ……)
恥ずかしいはずなのに、見られたくないはずであったのに、野梨子の体は奇妙な疼きに
捕らえられていた。
いけないと自らを諌める度に、背徳的な甘美さを感じる。清四郎の視線の熱さを感じる
だけで、体の奥が潤む。
こんなにもいやらしい女だったのだろうか、と野梨子は思いもかけぬ自分の一面に驚き
、そして恥じた。
その間も清四郎の口づけは止むことなく続いている。その感触は、こんな自分には釣り
合わないほどに優しい。
(清四郎……)
野梨子は、愛しさで胸がいっぱいになった。
そう……こんな事、他の人だったら考えられない。相手が清四郎だから受け入れられる
のだ、野梨子は思い、やや安心する。
例え、この異常な状況にいつもより感じていたとしても、彼以外だったら決してこうは
ならないのだから。
と、野梨子は結論付け、目を瞑った。
そう、もう止めようもないほど、心の中では、彼に触れて欲しかったのだ。
太ももの辺りをスカートが滑り落ちていくと同時に、逆にざらりとした感触が上に上が
っていく。黒のタイツ越しに清四郎が太ももを撫で上げているらしい。
「あ……ふ……」
素肌を撫でられるのとは違う。彼に触られているのに、彼を完全には感じられない。ち
ゃんと素肌に触れて欲しい。
もどかしさに、野梨子はじれていた。
思わず視線を向けた野梨子は肌に張り付いた半透明の黒の下から、白のショーツが透け
ているのを見て取り、一瞬気が遠くなる。
なんて格好なのだろう。清四郎の指がそこへと近づいていく。
途端、じわりと自分の中から液体がにじみ出るのを感じた。
そう、いつもよりも格段に自分のそこは潤んでいる。肌に張り付く感触で野梨子は自覚
していた。清四郎は今にもそこに触れようとしていた。
その時、野梨子は不安が胸から押し寄せるのを感じた。
こんなにも濡れてしまっている自分を知って彼はなんと思うだろうか――私がこの状況
に興奮していつもよりも感じているなんて気づいたら――きっと驚き、自分が思ったよう
にはしたないと思うに違いない。
そんなのは嫌……。
(嫌われたくない)
野梨子は清四郎の腕を振り払うと、慌てて飛び起きた。
「やっぱりこんな事してはいけませんわ。帰りましょう」
野梨子は顔を背け椅子にかけてあった制服を手に取った。
「今更何を言うんですか」
清四郎は面食らっていたようだったが、野梨子を素早い動きで抱き寄せる。
「もう僕だって止めれませんよ」
そして、また彼女の体を探り出した。野梨子は渾身の力で清四郎から逃れようとする。
「一体どうしたんですか。さっきまで気持ちよさそうにしてたじゃないですか」
「気のせいですわ。気持ちよくなんかありません」
しかし、目をそらし頬を染めながら言った言葉ではまるで説得力はなかった。清四郎は
口元をにやりと歪める。
「嘘ですね。何でそんな事言うんです。大体野梨子だってここまでして我慢できるんです
か?……」
その手は野梨子の腰に触れ、タイツの中に入り込みショーツの下の肌を下降していく。
野梨子はその動作を止めようとするが、逆に押し倒されてしまう。
ついに、彼の手はこんな風に抗う原因となった所へ触れてしまった。
「ほら、やっぱり濡れているじゃないですか」
嬉しそうな清四郎の声が野梨子の耳を打つ。野梨子は目を瞑る。
「こんなに濡れて……気持ちよくないわけない……ん、それにしても……」
(ああ……)
次の言葉を聞くのが怖かった。
「なんだかすごく……濡れてますね」
気づかれてしまったのだ――。野梨子は体を強張らせた。
暫し、沈黙が訪れていた。
「野梨子」
清四郎の声がその沈黙を破る。
「それで……本当に嫌なんですか?」
清四郎の顔が見られなかった。後に引く事も出来ず野梨子は頷く。
「ええ」
「そうですか」
再び、清四郎は黙り込む。
そして、じっと野梨子を見つめているようであった。心の奥底まで見通すような目で。
野梨子はきゅっと目を瞑る。
しかし、それ位で彼の視線から逃れられるはずもない。
「分かってると思いますけど」
清四郎の声が聞えた。手が野梨子の肩に触れる。続く言葉に野梨子は身構えた。
「……はいそうですかと、止められるほど僕は人間が出来ていないんですよね」
野梨子の唇は彼によって荒々しく奪われた。
清四郎は無理やり野梨子のタイツを脱がすと、続いてショーツも取り去ってしまう。
野梨子の視界から清四郎の姿が消えた。
(えっ)
視線を巡らせると、彼は野梨子の足元に移動している。
野梨子は自分の秘めた場所が露になっている事を恥じて、足を閉じたが、清四郎に押さ
えつけられ無理に開かされる。
体の奥まで届くような彼の視線に、野梨子は直接嬲られているような気さえしていた。
まだ触れられてさえいないのに彼を求めて潤んでくる。
彼はきっと気づいたに違いない……だが、もうそんな事を考える余裕は残されてはいな
かった。
野梨子のふくらはぎから太ももへと清四郎の舌が這い登る。彼は足の付け根まで来ると、
またふくらはぎにもどり今度は唇を押し付け、手で太ももを撫でる。
「うっ、んん」
野梨子は煽られるだけで求める刺激はなかなか与えられない。野梨子はますます潤み、
溢れ出るものはテーブルに滴っている。太ももを伝って流れるそれを清四郎の舌が舐め取
る。
(もうどうにかなってしまいますわ……)
野梨子は堪えようとテーブルの端を強く握った。
もう少し耐えれば清四郎は次の動きに移ってくれるはずであった。いつもならばである。
清四郎は興味の対象を変えたらしい。彼の顔が近づいてくる。唇を貪り、胸の先を擦ら
れる。
「やっはあ……いやぁ」
野梨子は泣き声になっていた。
「して欲しい事があるんじゃないですか?」
「え?……う……や、もうやめ……」
「止めてじゃないでしょう? 本当はしたかったんでしょう?」
清四郎の囁きに、野梨子は気が遠くなる。
(……清四郎)
声にならない。
「仕方のない人ですね……」
不意に、清四郎の声が優しいものに変わった。
――嘘つきなんですから
清四郎は野梨子に口づける。
そして彼の指が野梨子に、望んでいた場所へと触れる。それだけで野梨子は快感の波に
さらわれてしまった。
続きます。
明日で終わります。
わーい!清×野Rだーうれしいな♪
これで今日と明日は楽しみがある…と(w
明日が楽しみ!!
どんな風に展開していくのだろう…
菊正宗清四郎、白鹿野梨子。
ちゃんと後片付けはしておくように!>特にテーブルの上
リクエストさせていただいたまゆこ273です。
まさか2つもリクに応えてもらえるとは〜。
すごくドキドキしながら読んでます。
私も明日が楽しみ。
>in 生徒会室
野梨子を苛めながらも、無理矢理言わせはしない優しさに萌えた…。
今晩も楽しみですわ。
>99タン
『病院坂』『恋チカ』。ワタシも待ってるよ〜!!(火星に願いを込めて
あの〜、まさか魅録は生徒会室に盗聴器仕掛けてないよね?
>116
保健室もね!(藁
>119
仕掛けていたら、凄いことになりそうだ。
最初、面白がって聞いていた魅録&悠理だけど、
段々と感化されてついには二人で・・・とか(w
>121
そ、それも見てみたいな・・・。
>>112の続きです
体が波打ち、清四郎はそれを見て取ると、再び新たな刺激を野梨子に与えた。野梨子の
秘所に唇をつけ、細かく舌で揺らす。
「も……だめ、せい……しろう……」
彼の指は容赦ない。野梨子の胎内にやすやすと侵入しかき乱すと、優秀な記憶力を発揮し、
これまでに発見していた野梨子の弱点に照準を合わせ突き上げる。
「はっ、あああ……」
野梨子の耳に女の嬌声が届く。堪えきれずに口をつく自分の声。
それから、もう一つ。
「野梨子」
清四郎の声。薄く目を開けると涙がにじむ。ぼやけた視界に清四郎が写り、ゆっくりと
近づいてくる。
唇が触れ合うと、涙が零れた。清四郎の吐息が流れ込んでくる。そして――
「ああっ」
野梨子は二度目の波にさらわれた。
ぐったりとしていた野梨子は、頬に触れる清四郎の唇に目を開けた。
「こら、まだ終わってませんよ」
彼の言葉に野梨子は頷く。体が熱い。
「清四郎……」
彼はテーブルに乗ろうとしたようだった。だが、さすがに考えたようだ。普段囲碁の際
に2人の体重を支えている丈夫なテーブルといえども、その上で激しい動きをするのは、
無理であろう。
「仕方ありませんな」
野梨子は清四郎に抱えられ床に降ろされた。
「これに乗ってください」
床に座布団を2枚縦に並べて置くと、彼は野梨子をその上に座らせる。
「……生徒会室はここがまずいんですよね」
小さなつぶやきが聞えた。
「え?」
「いいえ、なんでもないですよ」
野梨子はそのまま床に倒された。
清四郎はズボンごと下着を取ると、先端を野梨子にあてがう。彼のものは熱く、張り詰
めていた。野梨子は恥ずかしくなり、顔を横に背けた。
視線の先に、テーブルや椅子の脚が見える。壁際に無造作に置かれた仲間のギター、黒
っぽい大きなスピーカー。
それらが取り巻く中で、堅い木の床に裸で寝そべり、これから彼と愛し合う。
(私、何をしているのかしら)
少し前までは、異性と付き合うことすら考えられなかったというのに。
つらつらとそんな事を考えていた野梨子の中に清四郎が入ってくる。
「あっ」
「大きな声出しちゃ駄目ですよ」
清四郎はそう告げると、激しく腰を動かし始めた。だが、野梨子の体は難なくそれを受
け入れる。
彼が動くたびに体に痺れのようなものが走った。自分の中を穿つそれは普段より熱い。
快感に翻弄されながらも気になり、野梨子は彼の様子を伺う。
清四郎は、荒く息を吐き、深く野梨子の中に沈みこもうとしていた。眉を寄せ、ひどく
真剣な眼差しには、いつもの余裕は感じられない。
「くっ」
清四郎が呻いた。
一瞬、体の中で清四郎が存在感を増した気がした。が、堪えたのだろうか――清四郎は
きつく野梨子を抱きしめ、そのまま留まっていた。
さらに野梨子の視線に気づいたらしい。目が合うと、彼の目にいつもの光が宿る。
清四郎は首を振ると、野梨子を抱きしめ、あろうことかそのまま立ち上がった。
「きゃっ」
腕は野梨子の足を絡め取っている。
「ちゃんとつかまってて下さいよ」
清四郎は野梨子を抱え上げたまま、行為を続けた。自らも動きながら、野梨子を揺らし、
自分の方へ引き付ける。
「こんなの……変ですわよ……」
野梨子は途切れ途切れになりながらも、清四郎を咎めた。戸棚のガラス扉に自分達の姿
が写っている。酒瓶や薬箱に混じり、目に映るその光景は――。
抱き上げられ、腰の部分は彼に密着し、そう、彼が体の中に入っているのがまざまざと
見て取れる。
「仕方ないでしょう。床だと足が痛いんですよ」
清四郎はもちろん止めてはくれない。
彼の体が自分にぶつかり、引き寄せられ、より奥深い所で交わる。痛みなのか判別のつ
かない感覚がそこで渦巻いていた。
抱かれながら、野梨子は揺れる景色を目にする。いつもは決して見る事のない清四郎の
目線での景色であった。
蛍光灯が近づいた体を白々と照らしていた。呼吸は清四郎と合わさり、体から熱いもの
が生まれてきていた。
目に写っていたものは揺らめき、周りの全てが溶けていく。
「はっ」
清四郎の口から息が漏れる。切羽詰った顔を彼はしていた。
そのまま唇を合わせる。繋がったまま抱きしめあい、清四郎は腕の力を緩めた。ゆっく
りと野梨子の足を降ろしながら、そのまま床に崩れ落ちる。
堅い木の床から庇うように野梨子の腰に手を回すと、清四郎は再び動き始める。
重なり合った部分から水音がしていた。
「やっ」
野梨子は清四郎の肩を掴んだ。地に降ろされたというのに、体が天に持ち上げられるよ
うだった。腰が浮き、さざ波のように快感が、体中に広がっていく。
(清四郎、清四郎……)
心の中で彼の名を呼んだ。
その時、体の中に強い波が起こり、その奔流が注ぎ込まれる。
「野梨子」
清四郎が野梨子をきつく抱きしめる。
そのまま互いの体が奏でるものに酔いしれ、共に高みへと昇り詰めた。
けだるい体に辟易しながら野梨子は、生徒会室を清四郎と共に後にしていた。
もう外には夜の帳が降りている。
沈黙のまま、けれど胸には暖かさを感じながら野梨子は彼の隣を歩いていた。情事の
後の甘さを噛み締めていた野梨子だったが、清四郎の言葉に現実に戻される。
「……だったんですか?」
「え?なんですの?」
聞き返した先の彼は、乱れていた髪も整えなおし、いつもの品行方正な姿に戻っている。
「ですから、なんでさっき途中で止めようとしたか聞いているんですが」
頬に熱が集まる。忘れかけていた危惧が蘇えろうとしていた。
「……学校でするなんて、と思って気が引けたからですわ」
うつむき、小さく答えたのだが。
清四郎は、
「本当にそうですかねぇ。僕が思うに……」
そこで言葉を止めると、野梨子の顔をじっと見た。
(やっぱり……清四郎は、はしたないと思ったかしら)
胸の中が不安でざわめいていた。野梨子はそろそろと清四郎を見上げる。
しかし、彼は妙に楽しげであった。野梨子に向ける視線は暖かい。
軽蔑されてはいないらしい。野梨子は胸をなでおろした。
だが、その一方で、気のせいではなく、彼は明らかに野梨子の反応を見て楽しんでいる
ようであった。
「僕が思うに……って何が言いたいんですの?」
野梨子は顔をしかめる。
「おや、言ってもいいんですか?」
「言ってもいいってそんな……」
彼の顔を見て、野梨子は負けを悟った。
(もう、敵いませんわ……)
清四郎の言葉はさらに続く。
「やはり、何事も挑戦する精神が大切だと思うんですよ。まあ、学校でなくともいろいろ
ありますが、まずは身近な所から一つずつですね」
(なん……ですの?)
清四郎は楽しそうに、にやりと笑う。
「今日は床の上で痛かったでしょう?それでなんですが、野梨子」
――学校でベッドの上で出来る所もあるんですけどね……どこか分かりますか?
数日後、野梨子はその答えを、身をもって知る事となる。
(終わり)
エキベン(゚∀゚)ワショーイ!
「仕方ないでしょう。床だと足が痛いんですよ」・・・ってアンタ、
た だ や っ て み た か っ た だ け だ ろ
そんな好奇心旺盛な清四郎、イイ!
次の保健室を試したら、ぜひ他の場所も探索して頂きたい。ヘンタイカ?
普段囲碁の際に2人の体重を支えている丈夫なテーブルってのにもワロタ。
1巻に出てくるあれでつね。あの上で・・・アワアワ。
めちゃめちゃ堪能しますた。
清四郎、本当に好奇心旺盛だなあー。
野梨子も大変だ。
前スレ529 Back to the drawing board !のつづきです。
前回続きの題名を Can you love me? と書いたのですが、先に別の話をうpしたいと思います。
また、まゆこスレにも書いたのですが、まゆこスレ275さまのリクは今回お受けすることができません。
かわり、といっては何ですが、Back to the drawing board !の続きをしっかりと書かせていただこうと思っております。
それでは次からBack to the drawing board !(過去をやりなおせ!!)の続き、Beginning is a trifling causeをうpさせていただきます。
天高く、馬肥ゆる秋
[・・・・・・ここで肥えているのは間違いなく悠理ですけどね。]
お菓子をほお張っている栗毛のポニー・・・ではなく剣菱令嬢を横目にそんな憎まれ口を叩く清四郎である。
[日本は平和ですねー。]
晴れて、かどうかはともかくも、交通事故の後遺症も特になく、
清四郎はまあまあ平和な日々を送っていた。
唯一つの問題を除いては。
「清四郎」
座った後ろから、聞きなれた声が呼びかけてくる。
「おばさまから聞きましたわ。」
「来月のお茶会のことですか?」
清四郎はそう聞き返した。
「そうですわ。よかったですわね。雅城流の冴香さん直々のご指名ですわよ。」
そう野梨子が言ったとたん、ぶっ、と生徒会役員の面々が吹き出した。
「根に持ってんな〜、野梨子。ま、わからんでもないけどな。」
「まーねー、別れなかっただけでも奇跡的だもんね。」
「可憐だったら即分かれただろ。」
「やーね当然でしょ〜。どう考えたって清四郎のルール違反だもの。」
「しかもひどいと思いませんこと?清四郎ったら今度のお茶会も即了承してしまわれたのよ。」
「まじで?せいしろーちゃん、チャレンジャーじゃん。」
「・・・・・・まずかったですか?」
「一言相談してくださってもバチはあたりませんわ。」
そう言って野梨子はつんっと顔を背けてしまった。
・・・・・・まぁ声は笑っているからそう深刻ではないだろう。
が、しかしである。
清四郎にはいったい何がまずいのかがわからない。
おそらく野梨子は倶楽部のメンバーがどういう反応をするかわかっていて、
わざと部室でこの話題を振ったのだろう。
ということはだ。
[・・・僕以外には周知の出来事ってことですか。]
清四郎はふーっとため息をついた。
「何だよせいしろー、後悔してんのか?」
意地悪く笑う悠理に対し、清四郎はあいまいに笑った。
後悔も何も、彼には記憶がないのだから。
授業を終え、自宅に帰ると何やら騒がしい。
「どうしたんですか?」
母に尋ねると、どうやら姉が上の書棚から必要な医学書を運んでいるらしい。
[・・・もう少し静かに出来ないんですかね、あのひとは。]
と、そのときだった。
「きゃー清四郎、よけてっっっ!!」
ごいん・・・
清四郎は‘また’意識が遠のくのを感じた・・・。
が、しかし、
びしっ・・・・ ばしっ・・・・
「・・・・・・んっ・・・。」
「もーほらだらしないわね!しゃんとしなさい!!」
前とは違い、清四郎は頬に走る痛みで意識を取り戻す。
「全く、あれぐらいどーして避けられないのよ、あんたの武道は伊達なの!?」
「・・・・・・自分が落としといてよく言いますね。落とすくらいならそんなに沢山持たなければいいでしょう。」
一言も謝罪のない姉にうんざりした声を出す。
「文句言うなら手伝って。まだ半分残ってるんだから。ほらっ。」
しぶしぶ清四郎は和子を手伝うのだった。
夜。
[・・・・・・そろそろ寝ますかね。]
読みかけの本を閉じ、電気を消す。
[・・・・・・来月の茶会、ねえ・・・。]
静かに、いつものように清四郎は眠りへと落ちていった。
ジリリリリリリリリリリ・・・・・・・・。
目覚ましの音で、清四郎は目を覚ます。
[・・・もう朝ですか。]
わふっと清四郎は誰が見ているわけでもないのに欠伸をかみ殺した。
しゃっとカーテンをあける。
[・・・・・・いい天気ですね。新緑の緑がよく映え・・・!!!]
はっと清四郎は目を見張った。
[新緑!?]
そんなはずはない。今は秋なのだから。
[まさか・・・!]
思い当たる節があった。
なぜか真新しいかばん。
中を探って生徒手帳をみる。
[・・・・・・]
清四郎は座り込んだ。
[またですかーーーーーっ!!?]
間違いなかった。
[・・・責任もって思い知れってことですかね。]
今日は4年前、あの運命を変えた生徒総会の次の日朝だった。
続きます。
Beginning is a trifling cause の作者です。
申し訳ありません。
1行辺りの文字数が多すぎました。
ブラウザ等の関係で読みにくい方、本当にすいませんでした。
以後気を付けさせていただきます。
>Beginning 〜
まってたよ〜。本当に翌日からのなのねw
眉こすれにコソーリと聞きたいことあったんだけど、雰囲気が何だか微妙で
聞くに聞けないwもう少し待つか・・・
>137タン
ここに書いたらコソーリにならないのでわ。
ひょっとして137タンが聞きたいことって、もうまゆこスレにカキコあったかもよ。
>138
137です。確かにコソーリにはならんなw(今ごろ気づいたよ…
ちょいとマユコ覗いてきまっす。ありがとね。
すいません。132−135カポ書き忘れていました。
(清×野)です。
>135のつづきです。
[・・・・・・・]
なんとか現実を受け止め、清四郎はとりあえず、いつものように登校した。
のだが・・・・
「菊正宗様・・・やっぱり、でも・・・」
「・・ショックですわ。だってわたくし、本気で・・・」
「くっそー・・・あいつもライバルかよー」
「馬鹿言え、俺らなんかより後輩のあいつの方がずっと上だろ。」
「・・・・ライバルにすらなんないかぁ・・・」
[・・・・・・まあ当然の結果ですけどね。]
清四郎はため息をつき、生徒会室へと逃げ込んだ。
だがしかし、生徒会室にもすでに良き友人達が清四郎を待ち受けていた。
「・・・逃げ込む場所を間違えましたかね。」
「へ?」
「いえ、なんでもないです。」
ふーっと清四郎は本日何度目かのため息をついた。
「なーにため息ついてんだよ、清四郎♪」
「そーよ、昨日あれからどうしたの?野梨子、何だって!?」
嬉々としながら聞いてくる友人達は、3年の昔も変わらず華やかである。
「つーか野梨子は?教室行ったのか?」
「さすがのあいつも今日は清四郎ちゃんにべったりってわけにはいかないよな〜。」
よく入学できたなと思うような髪色も、とても令嬢とは思えなキシシという
笑いも変わらない。
[・・・全く、成長のない人たちですね。しょうもない。]
3年後の友人達を小ばかにしつつ、清四郎は口を開いた。
「どうしたも何も、昨日は頭を打って、目が覚めたときにはもう
野梨子はいなかったみたいですよ。」
「いなかったみたい?」
「いえ、・・・待っててくれても良さそうなものなのに、誰のせいで
頭打ったと思ってるんでしょうね、野梨子は。」
わざとらしく不機嫌な顔を作る。
[・・・手帳に1言走り書きをしていたなんて言えませんからね。]
ふーっと、清四郎はため息をついた。
「まーたため息ついちゃって。疲れたリーマンみたいよ。」
「すみませんね。これでもいろいろと疲れるものでね。
そうそう今日は野梨子は休みです。頭痛がひどいそうですよ。」
「そりゃ頭痛もするでしょうよ。ってことはあれからまだ1度も話してないのね?」
「まぁそういうことですね。」
「ふーん。ま、気長に待つのね。私1限移動だからそろそろいくわ。
マンモス校ってこういう時めんどうよねー。」
「げっ!もしかしなくとも今日って火曜!?やっべー魅録ちゃん、
英語ある!?貸してっっ!!」
「ったくしょーがねーな、教室行きゃあるよ。それじゃな、清四郎。
野梨子のことは俺から担任にいっとよ。おまえが来るといろいろメンドーだし。」
「僕もそろそろいくね。あ、そうそう清四郎、放課後の職員会議に出頭しろって
校長が言ってたよ。覚悟決めときなよ。それじゃね。」
嵐のごとく、友人達は去っていった。
「・・・・・失礼しました。」
ぴしゃっと職員室のドアを閉める。
[・・・ったく、同じことを何度も何度も。効率性のない。]
案の定、清四郎は教師達から集中降下をくらった。
「全くなんて品のない!!」
「伝統ある我が校の風格にかかわる。」
「清麗で穏やかな校風が乱され、風紀が乱れる。」
「生徒会長として。」
「優等生の君がなぜ!?」
以上5点を言うだけなのに、何故に2時間半もかかるのか。
[・・・・・・帰りますかね。]
帰宅途中白鹿邸によってみたが、夫人の丁重な断りを受け、
結局、野梨子には会えなかった。
続きます。
140もカポ忘れていました。
(清×野)です。申し訳ありません。
>>143 「集中降下」ではなく、「集中砲火」では?
短編うPします。カポーは特にありません。
ダークかつ性的内容を含み、意味無く、無教養、卑屈で腹黒なので
苦手な肩はズルーお願いしましょ。
七月某日。三限目。
聖プレジデント学園3年A組男子の水泳の授業が終わった。
菊正宗清四郎は混雑を避けるために、ゆっくりとシャワーを浴びていた。
皆から遅れて更衣室に入る。
今日一日でだいぶ日に焼けたようだ。
鏡の前を通り過ぎながら清四郎は思った。
キャップを取った頭は髪がボサボサになっている。
顔にかかった前髪を横に払った。
棚に置いた自分の荷物を確認すると、タオルでもう一度体を拭き直した。
充分に水気を拭き取った後に、タオルを棚に置いて水着に手をかけて、
下にずらそうとしたその時、背中に妙に熱い視線を感じた。
ねっとりと舐め回すような、その視線。以前にも感じたことがある。
振り返ると男に興味があるという噂の、色白で貧弱な体をした同級生と目が合った。
清四郎と視線が合うと困ったように、はにかんだ笑顔を寄越す。
ぞっとして背中を向けたが熱い周波数がどんどん送られてくる。
この男の前で全裸になるのはどうも気が進まない。
清四郎は女子高生のように体を隠しながら着替えることにした。
先に半袖の白いシャツを着てから下着をつけよう。
シャツに手を通し、ボタンを留め始めてから気がついた。
思ったよりシャツの丈が長く、裾が海パンの水分で濡れ出している。
仕方がない。
清四郎はちろっと後ろを見た。先程の男は自分ものろのろと着替えながら
チラチラと清四郎の下半身に目をやってくる。海パンのふくらみが気になるようだ。
どうもだめだ。どうも気が進まない。見られているとわかって、わざわざストリップを
やって見せるのは。だが、仕方あるまい。
清四郎は口に手を当てて考える。
目にも止まらぬ早業で海パンを脱ぐ。そして下着のパンツを履く。
普通に考えたら、一分もかからずにできそうな事だ。
頭の中でシミュレーションする。
1)目にも止まらぬ・・・(海パンに手をかけ)5秒
2)早業で・・・・・・・(一気に下ろす!)15秒
3)投げる手裏剣・・・・(パンツを手に取り)5秒
4)どまんなか!・・・・(一息に履く!) 15秒
注意するべき点は、4)でパンツの裏表を間違えないこと、だな。
この計画で行くと僕の臀部が外気と視線にさらされるのは5秒。
シャツで隠されるから、それ程気にしなくてもよい、と。
よし。まず1)だ。
海パンに手をかけ。よしOK!
次に2)!
一気に下ろす!
ああっっ、な、なんてことだ。海パンがお尻の下で『ねじれて』しまった。
ねじれた海パンが荒縄のよう足にからみついて、
意図せず淫美なかっこうになってしまいましたね。
し、しかも出口が小さくなって、足首が抜けない。ああっ、嫌だ、こんな格好・・・。
くっ。や、やっと取れた。ふぅ。恥ずかしかった。思わぬタイムロスですね。
次は3)。
パンツを手に取り・・・。
あれ・・・。あれ、あれ、あれ? ない、ない、パ、パ・・・・!?
嘘でしょう!?
棚の奥を探っても清四郎のパンツは出てこなかった。
確かにここに脱いだのに―――。
その時、体育の男性教諭が更衣室をのぞいた。クラスメイト(♂)がふざけて
キャーッ、痴漢!と悲鳴を上げる。
「誰かパンツ落とした奴いるか。」
教諭が掲げた白いブリーフ。見覚えがあった。確かにあった。
だがこんなに皆の興味を引いてしまっては取りに行けるわけがない。
清四郎は教諭を呪い殺しそうだった。
どうしよう。
パンツを履かずにズボンを履いてしまうという手がある。あの自分をジロジロ見てる
色白男がいなくなりさえすれば。清四郎は時間を稼ぐ事にした。
靴下を先に履く。ブラシで髪を整える。余裕を持ったふりをしてもノーパン。
その時、どやどやと次のクラスの生徒達が入ってきた。
彼らの中に美童グランマニエの姿を見つけ清四郎はあわてた。
美童は清四郎を見つけると、ためらいもなく寄ってきて清四郎の隣の棚に荷物を置く。
「やぁ、清四郎。どうだった、プール」
無邪気に笑う美童の姿に清四郎はピンと来るものがあった。
「美童、放課後はデートですか?」
機嫌よく美童はうなずいた。次の瞬間、清四郎はがしっと美童の肩をつかんだ。
「勝負パンツ持ってますね?」
美童グランマニエは決めたいデートがある日は、わざわざパンツを履き替えてから
現地に赴くのだと魅録から聞いていたのだった。果たして美童は持っていた。
訳を聞いて大笑いし涙がちょちょぎれた頃に、ふと気がついた美童は言った。
「て、ことは清四郎、ノーパン?」
そして、彼の白シャツの前裾をぴらっとめくった。
「!?◎×■ナニすんですかっ、美童!」
あわてて裾を元に戻す。美童は口笛を吹いた。ニヤニヤ笑いながら清四郎に勝負パンツを
手渡す。
「新品だから、大丈夫だよ。それ清四郎にあげる。」
清四郎はそのパンツを広げて絶句した。
「美童・・・、何ですか、これ。」
「何って・・・。パンツだよ。」
「紐ですよ、これじゃあ・・・。」
前に小さな三角形の隠しがついた、Tバックだった。ひょっとするとパープル。
しかも、絹。
「これでも地味な方なんだけどなあ。じゃあ、僕が今まで履いていたのと交換する?」
「いや、それも・・・遠慮します。美童、あなたって人は一体どういう生活を・・・
いや、いいです。」
ああ、もう時間がない。パープルに輝くTを履くべきか、ノーパンでズボンを履く
べきか・・・。
清四郎、絶体絶命。どうする、清四郎!?どうなんだ、清四郎!?
<次回、『くいこんで痛いの』をお送りします>
終わり
>紫色の衝撃
激しくワロタ。
些細なことにもシミュレーションしてしまうところが、
いかにも清四郎っぽい。
傍から見ると笑ってしまう出来事だけど、
清四郎にとっては難解な数学の問題より
解きにくい大問題なんでしょうねぇ。
しかし、美童、あんた勝負パンツって・・・(w
>紫色の衝撃
読んだこっちが衝撃でした(w
シカ-シ清四郎はアノテの方々にモテマスねえ…
Tバックを履いた清四郎が激しく見たい(W
褌も似合いそうー
下品でスマソ
(^∀^)ゲラゲラゲラゲラ
思わずパンツをズルー!!
>紫色の衝撃
ワラタワラタワラタ。
「野梨子、ちょっと顔色悪くないか?」
悠理のその言葉に、野梨子は、今朝魅録から『心配だから病院に行ってくれ』と
言われたことを思い出した。
折角、久しぶりに悠理と可憐に会えるというので気分もいいのに、なぜ具合が
悪そうに見えるのか。
自分で見る限り、いつもと変わらない。
「そんなことなくてよ」
「なら、いいんだけどな」
野梨子の口調は元気そうなので、それ以上の追求は止めた。
「ごめん、ごめん。待ったあ?」
「遅い!」
「忙しいんですの?」
可憐が、息を切らして2人の座ったテーブルにやって来た。
ジャケットをすばやく脱いで椅子に座り、不審そうな顔で向かいに座る野梨子の顔を
見つめる。
「あんた、今日、大丈夫なの?」
「だろう、可憐、そう思うよな?」
ついさっき、野梨子に軽くかわされた悠理が、可憐に便乗する。
野梨子は、困ったような表情で2人を見た。
「急に、そんなこと言われましても…。でも、今日は、朝の目覚めもよかったですし、
気分もいいですわ」
野梨子は2人に微笑みかけた。
「なら、いいわ…。悠理、あんたのことだから、おなかすいてるんでしょ」
タイミングよくウェイトレスが、可憐のところにも水とお絞りとメニューを持ってくる。
悠理は早速、グラタンにミックスサンドウィッチ、アイスティーを頼んだ。
野梨子はオレンジジュース。
可憐はミルクたっぷりのカフェオレ。
悠理が腹ごしらえにいそしむ間、野梨子と可憐はおしゃべりしながら、急がず
ゆっくりと飲み物を飲む。
3人とも普段忙しいだけに、話は尽きることがない。
それから数時間後。
少し陽が傾き始めて、3人は剣菱の車に乗って家路に向かっていた。
大概、悠理が剣菱の車を呼んで、野梨子と可憐はそれぞれ送ってもらう。
可憐の方がより都心に住んでいるので、まずは可憐のところに寄ってそれから
野梨子の家に向かう。
しかし、今日最初に車が止まったのはそのどちらでもなかった。
菊正宗病院の正面玄関前。
「野梨子、あたい、やっぱ気になったから、和子さんに連絡いれたんだ」
悠理が、決まり悪そうに野梨子に言った。
「私、そんなに具合悪そうに見えまして?」
野梨子は、ちょっと納得がいかない。
「そんなにって訳じゃないのよ。…ただ、あたしも何か引っかかるのよ。何って言われると
困るんだけど…」
可憐にいつもの勢いはなく、野梨子をなだめるような口調だ。
野梨子は、今朝の魅録の言葉と2人の気遣いに意地を張るのを止めて、素直に
診てもらうことにした。
「わかりましたわ。とりあえず、行ってみますわ。帰りはタクシーでも拾いますんで、
遅くならないうちに…」
悠理にも可憐にも子供がいる。
もちろん、それぞれ母親に預けているから心配はないものの、あんまり遅くなるのは
いいことではないだろう。
「野梨子、ちゃんと行くのよ」
可憐に念を押され、野梨子は車から降り、自動ドアの内側へと去っていく。
車は再びエンジンをふかして菊正宗病院を後にした。
悠理は、バッグから携帯電話を取り出し、誰かにメールを打っていた。
「あんた、もしかして、あたしと同じこと考えてる?」
しばらく黙っていた可憐は、ふとあるひとつの結論に思い至り、確認すべく悠理に
話し掛ける。
「まあな」
悠理は携帯をバッグに戻し、照れくさそうに答えた。
「あたしも、そうならいいと思うわ」
そのうちに、車は可憐のところに着いた。
両手いっぱいの紙袋を抱え、可憐は足取り軽くビルの中へと消えていった。
魅録は、菊正宗病院の内科ブロックの待合室にいた。
30分前に急にメールが入って、仕事もそこそこに急いで駆けつけたのだ。
ところが、着いてみると捜している姿は見当たらない。
どうやら診察に入ったままであるらしい。
魅録はいらいらしながら、一人また一人と診察室から出てくるたびに立ち上がって
その姿を確認している。
そんな魅録を一人の看護師が見つけ、小声で話し掛けてきた。
魅録は自分の名を名乗り、伝言を頼んだ。
「野梨子ちゃん、久しぶり」
白衣をきた和子は、笑顔で野梨子を迎えた。
院長の娘ではあるが、その腕の確かさと人当たりのよさで病院内外での評判は悪くない。
女性が女性の医者を選ぼうとする風潮の中で、和子は菊正宗病院の広告塔的な役割も果たしている。
「すみません、お忙しいのに。悠理ったら、大袈裟で…」
野梨子は、実のところこの古くからの隣人が苦手である。
何事においても完璧で、スキがなさすぎる。
悠理がどうやってうまくつきあっているのか、不思議に思えて仕方がない。
「でもね、何でも早めのほうがいいのよ。早くわかって悪いことなんてないんだから」
和子は野梨子に座るように促し、早速質問を始めた。
「で、今、どんな感じか教えてくれる?これを聞かないことには先に進まないのよ」
野梨子はかいつまんで身体の不調を説明した。
症状はどれも深刻なわけではなく、ちょっとゆっくりすれば何の問題もないこと、
あえて言うなら食欲が落ちているくらいが気になると告げた。
すると、和子は突然何かを思い出したように口を開いた。
「野梨子ちゃん、最近いつ生理あった?」
「……」
「その可能性もあると思うの。正確には私の専門外なんだけど、ちょっと待ってて」
野梨子が驚いて何も言えないうちに、和子はあれこれ準備を整えていった。
それからは、野梨子の意識は完全に飛んでいた。
検査の間、和子の話している言葉の十分の一も頭に入ってこなかった。
もちろん、子供がいらないわけではない。
結婚した頃など、そのうちに子供をもつようになると信じて疑わなかったくらいだ。
ところが、何年も経っても何もないと、このまま2人の暮らしがずっと続いていくような気に
なって、それはそれでいいような気持ちになっていたのも事実だ。
それに、魅録がどう思うか。
悠理のところや可憐のところで、そんなに猫かわいがりするような姿は見たことがない。
自分を気遣ってのことか、それとも本当に関心がないのか。
続きます。
>New Arrival
おっ、不倫の奴かあ?と思いきや、魅×野が親になる話なんですね。
乙です〜。今はまだ魅録は子どもに関心がないってあるけど、
きっとメロメロになっちゃいそう!続き期待してます。
「プライド」スレが盛上がってて悔しいなあ。
ので、清×野で短編いきます。
Rというかエロネタなので苦手な方は飛び越えてください。
また、一応ギャグなので清×野は甚だしく馬鹿ップルです。
某回転寿司にて。
清四郎と野梨子が二人で食べに来ている。
イカの皿に手をのばす清四郎。もう三皿目だ。野梨子は呆れた。
「清四郎、イカお好きですわよね。そんなに食べて飽きませんの?」
ん?と笑顔を見せながら清四郎はイカを口に放り込んだ。
「飽きませんねぇ。イカって噛めば噛む程口の中に甘味が広がるんですよ」
余程イカがお気に入りらしく、清四郎はにこにこと機嫌がよかった。
そんな彼が可愛く、野梨子は思わず微笑した。
(野梨子の妄想)
♀またイカ食べるんですの?四皿目ですわよ。
野梨子は自分も一皿イカを取った。
♀あら、たしかにここのイカは美味しいですわね。
新鮮でトロんとしていて。
何とも言えない甘味があって。
まるで……清四郎の舌のようですわ。
あら、嫌だ。私ったら何を考えているのかしら。
イカが私の舌と重なって変な気分ですわ。口の中でぐるぐる回してると、
まるで、清四郎の舌と私の舌がからんでいるみたい……。
気がつくと清四郎が野梨子の顔をじっと見ていた。妄想にふけっていた野梨子は
我に返る。
「野梨子、どうしたんですか、ぼうっとして。ワサビが辛かったですか?」
「いっ、いいえっ、次に何を食べようか考えていたんですの」
笑って誤魔化しながらも、再びイカを食べる清四郎を見て野梨子は妄想の波にさらわれて
いく。
♀はぁ、嫌だわ。頬が熱い。
あっ、また清四郎がイカを……。
そんなにイカばかり食べてるとイカになってしまいますわよ。
あぁ、そういえば、彼の手技はイカの触手のようにねちっこいですわ。
そぅ、さっきもあの、あの、いかがわしいお部屋で私の体をネチネチと責めて、
何回も、あの、あれがスルリと侵入してきて、私の一番感じるところを……
あっ、あぁ、身体が熱い。いやですわ。
清四郎がキョトンとした顔を野梨子に向けた。
「野梨子、野梨子? どうかしましたか? 瞳が潤みまくってますよ?」
「いっ、いえ何でもありませんの。」
あわてた野梨子は前を通過する寸前だったマグロの皿を捕まえた。
野梨子は赤いマグロを一つ口に入れた。それを清四郎が横目で見ている。
♂あぁ、またマグロを食べている。僕は又、マグロを運ぶその口元に見とれてしまう。
赤い唇がぱっくり開いて、艶々と光る赤身をするりと飲み込んで行く。
それに貴方は気づかないでしょうが、寿司を食べる時に一瞬、
小さな舌がちょろっとのぞくんですよ。あぁ、ほら……。
あの舌が僕を興奮させるんだ……。
知らずに怖い顔になっていたらしい。野梨子が怯えた顔で聞いてきた。
「せっ、清四郎? どうかなさいましたの、怖い顔をして?」
はっとした清四郎は思わず声が裏返った。
「へっ、へぇ、いっ、いや、別に……」
しかし、再びマグロに向かう野梨子の口元に目が行ってしまうのは避けられない。
♂うっ、くぅ、たまりませんねぇ、さっきまで愛しあっていたばかりだというのに、
また我慢できなくなりそうですよ。イカでも食べて気をそらさなければ。
清四郎は熱い茶をすすると、またイカの皿に手をのばした。
イカを噛むときゅっと音がする。野梨子はその音が耳について離れない。
♀あぁ、清四郎ったら、またイカを……。嫌ですわ。私ったらはしたない。
何だか体の奥がうずいて、喉が乾いて……でも、でも、あぁ、さっきまで
清四郎と抱き合っていたばかりですのに、もう貴方が欲しくて欲しくて
たまらないなんて言えませんわ。ここはマグロでも食べて気を紛らわしましょう。
野梨子はマグロにワサビをたっぷりつけると、口に入れた。たちまち鼻をガツンと
されたような辛さが襲ってくる。涙をこらえて飲み込んだ。
そんな野梨子から清四郎は目が離せない。
♂ああ、またマグロを……さっきまであの唇で僕の××を……と思うと、
あの可愛い舌が優しく動いてマグロの小片を口腔で転がして……。
どうしたんですか、涙が……辛かったんですか?
そういえば、ホテルでも涙を流してましたね。あの時は確か、
『いい、いいですわ、清四郎!お願い、やめないで……あっ、ひぃっ』
って。そう言ってましたよね、野梨子?
「清四郎?お湯が湯呑みから溢れてますわよ?」
「え……。うわっ、あちっ」
♂あああ、駄目だ、駄目だ、こんなことを考えているなんて知れたら野梨子に
軽蔑されてしまう。気をそらすんだ。ここは……イカだ。
冷静を装いながら、清四郎は前を流れていくイカの皿を全部とった。
隣の客が嫌な顔をする。
再々度、野梨子。
♀ひぃ、またイカを……清四郎の真っ白な歯がコリリと白い身を噛み切ってますわ。
そう、私の××をきつく噛んだように。痛いのに、私ったら感じてしまって。
いやらしい声をあげてしまいましたわ。お隣に聞こえてしまったかも
しれませんわね。でも、清四郎は可愛いですよって言ってくれて。
「野梨子?野梨子? 袖が醤油につかってますよ!」
「えっ、あら、やだ! ほほほ」
♀又××を噛まれて。痛かったですわ、でも……痛いのが、何故かよろしくて。
それから、肩や太腿やお尻を次々と噛んで……はぁ、体がぞくぞくしてきましたわ。
「すみません、マグロ、もう一つ!」
鮨やの店員がつぶやいた。
「すごいわねえ、あの二人。一人で二十皿ずつ食べてるわ。それもイカとマグロ
だけ」
「すみません、イカもうひと皿!」
「私も! マグロお願いします」
店員「すみませんねぇ、お客さん。イカもマグロも終わっちゃいましたぁ♪」
「そんな!僕はまだ……まだなのに!」
「えぇ、私も!まだ、まだ……ですわっっ!」
店員「そ、そんなこと言われても……」
☆オ・シ・マ・イ☆
イミわからんところが禿ワロタw
>妄想◎回転寿司
大爆笑しますた。
暫くは回転寿司を食べに行けないなぁ・・・
この話を思い出して、アヤシイ人になってしまいそうだもの(w
>New Arrival
2人の赤ちゃん、どんなかなー♪
>妄想◎回転寿司
アホ野梨子最高!バカップル!
>妄想◎回転寿司
イカとまぐろ食べ過ぎ。w
笑いました。
>New Arrival
まゆこ280です。
リクエストをお話にしていただき本当に感激しています!!
どうもありがとうございました。
続きドキドキしながら待ってます!
他スレで見かけて笑ってしまったので、AAだけちょっと改造
>妄想の双葉に追肥をパラパラと撒いてみよう・・・( ・∀・)っ∴γ
ここのスレでも、素敵な妄想樹が育ちますように・・・
>回転寿司
一読では大したことないぞ〜っと思ったのに・・・昨日一日中
頭の中から離れませんですた。こういうの好きだったのね、自分w
で、他のネタでもやってみてほしいのですが、どうでしょうか?
ソフトクリームとかバナナあたり、いけそうかなと思うのですが
回転寿司のような印象に残る文が書けんのよ・・・
もしよかったら、続き待ってたりします。
>176
寿司です。皆さんコンバンワ。昼間、176さんのカキコを見て
妄想意欲を掻立てられて、実働ン時間で作ってしまいました。
ちょっと寿司とは感じ違うかもしれませんが、読んでやってください。
思いきりR入ってます。清く正しいお子さまとRお嫌いな淑女紳士諸君は
スルーお願いします。
北海道。有閑倶楽部の連中は農業体験をさせてもらおうと、
魅録の親戚筋の農家に厄介になっていた。
その家は主にとうもろこし、ジャガイモ、カボチャ等を畑で生産して
いる。もうすぐ、とうもろこしが食べ頃になるだろう、とのことだった。
ひんやりとした朝、魅録は目覚めてすぐに煙草を吸いに、家の外に出た。
甘い空気と白い煙とを交互に肺に入れながら、ぶらぶらと家の回りを
一周する。その角を曲がれば玄関が見えるはずだ。と、可憐がこれもぶらぶらと
表に出てくるのに出会った。タンクトップに短パンとラフな服装だ。
向こうは魅録には気づかず、うーんとのびをして、特に目的もないように歩き出した。
やがて、とうもろこし畑まで来ると、自分の背丈以上もあるとうもろこしの茎を
避けながら、中に入っていった。
何とはなしに、魅録も可憐の後を追って、とうもろこし畑に入り込んで行った。
うっそうと茂ったとうもろこし畑はまるでジャングルだ。
青々とした皮に包まれたとうもろこしが、たわわに実っている。ここの家の
人は明け方近く作業して、もうとっくに出かけたのだろう。辺りはシーンと
していた。自分の足音と時折遠くで犬が鳴いている声がするだけだ。
可憐はどこに行ったのだろう。そう思った途端、魅録は可憐と鉢合わせした。
「ああ、びっくりした。魅録、何でこんなとこにいるのよ」
「悪い。可憐が畑に入っていくの見えたし、何か面白そうだなと思って」
「面白くないわよ。靴は土で汚れるし、草で前は見えないし、もう最悪。
おまけに足挫いたわ」
7cmはありそうなヒールを顎で示す。少し戻ったところに多少広くなって
いる場所があったので、そこまで可憐をおぶっていき地面の上に座らせた。
可憐は手近にあった実を力いっぱい、もいだ。ビキビキと音がしてとうもろこしは
皮ごと茎から離れる。実を鼻に当てて匂いを嗅ぐ。
「いぃ匂い」
それから産毛の生えた皮に頬擦りする。
手で持ってさすってみた。
「気持ちいぃー。すべすべ」
そんな可憐の姿はしどけなく、無防備だった。
ふと横を見ると魅録が口を押さえて必死に雑念を払おうとしていた。
「何?」
「んっ、いっ、いや、何でも、ね」
不審な魅録の行動にいぶかりつつも、可憐の興味は再びとうもろこしに向かった。
もうすっかり実は熟しているのだろうか。可憐は青々とした皮の端をつまみ、
思いきり剥いた。
あぅ、と小さな叫び声がして魅録がぼそぼそと言った。
「か、可憐。もう少しやさしく……。で、デリケートな部分だから」
「? ん? ああ……わかった」
皮の間から顔を出したそれは、瑞々しく熟れて食べごろだった。
つやつやとした小さな粒がぎっしりと並んでいる様が、美しい。
ため息をついて見とれていたが、急に可憐はきれいなピンクの舌を出すと、
とうもろこしの表面を舐めた。
うっ。
魅録が低く呻いたような気がしたが、気にもしなかった。
思った通り、最高の舌ざわりだ。つるつるとしていて、且つ粒と粒との隙間が
小さな段を作り、微少な振動を生じさせる。唾液が道筋をつけていた。
かすかな溝が気持ちよくて、舌先を尖らせてチリチリと味わった。
あぁ、癖になりそう。
散々舐めまくってから、気がつくと、魅録が横で悶死しそうになっていた。
急に作業をやめた可憐に肩でぜいぜい息をしながら、続きをうながす。
「や、やめたの?(い、いいところなのに)」
「んー、何っか、『毛』がからまってさあ、いやなのよね、この白い『毛』が」
魅録ががっくりと肩を落とした。
「普通、『ヒゲ』って言うだろ、とうもろこしのそれは……『毛』ってお前……」
何かが魅録の中でぷしゅ〜と音を立てた。
『ヒゲ』が、うなだれた魅録のあれ……じゃなくて、首筋に触れた。
思わずぶるぶると身震いする。
「うわっ。くすぐってぇ」
きゃははは、ととうもろこしを持った可憐が笑う。
「今の……今の『ブルブルッ』って……男山みたぁい」
こいつ、と魅録はとうもろこしを奪い取ると、ヒゲで可憐をくすぐろうとした。
「きゃー、やめてぇ。いやだぁ」
逃げる可憐の手首を捕まえて、首筋にヒゲの束を添わせる。
「きゃっ、いやっ、いやぁん、気持ち悪いー」
身をよじらせて逃げようとする可憐。再び魅録の中のゲージが上がり出していた。
魅録はタンクトップの下から可憐の背中にとうもろこしを入れた。
「ぎゃー、ちょっと何すんの!やめてよね、馬鹿!」
さすがに可憐が憤然とした声を出したので、魅録の再び上がりかかっていた
ボルテージは急降下した。
可憐はぶつぶつ言いながら体から抜け落ちたとうもろこしのヒゲを払い落として
いる。
(やっべ。うっかり、その気になるところだったぜ)
魅録は若過ぎた自分を反省しつつ可憐を見ると、背中に手を回し四苦八苦している。
「どうした?」
声をかけるとむっつりとしている。
「はずれた」
「何」
「ブラのホック。魅録がとうもろこし背中に入れたからはずれたの」
「……、……、……、そ、それは、ごめん」
「ああ、もう!肩ヒモ無しブラだから、はまらない!ちょっと、魅録!」
怒りに燃えた可憐の顔にぎくっとする。
「な、何だよ」
「ホックはめて!でもやらしいことしないでよ!」
魅録の頭の中には次のフレーズが電光掲示板のように流れていた。
(それは無理それは無理それは無理それは無理それは無理それは無理それは……)
後ろに回った魅録がホックをはめやすいように、可憐は長くウェーブの入った髪を
前に束ねた。白くて長いうなじが顔を出す。魅録は黙ったまま、ホックをいじって
いるが中々はまらないようだ。しびれを切らした可憐はふと、気がついた。
腰に何か硬いものが当たっている。
(こいつぅ、又、とうもろこしでくすぐろうとしてるわね)
くるっと魅録に向き直ると、『とうもろこし』をガッチリつかんだ。
「魅録!これは何!?」
「げっ!?○×△」
魅録の顔がカァッと赤くなり、ぱっと手を離した。
(ん?)
可憐は握ったものの感触に違和感を感じた。それは……確かに硬くてとうもろこしと
似たような形をしているが、一回り程サイズが小さいようだった。そして、
わずかにとうもろこしより弾力性がある。そして、温かい。
真っ赤になった魅録は口をぱくぱくしている。
可憐は自分の手の先に視線をやり、自分が握っているものが魅録の体の一部分だと
いうことに気がついた。
「「「ぎゃあああああああっっっっ!!!!」」」
彼女のタンクトップの中から留め切れなかったブラがポトリと土の上に落ちた。
とうもろこしの葉が、茎が、ザザーッッっと音を立てた。
その頃、やっと清四郎ら四人が起き出したところへ、その家の夫婦が帰ってきた。
朝食の用意をしながら、四人に黄色い乾燥した粒を示す。
「食べるかね、ポップコーン」
それは爆裂種といわれる生食用のコーンとは別の種類のコーンだ。
「爆裂種も作っているんですか?」
「少しだけね、自分とこで食べるように」
「わぁい、あたし作る、作る!」
ポップコーンと聞いて悠理が飛び出してきた。
フライパンの上に落としたバターがいい匂いをさせ始めた。
とうもろこし畑。可憐は土の上に寝ていた。真っ青な空が自分の上にある。
視界の中に魅録が入ってきた。
「みっ、魅録……」
「やらしいこと、していい?」
かすれた声でつぶやくと、魅録は可憐の体中にキスし始めた。熱い口づけに体を
震わせながらも、可憐は拒否しようとした。
「やめてよ……。誰かに見られたら恥ずかしいじゃない」
「声出さなきゃわかんないって」
「あんっ。あっ……もぅ!そんなの無理!」
「俺も……やめるの無理」
タンクトップに浮き出た胸の突起を指で転がす。可憐は呻いた。タンクトップをめくると、
ブラに覆われない豊かな胸が現れる。
「すげぇ……、きれいだよ……可憐」
魅録は可憐をまたいで座ると両の手で心ゆくまで、手からあふれんばかりの乳房を
揉んだ。思いついて、とうもろこしを彼女に渡す。
「舐めて、さっきみたいに」
彼女のピンクの舌がとうもろこしの肌をゆっくりとなぞっていく。
その様子を横目で睨みながら、魅録は可憐の中に進んだ。
はぁ……と可憐が少し腰を浮かし、魅録を迎える。頭がのけぞり白い喉が上がった。
可憐の膝を彼女の胸に押しつけ、体勢を整えようとした魅録は、その時、
事態がせっぱつまっていることに気がついた。
(! やべ!)
「ご、ごめん、俺……」
「えっ、魅録!?ちょ、ちょっと嘘でしょ!?あっ、あっ、あっ?」
「あっ」
ポポーン、パーン、ポン!ポン!ポン!
「きゃーっ、悠理!? 跳んでますわよ!」
「わわわ!?」
「わーっ、ちょっと蓋してよ、蓋! あちっ」
「何やってんですか!」
悠理がフライパンに蓋をしなかったため、いい具合に熱せられたコーンが弾け出し
野梨子達のいる方に飛んできた。かろうじて火を止めたがポップコーンの雨が降ってくる
のでフライパンに近づけない。悠理たちは離れたところで雨が止むのを待つ事にした。
ため息をついて美童が言った。
「あーあ、いっぱい出ちゃったよ」
「ご、ごめん。いっぱい出ちゃって……」
魅録は焦りながら、可憐の上に放出したものを己のTシャツでぬぐっていた。
可憐はちょっと呆れた顔だ。しかし、しょんぼりしている魅録を見ると
再びとうもろこしを手に取った。
「魅録……見て」
可憐の指がとうもろこしの全ての皮を緩やかに剥いて行く。挑発的な目線が魅録を誘う。
黄金の実を両手で包み込むと、長い指がそっと上下しだす。やさしく、執拗に。
魅録の喉がゴクリと鳴った。下の方に新たな活力が流れ込むのを感じる。
とろんとした顔の彼を見ると、可憐は微笑して、とうもろこしを舐め上げた。
「はぁ……可憐、俺、また……」
指で魅録を制すると、とうもろこしの先っちょを唇に当てる。
そのままズブズブと口の中に実をめり込ませた。
「いいですか、弱火でじっくりと、バターもコーンも焦がさぬように」
「うるさいなぁ」
「手首のスナップを利かせて細かくフライパンを揺する」
「るせぇ、あっち行ってろ、清四郎!」
「はぁ……ん、もう、お願い、来て……魅録、お願い」
可憐の秘部をとうもろこしの一粒一粒が舐めていく。魅録は可憐の願いに首を振ると、
再び黄金の実を敏感な箇所に当て、揺する。甘くて美味しい大地の恵みは、すでに
淫らに濡れていた。先端を入り口にあてがうと、可憐がぎくっとする。
「や……まさか、嘘でしょ?」
ズブズブととうもろこしが吸い込まれていく。
「いやあっ、いやっ、やめてぇぇ」
ぴたっと動きが止まった。とうもろこしが去っていくのを見て、可憐は拍子抜けの
顔をする。
「やめたの?」
「やめてって言ったろ?」
こう言いつつ、魅録の内心は
(俺が後から入って、『やっぱりとうもろこしがいい!』なんて言われたら
立ち直れないぜ。サイズでは若干負けてるし……)
魅録は可憐を四つん這いにさせて腰を持ち上げた。可憐は顔を地面にすりつけて
いる。
「あーん、この体勢恥ずかしいの」
「やめる?」
「いやーん」
(どっちだよ)と思いつつ、可憐の中に分け入った魅録はたちまち全てを解放して
しまいそうな快感に襲われつつ。
(やべ。今度は持たせないと面目丸つぶれだぜ)
ゆっくりと動かす。可憐は小さく「ぁっ」「ぁっ」と叫び、美しい尻を揺らして
魅録の動きに応えている。
気がつくと可憐の白い腕に、胸に泥汚れがついていた。
魅録の中に稲妻が走る。
(ああーっ。またしても! やべー!)
ポン、ポンと軽快な音が蓋をしたフライパンの中からしだした。
「へへー、今度はうまくできたぞ」
得意そうな悠理の横で清四郎達は疑い深い顔で見ている。
「絶対、悠理コーン入れ過ぎましたよ」
「あふれるぞ、絶対」
「うるさい!」
激しい突きに可憐もいつか喘ぎ声が大きくなってきた。
「あ、あ、あん!あん!あはん!あっ、魅録、いやっ、いやっ、ああ、もう……」
魅録は懸命に堪えていた。耐えていた。
しかし、限界点は限り無く近い。
「ああ、だめ!だめ!あたし、もう声が出ちゃう!あん!いやん!」
可憐は手近にあったとうもろこしを口の中に突っ込んで、自分の声を塞ごうと。
「むぐっ、んっ」
口にとうもろこしを半分突っ込んで、尻を高々あげ、泥にまみれた可憐は
魅録の守っていた砦をあっという間に突破した。
「ひっ、可憐!ご、ごめん!!!俺、もう、げんか……」
「むぐぅ、うう、うっ、うっ、(口からとうもろこしが落ちた)あーーーっっ!」
ポン、ポン、ポン、ずるっ、とフライパンから蓋が落ちた。
ポン!パン!ピン!
「あーーーーっっ!」
「出た!」
「出ちゃった!」
「零れましたわ、白いのが」
「す、少しだけ」
「いや、盛大に出てますよ」
「こんなに盛大に出ると気持ちいいくらいだよね」
「ですわね」
「何かヤダ」
床の上に大量のポップコーンが白い山を作っていた。
畑では事の終わった二人が脱力していた。
〜Fin〜
すみません。ぜんぜん「バナナ」とか「ソフトクリーム」とか
ファンシーな感じじゃないですね。
とうもろこしって漏れ……申し訳ない!m(__)m
とうむぎ…とうきび?
>とうむぎ
笑かしてもらいますたw
魅録ガンガレ!と応援しつつも、情けない魅録もなかなかにカワイイっすね。
遅レスだけど、妄想@回転寿司のタイトルを見た途端、
有閑メンバーがぐーるぐる回ってる光景を思い浮かべてしまった。
>>187 お疲れ様でした〜☆
うへへ・・・魅×可(むしろ可×魅?)ご馳走様でつ
なんかいいなぁ、天然バカップルっぽくて。
こーいう脳天気なRって魅×可は違和感ないっす
>とうむぎ畑
魅×可サイドと他の4人サイドの切り替えがうまくて、
散々笑わせてもらいました
ちょっとヘタレな魅録が、等身大の高校生っぽくて可愛い〜
>(それは無理それは無理それは無理それは無理それは無理それは無理それは……)
には大爆笑です
>とうむぎ畑
やぁ〜笑かしていただきました!
女の子2人(野梨子、可憐)は、誰が相手でも
バカップルには萌えますw
しょんぼり魅録に萌え〜
本人も息子もしょんぼり・・・w
>とうむぎ
ネタ振った176です。早速創作活動してくださり、感激の至りです。
とうもろこしは思いつかなかったヨ・・・でもバナーナとかよりイイかも。
粒々もあるし・・・って何言ってるんだ、自分w
魅録の描写がイイ!もいっかい読んできます・・・
>194
粒々ってあーたw
私も同じこと考えてたから人のこと言えないけどさっ
>とうむぎ畑
とうもろこしと張り合う魅録カワイイ!
本当にとうもろこし並みだったらコワイ・・・よね?
>196
ズボンに入らない。
>196
膝三本だ。。。(笑)
>>163の続きになります。
「和子さん、お久しぶりです。それで、野梨子はどうなんですか?」
野梨子は、ここにいるはずのない人の声を聞いてびっくりしてドアの方へ向いた。
そこには、本当に魅録が立っている。
「…魅録…」
野梨子は唖然として、ただただ魅録を見ているだけしかできない。
魅録はずかずかと診療室に入ってくる。
「悠理ちゃん、何か言ってなかった?」
「ただ、野梨子が体調悪いみたいだから、ここへ行けって、それだけです」
和子は、義妹のそっけなさを思い出して苦笑いする。
もともと言葉多く説明するような人ではない。
「まあ、魅録くん、そこに座って」
魅録は和子に軽く頭を下げ、看護師が勧めてくれた椅子に腰掛けた。
和子は一呼吸置いて、口を開いた。
「ふたりとも、おめでとう。妊娠第10週目よ」
「妊娠…」
魅録は驚いて、野梨子を見つめる。
野梨子は、心の中にじわっと広がる嬉しさに思わず顔がほころんでくる。
「さっきも言ったけど、厳密には私の専門じゃないから、明日の朝一番に
うちの産婦人科にちゃんと伝えとくわ。野梨子ちゃん、午後にでも改めて
来てもらえない?」
「…はい。それでは、よろしくお願いします」
野梨子は立ち上がり、和子に頭を下げた。
それを見て、魅録も慌てて野梨子に倣う。
「ほんと、俺、なんか嬉しくて、信じらんなくて、びっくりしてる」
魅録は隣に座る野梨子の右肩を抱いて、しかし視線は正面に向けたまま言った。
「嬉しいと、思ってくださるの?」
野梨子は顔を横に向け、魅録を見上げる。
「当たり前じゃねえか…。ただ、俺は…」
魅録は野梨子の方に向き直り、だが照れくさそうに視線は逸らせた。
「『俺は』?」
野梨子が続きを促す。
「…コイツがもっと早く来るだろうと思ってただけだ」
魅録が、左手を、野梨子の下腹部にそっと置いた。
「……」
野梨子は、魅録の左手から伝わる何とも言えぬ暖かさに、言葉が出てこない。
下を向いて、魅録の左手の上に自分の右手を重ねる。
涙が一粒、手の甲に落ちる。
「無理すんなよ」
魅録は、右腕を野梨子の背中に回し、ぎゅっと野梨子を抱き寄せた。
「今日の検診、どうだった?」
魅録はどうにも気になって仕方なく、いつもより早く帰宅していた。
「赤ちゃんは、順調ですって。…でも、これから言うことに驚かないでくださいね」
野梨子の口調にちょっと照れくささが垣間見える。
「順調なのに、何かあるのか?」
魅録は、野梨子の様子がてんでわからない。
「ええ…。私も、まだ、実感がわかないんですの…」
野梨子は、下を向いて口ごもってしまった。
「何?言ってみろよ」
「……恐らく、双子だろうとおっしゃられて…」
魅録に急かされて、野梨子はようやく本題を口にした。
「えっ、お前、今、『ふたご』って…」
魅録は、目を白黒させながら向かい側に座る野梨子を見つめる。
野梨子は、隣の椅子に置いていたバッグから写真を取り出し、テーブルの上に置いた。
「これが、今日いただいた超音波の写真」
魅録は、早速それを手にとってみた。
上から、下から、斜めからとあらゆる角度から眺めてみたが、いまいちよくわからない。
見ようによっては険しくも見える魅録の表情に、野梨子は説明しようにも話し掛けられない。
2人とも黙ったまま、5分程過ぎた。
突然、魅録が声を出して笑い始めた。
「何がおかしいんですの?」
野梨子は、訝しげに魅録を見る。
「お前、憶えてない?前に清四郎んところに行った時にさ、すごかったじゃん。
チビがさ、反抗期でアイツ等の言うこと聞かずにあちこちにおもちゃばらまいて…。
1人であれなら、2人だと相当なことになるだろうな」
野梨子は、子供を叱っていた清四郎と、こちらを気遣いながらひとつひとつ
おもちゃを片付けていた悠理を思い出した。
そして自分達も、確実にその道を辿ることを思い、思わず、ため息をついてしまう。
「まあ、今から考えても仕方ないか。そういや、白鹿のご両親とかに言っといた方が
いいんじゃないのか?それとも、もう伝えたのか?」
「まだですわ。今から電話しますわ」
「俺も、お袋んとこにメール入れとく」
まだ、続きます。
時間のある方、お付き合いくださいませ。
>New Arrivai
男の子か、女の子か、それとも二卵生で男女の双子なのか楽しみでつ。
野梨子似の女の双子だったりしたら、すごいカワイイだろうなあ・・・・
>New Arrivai
あんな華奢な身体で双子なんて大丈夫なのか、ちょっと心配。
二卵性で、魅録似の女の子と野梨子似の男の子だったら面白そうだ。
野梨子似の女の子双子なんて生まれたら、魅録はメロメロパパになると思う(w
あと、野梨子が和子を苦手にしてる、というのが面白いと思いますた。
パソコンが壊れて修理に出すことになりました。 今、携帯からこれを書いてます。 17日に出すので、早くても25日まで返ってこないと思います。 連載を楽しみにしてくださった人、すみません。
>New Arrival
ほーんと、野梨子の体に二人も赤ちゃん入るのかな。
楽しみだなぁ♪
>204
ニューアリバイ?w
>秋
いついつまでもお待ちしております。
ニューアリバイにワラタ!!
今日、改めて『秋の手触り』読んでみました。
結構ひきつけられる文章で、そこここのディテールと6人の描写がしっかり
してるのに、感心しています。
連載再開、すごく楽しみにしています。
>秋
早くパソ直して戻ってきてくださぁ〜い!
>206-207
204でつ。
うわっ、全然気が付かなかったよ。<ニューアリバイ
何も考えずに203さんのをコピペしてしまった。
ニューアリバイかぁ・・・アリバイがいるってことは、
魅録が何か良かならぬことをしてる、ってことかな。
それも「ニュー」だから、前にもアリバイが必要なことを
やっていた、と。怪しいヤシめ・・・(w
>ニュー アリバイ
210さんの小ネタからヒントを得て、お話を考えてみました。
野梨子の里帰り中にふと可憐と浮気してしまう魅録。
野梨子にばれそうになり、魅録は必死でアリバイ工作をするが、
嘘が嘘を呼び事態は抜き差しならぬ方向へ。
本当は野梨子を愛し、別れたくない魅録を見て、初めは魅録を奪うつもり
だった可憐はそっと「ニュー アリバイ」を提供する。
めでたく魅×野は元のサヤに。魅録は可憐に深く感謝するのだった・・・。
ちょっと苦しい?あ、魅×野は夫婦です。
>211
お約束違反かもだけど。
妻の妊娠中や里帰り中に浮気する男って激しく最低かと。
魅録はそんな男じゃない〜!!!と叫びたい。ので叫んだ。
妄想水差スマソ。
>211
でもカナーリ見てみたい>必死でアリバイ工作する魅録
なんか萌え。
そうそう、最低(笑)
だからそれなりの理由が欲しいね。野梨子に裏切られたと、思い込んだとか。
元カノの可憐が激しく言い寄ってきた、とか。
魅録を清四郎や美童に変えてもいいんだが、
清四郎の場合、激しく見苦しいアリバイ作り、
美童の場合、滑稽なアリバイ作りになりそうなもんで、魅録押し。
魅録スキ−さん達の指示はもらえないかな?(^^)
あ、214は>212さん です。
>>201の続きです。
静かな家の中に突如、電話の音が鳴り響く。
眠りについたばかりの野梨子を起こしたくなくて、魅録はすばやく受話器を取った。
「はい、松竹梅」
「あら、魅録?野梨子は?」
可憐は、魅録の声を聞いて少なからず驚いた。
自宅に掛けて魅録が出たためしがない。
自分だけじゃなくて、美童や清四郎が掛けたってそうだ。
「寝てる。なんか急用か?」
魅録はひどくぶっきらぼうだ。
「そうじゃないけど。こんな時間から寝てるって、具合あんまりよくないの?」
「正直、最近、あんまりな」
あっさりと認める魅録に、可憐は、こういうことに弱そうな魅録が野梨子の面倒を
見切れていないような気がして仕方がなくなってくる。
「あんた、ちゃんとフォローしてんの?」
「そりゃ、できる限りやってるに決まってるだろう。それに、アイツのお袋さんも
しょっちゅう様子見に来てくれるし」
「やっぱ、1人と違って大変なのね。あたしにできることなんかある?」
可憐は、ここ一月ほど忙しくてほとんど連絡を取らなかったことを後悔した。
自分の時に散々世話になっておきながら、逆の立場になって何もしないというのは
気が引ける。
悠理も引きずり込んでやるか。
「今んとこ、アイツ、出て行く元気ないみたいだから、たまにはウチに遊びに
来てやってくれないか」
もっと具体的なことを言われるかと思ったのに、意外だった。
ただ、辛いからといって家にずっといると気が滅入るのも分かる気がする。
「わかった。近いうちにお邪魔させてもらうわ。また電話する」
その数日後、可憐は悠理と一緒に野梨子の家に遊びに行った。
玄関に出てきた野梨子が、おなかこそせりだしてきているものの顔色も悪くなく
笑顔で出迎えたのに、2人は心から安堵した。
気配り系で可憐姐さん出してみました。
こういう話書いておきながら、浮気・不倫話の魅×可にひどく惹かれる自分が
いる…
「今日は、どうだい?」
病室のドアが開いて、父青洲が入ってきた。
茶会や何やらで忙しい母に代わって、ここ2月ほど、父が野梨子を訪ねてくるようになった。
3週間前に大事を取って入院してからは、予定していたスケッチ旅行も取りやめ、
ほぼ毎日病院に通ってきてくれる。
今までにない父の気遣いに、嬉しく思いながらもどこかこそばゆい感じがある。
「ええ、大丈夫ですわ。母さまに、そう伝えておいてくださいな」
「そうか、よかった」
それだけ言うと、大概、お見舞い品の整理とか、何か必要な物がないか野梨子に聞いて
チェックリストを作ったりとか、持ってきた荷物を片付けたりしてくれる。
今でこそ、父が世話を焼いてくれるのを素直に受け入れているが、最初はそれこそ
目が飛び出るほど驚いた。
思わずベッドから這い出て手伝おうとし、父が慌てて野梨子に笑顔で『大丈夫だよ』と言い、
ベッドに戻るように諭されたのだ。
「あと、もう少しだなあ…。どっちが生まれてくるか、両方1人ずつか楽しみだな」
ベッド脇のストールに腰掛けて青洲は言った。
「父さまは、どう思ってらっしゃるの?」
野梨子がこう訊くのはもう何度目だろうか。
母を始め周りの人間があれこれ言うのを聞いてきたが、どういうわけか、青洲だけは
どっちがいいとは言わなかった。
「生まれてきてさえくれれば、いいんだよ」
今日もまた、同じ答えだった。
「そう言ってくださるのは、父さまと魅録だけですわ」
魅録は野梨子からメールで生まれそうだという連絡を受け、急いで病院に向かっていた。
昨日の夜に面会に行った時点で明日か明後日だろうと言われ、明後日なら休みだから
都合がいいやなどと思っていた矢先だった。
「すみません、おそくなって」
産科のブロックに入ると、すでに野梨子の両親が駆けつけていた。
程なく、時宗と千秋もやって来た。
魅録は閉ざされたままの分娩室のドアを見ながら、廊下脇にあるベンチに座ったり、
意味なく廊下を歩き回ったり、でも、誰に何を話しかけていいのか分からず黙り込んでいた。
1時間、2時間…と過ぎていくが、一瞬でもその場を離れようものならその間に
生まれてくるような気がして、煙草も吸わずにいる。
野梨子がとにもかくにも無事に出産するのを、ひたすらに祈るような気持ちで待ち続けた。
「・・・・・・」
わずかにドア越しに何か音が聞こえる。
すると、扉が開いて主治医が出てきた。
「おめでとうございます。男のお子さん2人です。ご主人、奥さんのもとへ」
魅録は促されるままに中に入る。
そこには、大役を終えてぐったりとした野梨子が、分娩台の上で目を閉じて
横たわっていた。
魅録がそっと黒髪に触れると、ゆっくりと目を開く。
「…魅…録…?」
「よく頑張ったな。お疲れさん」
野梨子の右肩に左手を軽く置いた。
右手は、頬につたう涙を拭っている。
「そうですよ、ご主人。こんな華奢な人が、あんな大きなふたごちゃんをお産みに
なったんですから」
側を横切った助産師が、笑顔で魅録に声を掛けた。
菊正宗病院には新生児集中治療室があり、もしもの時は即そちらへ運び込まれることに
なっていた。
しかし幸いなことに体重もそこそこあり、特に疾患がないということでふたごは
新生児室に入れられた。
あの、硝子ばりの部屋である。
反対側には、新米のじじばばが4人。
「なんか、生まれたばっかりの頃の魅録よりかわいく見えるのは、どうしてかしらねぇ」
千秋は、20数年前のことを思い出しつつ、反対側のベンチに浅く腰掛けた。
「いや、そんなことないぞ、千秋ちゃん。あの時、こんな感じで魅録を見てわしが
どんだけ感動したか…」
時宗は、妻の側に寄り添う。
「野梨子が、こうやって子供を産むなんて、なんだか、まだ信じられませんわ、あなた」
野梨子の母は、ふたごに釘付けのままだ。
「でも、生まれてきてくれて、なによりだな。これから、賑やかになるぞ」
女の子、しかもおとなしくおっとりした子供しか持たなかった青洲は、想像つくようで
つかないこれからを思って苦笑いした。
この翌日、青洲はスケッチブックを片手に硝子の前まで来て、ふたごをデッサンしていた。
誰に見せるでもなく描き始めたそれは、その後20数年の間に膨大な枚数となり、
彼が孫達に残した最高の贈り物となった。
続きます。
次回うpで終了の予定です。
>New Arrival
男児の双子でしたか。おめでd。
孫をデッサンする野梨子父、いいなぁ〜。
魅録×悠理が大好きです。
そろそろ食欲の秋、ロック(芸術)の秋にからめた
ほのぼのラブ話、、、
と書き出してみたけど
うまく書けない。
作家様、尊敬です。
>222さま
>食欲の秋、ロック(芸術)の秋にからめた
ほのぼのラブ話、、、
イイですねー。私も魅録×悠理、大スキーです♪
>224です
sage入ってなかったー!!(泣)
スミマセン。
>225
ダメじゃん…
>>223 その中の全部、すきなんだけど
特に「◆ 夏 の 扉 ◆」がお気に入りです。
ほんとうは新作が読みたいんだけど。
>>225 よしよし、泣かない。泣かない。
半角sageで書くといいのですよ。
メ−ル欄に。
>New Arrival
魅録に子供が生まれたら千秋ちゃんがおばーちゃんに
なることに読んではじめて気付いたw
>222
芸術の秋、と魅×悠でストーリー考えてみた。
とある大学の学園祭で、悠理はある劇団にひと目惚れ。
連日手伝いに行くので魅録は面白くない。
ある日無理矢理、悠理にくっついて劇団を訪れるが、目を輝かせて大道具を
手伝う彼女に別人のような錯覚を覚える。
また、悠理がどうやら劇団の主催者にほれているらしいこともわかり、
淋しい気持ちでいっぱい。
しかし、愛する悠理のためなら、と自らも劇団を手伝い公演を成功させる。
打上げの後、悠理は不器用に主催者に告白するが、玉砕。
大泣きする悠理を魅録はバイクに乗せてどこかに消えていくのだった……。
わぁ、いい。
できれば、なぐさめるのに物を食わせて慰めるのではなく、
「俺がいるじゃないか」みたいなので匂わせてENDがいい。
私も魅×悠読みたいなあー。
文章が書けないのが本当に悔しい。
>230
いいっすね!
>231
>「俺がいるじゃないか」みたいなので匂わせてENDがいい。
でも、魅録の告白は悠理がラーメンをすする音にかき消されていくのだった・・・。
て、物喰わせてしまった(藁
>228さま
224&225です。
お約束再読しました!!…慌ててました…反省。
ご親切にありがとうございます!! m(_ _)m
そういえばファミマにいったら、
「白鹿」の隣に「菊正宗」がおいてあって萌えたw
>「白鹿」の隣に「菊正宗」がおいてあって萌えたw
まじで?
なんてセンスのいい店なんだ。通っちゃうぜ……
>「白鹿」の隣に「菊正宗」
(;´Д`)ハァハァ
>235
その店教えてくり!行って「白鹿」と「菊正宗」の間に、
『松 竹 梅』を・・・・・割り込ませてくる!
>New Arrival
男の子だったのかあ♪
成長したらさぞかしモテるだろうなあ・・・
>ニューアリバイ
>203は私でした・・・
清四郎に馬鹿にされながら、英単語の書きとりに逝ってきまつ・・・
清×悠スキーな私は酒屋で菊正宗の隣に剣菱を置いたことがありますが、何か?
じゃあ、私は間に黄桜を!
こうしてこのお店の酒の配列がどんどん変わってゆくのね。
皆さ〜ん、ちょっと静かにして聞いてください。
「菊正宗」の隣は「白鹿」の指定席です。
わかりました〜か〜?
グランマニエを置いてくれる人はいないんだね…
>243
チチの隣に来る……?
>243
売り場が離れてるからね…
>242
支持カポーは人それぞれ。
そういうこといいたいならサイトでもつくったら?
ウザ。
>243
泣くな美童。
>242
私もそのカポーは好きだが、こういう場で
そういう事いうもんじゃないよ。
>245
まあまあ…。ちょっとふざけて言ってみただけじゃないの、242は。
そんなに青筋立てなくても…。どうどう。
皆さ〜ん、ちょっと静かにして聞いてください。
「チチ」の隣は「松竹梅」の指定席です。
わかりました〜か〜?
愛があれば距離なんて・・・ガンガレ、魅録
>248
チチってカクテルだから瓶入りでは売ってないかもしれないけど、
もしあったらきっと可憐な小さな瓶だと思う。
その横に立派な「松竹梅」の一升瓶が並んでたら!!
も、萌え萌え〜
誰か、チチと魅録のお話は書いてくれないだろうか…。
とか言ってみる。スマソ
実はマイタイ王国帰国前夜に、浜の木陰で愛し合ってしまったとか!?
>チチ×魅録
愛し合いながらも別れの運命の二人。
「せめて今夜だけ、魅録の側にイタイ」
「チチ……」
短い夜を惜しんで互いの体を慈しみあうのだった。
ハレークインロマ風味でゴメン
悠でも野でも可の誰でもいいんだけど、それにからむ
三角関係な話が読みたい
>251
そ、そんなことが……!
イイ!読みたい!
>悠でも野でも可の誰でもいいんだけど、それにからむ
「悠×野でも可」に見えて鼻痔が出るかTO、オモタ!
責め悠理ハアハア
あ、こっち系の話になっちった。スマソ
>251
すごく激しそう(何がだ)でいいわぁ!
今夜、想像して寝られないよぉ。
>251
よ…読みてぇ〜!
>253
ごめん、なにげに「鼻痔」にワロタ
>253
悠理が本気になったら、そこらへんの男は太刀打ちできないだろうな。
漏れ的には、悠理に野梨子を奪われる清四郎が見てみたい・・・。
嫌いな人、スマソ。
>257
私もそれ読んでみたい。
悠理に野梨子を奪われて凹む清四郎。いいなー。
悠理を思いっきりかっこよく書いてほしい。
>New Arrival
男の子の双子なんて意外でした。
二卵性で野梨子似と魅録似だったら最高!
>251
読みたい!
今夜は妄想で寝られないよ!
>257.258
悠理に野梨子を奪われる清四郎、かなりツボだったので書いてみました。
2レスです。
お嫌いな方は、スルーお願いします。
見ている。
――彼女が、僕を見ている。
長い睫の下の瞳を細めていても、挑むような彩りは隠せていない。
彼女の気性がなす業か、それとも故意にか。
白い指が、滑らかな黒髪をいたずらに乱す。
自らの手指が、絹糸を手繰るようなその感触を欲している。
赤い唇の中の吐息を絡めとりたくて、舌が震える。
だが、僕の口中は乾きを癒せない。
野梨子を抱いているのは僕ではない。
白いスカートの襞が揺れている。
縺れるような、細い四本の足。
互いの髪をかきむしるように狂おしい抱擁。
いつのまにか、その場を離れていた。
銅鑼のような心臓の音が、煩わしい耳鳴りが、めまぐるしい血の流れに乗って全身に伝播していく。
放課後の校庭にはひどく緩慢とした空気と、まばらな人影があるだけだ。
夏の名残を残した陽が沈みゆく。
干涸びた蝉の死骸を、制靴の踵で踏みにじった。
「清四郎」
背後から投げかけられた声に、ゆっくりと振り返る。
下足箱から走りよってくる彼の姿に思わず口の端が歪む。
「いま、帰りなのか?」
「ええ、思いのほか早く終わったのでね。校長の呼び出しにしては珍しいですが」
「ふうん。お前が一人で帰るのも珍しいよな」
野梨子は一緒じゃないのか?
その問いが出る前に、僕はこう言ってやりますよ。
「あなたこそ、悠理はどうしたんです?」
――オワリです。ありがとうございました。
>Beginning・・・
もう書いてくれない・・・?
>264
おお、悠×野!しかも清×野で魅×悠?
清×野も魅×悠もラブラブと見せかけて、実は隠れて
「夏の終わり」のようなねちっこい悠×野の関係があったら
萌える〜
>夏の終わり
悠×野だ!
>互いの髪をかきむしるように狂おしい抱擁。
激しいですなあ・・・学校だというのに(藁
シリアスな話にもかかわらず、
悠理ファンクラブの生徒に見られたらどうすんだと、
どうでもいいことを心配してしまいますた。
>264
漏れも萌え〜
>夏の終わり
も、もっと読みたいんですが…ハァハァ
清×魅より悠×野に萌えてしまうってヤバイかとオモタけど
同士がけっこういるみたいで安心した(w
>夏の終わり
この時点で、魅録は気付いてる(知っている)んだろうか?
魅録バージョンも読みたいかも…。
こうなったら、魅録と清四郎もやっちまうってのはどうでしょう。
>267
魅録は鈍そうだよね…そういうの
気づいた時のショックが余計に大きそう
その心の傷のせいで
>268の展開に…(藁
で、美×可とみせかけて
悠×野×可…
マジゴメン
思いついたのでうpします。清×野です。
よければ読んでみてください。
いつも歩く、同じ道。たわいの無い会話。
隣にいつもいる幼馴染み。
小さな頃から今までずっと。そして、これからも。いつまでも、いつまでも。
同じように続くのだろうか?
もし、お互いが恋をしても。
同じように風は、彼の頬を撫でるだろうか。彼女の黒髪を梳かすだろうか。
彼女には、そんな概念さえ生まれてこない。
視線をふと彼に向けても、その瞳が潤んでいる事に気付くのは自分ではなく、彼。
凪になっている波の下で、やわらかい想いが動き出す。
赤いくちびる。小さな口元から零れ出る、甘く凛とした響き。
ゆっくりと、いつもの動きに変わる。
「…ねぇ、清四郎?」
気付かないのは、彼女ばかり───
───はぁ。
カールを指に巻きつけ、弄びながら彼女は人知れずため息をつく。
6月の昼下がり。少しずつ空気が夏の匂いに包まれていく。
(わかってる、んだけどねぇ…)視線の先で、艶やかな黒髪を揺らしてはにかむ友人。
その友人の視線の先には彼女の大切な幼馴染みがいて、
──当たり前のように、その場所にいて。
彼もまた愛しいものを見る顔つきで彼女を見つめている。
(頭はわかってくれるんだけど) 不思議に痛むその場所が
(わかってくんないのよねぇ、ここんとこが…)
可憐の胸が痛むのはただ単に自分の入る隙がないということだけではなかった。
超恋愛体質な彼女とまるっきり正反対な野梨子は可憐の気持ちはもちろん、自分の想いにも気付いていない。
いつもの、バイタリティ溢れる可憐なら
「しっかりしなさいよ!好きなんでしょ、清四郎のこと!この可憐さんにまかせなさいっ!」
とでも言っているところなのだが、今回ばかりはそうも行かない。
だからといって野梨子を押しのけて清四郎に向かっていく気が起こるわけでもなかった。
幼馴染みという、見えない、でも触れないヴェールが
二人を包んでいるからだ。
後にも先にもいけない可憐は自身の気持ちを持て余していた。
絶対。この気持ちは絶対、野梨子には知らせない。鈍い野梨子なら簡単だろう。
しかし可憐は日に日に清四郎への想いが増している事を自覚していた。
(ダメよ、こんなんじゃ)
──はぁ。 2回目のため息。
「どうしたんですの、可憐。ため息ばかりついて」野梨子が手をこちらに伸ばしかけたその時、
パシッ。 (あっ…)
「!?」野梨子の表情が曇る。(やばっ…)何を言っていいものだろう。
いや、何を言っても取り付くえるはずだ。しかしそれだけの余裕が可憐には残っていなかった。
「………」「あ〜あっ、何当たってんの、可憐!さっき僕も叩かれたしさぁー。男にふられた?あっ、あの日だろ?」
「お前はそーゆうことでしか判断できないのかよ」そばで見ていた男性陣二人が場を和ます。
「うっうるさいわね美童!あいにくこれからデートなの。野梨子ごめん。─ちょっと考え事してたのよ。じゃお先」
「あっ僕ももう行かなきゃ。可憐一緒に出ようよ」バタン。
「なんだよー、可憐。最近あいつ機嫌わりぃなぁ」「あたいもそー思う!まっ気にすんな、野梨子♪」
「じゃ悠理俺らもそろそろいくか」「うんっあー楽しみ!今日はお台場まで行くんだぜぇ」
「じゃな、また明日」バタン。
「…みんないっぺんにいなくなってしまいましたね」「ええ。皆さんお忙しいのですわ」
「……」「……」6人いても皆別々のことをしているはずなのに、皆がいないとなんだか物寂しい。
「我々も帰りましょうか」「…ええ」
「待ってよ、可憐!」走っていく彼女の左手を、右手で掴んだ。「やっ…」
振り返らない可憐の、肩が小刻みに揺れている。
「可憐!」グッ。視線がぶつかる。「……」
「美童、痛い…」
「この腕より、心のほうが痛そうだよ」ぽろぽろ。透明な涙が艶のある瞳から零れ落ちる。
「お願い。そんな事言わないで。あたしもあんたも辛いだけよ…!」
黙ったまま睨むように可憐を見つめる。
音が消え、
景色が消え、
事実が消えた。
──ように思えた。
美童は自分の胸へ愛しい人を引き寄せた。
その瞬間。
「──ダメ」うつむいたまま両手で美童の胸を押す。
ポタポタポタッ。 想いが溢れて床へ落ちる。
「見ないで。追いかけてこないで」「かれ…」
「じゃあね。また明日」甘い香りを残して可憐は走って行った。
──ふぅ。
美童は熱い切なさのうつった右手を握り締めた。走り去る可憐にはひとつの決意が生まれていた。
それぞれの思いが、深く交錯していた。
野梨子には、可憐の態度は理解不能だった。
ただ嫌われているわけではないにしろ自分が可憐の杞憂の原因であるようだということだけは感じ取れた。
気まずい空気が二人の間に、六人の間に流れつつあった。
風が野梨子の頬をすり抜ける。胸が締め付けられる。
言葉に表せる想いなど、自分は持ち合わせていないのに。きっと、可憐は違う。
「…ねぇ、清四郎?」
「はい」
「可憐絶対変ですわよね。私なにかいたしましたかしら」
「さぁ…可憐も年頃なんですよ」清四郎が苦笑しながら言う。
「年頃って」野梨子の顔に、やっと笑顔が戻った。
「ではまた明日」
「ええ。また明日」
二人はそれぞれ家路に着いた。
続きます。
「夏の終わり」の続きをupします。2レス分。
悠×野です。
お嫌いな方は、スルーお願いします。
>261.262の続き
「なに、やってるの」
問いかけは、わずかな乱れもなく零れ落ちた。
目の前の光景よりもそのことに驚く。
「なにって、見ればわかるだろ」
首に絡んだ、子供のように細い腕を解きながら悠理は身を起こした。
不満そうなつぶやきを発しながら、野梨子は上衣の釦を留めている。
絶句したまま立ち尽くす僕に、悠理が微笑みかけた。
紅を差したような唇から、白い歯が覗く。
見慣れた笑顔のはずなのに。
すこしも安らげない。
はだけたままの襟を直しもせず、無造作に床に脱ぎ捨てられた靴を蹴飛ばして
悠理は立ち上がった。
裸足のまま、まっすぐ僕に向かって歩んでくる。
縫いとめられたように、僕はその場を動けない。
伸ばされた細い指がゆっくりと頬を辿る。
不意に感じた温度に、ひっと息を飲んだ。
「ばっかだなあ。処女じゃあるまいし、そんなに怯えなくってもいいじゃん」
長い僕の髪を指に巻きとる、無邪気な仕草。
背中に回された華奢な腕。
たったそれだけで、僕はこんなにも捕われてしまっている。
一日の最後の光が頼りなく照らす室内は、まるで見知らぬ部屋のようだ。
ただ、抱きつく悠理の温かさが、小さな鳥のさえずりのような野梨子の忍び笑いが、
縒り合わさる細い糸となって僕と現実を繋いでいる。
すぐにも突き飛ばしたいような、折れるほどに抱きしめたいような衝動がせめぎあう。
僕には恋人がいる。
野梨子にも、そして悠理にも。
背筋を駆け抜ける痺れに慄えた。
腕の中の女はこんなにも甘やかで。
求められる唇を、縋りつく腕を振り払う術を、
ーー僕は知らない。
――オワリです。ありがとうございました。
>夏の終わり
…スキ。もっと読みたいw
その夜。
「野梨子さん、清四郎さんからお電話よ」
「あっ、はい」電話の元へ走っていく。
「もしもし?」
「野梨子ですか。すみません、明日の朝は急用が出来てしまったので先に出ますね」
──急用って?
出かかった言葉を飲み込む。聞いてはいけない気がしたから。
「野梨子?」「えっ?あぁごめんなさい。わかりましたわ。それでは学校で」
電話を切った後も不思議な胸騒ぎはおさまる事がなく、彼女の心を夜のあいだ中揺らし続けた。
午前2時を過ぎても目は冴えたままで、余計に意識がはっきりしてくる。
シャッ。
カーテンを開けると清四郎の部屋の電気がついているのが見えた。
(何を考えているんですの?明日の朝に何があるんですの?
──誰のことを、考えているんですの…?)
野梨子の想いが、月に照らされて縁取られてくる。
もうすぐ、何かが変わる。
「──明日で終わり、か…」
清四郎に電話をして、可憐は呟いた。
明日告げる。まるで初恋のような、甘くて痛い、自分に収まりきらない気持ちを。
彼は言うだろう。そばにいる幼馴染みが何より大切だと。
(わかってる。──わかってるってば。絶対泣かない)
夜中になっても眠りたくなかった。
大切な恋心を持て余す最後の夜だから。
窓を開ければ初夏の涼しい風が、長いウエーブを梳かしてゆく。
(お願い。明日の朝までだけでも、あたしのことだけ考えて)
そう。電話を切ったその瞬間から、明日の朝答えがその口からこぼれるまでだけでいい。
(あたしだけを見てよ)
こんな都会では、星の光は街の明かりにかき消されてしまう。
イミテーションの星屑が、可憐の横顔をよりいっそう切ないものにしていた。
続きます。
いきなり次回予告
可憐が殺された事件に、野梨子と悠理のゴールデンコンビが挑む!
と、そのとき可憐がむくりと起き上がる。
「うそだよ〜ん♪」
そのとき、野梨子と悠理に芽生えた感情。
それは、殺意だったのかもしれない…
次回「こんどの殺人犯は野梨子と悠理」
お楽しみに!
これは萌え。
野梨子の頭に隕石が!!「ぎゃ〜っ!!」
「危ないっ!!」野梨子を突き飛ばし、野梨子をかばった裕也。
ところが同じ事を考えていた清四郎もその場に飛び込んでしまった!
次回「ありがとう、清四郎!笑顔でサヨナラ!!」
>KISS
>明日の朝までだけでも、あたしのことだけ考えて
可憐、切ないなあ……。
>いきなり次回予告
本当にいきなりですな(w
だけど隕石がぶつかったら清四郎だけでなく、果たして地球は無事なのかと小1時間(ry
アルマゲ○ンみたいな有閑が見たいと思いますた。
>285
清四郎、笑顔でさよならって…w
清×悠をうpします。
嫌いな方、スルーお願いします。
誰かが、自分の頭を撫でている。
手のひらの感触と、そこから伝わる優しさ、暖かさ。
憶えているのは、それだけ。
いや、確かに、まどろみながらも、声を聞いていたはず。
目を閉じていた僕が、唯一の手がかりとするモノ。
なのに、それは、いまだ霧の中にある。
今日も、記憶は、不意にやってきた。
誰かがちょうど僕に触れた時に。
その時聞いた声が、記憶の中の声と絶妙にシンクロする。
やっと見つけた。
僕は周囲に一瞥もくれず、その人を抱き締めた。
その人は驚きの余り、ほんの一瞬、動かなかった。
だが、あっという間に腕からすり抜けていく。
僕は無様に、立ち尽くす。
「なあ、清四郎、今日はどうしたんだ?」
悠理は、訳がわからなかった。
自分達の関係を全く表沙汰にする気のない悠理とは違い、清四郎は特にこだわりはなかった。
時々、『もう、隠すのやめましょうか』など言って悠理をひやひやさせたことはあったが、
今までこれみよがしの行動を取ったことはない。
もし、今日のがそれなら、悠理も思いっきり怒ってすねて怒鳴ったりできるのだが、
どうも違う。
その、ある意味、らしくないのだ。
「すみません。アイツ等にバレてしまいましたね」
清四郎は質問に答えず、ベッドの上で横向きに寝そべって、隣の悠理の耳元で囁く。
その吐息に、悠理の身体はを震わせる。
「…じゃなくて、あたいが言いたいのは、今日のお前、どうかしてる。…何て言ったら
いいのかわかんないけど」
悠理は寝返りを打って、清四郎を正面から見据える。
きわどいところで心地よさに負けそうになったが、これは、どうしても知って
おかなければならない。
「ちょっと、思い出しただけなんです」
清四郎は左腕で悠理の首をかき抱き、右腕を背中に回した。
あの、気が狂いそうになるくらい、忙しかった日々。
目の前の、途方もない可能性に、目が眩む。
自分が、たかが19の高校生であることを忘れかけて。
目に見えない大切なものを失いかけて。
気がつけば、正体もなく、ソファに横になって寝入ってしまっていた。
誰かが、自分の頭を撫でている。
「……とーちゃんやかーちゃんのせいで……、お前こんなになっちゃって…」
僕は、実は、まどろむどころか、はっきりと目覚めていた。
もちろん、はっきりとその声を聞いていた。
でも、目を開いた瞬間に、すべてが消えてしまうことを恐れた。
全ては遅すぎた。
僕は無意識のうちに、この記憶を心の最奥に封じ込めていた。
ツヅキマス。
どうにも、タイトルが思いつかなくて、ないままにうpしてしまいました。
ごめんなさい。
カップリングだけでも名前欄に書いてみては?
>293
次回より、カップリングだけでも書きます。
ということで、次回は清×悠(4)とします。
ありがとうございました。
>清×悠
何だかしっとりした展開ですね。
清×悠好きなので嬉しいです。
続き楽しみにしてます。
わーい、清×悠ひさびさ。
たのしみですー。
わぁい、新作が続々でうれしいなっと。
>KISS
清×野のはずなのに、可憐の気持ちが切ないです。
勇気を出した彼女が幸せになってほしいなあ。
>清×悠
すでにカップルの二人なんですね。続き楽しみです。
3人にとって特別な意味を持つ朝。
早くに家を出て行く清四郎が玄関口から見える。
昨夜はほとんど一睡も出来なかった。
朝の涼しい風が頬に触れて、体に染み込む。
どうしてかは分からない。今までだってこんなことは何度も
あったはずなのに…野梨子の足は、アスファルトを歩き出していた。
清四郎が昇降口に入るのを見届け、野梨子は敷地へ入った。
すると。
「あっ野梨子!?おはよー早いねぇ。あのさ、聞きたい事あったんだ。今日古典当たるんだよぉ」
「えっ、で、でも私…」チラッ。もう清四郎の影は見えない。
「ねっお願い!今日だけだよ。助けてよ〜」
冗談めかした美童の口調。でも違う。彼の言いたいこと。
(同じだよ、野梨子。わかってる。今日だけだよ。今だけだよ。
今だけ清四郎の気持ちを可憐でいっぱいにしてあげて)
「…ええ」
生徒会室。
「──ご、ごめんねっ。こんな朝早くから呼び出しちゃって」「いえ」
ふぅ。 (やだもう、ドキドキしすぎよ!中学生じゃないんだから)
「野梨子は?」(何聞いてんの。2人きりだっていうのに)
「昨夜電話しておきました。早く出るって」
「…そう」「……」2人とも、黙っていた。
例え錯覚でも、ひとりよがりでも、この沈黙に恋の霧がかかるよう願いたかった。
沢山の思い出が回り続ける。 その思い出の中に。
そう、可憐の記憶の中にさえ、いつも彼の大切な幼馴染みがいたとしても──
「……好きよ」澄んだ瞳。
「何か知んないけど、あんたのその冷徹なトコも、頭のいいトコも、なんだかんだ言ってかっこいいトコも」
清四郎の表情は変わることがなかった。
「想い続けてる人がいても、よ」彼は目を伏せた。
「すみま─」「言わないで。そーゆう事は」清四郎を、しっかり見据えて言う。
「ねぇ。気付いてた?あんたが野梨子を想ってるのと同じくらいのあいだ、あんたの事見てきたの」
「もちろん。わかりやすいですからね、可憐は」
「じゃあ、すっごい好きだって事気付いてた?」「ええ」
「ほんとはあたしだけ見てほしいって事も…?」
ポロッ。 がたがたん。(やだ。お願い泣かないでよ!)
「可憐!」
背を向けた可憐を引き寄せ、力いっぱい抱きしめる。
「すみません、可憐」「…だから、そーゆう事言わないでよ…!」
清四郎の制服に、恋の雫が染み込んでいく。同時に香りを刻みつけながら。
「ねぇ、清四郎」「はい」
「昨日の夜、何考えてた…?」「あなたの事だけ考えてましたよ、可憐」
「…本当?」「ええ」
「じゃ、いいわ…ありがと」
肩がまだ震えている。清四郎は、そんな彼女の肩を抱き、前髪を梳いた。
涙で濡れている前髪。 長い睫。
二人の影が、ゆっくり近づいていった──
続きます。
>KISS
ええっ(`o`)清四郎って可憐とくっついちゃうの!?
野梨子どうする!?
『雨がボクを狂わせるので』うpします。
今回、清×野×美ですが、清×野の描写にファンの方には非常に
受け入れがたいかと思われるものがあります。
有閑メンバー総汚れなので、イメージを大事にされる方はスルー
お願いします。また、801風味とRがあります。
>>
http://that.2ch.net/nanmin/kako/1051/10512/1051259777/787 ちゃっちゃっちゃっ。
トランプを切る音が薄暗い和室に響いた。
清四郎の視界の片隅に、滑るように札を配る白い手が見える。
浴衣姿の美童が配られた札を手に取ってながめる。
「清四郎、もう配りましたわよ」
野梨子の声に我に返った。あわてて手元の札を取る。
しかし、札の内容は全然頭に入ってこなかった。
手札の陰からそっと彼女を盗み見る。
突然の来訪者、白鹿野梨子の顔からは何の表情も読み取ることができない。
土産をたずさえた野梨子がタクシーで合宿所に到着したのは、その夜の八時頃だった。
むさ苦しい男所帯に突然たおやかな少女が現れたので、合宿所の男たちにある種の
緊張が走る。しかも野梨子の帰りの足である電車はすでに大雨で運休になった後だった。
やむを得ず、野梨子は合宿所に清四郎や美童らと共に泊まることになった。
広間に並べられた膳の一番端で食事を取る野梨子の、細い腕に白い首筋に、
小さく開く赤い唇に男たちの視線が注がれている。
野梨子は清四郎たちの部屋の隣に泊まることになった。
「どうしたんです、こんな山奥まで。」
清四郎の問いに野梨子はわずかに微笑んだ。
「美童によばれましたの。」
それ以上、何も喋らなかった。
野梨子はしばらく美童達と談笑した後、風呂の支度をする、と自分の部屋に戻った。
といっても清四郎達と野梨子の部屋は襖一枚へだてただけである。
その間仕切りとなる襖に、自分の頭が押し付けられ、髪がざりざりと音を立てるのを
清四郎は聞いた。
美童の迫る唇に清四郎は顔を背けはしたものの、下手に抵抗して争う音を野梨子に
聞かれたくなかったので抗いはしなかった。
抵抗はしなかったものの、堅くリベンジを清四郎は誓った。
ねめねめと動く美童の舌。
この淫らな舌は快楽に精通している。
彼が男だということを除けば、なかなか悪くないと、清四郎は冷静になろうと
努めた。もっともその一点がかなり不愉快で、不気味であるために、
込み上げる吐き気を堪えるのにかなりの努力を要した。
金髪の波にむせ返りながら、狂った友人の顔を盗み見る。
と、青い瞳がこちらを向いた。射るような視線に清四郎は内心たじろぐ。
「清四郎。」
「……なんですか……ん、む」
まるで溶け出したソフトクリームか何かのように、
美童は清四郎の肩を掴み、彼の口を執拗に舐める。
獰猛な舌が再び清四郎の口中に侵入し、獲物を求めて這いずり回る。
押しつけられた襖ががたっと音を立て、清四郎はどきりとする。
野梨子。どうぞ、気づいてくれるな。
しかし、白い男の手があろうことか自分の浴衣の袷から侵入し、裸の皮膚に触れてきた時、
清四郎の我慢は限界に達した。
背筋に虫酸が走るような、不快感を感じ、美童の体を押しのけようとするも、
反対に押し倒され、ドン・ファンが耳元で囁きかける。
「抵抗しちゃだめだよ。清四郎は僕の奴隷なんだから。そうだろ。」
そして。
美童の手が清四郎自身を探り当てた。
嫌悪感が雪崩のように押し寄せ、清四郎は思わず、美童を突き飛ばしていた。
投げ飛ばされた美童は襖に当たり、どぉん!と音を立てる。
清四郎ははっとした。隣の部屋はシンとしている。野梨子は風呂に立ったらしい。
美童は口元についた唾液を拭うと呟いた。
「あれぇ?野梨子、風呂かぁ。今の時間てまだ誰か入ってるんじゃないかな。」
清四郎も又、美童に背を向けて己の口をぬぐった。
「もう入浴時間は終わりのはずですよ。」
「確か曽我原さんが遅くに入るって言ってたような。野梨子、大丈夫かなあ。」
少しも心配してないような口ぶりで美童はつぶやく。
本当に野梨子を愛しているのか、と清四郎は怒りにかられながら風呂場に走った。
脱衣所に入ると、きちんとたたまれた女物が入った脱衣篭と、慌てて脱いだと
思われる男物が入った篭が置かれていた。
風呂場の引き戸を勢いよく開けると、仁王立ちしていた曽我原が振り返った。
血走った目で肩を怒らせている。あわてて下腹部を手拭いで隠したのは、
欲望が悲しい形になっていたからか。
清四郎は無言で曽我原を押しのけた。
「外に出てください」
怒りで声が震える。
目の前に洗い場でしゃがんでいる、黒いおかっぱ頭が現れた。
盥の中に手拭いが沈んでいる。
清四郎は気づいていた。
白い背中から小さな尻にかけて、薄く消えかかった泡がついている。
野梨子は胸を両手でかかえるようにして、清四郎を見た。
首筋から胸元にも石鹸の白い泡がついていた。
腕にも、そして桃色がかった太腿にも、そして黒い三角地帯。
野梨子はやっと気がついて、片手で股の間を隠す。
しかし、その手は置くというよりもVゾーンに差し込まれたような、
感じであった。
そして、片手が移動した時に、薄く色付いた乳首がちらりと見えた。
布団の中で清四郎は眠りにつこうと努力している。
しかし、傍らの主のいない布団が彼の睡眠を妨げていた。
隣の野梨子の部屋にはまだ灯りがつき、わずかに開いた襖の隙間から光が
差し込んでいる。暗闇となった清四郎達の部屋に一本の道筋をつけていた。
清四郎は寝返りを打つ。
隣の部屋からは恋人達の会話がぼそぼそと聞こえてきていた。
「いや。そんなこと言わせないでくださいな、美童……!」
か細く抵抗する声が聞こえる。思わず起き上がった清四郎の耳に飛び込んで
きたのは悪魔の囁き声だった。
「……教えてよ。曽我原が風呂に入ってきた時、何をしてたのさ。」
「それは、体を洗っていたんですわ。」
「そう……身体の隅々まで洗った?きれいに?一番汚れているところも、
ちゃんと洗った?」
「……ぃやっ……!」
襖の間から羞恥で身を震わし、顔を両手で覆う野梨子が見えた。
清四郎は息を飲んだ。
浴衣姿の野梨子はこれも浴衣の美童に抱えられるようにして座っている。
美童が、背後から野梨子の顔を覆っている両手をはずす。
額も頬も赤く染めた少女の潤んだ唇が顔を出す。
美童はいきなり野梨子の黒髪をかきあげ、可愛い耳を出すと、舌を出して
べろんと舐めた。
はっ、とも、あっともつかない声を出した野梨子をじぃっと見つめる。
ふぅん、と呟くと、今度は野梨子の首筋を。
べろん。
あっ、ひっ。少女は悲しげな声を出して、震えた。
「野梨子、舌を出して。」
ためらいがちに野梨子は小さく舌を出す。赤く愛らしいそれは、しかし
ぬめぬめと光っている。
美童は自分も赤い舌をぺろりと突き出した。
空中で舌と舌がからみ合う。初めは挨拶するように、やがて激しく交歓しあう。
唇が触れあうことなく、交わされるそれは、口づけのように愛情を感じさせず、
ただ、欲望のみが見え隠れする。
二人の発する、ねちゃねちゃという音が、知らず清四郎を高めていく。
「ああ、美童……。」
堪らず野梨子がねだる声を出し、美童の膝に手をかける。
「何。」
「ああ、お願い……。」
美童は冷たい瞳でせせら笑う。
「してほしいの、あれ?」
野梨子は羞恥の為にうつむいている。己の人さし指の半ばをくわえながら
コクンとうなずく。
「嫌だよ。汚い野梨子のなんて。どうせちゃんと洗ってないんだろ。」
瞳に涙を浮かべながらかむりを振る。
「洗ったの、ちゃんと。じゃあ、先に見せてよ。」
ため息が聞こえた。
自分の手の中で欲望が暴れている。清四郎はそれをなだめることも適わず、
かと言って、今目の前で繰り広げられている光景から目を反らすことも、
悲しいかな、できなかった。
襖の向こうの野梨子は今、こちらに向かって膝を立てている。
浴衣の裾が腰までめくれていた。だが膝は堅く閉じられている。
美童が何か言った。野梨子がぴくりとする。
堅く閉じられていた城門が、少しずつ少しずつ清四郎に向かって開かれつつ
あった。
野梨子は下着をつけていなかった。
初めて目にする彼女の秘部は柔らかい色をして、濡れて光っていた。隠すべき体毛はごく
薄いようだった。そこは清らかな佇まいをしている。
美童が指で野梨子を押し広げる。何かの検査のように襞をめくり、
突起をつまみ、親指で押している。そうこうする内に野梨子の内部から、
熱い液体がどくどくと、かわいそうな位に流れ出しているのがわかった。
「ちゃんと教えてよ。どういう風に洗ったの」
細い指が裂け目をそっとなぞった。羽毛で撫でるような、指の動きを美童は
鼻で笑う。
「そんな洗い方じゃ、汚れは落ちないな」
指の動きがわずかに大胆になった。
「まだまだだね。ちゃんと全部、」
指は先端を往復した。
「奥の方まで洗わなくちゃ」
第二関節がずぶりと入る。
「そうそう、そんな感じ。もっと早く、リズミカルに」
指は野梨子の感じる部分を、上に下に、右に左に、出して、入れて、出して、
入れて。白い顎が跳ね上がる。吐息のリズムが乱れてきた。
「ぁぁぁっ、ぁぁっ、ぁっ、びどう……」
「いやらしいなぁ、野梨子。それじゃぁ、まるで×××ーしてるみたいだよ。」
もう野梨子に否定する力は残っていない。苦悶と悦楽が混ざり合った表情で
美童を求める。
「ぁっ、びどう、ああっ、もう、私……」
「何してほしいの?」
美童の指が野梨子の濡れて光った指を押しのけて、彼女の感じている部分を
かきむしった。
「ぁあっ、あっ、いやっ、びどう、おねがい、口で……!」
野梨子の白い脚と脚の間に美童が顔を埋めた。野梨子が歓喜の声を(懸命に
押し殺していたが)あげる。
「ぁぁっ!ああ、ああ、いいですわ!美童、美童!ああっ!」
美童が野梨子の脚を限界まで押し広げ、野梨子は美童の頭をかき抱いた。
「ああ、美童、美童、美童、美童―――」
少女の身体に戦慄にも似た震えが走り、唇から唾液が滴り落ちた。
太腿はびくびくと痙攣し、男の頭を締め上げる。
達した部分を執拗に舐められて、波打ちのたうちまわる野梨子の体を、
部屋から逃げ出していた清四郎は見る事ができなかった。
■■■つづく■■■
>雨
あああああぁぁ───野梨子ーー
まったくさきの読めない展開でつね。
目が離せません。
いきなり・・・
キリが無いのでもうやめますがピッタリ??
みなさまこんばんわ。 やってまいりました 清洲さん演芸会。
本日のお客様は、日本を代表する古典芸能清四郎回しの第一人者、野梨子娘でございます。
皆様、拍手でお迎えください。
>雨
ああー待ってました。続きが読めて嬉しい(つД`)
鬼畜な展開から目が離せません。土曜の朝から
釘づけになってしまった(w
いかにして冒頭部につながるのか楽しみにしています。
新たに連載させて下さい。
清×野の予定です。
カップリングが嫌いな方、暗い話が嫌いな方は、スルーお願いします。
自分の名に、初めに疑問を抱いたのは、一体いつであっただろう。
或いは疑問など抱かなければ、あの頃のように笑えていたのかもしれない。
彼女の傍を歩くことを、赦されていたのかもしれない。
しかしそれはもう――遠い夢でしかなかった。
*****
ああ、まただ。
野梨子はふと歩みを止め、自分の右側を歩く幼馴染を見上げた。
その視線に気付いたのか、清四郎も足を止め、己の肩ほどしか身丈のない少女を見下ろす。
「どうかしましたか?」
「……いいえ」
野梨子は頭を振ると、鞄を持ちなおして歩き出した。
纏わり付くような熱気に意識が遠のきそうになる。
八月も末になって漸く訪れた今年の夏は、痩身の野梨子には酷く堪えた。
「ちゃんと食べているんですか。今日の昼だって殆ど水しか飲まなかったでしょう。
そんなことではいつか倒れてしまいますよ。少しは悠理を見習って下さい」
清四郎が諭すように話し掛ける。
野梨子は足元で揺らぐ陽炎をぼんやりと眺めながら、上の空で頷いた。
カツ、カツと革靴の底が地面を踏みつける音が耳にやけに響く。
その音が次第に大きくなり、野梨子の脳内を支配し始めた。
カツ、カツ……カツ……カツ……
そして二人の靴音がまた同じリズムで刻まれる。
その音に耐え切れなくなった野梨子は、ふうっと意識を失った。
蜩が鳴いている。
清四郎は団扇を扇いでいた手を止め、白鹿邸の庭に聳える大木を眺めた。
声の主は遅れて来た夏を取り戻すことも出来ずに、無念な気持ちのまま羽を震わせているのだろうか。
それとも、これも運命だと、或るがままを受け入れているのだろうか。
丁度、僕と彼女のように。
其処まで考えて、清四郎はふっと自嘲の笑みを零した。
考えても、仕方のないことだ。それにもう、終わったことなのだ……始まりもせずに。
始まることすら、許されずに。
清四郎は青白い顔で床に就いている幼馴染に、再び柔らかい風を送り出した。
野梨子は目覚めるのが怖いとでもいうように、目蓋を閉じたままだ。
「清四郎さん?」
静かに障子が開く。炎暑でもきっちりと着物を羽織った野梨子の母が、遠慮がちに顔を覗かせた。
「まだ目覚めませんよ。このところ食も細かったですし、ただの貧血だとは思いますから、
心配は要りません」
そう告げながら、清四郎は野梨子の母が本当に心配しているのはそういう事ではないのだと、
理解していた。
野梨子に良く似た黒目がちの大きな瞳が自分を凝眸ているのに耐え切れなくなった清四郎は、
思わず母から視線を逸らせる。
「後は私が面倒を見ますから……」
「……そうですか」
野梨子の枕元に団扇をそっと置き、母と入れ違いに部屋を出ようと敷居を跨ぐ。
擦れ違いざま、野梨子の母が俯いたまま小さく言った。
「……ごめんなさいね」
振り返ることすら出来ない清四郎の背後で、静かに障子が閉められた。
ベットに腰掛けながら、壁に凭れる。投げ出していた右足を立て、其処に右肘を付いた。
その手で落ちて来た前髪を掻き上げながら、清四郎は傍らに置いてあった本を遠くへと放り投げた。
何を読んでも、頭に入ってはこない。眼は文字を追っているのだが、
その文字が脳内で意味を成さないのだ。
アリアが静寂を切り裂くように流れた。
着信音だけで誰からのものかは解ったが、清四郎は携帯を手に取ろうとはしなかった。
着信を報せるランプが点滅するのを、清四郎は遠く眺めていた。
もし今この電話を取って、一体何を話せばよいのか。
大丈夫なのかと問えば良いのかもしれない。だが、その後は?
以前は彼女と何を話していたのか、どうやって笑い合っていたのか――それすらも思い出せない。
まるで幼い頃の記憶のように曖昧で、それを経験したのが果たして自分であったのだろうかと自問したくなる。
ぷつっと音が途切れた。
途切れてもなお、アリアの旋律が清四郎の耳朶を揺らしていた。
小波のような笑い声が、ドアの向こうから溢れている。
清四郎は把手に掛けていた手を止めた。
「学園祭も最後だしな、思いっきり派手に行こうぜ」
「あんたは最後だとは限らないでしょう」
「なんだとお、あたいだって今年こそ卒業するわい」
可憐の言葉に、悠理が食って掛かっている。
何も変わらない。いつもと同じ、放課後の風景。
きっと生徒会室の窓からは溢れんばかりの西日が刺し込んでいて、
白すぎる壁を柔らかく色づけているだろう。
きっと部屋の中央に鎮座する一枚板のテーブルには自分以外のメンバーが腰掛け、
他愛もない話で笑い合っているだろう。
そんな当たり前の毎日が、今の清四郎には酷く辛楚であった。
清四郎はぐっと把手を押し開けた。
「あ、遅かったな清四郎!」
悠理が大福を口に咥えたまま、にかっと笑った。
清四郎は傍らの棚に鞄を置くと、年代ものの椅子を引き、腰を下ろした。
野梨子がすっと席を立ち、給湯室へと足を運ぶ。
程なくしてアイスコーヒーが運ばれて来た。野梨子は清四郎と視線を合わせないまま、
彼の前に静かにグラスを置いた。
「ありがとう」
掠れた声でそう言うと、野梨子は小さく頷き、すっと清四郎から離れた。
そしてそのまま置いてあった鞄を手にすると、琴の稽古があるからと暇を告げる。
静かに扉が閉められる。
その後ろ姿を眺めていた可憐が清四郎に訊ねた。
「何かあったの?」
他のメンバーも清四郎の返事を待っている。
八つの瞳に射抜かれて、清四郎は組み合わせた指の隙間に視線を落とした。
「何もありませんよ。昨日も暑さにやられて倒れましたし、
身体が本調子じゃないだけですよ」
「清四郎も? 清四郎もこのところおかしいじゃないか」
美童が問う。
「……ええ、僕もこの暑さでバテ気味ですよ。全く、今年の天候は一体どうなって――」
「僕が訊きたいのは、そんな返事じゃないよ。二人の間になにかあったのかって訊いてるんだよ」
苛立ち混じりの問い掛けをした美童を真っ直ぐと見つめ返すと、清四郎は抑揚のない口調で言った。
「なにもありませんよ。元より、僕等の間には、なにも生まれようがないんです」
そう言った清四郎の唇は、僅かに震えていた。
運悪く、スクランブル交差点の百メートル手前で信号が赤に切り替わった。
魅録は舌打ちをしながらブレーキを掛けた。
背後の悠理がガンガンとメットをぶつけてくる。魅録はシェードを上げ、軽く振り返りながら言った。
「なんだ?」
喧騒に飲み込まれて声が聞き取りづらかったのか、悠理もシェードを上げながら怒鳴るように言う。
「野梨子と清四郎のことだけどさ。やっぱり、変だと思わないか?」
その話題か。魅録は首を元に戻しながら、バックミラー越しに悠理に視線を投げ掛けた。
「喧嘩でもしたんじゃねえのか?」
「今回はいつもの痴話喧嘩とはちょっと違うんじゃないのかな。
なんか余所余所しいって言うかさ、気まずい雰囲気だったじゃないか」
「そうだけど……あの二人のことだ、放っておいても大丈夫だろ」
横断歩道の信号が点滅している。魅録はシェードを下ろし、ハンドルに手を伸ばした。
「信号変わるぞ。しっかり捕まってろ」
その言葉を聞いた悠理が、魅録の腰に回していた腕に力を込める。
(本当に……そうなら良いんだけどな)
漠然とした不安が悠理の胸を過ぎる。
そしてそれは、杞憂ではなかったのだ。
<続きます>
>Deep River
パソ立ち上げたら新連載が。ラッキー!
意味深な始まりですね。清四郎の名前に関係ある、ということは
彼の出生の秘密に関わってくるのでしょうか。
ドキドキしながら続き待ってます。
>>291のつづきです。
清四郎は腕の中の悠理を抱き締めたまま、仄かに漂う匂いと重なり合った皮膚から
伝わってくる体温を嗅ぎ取るのに夢中になっていた。
時々、濃く深いながらも点でしかつながらないキスや愛撫が物足りなく感じられる。
ただ単純に抱き合うことが、面でつながるがゆえに、言いようのない安堵をもたらす。
「……何を、思い出したのか、教えて欲しいんだけど」
しばらくじっとしていた悠理が、何か思いついたかのように清四郎を見上げ、
両腕をその首に絡める。
薄茶色の瞳が漆黒の瞳を射るように見据える。
ごまかしの効かない鋭さに、真面目に答える。
「あなたが、『とーちゃんやかーちゃんのせいで、お前こんなになっちゃって』と
言って、疲れきっていた僕の頭を撫でてくれたことです」
悠理の顔が一瞬のうちに赤く染まる。
あの時、偶然除いた部屋で清四郎を見つけて、何故か胸が痛くなった自分を思い出す。
何かに導かれるように室内に入り、寝顔を眺め、手が自然に触れていたのだ。
思わずうつむく悠理。
清四郎は、淡々と続ける。
「あれだけひどいことをした僕に、あなたはとても優しかった。本当に大切なものが
何かわかったのに、どうしたらいいかわからなくて、すべてが遅すぎる気がしました。
無理に忘れようとしましたが、完全に忘れることはできませ……」
悠理は、左手で清四郎の唇に触れる。
最後まで言わなくても、わかる。
遠回りはしたけど、今ここに二人の想いは一つになる。
静から動へ。
留まることのない想いが、堰を切って流れ出す。
唇が亜麻色の髪へ、耳朶へ、うなじへ、鎖骨へ、そしてその先へと這う。
手が両頬を、両のふくらみを、背中を、腰を、そしてその先をも弄る。
絶え間なく続くそれに、僅かに残った理性が嬌声を押しとどめる。
だが、漏れる吐息は充分に甘やかで、淫らで、清四郎を狂わせる。
…声が聞きたい。
腕の中の人にも、自分と同じくらい、乱れて欲しい…。
急に、いつもより濃く、熱く、激しくなっていった愛撫に、悠理の、最後に残った
一枚のベールがはらりと落ちる。
身体中を駆け巡る快感に、抗う術はなく。
「…あっ、ああ…!!」
恍惚感に身を捩らせ、シーツの海でもがく悠理。
相手を求めて、加速度を増していく清四郎。
迸る官能のうねりに、二人は、身を委ねる。
次の日、二人は、部室で今か今かと待ち構えていた倶楽部の面々に取り囲まれた。
根掘り葉掘り聞かれ、時には割に正直に答えつつ、ほとんどは適当に流しておいた。
倶楽部の面々も心得たもので、はぐらかされたとわかっていてもしつこくつっこまない。粋でないことは、本意ではない。
だが、二人が去った後に、自然と出てくるぼやきだけは致し方なかった。
「あの時の、俺らの心配はなんだったんだろうな」
「ほんと、私、どうなることかものすごく心配でしたのに」
「でも、いい感じだよ。まだちょっと信じられないけど」
「確かにね。…あたしも、恋がしたい」
The End
>清×悠
落ち着いたムードの清×悠が新鮮でした。乙です!
>KISS
このまま可憐とくっついたところが見たいかも・・・
>Deep River
コンセプトが新しい!何が清四郎を悩ませているんだろう・・・
>清×悠
控えめなのに二人の熱が伝わってくるようですごく好きでした。
乙です。よかったらまた書いて下さい。
>Deep River
いいですねえ。名に疑問ってことは『清四郎』の『四』の謎に迫るんでしょうか?
今後の展開がたのしみです。
「夏の終わり」「秘密」の続きをupします。
3レスです。
悠×野を中心に、ちょっと黒めです。
お嫌いな方は、スルーお願いします。
>279.280の続き
ママからもらったSellierの文字盤に目を落とす。
待ち合わせの時間から、金色の長針が一周していた。
「遅いわね、あいつら」
「・・・清四郎なら来ないぜ」
向かいで魅録が言った。
手にしたブルームーンに口をつけないまま、音を立てないようにテーブルに置く。
「あたしは、あいつらって言ったのよ」
優に三人は掛けられそうな黒い革張りのソファに魅録が背を預けると、
沈み込んだ体に落とされた照明が縞をつくった。
フロアから這い上る大小の波のような振動、空気を揺るがす旋律。
「どっちでもいいさ。それにしても、美童も遅いよな」
「あんた、気持ち悪くないの?」
「何が?」
あたしは、許されないことをしたのに。
こうして二人で同じ空気を吸うことは、もうないと思っていたのに。
清四郎への恋情を殺したくて、魅録と寝たあたしは。
魅録の想いを利用した。
幾重にも裏切りを重ね、堕ちていくだけだと思ってた。
――だから。
掬いあげてくれた美童の手に夢中で縋った。
真っ白な繭にくるまれるように守られ続ける野梨子が、
太陽さえも手に入れたように輝く悠理が、憎くてたまらなかった。
巣を張る蜘蛛のようにすべてを絡めとりたい欲望を抑えることもできなくて。
何もかも壊してしまいたいのに、何も失いたくない。
あたしの弱さが。
「もう終わったことだろ。それに、いまの俺には悠理がいる」
幸福そうに魅録が笑う。
閉じられた瞼の奥に、もうあたしはいないだろう。
そう、過去の鎖は断ち切られたのだ。
いまのあたしにも、優しい恋人がいる。
夢を叶えてくれた。
愛し、愛されることを教えてくれた。
「よお、遅いぞ」
「ごめん、ごめん」
不揃いな足音が響く。
注がれる賛嘆の視線を意に介さず、彼らが歩みよってくる。
魅録が待ちかねたように悠理に腕を伸ばした。
「ちょっと三人で遊んでたんだ」
美童の言い訳に、悠理と野梨子がそろって微笑んだ。
同じ笑みを浮かべる美童に、蕩かされるように心が温かくなる。
まるで、遊びに夢中になって時間を忘れてしまった子供のよう。
やわらかく頬を包みこむ手がこんなにも愛おしい。
泣きたくなるほど嬉しいことなんて知らなかった。
あたしには、この手があればそれだけでいい。
守ってくれる繭も、太陽もいらない。
「清四郎は来てないんだな」
つぶやいて、悠理は魅録の隣に滑り込んだ。
その寸前、細い指が野梨子の手のひらから名残惜しげに離れたように見えた。
たたずむ野梨子の表情が暗い光のなかでわずかに歪んでいた。
美童が、笑っていた。
視界が揺らいだ。
濁ったあたしの目に映ったものは。
頬に感じる温度がいつもと違うのは。
――きっと、気のせいなんかじゃない。
(1)を入れるのを忘れてました。スイマセン。
魅録→可憐→清四郎→野梨子→悠理→魅録がベースでした。
これでオワリです。
お付き合い下さった方、どうもありがとうございました。
>目眩
美童は遊んでしまったのか、三人で。おいしいヤシめ(w
しかし、
>魅録→可憐→清四郎→野梨子→悠理→魅録がベースでした。
ちょっと受けました(w
いつも仲良し。親友カップル
hakusikanoriko さん(秘数2)と syotikubaimiroku くん(秘数4) ふたりの恋愛を占いました。
なんでも話せて、いっしょに居るととても落ち着く、そんな二人です。趣味や好み、
性格や容姿も似ていて、「兄妹みたい」周りからも言われます。
相手の喜びや苦しみをわかちあえるカップルでしょう。
■片思いの場合−−−効果的なアプローチは?
あなたから積極的にアピールするのは避けたほうがいいでしょう。
自然に少しずつ仲良くなるのが◎。
相手が落ち込んでいるときにそっと元気づけてあげてください。
少し仲良くなってきたら、プライベートなことや悩みを相手に打ち明けてみましょう。ただし、深刻すぎる話はダメです。
■片思いの場合−−−交際のきっかけは?
美しい環境で、二人っきりのときをねらえば、恋の進展が期待できそう。
あなたが好きな人からして欲しいアプローチ方法を考えれば、きっとわかるはず。
■長続きする交際の秘訣は?
似た者同士なので、ついズルズルとした交際になりそうです。
初めは楽しかったデートもだんだんマンネリ化が心配です。
友達のように付き合うのもいいですが、男と女としての緊張感も必要。
たまには違ったプランのデートで相手を驚かせて。
女性は、メイクや服装をガラリと変えてドキッ!とさせてみては。
フレッシュな演出がベター。
ttp://www.119ch.com/kansai/cgi-bin/uranai/roman.cgi 微妙・・・?w
「──そしたらね、言ったの」「何て?」
「『あなたの事だけ考えてましたよ、可憐』」
ドアノブに手をかけたまま、野梨子の動きが止まった。
可憐の声が頭の中でリフレインする。
動けない。部室の中、2人の会話は続いていた。
「抱きしめられて、何だか嘘みたいだった。信じられなかったわ」「…うん」
「あたしの髪を梳いて、頬に触れて…」
次の言葉を聞く前に、野梨子は走り出していた。
廊下は、走り去る廊下は、とても遠い。聞きたくない。
「キス。しようとしたのよ?」可憐は寂しげに薄く笑った。
「あいつの事大好きだけど、びっくりしちゃった。あたしにキスしようとするなんて。
唇に、キスなんて…」
ふぅ。
「どれだけ傷つくと思ってんのかしらね」
美童を見つめて、笑う。
笑う、つもりなのに。
(あれ…?)
握った手の甲も、重なる美童の細い手も、彼女の涙で濡れていた。
「いいよ、可憐。全部吐き出しちゃいなよ。僕に全部」
押さえつけても漏れる涙の辛さに耐え切れず、可憐は溢れる切なさを瞳に任せた。
熱くて、苦い。でもどこか甘い香りを秘めている。
「ごめん。今日が最後。今日だけだから…」
彼女の隙を突くようなことは美童には出来なかった。
彼もまた、彼女と同じ言葉を唱え続ける。
(今日だけだから…)
少し経って、悠理と魅録が同時に部屋に入ってきた。
「つっかれた〜」「あれ、野梨子は?」
「野梨子?」
「さっきドアの前に立ってたの、向こうの校舎から見えたよなぁ」「あぁ」
(さっきの話、聞いてた…?)
可憐でなく美童が、弾かれたように部屋を飛び出した。
わからない。自分の気持ちが。頭の中が。
──わからない?
違う。幼い頃から淡く心を覆っていた想い。
いつもいつもその、はっきり見えない色を抱いてきた。
いま、わかった事。本当はとっくに気が付いていた。
ただ名前だけがわからなかった。今はただ駆けてゆくだけ。
自分が、そばにいたいから。
余計辛いだけでも、そばにいないことが、出来ない。
視線の先に彼が見えた。足がいっそう速くなる。
そう。
この気持ちの名を──
「野梨子!」
いきなり名を呼ばれて振り向くと金髪の友人が立っていた。
「可憐と清四郎、キスしてないよ。…なんにも、なかったよ」
野梨子は目を見開いた。青い瞳がこちらを見つめている。
(清四郎がずっと大切に想ってるのは、野梨子だけだよ。僕が可憐を想うように)
野梨子の心に言い知れぬ安堵が広がる。
「じゃ明日ね」背を向けた後、すぐ振り返って
「古典、ありがと」やわらかく微笑んで、彼は戻っていった。
まだ意味が良く飲み込めない。…でも。
最近の可憐の態度が蘇る。あの時も、あの時も、あの時も。
あっけないほど簡単に紐が解けた。
(どうして、気が付かなかったのだろう)
そして部室での会話。美童の言葉。
これまで見えなかったものが一転して自分に直面する。
驚きよりも、戸惑いが多いのが本音だった。
そして。
紅い唇から深い息が吐き出される。
部屋の前から走って、美童が追いかけてくるまで自分の
中を占めていたもの。
焦燥感、嫉妬、独占欲。 今まで自分がそばにいて間違いなかった。
何も気にかけることはなかった。
それが当たり前でなくなったとしたら…?
考えたこともない事実が目の前に突きつけられた時、当然のように
彼女の中に湧き上がった気持ち。
はっきり色づき艶めいたその想い。
そうだ。
(私は、清四郎が、好き)
自分の中で1つずつ単語を唱える。同時に大きな瞳を閉じながら。
彼と可憐の間に何もなかったとわかった今も、想いはしっかり
縁取られて浮かび上がっていた。
でも心を落ち着かせたいのと、可憐のことを思う気持ちが半々で、
野梨子は清四郎を追いかけずに1人で帰ることに決めた。
続きます。
このふたりもやってみますた
ケンカもするけど、仲良しカップル
kenbisiyuuri さん(秘数5)と kikumasamuneseisirou くん(秘数2) ふたりの恋愛を占いました。
仲がいいときと、悪いときの差が激しくて、ケンカの多い恋になりそうなカップルです。
さっきまでのいい雰囲気が急変、争いごとになってしまったり・・・。
波のある刺激的なお付き合いになるでしょう。
■片思いの場合−−−効果的なアプローチは?
大好きな相手に、ついそっけない態度をとったり、つっぱったり・・・なんてことはありませんか?
恋を進めるためには、さりげない優しさで相手の力になってあげましょう。
■片思いの場合−−−交際のきっかけは?
気持ちを伝えるには、手紙とかきちんとした感じは避けて、冗談っぽく「好き!」って伝えてみましょう。
短いEメールでも○。そのほうが受け入れてもらいやすいでしょう。
■長続きする交際の秘訣は?
小さなことでも、かくし事や嘘は二人を遠ざけます。なんでも話し合ってお互いの信頼感を深めあいましょう。
そしていつも自分をみがく努力は忘れずに。デートはきちんと計画を立て、健康的な場所で。お金を使いすぎないように注意しましょう。
ケンカは二人にとって日常茶飯事ですが、必ずルールを守って。いつまでもこだわりつづけるのはバツ。
うん、それっぽい!
お金を使いすぎないように注意しましょう。>それは無理
ちょっと一場面思いついちゃったので、こっそりうpしてみます。
「魅×野」なのですが、魅録は名前しか登場しません。
山場も動きもありません。ごめんなさい。
廊下を曲がったところで、生徒会室から出て来たと思しき後ろ姿が見えた。
魅録だ。声をかける間もなく、魅録は向こうの角に姿を消した。
『友人の多いやつは忙しいことで』
清四郎は彼独特の多少皮肉めいた笑顔を口元に浮かべながら、
生徒会室のドアを開けた。まったく、何の気なしに。
清四郎はどちらかというと勘が鋭いほうだ。
いつもと同じ生徒会室の、いつもと微妙に違う、
例えるなら湿度がほんの数%高くなっているような雰囲気は、
彼が足を室内に踏み入れるのを躊躇させるのに充分だった。
室内には、ひとり。清四郎が仲間の中でいちばんよく知る人物だった。
優しく、強く、いつもまっすぐ前を見ている黒目がちの瞳をもつ、
小柄で華奢な幼馴染み。
しかし、ドアを開けた瞬間の野梨子は、
清四郎が今まで見たことのない表情を、その顔に浮かべていた。
これが野梨子でなければ、似たような表情を見たことがある気もする。
別の場所に置いてきた心を遠くから眺めているような、
ぼんやりと惚けた、とにかく、知らない顔をしていた。
良くも悪くも常に透明な印象の野梨子に、その時、
確かに艶やかな色がついているのを見た。
美しくて、息をのんだ。それは清四郎にとって、初めての経験だった。
一瞬、いや一瞬よりもっと短い時間ののち、
野梨子の表情はすでに清四郎がよく知るものに戻っていた。
高く感じた湿度も、元に戻ったように感じた。
清四郎はようやく、いつもの自分の席に腰掛けた。
「清四郎、おつかれさま。コーヒー飲みますでしょ?
今日のは美味しいんですわよ」
答えを待たずに野梨子はカップを取りに向かう。
その後ろ姿に問いかけようとして、開きかけた唇を結ぶ。…何を問う?
『魅録と、なにかあったんですか?』
聞いてどうするんだろう。あの顔、なにかあったと断定するには充分だ。
伊達に長い間隣にいたわけじゃない。いつもいつも見ていたんだから。
違う、『なにか』ではなく、『なにが』あったのかが知りたいのだ。
『魅録と、なにがあったんですか?』
聞いてどうするんだろう。あったらどうなんだ。なぜ知りたいんだ。
自らに確認してみる。野梨子は、大事な幼馴染み。
魅録は、一番の親友。ふたりの間になら、お互いを傷つけないなら、
なにがあっても文句などない。はずだ。だけど。
曖昧な、嫉妬ともいえないかすかな、これは不安という感情だったか…。
野梨子は、やっと清四郎のカップを手に取ったところだ。
清四郎は、生徒会室に入ってからまだ一言も発していない。
「悠理ったら、追々試ですってよ。清四郎、日本史はもう大丈夫だと思って、
手を抜きましたわね。前回よかったから今回もって訳にはいかな……」
野梨子は話しながらポットの湯で丁寧にカップを温め、
すでに落としきって保温してあったコーヒーを注ぐ。
清四郎はその手元を見ていた。話は、聞こえてはいるが、聞いてはいない。
不安? 何が不安? 野梨子が変わることが?
いつものように振舞っているのにも関わらず、
無意識のうちに自分に見せない顔をもつようになったことが?
これまでぴったりくっついていた影が、ぴりぴりとはがれていくような感覚。
…ああ、分かった。この感じは。これは、自分は―
ふっ、と、知った匂いが清四郎の思考を止めた。
赤い箱のマルボロ。煙草は吸わないから、他の匂いなら銘柄までは
分からなかっただろう。親友の匂いだった。
それはコーヒーを供するためにいつのまにかすぐそばに来ていた
幼馴染みの切り揃えた黒髪から薄く漂っていた。
「はい、お待たせしました」
野梨子が笑顔を見せる。いつもの笑顔だ。少なくとも自分に見せる笑顔は。
カップを置いた白い手を取りそうになって、右手で自らの左手を握る。
「ありがとう」
いつもの声が出ただろうか。言葉より雄弁な答えが鼻腔をくすぐる。
魅録は、匂いが移るほど野梨子の近くにいた。
魅録は、匂いが移るほど長い時間、野梨子の近くにいた。
コーヒーの香りは、まったくしない。
「野梨子、」
自然と言葉が出ていた。驚くほど穏やかな声だった。続く問いかけも、
今までのまとまらない思考からは思いもよらないものだった。
「幸せですか?」
いきなりの妙な質問だった。
にも関わらず、一瞬の躊躇もなく、一点の曇りもない瞳で、野梨子は答えた。
「幸せですわ。びっくりするくらいに」
まっすぐ清四郎を見ている。再び、ちょっとだけ、あの知らない顔をした。
「それなら、いいんです」
いつもの放課後だと思っていたのに。寂しいのは、胸が痛くなるのは、
妹を取られる兄の気分だからだ。なんて、誤魔化してもいいですかね。
せめて、この想いが例のあれだということを確かめるのは、
やめにしてもいいですよね。
清四郎サイドこれでオワリです。
お付き合いありがとうございました。お目汚し申し訳ございません。
>two minites
うれしいわ。魅×野なんて、とってもうれしいわ。
無駄な言葉を発しないで匂いで分かるって、清四郎さん、粋だわ。
で、次は誰の視点なんでしょう?
>two minutes
魅録ってば、何をしたのでしょう!?清四郎じゃなくても問い詰めたいw
ラブシーンそのまんま目撃より、部屋から出て行った魅録と、
髪についた煙草の匂いに・・・萌え
>two minutes
萌えー!
ツボにきますた。
清四郎視点の魅×野イイですね・・・
>two minutes
萌え萌え萌え!くーっ!
>two minutes
何度読んでも萌える!
すごい好きです、この話し…
他サイドの話を激しく心待ちにしております。
妄想スレ16のここまでの目録を作ってみました。参考までにドゾ。
<10万ヒットリク作品>
>16 夏の魚 (魅×悠) 純愛R
>40 影絵 (清×野) 純愛ほのぼの
>54 ニューヨーク (美×野) 不倫
>61 君の左はぼくの右 (清×野) 純愛ほのぼの
>98 清×野 in 生徒会室 純愛ほのぼのR
>157 New Arrival (魅×野) 夫婦出産
<連載・リレー>
>28 有閑キャッツアイ編 番外1 (リレー) 純愛胸イタ
>35 想い出がいっぱい編 (リレー・清×可) 純愛胸イタ
>132 Beginning is a trifling cause(清×野) 純愛ほのぼの
>272 KISS(清×野×可×美) 純愛胸イタ
>304 雨がボクを狂わせるので(美×清×野) 危険な……R
>315 Deep River(清×野) どろどろになりそう
<短編>
>146 ■紫色の衝撃■<堕ちた清四郎> コメディ
>166 妄想◎回転寿司 (清×野) コメディ
>177 とうむぎ畑でつかまえて (魅×可) コメディR
>261 夏の終わり(悠×野) 危険な……
>279 秘密 (悠×野×美) 危険な……
>321 清×悠 純愛ほのぼのR
>329 目眩 (悠×野×美×可) 危険な……
>342 two minutes(side-S-1) (魅×野) 純愛胸イタ
>354
グッジョブ!
こうゆうのがたまにあるといいでつよね♪乙。
>two minutes
野梨子の髪から香る魅録の煙草に萌え…
キット野梨子はすっごくきれいなんだろうなぁ。
ところが。
校門を横切ろうとした彼女の肩を叩いたのは他でもない清四郎だった。
「こちらへ来るのが見えたので、待っていたんですよ。
クラスの用事が案外早く済んでしまって、帰ることにしたんです」
振り返った野梨子の一瞬の表情を彼は見てしまった。
嬉しさと、悲しさと、切なさの入り混じった顔。 そして今にも泣きそうな。
次の瞬間そこにはいつもの野梨子がいた。
「あ、あらそうでしたの。私も今日は母様の手伝いがあって、倶楽部には寄らずにまっすぐ来ましたの」
凛とした、いつもの幼馴染み。でも清四郎に、くっきりプリントされた一瞬は消えることはなかった。
歩き出すとともに優しく問いかける。
「美童と何を話してたんです?」野梨子の顔が強ばった。
「ええ、古典を教えてあげたんですの。ありがとうって」(本当ですわ)
まばらな会話が2人を繋いでいた。
昨日と同じで、野梨子にとっては昨日と全く違う帰り道。
たわいのない会話ひとつひとつが心を震わせる。
それでも、とても恋を見つけたという嬉しい気持ちになれる状況ではなかった。特に恋に慣れていない彼女の場合。
金沢の彼の時とは何もかも違う。環境も、相手も、想いも。
野梨子は悶々としていた。 清四郎の行動の意味がわからなかった。
可憐をどう想っているのかも…。
まもなく2人は家の前まで来た。
(自分の気持ちを整理しなければ)「ではまた明日、せいしろ」
「──野梨子」
真剣な瞳。心臓が止まるかと思った。「気に、なりますか?」
「なっ、何がですの?」背中を向けたまま尋ねた。かすかに声が震える。
「僕と、可憐のことです。気付いてたんですね」見抜かれていた。「どうして…」
「生まれた時から一緒にいるんですよ。顔を見てればわかります」
いつもの深く透き通る声。野梨子の心を満たす。
「野梨子」
落ち着いた様子で、彼は野梨子をこちらへ向かせた。
瞳に薄い膜が張る。涙の鏡に映る人。私を見つめている。
──ずっと前から、見つめてきた人──
瞬間の出来事だった。
彼は幼馴染みの肩を掴むと顔を左に傾け、彼女にくちづけた。
「…!!…」 家の前。
突然の出来事に野梨子は目を見開いた。彼女の艶やかな唇は薄い唇でふさがれている。
…ドンッ
清四郎の胸を握った右手で叩いても、彼の厚い胸板はビクともしない。
体中が心臓になったようだ。鼓動が全身を駆け巡る。きつく目を閉じて抵抗する。
そんな状態の中彼女は自分の中に流れ込んでくるものを感じた。
心の中に。
濃く、熱くて甘い清四郎の想い。どんなに野梨子を想っているか。
入ってくる滑らかで熱い舌。触れられている肩も同じように熱い。
頭の奥で鐘が鳴る。気を失ってしまいそう──
限界だった。野梨子は力を抜くとともにきつく縛った心の紐をほどいた。
とたんに泉のように気持ちが溢れ出る。あとから、あとから。
清四郎を想う恋の蜜が体のすみずみまで染み入っていく。
…自分はずっと、これを待っていた。
想いと快感に身を任せようとした、その時。野梨子の脳裏にフラッシュバックがはしった。
大好きな友人の顔。可憐の、華のような笑顔。こっちを見て笑う。
(──ダメ)
ドンッ さっきとは違う。ゆっくり、清四郎は唇を離した。
「…っ……」「野梨子」
真剣な瞳で、野梨子を見据える。彼は瞳のもっと先を見つめている。心の中まで。
「好きです、あなたが」
野梨子の口元はグロスをつけたように潤んでいた。そして見上げる瞳も。
「野梨子も、僕のことが好きですよね」
彼は何でも知っている。でも、言えない。そんな事が出来るわけがない。
瞳に涙をいっぱい浮かべたまま、野梨子は首を横に振った。
ぽろぽろぽろ。珠のような涙が落ちる。
アスファルトに染みる、切ないきらめき。
複雑な表情を見せる清四郎を残して、野梨子は家に駆け込んで行った。
バタバタン!
あっけにとられている母親の横をすり抜け、彼女は一目散に自室へ入った。鞄を放り投げ、そのまま畳に突っ伏す。
とめどなく湧いてくる涙。心の中からいつまでも溢れ出る。
でも、それで良かった。全て流れて欲しかった。
胸に広がる熱い蜜の味。体中が恋の甘美に満たされた。
清四郎に応えてしまったこと。
世界が消えた。清四郎も、自分さえも消えた錯覚が彼女を襲った。ただ彼を想う気持ちで、立っていた。
(可憐……)
いつも側にいる友人。いままでも、これからも。
清四郎を好きになった事より、彼に応えてしまった罪悪感が野梨子を蝕む。
涙は枯れることがなく零れ続けていた。
続きます。
>KISS
待ってました!
野梨子スキーな自分としては、野梨子だけがこんなに
苦しむのはなんか悔しいな。
清四郎ももっと悩め〜。
>KISS
野梨子の切なさや優しさがよく出ていて良かったです。
恋をすると、楽しいことばかりではありませんものね。
>KISS
連載始まってから、初めて感想レス書きます。
今回野梨子の恋心を自覚するくだりが丁寧でとても良かったです。
しかし、清四郎はなぜ可憐にキスしようとしたんでしょうね、
野梨子が好きなのに・・・。全く彼って男はぁ〜(*^o^*;)
ところで短期間に連続うPされているので、あまり支障はないと
思いつつも、毎回うPする冒頭に>○○(全て半角)のように前回の
レス番号にリンクを貼ってもらうと助かります。他の作家さんを
参考にしてください。
可憐がヒロインの話をうpします。
最後はハッピーエンドにする予定です。
もしよかったら、読んでいってください。
清四郎は、表通りを歩いていた。
都内の生徒会長達の集まりで酒を飲んで、酔ってはいなかったが夜風に当たりたかった。
「可憐…?」
向かい側から知った顔が近づいて来る。
今日は部室にも寄らず帰ったので、可憐に限らず他の連中が何をしているか知らない。
だが、着ている服を見る限り、デートみたいだ。
その割には顔色が冴えなくて、声をかけていいのかわからない。
一瞬、すぐそこの角を曲がって会わずにやり過ごそうと思ったが、止めた。
向こうも自分に気付いたらしく、足早に近づいてきたからだ。
「清四郎、ちょっといい?」
「いいですけど、何ですか?」
「何にも訊かずに、付き合って」
可憐は、清四郎の右腕をぐっと引っ張って歩き始めた。
清四郎は何だかよくわからないながらも、可憐の手を振り解かずについていった。
二人が辿り着いた先は、『Cocoon』という名前のバー。
清四郎は行ったことも聞いたこともなかったが、可憐はどうも常連らしい。
店の中に入ったとたん、何も言わずにカウンターの一席に座り、清四郎に隣に座るよう促す。
「何になさいますか?」
バーテンダーは清四郎に訊いてきた。
「アフター・ミッドナイト」
「かしこまりました」
他にも客はいるのに、店内は静まり返っていた。
連れがいる客ですら、一言も発しない。
清四郎も場の雰囲気を壊す気になれず、口を開かない。
その内、2人の前にカクテルが出される。
見ると、可憐の分はカンパリオレンジだった。
恐らく、ここに来る前にかなり飲んできているのだろう。
そういえば、向かい合った時にお酒の匂いがしていた…。
可憐は黙ったまま、清四郎に一瞥もくれず、手元のグラスを見つめている。
清四郎は、手持ち無沙汰で、手にしたものを飲み始めた。
そうこうするうちに、一人また一人と客が去っていく。
清四郎が3杯目のカクテルを飲み終えた時、店内は2人だけになっていた。
突如、可憐がそれまで弄んでいたグラスの中身を一気に飲み干す。
「清四郎、ありがと。もう行こう」
可憐は、バーテンダーと目で会話した後、席を立った。
清四郎も席を立ち、可憐の後ろを歩く。
沈黙は続いたまま、靴の音だけが響く。
階段を上がりきって地上に出た時、刹那、可憐の背中が余りにもか弱く、今にも壊れて
しまいそうな気がした。
無意識のうちに両腕が可憐を抱き締める。
その暖かさに可憐は涙を堪えることができなかった。
続きます。
>Sway
わーい!新連載!
お酒の似合う綺麗な可憐大好きです。
>358の続きです。
次の日も、その次の日も。可憐は学校に来なかった。
「どーしたんだろうな、可憐」「ほんと」
皆分かりきっている。だからこそ、当たり障りのないことしか言えない。
野梨子と清四郎はあれ以来まともな会話を交わさぬままだ。
2人とも学校にも1人で来ている。
窓からやわらかい風が吹き込む。夏には、まだ遠い。
清四郎は、それでも野梨子の瞳にはまっすぐな透明な姿に映った。
彼を横目で見つめるだけで淡い香りが彼女を取り巻き、そのうちそれが
密度を濃くして心まで迫ってくる。
追い払う術を、彼女は知らない。
そして、いったん解いた紐は、もう2度と結べないこと。
(どうして、)どうしてあんなきっかけで自覚しなくてはいけなかったのだろう。
自分自身を、野梨子は恨んだ。
可憐が清四郎でない人を想っていたなら。
皮肉なことを考える。そうしたら、今も彼の横で、『幼馴染み』が笑っていたに違いない。いつも冷静な言葉がこぼれるその口元から、流れ込んできた甘い味。
誰かが誰かを想うこと。
ただ偶然に重なった心が切なさを引き起こす。
その偶然に招かれた揺れる空気が、それぞれを包み込んでいた。
午後4時。
ビルの外は、昼間は合成のようだった青空がやっと、風景に溶け込み始めている。
(今日、何日だっけ…?)横目でカレンダーを睨んだ。
(なんだ、2日しか休んでないのか)
自分が失恋した時には学校で泣いていたはずなのに、どうしてこうなってしまうのだろう。
自分で思っている以上に野梨子を気にしている自分に気付き、
可憐は自嘲気味に静かな笑いをもらした。
記憶の中で、揺れる黒髪。まっすぐに自分を見つめる、凛とした大きな瞳。
(なんで、)なんで清四郎なのだろう。
気が付いたら、自分の視線が彼のところで留まっていた。
そしてつられて自分の心を覗いた時にはもう、心も痛い。
「はぁ」(明日は休も。それから考える。柔軟しよ…)
ピーンポーン
こんな時間に来客など珍しい。
(…誰だろう)「はい…」ガチャ インターホンを取った。
「………」「…あの?」「…可憐」「!」
続きます。
>362さま
ご指摘ありがとうございます。
それから、「清×野」と公言しておいていまさらですが
「可×清×野」としてください。可憐をただの馬にしたくないので…
嵐様、皆様すみません。
すいません!!!「ただの当て馬」です。
可憐は人間の役です。
>371-372
可憐をただの馬にしたくない…
ヒジョーに笑いますたw
KISS、続き楽しみにしてます。
>可憐は人間の役です
ワラタ。作者さんかわいいぞ。
>可憐は人間の役です
漏れもワロターヨ!
ガンガレ作者さんw
>Sway
あのパワフルな可憐に何が・・・
清四郎とも、どうなっていくのでしょうか。
>KISS
可憐のところに来たのは清四郎?
それとも野梨子?
清四郎はどんな気持ちでいる?
などなど気になることばかり。
続きが楽しみです。
感想くださった皆さん、ありがとうございます。
調子にのって、two minutes野梨子サイドいってみます。
やっぱり魅録は名前のみの登場です。
魅録が出ていって、野梨子は生徒会室にひとりになった。
ひとりになってよかった。
交わしあった会話や行動や想いが、部屋中に充満しているような気がして、
息苦しくて、とにかく照れくさくて仕方なかった。
肩に、背中に、髪に、頬に残った魅録の指紋が、
じんわりと熱を発散していた。
ほんの20秒後。
急にドアが開いて、もしかしたら両親よりも見慣れた顔が現れた。
余程ぼんやりしていたのか、近付いてくる足音に気付かなかったようだ。
清四郎は一瞬、歩を止め、それから何事もなかったかのように
いつもの席に腰掛けた。心持ち座りかたが浅い気がする。
あの躊躇、さっきまでの気配を気取ったのだろうか。
魅録が出ていくところを見ていたのだろうか。
この幼馴染みは、鋭く、聡く、いつも間違わない。
問われれば、答えてしまうだろう。
嘘をついても、見抜かれてしまうだろう。
嘘をつく?嘘をつく必要なんてない。悪いことなんてしていない。
恋人と呼べる存在ができた。
それだけのことだ。ごく、普通のことだ。
ただ、清四郎の前では、頼れる保護者の前では、
できるだけなんにも知らない純真で無垢な少女でいたいのかもしれない。
それが清四郎を安心させるなら。
「清四郎、おつかれさま。コーヒー飲みますでしょ?
今日のは美味しいんですわよ」
清四郎は答えない。かまわず野梨子はサイドボードを開けた。
魅録と飲むためにじっくり落とした2杯分のコーヒーは、
とっておきの香りだった。結局、飲む間はなかったが、
ふたりにとって初めての特別な時間をもドリップしたようで、
さらに濃密で、かつ甘い香りが加わったように感じる。
清四郎は気付いてしまうかしら、この特別な飲み物に。
清四郎は、まだなにも話さない。
「悠理ったら、追々試ですってよ。清四郎、日本史はもう大丈夫だと思って、
手を抜きましたわね。前回よかったから今回もって訳にはいかな……」
野梨子はなんとなく気詰まりな空気を和らげるべく話を続けた。
窺うと、案の定清四郎は聞いていない。
野梨子の手元を見てはいるが、動きを追っているだけだ。
清四郎は、全部分かっていて、自分に何かを言おうとしている?
その恋は間違いだ、と言われたらどうしよう。
認めないと言われたら、諦めてしまうかもしれない。
なにしろ清四郎は、別格だから。
きっちりふたつのカップにおさまった『特別な飲み物』をテーブルに運ぶ。
野梨子はまだ思案顔の『別格な人』の右側に座りながら
彼のカップを彼の前に置いた。清四郎の体が、少し揺れた。
「はい、お待たせしました」
清四郎がようやく野梨子に顔を向けたので、野梨子は笑顔になった。
「ありがとう」
清四郎があまりにも真摯な目で見つめている。
こんな目を、同じような熱さの目を野梨子は見たことがあった。
ついさっきだ。魅録も、こんな目で見てくれた。
もっとずっと近くで。もっとずっと長い時間。
ほんの5分前、お互いの鼓動を聞きながら、
野梨子も魅録を、こんな目で見ていたに違いない。
「野梨子、…幸せですか?」
「幸せですわ。びっくりするくらいに」
唐突な質問だった。
しかし、その意味を考えるより先に、野梨子は返答していた。
大切な幼馴染みと、ついさっき成立したばかりの恋人を思っていた。
「それなら、いいんです」
清四郎は、そう言って少しだけ笑った。皮肉屋の彼には珍しく、
穏やかで寂しげな笑顔だった。
清四郎が、私を。
いくら鈍感でも、恋の渦中の今なら分かる。
優しくて器用な彼のことだから、きっと告げてはくれないだろう。
清四郎を傷つけることがあるなんて思わなかった。
その優しさに甘えながら、私は、ちゃんと応えなければならない。
コーヒーは、熱くて、甘くて、苦くて、確かに特別な味がした。
もう一口飲んだら、2分前までのことを…。何から言えばいいのかしら?
two minutes、おしまいです。
短く変な切り方になっているのは、清四郎サイド(
>>342から
>>347)と
なんとなーく時間軸を合わせてみたかったのでこんなことに…。
較べてみてもらうと面白いかもしれません(面白くないかもしれません)。
お付き合いありがとうございました。
リアルタイムで遭遇。ラッキー♪
野梨子サイドが読めて、すごくうれしいです。
あらためて清四郎サイドと読み比べると、せつない
気分にひたれました。
あ、1レスずつリンク張ればよかったですかね?
upしてから気付いてしまった…。ごめんなさい。
>kiss のこの部分が好き。
「野梨子も、僕のことが好きですよね」
彼は何でも知っている。でも、言えない。そんな事が出来るわけがない。
瞳に涙をいっぱい浮かべたまま、野梨子は首を横に振った。
泣いてる野梨子の絵が頭に浮かびます。想いあっててもなかなかうまくいかない
清&野ってイイ!もっと野梨子を泣かせて、でも最後はハッピーエンドに
してほしいな。
>two minutes はここがうまい!と思いました。
その恋は間違いだ、と言われたらどうしよう。
認めないと言われたら、諦めてしまうかもしれない。
野梨子にとって清四郎が特別な存在であることが感じられます。
彼女にとっての恋って、清四郎からの自立なんだな、
って原作の裕也さんとの恋を読んだ時思ったのを思い出しました。
わーい。ラッキー♪
>two minutes
胸キュン。スゴイ好き!
>2分前までのことを…。何から言えばいいのかしら?
これでやっと題名の意味を理解したバカな私です。
>387
彼女にとっての恋って、清四郎からの自立なんだな
すごい納得。恋する2人も大好きだけど、別々の恋人を
つくる切なさも清×野には、ありですよね。
>two minutes
野梨子サイドキター!
心待ちにしておりました。
あぁ萌えです。
ていうか文章が好きです。
何度読み返しても素敵です。
また降臨して下さい・・・
出来ればまた魅×野で!
コソーリと
>>366の続きをうpします。
魅録は、かれこれ二週間、可憐からプライベートの連絡を遮断されていた。
理由は魅録が可憐の言い分を聞かずある人を庇ったからで、普段は魅録の友達関係に
寛容な可憐も堪忍袋の尾が切れてしまったみたいだった。
もちろん、生徒会役員としてほぼ毎日顔は合わせるものの、可憐は人に悟られない程度に
魅録を避けている。
最初の頃は魅録も意地になって可憐が折れてくるのを待っていたが、その気配は一向になかった。
少し経って、自らの一方的な行動を悔やんでそれとなしに近づいても、取りつくしまがない。
今では、このままもたもたしているとそのまま別れてしまうことになるかもしれないと思ったりもする。
部室では煙草も吸えず、雑誌を読んでいるふりをしているが、だんだんといらいらしてくる。
「じゃあ、あたしデートだから、先帰るわ」
「可憐がデートなんて、久しぶりなんじゃない」
携帯電話の画面から顔を上げた美童がひやかす。
「失礼ね。今度こそいいオトコよ」
可憐はスッと席を立ち、捨て台詞を残して部室を出て行った。
「まったく、どうなんだか」
悠理があきれて呟くと、野梨子が空になった湯飲みに日本茶を注いでくれる。
清四郎は、何とかの会合で今日はいない。
魅録ひとりが別世界にいた。
だが、どういうわけか誰も魅録の無言を気にとめなかった。
「可憐、待ちましたか?」
清四郎は、少し息を切らしながらテーブルに近づいてくる。
会合が長引いてしまい、約束の時間に間に合うためには制服のままで行くことも考えたが、
場所の雰囲気を考えて一旦家に帰って着替えた。
もちろん、メールで遅れるとは連絡を入れたが。
「そうでもないわ。先にちょっと飲ませてもらったけど」
可憐は、食前酒の入った細身のグラスを心もち持ち上げて見せた。
清四郎はジャケットを脱いで椅子に座る。
室内のほの暗さとテーブルの上のキャンドルライトが、場を落ち着いたものにしている。
ウェーターが早速やってきた。
「可憐は、もう頼んだんですか?」
「まだよ。何頼むかは決めたけど」
可憐はメニューを指差して『これを』といった。
チキンのコース。
清四郎は、魚のコースを頼んだ。
ウェーターが去るや否や、二人は話し始めた。
前回と違い、ありとあらゆる事を話す。
普段二人きりで話すことがほとんどないだけに、会話は留まるところを知らなかった。
「どういうことだ?」
魅録は、硝子の向こう側に見える光景に、目を奪われていた。
「黄桜様、お電話が入っております」
食事がほぼ終わりかけ、あとはデザートを残すばかりとなった頃、ウェーターが可憐に告げた。
可憐は、この事を母親にしか言ってない。
Y子は、滅多なことではわざわざ可憐のいる所に電話してこない。
可憐は身体中から血の気が引くのを感じ、慌てて席を立った。
清四郎に説明する余裕もない。
清四郎は、それでも可憐の表情にただならぬものを感じ、何も言わなかった。
「黄桜ですけど」
可憐は、受付でお店のコードレスホンを差し出された。
「可憐、俺だ」
「…なんで、あんたが、ここを知ってるのよ?」
可憐は驚きの余り、一瞬言葉を失った。
「そんなことよりも、どういうことなんだ?」
「質問に質問で返さないでよ」
「俺は、たまたま見かけたんだ。で、どういうことだ?」
初めての、魅録のしつこさ。
可憐は、とぼけてみる。
「何が?」
「清四郎だよ。俺が知らないだけで、長いのか?」
受話器越しに嫉妬心が伝わる。
「違うわよ。個人的にちょっと世話になったから、お礼よ」
確かに、あの日、清四郎に抱き締められたが、疚しい気持ちは全くない。
「じゃ、なんで『デート』なんだ?」
魅録はなおもつっかかってくる。
「デートって言えば、何でも男女なの?そんなの馬鹿馬鹿しい!」
可憐は思いっきり通話ボタンをプッシュした。
これ以上、魅録に付き合っていたら、折角の楽しい食事が台無しだ。
可憐は深呼吸して笑顔を作り、コードレスホンを返した。
魅録との会話を清四郎に悟られたくなくて、ゆっくりと一歩一歩戻っていく。
テーブルまで来た時、清四郎は心配そうな顔で可憐を見た。
「可憐、今日はありがとう。もう、行きましょうか」
「清四郎、何でもないのよ。ママったら、ほんとそそっかしいんだから。家の鍵が
ないってパニックって電話してきて、話してる途中に『あったわ』なんて言うんだから」
可憐は、笑ってごまかした。
清四郎は何か不自然なものを感じたが、訊かないことにした。
「野梨子、清四郎、おはよう」
可憐はいつもどおり身だしなみは完璧で、元気よく2人に近づいてきた。
昨日清四郎が感じた不自然さは、微塵もない。
だが、どうにも気になって仕方がなく、それとなく可憐を観察してみることにした。
続きます。
Deep River うpします。
6レスお借りします。
>>319 ばたんとドアが開かれた。その勢いで”有閑倶楽部”と書かれたプレートが廊下に落ちたが、
ドアを開け放った主はそれに頓着するでもなく、茶を啜る友人の元へと一直線に駆け寄った。
帰途に就こうと廊下を歩いていた一般の生徒たちが、只ならぬ悠理の様子に気付いたのか、
開け放たれたままのドアの向こうから、中の様子を興味深げに覗いている。
それに気付いた野梨子が静かに扉を閉めた。
「どうしたのさ、悠理?」
呆気に取られて美童が聞いたが、悠理は返事もせず、清四郎の両肩をがっしりと掴んで言った。
「どういうことだよ!?」
「何なのよ、騒がしいわねえ」
頬にかかった髪を掻き揚げ、足を組み直しながら可憐が言う。
その横の席を陣取っていた魅録が、頷くことで同意した。
「どうしてだよ? どうして外部の大学になんか行くんだよ?」
半ば涙眼で訴える悠理の腕を、清四郎が苦笑しながら解く。
「悠理、痛いですよ」
「って……どういうこと?」
可憐が頬杖を付いたまま身を乗り出してくる。悠理は可憐の座る方向へ、
音がしそうなほどに激しく振り返った。
「さっき職員室に呼ばれたとき、清四郎の担任が校長と話してるのを聞いちゃったんだよ。
清四郎が外部の法学部を受験するって」
「法学って……医学部じゃないのか? 家はどうすんだよ、お前跡取りだろ?」
「菊正宗は、姉が居れば大丈夫ですよ。僕には、跡を嗣ぐ資格がありませんから」
その毅然とした物言いに思わず鼻白んだ可憐だったが、清四郎の態度に釈然としないのか、
口調も荒く問い掛ける。
「資格がないって、どうしてよ?」
「僕は、父の息子じゃないんです」
唐突な台詞に、誰もが息を飲んだ。
たったひとり、野梨子を除いて。
「――何を言ってるんだよ? お前、この暑さで頭がおかしくなっちまったんじゃないのか」
魅録の問い掛けに、清四郎は古典の一文を諳んずるかのような、感情を封じ込めた口調で言った。
「残念ながら、正気ですよ」
清四郎はテーブルに肘を付きながら自らの指を組み合せ、口元に寄せた。
噛み締めている唇を、気取られぬように。
「……お先に失礼しますわ」
呟くように野梨子が言い、席を立つ。
「ちょっと野梨子……」
可憐が野梨子の肘を捉え、問い掛けた。
「その様子だと、知っていたんでしょう? あんたたちが此処のところぎこちなかったのって
……この所為なの?」
「……そんな事どうでもいいじゃありませんの。私たちのことは放っておいて下さいな」
「野梨子……」
「放って置いて! もう沢山ですわ!」
穏やかならぬ物言いに可憐が驚いて野梨子の腕を放す。
野梨子は目尻に浮かんだ滴を指先で拭うと、踵を返してドアへと向かった。
「ちょっと……野梨子!?」
悠理と美童が慌てて野梨子を追う。可憐は物言いた気な視線を清四郎へと一瞬向けたが、
きゅっと唇を噛み、足早にドアから出て行った。
高級外車が列を成し、聖プレジデント学園の前に次々と横付けされる。
いつもの朝の風景だ。
其処此処から掛けられる朝の挨拶に笑顔で答えながら、可憐は緩りと校門をくぐった。
数メートル先に見慣れた後ろ姿が揺れている。
清四郎だった。
心なしか足取りが重く見えるのは、傍らに居るはずの人物が今日は不在なせいだろうか。
そんなことを考えながら、小走りに彼の元へと駆け、広い背中をぽんと叩く。
「おはよ」
「ああ、可憐ですか。おはよう」
「どうしたっていうの、トボトボ歩いちゃって。爺くさいわね」
可憐の悪たれ口に苦笑しながら、清四郎は可憐が並んで歩きやすいように
反対側へと鞄を持ち替えた。
「野梨子はどうしたの? まだ喧嘩中なの?」
清四郎が足を止め、可憐を見遣った。
「……昨日、野梨子は何も言っていなかったんですか?」
「何も。何も言ってくれなかったわ」
「……そうですか」
清四郎が歩き出した。可憐もそれに倣う。
「ねえ、可憐」
清四郎が前を向いたまま言った。
「なに?」
「次の連休にみんなで……旅行に行きませんか。冬休みは外部を受けるための
準備をしなければいけないし、春休みは独立の準備で忙しくなって遊びには
参加出来そうにもありませんから。最後に……想い出作りというものをしたいんですよ」
「大学に行ってからだって遊べるじゃないの。それに想い出作りっていう歳でもないでしょ?」
可憐は笑い飛ばそうとしたが、清四郎の強い視線にぶつかり、笑いを飲み込んだ。
「束縛のない今だから、行きたいんです。駄目ですか?」
真摯な瞳で告げる清四郎に、それ以上何が言えたというのだろう。
「分かったわ」
とはいえ、たった三日間の休日である。行ける場所は、ごく限られていた。
常ならば、行き先を決めるのは悠理か可憐である。しかし、今回は違っていた。
函館に行ってみたい、と野梨子が言い出したのだ。
ニュース映像で流された函館の夜景が綺麗であったから、と野梨子は言った。
海の幸が豊富な旅先の選定に、他のメンバーに異論があろうはずもない。
こうして六人は、既に秋の様相を呈している海の街へと飛び立った。
此れが空港なのかと問い掛けたくなるような建築物に、リボン模様が施されたヘリが横付けされた。
「うちの大学部の建物より小さいわよねえ」
思わずそう呟いた可憐を、地元民と思しき青年が睨み付ける。
それに気付いた可憐がにっこりと微笑んで取り繕うと、青年は慌てたようにロビーを出て行った。
「車、借りようぜ。その方が夜景を見に行くときに都合いいだろ?」
「車って……誰も免許持ってないじゃないか。貸してくれないんじゃないのか?」
そう言った悠理の頭を軽く小突き、魅録が呆れたように告げた。
「アホ、プレゼント寄越しといて俺の誕生日を忘れたのか? 夏休み中に、取っちまったよ。安心しろ」
豪奢とは言い難いワゴン車をレンタルし、荷物を積み込んだ。
助手席に、当然のような顔をして悠理が乗り込む。
二列目に可憐と美童、最後列に清四郎と野梨子が腰を落ち着けた。
室内にLENNY KRAVITZのFRY AWAYが流れ始めた。
旅先だというのに、ご丁寧にもMDを持参したらしい。
「懐かしい曲ね。これが流行ってた頃ってまだ中学生ぐらいよね」
「僕はまだみんなと面識がないころだよねえ」
「あの頃ってさあ……」
前方で思い出話が盛り上がる。
その話題に加わるでもなく、清四郎と野梨子は窓の外を流れる景色を眺めていた。
「なんだよ、この坂は。くそ、馬力がねえ車だな」
悪態を吐きながら、魅録がアクセルを踏み込んだ。勢い良く対向車が降りて来る。
魅録は小さく舌打ちをしながら、ヘッドライトを睨み付けながら器用にハンドルを捌いた。
六人は贅を尽くした夕食を満喫した後、旅行のお目当てである夜景を眺めに行くべく
山の頂上を目指していた。
「どうでもいいけど、随分カーブが多いわね。酔っちゃいそうだわ」
ハンドルが切られる度に、右へ左へと身体を揺らしながら可憐が不満を漏らす。
「酔っちゃいそうじゃなくて、酔ってるんだろ? お前らしこたま飲んでたじゃねえかよ。
人には安全運転の為とか言って、一滴も飲ませなかったくせして」
「怒らないでよ、魅録ちゃーん」
助手席の悠理がご機嫌を取ろうと、魅録の顔を覗き込む。
魅録は憮然としながらも、ちらりと悠理に視線を投げ掛けた。
「お、ほら見えて来たぞ。そろそろ頂上だ」
道の両脇を縁取っていた木々が絶えた。と、同時に駐車場が目の前に広がっていた。
時刻は既に二十四時を回っている。停められている車は一台もなかった。
「貸し切りかぁ。うー、結構寒いなあ」
伸びをしていた悠理が思い切り息を吸い込みながら言った。
六人はぞろぞろと連れ立って、展望台と思しき階段を登った。
「う……わあ。観ろよ、凄いぞ!」
一番に駆け上がった悠理がはしゃいだように下を指差した。
「綺麗……」
可憐が感嘆の声を上げる。その横に並んだ美童と魅録もその景色に息を飲んだ。
闇の中から滲み出るような数多の光が、街の輪郭を辿っている。
冷気がそうさせるのだろうか、一つ一つの光が揺らぎ、瞬いているようにも見える。
六人は言葉もなく、ただその景色を眺めていた。
野梨子の隣にいた清四郎が、思いつめたような表情でふっと息を吐いた。
彼の嘆息が感動に因ったものではないことに気付いた可憐が、美童の袖を引っ張った。
美童が可憐を見遣る。可憐はそっと目配せをした。
意味するところを悟った美童がさり気なく魅録と悠理を下の展望台でも観ようと誘った。
清四郎と野梨子を最上階の展望台に残し、四人は階段を降りた。
四人の後ろ姿を見送り、再び眼下の景色を眺めようとした二人の視線が、ふっとかち合った。
先に視線を外したのは、清四郎だった。
手摺に凭れ、夜景を眺める。野梨子もそれに倣いながら、無言だった。
異なる生活を送っているであろう一つ一つの光が和合した景色は、
地上の天の川のように清四郎の眼に映った。
ひょっとして自分が眺めているのは街の景色ではなく、大河なのではないだろうか。
星の瞬きを川面に映し出している、大河なのではないだろうか。
そんな由無し事が清四郎の脳裏を過ぎった。
冷たい風が吹き付ける。
傍らで身震いした野梨子に、清四郎は自らのジャケットを羽織らせた。
「ありがとう」
小さく野梨子が言った。
再び視線が合う。清四郎は、今度は視線を逸らさなかった。
野梨子の瞳が、ぐらりと揺れた。
顔を背けようとする野梨子を制するように、清四郎が呼びかける。
「野梨子」
野梨子は首を横に振り、項垂れながら呟くように言った。
「言わないで下さいな。もう……分かっていますから」
清四郎が野梨子を掻き抱いた。
野梨子の細い首筋に顔を埋めながら、清四郎は彼女の名を呻呼した。
腕に力が込められる。
野梨子の眦から、一筋の涙が零れ落ちた。
<続きます>
「君に愛の花束を」の最後のペ−ジ
3人が寝ているんだけどさ、魅録の寝相ひどすぎだよね。
おしりは床にピタッとついているから、腰をひねって
上半身だけうつ伏せ寝、下半身仰向け・・・・すごく腰が悪くなりそうな
寝方(涙)
>Deep River
『父の息子ではない=母の息子ではない』なのか違うのか?
この点が非常に気になります。
>403
( ・∀・)つ〃∩ ヘェーヘェーヘェー
>>402 もし隣であんな風に寝られたら嫌だなぁ。
腕枕してもらえん
>>403 その話、読み返してみた。(というより絵だけ見返してみた)
3人の寝相とその文章じっくり見比べる。
清四郎の寝相↓に当てはまらない?
6)あおむけで大の字になる「ヒトデ」型。
控えめで聞き上手な人が多い――といった具合だ。
御大すごすぎ、そこまで調べて描いたのか?それとも偶然?
>>406 私の理想で言うと、魅録たんに腕枕をしてもらって
アンド私の頭を魅録たんの体で包み込むように、横向いて寝てほしい。。。(ポッ)
>Deep River
>「アホ、プレゼント寄越しといて俺の誕生日を忘れたのか?
あれ?留年してるから、3年生の誕生日には19歳だよね?
男性3人は免許取得済みのはず・・・。
ちなみに野梨子は冬の裕也との別れの時に18歳なので、
3月生まれくらいなのかな、と思ったのですが。
ストーリーと関係なくてスマソ
>Sway
清×可×魅みたいですね。可憐と魅録の間に清四郎の潜り込む余地あり
なんでしょうか?魅録のかばった「ある人」も気になりますね。
愛の狩人、清四郎(?)をキボンヌ。続き期待してます。
>Deep River
描写がすごく丁寧で好感が持てます。
二人の苦しみがジワジワと伝わってきています。
やはり二人は兄妹?苦しいのは父の不倫のため…だけではないですよね。
うわ〜、どうなるんだろう…。続き待ってます!
>Sway
魅×可、好きなので嬉しいです。
焼き餅焼いて意地張ってる魅録が可愛い〜
清四郎との仲がどうなっていくのかも気になります。
>Deep River
やっぱり二人は・・・なのでしょうか。
周りの四人がどうからんでくるのか、少しでも救いに
なるといいのですが。
>>412 「気の毒〜」
ここのセリフを読むたび、相手が?自分が?と自問してしまう。
>>394 いつもと変わらない部室。
倶楽部の面々が生徒会の仕事もせずに思い思いに時を過ごしている中で、新聞を読むふりを
しつつ清四郎は観察を怠らない。
だが、今日の可憐は悠理の大食いに呆れてみせたり、美童の連続メールに茶々を入れてみたり、
野梨子とたわいもない話をしてるだけ。
…だと思ったが、よく見ると魅録とは一言もしゃべっていない。
清四郎は魅録に視線を移してみる。
魅録は、バイク雑誌と睨めっこしていて自分の世界に入り込んでいる。
こういう時の魅録は話し掛けてもおざなりにしか答えないので、あえて誰もつつかない。
清四郎も魅録に変化を感じなかったので、新聞に集中しようと視線を外そうとした。
とその時、魅録の目線の動きを察知した。
行き着く先は可憐だ。
だが、可憐は目線を返さない。
その強さを鑑みると、可憐が無視していると言ってもよい。
清四郎は、頭の中の様々な情報をさっとかき集め、結論を導き出した。
それでも、ひとつ合点がいかない事がある。
あの日、何故、可憐の背中が余りにもか弱く、壊れてしまいそうな気がしたのか。
魅録は、いったい、何をしたのか。
「清四郎、どうかしましたの?」
帰り道、浮かない顔をした幼馴染を見上げて野梨子は言った。
「いや、何でもありませんよ。…えっと、何の話でしたっけ?」
清四郎は、野梨子の話をちっとも聞いていなかった。
「昨日、清四郎はいなかったから知らないでしょうけど、可憐が久しぶりにデートって
言って早々に帰っていきましたんですのよ」
デート…ですか。
清四郎は、その場に魅録がいたかどうかが気になった。
だが、ストレートにそのことを訊かない方がいいだろう。
「確かに、可憐の『デート』は久しぶりですね。で、美童は?」
「美童は私達としばらく一緒にいましたわ。5時過ぎにはみんな帰りましたけど」
野梨子の言葉からははっきりしたことはわからないが、どのみち、その日の可憐の
『デート』の相手は自分だ。
清四郎は、何の根拠もなかったが、魅録が、自分と可憐が食事に行ったことを知って
いると確信した。
続きます
>sway
清×可なのかと思っていたんですが、ひょっとして魅×可?
清四郎は愛のキューピッドかなあ(*^^*)
ちょっと短編うpします。
異色カップリング?なので
嫌いな方はスルーして下さい。
あぁ、ついに書いてしまったと言う感じ(爆)。
悠理の止めろという忠告も聞かずに
俺は”あいつ”と体を重ねてしまった。
体中に熱が帯びた。
”あいつ”はその熱に答えるように
俺の肌に舌を滑らせた。
体中が液で満たされていく。
”あいつ”の人差し指が穴に向かっていく。
その感触は悠理のそれとは全く異なっていた。
それから幾度となく重ねられた体。
胸の奥から湧き出てくるような
この感情は何なのだろう?
そのときの俺には自分の気持ちも
”あいつ”の気持ちも理解出来ないでいた。
「ねえ、魅録。気持ちがいいですか?」
一通り終わって、”あいつ”は平然とした顔で
ニッコリと笑って見せる。
俺の心がどんなに揺らいでいるか知らずに。
「ふふ、剣菱財閥令嬢の婚約者が
僕とこんな風に寝たと世間が知ったら
どう思うでしょうね?」
「知るか!」
俺はそう突っぱねるとそっぽを向いた。
(ったく。お前が無理矢理さそったんだろうが)
そう思いながら。
「魅録、人間そう意地を張るものでは無いですぞ
あなたの熱は、僕に十分伝わってきました」
”あいつ”はそう言って、唇に軽く口付けた。
「清四郎、や・・・やめろって」
俺はさすがに焦ってたじろいだ。
「この唇を悠理が奪ったのですね。あなたは罪深い人だ。
愛する女性に捧げた唇を今度は僕が奪おうとしている。
しかし僕は後悔していない。そうさせるほどの魅力が
あなたにあると言うことに過ぎないのだから」
(こ・・・こいつやっぱり正気の沙汰じゃねえな)
俺はそう思いながらも、突然の包容に
拒絶さえ見せない自分に驚いていた。
しかし、そう感じながらも、
清四郎のしなやかな肌は
俺を欲情させるには十分だった。
「清四郎・・・」
体が心が、目の前の相手を欲していた。
”いつの感触が俺の体に
こんなにも染みついてしまうなんて。
忘れろって方が無理だ。
しかし、俺は決心を決めていた。
「清四郎・・・ごめんな。俺、やっぱり
悠理を裏切ることは絶対に出来ない。
俺にとって掛け替えのない存在なんだ
あいつは俺を愛してくれてる。俺も愛してる」
「体は、僕を求めていても?ですか?」
「ああ。だからこれで最後だな」
そう言って、深い深い包容を交わす。
このとき、清四郎が見せた深い悲しみに満ちた顔は
一生忘れないような気がする。
「なぁ、魅録。本当にあたしでいいのか?
お腹の子に気を使ったのなら・・・」
「いいんだよ。お前を選んだのは、
他でもない、俺なんだ」
-リンゴーン、リンゴーン
あれから俺と悠理は教会で、
内輪だけの挙式をした。
横には純白のドレスに身を包んだ悠理が、
満面の笑顔を浮かべながら周りに手を振っている。
野梨子が、可憐が泣いている。
美童は俺達の方を見ると、ニッコリ微笑んだ。
こいつらは、俺の気持ちを知ったら軽蔑するだろうか?
それから、清四郎の苦く悲しい、かつ
空虚な表情だけが鮮明に残っている。
心の奥底にある深い想い。
それはもう、二度と叶うことのない過去のモノ。
しかし、今の自分には悠理がいる。
こんな俺を受け入れてくれた悠理が・・・。
それでいいじゃないか。
目の前の幸せを噛みしめながら
同時に胸の痛みを感じていた。
それは、俺の一夏の恋・・・と言うべきものだった。
君と僕に出来ること、それは
お互いの幸せを願うことかもしれない。
「ほら、魅録。行くぞ」
「あぁ」
秋の涼しげな風を受けて
俺は人生の新たな一歩を踏み出した。
これでオワリです。ありがとうございました。
>>415 魅録は、自分の部屋で煙草をふかしながら、昨日のことを激しく後悔していた。
何で、折角話すチャンスに、可憐を責めるようなことしか言わなかったのか。
何で、一言、あの時言い過ぎたと謝らなかったのか。
一人になると、嫌でも、そんな思いが頭の中を駆け巡る。
何とか事態を打開したいと思いながら、時間が経てば経つほど可憐と向き合うのが
怖くなってくる。
可憐にあっさりと、別れを告げられるのではないかと思ってしまう。
こんなに愛してるのにな。
同じくらい可憐が自分を愛してくれていると確信できた日々が、遠い昔のようだ。
それから一週間後。
1限目と2限目の間の休憩時間、美童は携帯のメールをチェックしていた。
ほとんどが付き合いのある女達からのメールだったが、1件だけ違う意味で付き合いのある
女からのものだった。
件名は『誰にもしゃべるなよ』
内容は『今日の放課後、速攻でうちに来るように』
なんとも味気なく、有無を言わせぬ内容だが、送信者を思えば無理もない。
すぐに、『わかった。部室に寄らずにそっちへ行く』と返信した。
それから美童は今日の予定を頭に思い浮かべて、とりあえず今日の相手に断りのメールを
入れずに済むことに安堵する。
だがそれも、見事に裏切られることになるのだが。
まだ、続きます
>Sway
清×可?魅×可?とまだ何かがありそうで楽しみ!!
どんな方向へ展開するのか期待〜
ここのよころ、開けたら必ずうpされているので
嬉しい限りでつ♪
>Sway
静かな、何が起こるかわからない雰囲気が
とても好きです。
two minutesの直前の10分間の話<before ten minutes>をupします。
野梨子と魅録の間の出来事に言及していますので、魅×野が苦手な方、
煙草の匂いだけで淡〜く想像していたい方は飛ばしちゃってください。
10分のため、2分のよりも長いです。分けると変な感じなんで、
一気に8レス使います。ごめんなさい!
まだ、誰もいない放課後の生徒会室。
グラウンドが徐々にざわめきはじめた。
野球部かサッカー部か、なにか運動部が練習を始めたようだ。
野梨子は、こういう意味をとれない喧騒が結構好きだった。
とりとめのない考えをいくら続けていても許されるような、騒がしい静寂。
野梨子は出窓に腰を掛けて、そこからは見えないグラウンドの方を見ていた。
他人が居たら(例えそれが気のおけない友人であったとしても)、
野梨子は決して、そんなはしたないことはしない。
今、野梨子の意図しない思考の中にいる人物がよくそうやっているので、
知らず知らずのうちに真似るような行動をとってしまったのかもしれない。
急にドアが開いて、今まさに頭の中に思い描いていた顔が現れた。
余程ぼんやりしていたのか、近付いてくる足音に気付かなかったようだ。
野梨子は慌てて出窓から飛び下りた。
魅録は驚いた顔をして、それから笑う。
「そんなに慌てなくってもいいじゃん。すわってれば」
自分では目つきが悪いだのと言っているが、笑うとずっと年下の少年のようだ。
可愛らしい。野梨子は思ったが、すぐに打ち消した。
大人の男性に対して、可愛いと思うだなんて失礼だ。
それが恋だと、野梨子は、まだ知らない。
自分らしくないところを見られて、野梨子は赤面していた。
それに、なんとなく魅録の真似をしていたことを悟られたかもしれない。
魅録の言葉には答えず、給湯室に向かう。
「美味しいコーヒーがありますのよ。飲みますでしょ、魅録」
前の豆が残っていたので、本当はそれが終わってから開けるつもりだったのに、
野梨子は新しい袋の封を切っていた。
いい香りがした。
「なにか、いいことがあったときに開けようって思ってたんですけど…」
言い訳のように話し掛けながら振り向くと、
魅録はさっきまで野梨子がいた出窓に腰掛けていた。
ただ、その目は、グラウンドではなく野梨子に向けられている。
野梨子はまた、わけも分からず恥ずかしくなる。
さっきはあんなに視界に収めたかった姿なのに。
「いいこと、じゃないか? 俺とふたりでコーヒー飲むの」
魅録はふざけた調子で言って、また笑った。
野梨子はつられて笑顔になった。
自分もそう思ったから、無意識に封を切ろうとしたのかもしれない。
ポットの再沸騰ボタンを押し、コーヒーミルを回す。
後ろを向いているのに、魅録の視線が触れるのが分かる。
背中が、どきどきする。
「…も、今日はちょっと寄っただけなんだ。中学ん時のダチが
バンド組んでてさ、夕方からライブが…」
魅録がなにか喋っている。
あら、お友達が、ライブ、すごいですわね、何時からですの…、
答えてはいるが、どうしても上の空になる。
コーヒーがいれられないからちょっと見ないでくれ、なんて言えない。
ただ見ていられるだけでこんなにうろたえるなんて、
まるで…、犯罪者の気分?
「でもちょっとくらい飲んでいけますでしょ。本当にとっておきの豆ですのよ」
あとは雫が落ちきるのを待つだけだ。
狼狽を気付かれないように、笑顔を作って魅録を振り向く。
魅録の姿は出窓のところではなく、給湯室の入り口にあった。
つまり、いつのまにか魅録は野梨子の目の前にいた。
一瞬で頭の中が熱くなる。
野梨子の両目は、魅録が口を開いたのを見た。
「野梨子、今、言うつもりじゃなかったし、ずっと言うつもりじゃなかった。
だから別に聞いてくれなくていい。勝手に言うから、そこにいてくれたらいい。
すぐに忘れてくれたらいい。なんだったらもう、耳塞いでくれてていい。
ちょっと今、勘違いできてて、嬉しいんだ。だから、少しじっとしててくれ」
魅録は、一度だけ照れが限界にきたように視線を外したが、
それ以外はじっと野梨子の目を見て、一息に言った。
その距離の近さだけで、本来なら羞恥の余りじっとしていられないはずなのに、
野梨子は魅録の目から視線を外すことが出来ない。
こんなに早口に喋る魅録を、野梨子は初めて見た。
熱で頭の中がぼうっとしているのにも関わらず、
何故か冷静な野梨子のどこかは、また魅録を可愛らしいと思っていた。
「俺は野梨子が好きだ、ずっと好きだった」
魅録は一気に、しかし、はっきりと強く言った。
声が出ない。野梨子は魅録を見ていることしかできない。
見つめあったまま、5秒。永遠のような5秒。
いや、永遠であればいいのに、と野梨子が無意識に望んだ5秒。
「ごめん、忘れてくれ、なかったこと、な、いきなりこんな、ごめん」
魅録は野梨子からすっかりそっぽを向き、
答えを聞かずにその場から離れようとしている。
『待って』
まだ声が出ない。違う、行かないで、ここにいて。
魅録に、言いたいことがあるのに。…それは、なに?
意識の外で、野梨子は魅録の袖を引っ張っていた。
「…違いますの、私は」
野梨子はやっと言った。魅録と再び視線が合う。
「多分、私も魅録が」
まるで心にも無いことを言っているように、言葉だけが出てくる。
しかし、口をついて出てくる言葉は、耳からもう一度体に入った瞬間、
真実として野梨子の中で意味を成した。
「魅録が好きですわ」
全く予想しない答えであったのだろうか。
魅録は瞬きもせずに野梨子を見返している。
自らの気持ちを確かめるべく、魅録に確実に届かせるべく、
野梨子はもう一度言った。
「私は、魅録が好きです」
そう。だからこんなに、見ていたくなる。だからこんなに、苦しくなる。
1秒後、野梨子の体は魅録の腕にすっかり包まれていた。
抱きしめられた力のせいか、煮立つような体の熱さのせいか、
野梨子にはほとんど息をしているという感覚がなかった。
いつもより濃く感じる魅録の匂いが、辛うじて呼吸をしている証拠だった。
と、魅録の声が、野梨子の髪の間からこぼれてきた。
「俺は、清四郎じゃないぞ。冷静でも、完璧でも、強くもない。
あいつより優れてるとこなんてなにもない。そんなんで、いいのか?」
清四郎?
思わず顔を上げたために、魅録の顎が額に当たった。
唐突に出てきた聞きなれた名前と比較するのは
ひどく不自然な気がして、早口になった。
どうして慌てているのか、自分でも分からなかった。
その名前はなぜか急に、野梨子の心を引っ掻いた。
「魅録は、清四郎とは違――、魅録はまっすぐで暖かくて、見ていたくて、
いえ、でも、そんなことじゃなくて、だって、魅録ですもの、
どんなのでも、魅録だからいいんですの。それじゃ、だめですの?」
本当のことしか言っていない。でもなにか、言葉が足りない気がする。
私は、魅録のことが好き。清四郎、清四郎のことは――
再び魅録に抱きしめられて、野梨子は何を考えようとしていたかを忘れた。
魅録は、もう、何も言わない。
言葉はいらないのかもしれない。
野梨子は、今はもうはっきりとこの瞬間が永遠であればいいのに、と
願いながら長いこと目を閉じていた。
その間魅録は、野梨子の肩を、背中を、髪を、頬を、
まるでそこにあることを確認するように、時々優しく撫でた。
これ以上ないほど息苦しいのに、不思議に安らいだ妙な感覚に
野梨子は時間というものがあることを忘れた。
―コーヒーはすっかり落ちきって、いい香りを立てている。
鼻先が香りを捉えて、野梨子は目を開けた。
「…コーヒーを…」
野梨子につられてか、魅録もじっと目を閉じていたらしい。
野梨子の声にいきなり現実に引き戻されたような顔をしている。
改めて魅録の顔を見て、野梨子はもうひとつ思いだした。
「魅録、ライブに行くんですわよね? 6時なら、もう」
魅録の目がやっとしっかり野梨子を見た。
「やべえ、遅れるとまずいんだよ!」
いつもの魅録だ。情に厚くて誰にも対等な。
ああ、これ。これが好き。
内側から暖かい笑みが湧いてくるのを感じる。
「いってらっしゃい」
顔を上げている魅録の顎に向かって言う。
魅録は微笑んで、もう一度ぎゅっと野梨子を抱きしめた。
「じゃあ、また、あした」
いつもと同じ挨拶をして、魅録は野梨子から離れた。
「ええ、また、あした」
野梨子も、わざといつもと同じ挨拶をする。
自分が魅録に発した言葉さえ、愛しくて仕方ない。
野梨子は、魅録が鞄を取って部屋を出ていくあいだ、その場に立ち尽くしていた。
ドアを閉める前に、魅録がもう一度こちらを見たような気がしたが、
そのとき彼がどんな表情をしていたか、野梨子はよく見ていなかった。
魅録の優しい体。その感触の記憶を留めておきたい気持ちと、
恥ずかしくて忘れてしまいたい気持ちが、野梨子の密な思考回路を乱している。
女は恋できれいになる、って可憐は言いますけど。
こんなにどきどきして、頭に血が上って、体に悪いんじゃないのかしら。
ようやく普通に息をつく。ああ、ひとりになってよかった…。
野梨子の10分、オワリです。
流れ的にはこの後、以前にうpした2分がくることになります。
(two minutes→清四郎サイド
>>342〜347・野梨子サイド
>>378〜383)
失礼しました。
>before ten minutes
うほー、またまた御降臨、ありがトン。
この、絶妙な感情の動きの描写が、とても好きです。
もし、もし、よかったら、魅録サイドのお話を書いてくださいまし!!
>before ten mimutes
PC閉じる前に少しだけ見て帰ろうと思ったら!!
ラッキーもう、萌え萌えです。
>まるで…、犯罪者の気分?
これがツボ。ハテナが好きなんですw
次はつまり魅録サイドでしょうか…首をながーくして、
お待ちしております。
>deep river
スゴク楽しみ!!清四郎の清は・・・と予想した!
>before ten minutes
何があったのかいろいろ想像してたので、読めて嬉しい〜
朝から野梨子と一緒にドキドキしてしまいました。
ごちそうさまです♪
>イラスト
いかにも有閑な表紙に笑いました。
ぜひ本編が読みたいw
>イラスト
ココ最近で一番萌えますた。
野梨子が可愛すぎるよ…
>イラスト
清×野に萌えーは言うまでもないんだけど、
6人の性格をよく掴んで描いてる(と思えた)
ところに激しく萌えますた。
何気に魅×悠っぽい雰囲気もいいですねぇ。
>>423 清四郎はホームルームを終えて部室に行くと、そこには可憐しかいなかった。
「可憐だけですか?」
「そうみたい。誰も来てないわ」
もう、学校そのものに多くの人が残っていなかった。
この時間にこうならば、多分、他の面々はすでに帰っているのだろう。
「可憐、何か飲みますか?」
「そうね、コーヒーでも淹れてくれる?」
昼間作ったコーヒーの残りが、コーヒーメーカーの中に半分くらい残っていた。
普段なら待つ間に一杯くらい飲んでいそうなのに、テーブルの上には何もなかった。
「可憐、僕でよかったら、聞きますよ」
清四郎はマグカップを渡しながら言った。
可憐はそれを両手で受け取り、力なくテーブルの上に置いた。
「…あたし、どうしたらいいのか、わからなくなっちゃった…」
ポトン。
可憐の右頬に、一筋の涙がつたう。
テーブルに両肘をついて両手で顔を覆う。
肩が小刻みに震える。
清四郎は可憐の隣に座り、その肩を抱く。
雨が、降り始めた。
美童がメイドの案内で通された先は、悠理の部屋ではなくて数ある応接間のひとつだった。
そこには、知らない先客がすでにソファに座っている。
「さんきゅ。美童」
悠理はそれまで座っていたロッキングチェアから立ち上がる。
ソファに座っていた男も立ち上がる。
「こいつ、魅録の北中ん時の後輩で、今は北高3年の村重」
村重はペコリと頭を下げた。
「そんで、こっちが美童」
美童は右手を差し出す。
村重も右手を出して、2人は握手した。
「まあ、2人とも座って」
2人はテーブルを挟んで両サイドに腰掛けた。
悠理はロッキングチェアに戻る。
「村重、お前が言ってきたこと、あたい一人では正直なところうまくやれない。けど、
コイツはこういうことよくわかってるから、昨日あたいに説明した通りに、も一回、
コイツにも説明してくれないかな」
悠理はそれだけ言うと口を閉ざした。
村重は不安そうな顔で悠理を見る。
悠理はロッキングチェアを揺らしながらあらぬ方向を見つめ、村重に視線を返さない。
仕方なく、村重は話し始めた。
村重の、北中時代の後輩が、人通りの多い場所である女の子に絡んだのが始まり。
可憐は何気にその子に近づいて、遅れてきた友人を装って助けた。
その子が赤の他人なら、それはそれで終わる話だった。
だが、その子は可憐の小学校時代の友達だったらしい。
そして時が経って、魅録とデートしていた可憐は、偶然にソイツと出くわしてしまった。
ソイツは可憐のことなど覚えていないようだったが、可憐ははっきりと覚えていた。
何事もなかったかのように振る舞うソイツに、可憐は気分を害した。
いつもの愛想良さをかなぐり捨て、魅録を振り切って歩き始めた。
先輩・同輩・後輩関係なく友達を大事にする魅録は、不躾な可憐の行動に激怒し、大喧嘩と
なった。
可憐は、ソイツが自分の友達に絡んで迷惑極まりなかったことを思い出して我慢ならなかった
からだと説明したらしい。
しかし、良くも悪くも友達を信じる魅録は、可憐の言い分に全く聞く耳を持たなかった。
そんな話が村重の耳に入った頃と時期を同じくして、ソイツが別の場所で似たようなことを
しているという話が入ってきた。
村重としては、魅録に真実を告げる必要があるように思う。
だが、どうやって言えば、うまく魅録に伝わるだろうか。
まだ、続くんです。
>Sway
暇を持て余してたら、うpに遭遇、ラッキー。
面白くなりそうですね。恋愛もの、というよりも、有閑の雰囲気
漂うお話にワクワクしていまつ。次回も楽しみにしてまつ。
>before ten mimutes
ほのぼのしましたー。でも、陰で清四郎が悲しい思いをしてるかと
思うと……(藁
>イラスト
すごい!見ててドキドキしちゃった。また描いてください、プリーズ。
連載の続きが遅くなってすみませんでした。
まだ修理に出したPCは帰ってきてませんが、いつ直るかも知れず、
またハードディスク内のデータが残っているかも分からないため、
書いてあった話の続きは泣く泣くあきらめて、1から書き直すことにしました。
有閑倶楽部の面々が作戦の練り直しをしている一方、悠理は退屈な時間にうんざりとしていた。
目の前では二十代後半の男性が、気もそぞろな悠理の様子に気がつくことなく、ひたすら調子よく
話をしている。弁舌爽やかというよりも単なるお喋りである彼に、付き添っている百合子も苦笑している。
今井昇一。今井グループ総裁の嫡男である彼は、おそらく周囲から十分言い含められてここにいるのだろう。
必ず、この縁談をものにして帰れ、と。
剣菱としては、縁組を持ちかけてなどいない。立場上、純粋な恋愛結婚はさせてやれないかもしれない
ものの、今井の馬鹿息子などに悠理を嫁にやるつもりなど毛頭ない。
しかし、今井を含めた周囲にそうと錯覚させるように振舞っている。
無論、それは魅録による計画の一部であった。
こうした大きなパーティーで、会長やその夫人を差し置いて、会長令息のみを招待する。その会長令息
が独身であり、しかも剣菱の令嬢と年齢的にも釣り合いが取れるとあれば、誰もが「すわ婚約話か?」と
浮き足立つのも当然だろう。なにしろ、悠理も昇一も婚約者がいない身である。
もし、悠理に対する秋波がなければ、昇一ひいては今井グループがこの招待に応じることはなかっただろう。
そうなると、計画も変更せざるを得なかったわけだが、今井昇一はのこのこと出席してきた。今回の計画の
大前提はとりあえずクリアできたと言える。
昇一ははじめ、格好つけての経済の話や、社交界の話を悠理に振った。それに対して彼女が反応が鈍い
ことに気がつくと、今度はブランドや芸能界の話などに会話の質を「ランクダウン」した。女子供には、少し
難しい話題だったか――とでも言いたげな様子が鼻につく。
本人は才気煥発を気取ってはいるが、隣で話を聞いている百合子にしてみれば、いかにも賢しげな様子
が目に余る若輩者でしかない。
「悠理さんはお好きな芸能人や俳優はいらっしゃいますか……」
「悠理はシュワルツネッガーが好きだがや」
「というと、やはり頼りがいがある男性が好みというわけですか」
「悠理はまだ子供ですのよ。憧れているだけですわ」
「いえいえ、悠理さんは立派なレディですよ。こうして立っているだけで、他の女性たちが霞んでしまうぐらに」
悠理に向けた質問に対し、両親が返事をすることに、しかし昇一は疑問を覚えないようである。おそらく
彼にとって悠理は、ありあまる剣菱の財力のおまけに過ぎぬのだろう。もっとも、彼女の美しさには一目を
おいているようであり、最後の台詞は、あながちお世辞ではないようだった。
口を開けば、昇一に失礼なことを言ってしまうだろう自分をしっかりと自覚している悠理は、ただにこにこと
微笑む人形になりきること専念した。これは、あらかじめ豊作や魅録に耳に胼胝が出来るほど忠告された
ことでもある。
そんな簡単なこと、というふうに安易に了承した自分が今では恨めしくなるほど、昇一のくだらない話は
尽きることがない。とめどないお喋りの中で、彼が言いたいことといえば、要は「こんなに素晴らしい僕」のアピール
だけだろう。どうせなら、簡潔明瞭に履歴書にでもして提出してくれた方が、分かりやすくていい。
右の耳から左の耳へと情報が素通りしていく現状よりは、まだしも建設的だろう。
ちらりと悠理は昇一を上目遣いで見る。
どこもかしこも手入れが行き届いている小奇麗な男であったが、存在感があまりに薄っぺらい。悪人では
ないのだろうが、こんな男の嫁に行ったら、死ぬほど退屈だろう。
と、そんなことを考えていたときだった。
「――あなた、そろそろ時間ですわ」
「ああ、そうだった」
百合子が促し、万作がうなずく。
会場の正面にある壇上にあがって、剣菱グループ会長としての挨拶があるのだ。
「それでは昇一さん、申し訳ないけど中座させていただくわね」
百合子は微笑むと、万作と一緒に場を離れた。
自らも大企業の御曹司とはいえ、押しも押されぬ勢いである剣菱の会長夫妻を前にして、昇一もまた
彼なりに畏まっていたのだろう。目に見えて肩の力を抜くと、さきほどまでよりはややフランクな調子で、
悠理に話しかけた。
「さて、僕らはどうしようか」
それに答えようとして口を開いた悠理は、次の瞬間、全身が総毛だった。
(うげ〜)
昇一に手を握られたのだ。
だが、悠理は辛うじて声をあげずにすんだ。なんとか自制できたのは、他でもない豊作のためである。
ここしばらく、悠理は窶れていく豊作の様子に胸を痛めていたのだ。だが魅録の協力を得て、腹を括って
戦う決意をした豊作は、以前の生気を取り戻したばかりか、剣菱を継ぐものとしての貫禄さえ身につけつつ
ある。そんな兄を見てしまえば、いくら不本意な役を魅録から振られたとはいっても、我慢するしかないでは
ないか。
豊作や魅録の話は難しすぎて、悠理にはディティルまでは理解できなかったが、要はこの今井令息を
使って、黒幕を燻りだそうという意図であるらしい。どのような歯車が存在し、どのようにカラクリが動くのか、
そこまでは分からない。
魅録たちが参戦するまでの間、別に豊作は手をこまねいていたわけではない。社内の人間を疑いたくない
あまりに、探偵をつけることを反対していた豊作ではあるが、社外に向けては調査を進めてはいた。その結果、
今井グループの医療機器部門を扱う”今井メディカル”がここ一連の事件に一枚噛んでいるだろうことまでは、
おそらく、社内の誰かが今井メディカルと内通しているのだろうが、それは単なる憶測の域を出ないのだ。
それを調べるのが魅録たちの仕事である。
昇一の手は、女のようにすべらかで、生暖かい。嫌悪感が募ったが、悠理は決然として覚悟を決めた。
まるで今から死地に赴く兵士のように、色気なく。
(ええい、あたいも剣菱の女だ。男のひとりやふたり、こましてやる)
何も、魅録はコマせとまでは言っていないが。
(ままよ!)
心の中で唱えると、悠理はそっと男の手を握り返した。
ツヅク
二重にすみません。
前スレ689の続きです。
「秋の手触り」 続き楽しみにしてました。読めて嬉しい。
作者さんにお願いなんですが、出来れば今回の半分くらいの文字数で
改行してもらえないでしょうか。あと、段落ごとに一行余分に改行して
もらえると、もっと読みやすくなるんですが。
ご考慮いただけるとありがたいです。
>452
ご指摘ありがとうございました。
読みにくかったですね。
次からそのようにします。
>秋の手触り
待ってました!悠理がんばってますね〜。
すぐに殴ったりしないところが、彼女の努力を表してて
可愛い。
しかも、
>心の中で唱えると、悠理はそっと男の手を握り返した。
体中の毛を逆立てて、手を握っている悠理が目に浮かびます。
> 昇一の手は、女のようにすべらかで、生暖かい。
キショッ(W
>before ten minutes
あぁ、寝る前にここを見て良かったです。
いつもながら萌えでつ(゜∀゜)
このシリーズは何かとつぼに来るものが多い感じです。
私も魅録サイド読みたいです。
またのご降臨激しくお待ちしております!
悠理と魅録で書いてほすぃよん。クレクレごめん。
>Sway
446タンのいう通り、有閑らしい雰囲気が漂っていて、
読みやすくて、すごく好みです。
可憐がキレイで好きです〜〜
>秋
わ〜久しぶりの秋!!悠理えらい!
>before ten minutes
激萌えです。
読んでるこっちまでドキドキしてしまった。
また何かお話を読ませてください、ぜひ。
>秋の手触り
待ってました〜♪ パソコン大変でしたね。
悠理、頑張ってますね〜。
本当は、手握られた時点で、跳び蹴りでしょうけど・・・
続きすっごい楽しみにしてますvv
>370の続きです
「魅録」尋ねてきたのは意外な人物だった。
「…どーしたの?」ガチャ ドアを開ける。
「やっ、今帰りで。前通ってどーしてるかなって思って。
お前来てねーじゃん?心配でさ」「…?」
「そんだけ。─じゃ」「あ、うん。ありがと」背中を見せた彼が振り返る。
「…つらいと、思うけど。みんな…うん。みんなつらいからさ。
ってよくわかんねーけど。あんまし、へこむなよ。すさむなよ(笑)」「…うん」
「じゃ」ガチャ (何だったんだろ…?)
ピーンポーン 直接ドアを開ける。
ガチャ「どしたの魅録わすれも…の…」「可憐」見上げた先は魅録ではなかった。
自分の心が恋焦がれて止まぬその人。
「何しに来たのよ」「…入れて下さい。話したいことがあるので」
不思議に感じつつも、胸に薄く香る彼への想いが勝手にドアを、広く開けていた。
玄関先。
「…何?話って」「明日は来ますか?」
「わかんない。多分行かないわ。あんた達を見るの、まだつらいもん。それだけ?もうい…」
「─野梨子に、拒絶されたんです」「!?」
「気持ちを伝えたら、首を、振られて…」
可憐の頭にあの時の残像が見えた。彼女と美童の会話を聞いていた野梨子。
(あたしの気持ちを知ったから──)
バタン 答えが頭を掠めるやいなや、ドアが閉まる。
可憐の目の前は清四郎の胸だった。
「!?なっ…」「本当にすいません。でも、どうしていいのかわからなくて」
(いや…嫌!!)…ドンッ
はぁ、はぁ…
「っだからって、振った女を抱きしめるの!?寂しいから?あんた、人の気持ちを
なんだと思ってるの!?」「…っ」
清四郎は今まで見たことも無いような表情を浮かべている。
可憐を傷つけた後悔も見て取れるがそれよりも、もっと。
行き場のない、溢れた想いを持て余す。
幼馴染みを想う瞳。
こんな顔出来るんだ…可憐はぼんやり清四郎を見つめていた。
野梨子が彼を想っているのは周知の事実だ。
彼だってわかっていたはずなのに。
それでも、一度拒絶されただけでこんなにも取り乱す。
(あたしのためには、絶対こんな顔しないわ──)
ギリギリで保っていた、プライド、強さ──が揺らぐ。
彼の弱さを自分が包んであげられたなら?
(ダメ。何言ってんの?自分をキライになりたいの?)
─彼の迷う瞳。いつも見ているそれとは違う。もっと、胸まで見透かすような。
(お願い。抱きしめて、強く)
─どれだけ、野梨子を想っているのだろう。
(やめて。見ないで!こないだは、拒否出来たじゃない)
─だれかの代わりに見つめられている。切なさにうろたえている瞳。
(傷ついてもいいわ。早く抱きしめて)
─こんなに人は変わってしまうものなのか。
(それだけ、野梨子を想ってるって事ね…)
─拒絶するにはあまりにも切なすぎる空気が2人を取り巻く。
(誰か止めて。お願い、誰か…!)
これが、思考の限界だった。
フッ 力が抜ける。
もう一度、彼は彼女を抱きしめた。少しでも、埋まるはずのない、切なさを埋めたくて。
ゆっくり、玄関先で可憐を押し倒す。
「待って!」彼女は深く息を吐いた。
「(あたしの事本当に好きじゃないのなら)──くちびるには、キスしないで」
「わかりました」(…あたしは娼婦か)
でも、嫌だった。想いを伝え合うはずの唇が、嘘を言い合って重なるのは。
鎖骨にくちづける。
「…ぁ」
もう、理性はどこかに飛んでいる。
その時。
プルルルル…
ガバッ 我に返って、可憐は飛び起きた。
ガチャ「…もしもし?」美童だった。
「うん、なんとか。明日?…うん。わかった行くわ。うん、…ありがと。──じゃあね」
ガチャ 頭が冴えてくる。(あたし、…何しようとしてたの?)
玄関に戻って告げた。「帰って」「…」「おねがい、帰って」可憐の頬を、涙が伝う。
バタン 突然の訪問客は去って行った。
ずる…ベタン ドアにもたれて、座り込む。
自分を思っているわけではないくせに触れてくる清四郎が恨めしい。
そして、そうさせた野梨子を思うと胸がむかむかした。
(何で?こんなことしてあたしが喜ぶハズないじゃない。結局あんたも
傷つくことになるのよ)
『…みんなつらいから…』魅録の言葉が思い出される。
(みんなって誰よ…)
本当は。
清四郎を拒めない自分に溜息がこぼれる。
でも、今は認められない。
そうさせるのが、何より曲がったことが嫌いなはずの彼女だから。
野梨子にこの苦しい混沌をぶつけるしか、今の可憐には出来ない。
黄桜ビルディングを出ると、下で魅録が待っていた。
「よぉ。お前さっき気付いてなかったろ。俺あっちから降りたからさ」「…」
「何しに行ったんだよ?」「魅録は何しに行ったんです?」
「俺は、〜〜ただ元気出せって、可憐だけじゃなく辛いヤツもいるからみたいな」
早口に吐き捨てる。「お前だよ、俺が聞いてんのは」「僕は…」
「──あんまさ、可憐に期待持たすようなことすんなよ。結局傷つけんだろ、
お前のことだから」「別に魅録に迷惑かけてませんよ」
「野梨子は!」思わず声を荒げて言う。
「野梨子は傷つく。知ったら絶対、傷つくんだ」「!……」
「俺じゃないんだよ。傷は癒してやれない。なんでわかんねんだよ!?」
「野梨子には、振られましたから」淡々と、清四郎は続けた。
「…わかってやれよ。あいつにはお前しかいないんだ」
(どうして野梨子がお前を拒むのかもわかんねーのかよ!?それだけ、あいつしか
見えてないって言うのかよ)溜息がこぼれる。
「それでも、守れないって言うなら。そん時は、」まっすぐ見つめる、切れ長の瞳。
「そん時は、俺が貰う」「…!」
言い切ると、そのまま魅録は去って行った。
溶けそうな夕焼けが、彼らを覆いつくしていく。
続きます。
またまたコソーリとうpします。
>>445 「ほんと、魅録がうらやましいよ。本気の友達がいっぱいいてさ」
決して流れるようではなかった村重の話を一通り聞いて、美童は僅かに羨望の気持ちを
含んだ声音で呟いた。
悠理も、村重も何も言わない。
「でもね、ちょっと時間をもらえないかな。本人達を見てみないと、僕自身どう動けるか
わかんないんだ」
美童はそれまで前のめりの姿勢をとっていたが、急にソファの背もたれに寄っかかって
天井を見上げる。
村重は無言で頷く。
悠理は両足を床につけてロッキングチェアを止め、立ち上がった。
「そういうことだ、村重。時間が経てば経つほどヤバイってのは確かだけど」
「わかりました」
村重は一礼して出て行った。
そのドアが閉まりきると同時に、悠理が言った。
「美童、ごめんな。今日、どうせデートあるんだろ。行けよ」
美童は心憎いばかりの悠理の気遣いに、『さんきゅ』と声を出さずに言って笑顔で
出て行った。
今日の相手は、某航空会社のステュワーデス。
フライトの都合でたまにしか会えない人。
知り合ったのは去年のクリスマスなのに、今日でたったの3回目。
それが、今朝ほっとした理由だった。
約束の場所へ急ぎ足で向かう途中、美童は道路を挟んで反対側によく知っている顔を
ふたつ見つけた。
普段なら、気にも留めずにそのままやり過ごすが、今日はそれができなかった。
足を止め、視線は二人を追っている。
距離があるためはっきりとは言えないが、どうも、二人は腕を組んで寄り添うように
歩いているみたいだ。
美童はポケットから携帯を取り出し、まずはメールを送信した。
それから、電話をかけた。
ひとつは断りの電話。
そして、もうひとつは呼び出しの電話。
まだまだ、続きます。
>kiss
単純に清×野と思ってたら、何か人間関係入り乱れてきましたね。
清×野で清×可で、魅×野ですか。野梨子の方も魅録に傾いたり
するんでしょうか。続き、楽しみにしてます。
>Sway
美童が見てしまった二人って、やはり清×可?
清四郎は果して魅×可にからんでくるのか、二人を取り持つのか、
うーん、今のところ謎だ。続き待ってまーす。
>秋の手触り
祝!カムバック、ありがとう。
悠理が、ぐっと自分を抑えてるのがとってもよい!!
>何も、魅録はコマせとまでは言っていないが。
本当に、そんなことになったら、私はぶっ飛んでしまいそーだ。
野梨子の10分、読んでくださった皆さんありがとうございます。
before ten minutes 魅録サイドいってみます。魅×野がダメな方は飛ばして下さい。
一気に8レス分お邪魔します。
尚、各レス頭に、対応する野梨子サイドレスのリンクを張ってみました。
(before ten minutes 野梨子サイド→>>427-
>>434)
(side-N-1→
>>428)
魅録は廊下を走って生徒会室に向かう。
なにしろ今日は急いでいる。
友達の組むバンドの初舞台を見逃す魅録ではない。
辞書と数学の問題集さえ鞄に入れれば、今日はもうその部屋に用はない。
はずだった。
魅録はライブ会場までの時間を逆算しながら、生徒会室のドアを開けた。
まったく、何の気なしに。
(side-N-2→
>>429)
出窓の枠に、野梨子が座っていた。窓の外を、見るとはなしに見ている。
見間違いでなければ、それはしょっちゅう自分がいる場所で、
それはしょっちゅう自分が取っている行動だった。
傾きはじめた陽が黒い髪に反射して、白い頬を少し陰らせている。
いつも必ず揃えている両膝を少し油断させて、なんとなく脛を揺らす野梨子は、
きれいだった。
魅録がドアを開けたことに気付いたらしく、野梨子はそこから飛び降りた。
少しだけスカートが翻った。
そんな行動も野梨子にしては珍しく、魅録は思わず笑って言った。
「そんなに慌てなくってもいいじゃん。すわってれば」
野梨子は少し顔を赤らめて、向こうを向いてしまう。
なんとなくバツが悪いのだろうか、魅録の言葉は無視だ。
そういうところが野梨子だ。そこがまた好きなんだ。
給湯室に向かう背中は、まだ眩しい。
魅録はさっき間で野梨子が座っていた窓枠に腰掛けた。
同じポーズを取ってみる。
なにやってんだ、と思う。野梨子は自分の手には入らない。
「美味しいコーヒーがありますのよ。飲みますでしょ、魅録」
勝手に話しながら、野梨子はコーヒーの袋を棚から取り出した。
何度も確かめたことだ。野梨子の隣には、誰がいるか。
そいつがどれだけ野梨子を想っているか。
たとえその本人が気付いてなくても、魅録にはよく分かっていた。
でもな、好きなんだよな。小さな背中に目を向ける。
振り向け。ちょっとこっち見ろよ。
(side-N-3→
>>430)
「なにか、いいことがあったときに開けようって思ってたんですけど…」
言いながら、野梨子が振り向いた。
テレパシーが通じたような気がして、魅録の心臓が何度か大きな音をさせた。
「いいこと、じゃないか? 俺とふたりでコーヒー飲むの」
思がけずふざけた言い方になってしまった。動揺を気取られたくない。
野梨子はそれに応えて笑った。
なんとなく口から出た言葉だったけど、それは正直な気持ちだった。
いいことだと思ってる、すげぇ、特別ないいことだと思ってるよ、俺は。
今、誰かが入ってきたら、もう特別は終わってしまう。
だから、この瞬間だけでも、自分だけのためにそこにいてほしいと
魅録は柄にもなく、野梨子の背中に祈っていた。
何か喋っていないと、沈黙が野梨子に想いを告げてしまいそうな気がして、
魅録は軽い調子で喋っていた。野梨子もぽつぽつと答える。
「ああ、コーヒー飲みたいんだけど、でも、今日はちょっと寄っただけなんだ。
中学ん時のダチがバンド組んでてさ、夕方からライブがあんだよ。
…えーと6時には着きたいからさ。もうあんまり時間ねぇな…」
言いながら、今日の予定を忘れそうになっていたことを思いだした。
あぶねぇ、本当にもう、行かなきゃ。
残念な気がする反面、その予定に感謝もしていた。
あんまりふたりでいるのも良くないな、我慢できなくなる。
(side-N-4→
>>431)
「でもちょっとくらい飲んでいけますでしょ。本当にとっておきの豆ですのよ」
強気なのに少し甘えるような口ぶり。これも好きだ。
魅録は出窓から降りた。コーヒーを飲む時間がなくなってしまったので、
野梨子に謝らなきゃいけない。給湯室に近付く。
こっち向いて、笑ってみろよ。俺を見て、俺だけに笑ってみろよ。
もう一度念じてみて、魅録は自分の馬鹿馬鹿しさに呆れた。
でも、もしも。もしもこれが通じたら――。
声を掛けようとした瞬間、野梨子が振り向いた。
笑顔。自分だけに向けられた笑顔。
もしかしたら、と勘違いするのに充分な笑顔。
だから諦められないんだ、お前のせいだからな。
「野梨子、」
瞬間、自制するより先に、声が出ていた。
しまった、もう止められない。
「今、言うつもりじゃなかったし、ずっと言うつもりじゃなかった。
だから別に聞いてくれなくていい。勝手に言うから、そこにいてくれたらいい。
すぐに忘れてくれたらいい。なんだったらもう、耳塞いでくれてていい。
ちょっと今、勘違いできてて、嬉しいんだ。だから、少しじっとしててくれ」
自分の言葉を聞いていると、だんだん何とでもなれという気になってくる。
野梨子を、困らせてしまう。魅録は多分、もっと傷付いてしまう。
ごめんな、野梨子、許してくれ。お前には清四郎がいるんだから、
ちゃんと幸せになってくれよ。
(side-N-5→
>>432)
「俺は野梨子が好きだ、ずっと好きだった」
驚くほど力強い声が出た。口に出すと、もっとはっきりした。
そうだ、ずっと好きだった。初めて会ったときから、ずっと好きだった。
その姿も、性格も、喋り方も、生きてきた時間も、ぜんぶ好きだ。
だから当然、いつも野梨子の隣にいるやつのことも、好きだ。
鋭く、聡く、強く、いつも必ず完璧に野梨子を守ることができる親友。
…嫌なやつなんだけどな、あいつ。
うわ、やっぱり言うべきじゃなかった。野梨子が動けなくなっている。
「ごめん、忘れてくれ、なかったこと、な、いきなりこんな、ごめん」
無垢な瞳を見ていられなくなって、魅録は慌てて言った。
限界だ、野梨子。俺はもう逃げる。都合がいいと分かってはいるが、
不器用だけど聡明な野梨子が、明日からも普通にしてくれることを願って。
誰かが、魅録の袖を引いた。
「…違いますの、私は」
声を聞いても、一瞬野梨子だと思えなかった。
野梨子の目は、潤んでいた。予想した表情じゃなかった。
「多分、私も魅録が、――魅録が好きですわ」
(side-N-6→
>>433)
魅録は、たった今自分が何を言われたのか、全く分からなかった。
欲しくてたまらなかった答えなのに、それが実際に発せられることを
想像すらしていなかったからかもしれない。
幻のようなその言葉をつかみ取ろうと、野梨子の目の中をさがす。
「私は、魅録が好きです」
野梨子が、もう一度言った。それはもう、幻ではなかった。
曇りのない意志の強い瞳。ああ、これも好きなんだ。
魅録は、野梨子を抱きしめた。細くて柔らかい体が、腕の中にある。
…でも、本当にこれはここにあるべきものなのか。
墓穴を掘るかもしれない。信じてないわけじゃない。
しかし、どうしても確かめずにはいられなかった。
「俺は、清四郎じゃないぞ。冷静でも、完璧でも、強くもない。
あいつより優れてるとこなんてなにもない。そんなんで、いいのか?」
野梨子いつも最初に名前を呼ぶ男、というポジションを、
自分のものにできるのだろうか。あいつの代わりができるのだろうか。
野梨子が急に顔を上げ、その拍子に野梨子の額が魅録の顎に当たった。
そして、妙に早口で言う。
「魅録は、清四郎とは違いますわ。まっすぐで暖かくて、触れたくなって―、
いえ、でも、そんなことじゃなくて、だって、魅録ですもの、
どんなのでも、魅録だからいいんですの。それじゃ、だめですの?」
言葉に嘘はない。そうか、それでいいんだな、野梨子。
もしかすると野梨子は、清四郎のことをちゃんと考えたことがないのかもしれない。
でも、もういい。決めた、こだわるのはやめる。
清四郎、俺たちはフェアだ。お前の代わりになる必要はない。
俺は俺で野梨子が好きだ。渡したりしない。
はっきりと、頭の中で文字にして、繰り返し読んだ。
そうしないと揺らいで、立っていられなくなりそうだった。
(side-N-7→
>>434)
魅録は野梨子を再び抱きしめた。
頭の中はとめどない考えで溢れかえっているが、もう何も口に出さなかった。
今、野梨子がこの自分の腕の中にいて、
触った指をもれなく熱くしてくれることがすべてだ。
魅録は、随分長い間野梨子を抱きしめていた。
ぼんやりと、このまま体が溶けてひとつになってしまえばいいのに、
そしたら野梨子の無自覚な部分も自分のものに出来るのに、などと考えていた。
「…コーヒーを…」
野梨子が急に声を出して、魅録は我にかえった。
至近距離で目が合う。まだ意識がはっきりしない。
野梨子がいつものような口調で言った。
「魅録、ライブに行くんですわよね? 6時なら、もう」
―忘れてた…!
(side-N-8→
>>435)
「やべえ、遅れるとまずいんだよ!」
野梨子を両手の中におさめたまま、壁の時計を確かめる。
ぎりぎり間に合う時間だ。こんな時に、冷静なやつだな。
そういうところが、またいいんだけどな。
「いってらっしゃい」
満ち足りた野梨子の微笑が、魅録の頬を緩める。
魅録は、もう一度ぎゅっと野梨子を抱きしめて、
「じゃあ、また、あした」
わざといつもと同じ挨拶をして、体を離した。
「ええ、また、あした」
野梨子も、いつもと同じ挨拶をした。
魅録は鞄を手にとり、出入り口に向かった。
野梨子は給湯室の入り口から動かない。
魅録は、一歩進むごとに息が詰まっていく気がしていた。
あんなに確かめたのに、ほんの数メートル離れただけで、
ものすごく不安になる。手に残った柔らかさも、もう嘘のようだ。
これから、もっと辛くなるかもしれないな。
もう一度、まだぼんやりしている野梨子を見て、魅録はドアを閉めた。
辞書も問題集もその鞄に入っていないことに、魅録は気付いていない。
今夜、清四郎ん家に行くか―。
魅録は、浮かんだ考えにもうすでに緊張しつつ、廊下を急いだ。
魅録の10分も、おしまいです。この後、以前にupした2分がくることになります。
(two minutes→清四郎サイド>>342-
>>347・野梨子サイド>>378-
>>383)
ありがとうございました。
>before ten minutes
リアルタイムで遭遇!
嬉しい。そして萌えた。
>before ten mimutes(side-M)
わ。私も萌えましたー!!
>辞書も問題集もその鞄に入っていないことに、魅録は気付いていない。
特にここ!!イイ〜〜〜!!スゴクイイ〜〜!!!
モニタの前でにやにやしてしまいました。危険危険(笑)
全体的に、時間の長い話じゃないし、派手なシーンもなくて、
本当に何気ない感じなのに、その分そのシーンが目に浮かんでくるようで、
本当につぼはまりまくりでした。
>before ten mimutes(side-M)
おなじく萌えです。
魅録サイドも読みたいな〜と思ってたら
ウプされてて、うれしすぎ!
私も嬉しい!
魅録も野梨子も清四郎も「らしく」ていいですねー。
野梨子にとって清四郎が特別な存在だと魅録も気がついているあたり、
魅録も少し切ないですね。
>そしたら野梨子の無自覚な部分も自分のものに出来るのに、などと考えていた。
こことか、いいなあ。
カナーリ萌えました。また最初から全員分のを読もうーっと。
>before ten mimutes
ああ、野梨子がうらやますぃー・・・。
これで全部終わりかな?
もしも続きを思いついたら、ぜひ書いてください!シリーズ化きぼんぬ。
>before ten mimutes
まさか魅録サイドが見れるとは思ってなかったんで嬉しい限りです。
すごい萌えましたー。
清四郎の家に行く話も是非読んでみたいです・・・!
やっぱ、清四郎んちで「娘さんをください!」をやるのかしら。
ある意味実父より難関だよね。魅録がんがれ!
>before ten minutes
萌えまくり!魅×野スキーとしては、もう、たまらん。
本命には純情な魅録が、つぼですわ。
私も、シリーズ化希望。
マターリと待っております。
http://that.2ch.net/test/read.cgi/nanmin/1051259777/496の続き 『有閑キャッツアイ』編。一乗寺邸・悠理サイドいきます。
***********
うぃーーーん。
扉が閉まり、空間から光という光が追い出される。暗闇が悠理に襲いかかった。
機械が作動し、悠理の体が揺れた。身動きすると、いや正確には身動き一つ
すらできない狭窄した空間。呼吸をするのさえも苦しい。
時間にしたらほんの数十秒。しかし、悠理には永遠とも思われる長い時。
(早く!)
悠理は声を出す事も適わず、心の中で絶叫した。
早 く 、 こ こ か ら 出 せ 〜 〜 っ !
「この写真は?」
ほんの数十分前のこと。
剣持悠介、いや悠理は、油で汚れた調理場の壁の一点に目が引き寄せられた。
これも少々油で汚れてはいたが、柔らかな微笑みを浮かべる少女が一人、
写真には映っていた。美人ではないが、人なつこい笑顔。背中まであるような
長い茶色の髪をゆるく編んで、両脇に垂らしている。野梨子や可憐が着ている
のと同じメイド服を着ていた。
少女の笑みに誘われるように、悠理もふっと微笑む。
と、頭を固い物でパカン!と叩かれる。顔をしかめて振り返ると、薄汚れた
コック服の料理長が仁王立ちしていた。
「遊んでないで、仕事しろ」
「すみません」
熊のような料理長の背中に蹴りの一つでもお見舞いしたいところだが、
ぐっと我慢する。黙って調理台を拭き出すと、料理長がぽつりと呟いた。
「可愛い子だろ。ここで働いていた。だが、ある時、行方不明になって、
それきりだ。」
突然の言葉に、悠理はごくりと、唾を飲み込んだ。
「そ、それはこの家の、罠にはまったっていう……?」
「噂だ」
強い口調で悠理の言葉を遮ると、料理長は皿を並べ始めた。
「だがな。ここでいなくなっても、誰も探しやしない。奥様達が噂が広まるのを
嫌がって、大金で使用人を口止めするからな。お前も……気をつけろ」
悠理の前に料理とワインの壜が並べられる。
料理長はじっと悠理の瞳を見つめた。何か言いたげに。
やがて首を振ると、料理の載った盆を顎で示す。
「琴子さまの部屋へ届けろ」
ワイングラスの脇に、赤いリボンのついた、鈍く光る黄金色の鍵が
載っていた。
うぃーーーーん。
作動音が続く。まだか。爆発しそうな悠理の頭にさっきの料理長の言葉が浮かぶ。
「一階の北廊下の奥に、配膳用のエレベータがある。これはそのエレベータの
鍵だ。スイッチ脇の鍵穴に入れて捻れば、エレベータに電源が入る。料理を
乗せて扉を閉めれば、料理は二階に上がっていき、琴子様付きのメイドが
上で受け取る」
あくまでも、興味なさげな風で悠理は聞いた。
「へえ。そのエレベータは琴子様の部屋に直通なんスか」
「だろうな。俺は、まぁ、見た事がないから想像だがね」
「俺は乗っていかなくていいんスか?」
悠理の問いに料理長はたくましい肩をすくめる。
「人は乗れねえ大きさだ。何せ、料理用だからな」
そして―――、今、悠理は「人の乗れないエレベータ」に無理矢理体を押し込めて
いる、という訳なのだった。
*******
すみません、料理長は厨房にいて外の異変に気づかず、寝てもいないってことで(笑
どなたか、続きお願いします。
待ってました!キャッツアイ!
キャッツの悠理が一番好きですー
>キャッツアイ
本当に、久々、ありがとー!
いろんな連載が止まっていて淋しい思いをしておりましたが、ここで読書の秋って
ことで、いろんな方が帰ってこられるのを待っております。
「雨がボクを狂わせるので」うpします。
またも801ありなので、お嫌いな方はスルーお願いします。
今回美×清です。
滝のような水の固まりが、礫(つぶて)のように清四郎の体を打ち続ける。
部屋を逃げ出した清四郎は道場の裏手にある林を彷徨っていた。
白地に藍の柄の浴衣はたっぷりと水を含み、重く彼に纏わりつく。
やがて、一本の木にぶつかると、清四郎は右の拳で激しく幹を叩きだした。
その時何か叫んでいたかもしれない。だが、叫びは強い雨音にかき消されていった。
叩き疲れて、ごつごつとした幹にもたれかかる。
痛みに気がつくと右の拳の表面は破れ、赤い血が流れ出している。
手の甲が激しく脈打つのを感じた。
清四郎は血の噴出した己の手の甲をじっと見た。
ぴくぴくと動く皮膚が、快楽の極みに昇りつめた野梨子の姿にだぶって見える。
そう思った瞬間、清四郎の体の下から上へ、欲望の源から物欲しげな唇に、
熱が走った。
鼻の奥がツンとした。瞳の底から熱い泪が溢れ出す。泪は幾筋もの流れとなって、
罪深い男の口へ注がれる。その口は何か呟いていた。熱にうかされたように、
まるで祈りを唱えているかのように。
「ちがう……ちがう……」
木の根元にひれふした。両腕を投げ出し、頭を泥の中にすりつけている。
それはまさに狂乱状態を呈していた。彼の黒髪は泥にまみれ、頬や額にもどろっとした
汚れや小さな木の葉が貼り付いている。ひどく地面に擦り付けた額には、血が
滲んでいた。まだ彼は呟いている。
「ちがう……ちがう……」
いつのまにか、後ろに誰かが立っていた。突然、名前をよばれて、呟きが止まる。
「清四郎。」
ゆっくりと振向いた。
なぜ、濡れてないんだ。彼は。
ようやく清四郎は美童が大きな灰色の洋傘を手にしているのに気づく。
瞳が。彼の瞳が笑っている。いや、微笑んでいる。
なぜ、そんな顔をする。そんな、慈愛で満ちた、愛おしむような微笑み。
頭から水を滴らせた清四郎は、ゆらり、と立ち上がった。
己の唇ににやりと皮肉な笑みが浮かぶのがわかる。
なぜ、笑っているんでしょうね、僕は。こんな時まで、いつものような顔をして。
こんな――、愚かしい行為をした後だというのに。
あいかわらず慈愛の表情を浮かべた美童の唇が動いた。
「泣いてるの?」
何をわけのわからないことを。泣いているわけないでしょう、この僕が。
「なぜ、泣くの?」
「泣いてなんかいませんよ。」
そうとも。この頬を流れ落ちる熱いものが、雨でなくて何だと言うのか。
自分自身を絞め殺されるような痛みが、そしてその痛みを超えてくゆり来る陶酔が、
僕の感覚を麻痺させ狂わせる。
頬を伝う涙は涙ではない。咽頭の奥から漏れ出てくる声は嗚咽ではない。
その証拠に僕は、君をじっと見つめて、いられる。
灰色の陰の下で青い光が瞬いた。美童が一歩前へ踏み出す。清四郎は一歩後ろへ下がった。
もう一歩、美童が前へ進む。清四郎はまた一歩下がり、木の下に追い詰められた。
清四郎の唇から笑みが消える。踵を返して逃げようとする。
金のたてがみをした狼の蒼く暗い瞳が光った。
ばぁっと吹いた風に、美童の手を離れた傘は吹き上げられ、飛ばされていった。
金の狼が美しい鷹を捕らえた。
鷹は渾身の力でもがいている。常ならば狼の方が逆にやられているだろう。
だが、今は。鷹は瀕死の鷹である。
それも自分のクチバシで自らを傷つけたのだ。傷は相当に深い。
狼は鷹が逃げられないと知っている。知っていて、力を緩め、逃げ出そうとするところを
又押さえ込み、愉しんでいる。
鷹は、逃げ出そうとするたび、泥にまみれ、その美しい翼を汚していく。
野生の獣はごくりと唾を飲み込む。
鷹は最後の脱出をかけて暴れ出した。
狼は腹の内で笑いながら考えた。これは少し厄介だ。何か鷹を縛るものを。
「清四郎がどこへ行ったのか、野梨子が気にしてたよ。」
美童の手を逃れようと抗っていた清四郎の体から、ふっと力が抜けた。
その瞬間、彼の手は空を切り、横様に腕から地面に落ちた。
派手な水音がするのと、呻き声がするのと一緒だった。
「あっ、つぅ!」
美童は、右腕を押さえ、痛みに眉をしかめる清四郎を立ったまま見下ろしている。
清四郎は浴衣の肩を抜き、打った右腕を確かめた。
みるみるうちに、上腕は赤黒く腫上がって、鈍い痛みが襲ってくる。
美童が横に膝をついて、腫れた部分を見ている。
「……っっ!」
清四郎は痛みに呻いた。美童の手が傷を鷲掴みにしたのだ。
体中から脂汗が噴出し、額からぽとぽとと落ちた。
くすっ。青い瞳が笑う。
そして。清四郎はぼんやりと悟った。
もう逃げられない。
すでに美童もぐっしょりと濡れて、体中から水を滴らせていた。
まるで着物に意思があるかのように、浴衣の方から美童の肩を滑り落ち、
白い肌を露にした。着物は帯で腰のあたりに留まり、それが一層、美童の
上半身の剥き身を際立たせる。
すっと腕が伸びてきた。清四郎の首根を押さえたかと思うと、もう一方の手が、
「あっっ!あぅっ、はぁっ!」
清四郎の体が跳ねた。あろうことか美童は左手で清四郎の傷ついた右腕を
思いきり押さえ付けたのだ。さすがの清四郎も堪らない。
自由な方の腕で美童を跳ね退けようとするが、あまりの痛みに力が入らなかった。
「やめろ!美童ぉ……っ」
やっとのことで美童の腕が離れた。金髪の男は悪魔の笑みを口元に浮かべている。
(この……)
「ごめんね、清四郎。悪いとは思ったんだけどサ、やっぱり清四郎って強いから、ね。」
痛みにまだ体を震わしている清四郎の唇がふさがれた。
そのまま獣の牡がのしかかってくる。
体中を男の手が這いずり回る。清四郎は無駄な抵抗を試みていた。
禁を犯そうとする男と、それから逃れようともがく男。
二人の若い牡が泥まみれになって闘っていた。
美麗なブロンドの牡が、黒髪の牡の秘密を暴き立て、つかまえる。
長く白い指で彼の男根を弄びつつ、彼の舌を求めた。
清四郎が横を向くと、無理矢理こちらを向かせ、長く長いキスをした。
そして、彼の左手首を掴むと力づくで自分のを握らせる。
そこはすでに熱くたぎっていた。
「どうしようって言うんです。」
半ばヤケになりつつも、清四郎は努めて冷静になろうとしていた。
目の前に彫刻のように整った友人の顔がある。
青い瞳の下の赤い唇。紅を塗ったかのように、赤い。その口が開いた。
「興奮した?僕と野梨子のプレイ。」
ざぁぁぁぁ。
今初めて耳にしたかのように、清四郎の頭の中に雨の音がなだれ込んでくる。
「すごいでしょ、あの野梨子が自分から欲しがるんだよ、僕にしてくれって。」
……痛みが……。わかってる、痛いのは腕じゃない。苦しいのは僕の心臓ではない。
猛り狂う欲望が、認めたくない劣情が、僕を揺さぶり貶める。
くすっと、又美童が笑った。
「すごい……!ほら、こんなになってきた。見てごらんよ、自分のを。興奮しちゃうな、
こんな立派なの見たら。興奮して可愛がってあげたくなっちゃった。」
ふっと美童が目の前から消えた。いぶかしむ間もなく、下半身から押し寄せる――
快感の渦。
「び、美童……やめ……」
美童が顔を上げた。快感が波が引くように去り、焦燥感が残る。
彼の口から己のものまで唾液が糸を引いている。清四郎ににこっと笑いかけると
再び、清四郎自身の上に覆い被さる。再び押し寄せる、快感の波。
「あ……、び、美童……」
思わず彼の髪に両手を滑り込ませる。意図せず、美童の頭を己の股間に押し付けるような
形になる。繰返される快楽のうねりに目が霞む。
(あっ、あっ、いいですわっ、美童!)
突如、今の自分と同じ状態で美童に慰められていた野梨子の姿が脳裏に浮かび上がった。
野梨子……。野梨子もこうやって美童に……。
ああ、野梨子。
清らかな野梨子の横顔が卑猥に歪んだのが忘れられない。
野梨子は、いつもあんな風に、いや、もっといやらしく美童に虐められているのか。
どんなことをして虐められるんだ。猥褻な言葉を言わされるのか。
恥ずかしいところを見られて羞恥に顔を赤く染めるのか。
妄想を伴った快楽が徐々に清四郎を追い詰めていく。美童の金髪を握る手に力が入った。
その時、ふと美童は清四郎を解放し、にやりと笑った。
「まだ、だめだよ」
美童のものは、熱せられた塊だった。導かれて手を触れると、びくりと揺れる。
白い白い雪のような美童の皮膚の上で、そこだけが異物のように、赤くたぎっていた。
教えられるままに手をすべらす。機械仕掛けのように手が動き出した。
清四郎の手が働き出すと、美童の手も又、清四郎のものに伸ばされる。
ぬるりとした感触に、不思議と嫌な感じがしなかったのは、もうすでに
美童の術中にはまっていたのかもしれない。
満足そうに美童が目を細めた。白磁の喉奥から荒い息使いが聞こえる。
と、美童の瞳が清四郎を捕らえる。長い睫毛に縁取られた青い瞳が清四郎を誘う。
引きずり込まれそうになった清四郎が邪念を振り払おうとすると、
美童の指が快楽の道筋を辿り、清四郎はのけぞった。
再び美童の唇にくわえこまれる。快楽の道をひた走りさせられる。
縁がもうそこまで見えていた。
しかし、また離される。我知らず、くっという悔しげな声が出た。苦しい。
「清四郎、いいよ。動かして……」
熱にうかされたような、男の切ない声。その声に突き動かされるように、美童のそれを
動かす、自分の手。
次第に清四郎は妄想に蝕まれていく。
(清四郎、いいですわ。動かして……)
情欲の雨が互いに貪り合う獣たちを濡らしていく。
美童が耐え切れずに声をあげた。清四郎も唇を噛んでこらえているが、息が荒い。
金髪が怪しく翻る。
「ねぇ……」
妄想の中で円らな瞳の野梨子がねだる。
(清四郎……?、欲しいんですの)
「来てよ……、清四郎……」
清四郎は目の前の白い体を羽交い締めにして抱いた。腕の痛みなど感じなかった。
自分から美童に口づける。熱く、舌がからみあった。
汚い。穢らわしい。醜い。醜悪だ。
だから、何だ。
今、こんなにも欲しい、僕は……あなたが。
腕の下で美童が悲鳴をあげる。
「せ、清四郎、もっと優しくして……」
構わず、突き進んだ。美童が何か叫び、抗おうとする。動く方の腕で金髪を絡め取り、
地に組み強いた。組み伏せられながら、美童が笑う。
「やっぱり清四郎は強いね。」
濡れた白い背中。野梨子?いや違う。
美童が喘いだ。その声が清四郎を駆り立てる。
「いい……ですか、美童?」
潤んだ青い瞳が清四郎を見ている。
「清四郎……僕……」
体の中を電流が走り抜ける。もうそこまで来ている。
駆け抜けようとする己を必死で押し止めて、清四郎は疑問を口にした。
「なぜですか、なぜ、美童……」
「あっ、はぁっ、ああっ、清四郎っ、いいよ……」
「美童、なぜ、なぜ……」
ふふっ。笑い声が聞こえる。
「愛してるよ、清四郎」
思わず言葉を飲む清四郎に、美童は邪悪な瞳で笑った。
「愛してるよ、清四郎……」
笑っている。僕を、情欲にまみれたこの僕を。
神聖にして犯すべからざる野梨子が汚れ堕ちていく様を見て、興奮していたこの僕を。
ああ、僕は、僕は……は。
「あっ、美童、汚したい、あなたを汚したい。汚してもいいですかっ……!?」
そう叫ぶと清四郎は引き抜き、美童の白肌の上に放った。
飛沫は美童の髪に、背中に、臀部に、舞い、
金色の男をほんの一瞬だけ、汚すと、たちまち雨に流されて、
消えた。
=====================
6月某日。五人目。菊正宗清四郎。あと−−1人。
=====================
▼▲▼つづく▼▲▼
すみません、498は<63>の間違いです。
やっと801部分が終わりました。お嫌いな方すみませんでした。
あと少しで終わります。
>雨
あと一人…美童自身なのでしょうか。
はらはらしながらお待ちしております。
有閑倶楽部はこれでみな兄弟姉妹になったわけだ
>505
世界は平和!人類は皆兄弟!…アルヨ
>>468の続きをまたコソーリとうpします。
「とても久しぶりだった、その子に会ったの」
「……」
「お互いに別々の中学行っちゃうとね、そこに馴染むのに忙しくて会わなくなっちゃって」
「……」
「確かに、ヘンな男に絡まれるのって、珍しいことじゃない」
「……」
「でもまさかね、魅録の友達にそんなヤツがいるなんで、思いもしなかったのよ」
「……」
「あたしはね、そういう男に虫唾が走るの」
「……」
「我慢できなくて、気付いたら、魅録に右腕つかまれて…」
「……」
「もう、だめだわ。わかるの」
「……」
二人は、あてどなく、夕闇に覆われた街を歩いていた。
清四郎は無言のまま、可憐の言葉に耳を傾ける。
どこへ行こうとも何をしようとも言わなかった。
ひたすら歩き続け、気がついたらとある場所に来ていた。
『Cocoon』
二人は、階段を下りていった。
魅録は、美童にしては珍しく強引な呼び出しに、何事かと訝しく思いながらも目的地に
向かっていた。
ここら辺は、普段、魅録が足を向けない場所で、一人で歩いている自分がやけに浮いて
見える。
自分を呼び出すくらいだから女連れではなかろうと思いつつ、やっと見つけた、聞いた
こともない店のドアを開けた。
カウンターの奥の席に、見慣れた金髪が座っている。
隣に座ると、変わりない笑顔をこちらに向けた。
その表情から、意図することを何も見抜くことはできなかった。
「急で、ごめん」
「別に、俺は予定なかったからいいけどな。この時間にお前に呼び出されるなんて、
明日雨降りそうだな」
「僕だって、たまには普通に飲みたいさ」
「清四郎も来んのか」
「来ないよ」
「って、俺だけ呼んだのか?」
「そうだよ。どうせ、家にいないの知ってるし」
「どういうことだよ?」
「歩いてるの見たしね。邪魔するのもなんかなって思って」
「誰と?」
「さあね。…魅録、誰を信じるかっていうのは、結構難しいことだよ」
「何が言いたいんだ?」
「みんながみんな、応えてくれるわけじゃない」
「……」
「目を背けちゃ、ダメだよ。魅録はいっぱいチャンネル持ってるんだから。時には
嫌なものも見なくちゃなんない」
「お前、なんで…?」
「僕、ほんと魅録がうらやましいよ。村重くんだっけ、いいヤツだよね」
美童は何杯目かのカクテルを飲み干し、去っていった。
その後ろ姿を見ながら、最近会ってない村重の顔を思い浮かべる。
まだ、続きます。
>Sway
魅録をさとす美童が何か素敵。登場人物がそれぞれに若く、初々しくって
いいです〜
>Sway
>510
うん、うん。美童いいなぁ。
可憐がすごくキレイなのでこのお話
大好きです。
Deep Riverうpします。
6レスお借りします。
>409さん。
遅レスですが、ご指摘の通りです。すみません。
>>401 生徒会室を相次いで出て行った悠理たちの足音が、次第に遠ざかっていく。
その音が校庭から聞こえてくる笑い声にかき消される頃になって、
清四郎はぽつりと呟くように言った。
「珍しいですよね、残ったのが僕等だけだなんて」
悠理たちが散らかしたままの旅行の写真を掻き集めていた魅録が、
手を止めて清四郎に視線を向けた。
「そうだな。ま、たまにはいいんじゃねえか? 珈琲、もう一杯飲むだろ」
「ええ、戴きますよ」
魅録が二つのカップを手に戻って来ると、清四郎は薄い穹蓋の色そのままの光を浴びながら、
目蓋を閉じていた。
「もしも今度生まれ変わったら――そう考えるのは女々しいですか」
普段の清四郎からは考えも付かないような気弱な声音に、魅録はふと胸騒ぎを覚えた。
「いいよ、言っちまえよ」
「僕は、野梨子の幼馴染なんかには、なりたくないですよ」
訥々とした口調。だからこそ余計に、清四郎の深い苦悩が魅録に伝わってくる。
「何処か遠くで生まれて、一生に一度擦れ違うだけでいい。そうすればこんなに
……苦しいこともないでしょう」
それでも、例え一生に一度でも、擦れ違いたいと願っているんじゃないか。
清四郎の言葉の端々に滲む深い想いが、魅録にも空気となって伝わってくる。
「どうしてそんな思いをしてまで、諦めようとするんだ?
お前が菊正宗の人間じゃないということが、野梨子との間の障害になっているとでもいうのか?」
「僕が父の実子ではないということだけなら、僕は彼女を諦めたりなんかしませんよ」
「じゃあ……」
清四郎がじっと魅録の眼を見つめる。
「ずっとね、疑問に思っていたことがあるんですよ。
僕はどうして『清四郎』なんだろうかとね」
「確かに普通は、長男に『四郎』は付けないものかもしれねえけど……」
魅録は話の先が読めずに閉口した。
「幼い頃に母に訊ねると、こう言いましたよ。
『君子が説いた四道を貴ぶ人間になるように”四”を付けた。
だが四郎だけでは余りに味気ないので、清發な人間になるようにとの意味合いも込め、
頭に清の字を載せた』とね。
清の字は、言わばおまけであるという母の言葉を疑いもせずに、僕は信じた。
信じていた。つい、先日までね」
清四郎はふっと息を吐き、視線を自らの手に落とした。
「僕の名はね、実の父が名付けたものなんだそうです。
自分の名を一文字取って、清四郎と僕に名付けたんだと、
野梨子のおばさんが言っていました」
「――それが――」
どうしたというのだ? そう言い返そうとした魅録の脳裏に、
清四郎と共通の文字がついた名を持つ人物の横顔がふっと過ぎった。
――自分の名を一文字取って? まさか。
いや、だが――何故、野梨子の母がその事実を知っているのだ?
清四郎は不用意に言葉を積み重ねる人間ではない。
そんな彼がわざわざそれを告げるというのは……恐る恐る清四郎を見返した
魅録の前に飛び込んで来たのは、昏黒とした清四郎の眼差しだった。
「僕は、白鹿清州の子供なんですよ。野梨子と同じようにね」
ぶん……とエアコンのモーターが低く響く音すらも聞こえてきそうな沈黙。
魅録は胸元から煙草を取り出し咥えようとしたが、
無骨な指から無垢な煙草は床に吸い込まれるように落ちていった。
その時になって、初めて自分の指が小刻みに震えているのに気付く。
ゆるく頭をふって、両の掌で顔を覆う。
「嘘だろう……? お前と野梨子が――異母兄妹だっていうのか?」
吐き出した怒りにも似た疑問が誰に向けられるべき物なのかも解らずに、
魅録はただ繰り返し先刻の台詞を繰り返す。
その横で同じように項垂れながら、清四郎が宙を見詰めていた。
ぶん……
エアコンの振動がまた少し大きくなったような錯覚。
たまらず、魅録は頭を掻き毟った。
「なんでだよ? なんでそんなことを……どうして俺らに何も言わなかったんだ?」
掠れた弱々しい声でも、清四郎の鼓膜を震わせる事は出来たらしい。
清四郎は空ろな目で魅録を見遣り、微かに唇を歪めた。
「言わなかったんじゃない。言えなかったんですよ。
他の誰よりも近しいあなたたちだから、余計に言えなかったんです」
その声もまた、震えていた。
「言えるはずなんて、ないでしょう?」
魅録は彼女が先刻まで座っていた席を揺れる視界の中で捉えていた。
「お願いです、魅録。このことは悠理たちには……」
「言えるわけ、ねえだろう」
言い終えた途端に、魅録の頬に熱いものが伝っていた。
遠い昔、隣同士に住む二組の夫婦に何があったのか、清四郎も野梨子も知らない。
何故、清四郎の父が妻の不貞を知りながら清四郎を引き取り実子として育てたのか、
何故、野梨子の母が夫の罪を許したのかも、清四郎も野梨子も知らなかった。
知らなくとも良かったし、知りたいとも思わなかった。
知ったところで、何かが変わるわけではない。
恐らく清四郎と野梨子が互いに友情以上の感情を持たなければ、
永遠に葬り去られていたであろう、秘密。
しかし――清四郎と野梨子の距離が今以上に近づくことを恐れた野梨子の母によって、
白日の下に晒された、事実。
清四郎は自室の窓を僅かに開け、習慣となりつつある煙草に火を点けた。
そしてそのまま出窓に腰掛け、紫煙を吐き出す。
眼下に荘厳な作りの日本家屋と瀟洒な自宅を区切る垣根が長く連なっていた。
上界から眺める清四郎の眼にはまるで一筋の河のように見える。
あの日、山頂から臨んだものとは異なる、淀んだ河。
長く、深い河だった。
思い切り駆け、飛んだとしても、きっと対岸へ着くことは出来ないであろうその幅。
泳ぎ、渡ろうとしても、為す術もなく大河へ押し流されていくであろうその流れ。
泣くことが出来れば、と清四郎は思う。或いはもっと楽になれるのかもしれない。
しかし――
消し損ねた煙草からゆらゆらと立ち上る煙が、まるで川岸に煙る朝霧のようで、
清四郎の胸を締め付けていた。
大切な話がある、と可憐の元に野梨子からメールが入ったのは、
丁度日付が変わるその頃であった。
既に寝る仕度を整えていた可憐はこんな夜中にと辟易したが、他ならぬ友人からの
連絡を断ることが出来ようはずもなく、それならばうちへ来れば良いと返信した。
欠伸混じりに部屋を片付けていると、インターフォンが鳴った。
同じように野梨子に呼び出された悠理である。
程なくして黄桜邸にはいつもと同じメンバーが雁首を揃えていた。
ただ一人、清四郎を除いて、ではあったが。
「……今、なんて言った?」
魅録が煙草に火を点けようとしていた手を止め、野梨子に問うた。
野梨子は瞬きすらせずに彼を見返し、乾いた唇に言葉を乗せた。
「清四郎が家を出て行ったそうですわ。行き先も告げずに。
机の上に手紙が置いてあったって、和子さんがおっしゃっていました」
先刻と一言一句同じ台詞を、野梨子が口にした。
「これは、皆さんに宛てた分ですわ」
テーブルの上を滑らせるように、白い封筒を魅録の前に押し出した。
「……読んでいないのか?」
「宛名をご覧になって下さいな」
額を寄せ合いながら、可憐と悠理が魅録の手元にある封筒を覗き込んだ。
其処に記載されていたのは、野梨子を除く、四人の名であった。
「あんた宛ての手紙が他にあったの?」
可憐の問いに、野梨子は頭を振ると、小さく言った。
「いいえ。私には、何も」
「どうして――」
「それが清四郎の出した結論だからですわ。
ならば、それを受け容れざるを得ないでしょう」
冷たく響くその台詞を耳にした可憐の脳裏に、不意に疑問が擡げる。
「あんた、ひょっとして知っていたの? 清四郎が家を出る決意をしていたことを――」
「ええ、清四郎は何も仰いませんでしたけど」
「知っていて……行かせたの?」
「……ええ」
可憐が手を振り上げたのと、その気配に気付いた魅録が可憐の右手を咄嗟に押さえたのは、
ほぼ同時だった。
「どうしてよ、どうして行かせたのよ! 知っていたのに、どうして黙って行かせたのよ!」
「可憐、止めろ!」
魅録が可憐を押し止めようとするが、可憐は手元のグラスを思い切り野梨子に投げつけた。
「清四郎はあんたに止めて欲しかったのよ!」
「……違いますわ」
小さく、然しきっぱりと野梨子が言った。
「何が違うって言うのよ! あんたはそうやって――」
「やめろ!」
荒々しい口調で魅録が、半ば叫びながら言う。その剣幕に、美童と悠理が息を飲んだ。
「野梨子の言う通り、清四郎が自分で決めたことだ。それに、俺らが野梨子を責めるような
筋合いのことでもない。俺らは部外者なんだから」
絞り出すような魅録の声に、野梨子はつと顔を上げ、彼を見遣った。
そのまますっと立ち上がると、足音を立てずにドアへと向かった。
慌ててその後を魅録が追う。
「野梨子!」
「……ご存知でしたのね、魅録」
魅録にだけ聞こえるような声で、野梨子が言った。魅録は微かに頷いて見せた。
「でも、もう――終わったことですわ。忘れて下さいな」
淡々とした口調。しかし、野梨子の双眸に浮かんでいたのは、涙だった。
呆けたように座り込む可憐の肩を支えながら、美童は封筒を手にした。
丁寧に封を切り、几帳面に折り畳まれた一枚の便箋を取り出す。
清四郎からのメッセージは、便箋の中程に、たった一言だけ書かれていた。
『野梨子を頼みます』
その一言だけを残し、清四郎は消えた。
<続きます>
>Deep River
急展開ですね。
野梨子のお母さんが謝っていたから、白鹿夫妻の間に生まれた
清四郎が菊正宗夫妻のところに養子にいったのかと思っていました。
夫に浮気され自分の子と同い年の子どもを作られて、その挙句
その子(清四郎)に謝らないとならなかったなんて、彼女の気持ちを
思うとたまりません。しかもずっと隣同士のままで。
清四郎と野梨子のことも気になりますが、彼女のことも気になります。
真相は別にあるというのなら、いいのですが・・・
>Deep River
わぁい!待ってましたよ〜。
>野梨子のお母さんが謝っていたから、白鹿夫妻の間に生まれた
>清四郎が菊正宗夫妻のところに養子にいったのかと思っていました。
私も519タンと同じ気持ち……。
皆、かわいそうすぎるよぉ(TT)
しかも、しかもしかも、清四郎が出ていっちゃうなんて!
どこ行くんだよぉ〜〜〜
続き楽しみにしてます!
あの人の良さそうな清四郎ママが。
実際、なんで清「四郎」なんだろうと思ってた。
きっと「清酒」→「せいしゅ」→「せいしろう」とつけたと睨んでる。
>521
虎の巻によると
「ミュージシャンの忌野清志郎さんから」とある
>521
それ読んで、「エッ!!キヨシローだったの!!??」
と焦った記憶がありますw
間違えた。
>522
ふと思ったんだけど、魅録の手先の器用な所ってどっちに似たんだろう?
時宗ちゃんは、(私の中では勝手に)不器用そうなイメージがあるし、
千秋さんは手先の器用さを発揮するようなことを、はじめからしなさそう。
>525
ん〜千秋ちゃんって感じがする。
彼女はつかわなそうだけど。
>Deep River
うp待ってたので嬉しいです。
あまりにも切なすぎる展開で胸が痛い。
本当に、どうなっちゃうんだ〜!
>>
http://that.2ch.net/test/read.cgi/nanmin/1051259777/384 研究室の不穏な空気を読み取りでもしたか、檻の中で鼠が小さくチィと鳴き、
黙った。
美丈夫、と云う言葉を彷彿させる整った清四郎の顔はそれ故に、逆に凄みを帯
びている。笑顔に一瞬怯んだ。
この成り行きを、清四郎は予見していたようである。否、寧ろこうなるようにわざ
と魅録を挑発し、機会を伺っていたと見える。
すでに彼の術中に嵌っている。自覚しつつも魅録は口を開いた。
「あんたは…婚約者を、本当に―――愛しているのか」
魅録の言葉は単刀直入である。嘲るように鼻で笑い、清四郎は云った。
「やはり、野梨子のことですか」
机上で組んだ両の手を静かに降ろし、魅録に体ごと向き直る。
「きみは……どうなんです?魅録くん」
薄い唇で嗤う。
「丁度いい機会だから、云わせてもらいます。きみは、勘違いをして居る」
「勘違い?」
一体何のことだ。
「きみの生い立ちは幾らか聞き知っていますよ。少少、愛情の足りない幼少時代
を送って来たようですね―――ああ、気に障ったら申し訳無い」
確かに不躾な物云いではあるが、それは間違っていない。
魅録の父は厳格な男であったと云う。適齢期を過ぎた頃、唐突に何を血迷ったか
松竹梅の名にそぐわぬ自堕落な女性に血道を上げ、魅録を授かってすぐに亡くなっ
たのだそうだ。母である女性は、家柄こそ由緒正しいものであったらしいが奔放な
性質で、しがらみの多い家風に馴染めなかったものか幼い魅録を残して出奔し、
敢無い最期を遂げたのだと聞かされた。
本当の処は知らぬ。魅録にとって確かな事は、お前は淫蕩な女の息子だ、一族の
面汚しだと、親族の面面に蔑まれ呪詛の言葉を投げつけられて育った記憶のみで
ある。あげく微かな繋がりしか無い親族中をたらい回しにされ、一族に背を向けて
色町で暮らす羽目になったのだ。
だから、少少愛情の足りない、という清四郎の表現はむしろ控えめだと云っていい。
しかし唐突な話題に魅録は面喰った。
「そのせいで、恐らくきみは―――野梨子に過剰な期待をして居るんでしょうね」
「期待?」
「野梨子は―――決してきみが思うような、清らかな存在などではありませんよ」
どういう意味だ、と魅録は問い返した。彼が自分を嵌めようとしているのは分る、
しかしどう攻め込むつもりなのか。
「周囲にだらしの無い女性ばかり居る環境に育てば、仕方の無いことかも知れま
せんがね。きみの目には恐らく、野梨子が聖母のように汚れの無い存在に見えて
いるんでしょう」
温室で育った大輪の花、最初に野梨子を見たときの印象は確かにそうであった。
否定は出来ぬ。
「簡単に体を許す女たちと引比べて、野梨子を神聖視するのは結構ですが―――
残念乍ら魅録くん、それは幻想だ。きみの、身勝手な願望だ」
清四郎はす、と立ち上がった。魅録の机に両手を掛け腰を屈める。
息のかかる程に顔を近付け、にやりと嗤った。
「ひと皮剥けば―――野梨子もただの、淫蕩な女に過ぎませんよ」
魅録は音を立てて椅子から立ち上がり、清四郎の胸倉を掴んだ。
「―――貴様ッ」
一向に怯む気配も無く清四郎は続ける。
「きみは案外と古風なところがありそうだ、配偶者には貞節を求める質でしょう?
ならば野梨子は相応しくない。野梨子は―――実に呆気なく、ぼくに体を開いた」
「―――止めろ」 ぎりぎりと、奥歯を噛む。
「おや。夢を壊してしまいましたか。だが本当の事ですよ―――お望みなら、彼女
がどう云う声を出し、どんな風にぼくを欲しがるか、教えてあげましょうか―――」
「巫山戯るなッ!」
突き飛ばすように清四郎の胸元を掴んだ手を振り放し怒りを露わにする魅録を
しばし冷たい瞳で見つめ、清四郎はふ、と鼻先で嗤った。
「夢みていたような女では無いと知ってがっかりしましたか?
まあ、きみには酷だが、これで諦めもつくでしょう。
―――野梨子は、ぼくのものだ」
違う。
野梨子が清廉であろうと無かろうと、己の気持ちに変りは無い。
魅録の憤りはむしろ、婚約者を貶める清四郎に向けられたものである。
そして、彼女をモノとして扱う事への怒りである。
「―――おまえに―――俺の、何が分る…ッ!」
わが身を振り絞るような魅録の言葉に間髪入れず、清四郎は応えた。
「分りませんよ、何も」
「他人の考えなどそうそう分るものでは無い。
ですから、その科白……そっくりそのままお返しします。きみの目にどう映ろうと、
ぼくらが婚約して居ると云う事実は変わらない。恐らくきみにはこう見えた筈だ
―――ぼくが野梨子をいいように弄んでいると。違いますか?」
その通りであった。応えぬまま魅録は殺気を込めた視線を送った。
「ぼくはぼくなりの遣り方で野梨子を慈しんで居る。きみの目にどう映ろうとね」
ここへ来て漸く魅録は気付いた。
他人の気持ちなど分る訳が無い―――魅録からその言葉を引き出す為に、清四郎
はわざわざ魅録の過去まで持ち出し身勝手な憶測をして見せたのだ。
自らの吐いた言葉が枷となり、魅録を縛るように。
老獪な遣り口に言葉を失った。
「―――野梨子とて子供では無い。あれで意外と、愉しんでいるようですよ」
嘘だ、と魅録は思う。が、反論する術は無い。奥歯をぎり、と噛み締める。
「―――分ってもらえましたか。ならば…余計な口出しは無用です」
これで話は終わりだと云わんばかりに清四郎は身を翻した。腰を下ろそうとした彼に、
魅録は鋭い声を掛けた。
「―――なら、剣菱のお嬢さんは、どうなんだ」
清四郎がぴたりと固まった。
「あんたは―――口じゃ婚約者を愛して居ると云う。だが、俺にはそうは見えないね。
―――あんたが本当に心惹かれているのは剣菱のお嬢さんじゃないのか」
「何を、馬鹿な…」
揺るぎ無いと思われた清四郎の表情が一瞬、崩れる。微かな、しかし確かな狼狽の
色が走るのを魅録は見た。
「確かに、どう思っているのかは当人じゃないと分らないだろうよ。だが、少なくとも
俺の目には、あんたは婚約者より剣菱のお嬢さんをずっと―――愛しているように
見える。第三者でしかない俺がそう思うんだ、あんたの婚約者はどれくらい心を痛め
ているか―――それくらい、あんたにだって分ってる筈だ」
清四郎は沈黙した。発するべき言葉を探っているように見える。やがて口を開いた。
「―――誤解です。悠理…彼女は、ただの―――そうだな、云わば研究所にとっての
客―――ですよ」
清四郎は顔を上げた。そこには先程の狼狽など微塵も無い。弁舌爽やかな―――
しかしどこか詐欺師めいたいつもの表情が在るのみである。
「きみも知ってのとおり、ここの維持費は剣菱の出費で賄っていますから……多少な
りと、彼女の病気を治す手伝いをしなければここは立ち行かない。ぼくが彼女に優しく
振る舞うように見えたなら、その為です。それ以上でも、それ以下でも無い」
「そうか」
あっさりと、魅録は退いた。そして、不敵な笑みを浮かべた。
「なら―――剣菱のお嬢さんは、あんたにとってはただの実験動物って事なんだな」
美丈夫の横顔がぴくりと揺れた。
「―――どういう意味ですか」
「おかしいと思ってたんだ。彼女は―――十数年前からここへ来てるそうだな、検査と
いう名目で。おかしいじゃないか、ここはただの研究所だってのにな。
彼女は心臓を病んでいる、そうだろう?そして、俺たちが研究しているのは―――」
言葉を切り、傍らの天竺鼠の檻をちらと見た。
「臓器移植。彼女はその、第1号の被験者って訳か」
「―――馬鹿馬鹿しい」
一瞬の躊躇の後、清四郎は鼻で笑って見せた。
「まだそんな段階では無いことぐらい、きみだって知っている筈でしょう」
「だからこそ、俺に隠していたんじゃないのか。非難されることを恐れて」
魅録の口調に熱が篭る。
「実験室のアンプルが、ひとつ消えてたよ。さっき確かめて来た。俺が完成した―――
いや、まだ完成したなんて云えるもんじゃない、実際に用いるにはこれからまだ実験
を重ねる必要がある、免疫抑制剤だよ。
あれを―――剣菱の令嬢に投与したな」
「アンプル?―――そう、確か教授が今朝方云っていましたよ、大事な試薬のアンプル
を、落としてひとつ割ってしまった…とね。きみの想像力には感服するが、そこまで行く
と妄想ですよ」
軽くいなそうとする清四郎の言葉に聞く耳など持たず魅録は云い募る。
「失敗する確率の方が遥かに高い、危険な人体実験をする訳だ―――剣菱のお嬢さん
にそれを承諾させるために、あんたは彼女を愛してる振りをしてると、そう云う事なんだな」
疑問に感じていた事柄が、口にする事で次第に形を作り現実味を帯びてくる。
「清四郎、確かあんたの家は医者だったな。成る程、都合の良い話だよ。令嬢にぴった
りの心臓を持つ患者が亡くなればすぐにでもここへ運びこまれるって寸法か」
剣菱の令嬢を殊の外大切に扱う清四郎の態度、彼女が周期的にここへ通ってくる理由。
そしてここに齎される法外な剣菱の援助金、それらの謎が漸くひとつの線で繋がった。
剣菱にとっては娘の命を救う為の、恐らく賭けに違い無い。
そして、恐らく教授と清四郎にとっては―――人体実験を行うまたと無い好機である。
両者の利害は完全に一致している。
「云えよ。あんたにとって剣菱の令嬢は―――こいつと同じなのか」
魅録は鼠を指差した。檻の中で、それはチチッ、と小さく鳴いた。
「だから大事にしてるのか。機嫌を損ねて、大切な実験動物が逃げてしまわないように?」
(続きます)
すみません。
>>530は「病院坂(56)」でした。
しかもsage忘れ・・・恥ずかしいです。
逝って参ります。
>Deep River
あまりの急な展開に、びっくり。
清洲さんと清四郎ママの接点がどこにあるのか、気になります。
ただお隣というだけでない気がしてます。
>病院坂
うれしい!うれしすぎる!帰ってこられることを信じてましたが、
実際うpを見た時興奮し過ぎて鼻血でそうでした〜〜〜っっ!!!
やっぱり病院さんは物語の紡ぎ方が一味違う。
また病院さんの世界に入り込めるなんて幸せだ〜。
どうしてこんな映画のような文章が書けるんですか、凄すぎる・・・。
魅録と清四郎の対決に息を飲んでしまいます。清四郎にやりこめ
られてしまうのかと思ったら、魅録の反撃が始まりましたね。
でも読者としては、清四郎が実は悠理を想っていてほしいです。
ただの悪人で終わってほしくない・・・。
続き禿しくお待ちしてます!長文スマソ
>病院坂
…(-_-)キ(_- )キ!(- )キッ!( )キタ(. ゚)キタ!( ゚∀)キタ!!( ゚∀゚ )キタ━━
「病院坂」のタイトルを見た瞬間、心拍数が倍に跳ね上がりました。
この時を待ち続けて何度スレをクリックしたことか・・・。・゚・(ノД`)・゚・。
私も興奮しすぎでタイプする手が震えております。
神様仏様作者様、ありがとうありがとうありがとう!!!
>Deep River
うpキター!!!待ってました。
謎がひとつ解明されるたびに又ひとつ謎が生まれる展開ですね。
続きを楽しみにしていますね。
>「病院坂」のタイトルを見た瞬間、心拍数が倍に跳ね上がりました。
536です。537タン一緒、一緒。同じ、同じ。同士、同士。
>病院坂
ありがとう、帰ってきてくださって。
美童の出番がいつになるのか気になっています。
続きをマターリと待っております。
>536タン、貴女と抱きあって喜びを分かち合いたいでつw
>雨がボクを狂わせるので
心からお待ちしてました。
雨に濡れて、苦しみながら堕ちていく清四郎の様子が
エロチックで萌えまくりました。
弱い彼もイイですねぇ〜
どんな結末になるか早く知りたいですが、
お話が終わってしまうのも残念…。
>病院坂
嬉しすぎて、今もう一回始めから読み返してきました。
真夜中の研究室で向かい合う二人の緊張感、もうたまりません。
続き、いつまでもお待ちしております。
two minutes・ten minutesの続き(?)をupします。
two minutesの6時間後の話、<six hours later>です。
魅×野ですが、野梨子は名前だけの登場です。7レスお借りします。
(two minutes→清四郎サイド
>>342−
>>347・野梨子サイド
>>378−
>>383)
(ten minutes→野梨子サイド
>>427−
>>434・魅録サイド
>>472−
>>479)
魅録は、目的地まであと200メートルのところでバイクを降りた。
ヘルメットを取って、夜の空気を吸う。煙草を取り出そうとして、やめる。
閑静な住宅街の夜は文字通り静かすぎて、自らの呼吸音がよく聞こえた。
魅録はバイクにもたれたまま、もう一度電話をかけた。
呼び出し音が何回か鳴り、留守番電話サービスとやらに繋がる。
『――電話に出ることができません―』
あなたからの電話になんか出たくありません、かもな。
嫌な考えが浮かんでしまった。魅録は首を振り、歩き出した。
どっちにしろ、行くつもりだった。
何をどう話すのかどころか、何を話したいのかもよく分かってなかったが、
それでもとにかく今日のうちに会わないと何も始まらない気がしていた。
インターフォンを押す前に隣りに建つ豪壮な日本家屋を眺める。近いな。
この距離×19年。
太刀打ちできるっていう奴がいるなら、顔見せてみやがれ、馬鹿。
って、俺のことか、その馬鹿は。
ひとつ息を吐いて、訪問宅に目線を戻した、と同時に、
そのドアが開いて清四郎が顔を出した。
いきなり目が合う。不意を突かれた。
どんな顔をしようか、考えていたのが無駄になった。
加えて、第一声をどうするか、考えていたのも無駄になった。
「まだ鳴らしてないぜ」
「来るの知ってましたからね、見てたんですよ」
清四郎は少し笑い、中へと促す。
普段通りにみえる清四郎に、魅録はちょっと拍子抜けした。
しかし、魅録自身もしかとは知らない魅録が言うべきことを、
清四郎はもう確実に知っている。
譲らないと決めてはいたが、完璧が服を着ているようなその姿を見ると、
やはり自信が揺らぐ。これが器の違いというものか。
どう切り出そうか、と考えながら魅録は清四郎の部屋に上がった。
勧められた椅子に座る前に清四郎が言う。
「野梨子のことでしょう」
また先制された。これは、清四郎の余裕が為せる技か。
「―ああ。聞いたのか?」
「聞かなくても分かりますよ。野梨子は分かりやすいですから」
俺には分からないよ。お前のこともな。お前は、いつも遠い。
自分の大事なところをはぐらかす。だから来たんだ。
「心配しなくても、野梨子は魅録が好きですよ」
続けて清四郎は、さらりと言う。本心は見えない。
焦る。
「疑ってるわけじゃない。でも、」
野梨子にも似たことを聞いた。清四郎に聞くことではないと分かっている。
「俺でいいか?」
清四郎は、魅録の目を見つめている。魅録も清四郎をじっと見る。
魅録はただ、清四郎の口が開くのだけを待った。なにも考えずに。
「いいですよ。魅録だから、いいんだと思います」
たっぷり間を取って、清四郎はゆっくり言った。
野梨子も同じようなことを言ったな、と思い出す。
清四郎の言葉は、誠実な声にのせて聞こえた。嘘じゃないと思う。
でも、無理に肯定しているのが分かる。いつのまにか魅録を見
るのをやめている。
違う、そんなことを言わせたいんじゃない。
お前は、どうしたいんだ?
渡さないとでも言われたら、いきなり殴られたりしたなら、
一悶着のあと分かりやすくわだかまりなく、理解しあえる。
本心を曝け出すほうが、後々苦しまずにすむに決まっているのに、
そうしない清四郎を魅録は尊敬し、その術を知らない清四郎を悲しいと思う。
あまりの強さが、大事なところで清四郎をいつのまにか自傷させ、
その血が清四郎の足を取るのではないか、と常々密かに心配していたのだが。
それが今なのだろうか。
「お前は、野梨子を」
言ってくれ。そしたら俺には、対抗する用意がある。正面から張り合ってやる。
負けたら、潔く身を引く。お前もそうしろ。
質問に至る前に清四郎が魅録の声を遮る。
「僕が野梨子でも、魅録を選びますよ」
「お前の気持ちを言えよ」
魅録も間髪いれずに応じる。
言えよ。今よりはちょっとは楽になれるんだから。
そうやって逃げられたら、俺はいつまでもお前に勝てない。
お前に近付けない。
「僕は、魅録が好きですよ。野梨子が魅録のどこを好きかも分かります。
それに、僕の出る幕なんてないんですよ、はじめから」
清四郎は、まだ落ち着いた風な口調を崩さない。
それは『強さ』なのか、己と向き合えない『弱さ』なのか。
「清四郎」
俺は、お前を追い詰めてるか? でも、俺はお前を分かりたい。
ちゃんとお前と、傷つけ合いたい。
「…魅録の、思っている通りですよ。でも、僕の負けです」
清四郎が一瞬、魅録を見た。その顔は、年相応の表情に近くなっていた。
『負け』と清四郎は言った。
おどけて『降参』のポーズを取るでもなく、口の端に笑いを浮かべるでもなく、
清四郎がこの言葉を口にするのを、魅録は初めて見た。
清四郎はベッドに腰掛け、膝の上で指を組んでいる。
そしてその目は、窓の外へ、闇で見えないはずの隣家に向けられていた。
自分では多分、見ているとは意識していないだろう。
清四郎は、長い間そうしていた。永遠に動かなくなってしまったようだった。
魅録もその清四郎の横顔を、いつまでも見ているつもりだった。
清四郎が、魅録には想像もつかない複雑な葛藤を消化して
こちらを向いてくれるのを、いつまでも待っているつもりだった。
―夜を隔てた20数メートル向こうで、野梨子は何をしているだろうか。
静寂が部屋の隅々まで行き渡ったころ、清四郎は、
窓に視線を残したままで、そっと口を開いた。
「すごく、好きでしたよ。多分ずっと、好きでしたよ」
声というより呼吸に近い、あまりに自然で空気に馴染むような、
静かな声だった。しかし、これ以上ないほどきっぱりとした声だった。
この返事で正しいのかどうか分からなかったが、
魅録は頭に浮かんだままの言葉を口にした。
「ありがとう」
清四郎は答えなかったが、魅録はそれでよかった。
やっと清四郎が向き合ってくれた、と思う。魅録とも、清四郎自身とも。
清四郎が俺を認めるなら、俺は、自信をもたなきゃおかしい。
野梨子の傍で、不安なんて感じるわけにはいかない。
清四郎の代わりじゃなく、自分だけの居場所を野梨子の隣につくればいい。
―殴り合うより、100倍体力使ったな。
清四郎は、背筋を伸ばし、ベッドから立ち上がった。
部屋に入ってからずっと膝の上で組み続けていた指を、やっと外して。
「飲みますか、魅録」
魅録は、清四郎を見上げる。
飲みたい気分だ。清四郎と俺のために。
「ああ。朝までか?」
清四郎の、いつもの笑顔。いや、いつもより微妙にいい笑顔。
「お望みなら」
そうだ、だって今夜の酒は、俺達にとって特別旨いに決まってる。
>486さま、>487さま、実は前回up時にはすでにほぼ書き終えておりました(w
「娘さんをください!」よりずいぶん静かな話になってしまいましたが…。
6時間後の魅録in菊正宗邸、オワリです。
お邪魔いたしました。
>six hours later
前回同様またリアルタイムでの遭遇!ドキドキしながらリロードしました。
このシリーズ、本当〜〜〜に大好きです。
それにしても、最近のこのスレは楽しすぎる。
病院に続いてminutesシリーズなんて、もう幸せすぎ!
両方とも清四郎VS魅録だけど、清四郎が正反対(w
どっちもらしいから面白いです。
>six hours later
この話に出てくる清四郎スキだなあ。
切ないけど、珍しく?彼の優しい所がクローズアップされてて。
sideーMということは、清四郎バージョンもあるのでしょうか?
勝手に期待しながらお待ちしてます。
>553
本当に最近スレが活発で嬉しい。
作家さん達アリガトウデス。
>six hours later
不粋を承知で書き込ませていただければ、魅録ずるいよー。
野梨子の気持ちを知った上で、無理矢理清四郎に本音を言わせるなんて
清四郎カワイソウ。聞きたくなるのはわからんでもないが。
清四郎に「負け」って言わせてうれしかったか、このっ、このっ。
と、すっかり物語にはまって、文句たれてみたw
>six hours later
魅録と清四郎の静かな対峙、読んでて乙でした。
ある意味、殴り合いよりも、緊張感が走っていて神経がとぎすさまれ、最後のシーンまでは
二人ともぴんぴんに張り詰めていたのではないかと妄想しております。
555さん同様、清四郎バージョン勝手に期待しております。
>553さん&>555さん
私も、毎日ここを除くのが楽しくて楽しくて…。ありがたいことです。
>>220の続きを誰もいない間に、うpします。
「なあ、野梨子、名前どうしよっか?」
明日に退院を控えた野梨子の病室に、仕事帰りの魅録が面会時間ぎりぎりに立ち寄った。
「お義父様や千秋さんがいろいろとおっしゃってらしたけど…」
魅録の両親は、珍しく両方揃ってまだ日本にいる。
特に千秋は、子供の名前を決めてしまうまではと、予定をひとつキャンセルしたらしい。
「でもな、俺らの子供達だぞ。俺の名前から考えたとして、あの2人がまともな名前
思いつくと思うか?」
『魅録』という名前に、幼少の頃は少なからぬコンプレックスを持っていた魅録。
今思えば、そのことでいじめにあわなかったのが不思議であるが、だからと言って、
自分の子供にまで個性的過ぎる名前をつける必要はなかろう。
親友どもだって、美童は別としても、魅録に比べると随分普遍的な名前をもっている。
「あら、魅録って名前、あのおふたりつけたんですの?」
野梨子は、本当に不思議そうな顔をする。
「ああ、そうだけど。あれ、言ったことなかったけ?」
「初めて聞きましたわ」
少し憮然とした面持ちである。
こういうところは、10年以上の付き合いになる今でも変わらない。
それが、同僚に言わせると『お前はうらやましい』ということになるのだが。
「野梨子は?」
「確か父さまがつけたって、母さまが」
魅録は今まで野梨子の名前の由来を改めて訊いたことはなかったが、予想通りだった。
「だろう、子供の名前なんて、親がつけるもんなんだよ」
「でも、これ見てくださいな」
野梨子は、1枚のメモ用紙を渡す。
そこには、上から下まで様々な名前がびっしりと書かれていた。
「とっぴなものもありますけど、ごく普通のものもありますでしょう」
魅録は、ひとつひとつ目を凝らして追っていく。
確かに、ごくごく普通の名前もそこにはある。
「これはこれ、俺も考えるから、野梨子も考えとけよ」
役所への提出期限1日前、松竹梅邸では幼子達の父と父方の祖父が名前を巡ってまだ激論を
戦わせていた。
同席する母方の祖父母はふたりの勢いに圧倒され、全く口を挟むことができない。
父方の祖母は見慣れた光景に呆れ果て、旅に出る準備に忙しい。
終わりそうにない議論に心配になってきた幼子達の母は、両サイドに折衷案を出してみた。
「私としては、こちらのどの名前でもいいんですけど…。ということで、お義父さまの方から
一つ、魅録の方から一つ取るということにしませんか?」
二人は一旦議論を止め、野梨子を見る。
一瞬の沈黙の後、父方の祖母が手を止めて言った。
「じゃあ、野梨子ちゃんがそれぞれ一つずつ選んでちょーだい。時宗ちゃん、魅録、
それでいいでしょ」
1時間後、魅録は出生届の用紙に不備な点がないか念入りに確認してから、スーツケースを
持った母親を空港に送り届け、区役所へ向かった。
終わりです。
自分の妄想を書ける場所があるというのはとてもありがたいことでした。
みなさん、ありがとうございました。
>病院坂っ
題名を見て胸が震えました!!
お待ちしておりました!!!
536さん537さん私も一緒です…
魅録魅録魅録カッコエエ──
泣きそうです。
>six hours later
やっぱ萌えw魅×野で切ない清四郎
大好きです。
>New Arrival
なんていう名前になったのかなぁ…
あのちっちゃい体に赤ちゃん2人入った
野梨子に乾杯ww
>New Arrival 魅×野
10万ヒットリク作品、お疲れさまでした!
魅×野のわだかまりがとけてよかったですね〜。いい、じっちゃん
ばっちゃんにも恵まれて双子ちゃんは幸せだ!
でも名前が何なのか知りたかったなあ!
>New Arrival
やっぱり鶴の一声は千秋ちゃん、ってことなのねw
でも自分で選ばないで野梨子に選ばせるところが私としては
イイ!ですた。おつかれ〜ですた>作者タソ
キャラネタ板の過去ログ倉庫で、「もし作品世界に2chがあったら」スレを
見つけました。その中の有閑倶楽部2chが激藁だったんだけど、
ここにコピペしたら駄目かな?たぶん見た人もいるかもしれないけど。
似たようなのやりたいな。URL貼った方がいいのかな。
面白かったんで、貼ってみます。これの続き考えてみませんか?
*************以下、コピペ********
このスレはとある作品世界に2chがあったら、という発想で
その2chの内容を空想してみるネタスレです。
39 名前:有閑倶楽部 ◆PSNoRiKo 投稿日:02/01/06 21:26
1 :剣菱悠理に喧嘩で負けた野郎限定!次こそ勝つぞ!=その3=(872)
2 :★☆美童様の魅力を語りませんか?☆★(185)
3 :可憐タンとセクースしたい人数→(881)
4 :魅録と語るバイクの話part.3(110)
5 :@@悠理様に喜んでもらえるお弁当づくり2箱目@@(256)
6:魅録と語るメカの話part.4(672)
7 :野梨子さんにラブレターを読んでもらいたいんですが(42)
8 :留年した生徒会長ってどうよ?(502)
9 :LOVE☆杏樹☆LOVE(298)
10:◆剣菱家の資産大予想◆(21)
11:可憐お姉様のようになりたい!!(366)
12:白鹿さんを良く見かけるポイント(651)
地下スレ:菊正宗の弱点を見つけるスレ(221)
地下スレ:美童様に口説かれたことがある人いますか?(753)
地下スレ:*清四郎その魅力(♂限定)*(157)
40 名前:有閑倶楽部 ◆PSNoRiKo 投稿日:02/01/06 23:25
>39のスレッドの一部の前半の文章。
----------------------
白鹿さんを良く見かけるポイント
1 :プレジデントななしさん :01/06/05 23:22
白鹿さんを見ていたいんです。
仲良くなりたいとかそういうんじゃなくて、ただ見ていたいだけなんです。
よく見かける場所、時間、何でもいいんで教えてください。
2 :プレジデントななしさん :01/06/05 23:35
>1
ストーカーに認定!
3 :プレジデントななしさん :01/06/06 00:01
あ、この前○○書店で見かけたよ。
学校からはちょっと遠いけど、たまに来るみたいだよ。
クラスの奴も、見かけたって言ってたし。
4 :1 :01/06/06 01:11
>2 ストーカーと言われても構いません。
けど、僕は単に、綺麗なものを見ていたいっていう気持ちなんです。
話しかける勇気はないし…。
>3 情報ありがとうございます。
では、その書店に通ってみますね。
できれば、見かけた時間も教えてもらえるとありがたいです。
5 :プレジデントななしさん :01/06/07 18:44
>4
何となくだけど、気持ちはわかる。
本人にも近づきがたい雰囲気があるけど、それ以上に有閑倶楽部の奴らが怖い。
特にあの生徒会長。
幼馴染みだかなんだか知らないけど、しょっちゅう一緒にいるし。
遠くから見てる分にはタダだもんな。
6 :プレジデントななしさん :01/06/07 21:09
今日、ひとりで帰ってたみたいだよ。
木曜って、すだれ頭何か用事ある日だったっけ?
41 名前:有閑倶楽部 ◆PSNoRiKo 投稿日:02/01/06 23:26
>39のスレッドの一部の前半の文章。
----------------------
*清四郎その魅力(♂限定)*
1 :プレジデントななしさん :01/10/13 10:55
本当に素敵ですよね。
同じ気持ちの人、語りませんか?
2 :プレジデントななしさん :01/10/15 23:35
こんなスレができてたんだ!!
誰にも言えなかったから、すごく嬉しい。
清四郎さんのあの声で、皮肉のひとつも言われてみたいよね。
3 :プレジデントななしさん :01/10/15 23:50
皮肉かぁ…。その気持ち、ちょっとわかる。
でも俺、同じクラスだからうまくやればチャンスはあるかも。
ところでこのスレって、sage進行のほうがよくない?
4 :プレジデントななしさん :01/10/18 19:32
>3
同じクラス!?
って、もしかして体育の着替えとか・・・うおぉぉ!羨ましすぎる。
でも、本人見てたらどうするよ?
お前ヤバいんじゃねぇ?
あ、でもバレて殴られてみるのもいいかも。
一応sageにしといた方がいいよな。
----------------------
レス消費、すみませんでした。
ここに感想書いていいのかな?
妄想同好会のtwo minutesシリーズの
編集、すばらしいですね!!
>565
懐かしいですね。キャラネタ板…野梨子ちゃん
大好きだったなぁ。
46 名前:有閑倶楽部 ◆PSNoRiKo 投稿日:02/01/08 00:01
>39のスレッドの一部の前半の文章。
----------------------
野梨子さんにラブレターを読んでもらいたいんですが
1 :プレジデントななしさん :02/01/05 15:22
どんな文章を書いたらよいでしょう?
2 :プレジデントななしさん :02/01/05 15:22
読まずに捨てるらしいから、どんな文章書いたって一緒。
3 :プレジデントななしさん :02/01/05 15:25
封筒に赤字で「重要書類在中」って書いてみたら?
4 :プレジデントななしさん :02/01/05 16:07
>4
俺、それやったことある。
封はあけてもらえても、結局ラブレターだとばれた時点で捨てられるよ。
5 :プレジデントななしさん :02/01/05 17:37
それでも読んでもらえったって、ことだよな。
ということは、封筒に「重要書類在中」と書いて、中身にインパクトのあること書けば、
名前くらい覚えてもらえるかもしれないな。
6 :プレジデントななしさん :02/01/05 20:11
名前覚えてもらうなら、実際に話しかけた方がいいって。
7 :プレジデントななしさん :02/01/05 20:20
>6 それができたら、いちいちラブレターなんか書かない。
47 名前:有閑倶楽部 ◆PSNoRiKo 投稿日:02/01/08 00:02
>39のスレッドの一部の前半の文章。
----------------------
留年した生徒会長ってどうよ?
1 :プレジデントななしさん :01/12/13 20:55
どー思うよ?
2 :プレジデントななしさん :01/12/13 20:56
============終了============
3 :プレジデントななしさん :01/12/13 20:58
============再開============
>2=生徒会長
格好悪い(プッ
4 :2 :01/12/13 21:07
僕は生徒会長ではありません。
彼の名誉のために、それだけは強く主張しておきます。
たとえ留年したとしても、彼ほど実力があれば認められてしかるべきだと思います。
実際、聖プレジデント学園に彼より成績の良い人はいますか?
彼より格闘技に秀でた人がいますか?
彼より人格的に優れた人物がいますか?
答えは否です。
僕は、彼が生徒会長を務めるこの学園に通えたことを誇りに思っています。
5 :プレジデントななしさん :01/12/13 21:08
>4 菊正宗君
長文ごくろうさん。
コピペでスマンソン。個人的には「留年した生徒会長ってどうよ? 」がツボでした…
>572
グッジョブ!!w
激しく笑いました。続きがあるのかな?
みてこよっと。
>572
乙です。全然知らないスレだから嬉しかった。
うまいネタ職人さんだな〜。ここにも来てらっさるのだろうか。
>567のすだれ頭呼ばわりに吹いてしまった。
杏樹のスレは表にあるのに美童のスレは地下スレとか、
芸が細かくて面白い。
プレジデントみたいなお嬢様学校では、美童に口説かれたこと
自体がコソーリ語らないといけないことなんだろうな。
私も作品世界に入っていって、有閑倶楽部板(?)で遊びたいw
>572
こういうコピペは大歓迎!
最近、小説スレと化してたけど、こういう笑えるコネタも大好き
イマイチっぽいですが、せっかく作ったので見てください(汗
清四郎くんin生徒会室
1 名前:聖プレジデント名無しさん 投稿日:03/04/26 01:11 ID:SwwRSmtl
いつも見てます。彼氏いるのかな。
2 名前:聖プレジデント名無しさん メェル:sage 投稿日:03/04/26 01:12 ID:bW8NsTC2
>>1
彼氏? 彼女じゃなしに?
3 名前:聖プレジデント名無しさん 投稿日:03/04/26 01:14 ID:Do3eMWsY
彼女だろ、あほ。
4 名前:聖プレジデント名無しさん 投稿日:03/04/26 01:15 ID:VethgXLM
いや、彼氏であっているとオモワレ ってか、知らんのか>3
5 名前:聖プレジデント名無しさん 投稿日:03/04/26 01:16 ID:oqfPhvSN
>>4
3をそっとしておいてやれよ
6 名前:聖プレジデント名無しさん メェル:なんてな 投稿日:03/04/26 01:18 ID:vKDsDAHQ
まさきくむね精子楼はもーほー
7 名前:聖プレジデント名無しさん 投稿日:03/04/26 01:19 ID:Do3eMWsY
ガーン
8 名前:聖プレジデント名無しさん 投稿日:03/04/26 01:22 ID:kEnbisHi
っせえしろはもほじゃねえぞ
9 名前:聖プレジデント名無しさん メェル:sage 投稿日:03/04/26 01:25 ID:JZsMkUKn
>>8 プッ漢字使えよ、頭わりーな、お前
10 名前:聖プレジデント名無しさん メェル:sage 投稿日:03/04/26 01:30 ID:kEnbisHi
なんだとお
11 名前:聖プレジデント名無しさん メェル:sage 投稿日:03/04/26 01:38 ID:vKDsDAHQ
あーあ、9はボコボコケテーイ
12 名前:聖プレジデント名無しさん メェル:sage 投稿日:03/04/26 02:09 ID:b3tQ4uC9
てか、入院じゃねえ?
13 名前:聖プレジデント名無しさん 投稿日:03/04/26 02:30 ID:JZsMkUKn
な、なんでだよ
14 名前:聖プレジデント名無しさん 投稿日:03/04/26 03:16 ID:Bh8GTUQw
8と10のIDみろ
15 名前:聖プレジデント名無しさん 投稿日:03/04/26 03:23 ID:JZsMkUKn
あっ・・・まぢで?(涙
これでオワリです。お目汚ししました。
>574
全然知らないスレだから嬉しかった。
以前キャラネタ板に「白鹿野梨子」ちゃんの
板があって、それがとてもマターリした清楚な、
いい板だったんですよー最後は荒らしに埋められた
けど…
妄想同好会本部 元のスレッド
□ キャラネタ(二次元なりきり)板 「■有閑倶楽部■質問・雑談スレッド」
これはもう見られないけどこの中の一環で彼女がやっていたのです!
□ なりきり(太陽)板 「残った質問に答えるスレ」
まだ見られる。
>有閑倶楽部に2chがあったら
>kEnbisHi
ワロタw
>>564 URL貼ってください。
全部、他のも読んでみたい。
今から3レスうpさせていただくのですが、
野梨子と可憐の主観が入れ替わるので、
野梨子の時をN、可憐の時をKとしたいと
思います。
>465の続きです
次の日。
キーンコーンカーンコーン
「あっ予鈴だ、行こうぜ悠理」「おう」「じゃあとで」皆それぞれ授業へ向かう。
その風景を、1人足りない風景を彼女はぼんやり、見つめていた。
「…梨子。野梨子」
─彼の気配。声を聞くだけで。髪の先まで彼の事を考えているみたいになる。
「えっ?…ああ、片づけしてから出ますわ」ぎこちなく、笑った。
パタン
4人が出て行くと、彼女は椅子に腰掛けた。こうして今日も真面目に学校に来ている自分に呆れていた。
恋に身を、浸しきる事の出来ない自分を見つめ返すと、薄い唇から溜息が漏れる。
(私、間違っているのかしら…?でも)思いつきに心が揺れる。
でも罪悪感の為だけでない。甘く浮上する想いが確かに、自分の中に隠せない。
(可憐を傷つけたり、出来ない)──『傷つける』。
主観でしか考えが浮かばない。相手を思いやるとか、それ以前に。
どうしていいのかわからないだけ。
全てを埋め尽くしてしまうほど清四郎を想っているのに──
ガチャ
不意にドアが開く。「!」可憐だった。
カツカツカツ…可憐は廊下を歩いていた。
朝一で倶楽部の面々と、─野梨子と清四郎と─顔を合わせたくなかったので。
遅れて授業に出るつもりだった。
なのに。
「…」(何でいんの) 野梨子も戸惑っているようだった。
ガタン そのまま、椅子に座る。
「──久しぶりですわね、可憐。今コーヒーをいれますわ」「…」
カチャカチャ…「どうぞ」
沈黙が続く。(あんたが何考えてんのか全然わかんない)
「…何であんたはそんななの」可憐が口を開いた。「何そんな普通にしてんの」
トン カップを置いた。
「わ、私、は…」「清四郎に聞いた。あんたに振られたって」「!」
野梨子の目が泳ぐ。(ホラ)
「清四郎は、野梨子が好きなのよ。野梨子じゃないとダメなの。あんただって
そーでしょ!?あたしは、こんなの全然嬉しくない。
何様なの、野梨子。清四郎もよ。あたしをどれだけ馬鹿にしたら、──傷つけたら
気がすむのよ!!」言いながら、いつも冷静な清四郎。瞳の強い野梨子。
いつもの、──そういつもの2人がフラッシュバックのように可憐の中に光る。
目の前の恋に迷う、美しい少女。桃色の頬から清四郎を想う気持ちが滲み出る。
こんな女の子を、あたしは知らない。
バタン 可憐はそのまま、部室をあとにした。
バタン 閉められたドアを見つめる。心臓が波打っている。
(どうしたら、どうしたら…)可憐の言葉が頭を回る。頬を伝う涙も。
でも。
可憐が清四郎を想ってきた年月と、これからも失くせない、自分の想い。
違う視点で初めて彼を見つめたあの時から、日に日に募る、けれど。
比べてみても歴然だった。
可憐から、─可憐から?、奪ったり出来ない。
そうだ。清四郎を想うその心と紡ぐ想いを、汚せない。
彼と触れたところから零れる甘く、苦い想い。そこに重なる可憐の笑顔が。
花が咲く。自分に向けて笑う、笑顔に。
どうすれば、また逢えるのだろう? 答えが出せなかった。
冷静に遠くから見たら、分かるはずの答え。
素直になること。
恋が取り巻く自分の心が、自分の目の前しか見せてくれない。
そっと吐いた細い息が心に静かに浸透する。
揺れる想いが、野梨子自身をも迷いへ導いていく。
続きます。
>569タン
うわ〜。ホントだ。
カチカチしながら何度も読み返してたから嬉しいよぅ!>two minutesシリーズ
嵐さん、グッジョブ!!
>>509の続きをコソーリとうpします。
なんで、美童が村重を知ってるんだ?
村重は完全なる硬派の男で、美童との接点はないはずだ。
だったら、誰が間に入ったのか?
可憐か?
いや、それはありえない。
可憐は、そんな、まわりくどいことはしない。
必ず、正面切って自分に向かってくるに違いない。
魅録は、胸ポケットからマルボロを取り出して火を点けた。
煙を燻らしながら、しばし考え込む。
…もう一人、村重を知る人物を思い出す。
魅録の耳には、割に温厚な村重が、一人の後輩を叱り飛ばしたという話が入ってきていた。
全ての点が線で繋がり、魅録は、マスターに電話を借りた。
可憐の携帯が振動する。
バッグから取り出して画面を見るが、『非通知』としか出ない。
無視して携帯をバッグに戻したが、振動は止まない。
清四郎が何事かと可憐の顔を覗き込むと、可憐は携帯をカウンターの上に置いた。
清四郎はそれを手にし、可憐に目で合図する。
可憐はこくりと頷く。
清四郎は席を立って、バーから出た。
振動音ですら、この静か過ぎる場所では邪魔だった。
「可憐、俺が悪かった。頼むから、1度ちゃんと会って欲しい」
やっと電話が繋がった時、魅録はとにもかくにも話し始めた。
「可憐、頼むから、何か言ってくれ」
何の反応もない電話の向こう側に、必死で訴える。
可憐がどこでこの電話を取っているのか知りたくて、耳を澄ませる。
しかし、ようやく聞こえてきた声は、魅録を打ちのめすに充分だった。
「魅録、今更、どうしようと言うんですか?」
「清四郎、お前…」
言葉が出てこない。
もう、遅すぎるのか?
「可憐を、これ以上、苦しめるのはやめてください。可憐は、こんな苦しい思いをするのに、
ふさわしくない」
魅録が呆然としている間に、電話は切られた。
まだ、続きます。
遅くなりましたが、感想を書いてくださった方、ありがとうございます。
>Sway
清四郎と魅録でバトル勃発のヨカーン!
可憐好きなので、ナイトが二人もいて嬉しいです。
魅録も頑張って巻き替えすんだぞ(w
絵板に清四郎のイラストがっ!
怪しげな目線に鼻血が止まらん・・・
>594
漏れもハナヂが止まらん…。
その視線の先は誰だ?と妄想も止まらん…。
>>593 ありがとう。私も2日前に同じところで検索したんだけど、
上手く表示されなかったので聞いてみたの。
サ−バ−の調子が悪かったんだね。
>KISS
野梨子にとっては可憐はとても大事な人なんですね。
もしかしたら清四郎との恋よりもずっと大切な友情なのかもしれないと、
この作家さんの話を読んで思いました。
男がからんで心がすれ違っている二人だけど、この二人ならではの
回答を出してほしいです。
>SWay
清四郎は本当に可憐争奪戦に名乗りをあげたのでしょうか。
もしかして、清四郎のやさしさ故の行動?と期待してしまいます。
可憐とよりを戻したくて焦る魅録がトテモイイ!と思います。
>絵
湯上り清四郎キタ━━━━( ゚∀゚ )━━━━!!!!
鼻血ブー…
>絵
絵版?どこ?
>599
嵐さんのサイト
今嵐様のサイトで読み返していたら、モーレツに
可憐さんが読みたくなってきた…うぅ
鼻血を出してる同士のためにティッシュを用意。
心おきなく萌えてくれ(w
_,,..i'"':,
|\`、: i'、
.\\`_',..-i
.\|_,..-┘
>600
漏れも絵版の場所わかんないんだけど。詳しくいうと、どのへん?
>603
600タソではないけど。
>>2にある関連BBS→絵板運用&イラスト寄贈スレッド
→スレの1にあるURLより絵板へ
一応、注意書き見てから行ったほうがいいかなと
思ったんで、そっちの行き方を。
清×悠の短編をうpさせてください。2回程度のうpになります。
まだ後編を書いてないので、どんなお話になるかわかりませんが・・・
よろしくお願いします。
校内に威勢のいい足音が響き渡った。
図書室の閲覧席に陣取り、本のページをめくっていた清四郎の指が止まった。
嫌な予感がする。図書室のお気に入りの席に座り、好きな本をこころゆくまで
楽しむ至福の午後、落ち着いた一時、が、ぶち壊されそうな、予感。
清四郎は本の上に手を置いて一瞬考えた後、決めた。逃げよう。
思うと同時に椅子を引いた。
しかし。遅かった。ばぁぁーん、という騒々しい音と共に小型台風が図書室に
なだれ込んで来た。冷たい風が彼女と共に室内に流れ込む。部屋に居合わせたもの
全員が思わず身をすくめた。そして、清四郎が身を隠すより早く、台風は彼を発見した。
「やっと見つけた! せいしろうーーーっ!」
静寂の空間を切り裂くような大声に、清四郎はあわてて口に指を当てた。
周囲の注目を一身に浴びて、小型台風こと剣菱悠理がやってきた。
自分の時間がぶち壊された清四郎はむすっとした顔で、広げていた本を片付け始めた。
「あれ? 清四郎、メガネ? 目悪くなったのか?」
悠理の言葉通り、清四郎の鼻の上には細いシルバーのフレームが光っている。
「最近パソコンのしすぎで視力が落ちましてね」
眼鏡をはずそうとする手を悠理が止めた。
「してればいいじゃん。似合うよ。頭よく見えるし」
悠理は、およそ他人の格好をあれこれ言うタイプではなかったので、清四郎は一瞬、
狐につままれたような表情で彼女の顔をじっと見た。
その冷たい視線に、非常に気まずくなり、悠理はあわてて目をそらす。
と、自分が清四郎を探していた理由を思い出した。上着の中をがさごそ探ったかと思うと、
ぼろぼろになった一冊の大学ノートを清四郎に差し出した。
「これ、読んで」
清四郎は不審な顔でノートを受け取った。
手にしたノートは、ほかほか温かい。悠理の体温をそのまま伝えてくるようだ。
ぱらぱらとめくると鉛筆書きの文章が並んでいる。
言いにくそうな悠理の声が頭の上から降ってくる。
「ほら、この間言ってた奴、少しだけ話したら清四郎が面白いって……、
あれ、仕上げてみたんだ」
そう言われて清四郎は思い出した。先週だったか、悠理が思いつきで考えた話が
妙に新鮮だったので、まとめるといいですね、と何気なく言ったのだった。
黄昏が近づいていた。夕陽を背中に浴びて、悠理の猫毛がキラキラと輝いている。
自信なさそうな顔がシルエットになっていた。
清四郎は一瞬、悠理をちらっと見ると、ノートをめくり出した。
端正な横顔が俯き加減にノートに目を走らせている。時々、何か呟くように薄い
唇が動く。ぱらり。清四郎の長い指が頁をめくった。ぱらん。
細い銀のフレームが夕陽にきらりと光った。
固唾をのんで見つめている悠理は、彼がため息をつくのを聞いて、ひどくがっかりした。
「やっぱ……、面白くなかったか」
メガネをはずし、眉間の皺を手でほぐしていた清四郎は黙っている。
もったいをつけたその態度に、悠理はカチンと来た。ふくれっ面で手を出す。
「なんだよ、いいよ、つまんなかったら。返せよ」
ノートを取り返そうとした手ががっちりとつかまえられる。清四郎の手であった。
「面白くないなんて言ってませんよ。ただ、字が個性的すぎて読むのに時間が
かかるんです。悠理が読んで聞かせてくださいよ」
「読ん…、て、あたしが!? やっ、やだ、そんな恥ずかしいことできっか……」
見る間に悠理の顔がゆでダコのように赤くなって、シューシュー音が聞こえてきそうな
位になった。あまつさえ泣きそうな顔までしている。
書いた奴を他人に読まれるのだって裸を見られるくらい、恥ずかしいのに……
(「その話、面白いですね。悠理は話を考える才能がありますよ。もっと話を
膨らませて、一つにまとめるといいですよ」)
清四郎に褒められたのが、すごく嬉しかった。
自分の運動能力以外を清四郎が褒められたのは初めてだったかもしれない。
悠理は自分でも驚く程、気分が浮かれたのを覚えている。
それからというもの、彼女は寝「食(!)」を忘れてこの作品を仕上げたのだった。
が。愚作を自分で読むなんてことは、悠理の限界の域を超えていた。
そんなことをしたら、恥ずかしくて死んじゃうよお。
泣き出しそうな顔の悠理を清四郎は無表情にじいっとながめている。
「じゃあ、僕が読むからわからないところを教えてくださいよ。『木の葉がぱあっと…』」
「やっ、やっ、やめろ! こんな人がいるところでええっ!! 読むなあ、読むんじゃない!」
ノートを取り返そうと必死になっている悠理を押し止め、清四郎はわざとらしくため息を
ついた。
「しょうがないですねえ。わかりました。『悠理の望み通り』人のいないところに
行きましょう。そうですね、どこがいいだろう。それじゃあ……」
「僕の部屋に行きますか」
つづきます
すみません、いきなり訂正です。
>609
×自分の運動能力以外を清四郎が褒められたのは初めてだったかもしれない。
○自分の運動能力以外を清四郎が褒めたのは初めてだったかもしれない。
>悠理と清四郎
>そんなことをしたら、恥ずかしくて死んじゃうよお。
悠理かわいいw
>604
私も絵板の場所が分かってなかった。w
教えてくれてありがとうよ〜。
清四郎イイ!
>悠理と清四郎
悠理かわいい!!
そして風呂上り清四郎に萌えた私は
>清四郎の鼻の上には細いシルバーのフレームが光っている。
を読んで思いっきり見たくなりました。
どなたか…
>613
それ、私も見たい。
前髪おろしたバージョンの清四郎のメガネ姿も見てみたい。
お久しぶりです。「可憐さんにはかなわない」うpします。
今回は美×野です。
>>
http://that.2ch.net/test/read.cgi/nanmin/1051259777/659 「でさ、清四郎が可憐を追ってこの部屋に来るとするだろ? ……野梨子?」
熱弁を奮っていた美童は、隣に座った野梨子が微笑んで自分を見つめているのに
気がついた。条件反射で顔に手をやる。
「何? なんか顔についてた?」
笑って首を振り、野梨子は温かいマサラ・ティーに手を伸ばした。
天井にはり巡らされた生成の布を通して、やわらかな光が頭上から振ってくる。
琴の音が印象的な中国風の音楽と、微かなざわめきがティールームに流れている。
野梨子は美童と何回目かの『清四郎奪還・作戦会議』をしていた。
あまり豊富とは言えない知恵を振り絞って、美童は毎回、首をかしげたくなる程
幼稚な作戦を考えてきた。
しかし、それは、美童の名誉のために言っておくと、
あちこちに配置された野梨子への思いやりのため、らしい。
失敗しても野梨子が恥をかかないように。そして、誰にも気づかれないように。
そうやって考えられた計画は、無難だが成功するとも思えない代物だった。
あの美術室でのデッサン会のように、もっと私を駒にしてよろしいんですのよ。
野梨子の申し出に美童は照れ笑いした。
そして、再び彼が考えた計画は−−、やはり野梨子に甘過ぎた。
「美童が女性にもてるわけがわかりましたわ」
野梨子はため息をつく。美童はやさし過ぎる。この色男はたまにずるいところもあるが
女性のずるさと比べたら、子どものそれと言ってよかった。
最後の最後で冷淡になりきれない、優しい美童。
たくさんの女性と逢瀬を重ねるのは、たぶん一人を取って他を捨てられない彼の性格
ゆえだろう。人はそれを優柔不断とも言うが。
カップの中で薄茶色のマサラ・ティーが水面を揺らす。
豊かな薫り、甘い甘いティー。まるで、目の前の彼のようですわね。
野梨子はくすっと笑うと、美童の手からペンを取り上げた。
野梨子が書き上げた計画を読んで、美童は絶句した。
「嘘…。 野梨子、本当にこれをやる気?」
すました顔の大和撫子がティーを飲み干した。
「やる気ですわ、美童。協力してくれますわよね?」
ごくりと美童の喉が鳴る。
「や、やれと言われればやるけど…、本当にいいの? だって、これじゃあ…」
野梨子が真面目な顔を返したので、美童は言葉を切る。
「美童。私、本気ですわ。あきらめるなって、美童が言ったんじゃありませんか。
だから、とことん最後までやりましょう。見栄と恥らう心はこの際ゴミ箱に捨てて
いきますわ、自分のために。そして、私のために一緒に計画を練ってくれた美童のために」
そう言って、野梨子は勝者のように誇らしげに微笑んだ。
野梨子の笑顔に、美童の心臓がドンと鳴った。
なんて強く美しい笑顔だ。
まるで祖国のために立ち上がるジャンヌ・ダルクのようじゃないか。
会ったことないけど。
素直な気持ちが口から出る。
「野梨子、今すっごくきれいだよ」
「あら。お世辞でもうれしいですわ」
本当にうれしそうに野梨子は目を細めた。
違うよ、お世辞じゃない。美童はそう言いたかったが、胸の鼓動がおかしなリズムを
奏でだしたので、こんな言葉しか出てこなかった。
「OK。これでいこう。早速、作戦開始だよ」
店の外に出ると、冷たい風に薄着の野梨子は体を震わせた。
美童はさっと自分のスカーフを野梨子の肩にかけて、嘆息した。
「ねえ、こんなこと言いたくないんだけどさ、もし、もしも、これが駄目だったら
野梨子はどうする? 小さい頃からずっと好きだったんでしょ、清四郎のこと?」
黒髪が少しだけ風に揺れた。しばらく沈黙のまま歩き続ける。
沈黙に耐えられず美童が話題をそらそうとした時、やっと野梨子は呟いた。
「駄目でも、いいですわ。私に、何も残らないわけじゃないですもの。
私には、清四郎のことを想っていた大事な記憶がありますし。
清四郎の声だけが聞きたくて、清四郎の顔だけが見たかった大事な記憶が…」
野梨子の声が震えているのに気がついて、美童は足を止めた。
思わず野梨子の頭を抱き寄せる。美童のシャツに顔をうずめながら野梨子は嗚咽した。
「清四郎じゃなきゃ駄目なんですの。清四郎が必要なんです、私。どうしたら
いいんですの、美童…」
「野梨子…」
泣きじゃくる野梨子に美童の胸は締めつけられる。細い肩を抱く手に力が入った。
シャツを温かい涙が濡らしている。
「ごめん、野梨子。ごめんよ、変な事言って。大丈夫だよ、きっと、大丈夫…」
余計なことを言ったという反省が美童の胸をぐるぐる回っていた。
ガードレールに腰かけ、野梨子の額を自分の胸に引き寄せる。
頬をすり合わせ、彼女の涙の跡に口づけ、彼女の鼻に口づけ、
彼女の唇に口づけた。
想像以上に柔らかく、なめらかな唇だった。涙のためか、しっとりと濡れている唇に
美童は何度もキスを繰返している。
野梨子は瞳を閉じて、優しい感触に身を委ねていた。
野梨子の腕がいつの間にか美童の背中に回されている。
思わず唇から吐息が漏れる。
「美童…」
そして。二人はハッと気がついた。
あわてて体を離す。美童は顔面蒼白、逆に野梨子は真っ赤になっていた。
「ごごごごごめん。野梨子には清四郎がいるのに…」
「わわわわ私も!美童には可憐がいらっしゃるのに…」
二人とも引きつった顔で笑った。
「そっ、それじゃ僕デートがあるしっ。あっ、さっきの忘れて〜」
「もちろんですわっ、もう忘れました! 私も本屋に寄りますので!」
しかし。
(忘れて、ですって!? 勝手にキスしておきながら。やっぱり美童って軽薄な
殿方ですわ!)
(もう忘れた、だって!? この僕のとっておきロイヤルなキスを〜
これだから、男とつき合ったことない奴は困るよ!)
こうして野梨子と美童は憤慨しながら、全く逆の方向へと、走って別れた。
しかし野梨子も美童も気づかない。野梨子の頬が涙で濡れるのは、清四郎とでは
なく、美童といる時だけだということに…。
以上です。つづきます。
可憐さんにはかなわないキタ ━━━━━(゚∀゚)━━━━━ !!!!!
ずぅっと待っていたので連載再開が嬉しいです。
しかも美×野!
キスシーンもすれ違ってしまう心も可愛くてイイ!
本心に気付くのはいつ&何がきっかけになるんでしょうね。
>この僕のとっておきロイヤルなキスを〜
ワラタ
可憐さんキタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━━!!!!
わたしも美童にロイヤルなキスされたい〜w
昨日、601さんにつられて可憐さん読み返してみたんですけど、今日実際に作家さんが
帰ってきてくださって、すっごくうれしー!!
このなりゆきに、10万ヒットリクでもあった、美×野のRなんて期待する私は
鬼畜なのかしら……?
↑
迷惑をかけてしまって、申し訳ありません。
宇宙の果ての果てまで、逝ってきます…。
したらばに新作ウプが!
SFという切り口は初めてだね。
今までのとはカナーリ毛色の違ったお話になるんだろうか。
続きを楽しみに待ってます。
>>627 > したらばに新作ウプが!
えっ、本当?ひさしぶりだーね。見てこよう。
>悠理と清四郎
いかにも、この二人らしいリアルなやり取りに萌え〜!
悠理めちゃカワエエ♪
>裸を見られるくらい
作者様、”僕の部屋”に行ってからの続きを激しく楽しみにしてます!!
601です。
可憐さんキタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━━!!!!
>美童の心臓がドンと鳴った。
美×野大好きです…メインの可×清よりもww
>615
そうそう、それが言いたかったんです!
読んでいただいた皆さん、ありがとうございます。
two minutesの6時間後の話、<six hours later>清四郎サイドをupします。
魅×野ですが、野梨子は名前だけの登場です。
7レスいただきます。
(two minutes→清四郎サイド
>>342−
>>347・野梨子サイド
>>378−
>>383)
(ten minutes→野梨子サイド
>>427−
>>434・魅録サイド
>>472−
>>479)
(six hours later→魅録サイド
>>545−
>>551)
なお、嵐さまのサイトで『a few minutesシリーズ』として、
2分・10分それぞれ2つのサイドが並べて読めるように素敵な編集を
していただいておりますので、そちらもご覧になって下さい。
嵐さま、あらためて感謝です。
(side-M-1→
>>545)
清四郎は、10分ほど前に鳴り終わった電話を、そのまま見ていた。
わざと電話に出ない、というのが、魅録への唯一の積極的な抵抗だった。
電話に出なければ、直接やってくるだろうというのも分かっていた。
出たら、何でもないようなことを言ってしまう。
会っても、おそらく何でもないようなことを言うのだろうが、
ひとりでいる間くらい、素直になってみたかった。
素直、か。
…魅録は、野梨子に対して素直に感情表現していただろうか。
また、電話が鳴った。見つめたままのディスプレイに名前が映る。
改めて記憶を戻してみると、魅録は、滅多に野梨子に触れず、
用件のない電話は掛けず、二人きりになることを避けていたと思う。
そしてそれは始めからだったように思う。
多分、無意識にだ。だから余計たちが悪い。
魅録にとって野梨子が、いきなり女であったことの証拠だ。
いつのまにか、電話は鳴り止んでいる。
(side-M-2→
>>546)
魅録はどんな顔をして、どんな言い方をするつもりだろう。
窓際に立ち、しばらくの間隣家を見ていた。やっぱり近い。
この距離×19年。
それを易々と、たったの数年で、魅録は越えてきて―、
ちょうど今、菊正宗邸の門の前に着いた。
「やっぱり歩いてきましたね」
清四郎は呟き、玄関に向かった。
急にドアを開けたら驚くだろうかと思いながらドアを開けたら、
思った通り魅録は驚いた顔をした。
「まだ鳴らしてないぜ」
清四郎は魅録を邸内に招きながら言ってやった。
「来るの知ってましたからね、見てたんですよ」
予想通りきまりが悪そうな魅録を、清四郎は自室に迎えた。
(side-M-3→
>>547)
清四郎は、魅録が座るか座らないかのうちに言った。
「野梨子のことでしょう」
魅録が逡巡するのを見たくなかったし、優位でいたかった。
憐れまれるのは嫌だ。
魅録も自分も、平静を装っているのが分かる。
「―ああ。聞いたのか?」
聞いてない。聞きたくなかった。
野梨子の、はにかんだ、幸せに戸惑った表情を見るだけで充分だった。
口を開く前に遮った。野梨子の誠実さを、はぐらかした。
魅録が野梨子をどう抱きしめたのか、そんなこと、聞いてどうする?
「聞かなくても分かりますよ。野梨子は分かりやすいですから」
今さらこんな、意地の悪い言い方をしてしまう。
野梨子自身も今日まではっきりとは分かってなかったようだが、
…分からなかった。全く。
いや、それは正しくない。清四郎は、きっとただ気付きたくなかっただけだ。
野梨子の気持ちにも、魅録の気持ちにも、自分の気持ちにも。
「心配しなくても、野梨子は魅録が好きですよ」
努力して軽く言う。好き、という単語を口にする時、胃がきゅっとなった。
自覚していた以上に動揺しているようだ。まずい。
「疑ってるわけじゃない。でも、俺でいいか?」
魅録の瞳も、声も、反応もまっすぐだ。自分はこんなふうにはなれない。
敵わない。
(side-M-4→
>>548)
「いいですよ。魅録だから、いいんだと思います」
許可を自分が下すのが、何故か不自然だとは思わなかった。
これは、皮肉じゃない。だから、出来るだけ丁寧に言う。
魅録は、本音として受けてくれるはずだ。
例えば客観的に、自分のあらゆる面を数値化して魅録と比較しても、
絶望的なほど劣っているところなどないだろう。
逆に、清四郎が勝っている点のほうが多いかもしれない。
けれど、清四郎には常に魅録が眩しく、その感情だけ取り出せば
ほとんど妬みに近いほどに、羨んでいた。
自分が何かで誰かに完敗するとしたら、その相手は魅録だ。
自分が誰かに否定されて傷付くとしたら、その相手は魅録だ。
根拠はないが、それは確信だった。
名に違わない、くらくらするほど圧倒的な己の魅力に、魅録は気付いていない。
まあ、そんなことは一生指摘してやらないと決めてはいるが。
(side-M-5→
>>549)
長めの沈黙のあと、魅録がおもむろに口を開いた。
「お前は、野梨子を」
その質問は残酷だ。答えたら確認させられてしまう。
多分、魅録は怖いのだろう。愛するものに、愛される不安。
加えて、野梨子に清四郎という特殊な存在があることへの不安。
そんなもの、感じる必要なんかないのに。
「僕が野梨子でも、魅録を選びますよ」
これも本音だ。
わざと魅録をへこませることを言うことだって出来るが、
そこまで我を失うことの出来ない自らの冷静さを、清四郎は少し呪った。
「お前の気持ちを言えよ」
魅録も食い下がる。どうしても言わせるのか。
…だから、そういう狡さは魅録らしくないですよ。
自分の怖れと不安を埋めるために僕を傷付けるんですか?
「僕は、魅録が好きですよ。野梨子が魅録のどこを好きかも分かります。
それに、僕の出る幕なんてないんですよ、はじめから」
そんな目で見ないでくれ。言ってしまいそうになる。
悔しさと、憧れと、嫉妬と、羨望を、ぜんぶ吐き出してしまいそうになる。
泣いて、しまいそうになる。
「清四郎」
魅録が重ねて言う。魅録のほうが泣きそうな顔をしている。
ああ、きっと、認めれば、楽になる。
「…魅録の、思っている通りですよ。でも、僕の負けです」
(side-M-6→
>>550)
気付くのは遅かったが、早くても結果は変わらなかっただろう。
自分は、野梨子の眼中にはない。
いや、いつもありすぎて見えない存在なのかもしれない。
空気のような存在、とはよくいったものだ。
空気はいつも望む望まざるに関わらずそこにあって、
ただ、無意識に与えるだけだ。
それこそが本当に必要なものだ、という人もいるだろうが、
誰が好きなものを聞かれて、空気、と答えるだろう。
空気がなくなっても、また違うものを利用して生物は生き残る。
そして清四郎にとっては、野梨子は空気ではなかった。いつでも。
(side-M-7→
>>551)
知らず、清四郎は口を開いていた。
「すごく、好きでしたよ。多分ずっと、好きでしたよ」
自らのものとは思えないほど、ささやかな声だった。
しかし、その言葉は余程重量があったのだろう、
吐き出した瞬間に、ふっと体中が軽くなった。
そしてその言葉は、自然と過去形だった。
魅録が小さな声で、ありがとう、と言った。
変わってしまうことが怖かった。
そんな、子供みたいな理由。
魅録は僕を、助けたのかもしれない。
意地や、プライドや、歴史に囚われている僕を。
野梨子、という特別すぎる存在から一歩離れたその場所は、
すこしだけ寂しかったが、思いのほか暖かく、居心地がよかった。
これからもずっと、野梨子のことは大事だ。
きっともっと大事にできる。魅録を含めて。
―夜を隔てた20数メートル向こうで、野梨子は何をしているだろうか。
清四郎は、立ち上がって言った。
「飲みますか、魅録」
そういう気分だった。やけ酒ではなく。
魅録が、今夜初めて笑う。
「ああ。朝までか?」
「お望みなら」
清四郎も、いつもの声と、口調になった。
これが、長い初恋の終わりですか。
でもね、魅録。僕は今夜成長しましたよ。
次にあなたとやり合うときは、もう負けません。
さあ、飲みましょう。男ふたりでね。
今夜はきっと、忘れられない長くていい夜になるから。
すいません。7レスのつもりが7つめが長過ぎてしまったので2つに分けました。
6時間後、おしまいです。ありがとうございました。
>556さん
私も、魅録ずるい、清四郎かわいそう、と自分で思いながら書きました…。
清四郎と悠理サイコ〜です!!!
やっぱりこの二人が一番萌え〜ですよね!
続きを楽しみに待ってまぁす♪
>632-639
リアルタイムで読めてシアワセデスー。
638の部分がいい!
>six hours later
せ、切ないよー。清四郎も、幸せであるはずの魅録も切なく見えて
しまいます。でも、確かに清四郎は魅録に吐き出させてもらったのかも。
言えないままだったら、もっと辛くなるかな。
でも魅録ったら清四郎の気持ちを知ったら、もう彼の前で野梨子と
ラブラブできないじゃん!とか思ってしまいました(W
面白かったです。作者さん、乙でした!
>six hours later
清四郎の野梨子への気持ちが痛いほど伝わってきて切なかったです。
このシリーズはこれで終わりかな?
また何か書いてくださいね。
>six hours later
清四郎サイド読めてウレスィー〜(>_<)!
清四郎と野梨子の関係はやっぱり特別で、萌えますた。
気持ちを区切って、幼馴染みから、一人の女性として
野梨子を見れるようになるんでしょうか?
まだまだ清四郎には野梨子を諦めてほしくないでつ。
野梨子にも無意識の部分があることだし、がんがれ〜
とても丁寧にキャラの気持ちを書いて下さって大好きです。
もっと続きを楽しみにしています。
「悠理と清四郎」の後編をうpします。よろしくお願いします。
>>609 放課後、悠理と清四郎はまっすぐ菊正宗家に向かった。
出迎えた清四郎の母はにこやかに悠理に挨拶した。
「あら、悠理ちゃん。いっしょに宿題?」
ええ、まあ……、と苦笑いする悠理を余所に清四郎はスタスタと自室に向かう。
遅れて清四郎の部屋のドアを開けた悠理は、その姿勢のまま硬直した。
部屋の中で清四郎が制服の上とシャツを脱ぎ捨てて、上半身裸になっていた
からである。
「なっ、何脱いでんだぁ! 清四郎のヘンタイ!」
悠理の悲鳴に清四郎は至極迷惑そうに眉をひそめた。
「何言ってるんですか、シャツ脱いだ位で。皆といる時に何回も見てるでしょう」
「……い、いや、そうだけど。皆がいた時だし、さ……」
赤くなりながらも、鍛えられた清四郎の体から視線がそらせない悠理だった。
むっつりしていた清四郎は意地悪い笑みを浮かべる。
「ちなみにこの後ズボンも脱ぐ予定ですが、そこで見学してますか?」
「い、いや、いい! 外で待ってるから終わってから呼べよな!」
すごい勢いでドアが閉まる。清四郎はくっくっと可笑しそうに笑った。
やがて部屋に招き入れられた。清四郎の部屋はソファがないので、
クッションを勧められる。悠理はオレンジジュースをよばれながら
ノートをめくる清四郎をちらっと見た。紺のトレーナーにチノパン。
厚手の服はすっかり彼の体を覆い隠している。
知らず知らず、ちぇっという気持ちが沸き起こり、悠理は驚いた。
ちらっと見えた清四郎の上半身が目に焼付いていた。
清四郎の手がノートのページをめくる。
大きな手。長い指。華奢ではないが、すらりとした指が悠理愛用ノートの
ページの端を持って、ぱらり、ぱらりとページを繰る。
黙って読む清四郎の横顔を、することがない悠理はしばし、見つめていた。
濃い眉とすっきりと通った鼻筋。吹き出物一つない、なめらかな皮膚。
何でも見通す強い瞳。無駄なことは言わない口。
その時、清四郎と目が合って悠理はドキッとした。
「何やら熱く見つめられていたような気がしますが?」
悪戯っぽい口調に、どきまぎした悠理は顔が赤くなるのを感じて慌てる。
「そ……んなわけないだろ、寝ぼけんなよ。で、どうなんだよ、感想は?」
清四郎はにこっと笑う。
「87」
「……はちじゅうなな?」
「うん、87箇所も誤字が……って、そんなことは聞いてないんですよね。
わかりましたよ、そんなに怖い目でにらまないでください」
言葉を切ると、にこにこした顔が急に真面目になる。
「実は……」
悠理はごくっと唾を飲み込んだ。
「実は……?」
清四郎はためらっている。
「実は……、」
悠理の顔が青ざめた。
「実は…………?」
清四郎は考え込んでしまった。悠理は息が止まりそうだった。
泣きそうな顔で答えを即す。
「……おい」
思い出したように、悠理の顔を見る清四郎の表情はどこか気の毒そうだ。
はっと息を飲んだ悠理は全てを悟った。全然ダメだったんだ。
そして、もういいよ、と清四郎を遮ろうとした時、彼は言った。
「面白いです」
「へ?」
涙でぼやけた視線の先に、鬼の首を取ったようにニコニコしている意地悪な清四郎の
顔があった。
「面白いですよ、悠理! すごい、最高だ! やればできるじゃないですか、悠理も!」
半信半疑で悠理は聞く。
「……まじで言ってんの? からかってない?」
「『まじ』ですよ、悠理。疑ってるんですか?」
「だ、だって……」
乗せられて大喜びしてから、冗談でしたなんて言われたら立ち直れない。
悠理は清四郎の褒め言葉に有頂天になれなかった。
そんな悠理に清四郎は丁寧に説明しだした。
「僕がまず、いいなと思ったのは出だしです。この間、話してくれた時はこの、
男が主人公でしたよね。どうして女を主人公にしたんですか?」
「……その方が書きやすかったから」
「いいですね。ぐっとテーマが身近になりましたよ。それから、この恋愛を
ソフトクリームに例える比喩、これは何からヒントを得たんですか?」
「ヒントって別に……。ただ、ソフトクリームって早く舐めないと、だらだらだらだら
垂れちゃうだろ。それが、何か恋愛とかに似てるかな……って」
「素晴らしい! 新鮮ですよ。それから、中盤でいきなりヒロインが家に帰りますよね、
ここ……」
ふいに悠理は清四郎の言葉をさえぎった。
「もう、いいよ……」「家に帰ってからの描写が……」「もう、いいって……」
話を中断した清四郎はテーブルにつっぷした悠理の顔をのぞきこんだ。
「どうしました? 悠理」
「……わかんない」
「何がですか?」
覗き込む清四郎に悠理は鼻がつまった声で答える。
「あまり、褒められたことないから、どういう顔していいか、わかんない」
清四郎は微笑むと、突然悠理の肩に手をかけた。
「!? な、何するんだよ」
つっぷしたまま、抵抗する悠理を清四郎は無理矢理テーブルから引きはがそうとして
いる。
「悠理、顔を見せてください」
「……! やっ、やだっ! やめろよっ」
「いいから!」
「やだよっ、見せたくない」
悠理はテーブルにかじりついていたが、清四郎に脇をくすぐられて「ぎゃはっ」と
手を離してしまった。その瞬間、手を持って顔をあげさせられる。
目の前に清四郎の微笑んだ顔があった。
「やっと見せてくれた」
顔が熱い、と悠理は感じていた。たぶん真っ赤になっているであろう悠理の顔を
清四郎は見つめ続ける。思わず悠理は視線をそらした。
「……まじまじ見んなよ、恥ずかしい奴だな」
「そんなこと言わないで、もっと近くで見せてくださいよ」
えっ、と思う間もなく引き寄せられて、気がつくと悠理は清四郎の腕の中にいた。
「な、な、な……」
清四郎が愛おしそうに悠理の髪を撫でた。
「悠理」
呼び掛けられて清四郎の顔を見た瞬間、悠理は目の焦点が合わなくなった。
目の前のものが信じられない程、近くに寄ってきたからだ。
かすかな男の匂いがした。
悠理は唇の上を何かが二回強くなぞるのを感じた。
悠理は大きく目を見開いたまま硬直していた。清四郎はバツが悪そうな顔をした。
「すみません、突然変なことをして」
口を開けてパクパクしている悠理に清四郎は少し目をふせたが、
次の瞬間、悠理の体は又ぐいっと引き寄せられた。
唇をふさがれ、今度は舌が絡んだ。さっきよりもずっと長い時間、情熱的な
接吻は続いた。
やがて顔と顔が離れると、清四郎は困った顔をして悠理の髪を撫でた。
「……悠理、」
「あたし……」
悠理は魂が抜けたような顔をして立ち上がった。
「帰る」
部屋のドアがパタンと閉まると、清四郎は深いため息をつき、頭をぐちゃぐちゃに
掻きむしった。ふと、気がつくとテーブルの上に悠理のノートが置きっぱなしに
なっている。走って玄関まで追いかけたが、すでに彼女は帰った後だった。
「悠理……」
ふと玄関のたたきを見ると、悠理の靴が来た時のまま揃えられていた。
悠理はどうやら裸足で帰ったらしい。
清四郎は黙って玄関にしゃがみ込んだ。
そして悠理の靴を手に持つと、がくっと肩を落とし、再び深いため息をついた――。
と、その時、玄関のドアが開いた。
怒った顔の悠理が半泣きの顔で立っている。
「ゆ、悠理」
悠理は思わず立ち上がった清四郎をキッと睨むと、叫んだ。
「ふざけんな! 清四郎の馬鹿野郎!」
家が崩れるかのような音を立てて玄関ドアが閉まった。ものすごい音に、清四郎の母が
驚いて顔を出す。たたきには悠理の靴が揃ったままだ。
清四郎は、
三たび、深いため息をついた。
<「悠理と清四郎」終わり>
これで終わりです。読んでくださって、ありがとうございました。
>悠理と清四郎
ええっ?こんないいと子で終わるなんて、残酷すぎるー。
続きplease、、、!
>悠理と清四郎
私も続きが読みたいよ〜。この話の悠理カワイイ!
なんか頭をくしゃくしゃ撫でたくなる可愛さだなぁと感じますた。
それにしても、悠理の書いた話が気になる。
まさか、恋愛小説?とは思わなんだ。
>悠理と清四郎
悠理ほんとカワイイ!!
>はっと息を飲んだ悠理は全てを悟った。全然ダメだったんだ。
カワエエw
最近、秋、病院坂、可憐さんと作家様たちが
続々うpなさったので、、
恋チカよみたいなぁーw
>悠理と清四郎
えーっえーっえーっ終わり!?そんなぁ!
作者様〜是非是非続編おながいしまつ!!!
本当に可愛い悠理と、困った顔する清四郎が大好き。
すっごく楽しませてもらいました。
サンクスコ!
>悠理と清四郎
最高ですぅ!悠理のかわいさ、清四郎が優しくていいですね。
続きお願いします〜
>>590の続きをコソーリとうpします。
電話を切った清四郎が中に戻ろうとした時、ドアが開いて可憐が出てきた。
「清四郎、行こう」
可憐は、階段を上り始める。
清四郎は、いつかの時と同じ様に後ろを歩く。
最後の段を後にして地上に出た時、通りを歩き出そうとした可憐を引きとめた。
「可憐、タクシーを拾いますから、ちょっと待っていてください」
「清四郎、あたしは…」
可憐は、道路側に行こうとする清四郎の腕を掴む。
清四郎は立ち止まり、可憐の手を外し、向き直って言った。
「可憐、僕は勢いだけであなたを抱きたくはない」
>660ですが、Sway(24)です。すみません、入力し忘れました。
可憐は、家へと向かうタクシーの中で、溢れる涙を拭いもせず、窓の外を見ていた。
あの日から今日までの、清四郎との時間が走馬灯のように頭の中に流れる。
普段の、ポーカーフェースでプライドが高くて自信家の面影は全くない。
あくまでも、穏やかで優しくて頼り甲斐があって、しっかりと自分を受け止めてくれる。
そして必要ならば、抱き締めてもくれる。
でも、今、魅録から逃げるようにして清四郎に縋ったことに、胸の奥が締め付けられる
思いがする。
自分の辛さにかこつけて、清四郎の気持ちを推し量ることをしなかった。
もう、このままどこかへ行ってしまいたい。
とても、明日、学校に行って、何もなかったかのように振る舞うなんて、できそうもない。
可憐と魅録が付き合っていることは公然の秘密だった。
だからあの日は、傷ついていた可憐を助けてあげたいと思っただけだった。
しかし、可憐と時間を過ごす機会が重なるにつれ、今まで気付かなかった、知らなかった
部分に触れて、凪いでいた清四郎の心が少しずつ波立ち始めた。
と同時に、可憐に対する気持ちが、仲間に対してのもの以上になっていく。
結果、清四郎の目には可憐がひとりの女性としてしか映らなくなった。
いつしか、可憐もそう思うようになってくれたらいいとどこかで期待するようになった。
だが、あの時、自分の中の理性が、可憐を抱いてはいけないと警告を発した。
自分の腕を掴んで、訴えるような眼差しで自分を見つめる表情が、どれほど自分を求めて
いたとしても。
なぜなら、可憐は、決して魅録をふっきった訳ではなかったから。
なぜなら、清四郎は、想う人に他の男の影を見て平気なほど心が広いわけではなかったから。
そして今、あの日と同じ様に、夜風に当たりながら表通りを歩いている。
マダ、ツヅキマス。
>Sway
可憐も清四郎も切ないですね〜
魅録びいきな私だけど、今回ばかりは魅録を叱り飛ばしたい気分。
このスレ初めて覗いたのですが
力ある作家さんが多くてビクーリ。
ログも見せて頂きます。多謝♪
久しぶりに、『有閑倶楽部辞典』を読み返してみたんですけど、今、長編を
中心に作品が増えてきたので、誰かアップデートしてくれないかなあなんて
思ってしまう今日この頃。
>Sway
可憐と清四郎の胸の痛みが伝わってきて、きゅーんとなりました。
清四郎ってば、いい奴じゃん・・・。
>664
妄想の世界へようこそ〜W
>665
有閑倶楽部辞典、かいつまんで見るにはいいよね。
>Sway
私は、清四郎派です〜
彼の気持ちの大きさに気付けなかった可憐が
切ないなぁ。
>悠理と清四郎
終わっちゃうんですか〜?!
ぜひぜひ続きを!!!
清×野の小ネタうpします。
2レスです。一応設定は中等部の頃です。
保健室の中では、ストーブの上の薬缶がシューシューと規則的な音を立てていた。
「足、見せてください」
その言葉に、野梨子は素直に清四郎の目の前に素足を晒した
足首に触れるとかすかに熱を持っている。
清四郎は湿布を当てようとして、不意に意外なものに気づいた。
彼の手のひらに納まってしまうくらいに小さな足のつま先に――僅かな彩りが施されている。
野梨子は、身を飾る事にそれほど熱心ではない。
あまりに華美に装う事は逆にはしたないとすら思っているようであった。
清四郎の目線に気づいたのか、野梨子は彼の手から足を退けようとした。
悪戯がばれた時の子供のような表情をしている。
「……可憐にいただきましたの」
野梨子は消え入りそうな声で、最近、親しくするようになった女生徒の名を上げた。
清四郎は、野梨子とは真逆の、艶やかな外見を寧ろ誇りとしているらしい彼女の姿を頭に思い浮かべた。
彼女――黄桜可憐は、野梨子に少なからず影響を与えているらしい。意外なことではあったが。
清四郎は野梨子の顔から視線を外すと、もう一度彼女の足に目を落とした。
相変わらずの、細すぎるきらいのあるほどの華奢な足。
そして、小さな爪にうっすらと落とされた桜の色。
似合わないわけではない。ただ、清四郎は少なからず違和感を感じないわけではなかった。
これまで目にしてきた彼女とは、そぐわないから、だからこんなにも――妙な感じがするのであろうか。
清四郎はそう思い、再び野梨子に目を向けた。
野梨子は、恥ずかしく思っているのか、頬がうっすらと染まっていた。
しかしそれだけではなく、小さく息を吐く薄桃色の唇も特に色づけた訳でもないのに、ひどく鮮やかであった。
それを目にした時、清四郎の中で、ずれていたピースがカチリとかみ合った。
先ほどから感じていた違和感は、霧散した。
――気づかなかった。
そのつぶやきは声に出さぬものであったから、勿論野梨子の耳に届くはずもなかった。
清四郎は、そのまま黙って腫れた彼女の足に湿布を貼った。
綺麗であるとか、彼女にしては珍しいだとかさえも、何も口にしなかった。
ただ、胸に小さな灯が燈ったようであった。
瞼の裏には、膨らみ始めた桜の蕾の残像が浮かんでいた。
窓の外は、まだ冬枯れの庭であるというのに。
その時確かに、季節が移るのを肌で感じた。
<終>
>桜の色
ほんのり色づいた野梨子がいいです〜
>>662の続きを、誰もいない間にうpします。
『可憐、今日学校に来てないよ』
美童からメールが入っていた。
悠理は、携帯画面を見てため息をつく。
美童のクラスへ行って直接話をしたいが、魅録につっこまれる可能性を思って断念する。
仕方なく、メールで遣り取り。
『今日、可憐んち行ってみるか?』
送信ボタンを押すやいなや、目の前に一人の男が立っている。
魅録。
「お前が合間にわざわざメールとは珍しいな」
気のせいかもしれないが、魅録の口調は刺々しい。
慎重にしゃべらないと、口が滑って言わなくてもいい事をいってしまいそうだ。
「あたいだって、たまにはね」
とりあえずは、うまくかわしただろう。
「そうか」
魅録は案外あっさりと引き下がって自分の席に戻った。
授業開始のベルが鳴って携帯をカバンに戻そうとした時、ストラップが光ってメールが
入ったことを知らせる。
『駅で待ち合わせでいい?』
悠理は急いで返信した。
『おーけー』
可憐の家の最寄りの駅で降りて、ちょっとした花束とケーキを買う。
少し歩くとビルが見えて、裏側に回り、住居部分に繋がる入り口に入った。
エレベーターに乗る。
一番上の階で降りて、数歩先にあるインターホンを押す。
ビーッ。
「はい」
「可憐、具合どう?」
「美童?」
「と、あたい、悠理」
「他は?」
「僕達だけだよ」
「ちょっと待って。今開けるわ」
出てきた可憐は、ノーメイクでゆったりとした服を着ていた。
僅かにアルコールの匂いがする。
「何、昼間っから飲んでんの?」
「…飲まずにいられないのよ」
可憐は2人をリビングに入れて、ソファに座り込む。
「飲んでどうにかなんのか?」
床に座り込んだ悠理が、うつろな表情の可憐を見上げる。
「…ならないわ。悲しいことにね」
ため息をつく。
身体に力が入らない。
「ふーん、こんな飲み方もあるんだ」
美童は、テーブルの上のものに目を向けた。
「ママの友達で飲めない人が、飲みたくなるときにするって言ってた」
可憐は、空のウィスキー用のグラスに2つ3つアイスブロックを入れ、『Scott』という銘柄の
白ワインを注いだ。
「それ、うまいか?」
悠理は、よくわからない飲み物に興味を持つ。
「あんたにとっては、水みたいなもんだと思うわ。…で、あんた達は、あたしに何か
言いたくて来たんじゃないの?」
可憐が話を切り出した。
「まあな」
歯切れが悪い。
「で、何?」
可憐が畳み掛けるように訊く。
「魅録に、話をしたんだ。ソイツは他所でも同じことしてるらしいって」
美童は、さらりと答える。
「…なんで、あんたがそんなこと知ってるの?」
可憐は驚きを隠せない。
「魅録の後輩の一人が、あたいのところに来たからさ」
魅録と『男の付き合い』をする悠理が、その後輩を知っていて不思議はない。
でも、ソイツのこととあの時自分がとってしまった行動は、別物だ。
例え、魅録がその話を信じたとしても、多分、自分の行動は許さないだろう。
そう、全ては、終わった。
「…あんた達がいろいろと心配してくれるのはありがたいけど、もう、終わったわ。」
可憐は、自分を見つめる二人に無理やり微笑を浮かべて言った。
その可憐に対して、美童は鋭い眼差しを投げかける。
「それが本気だとしたら、ちゃんと終わらさないと、後で後悔するよ」
まだ、続きます。
>桜の色
おお!いいですねえー!
そこはかとない色気があって、萌えます。
幼馴染を少しだけ、一人の女性として意識した瞬間、
といった感じですね!
>Sway
清四郎の側を読むと、清四郎に肩入れしたくなるし、
魅録が登場すると、魅録に元さやにおさまってほしいと思います。
どうなるんだ〜。
>桜の色
わぁ〜好きです…
野梨子は桜と雪が似合うなって
個人的には思います。
>桜の色
私もこのお話、すごい好きです。
清四郎の微妙な心の変化、いいですね。
>Sway
続きが気になりますねー。
可憐が幸せになれるといいなあ。
すっかり忘れていた「有閑倶楽部辞典」。リクエストを頂いたので、前回の続きを
うpします。作品じゃなくてスマソ
>>
http://that.2ch.net/test/read.cgi/nanmin/1046564684/363 <連載作品(未完)の続き>
【美×悠編】美×悠
02/05/11〜02/05/14 (未完)
木から落ちて頭を打った悠理は180度性格が変わってしまう。
ローラ・アシュレイを着込み、上品に喋る悠理に美童たちは面喰らう。
悠理は実は両思いの清×野、魅×可に発破をかけ、自分は美童にべったり。
【想い出がいっぱい】清×可、魅×悠、美×野(?)
リレー小説。02/05/04〜現在進行中
新開産業の御曹子にぞっこんの可憐。しかし、その彼、新開渉はある企みを持って
可憐に近づいていた。可憐の恋の相手に疑問を持つ清四郎は、同時に可憐に対する
自分の気持ちに気づく。一方恋人同士の魅録と悠理だが、悠理は魅録の気持ちを
確かめられず不安な日々。清×可で悠→魅。魅→野で野→清。そして美→野。
メインカップルより熱かった魅×悠はハッピーエンド済。
新開渉に「一緒に外国に行かないか」と誘われ、迷う可憐。
それを聞いた清四郎は思わず可憐にキス。清四郎への思いに気づいた可憐は……。
【不機嫌な果実】美×可
02/05/18〜02/07/30(未完)
可憐が恋した相手・玲人は何とママの昔の恋人だった。加えて可憐のパパはママと
玲人の関係にショックを受けて失踪したのだと言う。傷ついた可憐は慰めてくれた
美童と一夜を過ごしてしまう。魅録はそんな可憐が気になり始め・・・。
美×可だが魅→可で悠→魅で野→魅。話はパパを探しにロシアに全員で旅立つところ
で終わっている。
【キャンプ編】魅×悠
02/06/28〜02/07/09 (未完)
有閑メンバーで出かけたキャンプ地で深夜二人で抜け出す魅×悠。
新月の夜、満天の星空の下、うっとりとする二人だったが、近くに怪しげな
別荘を見つけ……。
【トライアングル】魅×可、清×悠
02/07/11〜2002/09/09(未完)
ジュエリーAKIの使いで金沢に向かった可憐と美童は、車の故障で難儀している
ところを刈穂裕也に助けられる。なんと可憐が届ける指輪を注文したのは、
金沢のお姫さま・加賀舞子で裕也の婚約者だという。舞子の父の圧力で無理矢理
婚約させられた裕也を可憐、美童、そして魅録は何とかしてやりたいと思う。
一方、悠理、清四郎、野梨子は米留学から帰国した澤ノ井健二に振り回されて
いた。
◆冒頭から鬼門・金沢に向かうストーリー。改行なしで会話文が連続する文章は
読みやすいとはとても言えないが、米国帰りの澤ノ井が「OH!」とすっかり外人に
なっていたり、舞子の父の名前が加賀吟醸だったり、清×悠の関係を「異文化交流」
に例えるなど笑いどころ有り。
【世界は女の為にある 】美×可、清×悠、魅×野
02/07/17〜02/08/08(未完)
周りにけしかけられてから、美童は可憐が気になってたまらない。可憐のために
雲海和尚の元で修行をし、やっとデートにこぎつけるが。悠理は夢を持つ豊作の
ために、清四郎を呼んで猛勉強を始める。秘かに悠理を思う清四郎は友だち以上に
なりたいと思い……。野梨子を意識し始めた魅録は彼女からもらった白いリボンを
キーホルダーにつけていた。
◆三者三様の恋模様が面白かったのに、中断してしまって残念。
【悠理の恋人】美×悠
02/08/08〜02/08/08(未完)
美童は夜のデート中、公園のベンチで小さな日本人形を見つける。次の日の朝、
偶然ホテルで悠理と出くわした美童は悠理とデートすることに。
◆話はここで終わっているが、この後美童が小さくなり「南君の恋人」の逆バージョン
になる予定だった……らしい。又、夏なのでオカルトが入る予定だった……らしい。、
【薔薇の呪縛】美×悠
02/08/01〜02/10/31
豪華客船での船上パーティー。美童はドレスアップした悠理にハートを射抜かれ、
彼女にキス&告白。うなずいた悠理だったが、彼女の前にレイフと名乗る白人男性が
現れる。不思議な雰囲気を持つ彼は船内にあった絵画の人物と瓜二つで……。
やがて悠理はレイフと結婚宣言をし、美童を驚かせる。どうも彼女の前世が関係して
くるらしいのだが。◆メインの美×悠以外にちょこっと魅×可、清×野が可愛い。
【ライバル編】清×野
リレー小説。
02/08/18
「清四郎と同レベル、もしくはそれ以上の男が現れて何かにつけ清四郎と張り合う
ライバルみたいになるんだけど、そいつが野梨子に一目惚れしちゃうという話が読みたい」
という読者の妄想を受けてうpされた小説。
相手の神渡 雅人(みわたり まさと)は聖プレジデントの転入生で、
才能は清四郎とほぼ一緒だけど、恋愛に関してはもっと素直に表現できる性格、という
設定。雅人は野梨子に告白、それを聞いた清四郎は厳しい顔になり……。
ここから、やっと現役世代に入ります。
【夏の匂い】野×悠
02/09/15〜02/11/11
過ぎていく時間。私達はもう子供のままではいられない。
野梨子視点の切なさに胸がつまるひと夏の物語。
夏。有閑倶楽部は白鹿家の丹後半島の別荘にいた。
可憐の美童に対する思いに気がついた時、野梨子も又、悠理への複雑な感情を自覚する。
【秋の手触り】
02/11/18〜現在進行中
「夏の匂い」の続編。
夏が終わり、倶楽部にも変化が訪れる。野梨子は白鹿流を継ぐことにし、清四郎は医大へ
進学することを決める。皆が変わっていくことに焦燥感を覚えた魅録は、悠理の兄、豊作
の抱える問題を誰の手も借りず、自分一人で解決しようと決める。
悠理や豊作の力を借りながら、敵を追い詰める算段を練る魅録だったが、そこは抜け目ない
有閑倶楽部。清四郎ら四人がドレスアップして首をつっこんでくる。
◆詩の一遍を思わせる前作とは打って変わり、軽快さが楽しい「剣菱グループ陰謀編」。
登場人物が織りなす、これぞ有閑!な雰囲気が乙。
【置き去りの恋】
02/11/19
聖プレジデント学園に事故で死んだ少女の幽霊が現れる。霊の出没地点はだんだんと
有閑倶楽部に近づいてきていた。
【共に歩む者 】悠×魅?
02/09/18〜03/01/09
互いに意識し出した悠理と魅録だったが、悠理に見合い話が持ち上がった。
悠理を押し倒した魅録は現場を百合子に見られ、即刻退去を命じられる。
言い訳もせずに二度と悠理の前に現れないと宣言した魅録に、悠理はショックを受け。
【センチメンタルラビリンス〜恋はいつでも迷宮入り!〜 】清×悠、魅×野、美×可
02/10/08〜2002/10/29
本スレを震撼とさせた名作。
清×悠、魅×野、美×可はカップル。ところが悠理は魅録と、野梨子も清四郎となぜか
二人だけで旅行に行く約束をし、それがお互いにばれて、険悪なムード。
一方、安泰に見えた美×可も「博士」の罠にはまり、ラビリンスへと落ちていくのだった。
◆噂に違わぬ悶絶作品。無限に続く会話文と時折挿入される作者のコメントが読者を
パラレルワールドに誘う。ここはどこだ!お前はだれだ、いつ出てきたんだ!とツッコミどころ
満載、爆笑必死。
と、まあオチョクッテ作者さんにはスマソだが、ラビリンスって何だったんだろう……。
【恋のチカラ<野X魅>】魅×野
02/11/01〜03/04/15 (未完)
魅録への思いに気づいた時、野梨子は変わり始めた。いつもなら足を踏み入れない
クラブへ出向き、魅録のバイクに乗り、教習所へ出かける。
◆魅×野好きには堪らない胸キュンストーリー。魅録に膝枕、魅録のバイクの後ろに乗り、
彼のメットをもらう等、乙女心をくすぐりまくるストーリー。再開望む声多し。
【病院坂】魅×野
02/11/13〜現在進行中
野梨子は父の研究所で働く助手、魅録の鋭い目を怖いと思っていたが、ある時彼の人となりに
触れ、次第に惹かれていく。もう一人の助手で野梨子の婚約者、清四郎は嫉妬の為か
そんな野梨子を諧謔し始め、魅録の野梨子への思慕を打ち砕こうとするが……。
◆連載開始当初から絶賛された超人気作品。美しく無駄のない文章からは書物の薫りが
漂ってきそう。うpが途絶えていたが最近復活し、熱狂的読者を狂喜させた。
【有閑探偵社】清×野、魅×悠
02/12/28〜03/03/09(未完)
有閑倶楽部が探偵社という設定。衆議院議員の五橋に殺害予告状が届いた。
有閑倶楽部が張り込んだパーティーでまんまと五橋の娘が毒殺される。
【ずっとそばに】清×野
03/01/08 〜03/01/09(未完)
女性に人気がある清四郎に野梨子は穏やかではないものを感じる。
そんな折、白鹿家を一人の青年が訪れる。
彼は「野梨子の婚約者だ」と名乗るが……。
【可憐さんにはかなわない】可×清、魅×悠(R)、美×野
03/02/16〜現在進行中
清四郎の祖父が資産家であることを知った可憐は、清四郎に猛アタックを開始。
だが次第に財産その他の条件よりも清四郎自身に惹かれ出す。一方、清四郎は可憐
の猛攻撃に焦り気味で野梨子に応援を頼むが、やがて可憐に惹かれる自分に気づき……。
別立てで魅×悠がからむ。
◆コメディ仕立てが嬉しい、長編人気連載。登場人物があっちこっちで浮気な行動に
出るのは御愛嬌。可×清、美×野はキスまで。
【有閑キャッツアイ編】今のところ清×悠、魅×可、美×野
03/03/10〜現在進行中
リレー小説。
久しぶりに盛上がったキャッツアイ小ネタを元に開始されたリレー小説。
悠理、可憐、野梨子は育った家は違うが姉妹の怪盗団。予告をしては次々お宝を盗み
出すキャッツに清四郎ら刑事はお手上げ状態。悠理と清四郎はお見合いをして
惹かれあうが互いに相手の素性を知らず……。
◆小ネタから連載が開始されるまでの流れは感動的ですらあった有閑キャッツ。
開始当初は次々と話がうpされたが、姉妹の持つペンダントの謎やミッション自体を
書くのが難しいのか最近は途絶え気味。がんばれキャッツ、負けるなキャッツ!
現在は絵画『三姉妹』を盗むミッションで、怪しい館に各自待機しているところ。
【雨がボクを狂わせるので 】R、801!
03/06/20〜現在進行中
ブラックな美童をメインに据えた、かなりの異色作。
雨が降ると人格が変わる美童は可憐、野梨子、悠理を次々と陥れていく。
相談に乗った魅録、そして野梨子を守ろうとしていた清四郎もやがて……。
◆美童の性格がまるで変わってしまう、というのがポイント。美童が青い瞳を光らせて
友人達をはめていく様子は鬼畜そのもの。物語は終盤に向かっており、どういう結末を
迎えるか目が離せない。
【KISS】清×野×可
03/09/17〜現在進行中
玉砕覚悟で清四郎に告白した可憐。そんな可憐を思いやる気持ちと清四郎への思慕の
間で揺れる野梨子。
◆野梨子も可憐も清四郎への想いで揺れるが、当の清四郎もかなり揺れている。
この狡さが清四郎らしかったり。
【Deep River】清×野
03/09/20〜現在進行中
清四郎は父の本当の息子ではなかった……。出生の秘密に苦悩する清四郎と野梨子。
清四郎はついに家を出てしまった。
◆ダークを絵に描いたような始まり方の本作品。悲しみに震える清四郎と野梨子に
萌える。三話目にして清四郎、出奔。怒濤の展開に期待。
【Sway】清×可×魅
03/09/23〜現在進行中
可憐と魅録は恋人同士だったが、友人関係の話で大喧嘩をしてしまい仲直りできない。
魅録と元に戻れないとショックを受けた可憐は清四郎を誘うが。
◆登場人物が皆いい奴のこの話。テーマは恋愛より友情なのかも。
【two minutes】魅×野×清
03/09/21〜03/10/09
生徒会室での、ほんの数分の出来事。清四郎、野梨子、魅録。それぞれの視点から
その数分を振り返る。
◆それぞれのキャラクターがすっぽりとはまり込む、萌え所満載短編集。
【SF編】清×悠×魅
2003/10/07〜現在進行中
舞台を宇宙空間に移した有閑倶楽部。セイシロウとユウリはチェイサーという宇宙刑事。
今日も暴れ馬・ユウリにセイシロウは手を焼き、上司トキムネの罵声が飛ぶ。
◆新連載。まだ始まったばかりだが、ユウリの活躍ぶり、セイシロウの冷静沈着ぶりが
らしくて面白い。今後に期待。
【水中花】魅×悠×清×可、美×野
2003/06/10〜 2003/08/07(完結)
「魅録の獣医さん」小ネタが元。悠理はイギリス留学、魅録は獣医、可憐は美大と
おのおのが進学先について悩む。悠理が好きな清四郎は、彼女が魅録に気があるのを
知りながら受験勉強を手伝う。可憐はそんな清四郎に告白するが。
◆未だ完結を見ない作品が多い中、コツコツとうpを続けついに完結に至った作品。
精魂込めて世話をした悠理には全く省みられない清四郎は不憫の一言だが、
可憐とラブラブになったので良しとしよう。
作りかけで放置してたのを急いで仕上げたので、駄文スマソ
作品として「?」でも、ディティールが面白いと個人的にウケる性質なので、
解説はメチャクチャ片寄ってます。なお作者は不祥がほとんどなので、今回から省略
しました。
乙〜!
スバラスィ!
>◆冒頭から鬼門・金沢に向かうストーリー
ワラタよ。解説乙!
なんか文庫目録のようで読んでて楽しい。
イラストを想像するとまた楽し。
665です。
辞典作者さん、早速のアップデート、ありがd。
こうやって見てみると、多種多彩な作品を提供してくださっている作家さん達に
頭が下がります。ここでは作者が誰かわからないのがほとんどですが、文体などを
見比べて『もしかして…』などと想像するのもまた楽しいです。また、作品が増えて
きたらお願いしたいと思っています。
>有閑倶楽部辞典
>キャッツ
怪しい館に各自待機しているところ。
じゃ、悠理はマダエレベーターの中って事かw
辞典作者さん乙です〜!
今まで結構スルーしてる作品が多かったんだけど
あらすじ読んだら興味がわいてきた作品がいくつかあった。
これから読んでこよう。
解説メチャワロタ!
短編うpします。8レス使います。
ダークなので苦手な方はスルーでお願いします。
美×可(×魅)ですが、この三人がお好きな方は
スルーして頂いたほうがいいかもしれません。
夜になった。西の空に目を凝らしても、陽の余韻は既に感じられない。
――知らず知らずのうちにあたしは身構えている。
ハリボテのようなビルの展望室で喘ぐようにひっそり溜め息をつく。どこもかしこ
もが息苦しい。籠った空気にじわじわ圧迫されているかのような錯覚に嘖まれていた。
最新の工法で建てられたここは、さながら硝子張りの函のようだった。
(最新のデートスポット? こんなところ……一体、何を楽しみにしてたのかしら)
世界一好きな男と来る予定だったところに、違う男と来ている。
綺麗に飾られた花も、大理石の床も何もかもが嘘っぽかった。
(もし嘘で窒息することがあるんだとしたら、今すぐここで死んでもいいわ)
この空間の中で、本当に存在してると言えるのは、巨大な硝子の外に広がっている
夜景だけだ。
吸い寄せられるように窓際に立ったまま、動くことが出来なかった。
眼下に見える街の灯りの一つ一つに、誰かが存在している。安っぽいネオンもあれ
ば、中には、愛する人や家族と共にする灯りもあるだろう。
(あたしの居場所は、あの光の中には無い……)
「……ここは空っぽね」――本当に『展望室』だった。
(あの人の灯りもあるのかしら―――)
こんな所から目を凝らしても、見つけられるわけがなかった。
「可憐」
反射した硝子越しに、自分の肩に手を置く金髪の男を見上げた。淡い青が伏し目勝
ちにあたしの肩口を見ているのが目に入る。
「何?」
「信じていいの?」
甘い言葉にはあたしを疑う響きが混じる。
「何を?」
精一杯、恍けてみせる。
「君を、だよ」
「ええ、もちろん。心底信じ切って大丈夫よ」
あたしは、うっとりしたような笑みを浮かべてあげる。
「愛してる?」
「ええ。あんたが愛してくれるのを望んでるわ」
愛しているわ。多分、あんたがあたしを好きなのと同じくらいには。
「何を心配してるの? 世界一のプレイボーイでしょ」
あたしは彼に向き直った。可笑しくて喉の奥で笑ってしまう。
「それとも二十歳過ぎて、看板下ろす気になったのかしら? そうじゃないなら、ち
ゃんとあたしにあんたを愛させてよ」
美童は僅かに動揺した瞳を悟られたくなくて、あたしを抱きしめる。
あたしは気付かないふりをする。
ただ、これだけでいい―――。
あたしの擬態は完成する。
美童が「僕と一緒にいてほしい」なんてしおらしくも可愛いことを言う理由をあた
しは知っている。
振られたのよね。野梨子に。
でもそれは言わないわ。言うほど野暮じゃないもの。
あたしには知られたくないと思ってるでしょう。
埋め合わせに口説く女に知られたくないわよね。
本当、なめられたものだわ。
あんたの事なら何でもお見通しよ。
あんたが何故あたしを口説くのかも知ってるわ。
これからも、野梨子と友達としていたいからでしょう。
でも一人でその近くに居続けるのが辛い。それだけよね。
いい選択よ。
全てを知っててあたしは美童を利用する。
騙されてるふりをしてあげる。何も知らないふりなんて幾らでもしてあげる。
これは、あたしにとっては暇つぶし。
これから始まるショーを見るための寂しい暇つぶしだから。
可哀想な男ね……。
軽々しくあたしを抱かないで。
でも、あたしを掴んでる手は絶対、離さないで。
「愛してるよ、可憐」
「ええ」
あたしはやんわり体を押し退けた。愛なんて言葉を簡単に使える美童に少し苛つく。
「君ほど素敵な人は、僕の周りにはいないよ」
歯の浮く台詞……。
そんな言葉、暫く誰からも掛けてもらったことがなかった事に気が付いて、思わず
フフっと笑ってしまう。それをどう思ったのか、
「本気で言ってるのに」なんて拗ねてみせるから、増々可笑しくなってしまう。
口のうまい男は得ね……。
本当はわかってる。美童がどうして「愛」なんて言葉使うのか。
――呪文のように唱え続けるだけで心を埋められるなら、楽よね。
「わかってるわ。それよりもう帰りましょ。遅いわ」
「そうしようか。夜景、綺麗だったね」
美童が腕を差し出す。あたしは素直に腕を絡める。まるで、当然のように。
今、あたしたちは最高にお似合いのカップルだって、知ってる?
エレベーターに乗り込む瞬間、唐突に言った。
「美童のこと好きよ。多分、今は……誰よりもね。あんたを誰にも渡さないわ」
美童は軽く目を見開いてあたしを見た。
嘘っぽかったかしら……でもいいわ。
美童がこの言葉を本気だとは思わないってことを、あたしは知っている。
それでも美童は
「僕のことそんなに好きでいてくれると思うと嬉しいな」 と言った。
そう言ってくれる美童は本当に優しい。
嘘でも、うれしい。
―――――嘘の言えない男よりずっと好き。
一人で部屋に帰ったあたしは、懲りずにまたあの人について考えてしまう。
もう、とっくに終わったのに。
一体、いつまでこんな風に夜を迎えるのかしら―――独りになると自然と体が強張
ってくる。
あの人の心変わり……いいえ、最初からあたしのところに無かったのかもしれない。
幾度も同じことを考えて、結局はそこに戻ってきてしまう。
彼のことなら、何もかも知ってるつもり、だったのに。自惚れてたのね。どうして、
もっと早く気が付かなかったのかしら。
あの人があの子の名前を呼ぶ声が、頭にこびりついて離れない。あんなに艶を帯び
る彼の声は聞いたことが無かった。
―――ああ悠理、あんたが憎いわ。あたしは殺気すら覚えたわ。
冷たい氷を押し付けられたみたいだった。
それなのに、あたしはその声にすら欲情してたわ。本当は、……その声であたしの
名前を呼んで欲しかったから。
それにしても、一回ダメだと思うとダメになるものね。
そう。別れたのはあたしのせい。
彼を信じられなくなった自分のせい。
だから、汗だくになりながら二人で抱き合って
「俺から離れていくなよ」って言われた時に なんと答えていいのかわからなかった。
何かが喉に引っ掛かって、あたしの言葉を阻んだ。
あの人――魅録のことが大好きで、本当に嫌われたくなくて、失いたくないのに。
好きで、好きで……それでも別れを切り出したのはあたしだ。
今に本当の心に気が付くんだわ。別れを告げる頃にはそう確信してた。
「……あたし、美童とつきあうことにしたわ」
そう言った時の顔、忘れない。
「どういうことだ」
彼の口がひどくゆっくり動くのを、あたしはジッと見ていた。
「そういうことよ。別れましょ」
「そんなに簡単に別れられるかよ」
「そんなこと言ったって、……悪いけどもう、愛してないの」
「俺は、まだ可憐が好きだ」
"まだ"―――正直な男は残酷ね……。
その後は、まるで他人が乗り移ってあたしの口を無理矢理動かしてるみたいだった。
取り乱したくない。そのプライドだけが支えだ―――あたしはちゃんと別れられる。
「あたしは、もうあんたとは逢わないわ」
何処かで偶然再会したら、笑って"久しぶり"って言えれば、それだけでいい。
「……でも美童とは友達でいてやってほしいの。あいつ男友達いないから」
あたしは、彼には断れないことを承知で要求した。
我ながら酷いわ。友達を人一倍大切にするところが大好きだったのに……。
「時間をくれ」とあの人は絞り出すように言った。
黙り込んだ魅録を放ったらかしてあたしは帰った。
「俺のことなんて、すぐ忘れちまうかもしれないから」
本気で言ったのかしら。あたしだってそう出来ればいいと思う。でも……忘れるこ
となんてできるわけない。
あの瞬間も、今も、こんなにも好きだって、いやってほどに実感してる。
「愛してない」なんて、どうして言えたのか不思議なくらいだわ。
あたし達は別れた。
それなのに―――。
あれから一度も会ってないのに、記憶の中の彼の顔も声も、だんだんはっきりして
くる。特に煙草の匂いは――あの辛くて苦いキスを思い出すわ。
……魅録が時々してくれる、激しい嫉妬が嬉しかった。それは今、誰のもの?
彼は今、どんな夜を迎えているんだろう。何を思っているんだろう……。
あの子のことかもしれないわね―――ああ、悠理。なんで清四郎なんかとつきあう
のよ。きっとそのせいで彼は本当の心に気が付かないままあたしと付き合ったのよ。
嘘――ごめんなさい。あたしたちの恋愛ゴッコにも、ちゃんと本当の部分はあった
わ。けれどもう暫くは、あんたのせいにさせて頂戴。
……この気持ちを心の奥底に閉じ込めてしまえるまで。魅録の事を考えなくていい
夜が来るまで。
あたしは愛する人に対して最悪な嘘の罪を犯した。
あれこれについて有罪で、理由なんて山ほどあって、いくらでも見つかる。
だから自らこの身を罰することにした。――なんて、本当はそれすら口実だ。
ああ、美童……どうか魅録とずっと友達でいてね。
あんたの目で、彼がボロボロになっていくのをあたしに見せて頂戴。
どんなに衝撃的でも、あたしは絶対、目を逸らさないわ。
……あたしは喜ぶのかしら。それとも哀しむのかしら。
まだ、わからないけど。
あたしは美童の嘘に自分の嘘を重ねる。息が詰まって、呼吸が、出来なくなるまで。
美童のこと、好きよ。多分、今は誰よりもね―――
全部嘘だけどこの言葉だけは、真実よ。
寂しい男よね……。
あんたが、あたしにそっくりだから……。そっくりで哀しいから。
「あんたほどいい男は、あたしの周りにいないわ。本当よ」
幾らでも言ってあげる。
粉々のあんたを守ってあげる。
だから―――あたしと、一緒にいて、よ。
<終わり>
読んで下さった方、スルーして下さった方、ありがとうございました。
>淑やかな擬態
大人な可憐好きだわ〜。
可憐好きの私にはたまらない。
>淑やかな擬態
んんん〜、いい感じで酔わせていただきました。
悪女な可憐ですね。魅録は何の時に「悠理」と呼んだんでしょうね。
ベッドの中?
>淑やかな擬態
可憐がいじらしいよ〜。
美童サイドも読んでみたいです。
>707
私も是非読みたい。
“a few minutes”シリーズの作家さんと同じ人?違う人?
>>685 グッジョブ!グッジョ〜ブ!!
かの作品wについての解説は茶を吹きまつた。
◆の後の解説がスバラスィw
>708
ここでそういう決め付けするのやめなよ
禿同。失礼なやっちゃ。
>淑やかな擬態
あぁ〜、可憐キレイ!!
すごく好きです。最近いろんな作品で
物憂げな可憐が見られますね。
>淑やかな擬態
この季節にぴったりはまったストーリーで、すごく切なくなってくる…
共に歩む者を書いていた者です。
もう覚えている人は、
居ないと思いますが(;^_^A
久しぶりに書いてみたくなりました。
突然ですが、今から5話アップします。
興味無い方はスルーして下さい。
「その前に、相手は誰なの?
答えなさいよ!!」
悠理の首筋にキスマークを付けた、
相手の事を聞き出そうとする可憐を尻目に、
悠理は部室のドアに掛けられていた鍵を開けた。
「ごめん可憐…
今は言いたくないんだ… これ隠してくれてありがと」
そう言って、開けたドアの先には、
一番会いたくない男が立っていた。
「悠理っ!?」
今すぐここから
逃げ出したいのに体が動かない。
可憐の言葉が脳裏を過る。
――『愛のしるし』
違うよ可憐
魅録はきっと…
あたいの事なんて
好きじゃないよ。
ひと雫の涙が零れた。
悠理の頬を伝い涙の雫は、一瞬の間に床へと吸い込まれていった。
少年のように無邪気な顔からは、
想像も出来ないあまりに美しい少女の顔は
魅録の体を動けなくしていた。
「どいてよ…」
魅録の心を一瞬にして奪った少女は、
冷たい言葉を放ち、目の前から消え去った。
「まさかっ!?
悠理にキスマークつけたのって、あんただったの!?」
呆気にとられた可憐の姿があった。
「ちょっ…!? ちょっと待てっ
キスマークって!?」 突然出された単語に焦る魅録を尻目に、
可憐はさらに追い打ちをかける。
「まさか興奮し過ぎて覚えて無いとか?」
ニヤリと、笑みを浮かべた可憐は冷やかしの言葉を口にした。
「ばかっ! おまえ何言ってんだよ!!」
魅録の中に昨夜の光景が浮かぶ
仕掛けたのは自分だった。
情熱にまかせて突き進み、そして悠理の心を傷つけた。
「何やってんだ俺は」
慌てて可憐の前から立ち去り、
目の前から消えた愛しい少女を追い掛けた。
「…ちょっと一体なんなのよ?」
俺は最低だな…
自分から突き放しておきながら、
また、引き戻そうとする。
そうやって悠理を自分の都合で傷つける…
なのに俺は…
悠理をこの手で、もう一度抱きしめたい。
『剣菱』がなんだ。
そんな事、努力次第でどうにでもなるさ。
「悠理っ!」
追い付いた少女の細い腕を掴み足を止めた。
「悠理…すまなかった。
俺は…やっぱりお前が…」
思わず掴んだ手に力が入る。
「何言ってんだよ…
逃げ出したくせに!
勝手な事ばかり言うな!」
悠理は魅録に掴まれた腕を振りほどくと、
軽蔑に満ちた冷たい眼差しで、
魅録を睨みつけた。
「あたい…忘れたいんだ…
見合いもあるし…
たぶん結婚する事になる。
だから魅録、もう忘れてくれないか?」
「待てよ…お前はそれでいいのか?
家の為に結婚するとかって、
お前が一番嫌がってた事じゃないか?」
その言葉を聞いて悠理は、
呆れ返ったかのように魅録へ冷たい視線を浴びせた。
「他人のお前がいちいち口出す事じゃないよ…」
悠理の発した自分に対する、
拒絶の言葉は魅録の心に痛く突き刺さる。
「悠理…」
魅録の言葉を聞く間も無く、
悠理は魅録の前から立ち去った。
空っぽになった心は、何も考えることが出来ぬほど、魅録の体を支配していた。
だが、すぐに女子生徒の叫び声で我に返る事が出来た。
【続きます】
>共に歩む者
帰ってきてくださって嬉しいです。
全然覚えていますので、この先、うpお願いします。マターリと待ってます。
最近、本当にいろんな方が帰ってきてくださって、このスレに来るのが
楽しいです。
>共に〜
おかえり〜。また書く気になったんだね。ヨカッタ!
ところで、前回の続きが分からないのよ…
次回のうpからで構わないので、リンクつけておいて頂けませぬか?
>共に歩む者
うわー、久々!
魅×悠って、意外に少ないのですごく嬉しいです。
マイペースでよいので、是非続きも書いてくださいね。
本当に、最近色々な人が帰ってきてて嬉しい。
タイムリーではないですが、この間嵐様のサイトにうpされた素敵な表紙絵に刺激されて
なんとなく見切り発車で書き始めてしまいました。とりあえず3レスいただきます。
こういうのルール違反であればご指摘ください。
妙な噂、というのは、学校には不可欠なものだ。
理科室の標本がうろつき、音楽室で絵のバッハが笑い、
北の端の階段は午前2時に一段増え、部室の女子トイレの鏡に子供が映り、
現代文の教師はレポートを目方で採点し、教頭は裏口入学を手引きし、
学食のおでんは創設以来一度もだしを換えておらず、
校内きっての大和撫子の白鹿野梨子は夜な夜なひとり派手に遊び歩く。
あくまで噂。だけれども、その中に本当のことも紛れている。
だから面白いし、たちが悪い。
白鹿野梨子の噂は、いまや聖プレジデント学園の誰もが知っていた。
もちろん、有閑倶楽部のメンバーも。
最初に聞き及んでいたのは、やはりというか、当然というか、可憐だった。
2年の女生徒が3人寄り添いつつ、上目遣いで報告してくれたのだ。
曰く、
『白鹿野梨子が、派手な格好をして、夜の六本木で、男漁りをしている』
「そりゃあ、」
可憐はすっかり呆れた顔で言う。生徒会室にまだ野梨子の姿はない。
「お嬢さまらしからぬ時間と場所で遊んでるわよ。あたしたちと一緒にね」
魅録も言う。
「男漁り、の部分はどっからでてきたんだろうな」
「もてない女のやっかみじゃないの?怖いよぉ、僻んだ人間って」
これは美童。
「言い出した奴分かんないかな、一発殴ってやるのに」
口を尖らせた悠理を、清四郎が諌める。清四郎も不機嫌な顔に変わりはないが。
「こういうのはね、放っとくのが一番ですよ。デマはすぐ消えます」
「だって…」
―かちゃ。
ドアの開け方で誰かわかる。最後のひとりが入ってきた。
そして彼女は、すでにその場の話題を知っている。
「確かに、夜遊びはしてますけど」
野梨子は笑って言った。
「あなた方とご一緒に」
可憐と同じ言い方をしたので、5人も気持ちよく笑った。
その時は、それで終わった。
あとは、75日だかなんだかの冷却期間を静かに待つだけのはずだった。
しかし、10日も経たないうちに、新しい噂が倶楽部にやってきた。
曰く、
『白鹿野梨子は、中年男相手に、売春している』
いくらなんでもそれはひどい。
内容が内容だけに、大きな声では語られず、その分その囁き声は残酷だった。
自称世界一のフェミニスト・美童が、クラスイトの女子に怒鳴ったほどに。
校内で対抗するものなどいない倶楽部の面々であったが、
『噂』という形のないものを押さえておくのは想像以上に難しかった。
出所も伝達経路も霧のようで、見えたような気がしても
ふわりと消えてしまってつかめないのだった。
「根も葉もない噂ですもの、無視しておけばよろしいのよ」
と、本人はすましたものだったが、噂がおさまらないまま何日も経つうち、
その顔にはやはりどこか疲れが見えはじめてきた。
気丈な野梨子のこと、かなり参っているにも関わらず、
表面に出さないように努力しているのだと、みんな思っていた。
ひとりをのぞいて。
イラストのイメージを損なわれた皆様、申し訳ございません。
>白鹿野梨子の貞操を狙え!
私は、OKだと思うんですけど…。
>白鹿野梨子の貞操を狙え!
リアルタイムで拝見し、のっけから引き込まれてしまいました。
>現代文の教師はレポートを目方で採点し、教頭は裏口入学を手引きし、
>学食のおでんは創設以来一度もだしを換えておらず、
めっちゃ、ツボです〜。すごくテンポがいいですね。
野梨子は一体何をしてるずら。続きが楽しみなので早くうpしてください!
>白鹿野梨子の貞操を狙え!
私も面白かったです。
有閑ぽくていいですねー。
>共に歩む者
タイトル見た時、脳がタイムスリップしたかと思いました。
お帰りなさいまし。復活うれしいです。
ちなみにまだ携帯からうpなんですか?(参考までに・・・)
>白鹿野梨子の貞操を狙え!
私もOKでつよ。
ドアの開け方で…てトコがいいです♪
寒くなってきましたねー!
風邪気味なのにエチーしちゃって
うつっちゃったわゲホゲホ、
みたいなR書いてくださる神きぼんw
Deep Riverうpします。
6レスお借りします。
>>518 冷えて来たな。
美童はペンを机に置き、傍らの椅子の上に丸めてあったジャケットに袖を通した。
初老の教授が進める講義は、慣れているが故に単調で、
美童は欠伸を噛み殺すのに苦労していた。
左の席に座っていた女性は余程退屈なのか、レジュメに眼を通すでもなく頬杖を付いている。
美童の視線に気付いたのか、にっこりと微笑むと、ルーズリーフの余白部分にこう書いた。
『ねえ、あなた高等部からの持ち上がりでしょ? 白鹿さんて、昔からああだったの?』
ああ、またこの質問か。
美童は内心辟易していたが、女性に冷たく当たることは彼のポリシーに反する。
『ああって、どういうこと?』
『いつもお高く止まってるっていうのかしら。私たちが話し掛けても、にこりともしないし。
感情っていうものがないんじゃないかって、専らの噂よ』
美童はロ型に組まれたテーブルの向こう側で、静かに辞書を捲る野梨子を盗み見た。
『そんなことはないよ。彼女は、ちょっと不器用なだけで、いい子なんだよ』
美童の文字を読み終えた女性が両眉をぴくりと上げてみせる。
『男の人は皆、そう言うわね。美人って特よね』
そう書かれた文章に異議を唱えようとしてペンを強く握るが、
なんと返せば良いのか分からない。
美童は曖昧に微笑んでみせ、筆談を中断させた。
「野梨子!」
講義を終え、ゼミ室を出ようとしていた小柄な後ろ姿に、美童が声を掛けた。
「……なんですの?」
徐に野梨子が振り返る。美童はにっこりと微笑むと、テキストを掲げて見せた。
「今日の講義で解らないところがあったんだ。教えてくれない?」
「いいですけど……」
野梨子は無表情のまま頷き、美童の背中に従った。
大学部近くの路地にある小ぢんまりとした喫茶店に、二人は立ち寄った。
平日の午前中ということもあるのか、店内には彼等以外の影もなく、
ほぼ貸し切り状態であった。
マスターの趣味で集められたという七十年代の洋楽レコードが、
絵画代わりに壁に飾られている。
小さな丸テーブルを挟むようにして二人は腰を落ち着けた。
「解らないって仰っていたのは、どこですの?」
珈琲を注文するや否やそう問い掛けて来た野梨子に、美童が苦笑する。
「嘘だよ。たまには野梨子とデートしたかったんだ」
野梨子は感情の篭らない眼で美童を見上げると、小さく嘆息した。
「私、帰りますわね」
「待ってよ」
美童が立ち上がろうとする野梨子の肩を慌てて押さえる。
「名打てのプレーボーイがどうしましたの。
女性に不自由しているわけでもありませんでしょ?」
「キツイこと言うなあ」
美童は苦笑し、指を組み合せてその上に顎を乗せた。
変わったな、と思う。昔の――清四郎が傍にいた頃の野梨子は、こんな風ではなかった。
もう少し……そう、もう少し余裕があった。
なのに、今はどうだろう。冬の朝、水溜まりに張った薄い氷のような危うさがある。
「ねえ、野梨子。本当は……清四郎との間になにがあったの」
美童の口からついて出たその台詞を聞いてすら、野梨子の表情は変わることがなかった。
清四郎が失踪する前に流れていた、不穏な空気。
それは清四郎が彼の父親の実子ではないという事実だけで
為されているものではないように感じていた。
しかし疑問を口にする前に清四郎は姿を消し、野梨子は口を噤んでしまった。
魅録は何か知っているようではあったが、黙して語ろうとはせず、
美童も悠理も可憐も問い掛けることすら出来ずに、ただ時間だけが経った。
「もう、四年も経ったんだ。そろそろ聞いてもいいだろう?」
「……美童にとってはもう四年かもしれませんけど、私にとっては未だ四年ですわ」
マスターが珈琲を運んで来た。アンティークのカップから湯気が立ち上っている。
「下らない感傷だっていうことは、分かっていますの。
現実を受け容れるより他に、術がないことも嫌というほどに分かっていますわ。でも――」
其処まで言うと、野梨子は言葉を詰まらせた。美童は辛抱強く次の言葉を待った。
「有りの侭を受け容れようと努力する事は、想い出を蘇らせるのと同じ事ですものね」
野梨子の瞳に影がさした。
「見っとも無いですわね、こんな自己憐憫の情に溺れるだなんて。笑ってやって下さいな」
野梨子が微かに口元を歪ませた。笑い方を忘れたかのような
――否、本当に忘れてしまったのかもしれないが――その表情に、美童は胸を突かれた。
「でも、いつまでもそうしているつもりなの。他の誰かを、見ようとは思わないの?」
カップを両手で包み込みながら、野梨子が頭を振る。
「ねえ、野梨子。僕を見てくれないかな」
取り合おうともせずカップを口に運ぶ野梨子を、テーブル越しに見つめ乍ら美童は繰り返した。
「僕を、見てくれないかな。僕は消えたりしない。ずっと傍に居るから」
「冗談が過ぎますわよ、美童。恋愛ごっこなら、余所でなさって」
「僕が、本気だって言ったら?」
「信じませんわ」
美童の視線の強さに耐え難くなったのか、野梨子が緩りと一つ瞬きをして俯いた。
「本当はね、野梨子の中から清四郎の影が消えてしまうまで、待つつもりだったんだ。でも……」
左肩に添えられた手の熱さに驚き、野梨子が顔を上げる。と――
不意に重ねられた唇。野梨子がそうと気付いた時には、既に離れた後だった。
「何を――」
肩に置かれた手を払い除けると、野梨子は吃るようにして訴えた。
「待つのは、やめたよ」
「――で?」
止まり木に腰掛けた可憐が、不機嫌そうに聞き返す。
「キスしたら、引っ叩かれた。自業自得だけどね」
美童が苦笑しながら応える。やや赤らんだ彼の頬を眺めながら、可憐はそっと嘆嗟した。
美童はそれに気付かず、彼の瞳と同じ色のカクテルを口にしている。
突然の呼び出しだった。
いくら同じ大学でも、学部が違えば高校時代のように毎日顔を合わせるというわけでもない。
美童からの誘いをそれなりに楽しみに出向いたのだが――
可憐の心は美童の一言によって、深く沈んでいた。
『野梨子が好きなんだ。今日、告白したよ』
一点の翳りもない眼で、美童は言った。
「彼女たちとも、綺麗さっぱり別れた。携帯のメモリーが随分寂しくなったよ」
自嘲気味にそう語る美童の横顔は、何処か穏やかで。それが可憐を余計に苛立たせた。
「世界の恋人でいるよりも、野梨子の恋人になりたいってわけ?
美童、今でも野梨子は清四郎のことを想っているのよ」
「そんなの分かってるさ。嫌って程にね」
「なら――」
「僕はね、可憐。野梨子は強い人間なんだって、ずっと思ってきたんだよ。
でもさ、実際には凄く脆い部分を抱えてて――上手く言えないんだけど、
それを支えていたのが清四郎だったと思うんだ。
けど、清四郎が居なくなって……もう、あんな顔は見ていたくないんだ。
清四郎の代わりでもいい、傍にいてやりたいんだよ」
可憐はメンソールの煙草を取り出し、細い指に挟んだ。
「守ってやりたい、ってわけ。ふうん」
可憐はくっと喉の奥を鳴らして笑った。
「一生に一度くらいはそんなクサイ台詞、言われてみたいもんだわね」
「何を言ってるんだよ。可憐なら幾らでも言って貰えるだろう? 尤も――」
美童がグラスに手を伸ばしながら言う。
「可憐は一人でも、大丈夫じゃないか」
刹那、可憐の表情が強張ったのに、美童は気付かなかった。
送って行くと言う美童の申し出を断り、可憐はタクシーに乗り込んだ。
住所を伝え、座席に凭れ、ただ振動に身を任せた。
車窓に、虚ろな表情をした女が映る。
それが自分だと認めたくなくて、可憐はきつく眼を閉じた。
『可憐は一人でも、大丈夫じゃないか』
美童の一言が、耳から離れない。
大丈夫なわけ、ないじゃないの。
心の裡でそっと呟く。
運転手がバックミラー越しに可憐を盗み見たが、可憐はそれにも気付かぬほどに
視界を涙で塞がれていた。
封印していたはずの想いが、堰を切ったように溢れ出す。
数年前、可憐は或る人物に惹かれていた。
しかし彼の眼は、一途に幼馴染を見詰めていた。そしてまた、彼女の眼も彼だけを映していた。
実らない想いだということは、よく分かっていた。
だからこそ余計に、誰にも悟られないように振る舞っていた――はずだった。
或る日の放課後だった。ただ二人だけが残った生徒会室で、
葉桜が奏でる微かな風の音を何とはなしに耳にしながら、美童は唐突に言ったのだ。
『可憐。もう、いいよ』
『なんのこと?』
そう応えようとした可憐の唇は震え、知らず涙が零れていた。
美童は可憐の涙が枯れるのを、じっと待っていた。
慰めるでもなく、宥めるでもなく、ただじっと待っていた。
ただ、それだけの事であった。
だがそんな些細なことが、何より重く響くこともままあるのだ。
いつしか可憐の眼は、かつて焦がれた男の背中ではなく、
美童の横顔を追うようになっていた。
しかし、他の男のことで慟哭した自分がその涙も乾かぬうちに、
想いの先を変えたと知ったら、軽蔑されるのではないだろうか――
誰よりも、美童に軽蔑されるのを、可憐は恐れた。
そして何より、恋愛感情に聡い美童が可憐の内心の変化に気付かぬはずはない。
なのに敢えて気付かぬ振りをしているというのは、彼一流の拒絶として可憐の眼には映った。
それならば自分は友人のままでもいいと、心の奥底に秘めていた気持ちだった。
失うぐらいなら、初めから望まなければ良いことだと、半ば自分に言い聞かせた気持ちだった。
しかし――未だ眼にしたこともないような優婉な表情で、美童は言ったのだ。
『野梨子が好きなんだ。今日、告白したよ』
「……なんで、野梨子なのよ……」
何故、野梨子ばかりが愛されるのか――
例え逆恨みだとしても、可憐はそう思わずにはいられなかった。
可憐の心裏で、何かが瓦解した瞬間だった。
<続きます>
>Deep River
実は今日初めて読みました。
大人っぽくて、コーヒーみたいな文章だな
って思いました。(稚拙ですみません)
またまた綺麗な可憐。続きを楽しみにしています。
>Deep River
清四郎がいなくなってから、もう四年も経っちゃったんですか!?
ぎゃー。どこにいるんだ、清四郎。
野梨子は彼が失踪してから心を閉ざしてしまったんですね。
うーん、美童にすがってほしいような、そうでないような。
続き、待ってまつ。
>Deep River
お!待ってました!
私も清四郎がいなくなって四年も経っていたことにびっくり。
一体どこで何をしてるんでしょうか…。
清四郎の事だからそれなりにきちんとした生活をしてるんじゃない
かと思うんですが。
今後の展開が気になりますね〜。
>Deep River
野梨子や清四郎はもちろん、美童も可憐も切ないですねー
秋の夜長にしみじみしながら読むのによく合うお話だと思います。
続きを楽しみにしてますね。
>SF編(したらば)
テンポがよくて読みやすいし、SFっぽさもありながら、
原作の雰囲気をちゃんと残しているのが凄いと思います。
個人的には九江の登場が嬉しかった。
可憐はダイエット失敗ですねw
残りの魅録と美童はペアを組んでいるんでしょうか?
面白そうな取り合わせになりそうです。
>特別室で(したらば)
清四郎と魅録がどう会話していくのか、興味津々。
いいところで終わってるのが残念ですw
>Deep River
美童がいい男〜。
可憐じゃないけど、惚れそう。
Swayうpします。
>>676の続きになります。
次の日から、可憐はいつもどおり学校へ行っている。
ただ、魅録にも清四郎にもあわせる顔がなくて、お昼ですら部室に行くことはない。
もともと他の5人の誰とも同じクラスではないので、ここ2週間、可憐は単独行動を
取り続けている。
それはひどく孤独で辛くもあったが、自業自得であるとの思いがもっと強かった。
その頃、魅録の耳には嫌な情報が入ってきていた。
『親父狩り』ならぬ『高校生狩り』。
男女問わず、主に私学の、世間知らずに見える高校生をターゲットにした嫌がらせが、
都内繁華街で散発しているとのことだった。
加害者は同年代だが、犯行時は私服なので、高校生なのかどうかはっきりしない。
今のところ聖プレジデントの生徒が被害にあったという情報までは掴んでないが、
もしかしたら表に出てないだけで、すでに何人かは犠牲になっているのかもしれない。
魅録は、白い煙を吐き出しながら、身近な存在の人間を思い浮かべた。
まず、一番問題のないのは悠理。
黙っている分には美人で人によっては世間知らずにも見えるが、ひとたび動けば、加害者は
自らの間違いに嫌でも気付くだろう。
案外大丈夫なのは、野梨子。
家が学校から徒歩圏であり、学校の行き帰りで繁華街を通ることはない。
それに、側に清四郎がいることが多いから、これも加害者が間違いに気付かざるを得ない
パターンになるだろう。
…とすると、可憐か。
自分を含め周りは、ある意味可憐を一番世間知らずではないと見るが、それは可憐を知って
いるからそう見るだけで、全くの第三者からそう見えるとは限らない。
むしろ、聖プレジデントの制服を着てひとりで電車通学なんて、狙いやすいターゲット
かもしれない。
魅録は、頭を抱えた。
こんな状況になってしまった今、どうやって可憐を守るというのか。
清四郎に事の次第を話して、頼むのか?
それとも悠理にでも頼むのか?
そして自分は、何もしないで平気なのか?
…違う。
自分の中で、答えは出ていた。
次の日の放課後、魅録の足は校舎の玄関へと向かっていた。
「あれっ?魅録、今日、用事あんの?」
同じクラスの悠理が、さらっと尋ねる。
悪いとは思ったが、説明する時間がない。
「あっ、ま、まあな。みんなには、うまく言っといてくれ」
「ふーん、わかった。また、明日な」
悠理はそれ以上何も聞かなかった。
魅録は、それとなく可憐のクラスを除くべく、学校の中を歩いてみる。
可憐のクラスに辿り着いた時、自分のクラスのホームルームが長引いたせいか、中には
人がほとんどいなかった。
可憐の姿も見当たらない。
魅録は、急ぎ足で再び歩き始めた。
ふと、歩きながら、これではまるでストーカーそのものではないかと自分の行動が
可笑しくも情けなくも思えてきた。
しかし、不必要に可憐に近づくつもりもないし、万が一連中に遭遇したら、連中を叩き
のめす仕事がある。
何よりも、可憐が無事なら、それでいい。
そうやって突進していると、ここ2週間ほどまともに顔を見ていないもう一人の人物に
遭遇した。
「僕のほうにも情報は入ってます。野梨子は僕がなんとかしますから、魅録は…」
「わかってる」
「大人数なら、駆けつけますから」
「ああ」
二人は、それぞれの方向へ足早に去っていった。
「清四郎、魅録は見つかりましたの?」
思っていたよりも早く教室に戻ってきた清四郎に、野梨子は少し不安げに訊ねた。
清四郎は野梨子に微笑んで答えとする。
「さすがに、顔の広い人間です。説明する必要もありませんでした」
「清四郎は、それでいいんですの?」
ポーカーフェースを崩さない幼馴染に、ここ2週間の間にようやく気付いた疑問を思わず
ぶつけてしまう。
「魅録がいれば、安心です」
清四郎は肝心な点をはぐらかす。
「そうではなくて…」
野梨子は、あからさまに訊くことができない。
「可憐が本命には一途だって、野梨子もよく知ってるでしょう。さあ、帰りましょう」
野梨子は何も言えず、椅子から立ち上がって清四郎と共に教室を出た。
普段ならば歩きながら取り留めのない話などするのだが、今日は黙りこくったまま。
こんなとき、10何年という付き合いを重苦しく感じてしまう。
感じ取らなくてもいいものに、嫌でも気が付いてしまう。
「やっぱ、お前だけか、今日ここに来るの」
部室のドアを開けた美童が見たのは、椅子に座って両足をテーブルの上に投げ出した
悠理ひとり。
「どういう意味なんだよ」
美童は、自分がからかわれたような気がして、つっかかり気味に口を開く。
「ちょっとね、最近、ヘンな奴らがうろちょろしてるって話」
悠理は、曖昧にしか教えない。
「何、それ。僕、知らないよ」
美童は、全く関心を示さない。
「まあ、いいや。おなかすいたから、ちょっとつきあえよ」
悠理は椅子からヒョイと立ち上がると、美童の腕を掴んでぐいぐい引っ張って部室を後にする。
力ではとても悠理に敵わない美童は、そのままずるずると歩かされ、一緒に校舎の門を
くぐる羽目になった。
まだ、続きます。
>Sway
おっ、もしかしたら魅録と可憐が元サヤ〜な感じですね。
清四郎はやっぱり「いい人」で終わるのか。次回期待してます。
小ネタ。
普段はガリ勉の生徒会長。が、しかし、その実体は……
良い子の味方、
菊 正 宗 清 四 郎 、 マ ン !
助けを求める声を聞きつけては変身して飛んでいく。
今日の助けを求める人は剣菱悠理さん(18)。
「どうしたんですか!」
「あー、菊正宗清四郎、マン! 今日授業で当たるのに宿題やってないんだよお。」
「……それくらい、自分でやれ!」
「なんだよお、ケチ。困ってる人を助けるのが仕事だろ!(怒)」
清四郎マン、無言で悠理の宿題を片付ける。
「わーい、やったあ。これからも助けに来いよな、清四郎、マン!」
「仮にも正義のヒーローに向かって来いとは何ですか。大体ですね、あなたは……」
「あー、胸のランプが点滅してるじょ」
「くっ、仕方がない。お小言はここまでです。いいですか、今度から
宿題はちゃんとやるんですよ。いや、やれ!」
そう言い残し、菊正宗清四郎、マンは大空へ向かって飛んでいった。
「ふむっ!!」
オワリ
>清四郎、マン
ワラタ。
他のメンバーのところにも参上してほしい。
でもなんで、清四郎とマンの間に「、」が入ってるのかが謎。
Deep River、Sway と浸っていたところに菊正宗清四郎、マン!ワラタ。
続きが読みたいよお〜。清四郎、マン!
貞操を狙え!も気になるし、妄想スレって楽しいなー。
関係ないけど、昨日酒屋の入口テントに
デカデカと「菊正宗」「白鹿」が並んでいた。
何となくしっくりくるのは妄想に侵されているからだろうか?
しっくりきすぎて波風立たせたくなるのも妄・・・
Swayをうpします。
>>751の続きになります。
魅録は、いつもは近所に停めてあるバイクに乗らず、徒歩で可憐の足取りを追っていた。
まずは後をつけていることを可憐に気付かれたくなかったし、それにいざという時バイクは
間違いなく邪魔になると思われた。
聖プレジデントから最寄り駅まで、徒歩で10分ほどの距離。
閑静な住宅街であるこの辺りは、事件の類とは縁がない場所だ。
逆に可憐の最寄り駅から可憐の家までは5分ほどだが、繁華街の中ということもあり、
用心すべき場所である。
できれば駅に着くまでに可憐を見つけたい。
魅録は、煙草を吸うために息切れしやすくなった自分を呪いながら、走り続けていた。
一瞬、先にバイクで向こうの駅まで先回りすべきだったかなと思ったが、馬鹿な奴らが
こっちで行動を起こす可能性がすぐさま頭を掠める。
とりあえず見つけるまでは走るしかなかった。
そしてついに駅まで来てしまう。
魅録は、間に合わなかったことにがっくりきてしまい、それでも近くの壁に手をついて
人ごみを見渡す。
すると、視界の端に何やら不愉快な映像が入り込んで来る。
努めて焦点を合わせると、聖プレジデントの制服。
いつもなら、ここで近づいていって一暴れするところだが、今日は可憐を追わなければならない。
魅録がその制服に悪いと思いつつ歩き始めた矢先、別の聖プレジデントの制服がその方向へ
突進していた。
探していた人だった。
魅録の足は、その大脳が命じるよりも先に、前へ踏み出す。
もちろん、すぐ側に自分達を追っていた援軍までいようとは思いもしない。
何も知らない美童を尻目に、悠理は可憐の、そして魅録の後をつけていた。
最近、様々な理由で知名度が上がってしまい暴れられなくなった悠理は、この騒動に
かこつけて一暴れできないものかと目論んでいた。
ただ暴れるだけなら何も美童とつるむ必要はないのだが、本当に連中に遭遇してしまった時に
美童がいると便利かもしれないと思ったので道連れにしてみた。
もちろん、何もなければ、最初の言葉どおりどこかで軽くデザートでもとは思っていたが。
「で、悠理、どこに行くつもりなんだよ。このままじゃ、ただ駅に行くだけじゃないか!」
あと少しで駅に着くというところで、美童は不満をぶちまけた。
「うるさいなあ。黙ってついてくればいいんだよ」
不機嫌な面持ちでしぶしぶついてくる美童に、ぴしゃりと言い返した。
なおもぶつぶつと不満をぶちまける美童を無視して、悠理は早足で歩き続ける。
逆に美童は、いつにない悠理のぶっきらぼうな態度に腹が立ってきて、前を歩く悠理の肩を
掴もうとする。
このまま付き合うのは、時間の無駄。
今日は7時からデートもあるし。
その手がもう少しで悠理の肩に届こうかというところで、突然、美童は立ち止まってしまう。
見えるのは、可憐がずっと先にいて、その後ろを魅録が追いかけていて。
そして悠理がくるりと振り返り、美童に笑顔を向けてからそのさらに後を追いかけていく。
美童は、少し離れたところで待っている。
腕に覚えのない自分ができるのが何であるか、言われずともわかっている。
隙をみて可憐達が包囲網から抜け出たときが、自分の出番だ。
まだ、続きます。
今、間違いに気付きました。
>758はSway (37) です。
>Sway
このままで行くと魅録が可憐を・・・ですよね?
え〜っ、清四郎の立場は・・・。それでいいのか、清四郎?
野梨子萌えイラスト、キタキタキタキタ━━━(゚∀゚≡(゚∀゚≡゚∀゚)≡゚∀゚)━━━━!!!
幻想的でうっとりしちゃいました。
「戀ひやめし夏」は凄く好きな作品なので、こんな素敵なイラストまで
拝ませてもらえて、得した気分(w
>>758の続きです。
「あら、陸奥さんじゃない」
可憐は、駅のはずれで男に絡まれていた、聖プレジデントの制服を着た女の子に声を掛けた。
腕に全く覚えのない可憐は普段なら間違っても介入しないが、まれに、見過ごすことが
できなくて近づいてしまう。
当たり前だが、敵が一人の時のみである。
「黄桜さん…?」
“陸奥さん”と呼ばれた子はビクリと身体を震わせ、声のする方へ振り向いた。
怯えた目に、助けを求める必死の表情。
「あんた、何の用かな?」
可憐が陸奥の腕を掴もうとすると男が目の前に立ちふさがって、逆に宙を舞う羽目になった
可憐の腕を掴む。
「何すんのよ。放しなさいよ」
可憐は、鋭い表情で男を睨みつける。
その美貌から発せられる怒気のオーラに、男は一瞬怯む。
可憐はありったけの力で、男の手を振り払った。
「さ、行きましょう」
今度こそ可憐が陸奥の腕を掴んで駅へ向かおうとすると、いつの間にか、複数の男達が
姿を表した。
前に2人、後ろに3人。
可憐達は挟み撃ちの状態になってしまった。
「あんた、何か勘違いしてないか?」
「勘違いしてるのは、あんたの方だと思うけどな」
聖プレジデントの制服を着た、背の高い、頭髪がピンク色の男が余裕綽々で近づいてくる。
「魅録、あたいもちょっとは身体動かしたいんだけどな」
続いて、同じ制服を着た、美人だが口の悪い女もやって来た。
「……」
可憐は、窮地にいいタイミングで現れた二人に言葉も出ない。
男達は二人を知っているのか、明らかに動揺が見て取れる。
「美童!可憐達頼む!!」
悠理は、こちらに向かってゆっくりと歩いてきていた美童に叫んだ。
美童は、微笑んでそれに答える。
その様子に我を取り戻した可憐は、陸奥を引っ張って男達の間をするりと抜け、
美童と合流する。
男達は可憐達を止めようにも、魅録と悠理から目を離すことができない。
「大丈夫?」
美童の言葉に、陸奥はその場にへたり込んでしまった。
可憐もほっとして身体から力が抜け、壁に寄りかかる。
「ありがと。ほんとに、助かったわ」
「お前等を仕切ってるのは誰なんだ?」
魅録は、冷静に訊ねる。
「そんなもん、お前等に関係ねえんだよ」
男達の一人が前に進み出て、魅録の胸倉を掴もうとする。
だが、魅録のストレートが、男の腕が魅録に届く前に男の右わき腹に入る。
その横では、悠理の腕を掴もうとした男が、ふわりと舞い上がった悠理に顔面蹴りを食らう。
その正確さと破壊力に、男どもはいともあっさりと倒れてしまう。
残りの男達は、その光景に唖然としたままだ。
「どうした、かかってこないのか?待ってるんだけどな」
息ひとつ乱さない悠理は、男達をからかってみる。
その言葉にプライドを傷つけられたのか、男達は急に魅録と悠理にランダムに襲い掛かってきた。
しかし、敏捷さに欠ける男達の動きは、二人にとってスローモーションでしかない。
あっという間に5人をなぎ倒してしまった。
魅録は、立ち上がれない男達の一人の胸倉を掴み、最初の質問を繰り返した。
「お前等を仕切ってるのは誰なんだ?」
魅録の眼光の凄まじさに、腰を抜かしたのかおろおろしている。
「俺達は何も知らねえ。ソイツはいつもどっかで見てて、何でも知ってる」
まだ、続きます。
今、Swayの続きは・・・と覗いたら、うp直後でした!!!
黒幕キタ━━(゚∀゚)━!?ワクワク
作者さん乙です!続き待ってます!!
>イラスト
あわてていってきました!!
白い帽子、って小説でもすごく印象的でした。
夜中にPC前でマジ泣きした真夏を思い出す…もう秋だなぁ。
まだ仲良くなる前を清四郎の一人称でうpさせてください。
野梨子が卑屈っぽくなっています。
野梨子スキーな方等はスルーお願いします。
(うん?朝から何でしょうね、あの人だかりは・・・)
いつものように隣に住む幼馴染と一緒に投稿している僕の前に人だかりが見えた。
中には同じ聖プレジデントの制服を着た生徒も見える。
「やれ〜!」
「そこだ!」
「きゃ〜頑張って〜!」
近付くにつれて怒号や喚声が聞こえてきた。
僕は同じ制服姿の野次馬の一人に声を掛けた。
「すみません。この人だかりは何なんですか?」
その生徒は驚いた様子で僕を振り返った。
そして隣の野梨子に気付くと困った顔をした。
どうやら言おうか言うまいか迷っているようだ。
>767
その時、人だかりの中央から聞いた事のない声と聞き覚えのある声が聞こえてきた。
「悠理?!お前、朝っぱらから何やってんだよ?!」
「魅録じゃん!話なんか後々!いいから、お前も手伝え!」
「あ〜?!ったく、お前って奴は!仕方ねぇなっ!!」
ワァ〜!!!と一際大きな喚声が上がった。
どうやら「ミロク」と呼ばれていた人物が加勢したようだ。
>768
「もしかして剣菱悠理さん、ですの?」
野梨子が眉根を寄せて、先程の生徒に尋ねた。
その生徒は何やら胸のつかえが取れたような様子で状況を説明してくれた。
「はい。剣菱さんが南中の男子生徒数人とケンカしているんです。」
「まぁ!また剣菱さんがケンカしているのですって!」
野梨子が憤然たる様子で僕を見上げた。
「そのようですね。やれやれ。困ったものです。」
「・・・清四郎、ちっとも困った顔なんてしていませんわよ。
むしろ何か楽しそうに見えますわ。」
(おっと、僕としたことが。)
つい口元にもらしていた笑みを、いつものポーカーフェイスで隠す。
続きます。
あと3レスほどの予定です。
ブラックな野梨子と清四郎 うPさせて頂きます。苦手な方はスルーして下さい。
2スレお借りします。
「野梨子、結婚しませんか?」
そう言ったのは隣に住む、幼馴染みの清四郎だ。
人生最大の決め事のひとつでであろう結婚の二文字を、
なんでもない事のように言ってのけた。
ある馬鹿みたいに晴れた秋の昼下がり。
「何故ですの?」
私は問う。すると清四郎は私からこんな答えが返ってくるとは
思わなかったのだろう。少し考えた。
「野梨子もそう、望んでいると思うからですよ。」
望む?そう。私は確かに清四郎との結婚を夢見ていた。
幼い頃から彼の後ろを歩き、彼の読む本を読み、彼が望むであろう女性像を演じ、
彼に負けないほどの教養を身につけ、私の世界は彼でいっぱいだった。
彼以外の男性などいらない、本気でそう思ったことも一度や二度じゃない。
私が断る事など有り得ないとでも言うように、指輪を、世界で一番硬度の高い
石が散りばめられた指輪を、はめようと私の左手を握る。
どこまで抜け目ない男だろう。サイズは勿論、デザインも、石のカットも
私のために誂えたかのように、その指輪は輝いている。
「野梨子?」
私の名前を呼ぶ声も、心配そうに覗き込むその顔も、ママゴトに無理やり
付き合わせたあの頃のようだ。
「びっくりしましたの。」
私はそう言って、清四郎の手を軽く振り解いた。
「突然すぎましたか?」
突然? いいえ。必然だろう。だって。
あなたは悠理に降られたのだから。悠理が婚約したのはつい三ヶ月前の事だ。
相手はどこぞの馬の骨とも知らぬ、成り上がり者。大企業を継ぐために選ばれた、
その名の通り、種馬だ。大企業を継ぐのに、清四郎では何故いけなかったのか。
ふたりのあいだになにがあったのか。そんな事、私は知らない。知っているのは
彼の山より高いプライドは粉々になり、信じていた女からは、裏切られた。
そのふたつだけ。
「野梨子、愛していますよ。」
嘘つき。
悠理に触れたその手で、その唇で、私に愛を囁くな。
私が欲しがった時にはくれなかったその言葉を、今になって言うな。
「私もですわ。」
私も、か。
嘘つき同士、どこまでママゴトを通せるだろう。
私のおなかには 3週間になる命がある。父親は清四郎じゃない。
終り
>嘘つき
文章の感じとか設定とか話の進み方とか
野梨子の感情の書き方とかすごい好きです。
続きとか他の作品とか読んでみたいなぁ・・・
>嘘つき
父親は誰だっ!?
気になる〜!
3週間、ってことは生理が来るかどうかもわからないうちに妊娠に気づいたのか・・・
>773
勝手に魅録、と想像してしまいましたが何か?
でも、おながい。 下 げ て く れ 〜 !!!
>774
よく知らないんだけど、普通「ううっ」とツワリになって
気づくんだよね、多分。
>774
仕込んでから3週間(妊娠の週数でいったら5週目ぐらい)なのかな?
・・・と勝手に思ってたよ。5週目なら判定にちゃんと出るし。
それとも先週の危険日に誰かに中だしされた(→想像妊娠)ってことかしら。
オゲフィンなレスでスマソ。
>775
>普通「ううっ」とツワリになって
それはドラマなどでの「(視聴者に)わかりやすくするための演出」です。
そういう状態になってから気付く人もいるけど、そうじゃない人(例えば生理の
遅れや微熱の継続などから妊娠に気付くなど)も沢山います。
ツワリがめちゃ軽でもどしたりしない人もいるしね。
775サンが男性ならいいけど、もし女性ならいつかは自分にも可能性のあること
なのだから、ツワリの有無だけを妊娠の判定にしないで、そのあたりのことを
ちゃんと知っておいてホスィ・・・。
>776さん
すみません。おっしゃるとおり、男でして・・・
リアルに説明してくださってるので、チト恥ずかしくなってしまった。
自分としてはツワリ→妊娠に気づく だったので。
ホント、すみません。リア小みたいなこといってましたね、漏れw
>769
「そんな事ありませんよ。それより申し訳ありませんが僕の鞄を持って先に学校へ行って貰えませんか?」
「ええ、それはかまいませんけど。でも何故ですの?まさか剣菱さんを助けるおつもりじゃありませんわよね?」
(おやおや、お気に召さないようですね。)
「助けるも何も、こんな騒ぎを治めないわけにもいかないでしょう。」
「なにも清四郎がして差し上げる必要などありませんわ。剣菱さんが勝手にケンカしているだけですもの。」
野梨子は見るからに不機嫌そうで言葉にも棘があった。
「勝手に、ですか。そうでもないと想いますよ。ほら、あそこ。あのウチの生徒をごらんなさい。」
僕は人だかりの輪の一番前にいるウチの生徒を示した。
その生徒は制服が汚れていて鞄を抱きかかえるようにして震えてなきながら立っていた。
「おそらく、あの生徒を庇ってケンカになったんだと思いますよ。」
「そ、それでもケンカは良くありませんわ。それに剣菱さんは日頃からいつもケンカをなさっていますもの。
きっとケンカがお好きなんですわ。ご趣味でいらっしゃるのよ。だから放っておいてあげればよろしいんですわ。」
(相変わらず辛辣ですね。)
僕は苦笑いを浮かべ溜め息をついた。
>778
「お、覚えとけ!」
「へへぇんだ!誰がお前らみたいな弱っちぃのなんか覚えとくかよ!
いいか!今度ウチの生徒に手ぇ出してみろ!こんなもんじゃ済ませないからな〜!」
人ごみを掻き分けながら逃げて行く南中男子生徒達の背中に向かってアイツが大声で叫んでいた。
僕が野梨子と押し問答している間にケンカは決着してしまったようだ。
野次馬達もそれそれに散って行き、アイツとピンク頭の他校の男子生徒が見えた。
(おそらくあれが加勢した{ミロク}だろう。)
その二人に向かって、さっきの泣いていたウチの生徒が頭を下げている。
どうやらお礼を言っているらしかった。
(やっぱり。理由もなくケンカする奴じゃないですからね、アイツは。)
またつい口元をほころばせている僕を野梨子が怪訝そうに見上げた。
「清四郎、私達も学校に行きませんと。」
「そうですね。行きましょうか。」
野梨子に促されるように歩き始めた僕だったが目はアイツを追っていた。
「じゃまたな、悠理!」
「サンキュ〜な〜!」
アイツは{ミロク}に満面の笑顔で両手を大きく振っていた。
>779
僕は学校へと歩きながら一人思った。
あの二人、とても仲が良さそうでしたね。一体どういう知り合いなんでしょうか。
・・・それにしても、またキッカケを掴み損ねましたか。
一体いつになったらアイツと友達になれるんでしょうかね。
あ!ほら、また!アイツが僕達に気付いて睨んできてますよ。
野梨子も野梨子ですけど、アイツもアイツです。
全くいつまで幼稚舎の入園式の事を引き摺ってるつもりなんでしょうかね。
僕はこんなにアイツと仲良くなりたいと思っているのに。
きっとアイツは僕のそんな気持ちになんて全然気付いてもいないんでしょうね。
だけど僕は諦めませんよ。
知らないでしょう?僕は諦めが悪い男なんです。
いつかきっと仲良くなってみせますからね・・・悠理。
これは僕達が同じクラスになる数ヶ月前のお話。
終わりです。
読んで頂いて有難うございました。
野梨子スキーな方、申し訳ありませんでした。
Swayをうpします。
>>764の続きになります。
「可憐、言う相手間違ってるよ。」
美童は苦笑しながら、少し離れたところで男の胸倉を掴んでいる魅録のことを仄めかす。
「アイツが、こんなところたまたま歩いてるなんで、まず、ありえないことだと思うけど」
「えっ?」
可憐には、美童が何を言いたいのかいまいちわからない。
だが、確かに、魅録に限らず悠理や美童にしても、普段歩いて登下校なんてしない。
「だから、そういうわけだよ、可憐」
美童は、こんなにも鈍感な可憐がいつになくかわいらしく見える。
人のことには敏感なのに、どうして自身が絡むとこうも晩生な部分があるのだろう。
可憐が悩んでいる間に、仕事を終えた魅録と悠理がこちらに近づいてくる。
「大丈夫か?怪我とかなかったか?」
「本当に、危ないところを助けていただき、ありがとうございました」
まずは、陸奥が4人全員に深々と頭を下げる。
「あ、ありがと。……特に何もなかったわ」
可憐は、その言葉も様子もかなりぎこちない。
「それじゃ、僕は陸奥さんをタクシー乗り場に送っていくからさ」
美童が陸奥を促して歩き始める。
「待て、美童。俺、これから行くとこあっから、こいつら頼む」
突然、何かを思い出した風を装って、魅録はその場を去ろうとした。
しかし、美童は聞こえなかったふりをして、振り返らないし立ち止まらない。
「あ、あたいもさ、ちょっとね」
悠理までもが、そそくさとその場を離れていく。
魅録は、可憐とふたり、その場に残されてしまった。
「アイツ等…。これじゃ、大元を叩きに行けねえじゃねえか…」
魅録は、誰にぶつけるでもなく呟いた。
何週間もの間まともに顔を合わせなかった女と急に二人っきりになって、どう振る舞って
いいのやらわからない。
「……大丈夫よ。子供じゃないんだし、一人で帰れるから……」
可憐は、何週間もの間まともに顔を合わせなかった男と急に二人っきりになって、妙な
居心地の悪さを覚えている。
この場に、これ以上一秒たりともいられないくらい、逃げ出したくなってきた。
魅録は、可憐のそんなソワソワした様子を感じ取る。
こんなに近くにいるのに、このチャンスを逃したらどうなるか?
「……そういうんじゃなくて、なあ…、可憐…」
上手く言葉が出てこない。
しどろもどろな自分にいらいらしてくる。
魅録のはっきりしない態度に、可憐は深呼吸で気分を落ち着けて、このもやもやした雰囲気に
決別しようとする。
「あたしは、大丈夫だから。今日は、ほんとにありがと」
可憐は、最初の一歩を踏み出した。
魅録は、咄嗟に、可憐の腕を掴んでしまう。
「…可憐、ちょっと、待って欲しい。…俺、何て言っていいのかわかんないけど……
とにかく、お前が無事でよかった……」
まだ、続きます。
>Sway
2人の会話が!w
やっぱり魅録ですかね…?
Sway、またイイとこですね・・・
可憐も魅録もぎこちない感じが若々しくて新鮮で(・∀・)イイ!!
思いがけず上手くいかない拙い恋愛って、
なんか却って有閑らしくて、会話だけでもドラマ!!!
大人の可憐も好きですが、こんな可愛い可憐も大好きです
静かなうちに、Swayをうpします。
>>783の続きになります。
野梨子を無事送り届けた清四郎は、家には入らず、そのまま来た道を戻り始めていた。
魅録の腕を疑うわけではない。
相手が複数でも、余程のことがなければ一人で十分片付けられることはわかっている。
だから、自分を突き動かす理由は、仲間を助ける為ではない。
可憐に心惹かれるようになって自分の中に芽生えた、魅録に対する、嫉妬。
もし、魅録がつまらない男なら、恐らくこんな思いをすることはなかっただろう。
軽蔑して無視すれば、エベレストよりも高いと人にからかわれるプライドは傷つかず、
そしてそんなつまらない男にひっかかった可憐を憐れむだけで済む。
だが、清四郎にとって魅録という男は、滅多に出会うことのできない、自分と同等か
それ以上の人間である。
それだけに、清四郎は、複雑に絡み合った、割り切れない感情に悩まされていた。
悶々としながらも、清四郎の足は確実に、可憐が利用する、学校の最寄駅に向かっている。
普通の速度なんかでは、到底自分の気持ちが抑えられない。
結果、家からここまで恐ろしく短時間で辿り着いてしまった。
しかし、清四郎の目の前に広がる光景は、その努力が全く報われないことを残酷にも示している。
駅のはずれで二人の世界に入り込んでいる様に見える、魅録と可憐の姿がそこにあった。
ようやく陸奥をタクシーに乗せて、美童は久しぶりに電車でも乗って帰ろうと駅に向かって
歩いていた。
もしかしたら、二人がまだ駅付近にいるかもしれないので、わざわざ、遠回りをして
邪魔しないようにする。
あれっ?
あともう少しで駅というところで、清四郎らしき男が前方に見えた。
男は、人の流れに反して、その場に立ち竦んだままである。
美童は、恐る恐るその男が見ているであろう方向を見てみた。
魅録と可憐だ。
しかも、そこには、明らかに他人が入り込めないオーラが漂っている。
美童は、清四郎の為にもあの二人の為にも、清四郎をその場から離すことが一番であると
判断する。
さりげなく近づいていって、清四郎の右肩を軽く叩いた。
「美童……」
振り返って唖然とする清四郎を尻目に、美童はたまたまここにいたかのように振る舞う。
「清四郎、僕デートまで結構時間あるんだよね。悠理がさ、なんかうまいもん食べに
行こうなんて言うから期待したのに、急に用事があるからってどっか行っちゃってさ。
ちょっと何か食べに行かない?」
美童の口調は普通だが、そのトーンには有無を言わせないものがある。
「…ええ……まあ…」
無様な様子を見られたという思いが、清四郎をしどろもどろにする。
「なら、この先に僕が知ってるところあるんだけど、そこでいい?」
清四郎の動揺を、わかっていながら完全に無視する。
美童の心憎いばかりの配慮に、落ち着きを取り戻して言った。
「……わかりました、付き合いますよ」
まだ、続きます。
>Sway
美童カコ(・∀・)イイ!!
清四郎と野梨子メインの話です。
3スレお借りして、うpさせていただきます。
「牡蠣が食べたい・・・」
差し入れの弁当5つにお菓子2袋、カップラーメン3つ(焼きそば含む)を平らげたにもかかわらず、悠理の胃袋はあいかわらず底無し沼の如き胃袋だ。
「その辺のスーパーに売ってるじゃない。無かったらどっかの庭から盗ってくるとかさぁ」
とても宝石商の1人娘のセリフとは思えない。
「その柿じゃねーよ、鍋とかに入れる牡蠣。あ〜、広島行ってこよっかなぁ・・・」
「そー言えば、昨日の『でぶやん』広島だったよな」
スポコン系の車の雑誌から目を離さないまま、魅録が会話に入る。
「もみじ饅頭うまそーだった。あれなら100個でも食える!」
牡蠣を食べる為だけに広島に行こうという発想が普通でなければ、饅頭100個を食べれると断言するのも普通ではない。
だが悲しいかな、こういう時の悠理の発言に嘘偽りは無い。
「『でぶやん』って何ですの?」
もちろん野梨子は知らない。おそらく清四郎も知らないだろう。
「ホンジャイコウカっていう2人組みのコンビの片割れの石垣とダンサーのパヤパヤ鈴木の2人が全国のおいしいモノ食べ歩く番組だよ。2人とも太ってるから『でぶやん』ってゆーの」
手をひらひらさせながらやる気の無さそうな声で美童が言った。
「バカにすんなよな、あたいはあの2人とおいしいモノ食べ歩いて『まいうー』って言うのが夢なんだぞ!」
大きいんだか小さいんだか判断しかねる夢だ。
「その『まいうー』っていうのは何なんですか?」
今度は清四郎が突っ込む。やはり知らなかったらしい。
「その2人がおいしいもの食べた後に言うお約束のセリフよ」
可憐が本日の飲み物、エスプレッソを配りながら言った。
「『ごちそうさま』と同じニュアンスの言い回しですのね」
やはり野梨子はわかっていなかった。
「でも剣菱のおじさんとおばさんに頼めば番組出演くらい出来るんじゃねーの?
そうじゃなくても2人のスケジュール1日空けさせて一緒に食べ歩くとかさあ」
いかにもありそうな魅録の提案を悠理は否定した。
「ん〜、それもちょっとだけ思ったけどさぁ、何か金にモノ言わせてるみたいで石垣さんとパヤパヤさんに失礼な気がするじゃん」
『さん』づけするところを見ると、もはやその思いは尊敬の域に達しているらしい。
それにしても数々の難事件を金で解決しようとした悠理の言葉とはとても思えない。
「人間国宝の雲海和尚が『じっちゃん』で食べ歩きタレントが『さん』づけですか・・・」
『世も末ですねぇ』と言いながら清四郎は新聞の株式欄に目を戻す。
「あ〜、話してるうちにど〜しても食べたくなった!やっぱ行こうかなぁ、広島・・・」
「牡蠣だって東京で買えるじゃありませんの、何も広島まで行かなくても・・・」
野梨子には牡蠣を食べる為だけに遥か700km彼方まで行こうとする悠理の心境など到底理解出来ない。
「え〜、だってやっぱ本場がいいじゃん!うまさが違うよ」
「いいじゃない、行って来れば」
「けしかけんなよ、可憐」
魅録が止めに入る。行くとなれば付き合わされるのを計算した上での発言だろう。
「あら、質にこだわるのは大事な事よ。それに本当に欲しいんだったらどんな事してでも手に入れなきゃ、例え少しくらい自分を傷つけてでも―――――」
可憐は左手を胸に当てて目を閉じて、違う世界に行ってしまっている―――――。
「可憐がこだわる質は食べ物じゃございませんでしょ?」
カップをお嬢様らしい手つきで扱いながら、エスプレッソを頂く。これも優雅な味わいだが、野梨子的にはやはり熱い玉露をリクエストしたい所だ。
「怖いよねぇ、女って。自分の欲しい物を手に入れる為だったら手段を選ばないんだもん」
と美童が言う。続けて言った『僕も気をつけなきゃ』というセリフは誰も聞いていない。
「ポスター貼り終わりました!」
鈴を転がしたような声が部室に響いた―――――。
「お疲れ様、小夜子ちゃん、助かったよ」
先程まで『嫌だ、お肌が荒れちゃったわ』というようなポーズを撮っていた美童が体勢を立て直してマッハ(死語)の速度で近づく。
「あと、何かする事ありませんか?」
「少し休んだら?綺麗な手に傷がつくよ」
と言いながらどさくさに紛れて小夜子の手を握っている。
小夜子は特に振り払おうともせず
「でも実行委員ですから」と微笑んでいる。
「ちょうどコーヒー入れたのよ、ちょっとくらい休んでもバチは当たんないわよ」
と言い終らないうちに可憐は早くも小夜子の分のコーヒーを入れている。
久遠寺小夜子―――――。
プレジデントの2年生で成績は学年トップ、運動神経も抜群で、容姿端麗という表面的な部分だけ言えば2年生の女版清四郎といった所だろう。
色白の肌に華奢な体―――――少し低めの背に腰の辺りまである少し茶色掛ったストレートのサラサラな髪をサイドだけ片方づつまとめている。
大きな瞳、長い睫毛に小さな唇―――――。
野梨子が日本人形だとしたら小夜子はフランス人形だろう。
その小夜子が部室に出入りしているのは、10月の終わりに行われる文化祭の実行委員だからだ。実行委員長の小夜子は生徒会の指示を受ける為、部室によく顔を出す。
続きます
>檻
おっ。新作でつか。コメディっぽい始まりに対して、「檻」という
コワモテなタイトル、かつ謎の美少女……
ひょっとしてサスペンス?スリラー?いやいや、オカルト!?
続き激しくお待ちしてます。
右腕に、痛みが走る。
魅録の、実際の握力の強さと掴まれた部分から伝わってくる想いの強さが、可憐を動けなくする。
『痛い』という声すら出ない。
しかし、顔が僅かに歪んでしまったらしい。
魅録は、急いで手を離す。
「……ごめん」
下を向いてうなだれる魅録に、可憐は慌てて言った。
「魅録が謝ることなんて、ないの」
「だって、俺が……」
必死に、何かを伝えようとしている魅録の言葉を遮ってしまう。
「あたしが、魅録の友達に、失礼なことしちゃったの」
「違う、可憐……」
「あの場は、あたしが、我慢しなきゃいけなかったの」
可憐の口調は、聞いている魅録が悲しくなるくらい淡々としている。
でも、ここで伝えなければ、本当に終わってしまう。
深呼吸する。
後で後悔しないように、勇気を振り絞る。
「可憐、俺に、人を見る目がなかったんだ」
「魅録……」
「もう一度、初めから、俺と、付き合って欲しい」
可憐は、魅録の言葉に何も返すことができなかった。
恐ろしく真っ直ぐに気持ちをぶつけてくる魅録に比べて、ふんぎりのつかない自分が
もどかしくて恥ずかしい。
逃げるように駅の構内に向かって歩き始める。
「可憐、俺心配だからさ」
魅録はそれだけ言って、可憐の後ろをボディガードの様に固める。
さっきのことがあった後だけにその存在は可憐に安心感を与えたが、可憐の中の葛藤は
静まるどころか高まっていくばかり。
魅録とろくに会話を交わすことなく、自宅のあるビルに辿り着いてしまった。
自動ドアの前に立って、硝子が両サイドに開くのを待つ。
「ありがと」
振り返らないまま、小声で言うのが精一杯だった。
可憐がビルの中に消えていくのを見送った後、制服を着て外にいるのを忘れ、胸ポケットから
マルボロを一本取り出して火をつける。
いつになく緊張していたのか、その一本が身体中に染み渡ると、筋肉という筋肉が
ほぐれてくるのを感じた。
「さては、帰るか」
一人呟いて、バイクを置いたままにしてある場所へと、今来た道を戻り始めた。
久しぶりに『歩く』ことが新鮮で、子供のように周りの風景に気を取られている。
それは確かに、バイクや車から見るのとは全く違って見えた。
これまで霞んでくぐもっていた魅録の心は、ようやく少し晴れてきた。
可憐の心の中に清四郎がいるとわかっていても、可憐を愛している。
まだ、続きます。
>Sway
三者三様の恋が胸にしみますね。
可憐は一体どちらを選ぶんでしょうか。気になります。
「悠理と清四郎」の続き、短編をうpさせていただきます。
前回のうp分は
>>652です。
それではよろしくお願いします。
つつーっと音を立て、細くしなやかな指が黒板の桟をすべった。
猫のような目を細めて、指先を注視する。
2-Aの掃除当番達はごくりと唾を飲み込み、審判の時を待った。
わずかに桃色がかった指の腹はきれいなままだ。
悠理はニヤリと笑った。
「よしっ。2-Aは合格! 帰ってよし!」
歓声があがった。次々とカバンやテニスラケット等を手に飛び出していく。
あっという間に教室から生徒の姿が消えた……と、思いきや、
いつまでも机の中やカバンをがさごそとかき回している男子生徒がいる。
見たところ、手をカバンに突っ込んだり、机の中に入れたりしているが
どうもそれは、ただのカモフラージュのようである。
「帰んないの」
三年の先輩、しかも校内では超がつく有名人、剣菱悠理に声をかけられた
少年の肩が、見てわかる程、びくっと揺れた。
少しニキビの出た頬が火を噴いたように赤くなるのを見て、悪い事したかなと
思い悠理は退散することにした。教室を出ようとした時、
「すみません!剣菱さん!」
振り返ると先程の二年生が赤い顔のまま、駆け寄ってきた。
彼が手にしたラブレターらしきものを見て、悠理は納得した。
「いいよ。誰に渡すの? 野梨子? 可憐?」
「いや……、あの、あなたに……」
「……お?」
「悠理さんにっす」
悠理はラブレターを手にして黙っていたが、やがてツイと少年に突き返す。
「ありがと。でも、あたし字読むの苦手だから。今度から食い物にして」
西日の当たる正面階段を昇る。すれ違う女子生徒の会釈に手で挨拶しながら
三年の教室を目指す。週番なんて面倒くせ。3-Cの黒板の前に女子が集まって
騒いでいる。ヒョイと後ろからのぞくと、何やら落書きを描いてふざけて
いるのだった。白いチョークで描かれた三角の頂点から真直ぐ下に一本線が
引かれ、その右に
菊正宗清四郎
とある。その時、女生徒達が悠理の存在に気づき、キャッと叫ぶと
「すみません」と謝りながら三々五々逃げていった。
静かな教室に悠理だけが一人取り残された。正面から黒板の傘を見据える。
傘の下、寄り添うようにして書かれた二人の名前――菊正宗清四郎と、
白鹿野梨子。
黒板消しを片手に消去しようとしたが、思い直した。
指をそっと、傘の左側に書かれた名前の上に置く。
「白」の字を消してみた。
菊正宗清四郎は清掃の終わった教室を見回っていて、夕陽の中に佇む彼女を
見つけた。黒板に何か書いている。脅かしてやろうと背後に回り込み
大声で怒鳴り付けた。
「こらっ、何してるんだっっ!」
――振向いた悠理の顔を清四郎はその後、たびたび思い出すことになった。
ぎょっとして振り返った悠理は清四郎の顔を見るや否や、紙のように白くなった。
反射的に書いていたものを背中で覆い隠す。清四郎は悠理の横に立って覗き込む。
「何隠してるんですか」
「な、なんでもない!ない!」
「なんでもないなら見せてくださいよ」
「やだっ」
「……気になりますね、何ですか?」
「やっ、やーーだーーーーっ」
抵抗する悠理を力づくで押さえ込んだ清四郎は、彼女が必死で隠すものの一部を
確認した。
「なんですか、これ」
清四郎の腕の下で悠理は怒鳴る。
「見りゃ、わかるだろ!」
「はあ、相合い傘ですね。で、なぜ隠すんです? 悠理が書いたんですか?」
「違う!」
「でしょうね」
必死で隠す悠理の体の下からは「……四郎」の字が見える。
清四郎は悠理を押さえ付けている手をパッと離した。
「まだ見回りが残っているので行きますね」
「あ、そ、そう?」
ほっと力を抜いた悠理の隙をぬって、清四郎はひょいっと背後に回りこんだ。
菊正宗清四郎
―――――――
けんび
耳をつんざくような雄叫びがあがった。
剣菱悠理は訳のわからない叫びをあげながら、黒板消しを両手にがっし、がっしと
相合い傘を瞬く間に消去した。
「……ゆ、」
「まだ見回り残ってるからお先っ!」
気がつくともう彼女の姿は見えなかった。清四郎は黒板を振り返る。
相合い傘はすっかり消えていたが、わずかに名前の跡だけが残っていた。
菊正宗清四郎。けんび。
「けんび……」
清四郎は教室のドアを振り返り、もうここにはいない少女の姿を追い求める。
「けんび……の次は? 悠理……」
清四郎は誰に言うともなく、そう呟いた。
<おわり>
これで終わりです。ありがとうございました。
>落書き編
悠理がかわいい〜!
ひらがなってとこがまた彼女らしい。
>落書き編
悠理かわええのお。
微笑ましい…
>落書き編
悠理と清四郎
キタ━━━ヽ(∀゜ )人(゜∀゜)人( ゜∀)ノ━━━ !!!
かーわいー!!
雄叫びに笑いつつ激萌え。
またまた激しく続編キボンヌでございます!
>Swey
可憐頑張って!
清四郎しっかりしろ!(w
魅禄ゴメン…
>落書き編
めっちゃええよぉ!!
続きお願いします!!
>落書き編
「白」を消したところに「馬」と書くのかと思っちゃったよ。
そっか、悠理だもんな・・・
>811
それも悠理っぽくて面白いかもw <「馬」と書く
>>726 の続きです。
展開もオチもぼんやりとしか考えてないんですが、
有閑ぽく元気よくいきたいと思います。今日は5レスいただきます。
2限が終了のチャイムと同時に、悠理は学食で空腹を満たすため
教室を飛び出す。その扉から、入れ替わるように可憐が(悠理とは対称的に)
そっと顔を出した。
「魅録」
呼び掛けられて、魅録は読んでいた雑誌から目線を移動させた。
「どうした?珍しいな」
可憐はいつになく真剣な表情で魅録の机の傍に来て、そこにしゃがむ。
「ちょっと、相談」
「俺に?」
「そう。他の連中には、今んとこ内緒にしたいの」
そういえば、この数日、可憐の様子がおかしかった気がする。
疲れぎみの野梨子のことにかまけて、気を遣ってやれなかったが
可憐のことだ、また美しき恋の悩みでもあるのかと勝手に思っていたのだが。
魅録に相談、とは。本当に珍しい。恋愛の相談には乗れないぞ。
可憐は表情を崩さないまま、魅録を見つめ、息を吸って、一拍おいて言った。
「あたし見たの。野梨子」
「は?」
「ミニスカートはいて、肩出して髪上げて…。野梨子じゃないみたいだった」
「…じゃあお前、野梨子じゃないんじゃないのか」
魅録のちょっと冗談めかした返答にも、可憐の表情は動かない。
「あたしが野梨子を見間違うと思う?」
「嘘だろ?」
「だからあたしが、そんなことで嘘つくと思う?」
三日前の晩のことだった。
正確には二日前の未明、六本木のクラブからほろ酔いで出てきた可憐は、
そこで、ふだんならその場所に全くそぐわないはずの人物を見た。
酔いがいっぺんに醒めた。
このところ学園を席巻している噂、それが目の前に現実として、あった。
白いノースリーブのニットに、グレーのタイトなミニスカート。
華奢でヒールの高い白いエナメルのミュールを履き、
髪をルーズに纏めたうなじは、美しかった。
そしてその女は、中年というよりもう初老の男の腕に腕をからめて、
ホテル街へと繋がる路地に、姿を消した。
可憐は頭の中が白くなって、5秒ほど動くことが出来なかった。
アルコールの「あ」の字まですっかり消えてしまってから、
我に帰ってその角を覗き込んだときには、野梨子と男の後ろ姿は
もうそこにはなかった。
「見間違いだったらそのほうがいいの。でも、野梨子にしか見えなかった。
今夜また来るとは限らないけど、どうしても確かめたいの。
でも昨日も一昨日もひとりじゃ行けなくて。ねえ、お願い。
付き合ってくれない?」
「いいけどさ。お前も過剰に反応してるだけだと思うぜ。
まあ、それで安心すんなら付き合うけど」
魅録は可憐の『お願い』を受けた。
…もっとも、可憐の頼みを断れる男など基本的にはいないのだが。
同じ頃、清四郎は可憐と同じく、真剣で苦い顔をしていた。
原因は、彼の隣のクラスにあった。
借りていた古語辞典を返しに行くと、貸し主は数人の男子生徒に囲まれ、
入り口からその顔を拝むことは出来なかった。
ここのところ、そんなことが多くなっている。
まさか本当に野梨子が売春までしていると信じている者など
皆無と言ってもよかったが、それでも例の噂は、
『お固い』野梨子のイメージを多少軟派に傾けるには充分だった。
そして、『清四郎付きでない野梨子』が存在するかもしれないという期待は、
野梨子に憧れる生徒の一部(といってもかなりの人数)を命知
らずにしてしまった。
いいところのお坊っちゃんでも、やはり高校男子、単純なものだ。
かくして野梨子は、これまでにないほど激しい告白ラッシュおよび
デートの誘いその他の玉砕覚悟のアタックを受けることになった。
この休み時間も。
同じく高校男子の清四郎は、複雑だ。
こんな場面を見る度、同じような思考を繰り返してしまう。
以下、何度も繰り返した清四郎の自問自答。
野梨子が誰に惚れられようと自分には関係ないはずだ。
野梨子がいいと思うなら、その男と付き合うのもいい。
いや。本当にそうか?
あの免疫のない野梨子が、変な男に引っ掛からないといえるか?
…いい男だったらいいのか…?
ーーそもそもなんなんだあの噂は。無責任で、失礼にもほどがある。
そんなことあるわけがないじゃないか。
僕がどれだけ野梨子を見てるか…、…ずっと見張ってるわけじゃないな。
僕は野梨子のことを、どれだけ知ってる?
全部知ってる。全部だ。全部。全部、…のはず。
ああ、ちょっと待て。混乱してくる。何が不満だ。整理してみよう。
・野梨子が男漁りなんてしているはずがない。
・ましてや売春なんてしているわけがない。
・野梨子が雨のようなあの愛の告白の中からどれかを拾うとは思えない。
・野梨子がー
「清四郎?」
呼び掛けの声は、教室の中からじゃなく、肩越しに聞こえた。
何というんだか知らないが(聞いたかもしれないが忘れた)、
甘い、あまりにもそいつにぴったりな匂いの香水が清四郎を我に返らせた。
美童は手に持ったノートで清四郎の肩を叩き、にやっと笑う。
天使のようだと賞される笑顔は、小悪魔の声を出した。
「複雑だねえ、お兄ちゃんは」
返答の前に美童はさっさと教室に入っていき、群がる男たちを簡単に散らして
ノートをその借り主に渡した。野梨子に何か言う。
野梨子は笑う。
美童が清四郎を呼ぼうと振り返る2秒前、
清四郎は辞典をそこにいた生徒に預け、その場を立ち去っていた。
清四郎がいたその場所が、必要以上に暗く見えた。
懲りずに続きます。
ごめんなさい、タイトル文字化け…。
>白鹿野梨子の貞操を狙え!
うわ、ほぼリアルタイムで読めてうれしー♪♪
うーん、野梨子の正体(?)を初めに見たのは可憐かあ。
野梨子の貞操は本当に失われてしまったのだろうか…。
そんなこと、あっては……。
>白鹿野梨子の貞操を狙え!
おー、続き楽しみにしてたので嬉しいです。
男とホテル街に消えていったのは本当に野梨子なのかな。
今後の展開が気になる。
>白鹿野梨子の貞操を狙え!
美童がいい味出してますね。
>群がる男たちを簡単に散らして
に笑いました。不器用な清四郎との対比がいいです。
>Sway
頑張れ清四郎!漬け込み時だ!!
>落書き編
悠理カワイイ!!!!
>白鹿野梨子の貞操を狙え!
白鹿野梨子の貞操を奪うのは有閑男性陣の
うちの誰かであってほしいよぅ。
>白鹿野梨子の貞操を狙え!
悶々とする清四郎がなんかイイっすね。w
有閑ぽく元気よく、とのことなんで、今後も楽しみ。
かなり前から止まっておりますリレー
ホロ苦い青春編 魅×野の続きです。
今回の目標は鬼門・金沢、脱出です。
そうしたらまた復活するかなと思いまして。
続きをお願いします。
>>
http://freehost.kakiko.com/loveyuukan/long/l-06-1-1.html 「本当にありがとう。魅録。裕也さんと会えてよかったですわ。」
優しく微笑みながら言う野梨子に、魅録は返す言葉も見つからない。
さらに野梨子は裕也の彼女に歩み寄り「初めまして。わたくしは裕也
さんが東京にいたときの旧友ですの。素敵な彼女さんができてうれしく
思いますわ。」とまで言ったのだ。
(心の中では傷ついているだろうに。)
魅録は野梨子の優しさ、健気さに感嘆せざるを得なかった。
別れ際、裕也は
「離れていても永遠に俺にとって大切な人だ。側にいる
お前はしっかり彼女を守ってくれよな。」と魅録に小声で伝えた。
「ああ、任せておけ。」魅録は答える声にも力がこもるのを感じた。
(とはいえ、野梨子を守るのはアイツの役割なんだが・・・)と
思いふと寂しさを覚える。そして疑問も生ずる。なぜ寂しいのか?
野梨子を傷つけてしまった後悔と、新しく生じた掴み所のない感情は
帰路の魅録を無口にさせた。自然と車内の雰囲気は重くなる。
野梨子は不安を感じた。
(魅録は何か怒っているのかしら。私が今は裕也さんに恋愛感情が
ないことに気づいたのかしら。恋人がいたのに平然としていたから。)
裕也をダシのように使ったという負い目がある野梨子は
黙り込んで考え事をしている魅録に怯えた。
(幸せそうな裕也さんと会えたことはよかったわ・・・。でも
魅録と一緒の時間を過ごしたいからといって、嘘をついて
しまったことは事実。なぜ魅録をだますようなことをして
しまったのかしら。)
思考回路の迷走につれ、気分が悪くなってくるのを感じる。
実際、車内だというのに酷く寒気がし、眩暈がする。
金沢を出て数時間たつが、まだ東京は遠い。耐えられない・・・。
ついに、両手で顔を覆って、前に上半身が崩れ落ちた。
「野梨子!」
魅録は急いで車を止め、野梨子を見る。
力の入らない顔を上げさせ、額に手を置くと熱い。
「すげえ熱じゃないか。大丈夫か?」
野梨子はつらそうに目を閉じてぐったりしている。
運転と自分の気持ちで手一杯でしばらく助手席の人を
気にかけていなかったことを恥じた。そういえば、夕刻の
冷え込む兼六園に野梨子は薄着で長時間いたことが思い出された。
金沢脱出しましたので続きよろしくおねがいします。
>823
禿同
フェミニストの美童が怒鳴る、とかそんなにひどい状況なのか〜とかオモタ
ついでに野梨子が売春までとはさすがに信じない〜ってやつ
野梨子の人徳?だなと。
だって「美童がホスト」ならきっと皆ヤパリってなる藁
>ホロ苦い青春編
待ってました!!
私も1度続きを書こうとトライしてみたんですが、金沢に泣きました…。
見事脱出バンザーイ!!
>ホロ苦い青春編
おおっ、念願の?金沢脱出!
野梨子の具合が悪くなったということは、
道草ありですね・・・ムフフw
>ホロ苦い青春編
道草=宿泊だと尚嬉しい
>ホロ苦
ワーイ!!作者さん、ありがd♪
熱でくたった野梨子がカワイイ…
新しくうpします。
カップリングは清×悠で、ストーリーが不倫もので、話が全般的に暗いです。
苦手な方は、さらっとスルーお願いします。
キスマークひとつ残らない情事に、虚しさを覚えるのは間違いなのだろうか?
あたいは、清四郎との情事の後、決して外泊することなく家に戻る。
眠りにつく前に浴びるシャワーの時、つい、身体をじっくり見てしまう。
前は、魅録にバレるのを恐れてのことだったが、今は違う。
明らかに、清四郎にのめりこんでしまった。
跡形のないことが、愛されていないというネガティブな感情を呼び起こす。
男が、愛のないセックスができるのは、今更問題にすらならない、当たり前の事実。
でも、あたいは、記憶の中にある、身体のそこここに口付けられ、触れられたことを信じたい。
そこから、清四郎が自分に想いを伝えていると信じたい。
ガチャ、ガチャガチャ。
ねぼけなまこの耳に玄関を開ける音が聞こえる。
夜勤を終えて帰ってきた魅録だろう。
両親が不在がちな家で育った魅録は、本当に手のかからない男だ。
あたいを起こすことなくシャワーを浴びて服を着替え、自分で朝ごはん、もちろんあたいの
分まで作ってくれる。
それから、洗濯物が溜まっていれば洗濯を、部屋が汚すぎると思えば掃除を始める。
一応、週に2〜3度、うちの実家のメイドさん達がこっちにやってきてある程度の家事は
するのだが、魅録は意外ときれい好きだ。
しかし、あたいに家事のひとつくらいしろなどと言ったことは一度もない。
魅録は、本当に何も言わない。
「お帰り、魅録」
あたいは、いかにも今起きたという感じを装ってリビングに入った。
「腹減ってるだろ?作っといたからさ」
魅録自身は食べ終えているらしく、今は雑誌を読みつつ煙草を咥えている。
「ありがと」
魅録のご飯は、いつもおいしい。
結婚したての頃は、魅録に一度くらいおいしいものを作ってあげたくて料理を少し習ったりも
したが、長続きはしなかった。
魅録に作ってあげるところまでいかなかったのだ。
そんな訳で、料理に関しては、週4〜5回来てくれる家政婦さんが基本的に全て用意してくれる。
あたいがするのは、後片付けくらい。
それも、自分の分だけ。
魅録は決して、自分の分を流しに置きっぱなしにはしない。
「今日は、何か予定あるのか?」
夜勤明けの日は一日非番になる。
「う〜ん、北中ン時の後輩がツーリング行こうって」
「行ってこいよ。天気もいいし」
「ああ、連絡入ってからな」
魅録は今でも男友達を大事にする。
折角の休みも、その付き合いで出て行って、まともに一緒に時間を過ごすことがないことも
珍しくない。
共通の友人が絡んでいれば一緒に行くこともあるが、そうでなければ別々に過ごす。
あたいは、もともと、四六時中べたべたしたい方ではない。
今のめりこんでいる男とは正反対である。
あたいがあの男に惹かれるのは、本当はもっと束縛されたいのかもしれない。
「悠理、お前は何かあんのか?」
魅録の表情から、あたいをほったらかしにすることに少し気兼ねしていることがよくわかる。
「何もないよ」
魅録を困らせないように、ごく普通に答える。
しかし、心の中では違う。
情事の余韻に浸るべく、何も予定を入れないだけ。
もっと本音を言えば、情事の後は睡眠が足りない。
昨日の事をぼんやり考えながら、ひとりソファで転寝する。
そのまま2〜3時間、夢の中をさ迷っている。
【つづく】
済みません、間違えました。
>839は(4)です。
>いつかきっと
清×悠話なのに、魅録みたいなダンナがほしい・・・と思ってしまいますた。
正直、悠理がすごい羨ましい(w
こんなダンナなかなかいないぞ〜。
>828さんの続きです。
(まいったな……。どうすっか)
魅録は暫し考え込んだ。病院に連れて行くにも土地勘のないこの場所ではどこにあるのか分からない。
ふと、この近くに住む友人の顔が脳裏に浮かんだ。魅録は携帯のボタンを押した。
30分後。魅録は友人――白波のアパートの1室に居た。薬を飲んだ野梨子は赤い顔のまま眠っている。
「大丈夫か?彼女」
「ああ。……ごめんな。急に押しかけちまって」
「何言ってんだよ。みずくせぇな」
白波は照れたように頭をぽりぽりと掻くと「これ、着替えだから」と大きめのTシャツを魅録に押し付けた。
「サンキュ」
「じゃ、俺、もう仕事に行くな。なんかあったら携帯だったら通じるから」
警備員の制服を着込み白波は出て行く。六畳一間の小さな部屋は急に静まり返った。
それから数時間は経ったであろうか。いつのまにか魅録はうとうとしていたらしい。かすかな声に目が覚めた。
「魅録……」
布団越しに野梨子が魅録を見ていた。額に玉のような汗が浮かんでいるが、先ほどよりは熱が下がったように思える。
「ん、どうした?」
「ごめんなさい。私、迷惑かけてしまって……」
「気にすんなって」
魅録はタオルで野梨子の額の汗をぬぐってやる。
「すげぇ汗。着替えた方がいいみたいだけど、起きれるか?野梨子」
「ええ……たぶん」
ふらふらと野梨子は体を起こそうとした。が、すぐにぐらりと体が揺れ、慌てて伸ばした
魅録の腕の中に倒れこむ。そのままぐったりと力が抜けてしまったように動けないようであった。
魅録は一瞬迷った。しかし、服の上から、やはり熱い体温が伝わり、その背中は汗で湿っている。
このままにしておけば、また悪化するのは避けられないだろう。
「野梨子。ちょっと我慢しろよ」
わざとぶっきらぼうに言い放つと、スカートから野梨子のブラウスを引っ張り出した。
野梨子が息を飲むのが分かったが、そのまま背中にタオルを差し入れ、汗に濡れた体を拭く。
やむを得ないこととはいえ、魅録の心臓は早鐘を打った。
指差にかすかに触れる野梨子の肌はすべらかで、支えている小さな肩はほんの少しでも
力を込めれば壊れてしまいそうだった。
どなたか続きお願いします。
>いつかきっと
新連載、乙です。
いい意味で生々しくて、面白いです。
魅録の性格とか、「そんな感じ!」と思いながら読みました。
悠理と魅録が夫婦で、そこから不倫というのがありそで、なさそで
いいトコに目をつけたぞ、作者さん!と思いました。
続き楽しみにしてます。
>いつかきっと
こういう清×悠も好き好き好き〜。
ということは清四郎は束縛系なのかしら。ワクワク。
ドキドキしながら続き楽しみに待ってます!
>841氏にハゲDo!
>ホロ苦い青春編
つ…続きが気になるYO!
ドキドキ。
>ホロ苦い青春編
>わざとぶっきらぼうに言い放つ
>野梨子が息を飲む
魅×野らしくって、頭の中は妄想止まらず。
この週末は、本当においしかった……
>ホロ苦い
久しぶりにリレーが動いたと思ったら、いきなりオイシイ展開だっ。
ああっ、魅録がタオルを背中にぃっっ!
うう、よだれが出そうでつ……はぁはぁ、誰か続きを!早く続きを!
初めまして。
先月、友人に勧められて有閑倶楽部にどっぷりはまりました。
そして、ここも先月見つけました。
1ヶ月ROMっておりましたが、そろそろ書き込みたいなと思い、書き込みさせて頂きます。
愚作と解っておりますが、清×悠か清×野のどちらかをアップさせて頂いて宜しいでしょうか…?
本当にレベルの高い作品ばかりで緊張しながらキーボードを打っております。
では、失礼します。
>>849 いいことを教えます。まずこのスレのお約束
>>2-10の辺りを
『熟読』しましょう。さらに妄想同好会から過去スレのログを探し、
よく読むこと。せめて、作品うpはそれからにしましょう。
でないと、あなたは猛獣の檻に飛び込む羊のようなものです。
こんな書き方してコワイですか?コワイんですよ〜、実はこのスレは。
では、そろそろウザイの声が飛びそうなのでシツレイ。
>ホロ苦い青春編
。・゚・(ノД`)・゚。ウワァァァン!! 続きが待ちきれないよぅ〜〜!!
久しぶりに再開!で、喜んで読んだら書きたくなっちゃいました。
>>842の続きです。
魅録の手がタオル越しに背中を触る。
さっきより調子は良くなったはずなのに、また熱が上がっていく気がする。
だめ。
触れられたいと思っていた手なのに、恥ずかしさでぼうっとしてくる。
ううん、熱のせい。でなければ、薬のせいですわ。
私は今、魅録の腕の中にいて、魅録が私の体を触る。背中で動く。
「…ふうっ…」
思わず目を閉じて、息が漏れた。
小さな吐息だったが、緊張で意識が研ぎすまされている魅録にとっては稲妻ほどの音量に聞こえた。
なるべく野梨子を見ないようにしながら拭いていたのだが、思わずその顔に顔を向けてしまった。
熱で上気した頬、声。魅録の心臓も、一回、すごい音で鳴った。
やばい。何考えてんだ。野梨子に負けないほど顔が赤くなってくる。
慌てて目をそらし、今度は手を前に回して腹と胸元を拭く。
野梨子の心臓も、魅録と同じ理由で、同じように早鐘を打っていたのだが、
指先に触れる鼓動が他人ものだと意識できる心の余裕は、魅録にはなかった。
何も考えない、何も考えない、何も考えない、何も考えない…
魅録は頭の中で呪文のように繰り返しながら体を拭き終えた。
そしてそのまま、野梨子の体を抱え直すと、着替えのTシャツを頭から被せ、
小さな声で、ごめん、と言ってからブラウスのボタンを外していく。
Tシャツの中で野梨子のブラウスを肩からずらし、腕を抜かせる…。
なるべく淡々と着替えを済ませ、再び野梨子を布団に横たえた時には、
魅録のほうが汗びっしょりになっていた。
眠っているのかいないのか、静かに目を閉じた野梨子の顔を見つめる。
…ショックもあったんだろうな。
すでに女がいる好きな男にわざわざ東京から金沢まで会いに行って、
おまけにふたりを祝福までしたのだ。いくら強い女でも辛かっただろう。
悪かったな、野梨子。考えなしだった。俺のせいだ。
こんな時でも、きれいだな。ただ寝てるだけなのに、見てて飽きない。
夜は、どんどん更けていく。
汗拭かせてたら終わっちゃいました。進まなくてすいませぬ。
続きよろしくお願いします。リレー初参加なので今後の展開がたのしみだわん。
>ホロ苦
おお、見る間にどんどん進んでいく!作者さん達、乙です!
くぅ〜、読んでるこっちが汗かいてますぜ・・・
夜はまだ長いぞ〜っ ソコダヤッチャエ 下品で米゛ん。
>ホロ苦い青春編
魅録よりも読んでるこっちが暴走しそうになりました…(;´Д`)ハァハァ
>ホロ苦い青春編
待たずにスンダ!
…と思たら、む・胸元ーーーー!!!
興奮しすぎて寒さも吹っ飛んじゃったYO。
作者さま、ごちそうさまでした。
>ホロ苦い青春編
かまうこたねえ、やっちまってくれ!>作家タン達
あぅあぅ続き世みたいYO〜〜
>ホロ苦
魅録ってば鋼鉄の理性だわ。
野梨子はあまりの緊張に意識がぶっ飛んでしまったのでしょうか。
「見てて飽きない」なんて言ってないで、ガンガレ!魅録。
>ホロ苦い青春編
おいしすぎる展開だ〜(悶絶)
>842 ホロ苦い青春編
白波宅にはお姫様抱っこで運んだんだろうか?
>861
×悠理だったら小脇に抱えてもアリだが、野梨子の場合
「お姫さまダッコ」ではないかな?てか、してほしいぞ!
>>849 850さんに追加して。
嵐さんとこのHPに「2ちゃんねる初心者さんへ」っていう
ページがあるから、そこをよく読んでから出直した方が
いいと思うよ。特に「誘い受けレス」のとこ。
他では謙虚な振る舞いとして誉められる振る舞いが、
ここでは誘い受けとしてウザがられる。
作品をウプしたい人はするし、したくなければしない。
ウプは他人にお伺い立てることではない。自分で決めること。
煽られようが批判されようがウプするんだっ!という
強い意思と湧き出る妄想がないなら、やめといた方が吉。
>>864 乙です。容量超えそうだから、スレ立ての話は「まゆこ」に返事した方がいいよね。
>865
そうだね。
まゆこスレでテンプレ相談してスレ立てしましょ。
>ALL
つうことで、相談が終わって新スレが立つまで
ここのスレにはあんまり書かない方がいいと思われ。
半日か1日もすれば新スレを立てられると思うから、
それまでは妄想を脳内に溜め込んでおいてくれw
仕切ってスマソ
わかりましたー。
>ホロ苦い
鼻血ブー…ポタポタっ
0時過ぎて特に意見が無かったら、>864とまゆこスレ318にある
テンプレ使ってスレ立てしちゃうね。
意見のある人はそれまでに、まゆこスレへよろしく。